【0008】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
本開示の一形態は、(1)光の伝搬方向において利得領域と波長調整領域とが交互に配置され、設けられる導波路を具備し、前記光の伝搬方向における一方の端部に前記波長調整領域が位置する波長可変レーザである。これにより発光効率が改善する。
(2)前記光の伝搬方向に沿って設けられる減衰器、変調器および増幅器を具備してもよい。波長可変レーザが集積型のレーザ素子として機能する。
(3)前記光の伝搬方向における他方の端部に前記増幅器が位置してもよい。増幅器から光が出射される。
(4)前記利得領域と前記波長調整領域との並ぶ周期は100μm以下でもよい。これにより高い利得を得ることができ、また波長の調整が可能である。
(5)前記利得領域は、活性層、前記活性層の上に設けられた第1コンタクト層、および前記第1コンタクト層の上面に接触する第1電極を含み、前記波長調整領域は、波長調整層、前記波長調整層の上に設けられた第2コンタクト層、および前記第2コンタクト層の上面に接触する第2電極を含んでもよい。波長調整層は活性層に比べて光を吸収しにくいため、光の出力が増加する。
【実施例1】
【0010】
図1Aは実施例1に係る波長可変レーザ100を例示する平面図であり、
図1Bは波長可変レーザ100を例示する断面図である。
図2は利得領域17および波長調整領域18を拡大した断面図である。
【0011】
図1Aおよび
図1Bに示すように、波長可変レーザ100は波長可変光源10、可変光減衰器(VOA:Various Optical Attenuator)12、変調器(MOD:Modulator)14、半導体光増幅器(SOA:Semiconductor Optical Amplifier)16を備える電界吸収型変調器集積レーザ(EML:Electro−absorption Modulator Laser Diode)である。
図1Aに示すように波長可変光源10、VOA12、MOD14およびSOA16は光導波路11を含み、光導波路11の延伸方向に沿って順に並ぶ。
【0012】
波長可変光源10は複数の利得領域17および波長調整領域18を含む。利得領域17の数および波長調整領域18の数はそれぞれ例えば7つである。複数の利得領域17および複数の波長調整領域18は光の伝搬方向に沿って交互に並ぶ。利得領域17の活性層および波長調整領域18の波長調整層27などが光導波路11を形成する。波長可変光源10のVOA12側の端部には利得領域17が位置し、反対側の端部には波長調整領域18が位置する。波長可変レーザ100の一方の端部に波長調整領域18が位置し、他方の端部にSOA16が位置する。波長可変レーザ100の端部に位置する波長調整領域18の端面には不図示の反射防止膜を設けてもよい。
【0013】
図1Bに示すように、波長可変光源10、VOA12、MOD14およびSOA16において、基板20の下面に電極31が設けられ、基板20の上面に下クラッド層22が積層される。下クラッド層22および上クラッド層28は波長可変光源10、VOA12、MOD14およびSOA16にわたって延伸する。下クラッド層22にはガリウムインジウム砒素リン(GaInAsP)層24が埋め込まれる。VOA12、MOD14およびSOA16にわたって、光導波路11の延伸方向に沿って延伸するGaInAsP層24が設けられている。波長可変光源10には、例えば所定の周期で設けられた複数のGaInAsP層24が設けられている。GaInAsP層24は下クラッド層22とは異なる屈折率を有する。波長可変光源10に配置された複数のGaInAsP層24と下クラッド層22とが光導波路11の延伸方向に沿って並ぶ部分は、回折格子23(コルゲーション)として機能する。
【0014】
波長可変レーザ100の表面は絶縁膜38に覆われる。絶縁膜38の複数の開口部からコンタクト層が露出し、後述のように電極は開口部から露出するコンタクト層に接触する。
【0015】
VOA12において、下クラッド層22の上に吸収層40、上クラッド層28、コンタクト層44および電極50が順に積層されている。電極50はコンタクト層44の上面に接触する。MOD14において、下クラッド層22の上に吸収層40、上クラッド層28、コンタクト層46および電極52が順に積層されている。電極52はコンタクト層46の上面に接触する。吸収層40はVOA12およびMOD14にわたっている。SOA16において、下クラッド層22の上に活性層42、上クラッド層28、コンタクト層48および電極54が順に積層されている。電極54はコンタクト層48の上面に接触する。VOA12、MOD14およびSOA16にわたって1つのGaInAsP層24が延伸する。
【0016】
図1Bおよび
図2に示すように、利得領域17において、下クラッド層22の上に活性層26、上クラッド層28、(第1コンタクト層)および電極32(第1電極)が順に積層されている。電極32はコンタクト層30の上面に接触する。波長調整領域18において、下クラッド層22の上に波長調整層27、上クラッド層28、コンタクト層34(第2コンタクト層)および電極36(第2電極)が順に積層されている。電極36はコンタクト層34の上面に接触する。波長可変光源10においては、複数のGaInAsP層24が互いに離間している。
【0017】
