【解決手段】表面に複数の貫通孔b、pを有する防音用金属板2と、無機繊維マット3と、表面に複数の貫通孔を有する遮熱金属板4とをこの順番で積層した吸音遮熱カバー1であって、前記防音用金属板2に設けた各貫通孔b、pの開孔面積が0.01〜7.1mm
前記無機繊維マットが、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維およびロックウール繊維から選ばれる一種以上の無機繊維を含む請求項1または請求項2に記載の吸音遮熱カバー。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来提案されてきた自動車エンジン用防音カバーでは、益々厳しくなる規制水準に対し必ずしも十分な騒音抑制効果は得られ難い。
【0006】
このような状況下、防音仕様として、例えば、エンジンのほぼ全体、すなわち、エンジン壁面・上面(ボンネット)側・下面(アンダーボディー)側のほぼ全面に防音材を施行し、音源となるエンジン全体を防音材で覆い車外への騒音漏洩を抑制すると同時にその吸音効果によりエンジンルーム内の騒音レベルを低減させる、(ニア)エンジンカプセル化による対応が考えられる。
【0007】
しかしながら、ダウンサイジングを施した最近の車両のエンジンルーム内は各部品が高度に集積され、スペースが狭いために、上記カプセル化を行う場合においても防音材に用意された厚さは10〜20mm程度と極く薄い一方で、防音材による吸音および遮音効果により騒音を低減しようとした場合、特に1kHz以下の比較的低周波数側の騒音は防音材の厚さ及び質量に依存するので、得られる効果は極く限定的なものとなる。
【0008】
防音材が十分な吸音性能を発揮できない場合、エンジンルーム内には大きな反響音が響き、遮音性能も十分でない場合には、減衰しきれないエネルギーがエンジンルームの壁面・上面・下面を振動させ、さらに大きな騒音が発生することもある。
【0009】
一方、エンジンルーム内においてはエンジンの排気側壁面及び上面(燃焼排ガスが通過するエキゾースト・マニフォールド近傍)等が200〜230℃程度の温度に達し、係る高温の排熱によってエンジン本体の外部に設けられる樹脂部品や電装部品が損傷する場合が考えられる。
【0010】
このような状況下、本発明は、自動車エンジン用防音カバーとして使用し得る、十分な防音性能を有するとともに耐熱性および遮熱性に優れた新規な吸音遮熱カバーおよび係る吸音遮熱カバーを有するエンジンユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明者等は、エンジンルーム内の騒音を吸収する防音用金属板をエンジン上に設けた上で、係る防音用金属板上に上記高温の排熱によるエンジン部品の損傷を抑制するためにさらに遮熱金属板を設けることを着想した。
しかしながら、本発明者等がさらに検討したところ、エンジン上に防音用金属板および遮熱金属板を順次載置した場合には、エンジンルーム内で反響する音も遮熱金属板によって反射される結果、防音用金属板による防音効果(吸音効果)が著しく低減し、また、必ずしも十分な遮熱性を発揮し得ないことが判明した。
【0012】
このような状況下、本発明者等がさらに検討したところ、表面に複数の貫通孔を有する防音用金属板と、無機繊維マットと、表面に複数の貫通孔を有する遮熱金属板とをこの順番で積層した吸音遮熱カバーであって、前記防音用金属板に設けた各貫通孔の開孔面積が0.01〜7.1mm
2である吸音遮熱カバーにより上記技術課題を解決し得ることを見出し、本知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)表面に複数の貫通孔を有する防音用金属板と、無機繊維マットと、表面に複数の貫通孔を有する遮熱金属板とをこの順番で積層した吸音遮熱カバーであって、
前記防音用金属板に設けた各貫通孔の開孔面積が0.01〜7.1mm
2である
ことを特徴とする吸音遮熱カバー、
(2)前記防音用金属板の開孔率が0.01〜20%である上記(1)に記載の吸音遮熱カバー、
(3)前記無機繊維マットが、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維およびロックウール繊維から選ばれる一種以上の無機繊維を含む上記(1)または(2)に記載の吸音遮熱カバー、
(4)前記防音用金属板または遮熱金属板の厚さが0.1〜1.0mmである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の吸音遮熱カバー、
(5)厚さが0.7〜22mmである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の吸音遮熱カバー、
