【解決手段】本発明によるエンジンシステム1は、エンジン2と、シリンダヘッド54とピストン24とで形成される主燃焼室26と、この主燃焼室に連通する連通孔66が形成された副室60と、主燃焼室内に燃料を噴射するインジェクタ28と、副室内に設けられ、副室内の混合気に点火する点火プラグ62と、制御装置50とを備え、制御装置は、エンジンの所定の高負荷領域(第2負荷領域)では、所定の低負荷領域(第1負荷領域)よりも副室内の混合気をリーンな空燃比(第1空燃比)にする。
上記制御装置は、上記第2負荷領域において、上記エンジンの負荷が高いときは、低いときよりも、上記インジェクタの燃料噴射タイミングを遅角させるよう上記インジェクタを制御するよう構成されている、請求項1に記載のエンジンシステム。
上記制御装置は、上記第1負荷領域では吸気行程のみで燃料を噴射させ、上記第2負荷領域では吸気行程と圧縮行程とに分割して燃料を噴射させるよう上記インジェクタを制御するよう構成されている、請求項1または請求項2に記載のエンジンシステム。
上記制御装置は、上記第2負荷領域において、上記エンジンの負荷が高いときは、低いときよりも、上記インジェクタによる圧縮行程での燃料噴射タイミングを遅角させるよう上記インジェクタを制御するよう構成されている、請求項3に記載のエンジンシステム。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態によるエンジンシステムについて説明する。
【0018】
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態によるエンジンシステムの概略構成を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるエンジンシステムの概略構成図である。
【0019】
図1に示すように、エンジンシステム1は、吸気と燃料との混合気を燃焼させて車両の動力を発生する多気筒(本実施形態では4気筒)のエンジン(内燃機関)2と、このエンジン2に吸気を導入するための吸気通路4と、エンジン2からの排気ガスを排出するための排気通路6と、を備える。なお、本発明は4気筒のエンジンに限らず、6気筒など他のエンジンにも適用可能である。
【0020】
エンジン2の各気筒には、吸気通路4に接続され、後述するシリンダヘッド54(
図2参照)に形成された吸気ポート8と、この吸気ポート8に設けられた吸気バルブ10と、排気通路6に接続され、シリンダヘッド54に形成された排気ポート12と、この排気ポート12に設けられた排気バルブ14と、が設けられている。
吸気バルブ10には、吸気バルブ10のリフト量および開閉タイミングを電動で可変に制御する可変バルブリフト機構(Sequential Valve Timing)16が設けられている。
排気バルブ14にも同様に、排気バルブ14のリフト量および開閉タイミングを可変にする可変バルブリフト機構18が設けられている。
【0021】
エンジン2は、クランクシャフト20によって気筒(シリンダ)22内を往復動するピストン24を備え、このピストン24と、シリンダヘッド54とにより、燃焼室(主燃焼室)26が形成される(
図2参照)。
この主燃焼室26には、主燃焼室26内に燃焼を噴射するインジェクタ28と、後述するプレチャンバープラグ30と、主点火プラグ32とが、それぞれ、主燃焼室26内に臨むように設けられている。
【0022】
吸気通路4の上流側には、エアクリーナ34と、ドライバのアクセル開度に基づく要求燃料噴射量および後述するECU50からの命令信号に基づき、電動で作動し、通過する吸気量を調整するスロットルバルブ(吸気絞り弁)36と、エンジン2に供給する吸気を一時的に蓄えるサージタンク38とが設けられている。
排気通路6の下流側には、排気ガスを浄化する三元触媒40が設けられている。
また、排気通路6には、三元触媒40を通過した排気ガスの一部を吸気通路4に環流するEGR通路42が接続されている。このEGR通路42には、EGRクーラ44と、EGR通路42を流れる排気ガスの流量を制御するEGRバルブ46とが設けられている。
【0023】
また、エンジンシステム1は、エンジン2を制御するECU(Electronic Control Unit)50を有する。このECU50は、本発明における「エンジンの制御装置」に相当し、本実施形態では、後述する各種センサ(図示せず)の出力信号に基づいて、エンジン2の作動(燃料噴射タイミング、点火タイミング、空燃比など)を制御する。具体的には、以下で説明するインジェクタ28の燃料噴射時期や点火プラグ30、32の点火時期などの制御は、ECU50内の回路で実行される。
