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特開2021-113371空気調和ユニット及びそれを備えた衣服
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-113371(P2021-113371A)
(43)【公開日】2021年8月5日
(54)【発明の名称】空気調和ユニット及びそれを備えた衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20210709BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20210709BHJP
   A41D 1/00 20180101ALI20210709BHJP
   A61F 7/00 20060101ALI20210709BHJP
   F25B 21/02 20060101ALI20210709BHJP
【FI】
   A41D13/005 101
   A41D13/002 105
   A41D1/00 H
   A41D1/00 E
   A41D1/00 D
   A41D13/005 103
   A61F7/00 310J
   F25B21/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-6820(P2020-6820)
(22)【出願日】2020年1月20日
(71)【出願人】
【識別番号】591209442
【氏名又は名称】岸岡 俊
(71)【出願人】
【識別番号】518447452
【氏名又は名称】大塚 勝博
(71)【出願人】
【識別番号】518447463
【氏名又は名称】清水 沙蘭
(74)【代理人】
【識別番号】100117651
【弁理士】
【氏名又は名称】高垣 泰志
(72)【発明者】
【氏名】岸岡 俊
【テーマコード(参考)】
3B011
3B030
4C099
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC02
3B011AC03
3B030AB06
3B030AB08
3B030AB12
4C099AA05
4C099CA12
4C099JA02
4C099NA05
(57)【要約】
【課題】ペルチェ素子を利用して着衣者の身体を効率的に冷房又は暖房できるようにする。
【解決手段】衣服100に装着するための空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17と、ペルチェ素子17の一方の面に接合する金属板19と、金属板19よりも面積が大きく、金属板19に接合した状態で衣服100の内側に配置される金属製の熱交換プレート20と、を備える構成である。熱交換プレート20は、銅板、錫板、又は、アルミ板によって形成されることが好ましい。また、ペルチェ素子17の他方の面には、ヒートシンク15と、ヒートシンク15の熱を衣服100の外側に放出させるファン14とが設けられることが好ましい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衣服に装着するための空気調和ユニットであって、
ペルチェ素子と、
前記ペルチェ素子の一方の面に接合する金属板と、
前記金属板よりも面積が大きく、前記金属板に接合した状態で前記衣服の内側に配置される金属製の熱交換プレートと、
を備えることを特徴とする空気調和ユニット。
【請求項2】
前記熱交換プレートは、銅板によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の空気調和ユニット。
【請求項3】
前記熱交換プレートは、錫板によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の空気調和ユニット。
【請求項4】
前記熱交換プレートは、アルミ板によって形成されることを特徴とする請求項1に記載の空気調和ユニット。
【請求項5】
前記ペルチェ素子の他方の面に配置されるヒートシンクと、
前記ヒートシンクの熱を前記衣服の外側に放出させるファンと、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空気調和ユニット。
【請求項6】
前記熱交換プレートの人体と対向する面の反対側の面を覆う状態で前記熱交換プレートの周縁を保持する断熱パッド、
を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の空気調和ユニット。
【請求項7】
