【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の硬化性組成物は、
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部と、
ガラスフリット20〜150質量部と、
150〜300℃での発生ガス総量が0.5〜20%である無機化合物と、
炭酸カルシウム50〜300質量部と
シラノール縮合触媒とを含有し、
上記ガラスフリットの含有量と上記無機化合物の含有量との質量比(ガラスフリットの含有量/無機化合物の含有量)が0.1〜40であることを特徴とする。
【0010】
又、本発明の硬化性組成物は、
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部と、
ガラスフリット20〜150質量部と、
150〜300℃での加熱減少量が0.5〜20%である無機化合物と、
炭酸カルシウム50〜300質量部と
シラノール縮合触媒とを含有し、
上記ガラスフリットの含有量と上記無機化合物の含有量との質量比(ガラスフリットの含有量/無機化合物の含有量)が0.1〜40であることを特徴とする。
【0011】
[末端に加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド]
ポリアルキレンオキサイドは、加水分解性シリル基を有する。主鎖の末端に加水分解性シリル基を有することが好ましい。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドは、水の存在下にて、加水分解性シリル基の加水分解性基が加水分解してシラノール基(−SiOH)を生成する。そして、シラノール基同士が脱水縮合して架橋構造が形成される。
【0012】
加水分解性シリル基とは、珪素原子に1〜3個の加水分解性基が結合してなる基である。加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、オキシム基などが挙げられる。
【0013】
なかでも、加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;プロピルジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられ、ジアルコキシシリル基がより好ましく、ジメトキシシリル基及びメチルジメトキシシリル基がより好ましく、メチルジメトキシシリル基がより好ましい。
【0014】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドは、1分子中に平均して、1〜4個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドにおける加水分解性シリル基の数が上記範囲内にあると、硬化性組成物の硬化物は、400℃程度に加熱されても優れたゴム弾性を保持し、火災時の熱によるシーリング部の寸法変化に円滑に追従し、シーリング部の充填状態を安定的に保持することができる。更に、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣をシーリング部に安定的に保持することができ、建築構造物の耐火性能を維持することができる。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドは、その主鎖の両末端に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0015】
なお、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、
1H−NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイドの数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0016】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドを構成しているポリアルキレンオキサイドとしては、主鎖が、一般式:−(R−O)
n−(式中、Rは炭素数が1〜14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイドの主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0017】
ポリアルキレンオキサイドの主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド−ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、硬化性組成物の硬化物は、400℃程度に加熱されても優れたゴム弾性を維持していると共に、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣をシーリング部に安定的に保持することができる。
【0018】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの数平均分子量は、3000以上が好ましく、10000以上がより好ましい。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの数平均分子量は、50000以下が好ましく、30000以下がより好ましい。ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量が3000以上であると、硬化性組成物の硬化物は400℃程度に加熱されても優れたゴム弾性を維持する。ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量が50000以下であると、硬化性組成物の硬化物が400℃程度に加熱されても優れたゴム弾性を保持し、火災時の熱によるシーリング部の寸法変化に円滑に追従し、シーリング部の充填状態を安定的に保持することができる。
