特開2021-114925(P2021-114925A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ナベルの特許一覧

<>
  • 特開2021114925-孵化途中卵観察用の受光プローブ 図000003
  • 特開2021114925-孵化途中卵観察用の受光プローブ 図000004
  • 特開2021114925-孵化途中卵観察用の受光プローブ 図000005
  • 特開2021114925-孵化途中卵観察用の受光プローブ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-114925(P2021-114925A)
(43)【公開日】2021年8月10日
(54)【発明の名称】孵化途中卵観察用の受光プローブ
(51)【国際特許分類】
   A01K 43/00 20060101AFI20210712BHJP
   G01N 21/49 20060101ALI20210712BHJP
【FI】
   A01K43/00
   G01N21/49 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2020-9738(P2020-9738)
(22)【出願日】2020年1月24日
(71)【出願人】
【識別番号】597017812
【氏名又は名称】株式会社ナベル
(72)【発明者】
【氏名】南部 邦男
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB12
2G059DD12
2G059DD15
2G059EE01
2G059FF04
2G059GG02
2G059KK02
2G059LL04
(57)【要約】
【課題】孵卵機内という特殊な環境であっても孵化途中卵の内部状態を観察できる孵化途中卵観察用の受光プローブを提供する。
【解決手段】本発明の孵化途中卵観察用の受光プローブ1は、受光素子3と、遮光キャップ4と、通気穴5とを備える。受光素子3は、孵卵機内のトレイT上に置かれた孵化途中卵Eの上方に配置され、孵化途中卵Eの内部を通過してきた光の変化を所定時間測定して該孵化途中卵Eの内部の状態を観察する。遮光キャップ4は、孵化途中卵Eの観察中に受光素子3と観察対象の孵化途中卵Eの卵殻との間に空間を形成して受光素子3への外乱光の入射を抑制する。通気穴5は、受光素子3への外乱光の入射を抑制しつつ空間内外の通気が可能なものである。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孵卵機内のトレイ上に置かれた孵化途中卵の上方に配置され、孵化途中卵の内部を通過してきた光の変化を測定して該孵化途中卵の内部の状態を観察する受光素子と、
前記孵化途中卵の観察中に前記受光素子と観察対象の孵化途中卵の卵殻との間に空間を形成して前記受光素子への外乱光の入射を抑制する遮光キャップと、
前記受光素子への外乱光の入射を抑制しつつ前記空間内外の通気が可能な通気穴とを備える、孵化途中卵観察用の受光プローブ。
【請求項2】
前記遮光キャップの一端側が取り付けられる基部を備え、
前記通気穴は、前記基部における前記遮光キャップの径の内側に設けられている、請求項1記載の孵化途中卵観察用の受光プローブ。
【請求項3】
前記通気穴は、前記遮光キャップに用いられる通気性のある素材によるものである、請求項1記載の孵化途中卵観察用の受光プローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孵化途中卵の内部状態を観察する孵化途中卵観察装置に用いられる受光プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
孵化途中卵の内部状態を識別する装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この装置は、孵卵開始から10日目または11日目に孵卵機より取り出されたフラット(トレイ)がコンベヤーに載せられた状態で、検卵を行う。コンベヤー上では、対象となる孵化途中卵に受光素子を覆う遮光キャップを接触させ、外乱光の影響を排除しつつ内部を通過してくる光の変化を観測する。すなわち、従来のこのような観測は、主には次工程へ移載する際にその胚の生死を判定する用途で製品化されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005−532046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、胚の状態を成長段階の複数の時点で図るニーズに着目し、孵卵機内でこのような観察ができるよう試行錯誤を重ねた。その中で、特許文献1のような装置をそのまま孵卵機内では使用できないことがわかった。
【0005】
