【解決手段】通信装置を備えたモバイル機器1やこれに装着される保護ケースを含む通信機器用の外郭部材の少なくとも一部にメタリック風印刷シート51が配置される。メタリック風印刷シート51は、前面側から見て、金属的反射層を備えたメタリック部分と金属的反射層を備えていない透過部分とを備える。金属的反射層は、メタリック風印刷シートの厚さ方向の断面において湾曲している金属的凹曲反射面を備える。透過部分は、通信装置への電波を透過する電波透過性を有する。
前記細密領域においては、点状又は線状の微細な前記メタリック部分が1平方センチメートル当たり3個以上存在するものであり、前記メタリック部分同士の間に前記透過部分が配置されていることを特徴とする請求項3に記載の通信機器用の外郭部材。
前記細密領域においては、複数の前記メタリック部分同士が隙間を隔てて配列され、前記隙間が1mm以内の微細な前記透過部分であることを特徴とする請求項3又は4に記載の通信機器用の外郭部材。
前記基材シートの後面側であって、前面側から見て少なくとも前記微細厚盛り部分同士の間の部分に着色インキによる後面側着色層が存在することを特徴とする請求項3〜6の何かに記載の通信機器用の外郭部材。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
なお
図3などの各図は、説明のための図であるため各層の厚みなどの寸法を正確に示したものではない。
また、以下、使用者の目に近い方を前とし、使用者の目に遠い方を後とするものであり、「後面側に」とは「よりも後方に」との意味で用いられるものであり、例えば、「部材Xの後面側に部材Yを配置する」とは、部材Xの後面(使用者の目から遠い方)に部材Yを直接配置してもよいし、部材Xの後面と部材Yの前面との間に第3の部材Zを介在させてもよいことを意味する。「前面側に」も同様に「よりも前方に」(使用者の目に近い方)との意味で用いられる。なおこの実施の形態では、前後方向は、メタリック風印刷シート51の厚さ方向と同じ意味で用いられるもので、
図3と
図4のメタリック風印刷シート51の各断面図においては、前面側を上方に後面側を下方に配置して描いている。
【0018】
(外郭部材71について)
本発明は、通信装置を備えた通信機器及びこれに装着される保護ケースを含む通信機器用の外郭部材に関するものである。通信機器とは、電波による通信装置を備えた各種の機器を意味するもので、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を含むモバイル通信機器を含むものである。保護ケースとは、スマートフォンやタブレットなどの通信機器を保護するためにこれに装着して用いられるケースである。外郭部材とは、これらの通信機器及び保護ケースの表面に配置される部材であり、スマートフォンやタブレットのケーシングやスイッチを含むものであり、また保護ケースのケース本体や各種の表面に現れる部材を含むものであり、本発明はこれらの各種部材に適用することができるものである。
図1は、スマートフォン1をその背面側(表示部を備えた正面側の反対側)から見た斜視図であり、外郭部材71としてのスマートフォン1のケーシングの表面にメタリック風印刷シート51が配置されている。
図2は、スマートフォンの保護ケース2の背面側から見た斜視図であり、外郭部材71としての保護ケース2の表面にメタリック風印刷シート51が配置されている。
メタリック風印刷シート51は、外郭部材71の本体の表面に接着などによって配置固定されるほか、インジェクション成形などで一体に成形して実施することができる。外郭部材71の本体が透明体の場合は本体の内面に配置しても構わない。言い換えれば、メタリック風印刷シート51は、外郭部材71の本体の外部から見える位置に配置されるものである。
【0019】
(メタリック風印刷シートについて)
図3を参照して本発明の一実施形態に係るメタリック風印刷シートを説明する。
図3に示されたメタリック風印刷シートは、透光性及び電波透過性を有する基材シート10と、基材シート10の後面側に配置された透光性を有する着色インキによる着色層52と、厚盛り部56及び金属的反射層57とを備える。ここで、本発明において、「透光性を有する」とは、光を透過する性質を有することをいい、透明や半透明の材質のものを用いることができる。また「電波透過性」とは、電波を透過する性質を有することをいい、特に高周波の電波を良好に透過することが好ましい。なお、以下の実施の形態では、金属的反射層57以外の各部材や各層は、特記しない限り透光性ならびに電波透過性を有するものとして実施されている。
【0020】
(基材シート10について)
電波透過性を有する基材シート10には、セルロースアセテートブチレート(CAB)樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂製のフィルムやシートのほか、ガラス板等を用いることができ、単層であってもよく、2層以上の積層体であってもよい。基材シート10の厚さは、特に限定されないが、一般に50〜500μm、望ましくは100〜200μm程度とされる。
【0021】
基材シート10は、透光性を有するものであって、後述するように、印刷や転写箔の手法等により、着色層52、厚盛り部56並びに金属的反射層57を形成できるものであれば、材質や厚みは問わない。基材シート10は、基材として適切な強度や耐久性、印刷特性等を備えていることが望ましい。基材シート10は、メタリック風印刷シート51並びに外殻部材の物性や加工方法に応じて最適なものを選択することができる。