【0019】
なお、本発明において、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの数平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値である。具体的には、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド6〜7mgを採取し、採取したポリアルキレンオキサイドを試験管に供給した上で、試験管に0.05質量%のBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を含むo−DCB(オルトジクロロベンゼン)溶液を加えてポリアルキレンオキサイドの濃度が1mg/mLとなるように希釈して希釈液を作製する。
【0020】
溶解濾過装置を用いて145℃にて回転速度25rpmにて1時間に亘って上記希釈液を振とうして、BHTを含むo−DCB溶液にポリアルキレンオキサイドを溶解させて測定試料とする。この測定試料を用いてGPC法によってポリアルキレンオキサイドの数平均分子量を測定することができる。
【0021】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドにおける数平均分子量は、例えば、下記測定装置及び測定条件にて測定することができる。
測定装置 TOSOH社製 商品名「HLC-8121GPC/HT」
測定条件 カラム:TSKgelGMHHR-H(20)HT×3本
TSKguardcolumn-HHR(30)HT×1本
移動相:o−DCB 1.0mL/分
サンプル濃度:1mg/mL
検出器:ブライス型屈折計
標準物質:ポリスチレン(TOSOH社製 分子量:500〜8420000)
溶出条件:145℃
SEC温度:145℃
【0022】
加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイドは、市販されているものを用いることができる。例えば、加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイドとしては、カネカ社製 商品名「MSポリマー S−203」、「MSポリマー S−303」、「サイリルポリマー SAT−200」、「サイリルポリマー SAT−350」及び「サイリルポリマー SAT−400」などが挙げられる。加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイドとしては、AGC社製 商品名「エクセスター S3620」、「エクセスターS2420」、「エクセスターS2410」及び「エクセスターS3430」などが挙げられる。
【0023】
主鎖がポリプロピレンオキサイドで且つポリプロピレンオキサイドの末端に(メトキシメチル)ジメトキシシリル基を有しているポリアルキレンオキサイドは、カネカ社から商品名「HS−2」にて市販されている。
【0024】
主鎖がポリプロピレンオキサイドで且つポリプロピレンオキサイドの末端にイソプロピルジメトキシメチルシリル基を有しているポリアルキレンオキサイドは、カネカ社から商品名「SAX720」にて市販されている。
【0025】
[ガラスフリット]
硬化性組成物は、ガラスフリットを含有している。ガラスフリットは、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣において、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド及び/又は無機化合物同士を結合させるためのバインダーとして作用する。なお、ガラスフリットは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0026】
ガラスフリットを構成しているガラスとしては、たとえば、リン酸系ガラス、ホウ酸系ガラス、酸化ビスマス系ガラス、珪酸系ガラス、酸化ナトリウム系ガラスなどが挙げられ、リン酸系ガラス、ホウ酸系ガラスが好ましく、リン酸系ガラスがより好ましい。これらのガラスフリットは、B
2O
3、P
2O
5、ZnO、SiO
2、Bi
2O
3、Al
2O
3、BaO、CaO、MgO、MnO
2、ZrO
2、TiO
2、CeO
2、SrO、V
2O
5、SnO
2、Li
2O、Na
2O、K
2O、CuO、Fe
2O
3などを所定の成分割合で調整して得ることができる。なお、ガラスフリットは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0027】
ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は350℃以上が好ましく、360℃以上がより好ましく、370℃以上がより好ましく、380℃以上がより好ましい。ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は650℃以下が好ましく、560℃以下がより好ましく、540℃以下がより好ましく、520℃以下がより好ましい。ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は350℃以上であると、火災時の熱によって軟化した、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの補強作用を奏し、硬化性組成物の硬化物の保形性が向上する。ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は650℃以下であると、650〜945℃程度の温度領域において、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣において、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド及び/又は無機化合物同士を結合させるためのバインダーとして効果的に作用する。なお、ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は、ガラスの粘度が107.6dPa・s(logη=7.6)となる温度である。