【0024】
次に、
図2および
図3により、エンジン2の主燃焼室26まわりの概略構成を説明する。
図2は、本実施形態によるエンジンの気筒に形成された主燃焼室まわりの概略構成を示す断面図であり、
図3は、本実施形態によるエンジンの気筒に形成された主燃焼室まわりの概略構成をシリンダ軸線方向の上方から見た平面図である。なお、
図2および
図3では、多気筒のうち1つの気筒の主燃焼室まわりの概略構成を示す。他の気筒も同様に構成される。
【0025】
まず、
図2に示すように、エンジン2は、シリンダブロック52およびシリンダヘッド54を備えている。
シリンダブロック52には、気筒(シリンダ)22が形成されている。この気筒22内に設けられたピストン24には、クランクシャフト20に連結されたコンロッド21が接続され、これにより、ピストン24が気筒22内を往復動するようになっている。
【0026】
次に、
図2および
図3に示すように、シリンダヘッド54には、各気筒22毎に、各々独立した2つの吸気ポート8(8a、8b)、および、2つの排気ポート12が形成されている。これら吸気ポート8a、8bおよび排気ポート12には、
図2および
図3では図示を省略するが、上述した吸気バルブ10及び排気バルブ14が、それぞれ、主燃焼室26側の開口を開閉するように設けられている。
【0027】
2つの吸気ポート8a、8bのうち、一方の吸気ポート8aに接続された吸気通路4aには、吸気通路4aの開度を調整するスワールコントロールバルブ56が設けられている。主燃焼室26には、このスワールコントロールバルブ56の開度に応じた強さのスワール流が生じる。このスワール流の強さが大きいほど、主燃焼室26内で周回する混合気のスワール流は、主燃焼室26およびピストン24の外周側に流れやすくなる。
【0028】
次に、
図2に示すように、シリンダヘッド54には、インジェクタ28、プレチャンバープラグ30および主点火プラグ32が取り付けられている。
図2および
図3に示すように、インジェクタ28は、シリンダ軸線上に設けられ、主燃焼室26を上方から見たとき、主燃焼室26の中央部に臨むよう設けられている。
【0029】
また、プレチャンバープラグ30は、インジェクタ28に対して、吸気ポート8側に設けられており、
図2に示すように、吸気ポート8側から斜め下方に延びて、主燃焼室26に臨むよう配置されている。
本実施形態では、
図3に示すように、主燃焼室26に臨むプレチャンバープラグ30の先端部(
図3で符号30で示す破線の部分)は、平面視で、2つの吸気ポート8a、8bの中間の位置に設けられている。なお、プレチャンバープラグ30の先端部には、後述するように、副室60および副点火プラグ62が設けられている。
【0030】
本実施形態では、このように、副室60および副点火プラグ62が吸気ポート8側に設けて、副室60が排気ガスの熱を受け、副室60内の温度が過度に上昇することを抑制するようにしている。これにより、副室60内での燃焼伝搬が早くなり、それに伴い、連通孔66から主燃焼室26に噴出する火炎の勢いが強くなってしまうことが抑制される。
【0031】
また、本実施形態では、
図2および
図3で示すように、プレチャンバープラグ30の先端部は、主燃焼室26の外周側の領域(少なくとも吸排気ポート8、12の開口部より外周側の領域)より内方の中央領域に設けられている。
【0032】
また、主点火プラグ32は、インジェクタ28に対して、排気ポート12側に設けられており、
図2に示すように、主点火プラグ32は、排気ポート12側から斜め下方に延びて、主燃焼室26に臨むよう配置されている。
本実施形態では、
図3に示すように、主燃焼室26に臨む主点火プラグ32の先端部は、平面視で、2つの排気ポート12の中間の位置に設けられている。また、なお、
図3に破線で示す符号32の部分は、主点火プラグ32の先端部の中心電極32aおよび側方電極(アース)32b(
図2参照)の位置を示している。
【0033】
次に、
図4により、プレチャンバープラグ30を説明する。
図4は、本実施形態によるプレチャンバープラグを示す図であり、