本発明は、孵卵機内という特殊な環境であっても孵化途中卵の内部状態を観測できる孵化途中卵観察用の受光プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の孵化途中卵観察用の受光プローブは、受光素子と、遮光キャップと、通気穴とを備える。受光素子は、孵卵機内のトレイ上に置かれた孵化途中卵の上方に配置され、孵化途中卵の内部を通過してきた光の変化を測定して該孵化途中卵の内部の状態を観察する。遮光キャップは、孵化途中卵の観察中に受光素子と観察対象の孵化途中卵の卵殻との間に空間を形成して受光素子への外乱光の入射を抑制する。通気穴は、受光素子への外乱光の入射を抑制しつつ空間内外の通気が可能なものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、孵卵機内という特殊な環境であっても孵化途中卵の内部状態を観察できる孵化途中卵観察用の受光プローブを提供できる。
【0008】
この発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解されるこの発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態にかかる孵化途中卵観察用の受光プローブの使用態様を示す概略正面図である。
図2】同実施形態の孵化途中卵観察用の受光プローブを示す概略正面図である。
図3】本発明の変形例にかかる孵化途中卵観察用の受光プローブの図2に対応する図である。
図4】本発明の他の変形例にかかる孵化途中卵観察用の受光プローブの図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図1及び図2を用いて説明する。
【0011】
本実施形態の孵化途中卵観察装置10は、孵卵機(図示しない)内のトレイT上に置かれた孵化途中卵Eに関するデータを取得するためのもので、受光プローブ1と、制御部2とを備える。孵化途中卵観察装置10は、少なくとも受光プローブ1が孵卵機内に配置され、孵卵期間中の複数日にわたって所定時間観測を行う。本実施形態の孵化途中卵観察装置10は、様々な形状、サイズを有する孵化途中卵Eの内部を通過してきた光の変化を所定時間観測して、孵化途中卵Eの内部の状態を観察する。
【0012】
トレイTは、例えば、セッタートレイと呼ばれるもので、孵化途中卵Eを1個ずつ収容するための仕切り(卵座T1)が設けられている。孵化途中卵Eは、鋭端が下になるようにトレイTの卵座T1に収容される。
【0013】
卵の鈍端には気室E1があり、孵卵中の胚は、気室E1を通じてガス交換を行っている。なお、孵化途中卵Eはガス交換により卵殻から水分が蒸発し、時間経過とともに気室E1が徐々に拡大していく。また、孵化途中卵Eは、孵卵開始12〜13日目頃から胚が熱を産生する。この熱産生は、時間経過とともに徐々に多くなる。孵卵機中で、孵化途中卵Eの卵殻温度は37.8〜38.3℃に保たれるのが好ましいので、孵卵機内で加温と冷却が制御される。
【0014】
受光プローブ1は、少なくとも受光素子3と、遮光キャップ4と、通気穴5と、基部6とを備える。本実施形態の受光プローブ1は、さらに、孵化途中卵Eに向けて照射するLED7を備える。LED7以外の照明であってもよいし、配置場所も図示したものに限られない。また、外乱光を増加させないように、LED7にも遮光キャップを設けてもよい。
【0015】
受光素子3は、孵卵機内のトレイT上に置かれた孵化途中卵Eの上方に配置される。受光素子3は、トレイTの上方に配置された基部6に取り付けられる。基部6は、孵卵機の転卵動作(トレイTが傾けられる)に伴って動き、孵化途中卵Eの観測中、受光素子3と孵化途中卵Eとの距離は一定に保たれる。受光素子3は、孵化途中卵Eの内部を通過してきた光の変化を所定時間測定して該孵化途中卵Eの内部の状態を観察する。
【0016】
遮光キャップ4は、受光素子3への外乱光の入射を抑制する。遮光キャップ4は、上下方向に伸縮可能な蛇腹状のものであり、待機位置において重力により伸び、観測位置において孵化途中卵Eに押されて縮む。遮光キャップ4は、下端に金属製のリング(図示しない)を備えており、少なくとも孵化途中卵Eに当接する部分は軟質材で作られている。遮光キャップ4の下端は、観測中に孵化途中卵Eのガス交換を妨げない位置に接触し続けるように外力を受ける。外力は、遮光キャップ4の重力や遮光キャップ4の圧縮力を利用する。遮光キャップ4は、孵化途中卵Eの観察中に受光素子3と観察対象の孵化途中卵Eの卵殻との間に空間を形成する。遮光キャップ4の一端側は、基部6に取り付けられる。
【0017】
通気穴5は、基部6に設けられている。通気穴5は、基部6における遮光キャップ4の径の内側に設けられている。通気穴5は、受光素子3への外乱光の入射を抑制する位置に設けられている。通気穴5は、空間内外の通気を可能とする。
【0018】