【0028】
硬化性組成物中におけるガラスフリットの含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して20質量部以上であり、25質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、35質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるガラスフリットの含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して150質量部以下であり、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がより好ましく、60質量部以下がより好ましい。ガラスフリットの含有量が20質量部以上であると、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣をシーリング部に安定的に保持することができる。ガラスフリットの含有量が150質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物は、400℃程度に加熱されても優れたゴム弾性を維持する。
【0029】
[無機化合物]
硬化性組成物は、150〜300℃での発生ガス総量が0.5〜20%である無機化合物、又は、50〜300℃での加熱減少量が0.5〜20%である無機化合物を含有している。
【0030】
硬化性組成物の硬化物は、建築構造物のシーリング部に充填されているが、壁部を構成しているパネル部材は火災時の熱によって収縮することがあり、この場合には、シーリング部が拡張する。
【0031】
そこで、硬化性組成物に上記無機化合物を含有させることによって、硬化性組成物の硬化物をこの硬化物が燃焼残渣となる前に膨張させて、シーリング部の拡張に円滑に追従させてシーリング部の閉塞を確実に維持することができる。
【0032】
硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド、ガラスフリット、特定の無機化合物及び炭酸カルシウムが特定の配合割合で含有している。従って、硬化性組成物の硬化物は、火災時において、400℃程度まで加熱されても優れたゴム弾性を維持しており、この状態において、無機化合物によって硬化性組成物の硬化物を膨張させることにより、硬化物をシーリング部の拡張に円滑に追従させてシーリング部の閉塞を確実に維持することができる。
【0033】
無機化合物は、150〜300℃での発生ガス総量が0.5%以上であり、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、3%以上がより好ましい。150〜300℃での発生ガス総量が0.5%以上であると、硬化性組成物の硬化物が、火災時の熱によって加熱された場合、300℃以下の温度において円滑に膨張し、建築構造物のシーリング部の拡張に円滑に追従させてシーリング部の閉塞を確実に維持することができる。
【0034】
無機化合物は、150〜300℃での発生ガス総量が20%以下であり、15%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、10%以下がより好ましい。1150〜300℃での発生ガス総量が20%以下であると、硬化性組成物の硬化物が、火災時の熱によって加熱された場合、300℃以下の温度において円滑に膨張し、建築構造物のシーリング部の拡張に円滑に追従させてシーリング部の閉塞を確実に維持することができる。
【0035】
無機化合物において、150〜300℃での発生ガス総量は、下記の要領で測定される。無機化合物100gをサンプルAとして用意する。このサンプルAの質量W
1を測定する。次に、サンプルAを150℃に保持した恒温槽内に1時間に亘って放置した後、サンプルAを恒温槽から取り出し、25℃雰囲気下に1時間に亘って放置する。しかる後、加熱後のサンプルAの質量W
2を測定する。下記式に基づいて150℃における加熱減量D
1を算出する。
150℃における加熱減量D
1(%)=100×(W
1−W
2)/W
1
【0036】
又、別の無機化合物100gをサンプルBとして用意する。このサンプルBの質量W
3を測定する。次に、サンプルBを300℃に保持した恒温槽内に1時間に亘って放置した後、サンプルBを恒温槽から取り出し、25℃雰囲気下に1時間に亘って放置する。しかる後、加熱後のサンプルAの質量W
4を測定する。下記式に基づいて300℃における加熱減量D
2を算出する。下記式に基づいて、150〜300℃での発生ガス総量を算出する。
300℃における加熱減量D
2(%)=100×(W
3−W
4)/W
3
150〜300℃での発生ガス総量(%)
=(300℃における加熱減量D
2)−(150℃における加熱減量D
1)
【0037】
無機化合物は、150〜300℃での加熱減少量が0.5%以上であり、1%以上が好ましく、2%以上がより好ましく、3%以上がより好ましい。150〜300℃での加熱減少量が0.5%以上であると、硬化性組成物の硬化物が、火災時の熱によって加熱された場合、300℃以下の温度において円滑に膨張し、建築構造物のシーリング部の拡張に円滑に追従させてシーリング部の閉塞を確実に維持することができる。
【0038】
無機化合物は、150〜300℃での加熱減少量が20%以下であり、15%以下が好ましく、12%以下がより好ましく、10%以下がより好ましい。1150〜300℃での加熱減少量が20%以下であると、硬化性組成物の硬化物が、火災時の熱によって加熱された場合、300℃以下の温度において円滑に膨張し、建築構造物のシーリング部の拡張に円滑に追従させてシーリング部の閉塞を確実に維持することができる。