図4(a)はプレチャンバープラグの副室および副点火プラグを側方から見た部分断面図であり、
図4(b)は、プレチャンバープラグの副室をその軸線方向の下方から見た平面図である。
まず、
図4(a)に示すように、プレチャンバープラグ30は、その先端部に、副室60が形成され、この副室60内に副点火プラグ62が設けられている。
副点火プラグ62は、主点火プラグ32と同様に、中心電極62aおよび側方電極(アース)62bを有している。
【0034】
副室60は、主燃焼室26内に設けられているが、主燃焼室26とは独立して副室60内の混合気を燃焼可能なものである。より具体的には、副室60内の混合気を副点火プラグ62で点火して、副室60内に火炎伝搬を生じさせる副燃焼室として機能するものである。
【0035】
次に、
図4(a)および
図4(b)に示すように、副室60は、所定の径および厚み(本実施形態では半径5mm、厚み1mm)を有する半球状の副室形成部64により形成されている。この副室形成部64には、主燃焼室26に連通する複数の連通孔(噴孔)66が形成されている。
【0036】
これらの連通孔66は、第1に、主燃焼室26内の混合気を副室60内に流入させるために設けられ、第2に、その流入した混合気を副点火プラグ62により点火し、その副室60内で発生した燃焼伝搬を、火炎として主燃焼室26に噴出/放射させ、それにより、主燃焼室26内の混合気の燃焼伝搬を早めるために設けられている。
混合気は、基本的に、EGRバルブ46が閉じられている場合は、吸気ポート8からの新気とインジェクタ28から噴射される燃料との混合気であり、EGRバルブ46が開かれている場合は、吸気ポート8からの新気とEGR通路42からの排気ガスとインジェクタ28から噴射される燃料との混合気である。
【0037】
本実施形態においては、これらの連通孔66は、
図4(b)に示す下方から見た平面視において、副室形成部64の頂点Aを通る軸線まわりに120°間隔に3つ設けられ、それぞれの直径はφ1.2mmである。また、連通孔66は、いずれも、
図4(a)に示すように、側面視で、副室形成部64の頂点Aから45°の位置に45°の方向に延びるよう形成され、これにより、連通孔66からは、その軸線に対して45°の角度で火炎が噴出するようになっている。
【0038】
なお、後述するように、連通孔66の数、径および位置は、これらの数値に限らず、たとえば、下方から見た平面視において、180°間隔に2つ設け、直径はφ1.0mmであってもよい。このように、連通孔66の孔数を少なくし、および/または、直径を小さくすると、連通孔66から主燃焼室26に噴出する火炎を強くすることが出来る。また、このように噴出する火炎を強くすると、その分、主燃焼室26内の燃焼伝搬が早くなるので、主燃焼室26内の混合気を、よりリーンな混合気にして、エンジン2の熱効率を高めることができる。
【0039】
また、連通孔66の数および径は、後述するエンジン制御マップにおいてエンジン回転数のしきい値を設定する際に、予め、変更可能である。言い換えると、連通孔66の数および径を変更すると、エンジン制御マップにおけるエンジン回転数の適切なしきい値を変更することができる。
【0040】
次に、
図5により、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置の制御ブロックを説明する。
図5は、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置の制御ブロック図である。
図5に示すように、エンジンシステム1を制御するECU50(
図1参照)は、図示しないマイクロコンピュータ、メモリ、I/F回路などを有し、イグニッション信号SW1、および、各種センサSW2〜SW10からの出力信号に基づいて、後述するように、エンジン2の燃料噴射タイミング、点火タイミング、空燃比、スワール流の強さなどを制御する。なお、SW2〜SW10の各センサは、公知のものであり、
図1、
図2などにおいて図示を省略している。
【0041】
