【実施例1】
【0018】
図1は実施例1に係る短絡接地器具1を用いた三相交流用器具の構成を示す図であり、
図2は実施例1に係る短絡接地器具1の構成を示す図であり、
図3は実施例1に係る短絡接地器具1をステンレス製の六角ナット(以下「接地用部材」という。)11に近接させた状態を示す図である。
図1に示すように、実施例1の短絡接地器具1を用いた三相交流用器具は、接地点に接続されるワニ口クリップ(以下「接地金具」という。)2、接地金具2と接続され導通している接地線3、接地線3に接続される3本の短絡線4、3本の短絡線4にそれぞれ接続される短絡接地器具1から構成される。
また、
図2及び3に示すように、実施例1の短絡接地器具1は、電路上に設置されている接地用部材11を把持可能な把持部12と、把持部12を支持する支持部13から構成されている。
そして、短絡接地器具1の把持部12は、固定把持部14及び可動把持部15からなり、支持部13は、固定部材16、スライダー17、操作棒係合部18、先端部にスライダー17を保持し操作棒係合部18に固定されているネジ部19及び固定部材16と操作棒係合部18との間に配置され両者が離れる方向に付勢する弾性部材20からなっている。
【0019】
固定把持部14は、先端側が細く基端側が太いステンレス製の部材であり、基端部は固定部材16の上面に軸着され、固定ナット21を締めることにより適宜の位置で固定できるようになっている。
可動把持部15も、固定把持部14と同様に先端側が細く基端側が太いステンレス製の部材であり、基端側には半球状の従動部22が突出している。
そして、可動把持部15の基端側は、固定把持部14の基端側に対して、回動軸23によって軸着されており、可動把持部15の先端側が固定把持部14の先端側に対して開閉自在となっているとともに、図示しないスプリングによって、可動把持部15を固定把持部14に対して開く方向に付勢している。
固定把持部14及び可動把持部15の内面には、先端部から基端側に向かって延び、中央が深い溝条、溝条の両側が水平面から30°傾いた平面となっている溝部24、25が形成され、溝条の両側にある平面のなす角度が120°となるようにしてある。
また、溝部24、25の基端側は段差部26、27となっており、接地用部材11が把持部12の内部に挿入され適当な深さに達すると、接地用部材11の先端が段差部26、27にぶつかるようになっている。
さらに、固定把持部14及び可動把持部15の内面側の側縁28、29には、電線等を挟んだ時に電線等がずれないようにするため、V字状の溝30が多数設けられている。
把持部12は、このような構成となっているので、接地用部材11を把持部12の内部に挿入し、可動把持部15を固定把持部14に対して閉じる方向に移動させると、溝部24、25が接地用部材11の側面に密着して確実に保持される。また、接地用部材11が設けられていない場合であっても、接地が必要な電線を固定把持部14及び可動把持部15の間に位置付け、可動把持部15を固定把持部14に対して閉じる方向に移動させると、同電線が固定把持部14と可動把持部15のV字状の溝30の間に挟まれて保持される。
【0020】
支持部13の固定部材16は、下面側にスライダー17を収容できる凹部31を有するとともに、凹部31の基端側にネジ部19をねじ込むことのできるネジ穴32を有するステンレス製の部材であり、上面には、短絡線4の端部を固定するための短絡線固定部33が設けられている。
そして、支持部13のスライダー17は、平面視が台形状で先端部がテーパ面34になっているとともに、基端側がネジ部19によって回動自在に保持されているステンレス製の部材であり、固定把持部14に対して開く方向に付勢されている可動把持部15の従動部22が、スライダー17の位置及び固定把持部14と固定部材16のなす角度に応じて、テーパ面34の異なる位置で接触するようになっている。
また、支持部13の操作棒係合部18は、先端部にネジ部19が固定され、基端側に操作棒(図示せず)の先端部を挿入するための挿入孔35を有するステンレス製の部材であり、挿入孔35の基端側には、操作棒の先端部に設けてあるピンを差し込み、操作棒の先端側に設けてあるロックナットを締め付けることで、端部にピンを受け入れて操作棒を固定するための溝36が設けられている。
支持部13は、このような構成となっているので、操作棒係合部18又は操作棒係合部18に固定された操作棒を時計回りに回転させれば、ネジ部19も時計回りに回転して先端側に移動し、それに伴ってスライダー17が先端側へ移動して従動部22が下側に移動するので、可動把持部15は固定把持部14に対して閉じる方向に移動する。逆に、操作棒係合部18又は操作棒係合部18に固定された操作棒を反時計回りに回転させれば、ネジ部19も反時計回りに回転して基端側に移動し、それに伴ってスライダー17が基端側へ移動して従動部22が上側に移動するので、可動把持部15は固定把持部14に対して開く方向に移動する。
【0021】
図4は実施例1に係る短絡接地器具1の固定把持部14を曲げて(固定把持部14の長手方向と固定部材16の長手方向の交差角度が45°で)固定した状態を示す図である。
