特開2021-114857(P2021-114857A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-114857(P2021-114857A)
(43)【公開日】2021年8月5日
(54)【発明の名称】ブレーキ付きモータユニット
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/102 20060101AFI20210709BHJP
   F16D 55/00 20060101ALI20210709BHJP
【FI】
   H02K7/102
   F16D55/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-6965(P2020-6965)
(22)【出願日】2020年1月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】小▲崎▼ 守
(72)【発明者】
【氏名】藤原 崇
(72)【発明者】
【氏名】根本 達也
(72)【発明者】
【氏名】粥川 正康
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 章洋
(72)【発明者】
【氏名】原田 天晴
【テーマコード(参考)】
3J058
5H607
【Fターム(参考)】
3J058AA43
3J058AA47
3J058AA53
3J058AA68
3J058AA78
3J058BA67
3J058CC13
3J058CC14
3J058CC77
3J058FA42
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB13
5H607CC03
5H607DD09
5H607EE07
5H607EE10
5H607EE18
(57)【要約】
【課題】軸線方向によりコンパクトな構成を有するブレーキ付きモータユニットを得る。
【解決手段】ブレーキ付きモータユニット1は、固定子11と、回転軸線Pを中心として回転する回転子16とを有するモータ10と、回転軸線Pを中心とする回転子16の回転を抑制するブレーキ20とを備えているブレーキ付きモータユニットである。ブレーキ20は、回転子16の一部を構成する回転部材(ロータヨーク17)と、回転軸線Pを中心として回転不能であり、且つ、前記回転部材に接触して回転子16の回転を抑制する第1位置と前記回転部材に対して離間して回転子16の回転を許容する第2位置とに移動可能である可動体21と、可動体21に対し、可動体21を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる駆動力を付与する駆動部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子と回転軸線を中心として回転する回転子とを有するモータと、
前記回転軸線を中心とする前記回転子の回転を抑制するブレーキと、
を備えているブレーキ付きモータユニットにおいて、
前記ブレーキは、
前記回転子の一部を構成する回転部材と、
前記回転軸線を中心として回転不能であり、且つ、前記回転部材に接触して前記回転子の回転を抑制する第1位置と前記回転部材に対して離間して前記回転子の回転を許容する第2位置とに移動可能である可動体と、
前記可動体に対し、前記可動体を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる駆動力を付与する駆動部と、
を有する、ブレーキ付きモータユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ付きモータユニットにおいて、
前記ブレーキは、電流の流れる方向に応じて磁界を生じる電磁石をさらに有し、
前記回転部材は、強磁性を有する強磁性体によって構成されていて、
前記可動体は、
永久磁石によって構成される可動体磁石と、
強磁性を有する強磁性体によって構成され且つ前記可動体磁石を前記回転軸線に直交する方向で保持する保持部と、
を有し、
前記可動体は、前記電磁石で生じる磁界によって、前記回転部材に接触する前記第1位置と前記電磁石に接触する前記第2位置とに移動可能である、ブレーキ付きモータユニット。
【請求項3】
請求項2に記載のブレーキ付きモータユニットにおいて、
前記保持部は、
前記回転軸線の軸線方向に移動可能で且つ前記回転軸線を中心として回転不能な回転抑制部と、
前記回転部材側に突出して前記回転部材と接触する突出部と、