具体的には、ECU50には、エンジン始動の指令を意味するイグニッション出力信号(SW1)、吸気通路4に設けられたエアフローセンサSW2からの吸気量に関する出力信号、吸気通路4に設けられた吸気温度センサSW3からの吸気温度に関する出力信号、吸気通路4に設けられた吸気圧センサSW4からの吸気圧に関する出力信号、シリンダヘッド54に設けられた冷却水温度センサSW5からの冷却水温度に関する出力信号、クランク軸20に設けられたクランク角センサSW6からのクランク角に関する出力信号、アクセル開度センサSW7からのアクセルペダルの開度に関する出力信号、吸気カムシャフト(図示せず)に設けられた吸気カム角センサSW8からの吸気側のカム角に関する出力信号、排気カムシャフト(図示せず)に設けられた排気カム角センサSW9からの排気側のカム角に関する出力信号、および、シリンダヘッド54に設けられた燃圧センサSW10からの主燃焼室26内の燃焼圧力に関する出力信号がそれぞれ入力される。
【0042】
ここで、アクセルペダルの開度に関する出力信号は、ドライバがアクセルペダルを踏み込んだ量に相当する数値を出力する信号であり、この信号は、ECU50において、ドライバの要求トルクを決定すると共に、そのドライバの要求トルクに基づいてエンジン2のエンジン負荷(目標出力トルク/目標エンジントルク)、および、エンジンの各作動領域(
図6の制御マップに示す、「エンジン低中負荷領域」、「エンジン低回転高負荷領域」、および、「所定回転数以上におけるエンジン高負荷領域」)を決定するために使用される。
【0043】
ECU50は、これらの出力信号に基づいて、インジェクタ28による燃料噴射タイミングを制御する。
また、ECU50は、主点火プラグ32およびプレチャンバープラグ30内の副点火プラグ(PCP点火プラグ)30による点火タイミングを制御する。
また、ECU50は、主に、吸気側の可変バルブリフト機構(吸気電動S−VT)16、および、スロットルバルブ36を制御することにより、主燃焼室26への吸入空気量を制御すると共に、インジェクタ28による燃料噴射タイミングおよび燃料噴射量を制御することより、主燃焼室26内の空燃比を制御する。本実施形態では、主に、燃料噴射タイミングを制御することにより空燃比を制御する。なお、この空燃比の制御に伴い、たとえば、NOx低減のため、排気側の可変バルブリフト機構(排気電動S−VT)18、および、EGRバルブ46も制御される。
さらに、ECU50は、スワールコントロールバルブ56によりスワール流の強さを制御する。
【0044】
次に、
図6により、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置で用いられる、エンジン負荷とエンジン回転数に応じて設定されるエンジン制御マップを説明する。
図6は、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置によるエンジン負荷とエンジン回転数に応じて設定されるエンジン制御マップである。
このエンジン制御マップは、ECU50のメモリ内に記憶され、ECU50は、この制御マップに基づいてエンジン2を制御する。
ここで、
図6において、縦軸のエンジン負荷は目標エンジントルクであり、横軸はエンジン回転数である。ECU50は、アクセル開度センサSW7からの出力信号に基づいて算出された目標エンジントルク、および、クランク角センサSW6からの出力信号に基づいて算出されたエンジン2の回転数(rpm)に基づき、この制御マップを参照しながらエンジン2を制御する。
以下、このECU50が参照する制御マップにおけるエンジン制御の設定内容およびECU50によるエンジン2の制御方法を具体的に説明する。
【0045】
まず、
図6に示すように、本実施形態のエンジン制御マップでは、エンジン始動時には、主点火プラグ32のみで点火するように設定している。
より具体的には、ECU50にイグニッション出力信号SW1が入力され、エンジン始動時と判定されると、ECU50が、主点火プラグ32により主燃焼室26内の混合気に点火するよう設定されている。エンジン始動時の主燃焼室26内の混合気は、理論空燃比(λ=1)である。このとき、プレチャンバープラグ30の副点火プラグ62では、副室60内を点火しない。
【0046】
次に、
図6に示すように、本実施形態のエンジン制御マップでは、所定のエンジン負荷T1未満である低〜中負荷のエンジン負荷領域(以下、「低中負荷領域」という)において、主燃焼室26内の混合気を理論空燃比(λ=1)と設定すると共に、プレチャンバープラグ30の副室60に流入する混合気の空燃比を理論空燃比と設定している。また、この領域では、プレチャンバープラグ30の副点火プラグ62のみの点火と設定している。
【0047】