制御部2は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェース、AD変換部等の専用ないし汎用のコンピュータにより構成されている。制御部2は、受光素子3の受け取った光が電気信号に変換されて送られてくる。制御部2は、この電気信号を解析することによって胚が生存しているか否か等の胚の状態を識別する。
【0019】
本実施形態では、孵卵機に孵化途中卵Eが入れられた孵卵開始日からハッチャートレイTへの移卵日までの18日/19日間、または、雛の発生までの約20日間の全期間にわたって連続した観察、または、それらの期間中の任意のタイミングにおいて観察が可能である。遮光キャップ4は、観察期間中ずっと卵殻に接触し続けている。孵化途中卵Eは、観察期間中、気室E1を通じて孵化途中卵Eの内外でガス交換を行っており、孵卵開始から所定期間経過した後は熱を産生する。すなわち、観察期間中、孵化途中卵Eから発生するガスや熱が遮光キャップ4で塞がれた空間に拡散する。本実施形態では、通気穴5を介して、空間内のガスや熱が空間外へ放出され、外気が空間内へと流入する。なお、図2では、通気穴5を介して、空間内から外側へ放出される様子を矢印で示しており、空間外から内側へ流入される様子は図示していない。
【0020】
以上説明したように、本実施形態にかかる孵化途中卵観察用の受光プローブ1は、受光素子3と、遮光キャップ4と、通気穴5とを備える。受光素子3は、孵卵機内のトレイT上に置かれた孵化途中卵Eの上方に配置され、孵化途中卵Eの内部を通過してきた光の変化を測定して該孵化途中卵Eの内部の状態を観察する。遮光キャップ4は、孵化途中卵Eの観察中に受光素子3と観察対象の孵化途中卵Eの卵殻との間に空間を形成して、受光素子3への外乱光の入射を抑制する。通気穴5は、受光素子3への外乱光の入射を抑制しつつ、空間内外の通気が可能なものである。そのため、孵卵機内での連続測定時の胚の成長への阻害要因を排除することができる。また、外力が、少なくとも遮光キャップ4の重力や圧縮力を利用するものであるため、孵化途中卵Eに過度な負荷をかけることなく、遮光キャップ4の卵殻に対する位置ずれも抑制できる。
【0021】
また、受光プローブ1は、遮光キャップ4の一端側が取り付けられる基部6を備え、通気穴5は、基部6における遮光キャップ4の径の内側に設けられている。
【0022】
次に、本発明の変形例について、図3を用いて説明する。ここでも、上述した実施形態と同一(またはこれに準ずる)の部分は同じ符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0023】
本変形例の受光プローブ1は、通気穴5が、遮光キャップ4に用いられる通気性のある素材によるものである。遮光キャップ4は、例えば、通気性のある樹脂、スポンジ、ゴムなどで構成される。このようなものであるため、通気穴5を介して、空間内のガスや熱が空間外へ放出され、外気が空間内へと流入する。また、基部6に穴を設ける必要もなくなる。
【0024】
次に、本発明の他の変形例について、図4を用いて説明する。ここでも、上述した実施形態と同一(またはこれに準ずる)の部分は同じ符号を付し、必要である場合を除きその説明を繰り返さないこととする。
【0025】
本変形例の受光プローブ1は、通気穴5が、導管8に設けられている。導管8は、一端側が空間に露出し、他端側が空間外に露出する。このようなものであるため、通気穴5を介して、空間内のガスや熱が空間外へ放出され、外気が空間内へと流入する。なお、図4では、通気穴5を介して、空間内から外側へ放出される様子を矢印で示しており、空間外から内側へ流入される様子は図示していない。
【0026】
なお、本発明は上述した実施形態に限られない。
【0027】
受光プローブ1は、遮光キャップ4を図示したものよりも小型化してもよい。例えば、遮光キャップ4は、下端の外径を孵化途中卵Eの気室E1の径よりも小さく設定する。遮光キャップ4の下端は、孵化途中卵Eの卵殻表面を覆う面積が907平方ミリメートル以下(好ましくは706平方ミリメートル以下)、または、直径34ミリメートル以下(好ましくは直径30ミリメートル以下)が一例として挙げられる。すなわち、遮光キャップ4は、孵化途中卵Eの気室E1の一部のみを覆うように配置される。このように、気室E1の大半を解放して外気と接触できるようにして、孵卵機内での連続測定時の胚の成長への阻害要因を排除することもできる。
【0028】
遮光キャップ4は、その形状、大きさなど図示したものに限られない。通気穴5は、その形状、大きさ、数、位置など図示したものには限られない。
【0029】
今回開示された実施の形態は例示であってこれに制限されるものではない。本発明は上記で説明した範囲ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、孵化途中卵を所定時間にわたって観察する装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
1…受光プローブ
3…受光素子
4…遮光キャップ
5…通気穴
6…基部
T…トレイ
E…孵化途中卵
図1
図2
図3
図4