(6)前記吸音遮熱カバーが自動車エンジン用吸音遮熱カバーである上記(1)〜(5)のいずれかに記載の吸音遮熱カバー、および
(7)自動車用エンジンと当該自動車用エンジンの少なくとも一部を覆う上記(6)に記載の吸音遮熱カバーとを有することを特徴とするエンジンユニット
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被覆対象物上に、吸音遮熱カバーとして防音用金属板と無機繊維マットと遮熱金属板とを順次積層したものを配置するとともに、上記防音用金属板および遮熱金属板の表面に複数の貫通孔を設けることにより、内部(被覆対象物)側から発せられた音が無機繊維マットで吸収され易くなるとともに、外部側から侵入する音も無機繊維マットで吸収され易くなる。また、吸音遮熱カバーとして防音用金属板と無機繊維マットと遮熱金属板とを順次積層した耐熱性に優れたものを採用するとともに、上記防音用金属板に設けた各貫通孔の開口面積を一定範囲内に抑制することにより、内部(被覆対象物)側から無機繊維マットへの対流による熱の伝導を抑制し優れた遮熱性を発揮することができる。
このため、本発明によれば、十分な防音性能を有するとともに耐熱性および優れた新規な吸音遮熱カバーおよび係る吸音遮熱カバーを有するエンジンユニットを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
先ず、本発明に係る吸音遮熱カバーについて説明する。
本発明に係る吸音遮熱カバーは、表面に複数の貫通孔を有する防音用金属板と、無機繊維マットと、表面に複数の貫通孔を有する遮熱金属板とをこの順番で積層した吸音遮熱カバーであって、
前記防音用金属板に設けた各貫通孔の開孔面積が0.01〜7.1mm
2であることを特徴とするものである。
【0017】
図1は、本発明に係る吸音遮熱カバー1の構成を説明するための形態例の部分断面図であって、
図1に示すように、本発明に係る吸音遮熱カバー1は、防音用金属板2と、無機繊維マット3と、遮熱金属板4とをこの順番で積層したものである。
【0018】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、防音用金属板としては、耐熱性を有する金属板からなるものを挙げることができる。
上記金属板の構成材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン、ニッケル、金、銀、銅、鉄、モリブデン等から選ばれる一種以上を挙げることができ、軽量化が求められる場合はアルミニウムが好ましく、耐腐食性が求められる場合はステンレス鋼が好ましい。
【0019】
防音用金属板の厚みは、特に制限されないが、所望の耐熱性(遮熱性)を発揮する上では、通常、0.1〜1.0mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがより好ましく、0.3〜0.4mmであることがさらに好ましい。
【0020】
防音用金属板の形状も特に制限されないが、本発明に係る吸音遮熱カバーは、設置時に防音用金属板が被覆対象物に面するように配置されるものであることから、防音被覆金属板の形状も被覆対象物に対応した形状を有することが好ましい。
【0021】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、防音用金属板はその表面に(
図1に示す例において符号pで示す)複数の貫通孔を有している。
【0022】
図2は、
図1に対応する本発明に係る吸音遮熱カバーの機能を説明するための形態例の部分断面図である。
図2に例示するように、本発明に係る吸音遮熱カバー1は、防音用金属板2が表面に複数の貫通孔pを有することにより、被覆対象物側から発せられた音s1を吸音遮熱カバー1の内部に取り込みやすくなり、貫通孔pを介して吸音遮熱カバー1内部に伝搬した音のエネルギーが、吸音遮熱カバー1内部に設けた無機繊維マット3によってマットを構成する繊維の振動エネルギーに変換され、吸音することにより、防音性能を好適に発揮することができる。
【0023】
防音用金属板に設けられる貫通孔の孔形状は特に制限されず、上面視したときに、開孔部の形状が、例えば、円形状、楕円形状または多角形状であることが好ましく、円形状であることがより好ましい。
防音用金属板に設けられる貫通孔の上面視したときの開孔部形状が円形状である場合、その直径は、0.1〜3.0mmであることが好ましく、0.1 〜2.0mmであることがより好ましく、0.1〜0.5mmであることがさらに好ましい。
防音用金属板に設けられる貫通孔の全体形状も特に制限されず、円柱状、多角柱状または円錐台状であることが好ましく、円柱状であることがより好ましい。
【0024】