ECU50は、このような制御マップに基づき、エンジン2の作動時において、アクセル開度センサSW7の出力信号により決定される目標エンジントルクにより、エンジン2がこの低中負荷領域で作動しているか否かを判定する(
図11参照)。
この領域であると判定された場合、ECU50は、本実施形態では、主に、インジェクタ28による燃料噴射タイミングを制御することにより、点火時に、主燃焼室26内およびプレチャンバープラグ30の副室60内の空燃比が理論空燃比となるよう制御する。また、ECU50は、副点火プラグ62により副室60内の混合気に点火するタイミングを制御する。具体的な燃料噴射タイミングおよび点火タイミングは後述する。
【0048】
次に、
図6に示すように、所定のエンジン負荷T1以上である高負荷のエンジン負荷領域、かつ、所定のエンジン回転数Re1未満の回転数領域(以下、「高負荷低回転領域」という)においては、主点火プラグ32のみの点火と設定している。本実施形態では、この領域での主燃焼室26内の混合気を、理論空燃比(λ=1)と設定している。この領域では、プレチャンバープラグ30の副点火プラグ62では、副室60内で点火しない。
【0049】
ECU50は、このような制御マップに基づき、エンジン2の作動時において、アクセル開度センサSW7の出力信号により決定される目標エンジントルク、および、クランク角センサSW6により得られたエンジン2の回転数(rpm)により、エンジン2がこの高負荷高回転領域で作動しているか否かを判定する(
図11参照)。
この領域であると判定された場合、ECU50は、本実施形態では、主に、インジェクタ28による燃料噴射タイミングを制御することにより、点火時に、主燃焼室26内の空燃比が理論空燃比となるよう制御する。また、ECU50は、主点火プラグ32により主燃焼室26内の混合気に点火するタイミングを制御する。具体的な燃料噴射タイミングおよび点火タイミングは後述する。
【0050】
次に、
図6に示すように、所定のエンジン負荷T1以上である高負荷のエンジン負荷領域、かつ、所定のエンジン回転数Re1以上の高回転数領域(以下、「高負荷高回転領域」という)においては、主燃焼室26の混合気を、理論空燃比よりリーンな混合気(λ>1)と設定すると共に、プレチャンバープラグ30の副室60に流入する混合気の空燃比を、理論空燃比よりリーンな空燃比(λ>1)と設定している。また、この高負荷高回転領域では、プレチャンバープラグ30の副点火プラグ62のみで点火するよう設定している。
【0051】
ECU50は、このような制御マップに基づき、エンジン2の作動時において、アクセル開度センサSW7の出力信号により決定される目標エンジントルクにより、エンジン2がこの高負荷高回転領域で作動しているか否かを判定する(
図11参照)。
この領域であると判定された場合、ECU50は、本実施形態では、主に、インジェクタ28による燃料噴射タイミングを制御することにより、主燃焼室26内およびプレチャンバープラグ30の副室60内の空燃比が、理論空燃比よりリーンな空燃比となるよう制御する。また、ECU50は、副点火プラグ62により副室60内の混合気に点火するタイミングを制御する。具体的な燃料噴射タイミングおよび点火タイミングは後述する。
【0052】
ここで、本実施形態では、
図6に示す制御マップにおいて、低中負荷領域と高負荷低回転領域との境界、および、低中負荷領域と高負荷高回転領域との境界となる所定のエンジン負荷(目標エンジントルク)T1は、最大のエンジン負荷を100%としたときの70%(T1=70%)に設定している。なお、変形例として、エンジンの仕様等に応じて、70%以外の数値を設定してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、
図6に示す制御マップにおいて、高負荷低回転領域と高負荷高回転領域との境界となる所定のエンジン回転数Re1を3000rpmに設定している。なお、変形例として、この境界となるエンジン回転数を、上述した副室60の連通孔66の数および径などに応じて、たとえば、1000rpmに設定してもよい。
【0054】
次に、
図7〜
図10により、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置により制御される燃料噴射タイミングおよび点火タイミングを説明する。
図7〜