【0022】
(着色層52について)
電波透過性及び透光性を有する着色インキによる着色層52は、基材シート10の後面側に配置される。また、着色層52は、平面状の基材シート10に沿って、平面状に配置される。透光性を有する着色インキには、色を有しかつ透光性を有する印刷用のインキを用い、無色透明のインキを含んでもよい。着色層52の厚みは、1〜20μm程度の範囲が好ましいものであるが、適宜変更して実施し得る。着色層52は、メタリック風印刷シート51の前面側に一色以上の色彩を与えると共に、多色にすることにより文字、図形、模様などの視覚的表現をなすもので、従来の印刷技術の適用により1回または複数回の印刷が施されることによってモノクロームまたは多色の印刷層による着色層52が形成される。
【0023】
着色層52は、後述する厚盛り部56が後面側に配置されていない第1着色領域53(
図4(A)(B)参照)と、厚盛り部56が後面側に配置されている第2着色領域54とを備えてもよく、第1着色領域53と第2着色領域54とは、色相、明度、彩度のうち少なくとも一種が異なる違った色に着色されていてもよい。第1着色領域53と第2着色領域54も含め着色層52は一色に限らず複数色を用いてもよい。
【0024】
着色層52は、透光性を有する着色インキを用いて、後述する金属的反射層57に対して入出力する光を前方の看者に届くようにするものであるが、一部には透光性のないインキを用いることもできるものであり、例えば、装飾効果を高める観点から金属的光沢のある部分とない部分とを混在させたい場合や、看者に見せたくない装置等を隠蔽するために、一部に透光性のないインキを用いることができる。
【0025】
(厚盛り部56について)
電波透過性および透光性を有する厚盛り部56は、着色層52の少なくとも一部の後面を含む位置に配置され、着色層52の後面側から後方に突出している。透光性を有する厚盛り部56は、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂やこれらの混合物又は化合物などの合成樹脂製の厚盛インキによって形成され、透光性を有するものであれば、透明であってもよく、着色インキと同様に顔料などで着色された透明であってもかまわない。
【0026】
厚盛り部56は、その厚みや幅がメタリック風印刷シート51の装飾効果を左右する大きな要因となるため、厚みは75μm以上であることが好ましく、80μm以上がより好ましい。この厚みは、大きくすればするだけ立体的な装飾効果を高めることはできるが、大きくするに従ってその精度維持や量産が困難になったり、使用できる素材に制限が生じたりするため150μm以下が適当であり100μm以下がより安定するが、150μmを超える厚みで実施することを妨げるものではない。幅は、シャープな装飾効果を高めるには0.3mm〜3mmが適当である。ただし、描かれる図形や文字によって決定されるものであるため、大きな面積に金属的反射や立体的な装飾効果を得る場合にはこれに限るものではない。なお、厚盛り部56の幅は、基材シート10と接する厚盛り部56の基端側の幅を指す。
着色層52と金属的反射層57のみでは、その装飾効果は平面的に止まるものであるが、厚盛り部56が配置されることにより、立体的な装飾効果に高めることができる。
【0027】
(金属的反射層57について)
金属的反射層57は、金属箔やホログラム箔などの反射箔や金属色のインクを含んでもよく、厚盛り部56の少なくとも一部の後面に配置される。金属的反射層57は、鏡面状の反射や金属的光沢を与える。
メタリック風印刷シート51は、前面側から見て、金属的反射層57を備えたメタリック部分3と金属的反射層57を備えていない透過部分4とに区分される。透過部分4に位置する各層はいずれも電波透過性を備え、通信に必要な電波を良好に透過する。他方、金属的反射層57を備えたメタリック部分3は通信に必要な電波を透過させないか減衰させるものであり、メタリック風印刷シート51は、メタリック部分3と透過部分4とを備えることによって、全体として通信に必要な電波を透過させると共に高級感のあるメタリック風の加飾を、スマートフォン1や保護ケース2などの外郭部材に付与することができるものである。
【0028】
金属的反射層57は、転写箔の手法により、金属箔やホログラム箔などの金属を含む反射箔を転写して形成されるものであることが好ましい。また、金属的反射層57は、シルク印刷(銀ペーストインキやミラーインキ)やホットスタンプ、蒸着、スパッタリングで実施してもかまわないが、転写箔を用いる方が高い金属的反射の効果が得られる点で有利である。より詳しくは、転写箔は、シルク印刷(銀ペーストインキやミラーインキ)より鏡面性がより高く、シルク印刷には作れないホログラム箔の使用も可能である点で、転写箔を用いる方が有利である。また、転写箔の手法を用いて金属的反射層57を形成する際、転写用のバインダ層(図示せず)を形成してもよい。バインダ層は、反射箔を定着させるものであればよく、例えば透明なシルクインキで形成することができる。特に、経時変化でバインダ層の割れやクラックを起こさないインキを使用することが適当である。金属的反射層57の厚みは、適宜変更して実施し得るが、0.03〜0.05μm程度の範囲が好ましい。
【0029】
(金属的凹曲反射面59について)
