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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-114830(P2021-114830A)
(43)【公開日】2021年8月5日
(54)【発明の名称】中継装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20210709BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20210709BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20210709BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20210709BHJP
【FI】
   H02J13/00 311R
   H02J3/38 130
   H02J3/46
   H02J3/32
   H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-5887(P2020-5887)
(22)【出願日】2020年1月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】福見 渉
(72)【発明者】
【氏名】大堀 彰大
(72)【発明者】
【氏名】花尾 隆史
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AA01
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064BA02
5G064CB06
5G064CB10
5G064CB16
5G064DA03
5G064DA11
5G066HA13
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】処理装置とEV充放電器との通信を中継することで、EV充放電器を含めたエネルギー管理を可能にする中継装置を提供する。
【解決手段】中継装置(EVGW33)は、制御指令に基づき電気自動車32の充電および放電を行うEV充放電器31と誘導指令値を算出する処理装置A1との通信を中継する。EVGW33は、受信部331、算出部333、指令部334および送信部335を備える。受信部331は、処理装置A1から誘導指令値と、充電の可否および放電の可否が設定されたEV運転モードの設定情報とを受信する。算出部333は、誘導指令値およびEV運転モードの設定情報を用いた最適化問題に基づいて、EV充放電器31の出力電力の目標値を算出する。指令部334は、前記目標値とEV運転モードの設定情報とに基づいて、制御指令を生成する。送信部335は、制御指令をEV充放電器31に送信する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信する制御指令に基づき電気自動車の充電および放電を行う充放電器と、前記充放電器を含む電力システムと電力系統との接続点における接続点電力を目標電力にするための誘導指令値を算出する処理装置との通信を中継する中継装置であって、
前記処理装置から、前記誘導指令値と、前記電気自動車の充電の可否および前記電気自動車の放電の可否が設定された運転モードの設定情報とを受信する受信部と、
前記誘導指令値および前記運転モードの設定情報を用いた最適化問題に基づいて、前記充放電器の出力電力の目標値を算出する算出部と、
前記目標値と前記運転モードの設定情報とに基づいて、前記制御指令を生成する指令部と、
前記制御指令を前記充放電器に送信する送信部と、
を備える中継装置。
【請求項2】
前記運転モードの設定情報は、充電の可否を示す充電許可フラグの設定情報と放電の可否を示す放電許可フラグの設定情報とを含み、
前記最適化問題は、制約条件を含んでおり、
前記算出部は、前記充電許可フラグの設定情報および前記放電許可フラグの設定情報によって、前記制約条件を変える、
請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記受信部は、前記充放電器から前記電気自動車の充電率を受信し、
前記指令部は、前記目標値が放電を示す値であっても、前記充電率が第1閾値以下の場合、前記充放電器に前記電気自動車を放電させないように前記制御指令を生成する、
請求項2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記指令部は、前記充電率が前記第1閾値より小さい第2閾値以下の場合、前記充放電器に前記電気自動車を充電させるように前記制御指令を生成する、
請求項3に記載の中継装置。
【請求項5】
前記受信部は、さらに、前記処理装置から運転/停止フラグの設定情報を受信し、かつ、前記充放電器から運転可否フラグの設定情報を受信しており、
前記運転/停止フラグは、前記充放電器による前記電気自動車の充放電の実行を指示する運転指示を示すフラグ値、あるいは、前記充放電器による前記電気自動車の充放電の停止を指示する運転停止を示すフラグ値のいずれかが設定され、
前記運転可否フラグは、前記充放電器が前記電気自動車の充放電が可能な状態である運転可能を示すフラグ値、あるいは、前記充放電器が前記電気自動車の充放電が不可能な状態である運転不可を示すフラグ値のいずれかが設定され、
前記指令部は、前記運転/停止フラグの設定情報と前記運転可否フラグの設定情報とに基づいて、前記充放電器に前記電気自動車の充放電を実行させるか否かを指示する運転/停止指令を生成し、
前記送信部は、前記運転/停止指令を前記充放電器にさらに送信する、
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に接続された複数の電力装置を管理して、電力系統との間での送受電の制御を行う電力システムが普及しつつある。たとえば、特許文献1には、複数の電力装置と処理装置(管理装置)とを備えた電力システムの一例が開示されている。処理装置は、所定の調整対象電力を目標電力に制御するための指標(誘導指令値)を算出する。複数の電力装置は、たとえば太陽光発電装置および蓄電装置である。各電力装置は、処理装置が算出した誘導指令値を用いて、分散的に出力電力を制御している。このとき、各電力装置は、誘導指令値を用いた最適化問題に基づいて、出力電力の目標値を算出する。そして、出力電力が当該目標値となるように、出力電力を制御する。このようにして、電力システムのエネルギー管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−148627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電力装置の多様化により、太陽光発電装置や蓄電装置とは異なる種類の電力装置が電力系統に連系されつつある。このような電力装置としては、たとえば電気自動車向けの充放電器(以下「EV充放電器」という)がある。EVは、Electric Vehicleの略称である。EV充放電器は、電気自動車の充電を行うものが一般的だが、中には、電気自動車の放電を行うものもある。たとえば、災害時等に電力事業者から電力の供給が受けられない場合において、電気自動車を電源として電気自動車に蓄積された電力を利用することがある。しかしながら、特許文献1に記載の電力システムにおいては、EV充放電器を含めた電力制御が考慮されていない。
【0005】