上記防音用金属板に設けた貫通孔の孔径は、防音用金属板表面の10個の貫通孔をマイクロスコープ((株)キーエンス、VHX−500)で観察し、測定した各貫通孔の周囲長に相当する周囲長を有する円の直径を求めたときの算術平均値を意味する。
【0025】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、上記防音用金属板に設ける各貫通孔の開孔面積は、0.01〜7.1mm
2であることが好ましく、0.01〜3.2mm
2であることがより好ましく、0.01〜0.2mm
2であることがさらに好ましい。
【0026】
本出願において、防音用金属板に設けた貫通孔の開孔面積は、防音用金属板の主表面を、マイクロスコープで観察して全ての貫通孔の周囲長を各々測定し、測定した各周囲長に相当する周囲長を有する円を求めた上で、係る円の面積を個々に算出し、その算術平均値を求めることによって得た値を意味する。
【0027】
図2に例示するように、本発明に係る吸音遮熱カバー1においては、防音用金属板2に設けた貫通孔pの開孔面積が上記範囲内にあることにより、エンジン等の被覆対象物から発せられた熱hが無機繊維マット3側に対流により伝熱し難くなり、このために優れた遮熱性を発揮することができる。
【0028】
また、本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、上記防音用金属板の開孔率は、0.01〜20%であることが好ましく、0.01〜10%であることがより好ましく、0.01〜1%であることがさらに好ましい。
【0029】
本出願において、上記防音用金属板の開孔率は、上述した方法により求めた全ての貫通孔の開孔面積および防音用金属板の片側主表面積から、下記式
開孔率(%)={防音用金属板に設けた各貫通孔の開口面積の総和(mm
2)/防音用金属板の片側主表面積(mm
2)}×100
により算出される値を意味する。
【0030】
防音用金属板の開孔率が上記範囲内にあることによっても、エンジン等の被覆対象物から発せられた熱を無機繊維マット側に対流により伝熱し難くなり、このために優れた遮熱性を容易に発揮することができる。
【0031】
防音用金属板表面に設ける複数の貫通孔の配置についても特に限定されず、防音用金属板全体にできる限り均等に配置することが好ましい。
【0032】
本発明に係る吸音遮熱カバーは、防音用金属板上に(
図1や
図2に示す例において符号3で示す)無機繊維マットを積層してなるものである。
【0033】
無機繊維マットとしては、無機繊維を含有する繊維集成体または無機繊維含有フェルトを挙げることができる。
【0034】
無機繊維マットを形成する無機繊維としては、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維およびロックウール繊維から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0035】
上記無機繊維としては、繊維径が、0.1〜4μmであるものが好ましく、0.1〜2μmであるものがより好ましく、0.1〜1μmであるものがさらに好ましい。
上記繊維径を有する無機繊維は、例えば遠心法または火炎法で製造することができる。
【0036】
なお、本出願書類において、無機繊維の繊維径は、マイクロスコープにより測定した20本の無機繊維断面の最大径を各々測定したときの算術平均値を意味する。
【0037】
上記無機繊維マットが上記繊維径を有する無機繊維を構成繊維として含むことにより、所望の耐熱性、難燃性をより容易に発揮することができる。
【0038】
本出願書類において、無機繊維を含む繊維集成体とは、無機繊維を含む一種以上の繊維をニードルパンチなどの手段で一体化すること等によって互いに絡み合ってシート状またはボード状に形成したものを意味する。また、本出願書類において、無機繊維を含むフェルトとは、無機繊維を含む一種以上の繊維をニードルパンチ等の手段で一体化したものを意味する。
【0039】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、無機繊維マットは、無機繊維以外に有機繊維を含有するものであってもよく、有機繊維としては、ポリエチレンテレフタレートフェルト等のポリエステル繊維フェルト、ナイロン繊維フェルト、ポリエチレン繊維フェルト、ポリプロピレン繊維フェルト、アクリル繊維フェルト、アラミド繊維フェルト、シリカーアルミナセラミックスファイバーフェルト、シリカ繊維フェルト、綿、羊毛、木毛、クズ繊維等から選ばれる一種以上を挙げることができる。
【0040】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、無機繊維マットは、嵩密度が、0.001〜1.2g/cm
3であるものが好ましく、0.01〜0.5g/cm