前記金属板は、前記断熱パッドに設けられた孔に装着され、前記熱交換プレートに接合することを特徴とする請求項6に記載の空気調和ユニット。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の空気調和ユニットを備える衣服。
【請求項9】
前記空気調和ユニットは、衣服の後身頃の生地に装着されることを特徴とする請求項8に記載の衣服。
【請求項10】
前記空気調和ユニットを制御するコントローラと、
前記コントローラを介して前記空気調和ユニットに電力を供給するバッテリーと、
を備えることを特徴とする請求項8又は9に記載の衣服。
【請求項11】
前記コントローラは、前記ペルチェ素子に流す電流の極性を切り替えることにより、冷房と暖房とを切り替え可能であることを特徴とする請求項10に記載の衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和ユニット及びそれを備えた衣服に関し、特に着衣者の身体を冷房又は暖房する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服に取り付けたファンにより、外部の空気を衣服内に取り込み、着衣者の身体を冷却するファン付の衣服が知られている(例えば特許文献1)。しかし、ファン付き衣服は外部の空気を衣服内に送り込むだけであるため、外気温が高い場合には冷房効果が低く、快適な衣服であるとは言えない。
【0003】
また、従来、衣服内部に設けた水路に冷水又は温水を流すことにより、身体を冷房又は暖房できるようにした衣服も知られている(例えば特許文献2)。しかし、衣服の内部に冷水や温水を流す構成では、衣服の重量が増すため、着衣者の動作が鈍くなるという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6200113号公報
【特許文献2】特開2012−161446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ペルチェ素子を利用すれば、冷却又は加熱を行うことができるため、これを衣服に取り付けて衣服の内部を冷房又は暖房することが考えられる。しかし、ペルチェ素子は消費電力が大きいため、衣服の内面側に多数取り付けると電力消耗が激しく実用に耐えない。そのため、ペルチェ素子を利用する場合は、ペルチェ素子の数を減らし、着衣者の身体を効率的に冷房又は暖房できるようにすることが望ましい。
【0006】
そこで本発明は、ペルチェ素子を利用して着衣者の身体を効率的に冷房又は暖房できる空気調和ユニット及びそれを備えた衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、第1に、本発明は、衣服に装着するための空気調和ユニットであって、ペルチェ素子と、前記ペルチェ素子の一方の面に接合する金属板と、前記金属板よりも面積が大きく、前記金属板に接合した状態で前記衣服の内側に配置される金属製の熱交換プレートと、を備えることを特徴とする構成である。
【0008】
第2に、本発明は、上記第1の構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記熱交換プレートは、銅板によって形成されることを特徴とする構成である。
【0009】
第3に、本発明は、上記第1の構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記熱交換プレートは、錫板によって形成されることを特徴とする構成である。
【0010】
第4に、本発明は、上記第1の構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記熱交換プレートは、アルミ板によって形成されることを特徴とする構成である。
【0011】
第5に、本発明は、上記第1乃至第4のいずれかの構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記ペルチェ素子の他方の面に配置されるヒートシンクと、前記ヒートシンクの熱を前記衣服の外側に放出させるファンと、を更に備えることを特徴とする構成である。
【0012】
第6に、本発明は、上記第1乃至第5のいずれかの構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記熱交換プレートの人体と対向する面の反対側の面を覆う状態で前記熱交換プレートの周縁を保持する断熱パッド、を更に備えることを特徴とする構成である。
【0013】
第7に、本発明は、上記第6の構成を有する空気調和ユニットにおいて、前記金属板は、前記断熱パッドに設けられた孔に装着され、前記熱交換プレートに接合することを特徴とする構成である。