本開示は、上記課題に鑑みて考え出されたものであり、その目的は、処理装置とEV充放電器との通信を中継することで、EV充放電器を含めたエネルギー管理を可能にする中継装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の中継装置は、受信する制御指令に基づき電気自動車の充電および放電を行う充放電器と、前記充放電器を含む電力システムと電力系統との接続点における接続点電力を目標電力にするための誘導指令値を算出する処理装置との通信を中継する中継装置であって、前記処理装置から、前記誘導指令値と、前記電気自動車の充電の可否および前記電気自動車の放電の可否が設定された運転モードの設定情報とを受信する受信部と、前記誘導指令値および前記運転モードの設定情報を用いた最適化問題に基づいて、前記充放電器の出力電力の目標値を算出する算出部と、前記目標値と前記運転モードの設定情報とに基づいて、前記制御指令を生成する指令部と、前記制御指令を前記充放電器に送信する送信部と、を備える。
【0007】
前記中継装置の好ましい実施の形態においては、前記運転モードの設定情報は、充電の可否を示す充電許可フラグの設定情報と放電の可否を示す放電許可フラグの設定情報とを含み、前記最適化問題は、制約条件を含んでおり、前記算出部は、前記充電許可フラグの設定情報および前記放電許可フラグの設定情報によって、前記制約条件を変える。
【0008】
前記中継装置の好ましい実施の形態においては、前記受信部は、前記充放電器から前記電気自動車の充電率を受信し、前記指令部は、前記目標値が放電を示す値であっても、前記充電率が第1閾値以下の場合、前記充放電器に前記電気自動車を放電させないように前記制御指令を生成する。
【0009】
前記中継装置の好ましい実施の形態においては、前記指令部は、前記充電率が前記第1閾値より小さい第2閾値以下の場合、前記充放電器に前記電気自動車を充電させるように前記制御指令を生成する。
【0010】
前記中継装置の好ましい実施の形態においては、前記受信部は、さらに、前記処理装置から運転/停止フラグの設定情報を受信し、かつ、前記充放電器から運転可否フラグの設定情報を受信しており、前記運転/停止フラグは、前記充放電器による前記電気自動車の充放電の実行を指示する運転指示を示すフラグ値、あるいは、前記充放電器による前記電気自動車の充放電の停止を指示する運転停止を示すフラグ値のいずれかが設定され、前記運転可否フラグは、前記充放電器が前記電気自動車の充放電が可能な状態である運転可能を示すフラグ値、あるいは、前記充放電器が前記電気自動車の充放電が不可能な状態である運転不可を示すフラグ値のいずれかが設定され、前記指令部は、前記運転/停止フラグの設定情報と前記運転可否フラグの設定情報とに基づいて、前記充放電器に前記電気自動車の充放電を実行させるか否かを指示する運転/停止指令を生成し、前記送信部は、前記運転/停止指令を前記充放電器にさらに送信する。
【発明の効果】
【0011】
本開示の中継装置は、処理装置から誘導指令値を受信し、受信した誘導指令値を出力目標値に変換する。そして、変換した出力目標値に基づいて、制御指令を生成し、生成した制御指令を充放電器に送信する。充放電器は、制御指令に基づいて、電気自動車の充電および放電を行う。したがって、中継装置は、処理装置と充放電器との通信を中継することで、充放電器を含めたエネルギー管理を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の中継装置(EVゲートウェイ)を備えた電力システムの全体構成例を示す図である。
図2】EVゲートウェイの構成例を示す図である。
図3】EVゲートウェイの各設定値の設定例を示している。
図4】強制充電処理が実行された場合の、電気自動車の充電率の変化を示すタイムチャートである。
図5】電気自動車の充電率による補正の効果を説明するためのシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の中継装置の好ましい実施の形態について、以下に説明する。
【0014】
図1は、本開示の中継装置を備えた電力システムの全体構成例を示している。本実施形態にかかる電力システムS1は、図1に示すように、電力線90、処理装置A1、複数の電力制御部B1、および、受電設備C1を備える。複数の電力制御部B1は、PV用出力制御部10、蓄電池用出力制御部20、および、複数のEV用出力制御部30を含んでいる。PVとは、Photovoltaicsの略称である。PV用出力制御部10には太陽電池12が接続されている。蓄電池用出力制御部20には蓄電池22が接続されている。複数のEV用出力制御部30のそれぞれには複数の電気自動車32がそれぞれ1台ずつ接続されている。本開示において、電気自動車32とは、電動機を動力源として走行可能な自動車をいい、内燃機関が併設された自動車(たとえばプラグインハイブリッド車)などを含む。電動機は、電気自動車32に備えられた蓄電池に蓄積された電力によって動作する。
【0015】
電力システムS1は、電力系統Dに連系されている。電力システムS1は、電力系統Dに送電可能(逆潮流可能)であり、かつ、電力系統Dから受電可能である。本開示において、電力システムS1から電力系統Dに電力が出力されているとき、すなわち、逆潮流しているとき、接続点電力が正の値となるものとする。一方、電力系統Dから電力システムS1に電力が出力されているとき、接続点電力が負の値となるものとする。接続点電力とは、電力システムS1と電力系統Dとの接続点における電力のことである。
【0016】
電力システムS1は、電力系統Dが正常である時、電気自動車を充電する充電ステーションあるいは電力デマンドピークを抑制する電力ピークカットシステムとして機能する。一方、電力系統Dに異常が発生した時、重要な負荷に電力を供給する非常用電源として機能する。電力システムS1が、充電ステーションとして機能するか、電力ピークカットシステムとして機能するか、あるいは、非常用電源として機能するかは、後述するEV運転モードによって決定する。
【0017】
電力システムS1は、処理装置A1と複数の電力制御部B1とが協調して、接続点電力が目標電力となるように電力制御を行う。目標電力とは、接続点電力の目標値のことである。電力システムS1の電力制御において、処理装置A1は、接続点電力を目標電力に制御するための誘導指令値を算出する。各電力制御部B1は、処理装置A1が算出した誘導指令値に基づいて、制御対象(太陽電池12、蓄電池22あるいは各電気自動車32)の出力目標値を算出する。そして、各電力制御部B1は、算出した出力目標値に基づいて、制御対象の出力電力を制御する。このように、電力システムS1は、複数の電力制御部B1が分散的に出力電力の制御を行うことで、接続点電力を目標電力に制御している。誘導指令値は、各電力制御部B1が出力目標値を算出するためのものでもある。本実施形態においては、処理装置A1によって算出される誘導指令値が大きいほど、接続点電力が小さくなり、誘導指令値が小さいほど、接続点電力が大きくなる。
【0018】
電力線90は、電力システムS1における電力ネットワークを構築するものである。電力システムS1は、電力線90によって、電力系統Dに接続される。電力線90は、各電力制御部B1と各制御対象とを接続するものと、各電力制御部B1と受電設備C1とを接続するものと、受電設備C1と電力負荷42とを接続するものとを含んでいる。
【0019】
受電設備C1は、配電盤や分電盤を含んで構成されている。受電設備C1は、処理装置A1と通信可能である。この通信は、無線方式であってもよいし、有線方式であってもよい。受電設備C1は、電力線90を介して、電力系統Dおよび各電力制御部B1から受電する。受電設備C1は、受信した電力を、電力線90を介して、電力系統D、各電力制御部B1(PV用出力制御部10を除く)、各電力負荷42などに送電する。受電設備C1は、電力システムS1と電力系統Dとの接続点に設置された電力センサ(図示略)を含んでおり、この電力センサで接続点電力を検出する。受電設備C1は、接続点電力の検出値を処理装置A1に送信する。受電設備C1は、必要に応じて、電力システムS1を電力系統Dに連系するための各種保護装置を含んでいる。例えば、電力システムS1が電力系統Dへの逆潮流を禁止されたシステムである場合、保護装置として、逆電力継電器を含む。
