【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の一形態は、(1)活性層、前記活性層の上に設けられた第1コンタクト層および前記第1コンタクト層の上面に接触する第1電極を有する複数の利得領域と、波長調整層、前記波長調整層の上に設けられた第2コンタクト層、および前記第2コンタクト層の上面に接触する第2電極を有する複数の波長調整領域と、を具備し、光の伝搬方向において、前記利得領域と前記波長調整領域とは交互に配置され、前記光の伝搬する導波路を形成し、前記光の伝搬方向における前記第1コンタクト層と前記第2コンタクト層との距離は、前記第1コンタクト層と前記活性層との距離、および前記第2コンタクト層と前記波長調整層との距離の4倍以上、20μm以下である波長可変レーザである。第1コンタクト層と第2コンタクト層との距離を小さくすることで第1コンタクト層および第2コンタクト層の長さを大きくし、高い利得を得ることができる。第1コンタクト層と第2コンタクト層との距離を前記第1コンタクト層と前記活性層との距離、および前記第2コンタクト層と前記波長調整層との距離の4倍以上とすることで、第1コンタクト層および第2コンタクト層から隣の領域へと電流が流れることを抑制することができる。したがってリークを抑制することができる。第1コンタクト層と第2コンタクト層との距離を20μm以下とすることで、波長の調整が可能である。
(2)前記第1コンタクト層と前記活性層との距離、および前記第2コンタクト層と前記波長調整層との距離は2μm以下でもよい。これによりリークを抑制することができる。
(3)前記光の伝搬方向における前記第1コンタクト層と前記第2コンタクト層との距離は、前記光の伝搬方向における前記第1コンタクト層の長さおよび前記第2コンタクト層の長さの半分以下でもよい。これにより高い利得を得ることができ、また波長の調整が可能である。
(4)前記光の伝搬方向における前記第1コンタクト層の長さおよび前記第2コンタクト層の長さは30μm以上でもよい。これにより高い利得を得ることができ、また波長の調整が可能である。
(5)前記光の伝搬方向における前記第1コンタクト層の長さおよび前記第2コンタクト層の長さと、前記利得領域と前記波長調整領域との並ぶ周期との比は0.3以上でもよい。これにより高い利得を得ることができ、また波長の調整が可能である。
(6)前記利得領域と前記波長調整領域との並ぶ周期は100μm以下でもよい。これにより高い利得を得ることができ、また波長の調整が可能である。
(7)前記導波路の光出力側の前記光の伝搬方向に沿って設けられる減衰器、変調器および増幅器を具備してもよい。波長可変レーザが集積型のレーザ素子として機能する。
【実施例1】
【0010】
図1Aは実施例1に係る波長可変レーザ100を例示する平面図であり、
図1Bは波長可変レーザ100を例示する断面図である。
図2は利得領域17および波長調整領域18を拡大した断面図である。
【0011】
図1Aおよび
図1Bに示すように、波長可変レーザ100は波長可変光源10、可変光減衰器(VOA:Various Optical Attenuator)12、変調器(MOD:Modulator)14、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)16を備える電界吸収型変調器集積レーザ(EML:Electro−absorption Modulator Laser Diode)である。
図1Aに示すように波長可変光源10、VOA12、MOD14およびSOA16は光導波路11を含み、光導波路11の延伸方向に沿って順に並ぶ。
【0012】
波長可変光源10は複数の利得領域17および波長調整領域18を含む。利得領域17の数および波長調整領域18の数はそれぞれ例えば7つである。複数の利得領域17および複数の波長調整領域18は光の伝搬方向に沿って交互に並ぶ。利得領域17の活性層および波長調整領域18の波長調整層27などが光導波路11を形成する。波長可変光源10のVOA12側の端部には利得領域17が位置し、反対側の端部には波長調整領域18が位置する。波長可変レーザ100の一方の端部に波長調整領域18が位置し、他方の端部にSOA16が位置する。波長可変レーザ100の端部に位置する波長調整領域18の端面には不図示の反射防止膜を設けてもよい。
【0013】
図1Bに示すように、波長可変光源10、VOA12、MOD14およびSOA16において、基板20の下面に電極31が設けられ、基板20の上面に下クラッド層22が積層される。下クラッド層22および上クラッド層28は波長可変光源10、VOA12、MOD14およびSOA16にわたって延伸する。下クラッド層22にはガリウムインジウム砒素リン(GaInAsP)層24が埋め込まれる。VOA12、MOD14およびSOA16にわたって、光導波路11の延伸方向に沿って延伸するGaInAsP層24が設けられている。波長可変光源10には、例えば所定の周期で設けられた複数のGaInAsP層24が設けられている。GaInAsP層24は下クラッド層22とは異なる屈折率を有する。波長可変光源10に配置された複数のGaInAsP層24と下クラッド層22とが光導波路11の延伸方向に沿って並ぶ部分は、回折格子23(コルゲーション)として機能する。