【0014】
第8に、本発明は、衣服であって、上記第1乃至第7のいずれかの構成を有する空気調和ユニットを備えることを特徴とする構成である。
【0015】
第9に、本発明は、上記第8の構成を有する衣服において、前記空気調和ユニットは、衣服の後身頃の生地に装着されることを特徴とする構成である。
【0016】
第10に、本発明は、上記第8又は第9の構成を有する衣服において、前記空気調和ユニットを制御するコントローラと、前記コントローラを介して前記空気調和ユニットに電力を供給するバッテリーと、を備えることを特徴とする構成である。
【0017】
第11に、本発明は、上記第10の構成を有する衣服において、前記コントローラは、前記ペルチェ素子に流す電流の極性を切り替えることにより、冷房と暖房とを切り替え可能であることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ペルチェ素子を利用しつつ、消費電力を低減し、着衣者の身体を快適な状態に冷房又は暖房できる空気調和ユニットを提供することができると共に、そのような空気調和ユニットを備えた衣服を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】空気調和ユニットを示す斜視図である。
図2】空気調和ユニットを取り付けた衣服を示す図である。
図3】空気調和ユニットの構成を示す分解斜視図である。
図4】空気調和ユニットの構成を示す断面図である。
図5】空気調和ユニットを装着する衣服の例を示す図である。
図6】空気調和ユニットの制御機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に関する好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについての重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本実施形態における空気調和ユニット1を示す斜視図であり、(a)及び(b)はそれぞれ異なる方向から観た図を示している。図2は、空気調和ユニット1を取り付けた衣服100を示す図である。図3は、空気調和ユニット1の構成を示す分解斜視図である。これらの図面に示す本実施形態の空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17を用いた熱交換を行い、衣服100の着衣者の身体を冷房又は暖房するためのものである。例えば、図2に示すように、空気調和ユニット1は、衣服100の後身頃の生地101に取り付けられ、着衣者の身体の背を冷房又は暖房する。この空気調和ユニット1は、着衣者の肩胛骨の間から腰に至る部分を冷房又は暖房する装置である。
【0022】
図3に示すように、空気調和ユニット1は、主として、ファンカバー11と、ファン14と、ヒートシンク15と、ペルチェ素子17と、保持部材18と、金属板19と、熱交換プレート20と、断熱パッド30と、固定パッド40とを備えて構成される。この空気調和ユニット1は、保持部材18がペルチェ素子17を保持する。
【0023】
ペルチェ素子17は、概略矩形状の薄板状素子であり、表面側と裏面側とに異なる2種類の金属が配置されており、その2種類の金属の接合部に電流を流すことにより、一方の金属から他方の金属へ熱が移動するというペルチェ効果を利用した半導体素子である。例えば、一方の金属から他方の金属へ直流電流を流すと、ペルチェ素子17の一方の面が吸熱し、他方の面に発熱が起こる。直流電流の極性を反転させると、吸熱作用及び発熱作用が生じる面が反転する。空気調和ユニット1は、このペルチェ素子17の特性を利用して衣服内の着衣者の身体を冷房又は暖房する。
【0024】
ペルチェ素子17の衣服外側に対応する面には、空気調和ユニット1によって熱交換された廃熱を外部へ放出する放熱機構が設けられる。具体的に説明すると、ペルチェ素子17の衣服外側に対応する面には、ヒートシンク15が接合するように配置される。例えばヒートシンク15は、その周囲が保持部材18に固定される。ヒートシンク15は、その周縁部に熱交換効率を高めるために多数のフィン16が設けられている。ヒートシンク15の更に衣服外側には、ファン14が配置される。ファンカバー11は、ヒートシンク15の周縁部に取り付けられるカバー部材であり、衣服100の外側においてファン14及びヒートシンク15を覆う状態に装着される。ファンカバー11には、空気をカバー内に導入するための吸気窓12と、カバー内の空気を外部に放出するための排気窓13とが設けられる。例えば、ファンカバー11は、有底の円筒形状を有しており、吸気窓12は、ファンカバー11の底部に多数形成され、排気窓13はファンカバー11の周側面に形成される。