【0020】
電力負荷42は、電力を消費するものである。電力負荷42には、図示しない一般負荷と重要負荷とが含まれている。受電設備C1から電力負荷42への電力供給は、一般負荷と重要負荷とで切り分けられている。つまり、受電設備C1は、一般負荷だけに電力を供給したり、重要負荷だけに電力を供給したり、一般負荷および重要負荷の両方に電力を供給したりできる。
【0021】
処理装置A1は、複数の電力制御部B1および受電設備C1のそれぞれと通信可能である。これらの通信はそれぞれ、無線方式であってもよいし、有線方式であってもよい。処理装置A1は、接続点電力を監視し、接続点電力を目標電力に制御するための誘導指令値を算出する。接続点電力は、受電設備C1から受信する検出値を用いてもよいし、各電力制御部B1から通信によって取得した各出力電力の値から算出される推算値であってもよい。目標電力は、処理装置A1により電力システムS1の状況に応じて適宜自動的に設定されてもよいし、ユーザ操作により設定されてもよいし、処理装置A1の図示しない上位装置(例えば電力会社など)からの指示により設定されてもよい。処理装置A1は、算出した誘導指令値を、複数の電力制御部B1(PV用出力制御部10、蓄電池用出力制御部20および複数のEV用出力制御部30)のそれぞれに送信する。処理装置A1は、たとえば、下記(1)式および下記(2)式に示す状態方程式(連立微分方程式)が設定されており、この状態方程式を解くことで、誘導指令値pr(t)を算出する。処理装置A1は、誘導指令値の算出を所定時間(例えば1[sec])毎に行う。下記(1)式および下記(2)式において、P(t)は接続点電力、PC(t)は目標電力、λ(t)は状態変数、pr(t)は誘導指令値、εは勾配係数である。
【数1】
【0022】
処理装置A1には、充電許可フラグおよび放電許可フラグが設定されている。充電許可フラグは、電気自動車32の充電を許可するか禁止するかを示すフラグ情報である。充電許可フラグは、電気自動車32の充電を禁止する場合には、フラグ値「0」が設定され、一方、電気自動車32の充電を許可する場合には、フラグ値「1」が設定される。放電許可フラグは、電気自動車32の放電を許可するか禁止するかを示すフラグ情報である。放電許可フラグは、電気自動車32の放電を禁止する場合には、フラグ値「0」が設定され、一方、電気自動車32の放電を許可する場合には、フラグ値「1」が設定される。充電許可フラグおよび放電許可フラグはそれぞれ、処理装置A1に設定されるEV運転モードによって、設定される。EV運転モードは、電力システムS1のシステム機能を決定する設定であり、たとえば急速充電モード、ピークカットモード、非常用電源モードがある。急速充電モードは、電力システムS1を上記充電ステーションとして機能させ、各電気自動車32の充電を目的とする。急速充電モードでは、充電許可フラグにフラグ値「1」が設定され、かつ、放電許可フラグにフラグ値「0」が設定される。これにより、電力システムS1は、電気自動車32の充電が許可され、電気自動車32の放電が禁止される。ピークカットモードは、電力システムS1を電力ピークカットシステムとして機能させ、たとえば接続点電力のピークカットを目的としたモードである。ピークカットモードでは、充電許可フラグにフラグ値「1」が設定され、かつ、放電許可フラグにフラグ値「1」が設定される。これにより、電力システムS1は、電気自動車32の充電および放電の両方が許可される。非常用電源モードは、電力システムS1を非常用電源として機能させ、系統異常時などの事業継続計画に基づき、重要負荷(電力負荷42)に対して電力を供給することを目的とする。非常用電源モードでは、充電許可フラグにフラグ値「0」が設定され、かつ、放電許可フラグにフラグ値「1」が設定される。これにより、電力システムS1は、電気自動車32の充電が禁止され、電気自動車32の放電が許可される。処理装置A1は、充電許可フラグの設定情報および放電許可フラグの設定情報を各EV用出力制御部30に送信することで、EV運転モードの設定情報を各EV用出力制御部30(後述のEVGW33)に送信する。
【0023】
処理装置A1には、EV運転モード(充電許可フラグおよび放電許可フラグ)の他、運転/停止フラグが設定されている。運転/停止フラグは、各EV用出力制御部30に各電気自動車32の充放電を実行させるか否かを示すフラグ情報である。各EV用出力制御部30に各電気自動車32の充放電を実行させない場合には、運転/停止フラグにフラグ値「0」(停止指示を示すフラグ値)が設定され、一方、各EV用出力制御部30に各電気自動車32の充放電を実行させる場合には、運転/停止フラグにフラグ値「1」(運転指示を示すフラグ値)が設定される。運転/停止フラグは、処理装置A1により電力システムS1の状況に応じて適宜自動的に設定されてもよいし、ユーザ操作により設定されてもよいし、処理装置A1の図示しない上位装置(例えば電力会社など)からの指示により設定されてもよい。処理装置A1は、運転/停止フラグの設定情報を各EV用出力制御部30(後述のEVGW33)に送信する。
【0024】
複数の電力制御部B1はそれぞれ、接続される制御対象(太陽電池12、蓄電池22あるいは各電気自動車32)の出力電力の制御を行う。複数の電力制御部B1は、太陽電池12を制御対象とするPV用出力制御部10、蓄電池22を制御対象とする蓄電池用出力制御部20、および、各々が電気自動車32を制御対象とする複数のEV用出力制御部30を含んでいる。
【0025】
PV用出力制御部10は、太陽電池12による発電を制御する。PV用出力制御部10は、太陽光パワーコンディショナ11および太陽光ゲートウェイ13を含んでいる。以下の説明において、パワーコンディショナを「PCS」といい、ゲートウェイを「GW」という。太陽光PCS11と太陽光GW13とは、双方向通信を行う。太陽光PCS11と太陽光GW13とは、別のモジュールで構成されたものに限定されず、1つのモジュールで構成されていてもよい。
【0026】
太陽光GW13は、処理装置A1と太陽光PCS11との通信を中継する。太陽光GW13は、処理装置A1から誘導指令値を受信し、受信した誘導指令値に基づいて、太陽光PCS11の出力目標値を算出する。出力目標値の算出方法については、後述する。太陽光GW13は、算出した出力目標値を含む制御指令を生成し、これを太陽光PCS11に送信する。
【0027】
太陽光PCS11は、太陽電池12が接続され、太陽電池12が発電した電力(例えば直流電力)を系統連系に適した電力(例えば交流電力)に変換して出力する。図1では、太陽光PCS11に、1つの太陽電池12が接続されているが、複数の太陽電池12が接続されていてもよい。太陽光PCS11は、電力線90によって、受電設備C1に接続される。太陽光PCS11は、太陽電池12が発電した電力を受電設備C1に出力する。太陽光PCS11は、太陽光GW13から受信する制御指令に基づいて、太陽電池12の発電量を制御することで、制御対象(太陽電池12)の出力電力の制御を行う。具体的には、太陽光PCS11は、太陽電池12の出力電力が、制御指令に含まれる出力目標値となるように、電力制御を行う。
【0028】
蓄電池用出力制御部20は、蓄電池22の充放電を制御する。蓄電池用出力制御部20は、蓄電池PCS21および蓄電池GW23を含んでいる。蓄電池PCS21と蓄電池GW23とは、双方向通信を行う。蓄電池PCS21と蓄電池GW23とは、別のモジュールで構成されたものに限定されず、1つのモジュールで構成されていてもよい。
【0029】
蓄電池GW23は、処理装置A1と蓄電池PCS21との通信を中継する。蓄電池GW23は、処理装置A1から誘導指令値を受信し、受信した誘導指令値に基づいて、蓄電池PCS21の出力目標値を算出する。出力目標値の算出方法については、後述する。蓄電池GW23は、算出した出力目標値を含む制御指令を生成し、これを蓄電池PCS21に送信する。