厚盛り部56は、上述のとおり、着色層52の少なくとも一部の後面を含む位置に配置され、着色層52の後面側から後方に突出している。また、着色層52の後面側から後方に突出している厚盛り部56の、少なくともその周縁は、表面張力により、基材シート10の厚さ方向の断面において、後方に向かって湾曲した凹曲部58を備える。この凹曲部58の少なくとも一部の後面に金属的反射層57が配置され、金属的反射層57が金属的凹曲反射面59を構成する。従って、金属的凹曲反射面59は、基材シート10の厚さ方向の断面において、後方に向かって湾曲した面となる。
金属的反射層57は、上述のとおり、凹曲部58の少なくとも一部の後面に配置すればよく、厚盛り部56の後面と完全に一致する部分に配置してもよく、凹曲部58の少なくとも一部の後面と厚盛り部56に隣接する着色層52の少なくとも一部の後面に配置しても構わない。
【0030】
メタリック風印刷シート51を前方から見た際、金属的凹曲反射面59からの反射光が視認できるが、金属的反射層57は着色層52の後面側から後方に突出した厚盛り部56の少なくとも一部の後面に配置されることから、金属的凹曲反射面59からの反射光が奥行き感を持って視認される。
【0031】
また、金属的反射層57が凹曲部58の少なくとも一部の後面に配置されることによって、凹面鏡状の反射面が形成されるものであり、メタリック風印刷シート51を前方から見た際、金属的凹曲反射面59の平面上の位置が変化するに従って、金属的凹曲反射面59までの深さが変化することから、この変化に応じて金属的凹曲反射面59から多様な方向に反射した光が視認され、看者の目の位置の変化により反射光が見える箇所が変化する。
【0032】
さらに、厚盛り部56及び金属的反射層57が後面側に配置されたメタリック風印刷シート51で着色された金属的反射効果を有する領域と、厚盛り部56及び金属的反射層57が後面側に配置されていないメタリック風印刷シート51で金属的反射効果を有しない平面的な領域とでは、金属的反射において異なっているものとすることができ、装飾表現に差異を与えることができる。
【0033】
また、厚盛り部56が後面側に配置されていない領域と、厚盛り部56が後面側に配置された領域とを、色相、明度、彩度のうち少なくとも一種が異なる違った色に着色すると、装飾表現の差異がさらに強調され、立体的な装飾効果をさらに高めることができる。
以上のことから、厚盛り部56及び金属的反射層57を上記のように構成することにより、メタリック風印刷シート51に新たな装飾効果を発現させることができる。
【0034】
第2着色領域54と厚盛り部56と金属的反射層57は、第2着色領域54の後面側に厚盛り部56が配置され、金属的反射層57が凹曲部58の少なくとも一部の後面に配置されていれば、メタリック風印刷シート51を前方から見た際、これら三者の外縁(平面視における外周線)は略一致していなくてもよく、平面視においてずれていてもよい。これら三者の外縁が平面視においてずれている例として、金属的反射層57が凹曲部58の一部の後面に配置される場合や、第2着色領域54が厚盛り部56の基端側の幅を超えて形成される場合が挙げられるが、そのずれ方には種々の態様がある。
【0035】
メタリック風印刷シート51を前方から見た際、これら三者の外縁が略一致していることが望ましく、これら三者の外縁が完全に一致することが最も望ましいものであるが、完全に一致しなくともメタリック風印刷シート51を前方から見た際に、第2着色領域54のみが金属的反射を伴う光を発していると認識されるものであれば、略一致していると言えるものであり、完全に一致している必要はない。
この場合、より具体的には三者の外縁(外周線)の平面視におけるズレが3mm以内であることが好ましく、1mm以内であることがより好ましい。メタリック風印刷シート51を前方から見た際、これら三者の外縁が略一致していることにより、第2着色領域54、厚盛り部56及び金属的反射層57の全体が金属的反射効果を備えることができる。
【0036】
着色層52、厚盛り部56及び金属的反射層57は基材シート10の後面側に配置する方が好ましいが、メタリック風印刷シート51が複数層の積層体の場合には、その層間に配置してもかまわない。なお、着色層52、厚盛り部56及び金属的反射層57は、イラストや写真等の種々の絵柄や文字をメタリック風印刷シート51の前面に表示することができる。
【0037】
(調整層について)
なお図示は省略するが、メタリック風印刷シート51は、その最後面に調整層(図示せず)を配置してもよい。調整層の色は問わない。透明であってもよく、着色インキと同様に顔料などで着色されたものであってもかまわない。調整層は、粘着剤や接着剤の層とその後面に配置されたポリエチレンテレフタレート樹脂やポリカーボネート樹脂等の樹脂フィルムとから構成される。メタリック風印刷シート51を備えた外殻部材を形成する場合、メタリック風印刷シート51の最後面に調整層を配置することが望ましい。メタリック風印刷シート51の最後面に調整層を配置することにより、後方部材の色流れを抑えることができる。調整層の形成には、コーターでの塗布のほか、オフセット印刷やシルク印刷を用いることができる。
【0038】
この調整層や粘着剤や接着剤は、メタリック風印刷シート51の後面の凹凸(メタリック風印刷シート51の厚盛り部56の有無による凹凸)を緩和することもできるものであり、メタリック風印刷シート51又は粘着剤や接着剤の後面における凹凸の高さの差を、厚盛り部による凹凸の差よりも小さくすることができるものであり、調整層と、粘着剤や接着剤とを、併用することも可能である。