【0025】
これに対し、ペルチェ素子17の衣服内側に対応する面には、ペルチェ素子17による冷却又は加熱効果を着衣者の身体に効率よく伝えるための熱伝導機構が設けられる。具体的に説明すると、ペルチェ素子17の衣服内側に対応する面には、金属板19が接合するように配置される。この金属板19は、例えばその周縁部が保持部材18の衣服内側の面に接着された状態で固定される。金属板19は、その一面がペルチェ素子17の一方の面に接合した状態に取り付けられることにより、ペルチェ素子17の吸熱又は発熱作用により降温又は昇温する。この金属板19は例えばアルミ金属で形成される。アルミ金属は、熱伝導率が比較的高く、しかも軽量であるため、衣服装着用として適している。ただし、金属板19は、アルミ製に限られるものではなく、比較的高い熱伝導率を示す金属であればどのような金属を用いても構わない。例えば、銅や錫などを用いて金属板19を形成しても良い。
【0026】
また、金属板19は、その面積がペルチェ素子17の面積よりも大きいものを用いることが好ましい。ペルチェ素子17の面積よりも大きい金属板19をペルチェ素子17の一方の面に接合させることにより、金属板19の一面の略中央にペルチェ素子17を接合させることができ、ペルチェ素子17の一方の面で生じる吸熱作用又は発熱作業を効率よく金属板19に伝えることができる。
【0027】
ただし、金属板19の面積は、ペルチェ素子17の面積に対して大き過ぎることは好ましくない。金属板19は、ペルチェ素子17の吸熱又は発熱作用によって全体的に降温又は昇温するため、金属板19の熱容量が大きくなり過ぎるとペルチェ素子17に負荷がかかり、ペルチェ素子17での電流消費量が増加してしまうからである。そのため、金属板19の面積はペルチェ素子17の面積に比して1.5〜4倍程度に留めておくことが好ましい。
【0028】
熱交換プレート20は、金属板19の衣服内側に対応する面に接合するように配置される金属製のプレートである。衣服100の内側に配置され、着衣者の身体を冷却又は加熱するプレートである。例えば、熱交換プレート20は、金属板19よりも大きなサイズとして形成される。そのため、熱交換プレート20の熱容量は、金属板19よりも大きい。また、熱交換プレート20は、例えば、銅板、錫板、アルミ板などを用いて形成される。
【0029】
例えば、熱交換プレート20として銅板を用いる場合、熱伝導率が比較的高いため、熱交換を効率的に行うことが可能である。この場合、熱交換プレート20は、例えば厚さ0.3〜0.8mm程度の銅板を基材とし、図3に示すように金属板19と接合する接合部21を除くプレート表面(表面及び裏面の双方を含む)に対して錫によるメッキ22を施したものを用いることが好ましい。板厚を0.3〜0.8mm程度とすることで、衣服用として適度な硬度を得ることができる。また、銅は酸化しやすいため、プレート表面に対して錫によるメッキ22を施すことで酸化を防止することができる。また、錫によるメッキ22を金属板19との接合部21には設けないようにすることで、着衣者の人体から吸収する熱を効率よく金属板19に伝導させることができる。
【0030】
また、例えば、熱交換プレート20として錫板を用いる場合、銅やアルミと比較して柔らかいため、着衣者の身体に対する密着性が増すという利点がある。この場合、熱交換プレート20は、例えば厚さ0.5〜1.0mm程度の錫板を基材とし、金属板19と接合する接合部21を除くプレート表面(表面及び裏面の双方を含む)に対して銀又は銅によるメッキ22を施したものを用いることが好ましい。板厚を0.5〜1.0mm程度とすることで、衣服用として適度な硬度を得ることができる。また、錫は銅に比較して熱伝導率が低いため、プレート表面に対して銀又は銅によるメッキ22を施すことで熱伝導率の低さを大幅に改善することができる。また、銀や銅によるメッキ22を金属板19との接合部21には設けないようにすることで、着衣者の人体から吸収する熱を効率よく金属板19に伝導させることもできる。
【0031】
また、例えば、熱交換プレート20としてアルミ板を用いる場合、例えば厚さ0.5〜0.8mm程度のアルミ板を基材とする。この場合のアルミ板には、予めアルマイト処理を施しておく。アルマイト処理によりアルミの酸化による腐食を防止することができる。また、アルミ板は、金属板19と接合する接合部21を除くプレート表面(表面及び裏面の双方を含む)に対して銀によるメッキ22を施したものを用いることが好ましい。銀は、金属の中で熱伝導率が最も高いため、着衣者の身体を効率的に冷却又は加熱することができる。