【0039】
無機化合物において、150〜300℃での加熱減少量は、下記の要領で測定される。無機化合物100gをサンプルEとして用意する。このサンプルEの質量W
5を測定する。次に、サンプルEを150℃に保持した恒温槽内に1時間に亘って放置した後、サンプルEを恒温槽から取り出し、25℃雰囲気下に1時間に亘って放置する。しかる後、加熱後のサンプルEの質量W
6を測定する。下記式に基づいて150℃における加熱減量D
3を算出する。
150℃における加熱減量G
3(%)=100×(W
5−W
6)/W
5
【0040】
又、別の無機化合物100gをサンプルFとして用意する。このサンプルFの質量W
7を測定する。次に、サンプルFを300℃に保持した恒温槽内に1時間に亘って放置した後、サンプルFを恒温槽から取り出し、25℃雰囲気下に1時間に亘って放置する。しかる後、加熱後のサンプルFの質量W
8を測定する。下記式に基づいて300℃における加熱減量D
4を算出する。下記式に基づいて、150〜300℃での加熱減量を算出する。
300℃における加熱減量D
4(%)=100×(W
7−W
8)/W
7
150〜300℃での加熱減少量(%)
=(300℃における加熱減量D
4)−(150℃における加熱減量D
3)
【0041】
無機化合物としては、150〜300℃での発生ガス総量が0.5〜20%であれば、特に限定されず、例えば、リン酸アルミニウム(AlPO
4)、亜リン酸アルミニウム[Al
2(PHO
3)
3]、膨張黒鉛、水酸化アルミニウム、重曹(炭酸水素ナトリウム)などが挙げられ、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アルミニウム(AlPO
4)、亜リン酸アルミニウム[Al
2(PHO
3)
3]、膨張黒鉛が好ましく、ポリリン酸アンモニウム、リン酸アルミニウム(AlPO
4)、膨張黒鉛がより好ましい。なお、無機化合物は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0042】
膨張黒鉛とは、天然黒鉛又は合成黒鉛を酸、酸化体、ハロゲン化物などのインターカラント材で処理して、層間化合物を作り、その粉体を急速加熱(1000〜1200℃)することによって黒鉛のc軸方向を約150〜700倍に膨張させて製造されたものである。
【0043】
インターカラント材としては、硫酸、硝酸、クロム酸、ホウ酸、SO
3、またはFeCl
3、ZnCl
2、およびSbCl
5などのハロゲン化物が挙げられる。
【0044】
硬化性組成物中における無機化合物の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における無機化合物の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して150質量部以下が好ましく、120質量部以下がより好ましく、100質量部以下がより好ましく、80質量部以下がより好ましく、70質量部以下がより好ましい。硬化性組成物中における無機化合物の含有量が上記範囲内であると、火災時において、300℃以下にて硬化性組成物の硬化物を円滑に膨張させて、建築構造物のシーリング部の拡張に円滑に追従させてシーリング部の閉塞を確実に維持することができる。
【0045】
硬化性組成物において、ガラスフリットの含有量と無機化合物の含有量との質量比(ガラスフリットの含有量/無機化合物の含有量)は、0.1以上であり、0.2以上が好ましく、0.3以上がより好ましく、0.4以上がより好ましく、0.5以上がより好ましく、0.6以上がより好ましい。硬化性組成物において、ガラスフリットの含有量と無機化合物の含有量との質量比(ガラスフリットの含有量/無機化合物の含有量)は、40以下であり、37以下が好ましく、35以下がより好ましく、33以下がより好ましく、30以下がより好ましく、28以下がより好ましく、20以下がより好ましく、15以下がより好ましく、13以下がより好ましく、11以下がより好ましく、9以下がより好ましく、7以下がより好ましく、5以下がより好ましい。ガラスフリットの含有量と無機化合物の含有量との質量比(ガラスフリットの含有量/無機化合物の含有量)が0.1以上であると、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣をシーリング部に安定的に保持することができる。ガラスフリットの含有量と無機化合物の含有量との質量比(ガラスフリットの含有量/無機化合物の含有量)が40以下であると、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣において、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド及び/又は無機化合物同士を強固に結合でき好ましい。
【0046】
[炭酸カルシウム]
硬化性組成物は、炭酸カルシウムを含有している。炭酸カルシウムとしては、特に限定されず、例えば、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなどが挙げられ、コロイダル炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムが好ましく、コロイダル炭酸カルシウムがより好ましい。
【0047】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01〜5μmが好ましく、0.05〜2.5μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシウムによれば、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣が優れた強度を有し、燃焼残渣は硬くなりすぎず亀裂を生じることがない。従って、目地部などのシーリング部を充填した状態を確実に維持し、建築構造物のパネル構造体に優れた耐火性能を付与することができる。なお、炭酸カルシウムの平均粒子径は、SEMによる観察でスケール測定し10個の粒子直径の算術平均によって算出された値をいう。粒子直径は、SEM(電子走査顕微鏡)によって得られた顕微鏡写真において、粒子を包囲し得る最小径の真円の直径とする。