を有する、ブレーキ付きモータユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載のブレーキ付きモータユニットにおいて、
前記回転子は、回転子磁石と、ロータヨークと、ロータシャフトとを有し、
前記回転部材は、前記ロータヨーク及び前記ロータシャフトの少なくとも一部によって構成されている、ブレーキ付きモータユニット。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載のブレーキ付きモータユニットにおいて、
前記回転子は、前記固定子に対して前記回転軸線の軸線方向に位置する、ブレーキ付きモータユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータとブレーキとを備えているブレーキ付きモータユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
モータとブレーキとを備えているブレーキ付きモータユニットとして、例えば特許文献1に開示されるようなブレーキ付きモータなどが知られている。
【0003】
前記特許文献1に開示されているブレーキ付きモータでは、モータケース内に、モータ及び電磁ブレーキ装置が軸線方向に並んで配置されている。前記電磁ブレーキ装置は、コイルによって構成される電磁石と、バネによってプレートに向かって付勢されている可動板と、前記プレートと前記可動板との間に位置し且つ前記モータの回転軸に連結されたディスクとを有する。
【0004】
前記電磁ブレーキ装置において、前記コイルに電流が流れている状態では、前記可動板は前記電磁石に引き寄せられる。そのため、前記ディスクは、前記モータの回転軸とともに回転可能である。一方、前記コイルに電流が流れていない状態では、前記可動板は、前記バネによって前記プレートに向かって付勢される。そのため、前記ディスクは、前記可動板と前記プレートとの間に挟み込まれる。よって、前記ディスクは、回転不能である。これにより、前記モータの回転が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−322475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の特許文献1の構成では、モータ及び電磁ブレーキを回転軸の軸線方向に配置しただけの構成である。そのため、ブレーキ付きモータユニット全体の軸線方向の長さは、前記モータの軸線方向の長さと前記電磁ブレーキの軸線方向の長さとの合計である。ブレーキ付きモータユニットにおいて、軸線方向にさらにコンパクトな構成が望まれている。
【0007】
本発明の目的は、軸線方向によりコンパクトな構成を有するブレーキ付きモータユニットを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るブレーキ付きモータユニットは、固定子と、回転軸線を中心として回転する回転子とを有するモータと、前記回転軸線を中心とする前記回転子の回転を抑制するブレーキとを備えているブレーキ付きモータユニットである。前記ブレーキは、前記回転子の一部を構成する回転部材と、前記回転軸線を中心として回転不能であり、且つ、前記回転部材に接触して前記回転子の回転を抑制する第1位置と前記回転部材に対して離間して前記回転子の回転を許容する第2位置とに移動可能である可動体と、前記可動体に対し、前記可動体を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる駆動力を付与する駆動部と、を有する(第1の構成)。
【0009】
上述の構成では、モータの回転子の回転を抑制するブレーキの可動体が接触する回転部材は、前記回転子の一部を構成する。このように、前記モータの一部の構成と前記ブレーキの一部の構成とを共通化することにより、前記モータ及び前記ブレーキを、軸線方向にコンパクトに構成することができる。したがって、軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付きモータユニットが得られる。
【0010】
しかも、上述の構成により、前記モータ及び前記ブレーキのそれぞれの部品点数を少なくすることができるとともに、前記モータ及び前記ブレーキでそれぞれ組立公差を管理する必要がないため、ブレーキ付きモータユニットの生産性を向上することができる。
【0011】