【0032】
熱交換プレート20は、着衣者の肩胛骨の間から腰に至る部分に直接的又は間接的に接触し、その部分を効率的に冷却又は加熱できるようにするため、概略逆T字状の形状を有しており、上部の幅よりも下部の幅が広くなるように形成されている。上部の幅が狭いのは、着衣者の動作によって肩胛骨が動いたとしても、熱交換プレート20が着衣者の肩胛骨に干渉せず、着衣者に違和感を生じさせないためである。一方、熱交換プレート20の下部の幅を上部よりも広くすることにより、着衣者の背から腰の辺りを広く冷却又は加熱することができる。尚、熱交換プレート20は、概略逆T字状の形状に限られるものではなく、例えば台形状であっても良いし、三角形状であっても良い。
【0033】
また、熱交換プレート20には、金属板19と接合する接合部21の中心位置にビス29を挿通する孔23が設けられる。ビス29は、この孔23に対して衣服内側から外側に向かって挿入され、金属板19の衣服内側の面に設けられた螺子孔と螺合し、熱交換プレート20と金属板19とを互いに接合させた状態に固定する。ただし、これに限らず、熱交換プレート20と金属板19とは、接着剤などによって互いに接着されるものであっても構わない。
【0034】
断熱パッド30は、熱交換プレート20の周縁部を保持し、空気調和ユニット1を衣服100に装着するための部材である。断熱パッド30は、熱交換プレート20の周縁部を保持できるように、熱交換プレート20と略同一の形状を有している。例えば、断熱パッド30は、熱交換プレート20と同様に概略逆T字状に形成される。ただし、熱交換プレート20が概略逆T字状とは異なる形状(例えば、台形や三角形など)である場合、断熱パッド30は、熱交換プレート20の形状に適合した形状となる。
【0035】
断熱パッド30は、例えばシリコン樹脂によって形成される。シリコン樹脂は、柔軟性に優れ、断熱性を有するので好適である。断熱パッド30は、衣服外側に対応する背面側が覆われており、その背面側に金属板19を熱交換プレート20の接合部21に接合させるための孔31が形成されている。この孔31は、保持部材18の外形サイズと略同一サイズの孔である。そのため、この孔31を介して、保持部材18に固定される金属板19を断熱パッド30に保持される熱交換プレート20の接合部21に接合させることができる。また、断熱パッド30の背面側には、上部と下部の3箇所の位置に固定パッド40に設けられている係合突起42と係合する筒状の固定部32が設けられている。
【0036】
一方、断熱パッド30の前面側(衣服内側)は、図1に示すように熱交換プレート20を露出させるように開放されており、その周縁部に熱交換プレート20の周縁部を保持する保持部33が設けられている。つまり、断熱パッド30は、熱交換プレート20の背面側と前面側の周縁部とを覆う状態で熱交換プレート20を保持するのである。断熱パッド30は、熱交換プレート20の衣服外側に対応する背面側を覆うことにより、熱交換プレート20による吸熱作用などが着衣者の身体に向けて良好に生じ、熱交換ロスを防ぐことができる。
【0037】
固定パッド40は、例えば樹脂製のパッドであり、衣服100の外側から衣服100の内側に配置される固定パッド40に対して固定されるパッドである。固定パッド40は、例えば断熱パッド30と略同一の形状として形成される。固定パッド40にはファンカバー11の外形よりも若干大きいサイズの孔41が形成されており、ファンカバー11は、この孔41を通して固定パッド40から衣服外側に突出した状態に取り付けられる。また、固定パッド40の衣服内側の面には、断熱パッド30の固定部32に対応する位置に上述した係合突起42が設けられている。例えば、固定パッド40は、係合突起42が断熱パッド30の固定部32に嵌入することにより、断熱パッド30に固定される。このとき、衣服100は、断熱パッド30と固定パッド40との間に挟まされた状態に配置される。これにより、空気調和ユニット1は、図2に示すように衣服100の後身頃の生地101に装着される。尚、係合突起42は、固定部32の筒状の孔に嵌め込まれた状態で係合状態となる構造であるため、装着が簡単であるだけでなく、簡単に取り外すことも可能である。
【0038】