図10は、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置により制御される燃料噴射タイミングおよび点火タイミングのタイムチャートの一例であり、
図7は、
図6に示すエンジン制御マップにおける低中負荷領域における基本的なタイムチャートの例を示す図であり、
図8は、
図6に示すエンジン制御マップにおける高負荷低回転領域における基本的なタイムチャートの一例を示す図であり、
図9は、
図6に示すエンジン制御マップにおける高負荷高回転領域におけるタイムチャートの一例を示す図であり、
図10は、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置により制御される燃料噴射タイミングおよび点火タイミングのタイムチャートであり、
図6に示すエンジン制御マップにおける高負荷高回転領域においてエンジン負荷に応じた燃料噴射タイミングの変更を説明するためのタイムチャートの一例を示す図である。
【0055】
まず、
図7に示すように、本実施形態では、低中負荷領域において、吸気行程の中期(クランク角=−300°〜−240°)の所定の時期で一括燃料噴射を行う。なお、このような燃料噴射時期は、吸気行程中期に限らず、吸気行程初期の所定のタイミングから吸気行程中期の所定のタイミングまでの間や、吸気行程中期の所定のタイミングから吸気行程後期の所定のタイミングまでの間など、吸気行程において燃料と空気をミキシングして、その混合気を理論空燃比とし、圧縮行程において、副室60内に理論空燃比の混合気を流入させることができるような時期であればよい。
【0056】
また、
図7に示すように、この低中負荷領域では、プレチャンバープラグ30の副点火プラグ62による副室60内の混合気への点火(以下、「PCP点火」という)を、圧縮上死点より前の圧縮行程後期に行う。
【0057】
このように本実施形態では、基本的に吸気行程の中期で一括燃料噴射を行うことにより、吸気行程の後期において燃料と空気のミキシングを行い、混合気を均質にすることで、気筒22内に、λ=1の理論空燃比を有する混合気を形成し、その後、圧縮行程において、プレチャンバープラグ30の副室60内に、理論空燃比となっている混合気を流入させるようにしている。そして、設定した点火時期になると、副室60内に流入した混合気を副点火プラグ62により点火し、その副室60内で発生した火炎伝搬を、火炎として主燃焼室26に噴出/放射させ、それにより、主燃焼室26内の混合気の火炎伝搬を早めるようにしている。
【0058】
次に、
図8に示すように、本実施形態では、高負荷低回転領域において、吸気行程中期の所定の時期で燃料を噴射し、さらに、点火時期直前の少なくとも圧縮行程後半の所定の時期で燃料を噴射する。本実施形態では、この燃料噴射時期は、点火時期直前の圧縮行程の後半の範囲内に設定している。本実施形態における、このような燃料噴射時期は、点火時期直前の上死点付近におけるプリイグニッションが生じることが想定されるクランク角である。
【0059】
また、
図8に示すように、この高負荷低回転領域では、主点火プラグ32による主燃焼室26内の混合気への点火(以下、「主プラグ点火」という)を、圧縮上死点前後に行う。
【0060】
このように本実施形態では、圧縮行程の後期の後半の時期、すなわち、点火時期の直前のプリイグニッションの発生が想定されるクランク角において燃料を噴射するようにして、その燃料噴射により主燃焼室26の温度上昇を抑制して、プリイグニッションが発生するのを抑制するようにしている。
また、本実施形態では、点火時期直前の圧縮行程で分割噴射しているので、圧縮行程で噴射された燃料と主燃焼室26内の空気がミキシングされる時間が確保しにくくなり、その分、副室60に流入する混合気がリーンになりすぎて失火しやすいので、主点火プラグ32で点火することにより、主燃焼室26内の混合気を確実に燃焼させるようにしている。
【0061】
次に、
図9に示すように、本実施形態では、高負荷高回転領域において、吸気行程中期の所定の時期で燃料を噴射し、さらに、圧縮行程中期(−120°〜−60°)の所定の時期で燃料を噴射する。なお、このような燃料噴射時期は、吸気行程中期および/または圧縮行程中期に限らず、点火時に、副室60内に燃焼可能な程度のリーンの空燃比の混合気が流入するような時期であればよい。
【0062】
また、