【0039】
(表面の平滑性について)
この実施の形態では、メタリック風印刷シート51の表面が平滑であるが、さらに表面が別個の平滑なシート(図示せず)を配置するなどしなくてもかまわない。また、後方部材にメタリック風印刷シート51を貼り付けて外殻部材を形成した場合、経時変化によって後面の凹凸が表面側の平滑性に影響を与えることも考えられるが、前記のようにメタリック風印刷シート51の後面の凹凸を緩和させることによって、平滑性の影響の発生を抑制することができる。
この実施の形態に係るメタリック風印刷シート51は、135℃の高温にも耐え得る耐熱性を有するものなど、素材の選択の自由度が高いものである。
【0040】
厚盛り部56については、その少なくとも一部が細密厚盛り部50を備えているものとすることができる。
【0041】
図3(A)(B)に示されたように、細密厚盛り部50は、その前面側の一つの第2着色領域54よりも小さな微細厚盛り部分55が複数集合した部分であり、微細厚盛り部分55は、その形状は特に問わないが点状又は線状の細かなものであることが適当である。
【0042】
全てのあるいは少なくとも複数の微細厚盛り部分55の後面には、前記した金属的反射層57が設けられている。これによって、それぞれの微細厚盛り部分55の少なくともの周縁は、基材シート10の厚さ方向の断面において、後方に向かって湾曲した凹曲部58を備え、この凹曲部58の少なくとも一部の後面に金属的反射層57が配置され、金属的反射層57が金属的凹曲反射面59を構成する。
これによって、一つの第2着色領域54の内部において、複数の微細厚盛り部分55による複数の金属的凹曲反射面59を配置することができる。その結果第2着色領域54においては単一の変化のない図形であったとしても、複数の微細厚盛り部分55によって多数の金属的凹曲反射面59が配置されるため、複雑な立体感や輝きをメタリック風印刷シート51の表面にもたらすことができる。
また金属的反射層57を備えたメタリック部分3と金属的反射層57を備えていない透過部分4とが微細な状態で混在するため、メタリック風印刷シート51を、スマートフォン1のケーシングや保護ケース2のほぼ全面に配置した場合であっても、内部の通信装置のアンテナの位置に関わらず、アンテナの送受信状態を阻害することを抑制することができる。
【0043】
もちろん、
図3(C)(D)に示すように、複数の微細厚盛り部分55を備えた細密厚盛り部50がないものとして実施することもできる。
図3(C)(D)に示されたものは、
図3(A)(B)に示されたものに比して単純なものとなっており金属的反射層57を備えたメタリック部分3のみによって構成される面積も広くなっているが、アンテナを避けることによって、アンテナに対する電波障害を回避することができる。よって、本発明の実施に際して、
図3(A)(B)に示されたものに加えて、
図3(C)(D)に示されたものを併用することができるし、アンテナの位置を避ければ、
図3(C)(D)に示されたもののみで実施することもできる。
【0044】
上記の細密厚盛り部50は、メタリック部分3(金属的反射層57を備えた微細厚盛り部分55)が1平方センチメートル当たり3個以上存在するものであることが望ましい。メタリック部分3(金属的反射層57を備えた微細厚盛り部分55)が線状の場合は、1センチメートルの幅において3本以上の線が存在することが好ましく、1本の線の幅が0.3〜0.6mmであることが細密な装飾感を高める上で望ましい。また金属的反射層57を備えていない透過部分4が1本の線の幅が0.3〜0.6mm以上であることが電波の透過性の障害を抑制する点で好ましい。
メタリック部分3(金属的反射層57を備えた微細厚盛り部分55)が点状の場合は、1平方センチメートル当たり9個以上存在するものであることがより望ましく、1つの点の最大径が1.0〜3.0mmであることが細密な装飾感を高める上で望ましいし、メタリック部分3(金属的反射層57を備えた微細厚盛り部分55)同士の間隔、言い換えれば金属的反射層57を備えていない透過部分4が1mm以上でもよいが、0.3〜0.6mm以上であることが、電波の送受信状況と細密な装飾感を高める上で望ましい。
【0045】
例えば
図5に示すように、微小な図形の中に多彩な立体感をもたらすことができる。
具体的には
図5(A)にて矢印で示される二重円の着色層52は、一色で示された二重円の図形であるに止まるが、
図5(B)にて矢印で示された二重円の細密厚盛り部50は、微細厚盛り部分55の集合によって構成されたものである結果、
図5(C)にて矢印で示された二重円は、あたかも多くの宝玉によって構成されたものであるかの如く、細密な図形が立体感豊かに表現されたものとなっている。
なお
図3に示されるように、微細厚盛り部分55の形状や大きさは均一である必要はなく、表現する図形によって
図5(B)に示されるように様々なものを用いることができる。
【0046】
図4は他の実施の形態を示すもので、この例では微細厚盛り部分55とその前面側に重ねられた第2着色領域54とが、平面視においてずれが生じているものとして実施したものである。
その結果、
図4(E)(F)に示すように、平面において次の四つの部分が設けられることになる。
1)一致部分11:前記着色層と前記厚盛り部と前記金属的反射層とが一致した部分。
2)平面着色部分12:前記着色層のみで前記厚盛り部と前記金属的反射層とが存在しない部分。