3であるものがより好ましく、0.025〜0.1g/cm
3であるものがさらに好ましい。
上記嵩密度は、無機繊維マットの構造および厚み等に応じて、所望の吸音性を有するものから適宜選択すればよい。
【0041】
本出願書類において、無機繊維マットの嵩密度は、測定試料となる無機繊維マットの重量をノギス等で測定した無機繊維マットの体積で除すことにより算出した値を意味する。
【0042】
上記嵩密度を達成する上で、無機繊維マットの目付は、10〜1000g/m
2であることが好ましく、15〜500g/m
2であることがより好ましく、25〜250g/m
2であることがさらに好ましい。
無機繊維マットの目付が上記範囲内にあることにより、軽量で所望形状を有する吸音遮熱カバーを容易に提供することができる。
【0043】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいては、無機繊維マットの嵩密度が上記範囲内にあることにより、所望の耐熱性および吸音性を容易に発揮することができる。
【0044】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、無機繊維マットの厚みは、0.5〜20mmであることが好ましく、1.5〜15mmであることがより好ましく、3〜10mmであることがさらに好ましい。
【0045】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、無機繊維マットは、無機繊維を含む繊維集成体やフェルトを複数積層してなるものであってもよく、この場合、複数総の厚みが上記範囲内にあればよい。
【0046】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、無機繊維マットの厚みが上記範囲内にあることにより、柔軟性に優れるとともに吸音遮熱カバーの薄型化(コンパクト化)を図りつつ十分な吸音性を容易に発揮することができる。
【0047】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、無機繊維マットは、通気抵抗が、0.001〜10kPa・s/mであるものが好ましく、0.05〜5kPa・s/mであるものがより好ましく、0.1〜1kPa・s/mであるものがさらに好ましい。
【0048】
本出願書類において、無機繊維マットの通気抵抗は、無機繊維マットの主表面に対して、垂直方向に0.4cc/cm
2/sで空気を通過させ、入口側および出口側の気圧を各々流れ抵抗測定器(製品名:KES−F8−AP1、カトーテック(株)製)で測定したときにおける両者の差(差圧)を流速で除した値を意味する。
【0049】
本発明に係る吸音遮熱カバーは、上記通気抵抗を有する無機繊維マットを有するものであることにより、外部から音が通過する際の流れ抵抗を容易に制御して所望周波数の音圧を容易に低減することができる。
【0050】
本発明に係る吸音遮熱カバーは、無機繊維マットを有することによって所望の耐熱性を発揮するとともに、防音用金属板の表面に設けられた貫通孔および後述する遮熱金属板の表面に設けられた貫通孔を介して取り込んだ音のエネルギーを無機繊維マットの構成繊維を振動させるエネルギーに変換し、吸音することにより、防音性能を好適に発揮することができる。
【0051】
本発明に係る吸音遮熱カバーは、上記無機繊維マット上に(
図1や
図2に示す例において符号4で示す)遮熱金属板を積層してなるものである。
【0052】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、遮熱金属板としては、耐熱性を有する金属板からなるものを挙げることができる。
上記金属板の構成材料は、上述した防音用金属板と同様の材料を挙げることができ、具体的には、アルミニウム、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン、ニッケル、金、銀、銅、鉄、モリブデン等から選ばれる一種以上が挙げられ、軽量化が求められる場合はアルミニウムが好ましく、耐腐食性が求められる場合はステンレス鋼が好ましい。
【0053】
遮熱金属板の厚みも、特に制限されないが、所望の耐熱性(遮熱性)を発揮する上では、通常、0.1〜1.0mmであることが好ましく、0.1〜0.6mmであることがより好ましく、0.3〜0.4mmであることがさらに好ましい。
【0054】
遮熱金属板の形状も特に制限されないが、通常、上述した防音用金属板が、被覆対象物に対応した形状を有することから、遮熱金属板としても、防音用金属板に対応した形状を有するものであることが好ましい。
遮熱金属板が防音用金属板に対応した形状を有することにより、遮熱金属板および防音用金属板を一定距離離間させた状態で容易に保持することができ、吸音遮熱カバー全体の防音性能および耐熱性を容易に均一化することができる。