前記第1の構成において、前記ブレーキは、電流の流れる方向に応じて磁界を生じる電磁石をさらに有する。前記回転部材は、強磁性を有する強磁性体によって構成されている。前記可動体は、永久磁石によって構成される可動体磁石と、強磁性を有する強磁性体によって構成され且つ前記可動体磁石を前記回転軸線に直交する方向で保持する保持部と、を有する。前記可動体は、前記電磁石で生じる磁界によって、前記回転部材に接触する前記第1位置と前記電磁石に接触する前記第2位置とに移動可能である(第2の構成)。
【0012】
このように、電磁石で生じる磁界によって、可動体磁石を有する可動体が強磁性体によって構成された回転部材に付着する第1位置と前記電磁石に付着する第2位置とに移動するブレーキでは、前記回転部材をモータの回転子の一部によって構成することができる。そのため、上述の請求項1の構成を、容易に実現することができる。
【0013】
前記第2の構成において、前記保持部は、前記回転軸線の軸線方向に移動可能で且つ前記回転軸線を中心として回転不能な回転抑制部と、前記回転部材側に突出して前記回転部材と接触する突出部と、を有する(第3の構成)。
【0014】
これにより、電磁石で生じる磁界によって第1位置と第2位置とに移動可能である可動体の一部を構成する保持部の突出部を、回転子の一部を構成する回転部材により確実に接触させることができる。前記保持部は、回転軸線の軸線方向に移動可能で且つ前記回転軸線を中心として回転不能な回転抑制部を有するため、上述のように前記保持部の突出部が前記回転部材に接触することにより、前記回転部材の回転を抑制することができる。
【0015】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つの構成において、前記回転子は、回転子磁石と、ロータヨークと、ロータシャフトとを有する。前記回転部材は、前記ロータヨーク及び前記ロータシャフトの少なくとも一部によって構成されている(第4の構成)。これにより、モータの一部とブレーキの一部とを共通化した構成を容易に実現できる。
【0016】
前記第1から第4の構成のうちいずれか一つの構成において、前記回転子は、前記固定子に対して前記回転軸線の軸線方向に位置する(第5の構成)。このように、回転子が固定子に対して回転軸線の軸線方向に配置された、いわゆるアキシャルギャップモータでは、回転子の一部とブレーキの一部とを共通化しやすい。よって、上述の第1から第4の構成をより容易に実現できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一実施形態に係るブレーキ付きモータユニットにおいて、ブレーキは、回転子の一部を構成する回転部材と、回転軸線を中心として回転不能であり、且つ、前記回転部材に接触して前記回転子の回転を抑制する第1位置と前記回転部材に対して離間して前記回転子の回転を許容する第2位置とに移動可能である可動体と、前記可動体に対し、前記可動体を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる駆動力を付与する駆動部と、を有する。これにより、ブレーキの一部の構成を、モータの回転子の一部の構成と共通化できる。よって、軸線方向によりコンパクトな構成を有するブレーキ付きモータユニットが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係るブレーキ付きモータユニットの概略構成を示す断面図である。
図2図2は、ブレーキの可動体が第2位置に位置している状態を示す拡大断面図である。
図3図3は、ブレーキの可動体が第2位置から第1位置に移動する様子を示す図2相当図である。
図4図4は、ブレーキの可動体が第1位置に位置している状態を示す図2相当図である。
図5図5は、ブレーキの可動体が第1位置から第2位置に移動する様子を示す図2相当図である。
図6図6は、ブレーキの可動体が第2位置に位置している状態を示す図2相当図である。
図7図7は、その他の実施形態に係るブレーキ付きモータユニットの概略構成を示す拡大断面図である。
図8図8は、その他の実施形態に係るブレーキ付きモータユニットの概略構成を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。なお、以下の説明において、「径方向」は、モータ10の径方向を意味し、「軸線方向」は、モータ10の回転軸線Pが延びる方向を意味する。
【0020】
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態に係るブレーキ付きモータユニット1の概略構成を示す断面図である。図1は、ブレーキ付きモータユニット1を、モータ10の回転軸線Pを含む面で切断することにより得られる断面図である。