【0048】
また、炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されているのが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、硬化性組成物にチキソトロピー性を付与できると共に炭酸カルシウムが凝集することを抑制することができる。
【0049】
硬化性組成物中における炭酸カルシウムの含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して50質量部以上であり、70質量部以上が好ましく、100質量部以上がより好ましく、120質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における炭酸カルシウムの含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して300質量部以下であり、250質量部以下が好ましく、200質量部以下がより好ましく、160質量部以下がより好ましい。硬化性組成物中における炭酸カルシウムの含有量が50質量部以上であると、火災時の熱によって軟化した、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの補強作用を奏し、硬化性組成物の硬化物の保形性が向上する。硬化性組成物中における炭酸カルシウムの含有量が300質量部以下であると、硬化性組成物の硬化物は、400℃程度に加熱されても優れたゴム弾性を保持し、火災時の熱によるシーリング部の寸法変化に円滑に追従し、シーリング部の充填状態を安定的に保持することができる。
【0050】
[シラノール縮合触媒]
硬化性組成物は、シラノール縮合触媒を含有していることが好ましい。シラノール縮合触媒とは、ポリアルキレンオキサイドが含有する加水分解性シリル基が加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0051】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ−n−ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0052】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサンが好ましい。このようなシラノール縮合触媒によれば、硬化性組成物の硬化速度を容易に調整することができる。
【0053】
硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して10質量部以下が好ましく、8質量部以下がより好ましく、6質量部以下がより好ましく、5質量部以下がより好ましい。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物の硬化速度を速くして、硬化性組成物の硬化に要する時間の短縮化を図ることができる。硬化性組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量が10質量部以下であると、硬化性組成物が適度な硬化速度を有し、硬化性組成物の貯蔵安定性及び取扱性を向上させることができる。
【0054】
[可塑剤]
硬化性組成物は可塑剤を含有していることが好ましい。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソウンデシル、及びフタル酸ビスブチルベンジルなどのフタル酸エステル;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールが挙げられる。なかでも、ポリアルキレングリコールが好ましく、ポリプロピレングリコールがより好ましい。可塑剤は、23℃及び1.01×10
5Pa(1気圧)において液状であることが好ましい。
【0055】
可塑剤がポリマーである場合、可塑剤の数平均分子量は、1000以上が好ましく、2000以上がより好ましい。可塑剤がポリマーである場合、可塑剤の数平均分子量は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましい。可塑剤の数平均分子量が上記範囲内である場合、硬化性組成物の硬化物は、400℃程度に加熱されても優れたゴム弾性を維持していると共に、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣をシーリング部に安定的に保持することができる。
【0056】
なお、本発明において、可塑剤がポリマーである場合、可塑剤の数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって、ポリスチレン換算されて測定された値である。具体的な測定方法や測定条件は、上述したポリアルキレンオキサイドと同様である。
【0057】
硬化性組成物中における可塑剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して1質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における可塑剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましい。
【0058】
[脱水剤]
硬化性組成物は、脱水剤をさらに含んでいるのが好ましい。脱水剤によれば、硬化性組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって硬化性組成物が硬化することを抑制することができる。
【0059】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0060】
硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における脱水剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。硬化性組成物中における脱水剤の含有量が0.5質量部以上であると、脱水剤により得られる効果が十分に得られる。また、硬化性組成物中における脱水剤の含有量が20質量部以下であると、硬化性組成物が優れた硬化性を有する。
【0061】
[他の添加剤]
硬化性組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、アミノシランカップリング剤、揺変剤及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、チキソ性付与剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0062】
チキソ性付与剤は、硬化性組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0063】
硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、1質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましい。硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量が0.1質量部以上であると、硬化性組成物にチキソトロピー性を効果的に付与することができる。また、硬化性組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量が200質量部以下であると、硬化性組成物が適度な粘度を有し、硬化性組成物の取扱性が向上する。
【0064】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して0.1質量部以上が好ましい。硬化性組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0065】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して0.1質量部以上が好ましく、0.3質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中における酸化防止剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0066】
[光安定剤]
硬化性組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいることが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる硬化性組成物を提供することができる。
【0067】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。
【0068】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。NOR型ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に経時的なゴム弾性の低下が抑制されている硬化性組成物を提供することができる。
【0069】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、ピペリジン環骨格に含まれている窒素原子(N)に酸素原子(O)を介してアルキル基(R)が結合しているNOR構造を有している。NOR構造におけるアルキル基の炭素数は、1〜20が好ましく、1〜18がより好ましく、18が特に好ましい。アルキル基としては、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基、及び、環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)が挙げられる。
【0070】
直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが挙げられる。環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。また、アルキル基を構成している水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)又はヒドロキシル基などで置換されていてもよい。
【0071】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤としては、下記式(I)で示されるヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0072】
【化1】
【0073】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いる場合、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることが好ましい。これにより、硬化後に経時的なゴム弾性の低下がより高く抑制されている硬化性組成物を提供することができる。
【0074】
硬化性組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して0.01質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。硬化性組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド100質量部に対して20質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。