【0030】
蓄電池PCS21は、蓄電池22が接続され、蓄電池22の充放電を行う。図1では、蓄電池PCS21に、1つの蓄電池22が接続されているが、複数の蓄電池22が接続されていてもよい。蓄電池22は、たとえば二次電池あるいはコンデンサである。蓄電池PCS21は、電力線90によって、受電設備C1に接続される。蓄電池PCS21は、受電設備C1から入力される電力を蓄電池22に供給することで、蓄電池22の充電を行う。また、蓄電池PCS21は、蓄電池22に蓄積された電力を受電設備C1に出力することで、蓄電池22の放電を行う。蓄電池PCS21は、蓄電池GW23から受信する制御指令に基づいて、蓄電池22への電力供給量および蓄電池22の電力放出量を制御することで、制御対象(蓄電池22)の出力電力の制御を行う。具体的には、蓄電池PCS21は、蓄電池22の出力電力が、制御指令に含まれる出力目標値となるように、電力制御を行う。蓄電池PCS21は、受信した制御指令における出力目標値が正の値のとき、蓄電池22の放電を行う。一方、受信した制御指令における出力目標値が負の値のとき、蓄電池22の充電を行う。
【0031】
複数のEV用出力制御部30はそれぞれ、電気自動車32の充放電を制御する。複数のEV用出力制御部30はそれぞれ、EV充放電器31およびEVGW33を含んでいる。EV充放電器31とEVGW33とは、双方向通信を行う。EV充放電器31とEVGW33とは、別のモジュールで構成されたものに限定されず、1つのモジュールで構成されていてもよい。
【0032】
複数のEVGW33はそれぞれ、処理装置A1と各EV充放電器31との通信を中継する。各EVGW33は、処理装置A1から誘導指令値を受信し、受信した誘導指令値に基づいて、各EV充放電器31の出力目標値を算出する。出力目標値の算出方法については、後述する。各EVGW33は、算出した出力目標値を含む制御指令を生成し、これを各EV充放電器31にそれぞれ送信する。各EVGW33の詳細な構成については、後述する。各EVGW33が、特許請求の範囲に記載の「中継装置」に相当する。
【0033】
複数のEV充放電器31はそれぞれ、電気自動車32が接続され、電気自動車32の充放電(詳細には電気自動車32に備えられた蓄電池の充放電)を行う。図1では、各EV充放電器31に、1台の電気自動車32が接続されているが、複数台の電気自動車32が接続されてもよい。各EV充放電器31は、電力線90によって、受電設備C1に接続される。各EV充放電器31は、受電設備C1から入力される電力を各電気自動車32にそれぞれ供給することで、各電気自動車32の充電を行う。また、各EV充放電器31は、各電気自動車32にそれぞれ蓄積された電力を受電設備C1に出力することで、各電気自動車32の放電を行う。各EV充放電器31は、各EVGW33から受信する制御指令に基づいて、各電気自動車32への電力供給量および各電気自動車32の電力放出量を制御することで、制御対象(各電気自動車32)の出力電力の制御を行う。各EV充放電器31は、受信した制御指令における出力目標値が正の値のとき、各電気自動車32の放電を行う。一方、受信した制御指令における出力目標値が負の値のとき、電気自動車32の充電を行う。以下の説明において、正の値である出力目標値を「放電目標値」、負の値である出力目標値を「充電目標値」ということがある。
【0034】
各EV充放電器31は、接続される電気自動車32から、当該電気自動車32の充電率(SoC:State of Charge)を取得する。各EV充放電器31は、各電気自動車32の充電率を各EVGW33に送信する。電気自動車32の充電率の情報は、各EVGW33において、出力目標値の算出、および、後述する放電禁止処理および強制充電処理を実行するか否かの判定に用いられる。
【0035】
各EV充放電器31には、運転可否フラグが設定されている。運転可否フラグは、各EV充放電器31が各電気自動車32の充放電を実行可能な状態(運転可能な状態)か否かを示すフラグ情報である。EV充放電器31が運転不可能な状態のとき、運転可否フラグにフラグ値「0」が設定され、一方、EV充放電器31が運転可能な状態のとき、運転可否フラグにフラグ値「1」が設定される。各EV充放電器31は、運転可否フラグの設定情報を各EVGW33にそれぞれ送信する。
【0036】
各EV充放電器31は、たとえばディスプレイ(図示略)やスピーカ(図示略)などの報知装置を備えている。各EV充放電器31は、報知装置での報知(たとえばディスプレイへの表示やスピーカからの音声出力)によって、電気自動車32の充電状況やシステム異常などを、ユーザに知らせることが可能である。
【0037】
次に、各EVGW33の詳細な構成例について、図2を参照して、説明する。同図に示すように、各EVGW33は、受信部331、フラグ設定部332、算出部333、指令部334、および、送信部335を備えている。
【0038】
受信部331は、処理装置A1および各EV充放電器31から送信された複数の信号を受信する。処理装置A1から受信する信号には、誘導指令値に基づく信号、運転/停止フラグの設定情報に基づく信号、および、EV運転モードの設定情報(充電許可フラグおよび放電許可フラグの各設定情報)に基づく信号がある。各EV充放電器31から受信する信号には、各電気自動車32の充電率に基づく信号、および、運転可否フラグの設定情報に基づく信号がある。
【0039】
フラグ設定部332は、各EVGW33に設けられた操作部(図示略)によって、ピークカット時放電許可フラグの設定操作が行われると、その設定操作に応じて、ピークカット時放電許可フラグを設定する。ピークカット時放電許可フラグは、EV運転モードがピークカットモードであっても特定のEV充放電器31に対して放電させないように設定するためのフラグである。各電気自動車32の放電を禁止する場合、ピークカット時放電許可フラグにフラグ値「0」が設定され、各電気自動車32の放電を許可する場合、ピークカット時放電許可フラグにフラグ値「1」が設定される。
【0040】
フラグ設定部332は、処理装置A1の内部異常の発生有無に応じて、異常フラグを設定する。この異常フラグを「第1異常フラグ」という。処理装置A1の内部で異常が発生していない場合、第1異常フラグにフラグ値「0」が設定され、処理装置A1の内部で異常が発生している場合、第1異常フラグにフラグ値「1」が設定される。また、フラグ設定部332は、各EVGW33の内部異常の発生有無に応じて、異常フラグを設定する。この異常フラグを「第2異常フラグ」という。各EVGW33の内部で異常が発生していない場合、第2異常フラグにフラグ値「0」が設定され、各EVGW33の内部で異常が発生している場合、第2異常フラグにフラグ値「1」が設定される。
【0041】
算出部333は、受信部331が処理装置A1から受信した誘導指令値と、受信部331が処理装置A1から受信したEV運転モードの設定情報(充電許可フラグおよび放電許可フラグの各設定情報)と、受信部331が各EV充放電器31から受信した電気自動車32の充電率と、に基づいて、EV充放電器31の出力目標値を算出する。出力目標値の算出方法については、後述する。
【0042】