【0021】
ブレーキ付きモータユニット1は、モータ10と、ブレーキ20と、ケーシング30とを有する。ブレーキ付きモータユニット1では、モータ10及びブレーキ20は、回転軸線Pの軸線方向に並んだ状態でケーシング30内に収容されている。
【0022】
モータ10は、固定子11と、回転子16とを有する。
【0023】
固定子11は、円環状である。固定子11は、円環状の固定子コア12と、固定子コア12の外周面上に巻回された固定子コイル13とを有する。固定子11は、ケーシング30の内周面に固定されている。
【0024】
回転子16は、後述するロータシャフト19の回転によって、回転軸線Pを中心として回転する。回転子16は、固定子11に対して回転軸線Pの軸線方向に並んで位置する。すなわち、本実施形態のモータ10は、回転軸線Pの軸線方向に、固定子11と回転子16とのギャップが存在する、いわゆるアキシャルギャップ方式のモータである。回転子16は、回転軸線Pの軸線方向において、固定子11とブレーキ20との間に位置する。
【0025】
回転子16は、ロータヨーク17と、複数の回転子磁石18と、ロータシャフト19とを有する。ロータヨーク17には、ロータシャフト19が貫通している。ロータヨーク17は、ロータシャフト19と一体で回転する。複数の回転子磁石18は、軸線方向において、ロータヨーク17の固定子11側に取り付けられている。これにより、複数の回転子磁石18は、ロータヨーク17と一体で回転する。なお、後述するように、ロータヨーク17は、ブレーキ20の回転部材としても機能する。すなわち、回転子16の一部は、ブレーキ20の一部を構成する。
【0026】
ロータシャフト19は、固定子11及びロータヨーク17を軸線方向に貫通して、ケーシング30に対して軸受31によって回転可能に支持されている。
【0027】
ブレーキ20は、回転軸線Pを中心として回転する回転子16の回転を抑制する。ブレーキ20は、可動体21と、ブレーキコイル26と、シェル27とを有する。回転子16のロータヨーク17は、ブレーキ20の可動体21が回転を抑制する回転部材としても機能する。ブレーキコイル26がシェル27に巻回されることにより、ブレーキ20の電磁石25を構成する。
【0028】
ブレーキ20では、ブレーキコイル26が生じる磁界によって可動体21の位置を制御することで、モータ10の回転子16の回転を抑制したり許容したりする。すなわち、可動体21は、ロータヨーク17に接触して回転子16の回転を抑制する第1位置(図4に示す位置)と、ロータヨーク17に対して離間して回転子16の回転を許容する第2位置(図2及び図6に示す位置)とに移動可能である。
【0029】
可動体21は、可動体磁石22と、内側保持部23と、外側保持部24とを有する。可動体磁石22は、内側保持部23及び外側保持部24によって径方向に挟み込まれた状態で保持されている。すなわち、内側保持部23及び外側保持部24は、回転軸線Pに直交する方向で、可動体磁石22を保持する保持部を構成する。
【0030】
内側保持部23及び外側保持部24は、それぞれ、円環状の部材である。内側保持部23及び外側保持部24は、鉄、コバルト、ニッケルなどの元素を含む強磁性体によって構成されている。可動体磁石22は、ネオジウム磁石やフェライト磁石などの永久磁石である。可動体磁石22は、径方向に着磁されている。内側保持部23及び外側保持部24は、可動体磁石22で生じる磁力を強める機能を果たす。
【0031】
上述の構成により、可動体21の周りには、例えば図2に破線で示すようにループ状の磁界が形成されている。可動体磁石22、内側保持部23及び外側保持部24の少なくとも一つは、可動体21の周りに生じる磁界を強化するような形状または構成を有していてもよい。
【0032】
可動体21の外側保持部24は、円環状の外側保持部本体24aと、一対の係止部24bとを有する。一対の係止部24bは、外側保持部本体24aの外周面における径方向の反対側の位置から、径方向外方に向かってそれぞれ延びている。外側保持部本体24a及び一対の係止部24bは、一体に形成されている。
【0033】
一対の係止部24bの先端部分は、ケーシング30の内周面における径方向の反対側にそれぞれ設けられた一対のキー溝30a内に位置する。一対のキー溝30aは、それぞれ、係止部24bが軸線方向に移動可能なように、軸線方向に延びている。
【0034】
これにより、可動体21は、一対の係止部24bがケーシング30の一対のキー溝30aに沿って移動するように、軸線方向に移動可能である。一方、一対の係止部24bは一対のキー溝30a内で周方向の移動を規制されるため、可動体21は回転軸線Pを中心として回転しない。よって、一対の係止部24bが本発明の回転抑制部を構成する。