3)無着色金属反射部分13:前記厚盛り部と前記金属的反射層のみで前記着色層が存在しない部分。
4)無着色非反射部分14:前記着色層、前記厚盛り部及び前記金属的反射層が存在しない部分。
その結果従来にも増して多彩な表現が可能となる。特に無着色非反射部分14をあえて設けることによって、一致部分11、平面着色部分12、無着色金属反射部分13の対比がより強調されることになる。
【0047】
この
図4の例では微細厚盛り部50は複数の線状の微細厚盛り部分55の集合であり、微細厚盛り部分55の前面側に重ねられた着色層52も複数の線分の集合である。この例では微細厚盛り部分55の方が着色層52よりも太いものとして実施されているが、逆に着色層52の方が太いものであっても構わないし、同じ太さであっても構わない。
着色層52と微細厚盛り部分55が平面視において交差しているものとすることによって、上記の四つの部分が形成されたものである。
なお
図4(B)に示すように、平面視において微細厚盛り部分55同士の間の部分に着色インキによる62を設けて実施することもできる。
また、
図6(A)に示すように、着色層52を線分とし、微細厚盛り部分55を線分と点との組み合わせとして実施することもできる。
さらに
図6(B)(C)(D)に示すように、微細厚盛り部分55を不定形なドットの集合体として実施することもできる。
【0048】
図7は、着色層52を線分とし、微細厚盛り部分55をドットの集合体と、線分の集合体として実施した例を示すものである。
図7(A)は着色層の平面図であり、複数の色の異なる線分が縦の縞模様を構成するように配置されたもので、そのうち白く表された線分は着色が施されていない部分で、この部分には着色インキが存在しない。
図7(B)は厚盛り部及び金属的反射層の平面図であり、中央に配置された斜め帯状のブランク部分と、このブランク部分の左側に配置されたドットの集合体部分と、このブランク部分の右側に配置された傾斜した線分の集合体部分とが3種類の領域を構成する配置されているものである。ブランク部分とドットの間に介在する部分と線分の間に介在する部分は、厚盛り部及び金属的反射層が全く存在していない透過部分4を構成する。
図7(C)は後面側着色層61の平面図であり、比較的淡い色のインキで全面が均一に着色されている。これらが組み合わされることによって、
図7(D)(E)(F)に示すような多彩な表現のメタリック風印刷シートを得ることができる。
図7(A)では着色層による縦の縞模様が表されていたに止まるが、
図7(D)(E)(F)のメタリック風印刷シートでは、メタリック部分3が、着色層と厚盛り部と金属的反射層とが一致した一致部分11と、厚盛り部と金属的反射層のみで着色層が存在しない無着色金属反射部分13とで構成される。他方、透過部分4は、着色層のみで厚盛り部と金属的反射層とが存在しない平面着色部分12と、着色層、厚盛り部及び金属的反射層が存在しない無着色非反射部分14とで構成されることによって、電波の良好な送受信を阻害することなく多彩な細密模様が形成されたものである。
【0049】
図8は、微細厚盛り部分55の集合体からなる細密厚盛り部50の一例を示すものであり、種々のデザインで実施することができる。
図9は、着色層52の一例を示すものであり、種々のデザインで実施することができる。そして両者を組み合わせることによって、多彩なデザインを創出することができる。例えば
図10は
図9の右上の着色層52による図形に対して、2種類の金属的反射層57を配置した例を示すものであり、
図10(A)は
図8の中段右側の金属的反射層57を配置し、
図10(B)は
図8の上段右側の金属的反射層57を配置した例を示すものである。このように、金属的反射層57の形態を変化させるだけで、同じ着色層52を用いても多彩な表現が可能である。
【0050】
また細密厚盛り部50は、点状又は線状の細かな微細厚盛り部分55の集合によって錯視、モアレ又は干渉縞が生じる図形を構成しているものとすることができる。錯視としては、種々の幾何学的錯視が知られているが、何の錯視をもたらす図形であっても構わないが、立体的な錯視をもたらす図形であることが特に好ましい。幾何学的錯視の一例を示せば、ミュラー・リヤー錯視、ツェルナー錯視、ヘリング錯視、ポンゾ錯視、フィック錯視、ポッゲンドルフ錯視、デルブーフ錯視、オッペル・クント錯視、フレイザー錯視、ミュンスターバーグ錯視、カフェウォール錯視、エビングハウス錯視、ジャストロー図形などを上げることができるし、チェッカーシャドウ錯視であっても構わない。また
図11に示すようなモアレ又は干渉縞が生じる図形であっても構わない。
【0051】
(メタリック風印刷シート51の製造)
次に上述のメタリック風印刷シート51を製造する方法について説明する。
(メタリック風印刷シート51を製造する工程の概要:第1の例)
メタリック風印刷シート51を製造する工程は、透光性を有する基材シート10の後面側に透光性を有する着色インキによる着色層52を形成する着色ステップと、着色層52の後面側に透光性を有する厚盛り部56を形成する厚盛りステップと、厚盛り部56の後面側に金属的反射層57を形成する装飾ステップとを行うものである。
【0052】
(着色ステップについて)
着色ステップは、透光性を有する着色インキを、種々の方法で、透光性を有する基材シート10の後面側に印刷することによって着色層52を形成する工程である。印刷にはオフセット印刷やシルク印刷やインクジェット印刷を用いることができるが、グラビア印刷等の他の印刷方法を用いることもできる。