【0055】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、遮熱金属板はその表面に(
図1や
図2に示す例において符号bで示す)複数の貫通孔を有している。
【0056】
図2に例示するように、本発明に係る吸音遮熱カバー1においては、遮熱金属板4が表面に複数の貫通孔bを有することにより、例えばエンジンルームの壁面等で反射した音s2が遮熱金属板4の上面側から下面側に通過する際に、吸音遮熱カバー1の内部に取り込みやすくなり、貫通孔bを介して吸音遮熱カバー1内部に伝搬した音のエネルギーが、吸音遮熱カバー1内部に設けた無機繊維マット3によってマットを構成する繊維の振動エネルギーに変換され、吸音されることにより、防音性能を好適に発揮することができる。
【0057】
遮熱金属板に設けられる貫通孔の孔形状は特に制限されず、上面視したときに、開孔部形状が、例えば、円形状、楕円形状または多角形状であることが好ましく、円形状であることがより好ましい。
遮熱金属板に設けられる貫通孔の全体形状も特に制限されず、円柱状、多角柱状または円錐台状であることが好ましい。
【0058】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、上記遮熱金属板に設けた貫通孔が上面視したときに円形状である場合、貫通孔の孔径は、0.1〜3.0mmであることが好ましく、0.1〜2.0mmであることがより好ましく、0.1〜0.5mmであることがさらに好ましい。
【0059】
上記遮熱金属板に設けた貫通孔の孔径は、遮熱金属板の表面の10個の貫通孔をマイクロスコープ((株)キーエンス、VHX−500)で観察し、測定した各貫通孔の周囲長に相当する周囲長を有する円の直径を求めたときの算術平均値を意味する。
【0060】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、上記遮熱金属板に設ける各貫通孔の開孔面積は、0.01〜7.1mm
2であることが好ましく、0.01〜3.2mm
2であることがより好ましく、0.01〜0.2mm
2であることがさらに好ましい。
【0061】
本出願において、遮熱金属板に設けた貫通孔の開孔面積は、遮熱金属板の主表面を、マイクロスコープで観察して全ての貫通孔の周囲長を各々測定し、測定した各周囲長に相当する周囲長を有する円を求めた上で、係る円の面積を個々に算出し、その算術平均値を求めることによって得た値を意味する。
【0062】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいては、遮熱金属板に設けた貫通孔の開孔面積が上記範囲内にあることにより、例えばエンジンルームの壁面等で反射した音が遮熱金属板の上面側から下面側に通過する際に、吸音遮熱カバーの内部に容易に取り込むことができる。
【0063】
また、本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、上記遮熱金属板の開孔率は、0.01〜20%であることが好ましく、0.01〜10%であることがより好ましく、0.01〜1%であることがさらに好ましい。
【0064】
本出願において、上記遮熱金属板の開孔率は、上述した方法により求めた全ての貫通孔の開孔面積および遮熱金属板の片側主表面積から、下記式
開孔率(%)={遮熱金属板に設けた各貫通孔の開口面積の総和(mm
2)/遮熱金属板の片側主表面積(mm
2)}×100
により算出される値を意味する。
【0065】
遮熱金属板表面に設ける複数の貫通孔の配置についても特に限定されず、遮熱金属板全体にできる限り均等に配置することが好ましい。
【0066】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、防音用金属板と遮熱金属板との離間距離は、0.5〜20mmであることが好ましく、1.5〜15mmであることがより好ましく、3〜10mmであることがさらに好ましい。
【0067】
本発明に係る吸音遮熱カバーにおいて、防音用金属板、無機繊維マットおよび遮熱金属板を固定する方法は、特に制限されず、従来公知の方法により固定することができる。例えば、遮熱金属板および防音用金属板の対応する位置に各々設けられた挿通孔に挿通された支柱部材を少なくも有する連結具により、上記遮熱金属板と防音用金属板とを離間しつつ保持することが好ましい。
【0068】
本発明に係る吸音遮熱カバーは、厚さが0.7〜22mmであることが好ましく、1.7〜16.2mmであることがより好ましく、3.6〜10.8mmであることがさらに好ましい。