指令部334は、受信部331が受信したEV運転モードの設定情報(充電許可フラグおよび放電許可フラグの各設定情報)と、算出部333が算出した出力目標値と、フラグ設定部332が設定したピークカット時放電許可フラグの設定情報と、に基づいて、制御指令を生成する。制御指令には、出力目標値および充放電指令が含まれている。充放電指令は、指令値「0」のとき、電気自動車32の充電を指示する充電指令を示し、指令値「1」のとき、電気自動車32の放電を指示する放電指令を示す。充放電指令は、通常、算出された出力目標値に準じて決定され、出力目標値が放電目標値(正の値)の場合、指令値「1」となり、出力目標値が充電目標値(負の値)の場合、指令値「0」となる。ただし、充電許可フラグがフラグ値「0」のとき、出力目標値が充電目標値であっても、充放電指令を指令値「1」(放電指令)にする。このとき、出力目標値も0kWに補正する。また、放電許可フラグがフラグ値「0」のとき、出力目標値が放電目標値であっても、充放電指令を指令値「0」(充電指令)にする。このとき、出力目標値も0kWに補正する。さらに、ピークカット時放電許可フラグがフラグ値「0」のとき、出力目標値が放電目標値であっても、充放電指令を指令値「0」(充電指令)とする。このとき、出力目標値も0kWに補正する。
【0043】
指令部334は、制御指令を生成する際、各電気自動車32の充電率が第1閾値(例えば35%)以下である場合、次に示す放電禁止処理を行う。この放電禁止処理において、指令部334は、算出部333が算出した出力目標値が放電目標値であっても、出力目標値をたとえば0kWに補正する。そして、指令部334は、出力目標値として、補正した出力目標値(0kW)を用いて制御指令を生成する。この放電禁止処理により、各電気自動車32の充電率が第1閾値以下のときには、算出される出力目標値が放電目標値であっても、各EV充放電器31に各電気自動車32を放電させないように制御される。さらに、指令部334は、放電禁止処理を実行中に、電気自動車32の充電率が第2閾値以下になると、次に示す強制充電処理を行う。第2閾値は、電気自動車32の充電率の下限値(例えば30%)が設定され、第1閾値よりも小さい値である。この強制充電処理において、指令部334は、出力目標値として、予め設定された強制充電目標値を用いて制御指令を生成する。強制充電目標値は、充電目標値であり、出力目標値が負の値のとき電気自動車32の充電を行う本実施形態では例えば−3kWである。この強制充電処理により、各電気自動車32の充電率が第2閾値以下となると、各EV充放電器31に各電気自動車32を強制的に充電させるように制御される。なお、強制充電処理は、たとえば非常用電源モードが設定され、充電許可フラグがフラグ値「0」(充電禁止)であった場合でも、実行される。強制充電処理は、各電気自動車32の充電率が予め設定された強制充電終了閾値(例えば32%)以上となった場合に、終了される。強制充電終了閾値は、第1閾値と第2閾値との間の値であってもよいし、第1閾値と同じ値であってもよい。また、強制充電処理は、算出部333によって算出される出力目標値が、強制充電目標値よりも小さい値になったときも、終了される。
【0044】
指令部334は、受信部331が受信した運転/停止フラグの情報と、受信部331が受信した運転可否フラグの情報とに基づいて、運転/停止指令を生成する。運転/停止指令は、指令値「0」のとき、各EV充放電器31に各電気自動車32の充放電を実行させない停止指令を示し、指令値「1」のとき、各EV充放電器31に各電気自動車32の充放電を実行させる運転指令を示す。指令部334は、運転/停止フラグがフラグ値「1」(運転指示を示すフラグ値)であり、かつ、運転可否フラグがフラグ値「1」(運転可能を示すフラグ値)であるとき、運転/停止指令を指令値「1」(運転指令)にし、それ以外のとき、運転/停止指令を指令値「0」(停止指令)にする。つまり、運転/停止フラグあるいは運転可否フラグのいずれか一方でもフラグ値「0」の場合には、運転/停止指令は指令値「0」となる。
【0045】
指令部334は、フラグ設定部332によって設定された第1異常フラグを確認し、第1異常フラグがフラグ値「1」である場合、第1異常フラグの設定情報を送信部335に出力する。また、指令部334は、フラグ設定部332によって設定された第2異常フラグを確認し、第2異常フラグがフラグ値「1」である場合、第2異常フラグの設定情報を送信部335に出力する。指令部334は、受信部331が受信した放電許可フラグの設定情報を確認し、放電許可フラグがフラグ値「1」である場合、放電許可フラグの設定情報を送信部335に出力する。
【0046】
送信部335は、指令部334が生成した制御指令および運転/停止指令をEV充放電器31に送信する。また、送信部335は、指令部334から入力される放電許可フラグの設定情報、第1異常フラグの設定情報および第2異常フラグの設定情報をEV充放電器31に送信する。
【0047】
送信部335から送信された運転/停止指令は、各EV充放電器31に受信され、各EV充放電器31は、受信した運転/停止指令が指令値「0」(停止指令)のとき、電気自動車32の充放電を行わず、一方、受信した運転停止指令が指令値「1」(運転指令)のとき、電気自動車32の充放電を行う。
【0048】
送信部335から送信された制御指令は、各EV充放電器31に受信され、各EV充放電器31は、運転停止指令が指令値「1」のとき、受信した制御指令に基づいて、電気自動車32の充放電制御を実行する。具体的には、各EV充放電器31は、出力電力が、受信した制御指令に含まれる出力目標値となるように、各電気自動車32の充放電を制御する。
【0049】
送信部335から送信された第1異常フラグの設定情報は、各EV充放電器31に受信され、各EV充放電器31は、第1異常フラグの設定情報を受信すると、電気自動車32の充放電を停止するとともに、処理装置A1に異常が発生したことを、図示しない報知装置によって、ユーザに知らせる。また、送信部335から送信された第2異常フラグの設定情報は、各EV充放電器31に受信され、各EV充放電器31は、第2異常フラグの設定情報を受信すると、電気自動車32の充放電を停止するとともに、各EVGW33に異常が発生したことを、図示しない報知装置によって、ユーザに知らせる。
【0050】
送信部335から送信された放電許可フラグの設定情報は、各EV充放電器31に受信され、各EV充放電器31は、放電許可フラグの設定情報を受信すると、電気自動車32の放電が行われる可能性があることを、図示しない報知装置によって、ユーザに知らせる。
【0051】
次に、各電力制御部B1(具体的には、太陽光GW13、蓄電池GW23、および、複数のEVGW33のそれぞれ)が行う出力目標値の算出方法について説明する。以下の説明において、太陽光GW13、蓄電池GW23、および、複数のEVGW33をそれぞれ、「GW部」ということがある。各GW部13,23,33は、処理装置A1から受信した誘導指令値を用いて、予め設定された最適化問題に基づいて、出力目標値を算出する。この最適化問題は、評価関数と制約条件とを含んでいる。
【0052】
各GW部13,23,33は、設定されている評価関数から導出される下記(3)式および下記(4)式で示す演算式が設定されており、この演算式によって、出力目標値Prefを算出する。下記(3)式および下記(4)式において、Prefは太陽光PCS11、蓄電池PCS21および複数のEV充放電器31の各出力目標値、prは誘導指令値、prlmtは誘導指令値限界、a1は第1パラメータ、a2は第2パラメータ、a3は第3パラメータ、a4は第4パラメータである。誘導指令値限界prlmtは、電力システムS1で用いる誘導指令値prの最大値および最小値を定義する値である。下記(4)式で算出される値Λは、誘導指令値prの最小値(−prlmt)と誘導指令値prの最大値(prlmt)との間の値に制限される。第1パラメータa1は、主に誘導指令値prの変化に応じた出力電力の変化量を調整するパラメータである。第2パラメータa2は、主に誘導指令値prが0付近での出力電力を調整するパラメータである。第3パラメータa3は、主に出力電力が変化し始める誘導指令値prを調整するパラメータである。第4パラメータa4は、接続される蓄電池22の充電率(SoC)あるいは接続される電気自動車32の充電率(SoC)に応じたパラメータである。これらの各設計パラメータa1〜a4は、太陽光GW13、蓄電池GW23および複数のEVGW33にそれぞれ設定されている。設計パラメータa1〜a4の設定値については、後述する。なお、各GW部13,23,33は、下記(3)式および下記(4)式で示す演算式ではなく、設定されている評価関数を解くことで、出力目標値Prefを算出してもよい。