図4の状態では、従動部22は紙面の手前側に移動するが、テーパ面34は従動部22の紙面に垂直な移動範囲において、従動部22と接触できる幅を有しているので、短絡接地器具1が
図1の状態の時と同様に、操作棒係合部18又は操作棒係合部18に固定された操作棒を時計回り又は反時計回りに回転させることによって、可動把持部15を固定把持部14に対して開閉させることができる。
【0022】
図1に示す実施例1に係る短絡接地器具1を用いた三相交流用器具の把持部12を接地用部材11に取り付ける手順を説明する。
なお、予め対象となる電気工作物の電路を開路し、電路の停電を検電器具により確認するとともに残留電荷を放電させた後、キュービクル内のLBS(高圧交流負荷開閉器)を開放しておく。
(1)接地点に接地金具2を接続する(ワニ口クリップ2で接地端子を挟む)。
(2)一つ目の短絡接地器具1の固定把持部14を作業し易い角度となるように固定部材16との角度を調整し固定する。
(3)同短絡接地器具1の操作棒係合部18を回転させ、固定把持部14と可動把持部15の先端部同士の間隔が接地用部材11の大きさより少し大きくなるように調整する。
(4)同短絡接地器具1の操作棒係合部18に操作棒を挿入し固定する。
(5)操作棒を持って把持部12の先端部を接地用部材11の先端に挿入する。
(6)接地用部材11の先端が段差部26、27にぶつかるまで把持部12を押し込む。
(7)操作棒を時計回りに回転させ、把持部12を閉じる方向に操作する。
(8)二つ目及び三つ目の短絡接地器具1に対しても、上記(2)〜(7)の手順で作業を行い、それぞれの把持部12を接地用部材11に取り付ける。
【0023】
次に、上記(1)〜(8)の手順により取り付けた把持部12を、接地用部材11から外す手順について説明する。
(A)一つ目の短絡接地器具1の操作棒係合部18に挿入、固定した操作棒を反時計回りに回転させ、把持部12を開く方向に操作する。
(B)同操作棒を動かして、把持部12を接地用部材11から引き抜く。
(C)同操作棒の固定状態を解除して、操作棒係合部18から外す。
(D)二つ目及び三つ目の短絡接地器具1に対しても、上記(A)〜(C)の手順で作業を行い、それぞれの把持部12を接地用部材11から引き抜き、操作棒を操作棒係合部18から外す。
(E)接地点に接続した接地金具2を外す(ワニ口クリップ2を接地端子から外す)。
【0024】
実施例1に係る短絡接地器具の変形例を列記する。
(1)実施例1においては、電路上に設置されている接地用部材をステンレス製の六角ナットとしたが、接地用部材は導電体からなる柱状のものであれば、どのような形状のものであっても良い。
(2)実施例1においては、把持部及び支持部の全部をステンレス製とし、支持部に短絡線を固定する短絡線固定部を設けたが、固定把持部に短絡線固定部を設けても良い。
そうした場合、固定把持部はステンレス製等の導電体とする必要があるが、支持部や可動把持部は導電性でなくても良い。
(3)実施例1においては、把持部及び支持部の全部をステンレス製(導電体)とし、固定把持部に可動把持部を軸着したが、支持部に可動把持部を軸着し先端側を固定把持部に対して開閉自在としても良い。
そうした場合、支持部に短絡線を固定する短絡線固定部を設けてあり、可動把持部は支持部につながっているので、固定把持部は導電体でなくても良い。
(4)実施例1においては、固定把持部を支持部に軸着するとともに、適宜の位置で固定できるようにしたが、軸着せずに直接固定しても良い。
【0025】
(5)実施例1においては、固定把持部及び可動把持部に、先端部から基端側に向かって延び、中央が深い溝条、溝条の両側が水平面から30°傾いた平面となっている溝部が形成されていたが、中央の深い溝条は形成されていなくても良い。
また、実施例1における溝部の形態は六角ナットを把持するためのものであるので、上記(1)の変形例のように、接地用部材が六角ナット(六角柱状)でない柱状のものである場合には、接地用部材の側面に対応する形状の溝部とする必要がある。
例えば、接地用部材が円柱状の場合は、接地用部材の断面と同じ直径の円弧状断面となっている溝部とし、接地用部材が正四角柱状である場合は、両側が水平面から45°傾いた平面となっている溝部とし、接地用部材が正八角柱状である場合は、両側が水平面から22.5°傾いた平面となっている溝部とすれば良い。
(6)実施例1においては、固定把持部及び可動把持部が、先端部から基端側に向かって延びる溝部を有し、溝部の基端側は段差部となっていたが、段差部は無くても良く、段差部を固定把持部及び可動把持部のいずれか一方だけに設けても良い。
(7)実施例1においては、可動把持部を固定把持部に対して開く方向に付勢しておき、支持部に設けてあるスライダーのテーパ面を移動させることで、可動把持部を閉じる方向に操作できるようにしていたが、逆に可動把持部を閉じる方向に付勢しておくとともにテーパ面の傾きを変更することにより、テーパ面を移動させることで可動把持部を開く方向に操作することもできる。
また、テーパ面の移動によらず、リンク機構によって直線運動を可動把持部の開閉運動に変換するようにしても良く、要するに操作棒係合部に操作棒を取り付けた状態で、可動把持部を開閉させることが可能な開閉機構を支持部又は固定把持部に設けておけば良い。