図9に示すように、この高負荷高回転領域では、プレチャンバープラグ30の副点火プラグ62による副室60内の混合気への点火を、圧縮行程の後期に行う。
【0063】
このように本実施形態では、分割噴射を行い、全噴射量の一部の燃料を圧縮行程で主燃焼室26に噴射するので、吸気行程における燃料噴射量を減らした分、点火時期に至るまでの間にミキシングされる主燃焼室26内の混合気をリーンにすることができ、そのようなリーンとなっている混合気を、副室60に流入させることができる。この場合、圧縮行程で噴射した燃料は、ミキシング時間が短い分、生成される混合気が少なくなり、副室60に入る混合気が少なくなる。これによっても、副室60内の混合気をリーン(λ>1)にすることができる。そして、副点火プラグ62により、副室60内の混合気に点火すると、混合気が理論空燃比である場合に対して混合気がリーンである分、副室60内の燃焼した混合気の火炎伝搬が遅くなる。そして、この副室60内の火炎伝搬が遅くなった分、副室60の連通孔66から噴出される火炎の勢いも弱まる。このようにして、本実施形態では、高負荷高回転領域では、主燃焼室26内における燃焼伝搬を遅くするようにしている。
【0064】
言い換えると、この高負荷高回転領域においては、副室60内の混合気をリーンにすることによって、副室60から勢いよく火炎が噴出することを抑制している。これにより、本実施形態では、主燃焼室26における燃焼伝搬が異常に早くなり、主燃焼室26の空間(気柱)に高周波数の気柱共鳴(1.5kHz、3〜4kHz、6〜7kHz付近など)が励振されるような異常燃焼を抑制するようにしている。
【0065】
次に、
図10に示すように、高負荷高回転領域では、エンジン負荷(目標エンジントルク)に応じて燃料噴射タイミングを変更するようにしている。より具体的には、本実施形態では、吸気行程における燃料噴射タイミングは変更しないが、圧縮行程における燃料噴射タイミングを、エンジン負荷が高くなるほど遅角するようにしている。より具体的には、本実施形態では、エンジン負荷が、低中負荷領域との境界であるエンジン負荷T1=70%のとき、
図10においてF1で示すような燃料噴射タイミングで燃料を噴射し、その後、エンジン負荷が高くなるほど、
図10においてF2で示すような燃料噴射タイミングまで遅角する。このように本実施形態では、高負荷高回転領域において、エンジン負荷が高くなるほど、燃料噴射タイミングを、圧縮行程中期から圧縮行程後期へと遅角するようにしている。
【0066】
また、この高負荷高回転領域では、副室60内の混合気への点火の時期を、上述した燃料噴射タイミングのエンジン負荷に応じた遅角と同様に、エンジン負荷が高くなるほど、圧縮上死点前後の時期に向けて遅角する。
【0067】
また、この高負荷高回転領域では、主燃焼室26内のスワール流が強くなるよう、
図3に示すスワールコントロールバルブ56を制御する。
本実施形態では、主燃焼室26内のスワール流が強いほど、混合気が主燃焼室26およびピストン24の外周側に流れ、主燃焼室26およびピストン24の中央領域には流れにくくなることを利用している(後述する
図13参照)。ここで、本実施形態では、プレチャンバープラグ30の副室60は、上述したように、平面視で、主燃焼室26の中央領域に設けられている(
図3参照)。従って、本実施形態では、主燃焼室26内のスワール流が強くなるようにすることで、混合気が中央領域には流れにくくなり、その分、中央領域に設けた副室60内に流入する混合気をリーンにするようにしている。
【0068】
次に、
図11により、
図6に示すエンジン制御マップに基づくECU50によるエンジン2の制御内容を説明する。
図11は、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置によるエンジン制御マップに基づくエンジンの制御内容を示すフローチャートである。なお、
図11において、Sは各ステップを示す。
【0069】
まず、
図11に示すように、ECU50は、S1において、アクセル開度センサSW7からの出力信号、および、クランク角センサSW6の出力信号を読み込む。
次に、S2において、アクセル開度センサSW7からの出力信号に基づいて、目標エンジントルクT1を算出し、次に、S3において、クランク角センサSW6からの出力信号に基づいて、エンジン回転数を算出する。