【0014】
波長可変レーザ100の表面は絶縁膜38に覆われる。絶縁膜38の複数の開口部からコンタクト層が露出し、後述のように電極は開口部から露出するコンタクト層に接触する。
【0015】
VOA12において、下クラッド層22の上に吸収層40、上クラッド層28、コンタクト層44および電極50が順に積層されている。電極50はコンタクト層44の上面に接触する。MOD14において、下クラッド層22の上に吸収層40、上クラッド層28、コンタクト層46および電極52が順に積層されている。電極52はコンタクト層46の上面に接触する。吸収層40はVOA12およびMOD14にわたっている。SOA16において、下クラッド層22の上に活性層42、上クラッド層28、コンタクト層48および電極54が順に積層されている。電極54はコンタクト層48の上面に接触する。VOA12、MOD14およびSOA16にわたって1つのGaInAsP層24が延伸する。
【0016】
図1Bおよび
図2に示すように、利得領域17において、下クラッド層22の上に活性層26、上クラッド層28、コンタクト層30(第1コンタクト層)および電極32(第1電極)が順に積層されている。電極32はコンタクト層30の上面に接触する。波長調整領域18において、下クラッド層22の上に波長調整層27、上クラッド層28、コンタクト層34(第2コンタクト層)および電極36(第2電極)が順に積層されている。電極36はコンタクト層34の上面に接触する。波長可変光源10においては、複数のGaInAsP層24が互いに離間している。
【0017】
基板20は例えばn型インジウムリン(InP)で形成された半導体基板である。下クラッド層22は例えばn型InPで形成されている。上クラッド層28は例えばp型InPで形成されている。活性層26は、例えばGaInAsPの井戸層とGaInAsPのバリア層とを有し、PL(Photoluminescence)波長1.527μmのバンドギャップを有する多重歪み量子井戸である。波長調整層27はInPに格子整合し、PL波長1.42μmのバンドギャップを有するGaInAsPで形成される。吸収層40はGaInAsPの井戸層とGaInAsPのバリア層とを有し、PL波長1.476μmのバンドギャップを有する多重歪み量子井戸である。活性層42は、GaInAsPの井戸層とGaInAsPのバリア層を有し、PL波長1.527μmのバンドギャップを有する多重歪み量子井戸である。活性層26と波長調整層27とは隣接する。吸収層40と波長調整層27および活性層42とは隣接する。活性層26、波長調整層27、吸収層40および活性層42は同一の高さに位置し、光導波路11を形成する。
【0018】
コンタクト層30、34、44、46および48は例えばp型GaInAsによって形成されている。絶縁膜38は例えば窒化シリコン(SiN)または酸化シリコン(SiO
2)などの絶縁体で形成されている。電極31は例えば金(Au)などの金属で形成されたn型電極である。電極32、36、50、52および54は例えばAuなどの金属で形成されたp型電極である。
【0019】
図2に示す光の伝搬方向における利得領域17の長さL1、および波長調整領域18の長さL2はそれぞれ例えば40μmである。利得領域17と波長調整領域18との配列の周期Tは80μmである。光の伝搬方向における、利得領域17のコンタクト層30の長さL3、および波長調整領域18のコンタクト層34の長さL4は例えば30μmである。これらのコンタクト層30および34の長さ(コンタクト長)は、光の伝搬方向における電極32および36の長さに等しい。光の伝搬方向におけるコンタクト層30とコンタクト層34との距離D1は例えば10μmである。距離D1は電極32と電極36との間の距離に等しい。電極32の端部および電極36の端部から、利得領域17と波長調整領域18との境界までの距離D2は例えば5μmである。層の積層方向におけるコンタクト層30と活性層26との距離は、コンタクト層34と波長調整層27との距離に等しく、この距離D3は例えば1.6μmなど、2μm以下である。
【0020】
活性層26は利得を有し、電極32からコンタクト層30を通じて電流が注入されると、光を出射する。回折格子23により所定の波長の光が選択される。電極36からコンタクト層34を通じて波長調整層27に電流を注入し、波長調整層27の屈折率を変化させることで、波長を調整する。この結果、波長可変光源10は例えば1532nm以上、1536nm以下の範囲の波長の光を出射する。吸収層40は、電極50および52から電流が注入されることで光を吸収する。活性層42は利得を有し、電極54から電流が注入されると光を増幅する。下クラッド層22および上クラッド層28は光導波路11を上下から挟み、光を光導波路11に閉じ込める。光導波路11を伝搬する光はSOA16の端面から、波長可変レーザ100の外部に出射される。