図4は、衣服100に装着された空気調和ユニット1の断面構造を示す図である。空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17に直流電流が供給され、ファン14が駆動されることにより、衣服100を着用した着衣者の身体200を冷却又は加熱する。ペルチェ素子17に直流電流が供給されると、ペルチェ素子17は、着衣者の身体200に対向する一方の面に吸熱作用又は発熱作用を生じさせる。この吸熱作用又は発熱作用は、金属板19に熱伝導される。金属板19の熱容量は、熱交換プレート20の熱容量よりも小さい。そのため、ペルチェ素子17は、電流消費量を増加させることなく、金属板19を効率的に冷却又は加熱することができる。
【0039】
ペルチェ素子17の吸熱作用又は発熱作用によって金属板19が降温又は昇温すると、その熱は接合部21を介して熱交換プレート20に伝わる。その結果、熱交換プレート20の温度が下降又は上昇し、着衣者の身体200を直接的又は間接的に冷却又は加熱することができる。つまり、ペルチェ素子17は、金属板19を介して熱交換プレート20を冷却又は加熱することができるのである。特に、熱交換プレート20は、上述のように比較的熱伝導率の高い金属を使用して形成されるため、金属板19から伝わる熱が比較的効率よく熱交換プレート20の全体に行き渡るようになっている。それ故、空気調和ユニット1は、1つのペルチェ素子17で着衣者の背の比較的広い範囲を効率的に冷却又は加熱することが可能である。
【0040】
また、ペルチェ素子17は、上述のように、着衣者の身体200と対向しない他方の面に、上記とは反対の作用を生じさせる。例えば、着衣者の身体200を冷却するときには、ペルチェ素子17の衣服外側に対向する面に発熱作用が生じる。この熱は、ヒートシンク15によって吸熱される。また、ファン14が駆動されると、図4に示すようにファンカバー11に設けられた吸気窓12から矢印F1で示すように外部の空気がファンカバー11内に進入する。この空気がヒートシンク15の熱を奪い、暖気となって排気窓13からファンカバー11の外側へ排気される。
【0041】
また、着衣者の身体200を加熱するときには、ペルチェ素子17の衣服外側に対向する面に吸熱作用が生じる。この熱も、ヒートシンク15によって吸熱される。そしてファン14によってファンカバー11内に進入する空気がヒートシンク15の熱を奪い、冷気となって排気窓13からファンカバー11の外側へ排気される。
【0042】
空気調和ユニット1は、上記のようにして着衣者の身体200を冷却又は加熱する。特に、夏場に冷房目的で空気調和ユニット1を衣服100に装着すると、身体200の皮膚温度は約33℃であるのに対し、金属製の熱交換プレート20は皮膚温度よりも低い温度であることが多い。そのため、着衣時には、身体200が熱交換プレート20に振れることにより、一定の涼感を着衣者に与えることができる。ただし、着衣時に得られる涼感は一時的なものであり、ペルチェ素子17が駆動されていない場合には、熱交換プレート20は、身体200の皮膚温度と同じ温度まで次第に上昇していくことになる。
【0043】
一方、着衣後に直ぐにペルチェ素子17を駆動すると、熱交換プレート20が温度上方し始める前にペルチェ素子17は、熱交換プレート20を冷却し始める。そのため、熱交換プレート20の温度上方を抑えることができる。つまり、夏の冷房目的で使用するときには、熱交換プレート20の温度上昇を抑えるようにペルチェ素子17が熱交換プレート20の熱を吸熱すれば良い。したがって、上述した空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17の消費電力量を増加させることなく、着衣時から着衣者に涼感を与えることが可能であり、しかもその涼感を長時間継続させることができるという利点がある。
【0044】
上記のような空気調和ユニット1を装着する衣服100は、夏服であっても冬服であっても良いが、着衣者が最も外側に着用する衣服であることが好ましい。また、空気調和ユニット1を装着する衣服100には、予めファンカバー11や係合突起42を貫通させるための孔を形成しておくことが好ましい。図5は、そのような衣服100の一例を示す図である。例えば、衣服100の後身頃の生地101には、ファンカバー11を挿通させるための孔102と、係合突起42を貫通させるための孔103とを予め形成しておくことが好ましい。更に、衣服100には、図5において斜線で示すように、空気調和ユニット1を装着する部分に、生地101の破損や衣服100の型くずれを防止するために補強用の当て布などを用いた補強部材110を配置しておくことがより好ましい。この補強部材110は、図1に示すように、断熱パッド30と固定パッド40との間に配置されることになる。衣服100に対して補強部材110を設けることにより、空気調和ユニット1の装着によって負荷がかかる孔102,103の周縁の生地101が破損することを防ぐことができ、衣服100を長い期間に亘って使用することができる。また、衣服100を着用したときの型くずれを防止することもできる。尚、補強部材110は、空気調和ユニット1と略同形状とすることが好ましいが、孔102,103の周縁部だけを補強する目的であれば、孔102,103の周縁部だけに配置するようにしても良い。