【数2】
【0053】
各GW部13,23,33は、上記(3)式および上記(4)式で示す演算式によって算出された出力目標値Prefが、太陽光GW13、蓄電池GW23および複数のEVGW33のそれぞれに設定される制約条件を満たしていない場合には、制約条件を満たすように、出力目標値を補正する。太陽光GW13および蓄電池GW23に設定された各制約条件についての説明は、省略する。
【0054】
各EVGW33の制約条件は、制限出力制約と、EV運転モード制約と、出力電流制約とがあり、例えば下記(5)式で示される。制限出力制約は、下記(5a)式で示される。下記(5a)式において、Pmaxは、出力電力の最大値(出力最大値)を表し、Pminは、出力電力の最小値(出力最小値)を表している。EV運転モード制約は、下記(5b)式で示される。α,βは、処理装置A1から受信するEV運転モードの設定情報(放電許可フラグおよび充電許可フラグの各設定情報)によって調整される調整パラメータを表している。例えば、充電許可フラグがフラグ値「0」(充電禁止を示すフラグ値)のとき、αに0が設定され、充電許可フラグがフラグ値「1」(充電許可を示すフラグ値)のとき、αにPminが設定される。また、放電許可フラグがフラグ値「0」(放電禁止を示すフラグ値)のとき、βに0が設定され、放電許可フラグがフラグ値「1」(放電許可を示すフラグ値)のとき、βにPmaxが設定される。出力電流制約は、下記(5c)式で示される。下記(5c)式において、Q31は各EV充放電器31の無効電力、S31dは各EV充放電器31の出力可能な最大の皮相電力、V0は設計時における接続点の基準電圧、V31は各EV充放電器31の出力電圧をそれぞれ表している。なお、出力電流制約の代わりに、EV充放電器31の定格容量による制約(定格容量制約)を用いてもよい。
【数3】
【0055】
各GW部13,23,33には、上記最適化問題に基づいて出力目標値Prefを算出するために、複数の設定値が設定されている。複数の設定値には、たとえば、最大出力設定値svmax、最小出力設定値svmin、第1設定値sv1、第2設定値sv2、第3設定値sv3、および、第4設定値sv4がある。最大出力設定値svmaxは、出力最大値Pmaxを規定する設定値である。最小出力設定値svminは、出力最小値Pminを規定する設定値である。最大出力設定値svmaxおよび最小出力設定値svminは、たとえば太陽光PCS11、蓄電池PCS21および複数のEV充放電器31のそれぞれに規定される定格出力に基づき設定される。第1設定値sv1は、第1パラメータa1に代入する値の設定値である。第1設定値sv1は、任意の値であって、逆潮流時の接続点電力を正の値としたときには、「0」以上の値が設定される。第2設定値sv2は、第2パラメータa2に代入する値の設定値である。第2設定値sv2は、「+1」,「0」,「−1」のいずれかが設定される。第2設定値sv2が「+1」の時、誘導指令値prが「0」付近の値で出力目標値Prefが正の値となり、第2設定値sv2が−1の時、誘導指令値prが「0」付近の値で出力目標値Prefが負の値となり、第2設定値sv2が「0」の時、誘導指令値prが「0」付近の値で出力目標値Prefが「0」となる。第3設定値sv3は、第3パラメータa3に代入する値の設定値である。第3設定値は、任意の値が設定される。第4設定値sv4は、第4パラメータa4に代入する値の設定値である。第4設定値sv4(第4パラメータa4)は、次のように設定される。それは、太陽光GW13には、蓄電池が接続されないため固定値1が設定され、蓄電池GW23および各EVGW33には、下記(6)式の演算値が設定される。下記(6)式において、ωSoCは、下記(7)式で算出され、ωSoC_tmpは、下記(8)式あるいは下記(9)式のうちいずれか小さい方が用いられる。下記(7)式ないし下記(9)式において、ASoCは重みwSoCのオフセット、KSoCは重みwSoCのゲイン、sswは重みwSoCのオン/オフスイッチ(例えば、オンのとき1,オフのとき0)、SoCpは蓄電池22あるいは各電気自動車32の現在のSoC、SoCdは基準となるSoCをそれぞれ示している。各EVGW33においては、SoCPは、受信部331が各EV充放電器31から受信した各電気自動車32の充電率の値が用いられる。これらの各設定値は、受信する誘導指令値が正の値の時と負の値の時とでそれぞれ別々に設定可能である。誘導指令値が正の値(「0」を含む)である時に対応した設定を「正の誘導指令値設定」といい、誘導指令値が負の値である時に対応した設定を「負の誘導指令値設定」という。
【数4】
【0056】
例えば、EVGW33において、図3(a)に示すように、各設定値svmax,svmin,sv1,sv2,sv3を設定することで、誘導指令値prに対する出力目標値Prefの変化特性は、図3(b)に示す特性線で示される。なお、第4設定値sv4は、「1」が設定されているものとする。EVGW33においては、例えば、上記(7)式ないし上記(9)式のsswを「0」にすることで、第4設定値sv4を「1」にしている。この設定値sv4の設定により、出力目標値Prefの算出時に、蓄電池22の充電率および各電気自動車32の充電率を考慮させていない。図3は、3つのEVGW33における各設定例である。3つのEVGW33をそれぞれ、EVGW33a,33b,33cと区別する。
【0057】
各EVGW33a〜33cにおいて、図3(a)に示すように、正の誘導指令値設定および負の誘導指令値設定の各第2設定値sv2に、固定値「−1」が設定されている。この設定により、図3(b)に示すように、誘導指令値prが「0」の時に、各EVGW33a〜33cの各出力目標値Prefが負の値となっている。つまり、各EVGW33a〜33cは、誘導指令値prが「0」の時に、各EV充放電器31に、電気自動車32を充電させる(受電設備C1から受電させる)。また、各EVGW33a〜33cにおいて、正の誘導指令値設定の各設定値が、図3(a)に示すように設定されている。この設定により、図3(b)に示すように、誘導指令値prが正の値の時に、各EVGW33a〜33cの出力目標値Prefが出力最小値Pminになっている。つまり、各EVGW33a〜33cは、誘導指令値prが正の値の時、各EV充放電器31に、設定される出力最小値Pminの電力で電気自動車32を充電させる(受電設備C1から受電させる)。
【0058】
以上のように構成された電力システムS1において、各EVGW33は、処理装置A1および各EV充放電器31から、誘導指令値および各フラグ情報を受信する。各EVGW33は、受信した誘導指令値や各フラグ情報に基づいて、各指令(制御指令や運転/停止指令)を生成し、各EV充放電器31に送信する。そして、各EV充放電器31は、受信した各指令に基づいて、各電気自動車32の充放電を実行する。つまり、各EV用出力制御部30が、誘導指令値を用いた電力制御を行うとともに、各フラグ情報を処理することで、電力システムS1は、誘導指令値を用いた電力制御を行いつつ各電気自動車32の充放電特有の電力制御を行うことができる。
【0059】
電力システムS1において各EV用出力制御部30は、各電気自動車32を充電する制御と、各電気自動車32を放電する制御とが、切り替わることがある。このとき、次に示す順序で、各電気自動車32を充電する制御と、各電気自動車32を放電する制御との切り替えが行われる。以下に示す順序は、各電気自動車32を充電する制御から各電気自動車32を放電する制御に切り替える場合を示すが、逆も同様に行われる。たとえば、各EVGW33から各EV充放電器31に送信される出力目標値(制御指令)が充電目標値から放電目標値に変わったときに、各電気自動車32を充電する制御から各電気自動車32を放電する制御に切り替わる。また、以下に示す順序においては、各EVGW33は、処理装置A1から受信する運転/停止フラグは、常にフラグ値「1」(運転を指示するフラグ値)であるものとする。