基板20は例えばn型インジウムリン(InP)で形成された半導体基板である。下クラッド層22は例えばn型InPで形成されている。上クラッド層28は例えばp型InPで形成されている。活性層26は、例えばGaInAsPの井戸層とGaInAsPのバリア層を有し、PL(Photoluminescence)波長1.527μmのバンドギャップを有する多重歪み量子井戸である。波長調整層27はInPに格子整合しPL波長1.42μmでのバンドギャップを有するGaInAsPで形成されている。吸収層40はGaInAsPの井戸層とGaInAsPのバリア層を有し、PL波長1.476μmのバンドギャップを有する多重歪み量子井戸である。活性層42は、GaInAsPの井戸層とGaInAsPのバリア層を有し、PL波長1.527μmのバンドギャップを有する多重歪み量子井戸である。活性層26と波長調整層27とは隣接する。吸収層40と波長調整層27および活性層42とは隣接する。活性層26、波長調整層27、吸収層40および活性層42は同一の高さに位置し、光導波路11を形成する。
【0018】
コンタクト層30、34、44、46および48は例えばp型GaInAsによって形成されている。絶縁膜38は例えば窒化シリコン(SiN)または酸化シリコン(SiO
2)などの絶縁体で形成されている。電極31は例えば金(Au)などの金属で形成されたn型電極である。電極32、36、50、52および54は例えばAuなどの金属で形成されたp型電極である。
【0019】
図2に示す光の伝搬方向における利得領域17の長さL1、および波長調整領域18の長さL2はそれぞれ例えば40μmである。利得領域17と波長調整領域18との配列の周期Tは80μmである。光の伝搬方向における、利得領域17のコンタクト層30の長さL3、および波長調整領域18のコンタクト層34の長さL4は例えば30μmである。これらのコンタクト層30および34の長さ(コンタクト長)は、光の伝搬方向における電極32および36の長さに等しい。光の伝搬方向におけるコンタクト層30とコンタクト層34との距離D1は例えば10μmである。距離D1は電極32と電極36との間の距離に等しい。電極32の端部および電極36の端部から、利得領域17と波長調整領域18との境界までの距離D2は例えば5μmである。層の積層方向におけるコンタクト層30と活性層26との距離は、コンタクト層34と波長調整層27との距離に等しく、この距離D3は例えば1.6μmなど、2μm以下である。
【0020】
活性層26は利得を有し、電極32からコンタクト層30を通じて電流が注入されると、光を出射する。回折格子23により所定の波長の光が選択される。電極36からコンタクト層34を通じて波長調整層27に電流を注入し、波長調整層27の屈折率を変化させることで、波長を調整する。この結果、波長可変光源10は例えば1532nm以上、1536nm以下の範囲の波長の光を出射する。吸収層40は、電極50および52から電流が注入されることで光を吸収する。活性層42は利得を有し、電極54から電流が注入されると光を増幅する。下クラッド層22および上クラッド層28は光導波路11を上下から挟み、光を光導波路11に閉じ込める。光導波路11を伝搬する光はSOA16の端面から、波長可変レーザ100の外部に出射される。
【0021】
波長可変レーザ100のSOA16とは反対側の端部に利得領域17が位置すると、当該利得領域17はVOA12側への光の出力に寄与しにくい。当該利得領域17に注入される電流が発光に寄与しないことで、発光効率が低下してしまう。
【0022】
実施例1によれば、
図1Bに示すように、波長可変レーザ100の端部に波長調整領域18が位置する。このため波長可変光源10のすべての利得領域17が光の出力に寄与する。したがって発光効率の改善が可能である。
【0023】
波長可変レーザ100は、光の伝搬方向に沿って並ぶVOA12、MOD14およびSOA16を備える集積型のレーザ素子である。波長可変光源10が出射する光の減衰、変調および増幅が可能である。波長可変レーザ100は例えば1532nm〜1536nmの波長で発振が可能であり、波長分割多重通信システムへの応用が可能である。なお、波長可変レーザ100はVOA12、MOD14およびSOA16の少なくとも1つを有さずに、波長可変光源10を有してもよい。
【0024】
波長可変レーザ100の一方の端部に波長調整領域18が位置し、他方の端部にはSOA16が位置する。これにより発光効率が改善し、SOA16から光を出射することができる。波長調整領域18とは反対側の端部には、VOA12またはMOD14が配置されてもよい。
【0025】
周期Tは例えば100μm以下とし、90μm以下、80μm以下などでもよい。これにより高い利得を得ることができ、かつ波長可変レーザ100は例えば1532nm〜1536nmの波長で発振が可能である。一例として周期Tを80μm、コンタクト長L3およびL4を30μmとし、比L3/TおよびL4/Tを0.375とする。利得領域17の数および波長調整領域18の数は7以下でもよいし、7以上でもよい。
【0026】
利得領域17は、活性層26、コンタクト層30、および電極32を含む。波長調整領域18は、波長調整層27、コンタクト層34、および電極36を含む。
【0027】
以上、本開示の実施例について詳述したが、本開示は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。