【0045】
また、上記のような空気調和ユニット1は、固定パッド40の係合突起42を断熱パッド30の固定部32から取り外すことにより、衣服100から簡単に取り外すことができる。そのため、空気調和ユニット1を取り外した状態で衣服100の洗濯やクリーニングを行うことが可能である。また、1つの空気調和ユニット1を異なる衣服100に装着して利用することも可能である。
【0046】
次に、図6は、空気調和ユニット1の制御機構を示すブロック図である。上述した空気調和ユニット1は、通電の必要な部品として、ペルチェ素子17と、ファン14とを備えている。そのため、空気調和ユニット1は、その制御機構として、コントローラ5と、モバイルバッテリー6とを備えている。モバイルバッテリー6は、例えば充電式のバッテリーであり、コントローラ5に対して電力を供給する。コントローラ5は、モバイルバッテリー6から供給される電力を空気調和ユニット1へ供給することにより、ペルチェ素子17及びファン14を駆動する。このコントローラ5は、ペルチェ素子17に供給する直流電流の極性を切り替えることにより、冷房と暖房とを切り替えることが可能である。ただし、冷房及び暖房のいずれであっても、ファン14を駆動する方向(回転方向)は変わらない。このようなコントローラ5及びモバイルバッテリー6は、例えば衣服100に設けられるポケット(図示省略)などに収容された状態で携行される。
【0047】
以上のように、本実施形態の空気調和ユニット1は、ペルチェ素子17と、ペルチェ素子17の一方の面に接合する金属板19と、その金属板19よりも面積が大きく、金属板19に接合した状態で衣服100の内側に配置される金属製の熱交換プレート20とを備える構成である。このような構成によれば、ペルチェ素子17は、熱交換プレート20よりも熱容量が小さい金属板19に対して吸熱作用又は加熱作用を及ぼし、金属板19を介して熱容量の大きな熱交換プレート20を冷却又は加熱し、着衣者の身体200を冷房又は暖房することができる。そのため、ペルチェ素子17に供給する直流電流を増加させることなく、効率的に着衣者の身体200を冷房又は暖房することが可能であり、1つのペルチェ素子でも十分な快適性を提供することができる。
【0048】
これに対し、金属板19を設けることなく、ペルチェ素子17に対して面積の大きな熱交換プレート20を直接接合させてしまうと、ペルチェ素子17が冷却又は加熱しようとする熱交換プレート20の熱容量が大きいため、必然的にペルチェ素子17に供給すべき直流電流が増加し、消費電力が大きくなってしまうことから、使用可能時間が短くなってしまうという問題がある。このような問題は、上述のように、ペルチェ素子17と熱交換プレート20との間に金属板19を介在させることによって解決され、長時間に亘って空気調和ユニット1を稼働させることが可能となり、着用者に快適な一日を過ごさせることができるのである。
【0049】
また、本実施形態における熱交換プレート20は、着衣者の肩胛骨の間から腰に至る部分(背の中央部分)に配置されるため、1つのペルチェ素子17で着衣者の背の広い範囲を冷房又は暖房することができるのである。
【0050】
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態において説明した内容のものに限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0051】
例えば、上記実施形態では、冷房及び暖房を切り替えることが可能な空気調和ユニット1について説明したが、これに限られるものではない。例えば、空気調和ユニット1は、冷房専用ユニットであっても良いし、暖房専用ユニットであっても良い。
【0052】
また上記実施形態では、衣服100の後身頃の生地101に空気調和ユニット1を配置する例を説明した。しかし、空気調和ユニット1を取り付ける位置は、必ずしも後身頃の生地101には限られない。
【符号の説明】
【0053】
1…空気調和ユニット、5…コントローラ、6…モバイルバッテリー、11…ファンカバー、14…ファン、15…ヒートシンク、17…ペルチェ素子、19…金属板、20…熱交換プレート、30…断熱パッド、40…固定パッド、100…衣服、110…補強部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6