本発明に係る吸音遮熱カバーは、厚さが薄くても十分な吸音性および遮熱性を発揮することができる。
【0069】
本発明に係る吸音遮熱カバーは、防音用金属板が被覆対象物に対向するように配置して使用される。上記被覆対象物としては、例えば自動車エンジンを挙げることができる。
本発明に係る吸音遮熱カバーは、例えば、従来の自動車エンジン用防音カバーに代わる自動車エンジン用吸音遮熱カバーとして好適に使用することができる。
本発明に係る吸音遮熱カバーを自動車エンジン用吸音遮熱カバーとして使用する場合、例えば、エンジンの排気側壁面および上面の少なくとも一部に配置することにより、好適な吸音特性を容易に発揮することができる。
【0070】
本発明によれば、被覆対象物上に、吸音遮熱カバーとして防音用金属板と無機繊維マットと遮熱金属板とを順次積層したものを載置するとともに、上記防音用金属板および遮熱金属板の表面に複数の貫通孔を設けることにより、内部(被覆対象物)側から発せられた音が無機繊維マットで吸収され易くなるとともに、外部側から侵入する音も無機繊維マットで吸収され易くなる。また、吸音遮熱カバーとして防音用金属板と無機繊維マットと遮熱金属板とを順次積層した耐熱性に優れたものを採用するとともに、上記防音用金属板に設けた各貫通孔の開口面積を一定範囲内に抑制することにより、内部(被覆対象物)側から無機繊維マットへの対流による熱の伝導を抑制し優れた遮熱性を発揮することができる。
このため、本発明によれば、十分な防音性能を有するとともに耐熱性および遮熱性に優れた新規な吸音遮熱カバーを提供することができる。
【0071】
次に、本発明に係るエンジンユニットについて説明する。
本発明に係るエンジンユニットは、自動車用エンジンと当該自動車用エンジンの少なくとも一部を覆う本発明に係る吸音遮熱カバーとを有することを特徴とするものである。
本発明に係るエンジンユニットにおいて、上記吸音遮熱カバーは、防音用金属板が自動車用エンジンの少なくとも一部に対向するように配置される。
【0072】
本発明に係るエンジンユニットにおいて、本発明に係る吸音遮熱カバーの詳細は上述したとおりである。
また、本発明に係るエンジンユニットにおいて、自動車用エンジンやエンジンルームは、公知のものを適宜採用することができる。
【0073】
本発明に係るエンジンユニットにおいて、エンジンユニット設置時における遮熱金属板とエンジンルームとの間の距離(遮熱金属板およびエンジンルームの壁面間に形成される隙間)は、0.1mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、10mm以上がさらに好ましい。
【0074】
本発明に係るエンジンユニットは、本発明に係る吸音遮熱カバーを有するものであることにより、自動車エンジンから発生して防音用金属板を通過する音だけではなく、エンジンルームの壁面で反射し遮熱金属板を通過する音についても、無機繊維マットによって効率的に振動へ変換し、エネルギーを減衰することで、エンジンルーム内の音圧を好適に低減することができる。また、本発明に係るエンジンユニットは、吸音遮熱カバーとして防音用金属板と無機繊維マットと遮熱金属板とを順次積層した耐熱性に優れたものを採用するとともに、上記防音用金属板に設けた各貫通孔の開口面積を一定範囲内に抑制することにより、内部(被覆対象物)側から無機繊維マットへの対流による熱の伝導を抑制し優れた遮熱性を発揮することができる。
このため、本発明によれば、耐熱性を有し、厚さが薄くても十分な防音性能を有する吸音遮熱カバーを有する新規なエンジンユニットを提供することができる。
【0075】
次に、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【0076】
(実施例1)
(1)防音用金属板として、縦0.5m、横0.5m(主表面積0.25m
2)になるように切り出したアルミニウム板(厚さ0.3mm)に孔加工を施した金属板(孔径1.0mm、開口面積0.8mm
2、開孔率0.90%)と、(2)無機繊維マットとして、縦0.5m、横0.5m(主表面積0.25m
2)になるように切り出したガラスマット(嵩密度0.1g/cm
3、厚さ6mm)と、(3)遮熱用金属板として、縦0.5m、横0.5m(主表面積0.25m
2)になるように切り出したアルミニウム板(厚さ0.3mm)に孔加工を施した金属板(孔径0.5mm、開口面積0.2mm
2、開孔率0.20%)とを、この順番で順次配置して、厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得た。
【0077】
(吸音性評価)
実施例1で得られた吸音遮熱カバーを測定サンプルとし、日本音響エンジニアリング(株)製残響室Ab−Lossを用いて吸音性を評価した。