【0060】
各EVGW33において、算出される出力目標値が、充電目標値から放電目標値に変わると、まず、各EVGW33は、充放電指令を、指令値「0」(充電指令)から指令値「1」(放電指令)に変更し、指令値「1」の充放電指令(制御指令)を各EV充放電器31に送信する。各EV充放電器31は、指令値「1」(放電指令)の充放電指令を受信すると、運転可否フラグをフラグ値「0」(運転不可を示すフラグ値)にし、運転可否フラグの設定情報(フラグ値「0」)を、各EVGW33に送信する。各EVGW33は、運転可否フラグの設定情報としてフラグ値「0」を受信すると、指令値「0」(停止指令)の運転/停止指令を各EV充放電器31に送信する。
【0061】
次いで、各EV充放電器31は、指令値「0」の運転/停止指令を受信すると、充電動作シーケンスから、充電終了シーケンスを経て、充電待機シーケンスに移行する。つまり、各EV充放電器31は、各電気自動車32を充電している状態から、各電気自動車32の充電を終了し、各電気自動車32の充電を待機する状態に移行する。各EV充放電器31は、充電待機シーケンスに移行すると、各EVGW33から受信する指令値「1」(放電指令)の充放電指令に従い、充電待機シーケンスから放電待機シーケンスに移行する。つまり、各EV充放電器31は、各電気自動車32の充電を待機する状態から各電気自動車32の放電を待機する状態に移行する。充電待機シーケンスおよび放電待機シーケンスにおいては、各EV充放電器31はスタンバイ状態にある。スタンバイ状態は、各EV充放電器31内の動作中のハードディスクやディスプレイなどの機器を一時的に停止して、必要に応じて即座に復帰できるようにした状態をいう。
【0062】
次いで、各EV充放電器31は、運転開始時の動作チェックを開始する。各EV充放電器31は、当該動作チェックが問題なく終了したら、運転可否フラグをフラグ値「0」(運転不可を示すフラグ値)からフラグ値「1」(運転可能を示すフラグ値)に切り替え、各EVGW33に、運転可否フラグの設定情報(フラグ値「1」)を送信する。
【0063】
次いで、各EVGW33は、運転可否フラグの設定情報としてフラグ値「1」を受信すると、指令値「1」(運転指令)の運転/停止指令を各EV充放電器31に送信する。そして、各EV充放電器31は、指令値「1」(運転指令)の運転/停止指令を受信すると、放電待機シーケンスから、放電準備シーケンスを経て、放電動作シーケンスに移行する。つまり、各EV充放電器31は、各電気自動車32の放電を待機する状態から、各電気自動車32の放電の準備をし、各電気自動車32の放電を開始する。以上の手順を経て、電気自動車32を充電する制御から電気自動車32を放電する制御に移行する。
【0064】
本開示の電力システムS1の作用効果は、次の通りである。
【0065】
電力システムS1は、処理装置A1とEV充放電器31との通信を中継するEVGW33を備えている。処理装置A1は、接続点電力を目標電力にするための誘導指令値を算出する。EV充放電器31は、受信する制御指令に基づいて、電気自動車32の充電および放電を行う。EVGW33は、受信部331、算出部333、指令部334および送信部335を備えている。受信部331は、処理装置A1から誘導指令値およびEV運転モードの設定情報を受信する。算出部333は、受信部331が受信した誘導指令値およびEV運転モードの設定情報に基づいて、EV充放電器31の出力目標値を算出する。指令部334は、算出部333が算出した出力目標値および受信部331が受信したEV運転モードの設定情報に基づいて、制御指令を生成する。送信部335は、指令部334が生成した制御指令を、EV充放電器31に送信する。この構成によると、EVGW33は、処理装置A1から誘導指令値を受信し、受信した誘導指令値を出力目標値に変換する。そして、変換した出力目標値に基づいて、制御指令を生成して、生成した制御指令をEV充放電器31に送信する。したがって、EVGW33は、電力システムS1においてEV充放電器31を含めたエネルギー管理を可能にする。
【0066】
電力システムS1では、EV運転モードの設定情報は、充電許可フラグの設定情報と放電許可フラグの設定情報とを含む。算出部333は、誘導指令値から出力目標値を算出する際、充電許可フラグの設定情報と放電許可フラグの設定情報とを確認し、各設定情報によって、最適化問題の制約条件(上記(5b)式参照)を変えている。この構成によると、EVGW33は、EV運転モードの設定に応じて、算出される出力目標値を変化させることができる。たとえば、充電を許可しない非常用電源モードが設定されている場合には、EVGW33は、上記(5b)式の制約条件によって出力目標値が充電目標値にならないようにし、EV充放電器31に電気自動車32を充電させない。また、放電を許可しない急速充電モードが設定されている場合には、EVGW33は、上記(5b)式の制約条件によって、出力目標値が放電目標値とならないようにし、EV充放電器31に電気自動車32を放電させない。したがって、EVGW33は、設定されるEV運転モードに応じた制約(上記(5b)式)により、設定されるEV運転モードに対応した電気自動車32の充放電制御を、EV充放電器31に指示できる。
【0067】
電力システムS1では、EVGW33は、電気自動車32の充電率が第1閾値以下にとなると、放電禁止処理を実行し、電気自動車32を放電させない。具体的には、EVGW33は、電気自動車32の充電率が第1閾値以下の場合には、算出された出力目標値が、電気自動車32を放電させる放電目標値であっても、出力目標値を補正し、補正目標値(たとえば0kW)を用いて制御指令を生成する。この構成によると、電気自動車32の充電率が第1閾値以下となった場合、EVGW33は、EV充放電器31に電気自動車32を放電させないように指示することができる。電気自動車32の過放電によって電気自動車32が全く移動できなくなる状況は望ましくない。たとえば、非常用電源モードにおいて、各電気自動車32の充電率が下限となり、移動できなければ、他の電気自動車を接続して、重要負荷(電力負荷42)に電力を供給することができなくなる。したがって、EVGW33は、電気自動車32の充電率が第1閾値以下の場合に、電気自動車32を放電させないことで、電気自動車32の過放電を抑制することができる。
【0068】
電力システムS1では、EVGW33は、電気自動車32の充電率が第2閾値以下になると、強制放電処理を実行し、強制的に電気自動車32を充電している。電気自動車32は、EV充放電器31に接続されていると、たとえばEV充放電器31の補機損失により、電気自動車32の電力が徐々に放出されることがある。そのため、上記放電禁止処理により、電気自動車32の放電が禁止されていても、電気自動車32の充電率が低下する可能性がある。そこで、各EVGW33は、強制充電処理を実行することで、電気自動車32の過放電を抑制できる。図4は、強制充電処理が実行された場合の、電気自動車32の充電率の変化を示している。時刻t1までは、電気自動車32の放電が行われているものとする。時刻t1までは、電気自動車32の放電により、電気自動車32の充電率が徐々に低下する。そして、時刻t1において、電気自動車32の充電率が第1閾値以下になり、放電禁止処理が開始される。放電禁止処理が開始されても、上記の通り、EV充放電器31の補機損失により、電気自動車32の充電率が徐々に低下する。その後、時刻t2において、電気自動車32の充電率が第2閾値以下となり、続いて、強制充電処理が開始される。この強制充電処理によって、電気自動車32が充電され、電気自動車32の充電率が徐々に増大する。そして、時刻t3において、電気自動車32の充電率が強制充電終了閾値以上となるので、強制充電処理が終了する。時刻t3においては、電気自動車32の充電率がまだ第1閾値以下である。このとき、出力目標値が充電目標値とならなければ、再び放電禁止処理が行われる。このように、強制充電処理によって、電気自動車32の充電率が、第2閾値未満にならないので、過放電によって電気自動車32が移動できなくなる状況を防ぐことができる。