【0035】
外側保持部本体24aは、可動体21において、他の部分よりもロータヨーク17側に突出している。すなわち、外側保持部本体24aにおけるロータヨーク17側は、可動体21におけるロータヨーク17側の他の部分よりも、ロータヨーク17に向かって最も突出している。このように、外側保持部24は、突出部24cを有する。なお、突出部24cは、外側保持部本体24aのロータヨーク17側の一部のみに設けられていてもよいし、外側保持部本体24aのロータヨーク17側の全体に設けられていてもよい。
【0036】
これにより、可動体21がロータヨーク17に接触した際に、外側保持部本体24aの突出部24cをロータヨーク17に接触させることができる。よって、ロータヨーク17の回転を、外側保持部本体24aとロータヨーク17との摩擦力、及び、一対の係止部24bとキー溝30aとの係合によって、より確実に抑制できる。しかも、上述のように外側保持部本体24aの突出部24cをロータヨーク17に接触させることで、可動体磁石22がロータヨーク17に接触して損傷を受けるのを防止できる。
【0037】
既述のように、ブレーキコイル26は、シェル27に巻回されている。このブレーキコイル26及びシェル27によって、ブレーキ20の電磁石25が構成される。シェル27は、ケーシング30に固定された円筒状の部材である。シェル27は、鉄、コバルト、ニッケルなどの元素を含む強磁性体によって構成されている。シェル27の内周側は、軸受31を支持している。なお、ブレーキコイル26は、シェル27における回転子16側に配置されている。
【0038】
ブレーキコイル26に対する通電は、図示しないブレーキ駆動制御部によって制御される。ブレーキコイル26には、図1の紙面表側から紙面裏側に向かって、または、図1の紙面裏側から紙面表側に向かって、電流が流れる。ブレーキコイル26に対して電流を流す方向を切り替えることにより、例えば図2及び図3に示すように、ブレーキコイル26によって生じる磁界の向きを切り替えることができる。
【0039】
詳しくは後述するように、ブレーキコイル26に流れる電流の方向を切り替えてブレーキコイル26によって生じる磁界の向きを切り替えることにより、可動体21を、回転部材として機能するロータヨーク17に接触する第1位置(図4に示す位置)と、ブレーキコイル26に接触する第2位置(図2及び図6に示す位置)とに移動させることができる。可動体21をロータヨーク17に接触させることにより、外側保持部本体24aとロータヨーク17との摩擦力、及び、一対の係止部24bとキー溝30aとの係合によって、回転子16の回転を抑制することができる。
【0040】
詳しくは後述するように、ブレーキコイル26及び可動体磁石22によって、可動体21は、前記第1位置と前記第2位置とに移動する。したがって、ブレーキコイル26及び可動体磁石22が本発明の駆動部を構成する。
【0041】
次に、図2から図6を用いて、上述の構成を有するブレーキ20の動作について説明する。図2から図6は、それぞれ、ブレーキ20の周辺の構成を拡大して示す部分拡大断面図である。以下の説明では、可動体21がブレーキコイル26に接触した状態を、可動体21の初期状態とする。なお、ブレーキ20の作動開始時に、ロータシャフト19は回転している。
【0042】
ブレーキ20をブレーキ作動状態にする場合には、ブレーキコイル26に紙面奥から紙面手前に向かって電流を流す。図2に示すように、可動体21がブレーキコイル26に接触した状態において、ブレーキコイル26に紙面奥から紙面手前に向かって電流を流した場合、ブレーキコイル26に一点鎖線で示すような磁界が生じる。この場合の磁界の向きは、可動体21の可動体磁石22で生じる磁界の強さを弱める方向である。そのため、ブレーキコイル26と可動体磁石22との間に生じる吸引力は弱まる。これにより、可動体磁石22の磁界によって可動体磁石22とロータヨーク17との間に生じる吸引力は、ブレーキコイル26と可動体磁石22との間に生じる吸引力に比べて強くなる。
【0043】
その結果、図3に示すように、可動体21は、ロータヨーク17に引き寄せられるため、ロータヨーク17に向かって軸線方向に移動する(白抜き矢印参照)。このとき、可動体21の係止部24bは、ケーシング30のキー溝30aに沿って軸線方向に移動する。
【0044】