図3に垂直断面で示すように、防音用金属板2と、無機繊維マット3と、遮熱金属板4とをこの順番で積層した上記吸音遮熱カバー1を、上記防音用金属板2が上部側に露出するように床面f上に長さ10mmのスペーサーsを介して配置し(背後空気層Aを10mm設けた状態とし)、上記吸音遮熱カバー1の両側面に各々L字状のアルミ製アングルLでシールした状態において、吸音率(残響室法吸音率)を測定した。
吸音率は、防音用金属板の上部側から音Nを入射させたときに400Hz〜1000Hzの範囲におけるISO354(2003)に基づくインパルス応答積分法を用いて測定した。結果を
図4および表1に示す。
【0078】
(遮熱性評価)
実施例1で得られた吸音遮熱カバーを測定サンプルとし、以下に示す方法により遮熱性を評価した。
図5に垂直断面で示すように、防音用金属板2と、無機繊維マット3と、遮熱金属板4とをこの順番で積層した上記吸音遮熱カバー1を、上記防音用金属板2が上部側に露出するように床面f上に長さ10mmのスペーサーsを介して配置し(背後空気層Aを10mm設けた状態とし)、上記吸音遮熱カバー1の両側面に熱源として各々ヒーターHを配置した。
室温(20℃)条件下、上記ヒーターH.Hにより吸音遮熱カバー1を700℃で30分間加熱したときに、吸音遮熱カバー1の上面から20cm上部における温度を測定したところ、54℃であった。結果を表1に示す。
【0079】
(実施例2)
実施例1において、(1)防音用金属板の孔径を0.5mm、開口面積を0.2mm
2、開孔率を0.06%に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得、実施例1と同様にして吸音性を評価した。結果を
図4に示す。
【0080】
(実施例3)
実施例1において、(1)防音用金属板の孔径を2.0mm、開口面積を3.1mm
2、開孔率を0.23%に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得、実施例1と同様にして吸音性を評価した。結果を
図4に示す。
【0081】
(実施例4)
実施例1において、(1)防音用金属板の孔径を3.0mm、開口面積を7.1mm
2、開孔率を8.00%に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得、実施例1と同様にして吸音性および遮熱性を評価した。結果を
図4および表1に示す。
【0082】
(実施例5)
実施例4において、(1)遮熱用金属板の孔径を1.0mm、開口面積を0.8mm
2、開孔率を0.90%に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得、実施例1と同様にして遮熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例6)
実施例4において、(1)遮熱用金属板の孔径を2.0mm、開口面積を3.1mm
2、開孔率を3.60%に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得、実施例1と同様にして遮熱性を評価した。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例7)
実施例4において、(1)遮熱用金属板の孔径を3.0mm、開口面積を7.1mm
2、開孔率を8.00%に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ6.6mmの吸音遮熱カバーを得、実施例1と同様にして遮熱性を評価した。
【0085】
(比較例1)
金属板として、縦0.5m、横0.5m(主表面積0.25m
2)になるように切り出したアルミニウム板(厚さ0.3mm)を得、吸音遮熱カバーに代えて上記金属板を用いた以外は実施例1と同様にして吸音性および遮熱性を評価した。結果を
図4および表1に示す。
【0086】
(比較例2)
無機繊維マットとして、縦0.5m、横0.5m(主表面積0.25m
2)になるように切り出したガラスマット(嵩密度0.1g/cm
3、厚さ6mm)を得、吸音遮熱カバーに代えて上記無機繊維マットを用いた以外は実施例1と同様にして吸音性および遮熱性を評価した。結果を
図4および表1に示す。
【0088】
図4および表1より、実施例1〜実施例7で得られた吸音遮熱カバーは、とともに、
図4より、低周波領域である400〜1000Hz程度の周波数帯における音圧の抑制効果に優れるとともに、耐熱性および遮熱性に優れたものであることが分かる。
一方、
図4および表1より、比較例1および比較例2で各々得られた金属板および無機繊維マットは、いずれも、低周波領域である400〜1000Hz程度の周波数帯における音圧を十分に抑制し得ず、また、十分な遮熱性を有さないものであることが分かる。