次に、S4において、S2で算出された目標エンジントルクが所定値未満か否かを判定する。本実施形態では、このS4における目標エンジントルクの所定値は、上述したように、70%に設定されている。
【0070】
S4において、目標エンジントルクが所定値(70%)未満であった場合(S4でYES)は、上述した低中負荷領域であると判定し、S5に進み、上述したように、λ=1の混合気でPCP点火を行う。
一方、S4において、目標エンジントルクが所定値(70%)以上であった場合(S4でNO)は、S6に進み、S3で算出されたエンジン回転数が所定値未満か否かを判定する。本実施形態では、このS5におけるエンジン回転数の所定値は、上述したように、3000rpmに設定されている。
【0071】
S6において、目標エンジントルクが所定値(70%)未満であった場合(S6でYES)は、上述した高負荷低回転領域であると判定し、S7に進み、上述したように主点火プラグ32により主燃焼室26の混合気に点火する。
一方、S6において、目標エンジントルクが所定値(70%)以上であった場合(S6でNO)は、上述した高負荷高回転領域であると判定し、S8に進み、上述したように、λ>1の混合気でPCP点火を行う。
【0072】
次に、本発明の実施形態によるエンジンの制御装置の主な作用効果を説明する。
まず、本発明の実施形態によるエンジンシステム1のエンジン2の制御装置(ECU)50は、エンジン2の高負荷高回転領域(第2負荷領域)では、低中負荷領域(第1負荷領域)における副室60内の混合気の空燃比(第1空燃比)よりも副室60内の混合気をリーンにする(第2空燃比)ので、エンジン負荷(目標エンジントルク/ドライバ要求トルク)が高いとき、副室60内で点火した混合気の火炎伝搬が遅くなり、この火炎伝搬が遅くなった分、副室60の連通孔66から噴出される火炎の勢いも弱まる。従って、副室60の連通孔66から噴出した火炎によって主燃焼室26における燃焼伝搬を遅くすることができ、これにより、主燃焼室26での異常燃焼を抑制することができる。
たとえば、
図12に示すように、低中負荷領域において、理論空燃比(λ=1)の混合気を燃焼させるときの主燃焼室26内の熱発生率の立ち上がりに比べ、リーン(λ>1)である高負荷高回転領域では、燃焼伝搬を遅くすることにより、熱発生率の立ち上がりが遅く、かつ、熱発生率の最大値が低くなるので、主燃焼室26での異常燃焼を抑制することができるのである。
【0073】
また、本実施形態によれば、エンジンシステム1のエンジン2の制御装置50は、高負荷高回転領域において、エンジン負荷が高いときは、低いときよりも、インジェクタ28の燃料噴射タイミングを遅角させるので、その遅角した分、インジェクタ28により主燃焼室26内に噴射された燃料と主燃焼室26内の空気がミキシングされる時間が短くなり、これにより、エンジン負荷が高いとき、副室60内に連通孔66を介して流入する混合気がリーンにすることができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、エンジンシステム1のエンジン2の制御装置50は、高負荷高回転領域における吸気行程中での燃料噴射量を、分割噴射した分、低中負荷領域における吸気行程中での燃料噴射量よりも少なくすることができ、これにより、エンジン負荷が高いとき、圧縮行程において副室60内に連通孔66を介して流入する混合気をリーンにしやすい。従って、高負荷高回転領域において、副室60内の混合気を効果的にリーンにすることができる。
【0075】
また、本実施形態によれば、エンジン2は、主燃焼室26内にスワールを発生させるスワールコントロールバルブ56を有し、プレチャンバープラグ30の副室60は、平面視で、主燃焼室26の中央領域に設けられ、エンジンシステム1のエンジン2の制御装置50は、エンジン2の高負荷高回転領域では、低中負荷領域よりも、主燃焼室26内のスワール流が強くなるよう、スワールコントロールバルブ56を制御するので、高負荷高回転領域では、低中負荷領域よりも、主燃焼室26の中央領域に設けた副室60内に流入する混合気を効果的にリーンにすることができる。すなわち、
図13に示すように、主燃焼室26内のスワール流が強いほど、混合気が主燃焼室26およびビストン24の外周側に流れ、主燃焼室26およびビストン24の中央領域には流れにくくなるので、その流れにくくなった分、主燃焼室26の中央領域に設けた副室60内に流入する混合気を効果的にリーンにすることができるのである。