【0069】
電力システムS1では、EVGW33の受信部331は、処理装置A1から運転/停止フラグの設定情報と、EV充放電器31から運転可否フラグの設定情報と、を受信している。EVGW33の指令部334は、運転/停止フラグの設定情報と、運転可否フラグの設定情報と、に基づいて、運転/停止指令を生成する。EVGW33の送信部335は、運転/停止指令をEV充放電器31に送信する。EV充放電器31は、運転/停止指令を受信すると、受信した運転/停止指令に従い、指令値「1」(運転指令)の場合、電気自動車32の充放電を実行し、指令値「0」(停止指令)の場合、電気自動車32の充放電を停止する。これにより、EVGW33は、EV充放電器31が運転不能な状態のとき、あるいは、処理装置A1から停止が指示されたときに、EV充放電器31の運転を停止させることができる。
【0070】
電力システムS1では、EVGW33は、出力目標値の算出の際、上記(7)ないし上記(9)式のSSWを「1」とすることで、電気自動車32の充電率(SoC)を考慮している。この構成によると、EVGW33による出力目標値の算出において、同じ誘導指令値に対して、電気自動車32の充電率による補正がされる。これにより、たとえば、充電率が低い電気自動車32が接続されたEV充放電器31ほど、充電量が他のEV充放電器31よりも大きく、放電量が他のEV充放電器31よりも小さくなる。図5は、電気自動車32の充電率を考慮した場合の、出力目標値の変化および充電率の変化をシミュレーションした結果を示している。当該シミュレーションにおいては、初期の充電率が異なる3台の電気自動車32が接続された場合の効果を検証した。なお、当該シミュレーションにおいては、放電禁止処理および強制充電処理は実行しないものとする。図5(a)は、各EVGW33が算出する出力目標値の変化を示しており、図5(b)は、各電気自動車32の充電率の変化を示している。各EVGW33には、同じ誘導指令値が送信されている。図5(a),(b)において、実線は、初期の充電率が50%である電気自動車32に対する結果を示し、破線は、初期の充電率が70%である電気自動車32に対する結果を示し、一点鎖線は、初期の充電率が80%である電気自動車32に対する結果を示している。実線で示す電気自動車32の初期の充電率が他の電気自動車32の初期の充電率よりも小さいため、図5(a)に示すように、出力目標値が他の出力目標値よりも小さい。これは、初期の充電率が50%である電気自動車32が、充電時には充電量が相対的に多くなり、放電時には放電量が相対的に少なくなることを表している。一方、図5(b)に示すように、一点鎖線で示す電気自動車32の初期の充電率が他の電気自動車32の初期の充電率よりも大きいため、図5(a)に示すように、出力目標値が他の出力目標値よりも大きい。これは、初期の充電率が80%の電気自動車32が、充電時には充電量が相対的に少なくなり、放電時には放電量が相対的に多くなることを表している。これにより、図5(b)に示すように、初期状態では、不平衡であった3台の電気自動車32の充電率が徐々に同程度に収束し、充電率の差が小さくなっていることが分かる。したがって、EVGW33は、電気自動車32の充電率に応じて、充電量や放電量を変化させているため、電力システムS1が複数の電気自動車32を備える場合でも、効率的な電力制御を行うことができる。
【0071】
電力システムS1では、各EVGW33は、処理装置A1から受信する放電許可フラグの設定情報を確認し、放電許可フラグがフラグ値「1」(放電許可)である場合、その旨をEV充放電器31に送信している。これにより、電気自動車32が放電される可能性を報知できるので、ユーザは、放電される可能性があることを知ることができる。たとえば、ユーザは、諸事情により、電気自動車32を充電したいが、電気自動車32を放電させたくない場合がある。このとき、ユーザは、放電される可能性があることを知ることができるので、たとえば、EVGW33のピークカット時放電許可フラグをフラグ値「0」(ピークカット時放電禁止)に設定することで、放電させないようにできる。
【0072】
電力システムS1では、処理装置A1に異常が発生した場合、EVGW33から、第1異常フラグがEV充放電器31に送信される。これにより、EV充放電器31は、第1異常フラグに基づいて、処理装置A1に異常が発生したことを検出できるので、電気自動車32の充放電を停止したり、ユーザに報知したりできる。また、電力システムS1は、EVGW33に異常が発生した場合、EVGW33から、第2異常フラグがEV充放電器31に送信される。これにより、EV充放電器31は、第2異常フラグに基づいて、EVGW33に異常が発生したことを検出できるので、電気自動車32の充放電を停止したり、ユーザに報知したりできる。
【0073】
本実施形態においては、処理装置A1に充電許可フラグおよび放電許可フラグが設定されている場合を示したが、これに限定されず、これらを1つにした充放電許可フラグが設定されていてもよい。この場合、たとえば、充電も放電も禁止する場合、充放電許可フラグに設定値「0」が設定され、充電のみ許可(放電は禁止)する場合、充放電許可フラグにフラグ値「1」が設定され、放電のみ許可(充電は禁止)する場合、充放電許可フラグにフラグ値「2」が設定され、充電も放電も許可する場合、充放電許可フラグにフラグ値「3」が設定される。充放電許可フラグがフラグ値「0」であるときは、充電許可フラグがフラグ値「0」でありかつ放電許可フラグがフラグ値「0」であるときに相当する。充放電許可フラグがフラグ値「1」であるときは、充電許可フラグがフラグ値「1」かつ放電許可フラグがフラグ値「0」であるときに相当する。充放電許可フラグがフラグ値「2」であるときは、充電許可フラグがフラグ値「0」でありかつ放電許可フラグがフラグ値「1」であるときに相当する。充放電許可フラグがフラグ値「3」であるときは、充電許可フラグがフラグ値「1」でありかつ放電許可フラグがフラグ値「1」であるときに相当する。
【0074】
本実施形態においては、複数の電力制御部B1が制御する制御対象の種類として、PV用出力制御部10(太陽光PCS11)が制御する太陽電池12、蓄電池用出力制御部20(蓄電池PCS21)が制御する蓄電池22、EV用出力制御部30(EV充放電器31)が制御する電気自動車32を含んでいる場合を示したが、これに限定されない。たとえば、電力負荷42を制御する負荷用出力制御部、および、発電機を制御する発電機用出力制御部のいずれか一方あるいはそれらの両方をさらに含んでいてもよい。また、本実施形態においては、複数の電力制御部B1は、PV用出力制御部10を含んでいたが、このPV用出力制御部10を含んでいなくてもよい。
【0075】
本開示にかかる中継装置は、上記した実施形態に限定されるものではない。本開示の中継装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0076】
S1:電力システム、A1:処理装置、B1:電力制御部、30:EV用出力制御部、31:EV充放電器、32:電気自動車、33:EVゲートウェイ(EVGW)、331:受信部、332:フラグ設定部、333:算出部、334:指令部、335:送信部、D:電力系統
図1
図2
図3
図4
図5