【0021】
波長可変レーザ100の利得を高めるためには、コンタクト長L3およびL4を大きくし、距離D2を小さくすることが好ましい。つまり、活性層26とコンタクト層30との重なる部分の長さが大きく、波長調整層27とコンタクト層34との重なる部分の長さが大きいほど利得が向上する。
【0022】
その一方で、コンタクト長L3およびL4を大きくすると、コンタクト層30とコンタクト層34との距離D1が小さくなり、利得領域17と波長調整領域18との間でリークが発生する恐れがある。すなわち、利得領域17の電流の一部はコンタクト層30から波長調整領域18に向けて流れ、波長調整領域18の電流の一部はコンタクト層34から利得領域17に向けて流れる。これによりお互いの領域間での電流のリーク、いわゆるクロスリークが発生する可能性がある。
【0023】
実施例1によれば、コンタクト層30とコンタクト層34との距離D1を、コンタクト層30と活性層26との距離およびコンタクト層34と波長調整層27との距離D3の4倍以上とする。距離D3が距離D1に比べて小さくなるため、利得領域17の電流は波長調整領域18に流れる前に、活性層26に流れ込む。また、波長調整領域18の電流は利得領域17に流れる前に、波長調整層27に流れ込む。この結果、利得領域17と波長調整領域18との間の電流のクロスリークを抑制することができる。電極間の距離も距離D3の4倍以上であるため、電極間のショートが抑制される。また、距離D1の下限を距離D3の4倍とすることでコンタクト長を大きくし、高い利得を得ることができる。
【0024】
距離D1を大きくするほどクロスリークを抑制することはできるが、一方で活性領域および波長領域のうち、電流が供給されない領域が広くなる。このため、利得の低下、波長調整可能範囲の低下が生じる恐れがある。したがって距離D1は20μm以下であることが好ましい。また、コンタクト層30と電極32との接触長、およびコンタクト層34と電極36との接触長が減少し、端子抵抗および駆動電圧の上昇が生じる恐れがある。この観点から接触長は最低10μm、可能であれば20μm以上であることが望ましい。これに対して長さL3および長さL4は、製造性確保のために10μm以上などと長いことが望ましい。このため、距離D1は20μm以下であることが有効である。
【0025】
距離D3は例えば2μm以下であり、1.8μm以下、1.6μm以下、1.2μm以下、1.0μm以下などでもよい。距離D3が小さいほど、電極32から注入される電流は活性層26に流れやすく、電極36から注入される電流は波長調整層27に流れやすい。一方、距離D1は距離D3の4倍以上であり、例えば4μm、5μm以上、7μm以上、8μm以上などである。これにより電流が利得領域17と波長調整領域18との間で流れにくくなり、クロスリークを抑制することができる。
【0026】
距離D1を、コンタクト層30および34の長さL3およびL4の半分以下とする。これにより利得領域および波長制御領域の少なくとも2/3以上の領域に電流を供給し、高い利得と広い波長の調整幅を実現することが可能になる。
【0027】
コンタクト長L3およびL4を例えば20μm以下に小さくすると距離D1をより大きくすることができ、クロスリークを抑制することができる。しかし利得が低下してしまう。高い利得を得て、かつ波長を調整するため、コンタクト長L3およびL4は25μm以上であることが好ましく、30μm以上、35μm以上などとしてもよい。
【0028】
コンタクト長L3およびL4と、利得領域17と波長調整領域18との周期Tとの比であるL3/TおよびL4/Tは、例えば0.3以上である。コンタクト長の比率を高めることで高い利得を得て、波長可変レーザ100は例えば1532nm〜1536nmの波長で発振が可能である。
【0029】
周期Tは例えば100μm以下とし、90μm以下、80μm以下などでもよい。これにより高い利得を得ることができ、かつ波長可変レーザ100は例えば1532nm〜1536nmの波長で発振が可能である。一例として周期Tを80μm、コンタクト長L3およびL4を30μmとし、比L3/TおよびL4/Tを0.375とする。利得領域17の数および波長調整領域18の数は7以下でもよいし、7以上でもよい。
【0030】
波長可変レーザ100は、波長可変光源10、VOA12.MOD14およびSOA16を備える集積型のレーザ素子である。波長可変光源10が出射する光の減衰、変調および増幅が可能である。波長可変レーザ100は例えば1532nm〜1536nmの波長で発振が可能であり、波長分割多重通信システムへの応用が可能である。なお、波長可変レーザ100はVOA12、MOD14およびSOA16の少なくとも1つを有さずに、波長可変光源10を有してもよい。
【0031】
以上、本開示の実施例について詳述したが、本開示は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。