図4に示すように、可動体21は、可動体21の磁界によって生じる吸引力によってロータヨーク17に付着する。このとき、可動体21のうちロータヨーク17側に最も突出している外側保持部本体24aの突出部24cが、ロータヨーク17に接触する。外側保持部本体24aは、係止部24bと一体であるため、回転軸線Pを中心として回転しない。ロータヨーク17の回転は、外側保持部本体24aとロータヨーク17との摩擦力、及び、一対の係止部24bとキー溝30aとの係合によって、抑制される。したがって、回転軸線Pを中心とする回転子16の回転は抑制される。
【0045】
上述のように外側保持部本体24aの突出部24cがロータヨーク17に接触することにより、外側保持部本体24aと一体である係止部24bに、外側保持部本体24aが接触するロータヨーク17の回転力を直接伝達することができる。よって、ロータヨーク17の回転を効率良く抑制できる。しかも、可動体磁石22がロータヨーク17に接触することを防止できる。これにより、可動体磁石22が損傷を受けるのを防止できる。
【0046】
特に、上述のように、可動体21において係止部24bを有する外側保持部本体24aに突出部24cを設けることで、可動体磁石22がロータヨーク17に接触するのをより確実に防止できる。よって、可動体磁石22が損傷を受けるのをより確実に防止できる。
【0047】
なお、可動体21がロータヨーク17に付着した状態では、ブレーキコイル26に流す電流を止めてもよいし、図3に示す磁界が生じるような電流をブレーキコイル26に流してもよい。図4に示す状態において、ブレーキコイル26に流す電流を止めた場合でも、可動体21は、可動体磁石22の磁力によって、ロータヨーク17に付着した状態で維持される。このように、図4に示す状態において、ブレーキコイル26に流す電流を止めることで、ブレーキコイル26に流す電力量を低減できるため、ブレーキ20の駆動制御において省電力化を図れるとともに、ブレーキコイル26の温度上昇を抑制できる。
【0048】
ブレーキ20をブレーキ解除状態にする際には、ブレーキコイル26に紙面手前から紙面奥に向かって電流を流す。図5に示すように、可動体21がロータヨーク17に接触した状態において、ブレーキコイル26に紙面手前から紙面奥に向かって電流を流した場合、ブレーキコイル26に一点鎖線で示すような磁界が生じる。この場合の磁界の向きは、可動体21の可動体磁石22で生じる磁界の強さを強める方向である。そのため、ブレーキコイル26と可動体磁石22とは互いに吸引する方向に力を受ける。これにより、ブレーキコイル26と可動体磁石22との間で生じる吸引力は、ロータヨーク17と可動体磁石22との間で生じる吸引力に比べて強くなる。
【0049】
その結果、図5に示すように、可動体21は、ブレーキコイル26に引き寄せられるため、ブレーキコイル26に向かって軸線方向に移動する(白抜き矢印参照)。このとき、可動体21の係止部24bは、ケーシング30のキー溝30aに沿って軸線方向に移動する。
【0050】
可動体21は、可動体磁石22及びブレーキコイル26の各磁界によって生じる吸引力によって、ブレーキコイル26に付着する。
【0051】
なお、可動体21がブレーキコイル26に付着した状態では、ブレーキコイル26に流す電流を止めてもよいし、図5に示す磁界が生じるような電流をブレーキコイル26に流してもよい。図6に示す状態において、ブレーキコイル26に流す電流を止めた場合でも、可動体21は、可動体磁石22の磁力によって、ブレーキコイル26に付着した状態で維持される。このように、図6に示す状態において、ブレーキコイル26に流す電流を止めることで、ブレーキコイル26に流す電力量を低減できるため、ブレーキ20の駆動制御において省電力化を図れるとともに、ブレーキコイル26の温度上昇を抑制できる。
【0052】
本実施形態では、ブレーキ付きモータユニット1は、固定子11と、回転軸線Pを中心として回転する回転子16とを有するモータ10と、回転軸線Pを中心とする回転子16の回転を抑制するブレーキ20とを備えている。ブレーキ20は、回転子16の一部を構成する回転部材(ロータヨーク17)と、回転軸線Pを中心として回転不能であり、且つ、ロータヨーク17に接触して回転子16の回転を抑制する第1位置とロータヨーク17に対して離間して回転子16の回転を許容する第2位置とに移動可能である可動体21と、可動体21に対し、可動体21を前記第1位置と前記第2位置との間で移動させる駆動力を付与する駆動部と、を有する。
【0053】
このように、モータ10の一部の構成とブレーキ20の一部の構成とを共通化することにより、モータ10とブレーキ20とを、軸線方向にコンパクトに構成することができる。したがって、軸線方向にコンパクトな構成を有するブレーキ付きモータユニット1が得られる。