【0053】
この着色層52の厚みは、オフセット印刷の場合には1μm前後、シルク印刷の場合には10μm前後が適当であり、1〜20μm程度の範囲が好ましく4〜20μm程度の範囲がより好ましいものであるが、適宜変更して実施し得る。
また、着色層52として、厚盛り部56が後面側に配置されていない第1着色領域53と、厚盛り部56が後面側に配置されている第2着色領域54を形成してもよく、第1着色領域53と第2着色領域54とは、色相、明度、彩度のうち少なくとも一種が異なる違った色に着色されてもよい。
【0054】
(厚盛りステップについて)
厚盛りステップは、着色層52の少なくとも一部の後面を含む位置に厚盛り部56を形成する工程である。
厚盛り部56は、着色層52と同様に透光性を有する厚盛インキを印刷することによって形成することができるが、他の手法によって形成してもよい。上述のとおり、厚盛り部56は、その厚み(t)や幅(l)がメタリック風印刷シート51の装飾効果を左右する大きな要因となるため、厚み(t)好ましくは75〜150μm、より好ましくは80〜100μm、幅(l)0.3mm〜3.0mmが適当であるが、これに限るものではない。この厚みを得るために、層厚みの大きなシルクスクリ−ン印刷を行うことが有利である。その際、1回から、5回程度の複数回の印刷を施してもよい。部分的に印刷回数を変えるなどして厚みの異なる複数種類の厚盛り部56を形成してもよい。他方厚盛り部56の厚みを同じにすることによって、印刷を施す際の印刷の版を共通して用いることができ生産効率を高めることができる。
【0055】
(装飾ステップについて)
装飾ステップは、厚盛り部56の少なくとも一部の後面に金属的反射層57を形成する工程である。厚盛りステップにて形成された厚盛り部56は、着色層52の後面側から後方に突出しており、厚盛り部56の少なくともその周縁は、表面張力により、基材シート10の厚さ方向の断面において、後方に向かって湾曲した凹曲部58を備える。そして、装飾ステップにて、この凹曲部58の少なくとも一部の後面に金属的反射層57を形成し、形成された金属的反射層57が金属的凹曲反射面59を構成するものである。
【0056】
金属的反射層57は、転写箔の手法により、金属箔やホログラム箔などの反射箔を転写して形成されるものであることが好ましい。また、金属的反射層57は、シルク印刷(銀ペーストインキやミラーインキ)やホットスタンプ、蒸着、スパッタリングで実施してもかまわないが、転写箔を用いる方が高い金属的反射の効果が得られる点で有利である。より詳しくは、転写箔は、シルク印刷(銀ペーストインキやミラーインキ)より鏡面性がより高く、シルク印刷には作れないホログラム箔の使用も可能である点で、転写箔を用いる方が有利である。
【0057】
また、転写箔の手法を用いて金属的反射層57を形成する際、転写用のバインダ層(図示せず)を形成してもよい。バインダ層は、反射箔を定着させるものであればよく、例えば透明なシルクインキで形成することができる。特に、経時変化でバインダ層の割れやクラックを起こさないインキを使用することが適当である。
金属的反射層57の厚みは、適宜変更して実施し得るが、0.3〜0.5μm程度の範囲が好ましい。
【0058】
(メタリック風印刷シート51を製造する工程の概要:第2の例)
本願のメタリック風印刷シート51を製造する他の製造例は、透光性を有する基材シート10の後面側に装飾部を形成する工程である。具体的には透光性を有する着色インキによる着色層52を形成する着色ステップと、透光性を有する厚盛インキによる厚盛り部56を形成する厚盛りステップと、厚盛り部56の後面側に金属的反射層57を形成する装飾ステップとを行うものである。
【0059】
そして、メタリック風印刷シート51を製造する工程は、着色ステップ、厚盛りステップ、装飾ステップの順に実施する場合(以下、第1実施手順という)と、厚盛りステップ、着色ステップ、装飾ステップの順に実施する場合(以下、第2実施手順という)がある。
【0060】
(着色ステップについて)
着色ステップは、透光性を有する着色インキを、種々の方法で、基材シート10の後面側に印刷することによって着色層52を形成する工程である。着色ステップにおいて、着色層52は、前方から見て、厚盛り部56が存在しない位置にある第1着色領域53と、厚盛り部56が存在する位置にある第2着色領域54とが形成され、第1着色領域53と第2着色領域54とは、色相、明度、彩度のうち少なくとも一種が異なる違った色に着色される。
【0061】
メタリック風印刷シート51を製造する工程が第1実施手順で実施された場合、第1着色領域53、第2着色領域54ともに基材シート10の後面側に形成され、第2実施手順で実施された場合、第1着色領域53は基材シート10の後面側に形成され、第2着色領域54は基材シート10の後面側に形成された厚盛り部56の後面側に形成される。
着色層52を形成するための印刷方法や着色層52の厚みは、本願の第1実施形態と同じであり、説明を省略する。
【0062】
(厚盛りステップについて)
厚盛りステップは、基材シート10の後面側に厚盛り部56を形成する工程である。
【0063】
メタリック風印刷シート51を製造する工程が第2実施手順で実施された場合、厚盛り部56は基材シート10の後面側に形成され、第1実施手順で実施された場合、厚盛り部56は基材シート10の後面側に形成された第2着色領域54の後面側に形成される。