【0075】
硬化性組成物は、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドと、ガラスフリットと、150〜300℃での発生ガス総量が0.5〜20%である無機化合物と、炭酸カルシウムと、必要に応じて添加される添加剤とを混合することによって製造することができる。なお、硬化性組成物は、水系溶媒に懸濁又は乳化させて懸濁液又は乳化液の形態であってもよい。硬化性組成物は、溶媒に溶解させた溶解液の形態であってもよい。なお、水溶媒としては、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、水などが挙げられる。溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、アセトンなどが挙げられる。
【0076】
硬化性組成物はその硬化後において、即ち、硬化性組成物の硬化物は、250℃で30分加熱した時の体積膨張率が2倍以上であることが好ましい。硬化性組成物の硬化物について、250℃で30分加熱した時の体積膨張率が2倍以上であると、硬化性組成物の硬化物は、火災時の熱により速やかに膨張し、シーリング部の拡張に円滑に追従し、シーリング部の閉塞を安定的に維持することができる。
【0077】
硬化性組成物の硬化物について、250℃で30分加熱した時の体積膨張率は、下記の要領で測定される。加熱前における硬化性組成物の硬化物からなる試験片の体積W
1を測定する。次に、試験片を250℃の恒温槽内に供給し、恒温槽内において30分放置する。試験片を恒温槽から取り出し、25℃において3時間放置して冷却する。しかる後、加熱後の試験片の体積W
2を測定し、下記式に基づいて算出される。なお、試験片の体積Wは、試験片を水に完全に浸漬し、浸漬後の試験片を含む水の体積から、浸漬前の水の体積を引くことによって測定される。
250℃で30分加熱した時の体積膨張率(%)
=加熱後の試験片の体積W
2/加熱前の試験片の体積W
1
【0078】
硬化性組成物はその硬化後において、即ち、硬化性組成物の硬化物は、ShoreAによる23℃でのゴム弾性が、5以上であることが好ましく、10以上であることがより好ましい。硬化性組成物はその硬化後において、即ち、硬化性組成物の硬化物は、ShoreAによる23℃でのゴム弾性が50以下が好ましく、40以下がより好ましい。硬化性組成物の硬化物は、ShoreAによる23℃でのゴム弾性が5以上であると、硬化性組成物の硬化物は、火災時の熱による加熱にもかかわらず優れたゴム弾性を有し、シーリング部の拡張に円滑に追従し、シーリング部の閉塞を安定的に維持することができる。硬化性組成物の硬化物は、ShoreAによる23℃でのゴム弾性が50以下であると、火災時において、硬化性組成物の硬化物は、無機化合物から発生するガスによって破泡することなく円滑に膨張し、シーリング部の拡張に円滑に追従し、シーリング部の閉塞を安定的に維持することができる。なお、硬化性組成物の硬化物におけるShoreAによるゴム弾性は、測定温度23℃において、JIS K6253に準拠してA型デュロメータを用いて測定された値をいう。
【0079】
硬化性組成物はその硬化後において、硬化性組成物の硬化物は、600℃での燃焼後に23℃にて1時間放置後のShoreAによる23℃でのゴム弾性が40以上であることが好ましい。600℃での燃焼後に23℃にて1時間放置後のShoreAによる23℃でのゴム弾性が40以上であると、硬化性組成物の硬化物の燃焼残渣をシーリング部に安定的に保持させておくことができ、シーリング部の閉塞を安定的に維持することができる。
【0080】
なお、硬化性組成物の硬化物において、600℃での燃焼後に23℃にて1時間放置後のShoreAによる23℃でのゴム弾性は下記の要領で測定される。硬化性組成物の硬化物100gをサンプルとして用意する。サンプルを燃焼炉内に供給する。サンプルを燃焼炉にて600℃で30分間に亘って燃焼させる。サンプルを燃焼させて得られた燃焼残渣を燃焼終了後、直ちに23℃の雰囲気下に1時間放置する。次に、燃焼残渣について、ShoreAによるゴム弾性をJIS K6253に準拠して測定温度23℃にてA型デュロメータを用いて測定する。
【0081】
硬化性組成物は、シーリング材として好適に用いることができる。硬化性組成物をシーリング材として用いてパネル構造体を構築することができる。硬化性組成物を建築構造物のシーリング部に施工してパネル構造体を構築する方法としては、硬化性組成物をシーリング部に充填した後に養生させて硬化させる方法が用いられる。得られるパネル構造体は、建築構造物のパネル配設部と、建築構造物のパネル配設部に配設されたパネル部材と、パネル配設部とパネル部材との対向面間に充填された硬化性組成物の硬化物とを含む。パネル部材としては、例えば、モルタル板、フレキシブルボード、石膏ボード、ケイ酸カルシウム板、中質繊維板、パーティクルボード、木質系合板、硬質繊維板などが挙げられる。
【0082】
シーリング部は、特に限定されず、例えば、建築構造物において形成されたパネル配設部とこのパネル配設部に配設されるパネル部材との間に形成される隙間、互いに隣接するパネル部材の対向面間に形成される隙間などが挙げられる。
【0083】
そして、火災時において、パネル構造体を構成しているパネル部材は、火災時の熱によって300℃程度まで加熱されて収縮を生じることがあり、このような場合、シーリング部が拡張する。一方、硬化性組成物の硬化物は、火災時の熱による400℃程度までの加熱時においても優れたゴム弾性を保持し且つ円滑に膨張するので、シーリング部の拡張に円滑に追従し、シーリング部の閉塞状態を確実に維持することができる。
【0084】
硬化性組成物の硬化物は、火災時の熱による燃焼によって強固な燃焼残渣を生成し、この燃焼残渣は、火災時においても建築構造物のシーリング部を充填して閉塞した状態を確実に保持してシーリング部を通じた炎の回り込みを阻止し、建築構造物のパネル構造体に優れた耐火性能を付与することができる。