【0054】
しかも、上述の構成により、モータ10及びブレーキ20のそれぞれの部品点数を少なくすることができるとともに、モータ10及びブレーキ20でそれぞれ組立公差を管理する必要がないため、ブレーキ付きモータユニット1の生産性を向上することができる。
【0055】
また、本実施形態のモータ10は、アキシャルギャップ方式のモータなので、固定子11の径方向内方に、他の部品を配置することができる。よって、ブレーキ付きモータユニット1をよりコンパクトな構成にすることができる。
【0056】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0057】
前記実施形態では、モータ10は、アキシャルギャップ方式のモータである。しかしながら、図7に示すように、モータ110は、固定子111と回転子116とが径方向に並んだ、ラジアルギャップ方式のモータであってもよい。図7において、符号112は固定子コアであり、符号113は固定子コイルである。また、符号117はロータヨークであり、符号118は回転子磁石である。回転子116は、回転子磁石118が軸線方向に移動するのを抑制する押さえ板115を有する。
【0058】
上述のようにモータ110がラジアルギャップ方式のモータの場合には、ブレーキ付きモータユニット101は、押さえ板115に可動体121を接触させることによりブレーキとして機能するブレーキ120を有する。ブレーキ120は、可動体121と、ブレーキコイル126と、シェル127とを有する。回転子116の押さえ板115は、ブレーキ120の可動体121が回転を抑制する回転部材としても機能する。ブレーキコイル126は、円筒状のシェル127に巻回されている。よって、ブレーキコイル126及びシェル127によって、電磁石125が構成される。シェル127の内周面には、径方向の反対側に位置し且つそれぞれ軸線方向に延びる一対のキー溝127aが形成されている。
【0059】
可動体121は、可動体磁石122と、内側保持部123と、外側保持部124とを有する。可動体磁石122は、内側保持部123及び外側保持部124によって径方向に挟み込まれた状態で保持されている。内側保持部123及び外側保持部124は、可動体磁石122を回転軸線Pに対して直交する方向で保持する保持部を構成する。内側保持部123及び外側保持部124は、それぞれ、円環状の部材である。
【0060】
可動体121の内側保持部123は、円環状の内側保持部本体123aと、一対の係止部123bとを有する。一対の係止部123bは、内側保持部本体123aの外周面における径方向の反対側の位置から、軸線方向にそれぞれ延びている。内側保持部本体123a及び一対の係止部123bは、一体に形成されている。
【0061】
一対の係止部123bの一部は、シェル127の内周面における径方向の反対側にそれぞれ設けられた一対のキー溝127a内に位置する。一対の係止部123bは、一対のキー溝127a内で軸線方向に移動可能である。
【0062】
内側保持部本体123aは、可動体121において、他の部分よりも押さえ板115側に突出している。すなわち、内側保持部本体123aにおける押さえ板115側は、可動体121における押さえ板115側の他の部分よりも、押さえ板115に向かって最も突出している。このように、内側保持部123は、突出部123cを有する。
【0063】
これにより、可動体121が押さえ板115に接触した際に、内側保持部本体123aの突出部123cを押さえ板115に接触させることができる。よって、押さえ板115の回転を、内側保持部本体123aと押さえ板115との摩擦力、及び、一対の係止部123bとキー溝127aとの係合によって、より確実に抑制できる。しかも、可動体磁石122が押さえ板115に接触して損傷を受けるのを防止できる。
【0064】
なお、図7に示す構成において、ブレーキコイル126に流す電流によって生じる磁界の向きを変えることによって、可動体121を、ブレーキ120をブレーキ動作状態にする第1位置とブレーキ120をブレーキ解除状態にする第2位置とに移動させることができる。可動体121の動き及びブレーキ120の動作は、前記実施形態の可動体21の動き及びブレーキ20の動作と同様である。よって、ブレーキ120の動作の詳しい説明は省略する。
【0065】
図7に示す構成において、モータが押さえ板を有さない場合には、可動体を前記モータのロータヨークまたはロータシャフトに接触させることで、ブレーキとして機能させてもよい。