厚盛り部56を形成するための方法や、厚盛り部56の厚みや幅は、本願の第1実施形態と同じであり、説明を省略する。
【0064】
(装飾ステップについて)
装飾ステップは、厚盛り部56の後面側に金属的反射層57を形成する工程である。金属的反射層57は前面側からの光を反射するものであり、着色層52を透過した金属的反射層57からの反射光を前方の看者が視認するように構成されることから、金属的反射層57は、メタリック風印刷シート51の最も後面側に形成される。
【0065】
メタリック風印刷シート51を製造する工程が第1実施手順で実施された場合、金属的反射層57は厚盛り部56の後面側に形成され、第2実施手順で実施された場合、金属的反射層57は厚盛り部56の後面側に形成された第2着色領域54の後面側に形成される。
金属的反射層57を形成するための方法や、金属的反射層57の厚みは、本願の第1実施形態と同じであり、説明を省略する。
【0066】
転写箔の手法を用いて金属的反射層57を形成する際、厚盛り部56の後面側に形成された第2着色領域54と金属的反射層57との定着性を確保するために、両者の間に転写用のバインダ層(図示せず)を形成してもよい。バインダ層は、反射箔を定着させるものであればよく、例えば透明のシルクインキで形成することができる。特に、経時変化でバインダ層の割れやクラックを起こさないインキを使用することが適当である。
【0067】
(メタリック風印刷シート51の外殻部材71への一体化)
メタリック風印刷シート51は、種々の方法によって外殻部材71と一体化することができる。
【0068】
(貼り付けによる方法)
メタリック風印刷シート51は、スマートフォン1のケーシングや保護ケース2などの外殻部材71の本体に貼り付けて用いることも可能である。
【0069】
貼り付けの方法は、特に問うものではなく接着剤や粘着剤を用いることもでき、成型技術を適用することも可能である。外殻部材71の材質としては、金属、合成樹脂やこれらの複合材料製など、種々の材質を選択して用いることができる。
合成樹脂による樹脂成形体を用いた外殻部材71については、貼合成型技術を適用することが可能である。貼合成型技術の方法としては、インモールド成形とアウトモールド成形のいずれも適用することができる。以下、接着剤や粘着剤を用いた貼り付けの例、インモールド成形を用いた貼り付けの例、アウトモールド成形を用いた貼り付けの例を示す。
【0070】
(接着剤や粘着剤を用いた貼り付けの例)
図12(A)に示すように、外殻部材71の後面側にメタリック風印刷シート51の前面側を貼り付けることができる。外殻部材51はアクリル板等の透明体として実施される。外殻部材71(この例では透明体)とメタリック風印刷シート51との間は、粘着剤や接着剤などのシート間接合剤62によって接合される。粘着剤や接着剤は透明性の高いものが適当であり、且つ、シート間に気泡が混入し難いものを用いることが望ましい。例えば、接着剤としては、UV接着剤に代表される紫外線などの活性エネルギー線硬化型接着剤を用いることが有利である。
【0071】
外殻部材71を前面側から見た際に、視認される位置にメタリック風印刷シート51が貼り付けられており、透明な外殻部材71及びシート間接合剤を通して、金属的凹曲反射面59からの反射光を視認することができ、立体的な装飾効果を奏する。
【0072】
また、
図12(B)に示すように、メタリック風印刷シート51を種々の材質の外殻部材71の前面側に配置したものとしても実施される。メタリック風印刷シート51と外殻部材71との関係で良好な接着を実現する、種々の粘着剤や接着剤などのシート間接合剤62を選択して用いることができる。メタリック風印刷シート51の後面側にシート間接合剤62の層を形成することにより、メタリック風印刷シート51の後面の凹凸を緩和し、メタリック風印刷シート51の前面の平滑性を維持する。また、経時変化によりメタリック風印刷シート51の後面の凹凸がその前面に出ることを防ぐ。
【0073】
粘着剤や接着剤の代わりにメタリック風印刷シート51の後面の凹凸を緩和するための樹脂成分等を含むインクをメタリック風印刷シート51の後面に印刷してもよい。
後面側に外殻部材71を貼り付けたメタリック風印刷シート51を前方から見た際、メタリック風印刷シート51が視認される位置に配置されており、金属的凹曲反射面59からの反射光を視認することができ、立体的な装飾効果を奏する。
【0074】
(インモールド成形を用いた貼り付けの例)
図13は、インモールド成形の説明図であり、
図13(A)に示すように、樹脂成型用の金型81、81を開き、金型の内部にメタリック風印刷シート51を配置する。
【0075】
次に、
図13(B)に示すように、金型81、81を閉じて、溶融した合成樹脂を射出口82から、金型81、81内にて射出成型するとともに、その表面にメタリック風印刷シート51を貼り付けるものである。射出口82から射出される合成樹脂は、透光性を有する合成樹脂が望ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。なお、
図13(A)に示すように、必要に応じてメタリック風印刷シート51の後面に調整層61や接着剤などのシート間接合剤62を塗布したバッカーシート63を配置しておいてもよい。バッカーシート63を配置することにより、成型中のメタリック風印刷シート51の形状を維持し、メタリック風印刷シート51と射出口82から射出される合成樹脂との接着性を高めることができる。両者の接着性が確保される場合には、バッカーシート63を用いなくてもよい。
【0076】
図13(B)(C)においては、メタリック風印刷シート51の後面の凹凸(メタリック風印刷シート51の厚盛り部56の有無による凹凸)の記載と、調整層61、並びにシート間接合剤62を塗布したバッカーシート63の記載を省略した。
これにより、
図13(C)に示すような、外殻部材71(この例では合成樹脂による樹脂成形体)とその前面に配置されたメタリック風印刷シート51とが一体となったインサート成形品を得ることができる。
【0077】
インサート成形品の他の一例を
図14(A)(B)に示す。
図14(A)に示す外殻部材71にあっては、メタリック風印刷シート51が外殻部材71の前面に配置されている。メタリック風印刷シート51自体は前面が上を向いた状態で配置されている。メタリック風印刷シート51の前面が外殻部材71の前面(
図14(A)の上面)に露出した状態で配置される。その結果、外殻部材71を上方から見た際、メタリック風印刷シート51の前面を直接見ることとなる。よって、外殻部材71を上方から見た際、金属的凹曲反射面59からの反射光を視認することができる。
【0078】
図14(B)に示す外殻部材71にあっては、メタリック風印刷シート51がその後面に配置されている。メタリック風印刷シート51自体は前面が上を向いた状態で配置されている。メタリック風印刷シート51の前面が外殻部材71の後面(
図14(B)の下面)に配置される。その結果、外殻部材71を上方から見た際、透明な外殻部材71を通してメタリック風印刷シート51の前面を見ることとなる。よって、外殻部材71を上方から見た際、外殻部材71を通して金属的凹曲反射面59からの反射光を視認することができる。
【0079】
なお、
図14(A)(B)においては、メタリック風印刷シート51の後面の凹凸(メタリック風印刷シート51の厚盛り部56の有無による凹凸)の記載を省略した。また、
図14(A)の場合においては、メタリック風印刷シート51の後面に調整層や接着剤を塗布したバッカーシートを配置してもよく、
図14(B)の場合においては、メタリック風印刷シート51の前面に接着剤を塗布したバッカーシートを配置してもよく、メタリック風印刷シート51の後面に調整層を配置してもよい。メタリック風印刷シート51の前面に配置するシート間接合剤62を塗布したバッカーシートは、透光性を有するものが適当である。
【0080】
金型81内にインサートするメタリック風印刷シート51は、射出される溶融樹脂の熱と圧力で賦形してもよいし、金型外で予備加熱しておいて金型81にインサートし、真空引きによって予備賦形した後に樹脂を射出するものであってもよく、賦形されない場合もある。
【0081】
(アウトモールド成形を用いた貼り付けの例)
次に、
図15は、アウトモールド成形の例を示すものである。アウトモールド成形は、メタリック風印刷シート51の上下の差圧を利用して外殻部材71に貼り付けて賦形するもので、種々の形態のものが提案され実用化されており、これらを適宜選択して用いることができる。
【0082】
図15を参照してその一例を説明すると、
図15(A)に示すように、チャンバー91内のテーブル92に外殻部材71を配置し、メタリック風印刷シート51の上下の空間であるチャンバー91内を、チャンバー91に接続された真空ポンプ(図示せず)などによって、減圧する。必要に応じてメタリック風印刷シート51をヒーター93によって減圧下で加熱する。なお、
図15(A)に示すように、必要に応じてメタリック風印刷シート51の後面に調整層61やシート間接合剤62を塗布したバッカーシート63を配置しておいてもよい。
図15(B)(C)においても、メタリック風印刷シート51の後面の凹凸(メタリック風印刷シート51の厚盛り部56の有無による凹凸)の記載と、調整層61、並びにシート間接合剤62を塗布したバッカーシート63の記載を省略した。
【0083】
次に、
図15(B)に示すように、テーブル92を必要に応じて上昇させると共にチャンバー91内のメタリック風印刷シート51の上の空間に対して大気圧を導入あるいは加圧(圧空)することによって、メタリック風印刷シート51を外殻部材71に押しつけて貼り合わせする。これにより、
図15(C)に示すように、メタリック風印刷シート51を外殻部材71の表面に貼り付けることができる。外殻部材71を前方から見た際、メタリック風印刷シート51が視認される位置に配置されており、金属的凹曲反射面59からの反射光を視認することができ、立体的な装飾効果を奏する。なお、外殻部材71がアンダーカットされている場合にも、圧力差によってメタリック風印刷シート51がアンダーカット部分にも巻き付けられるため、貼り合わせが可能である。なお、ヒーター93による加熱に代えて又は併用して熱板を利用してもかまわないし、また、圧空の際に水蒸気を導入してもかまわないし、種々の方法を採用して実施することができる。
なお、
図1及び
図2ではメタリック風印刷シート51を外郭部材71であるスマートフォン1やスマートフォンの保護ケース2の平面部分にのみ表したが、側面などの屈曲した部分や湾曲した部分にも配置することができるものであり、その際屈曲した部分や湾曲した部分のメタリック風印刷シート51と平面部分のメタリック風印刷シート51とが連続した一連のメタリック風印刷シート51を用いて実施することができるものである。