【0066】
前記実施形態では、ブレーキ20は、ブレーキコイル26で生じる磁界の方向を切り替えることによって、可動体21の位置を第1位置と第2位置とに切り替える。しかしながら、バネ及びブレーキコイルの磁力によって、可動体の位置を第1位置と第2位置とに切り替えてもよい。
【0067】
例えば図8に示すように、可動体221は、シェル227に対してバネ228によって弾性支持されていてもよい。ブレーキコイル226に電流を流して可動体221をブレーキコイル226に吸引する磁界を生じさせることにより、可動体221をブレーキコイル226側に移動させることができる。ブレーキコイル226に電流を流さない状態では、バネ228の弾性復元力によって、可動体221をロータヨーク17側に移動させることができる。
【0068】
なお、図8において、符号201はブレーキ付きモータユニットであり、符号220はブレーキである。また、符号221aは可動体本体であり、符号221bは係止部である。
【0069】
前記実施形態では、可動体磁石22,122は、内側保持部23,123と外側保持部24,124とによって径方向に挟み込まれた状態で保持されている。しかしながら、可動体磁石は、内側保持部及び外側保持部のうち、係止部を有する保持部のみに保持されていてもよい。すなわち、本発明の保持部は、内側保持部及び外側保持部のうち係止部を有する保持部のみを含んでいてもよい。
【0070】
前記実施形態では、外側保持部24が一対の係止部24bを有する。しかしながら、外側保持部及び内側保持部がそれぞれ係止部を有していてもよい。この場合には、外側保持部または内側保持部の一方のみに突出部を設けてもよいし、外側保持部及び内側保持部の両方に、同じ突出高さを有する突出部を設けてもよい。
【0071】
前記実施形態では、モータ10がアキシャルギャップ方式のモータの場合には、外側保持部24が一対の係止部24bを有する。しかしながら、アキシャルギャップ方式のモータにおいて、内側保持部が一対の係止部を有していてもよい。また、アキシャルギャップ方式のモータにおいて、外側保持部及び内側保持部がそれぞれ係止部を有していてもよい。
【0072】
前記実施形態では、モータ110がラジアルギャップ方式のモータの場合には、内側保持部123が一対の係止部123bを有する。しかしながら、ラジアルギャップ方式のモータにおいて、外側保持部が一対の係止部を有していてもよい。また、ラジアルギャップ方式のモータにおいて、外側保持部及び内側保持部がそれぞれ係止部を有していてもよい。
【0073】
なお、係止部の数は、一対に限らず、1つでもよいし、3つ以上でもよい。
【0074】
前記実施形態では、可動体磁石22は、径方向に着磁されている。しかしながら、可動体磁石は、軸線方向に着磁されていてもよい。このように可動体磁石が軸線方向に着磁されている場合には、可動体の周りに、図2に破線で示すループ状の磁界と同様の磁界が形成されるように、内側保持部及び外側保持部の形状を変更すればよい。
【0075】
前記実施形態の構成は、IPM(Interior Permanent Magnet)モータ、SPM(Surface Permanent Magnet)モータなどのように、どのような種類のモータに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、モータとブレーキとを備えているモータ付きブレーキユニットに利用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1、101、201ブレーキ付きモータユニット
10、110 モータ
11、111 固定子
12、112 固定子コア
13、113 固定子コイル
16、116 回転子
17 ロータヨーク(回転部材)
18、118 回転子磁石
19 ロータシャフト
20、120、220 ブレーキ
21、121、221 可動体
22、122 可動体磁石
23、123 内側保持部(保持部)
24、124 外側保持部(保持部)
24a 外側保持部本体
24b、123b、221b 係止部(回転抑制部)
24c、123c 突出部
25、125 電磁石
26、126、226 ブレーキコイル
27、127、227 シェル
30、130 ケーシング
30a、127a キー溝
31 軸受
115 押さえ板(回転部材)
117 ロータヨーク
123a 内側保持部本体
221a 可動体本体
228 バネ
P 回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8