(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-115406(P2021-115406A)
(43)【公開日】2021年8月10日
(54)【発明の名称】植物繊維ブラシ
(51)【国際特許分類】
A46B 3/16 20060101AFI20210712BHJP
A46B 5/00 20060101ALI20210712BHJP
A46D 1/00 20060101ALI20210712BHJP
【FI】
A46B3/16
A46B5/00 A
A46D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-12948(P2020-12948)
(22)【出願日】2020年1月29日
(71)【出願人】
【識別番号】510210966
【氏名又は名称】株式会社コーゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 大輔
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AA14
3B202AA19
3B202AA22
3B202BA03
3B202BA13
3B202BA15
3B202EA06
3B202EE01
3B202EE07
3B202EF10
3B202EG10
(57)【要約】
【課題】植物繊維が一定の方向に配列されており、毛抜けが発生しにくく、掃除用や美容用などにも適用できる汎用性のあるブラシを提供する。
【解決手段】台部5と台部4に固定された繊維1の配列部を含む植物繊維ブラシ10であって、繊維1配列部は、植物繊維が解繊かつ拡幅され、所定長にカットされ、中央部を金属製ワイヤー2で挟んで撚られ、ワイヤー2を支点にして折り曲げられており、台部5には溝部6が形成されており、溝部6の表面の幅は繊維1の配列部基部の幅よりも狭く、底部の幅は繊維1の配列部基部の幅よりも広く、溝部6の少なくとも一端は開放されており、溝部6の開放された部分から底部に繊維1の配列部基部が挿入され固定されており、溝部6の表面から外側に向かって繊維1が配列している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台部と前記台部に固定された繊維配列部を含む植物繊維ブラシであって、
前記繊維配列部は、植物繊維が解繊かつ拡幅され、所定長にカットされ、中央部を金属製ワイヤーで挟んで撚られ、前記ワイヤーを支点にして折り曲げられており、
前記台部には溝部が形成されており、前記溝部の表面の幅は繊維配列部基部の幅よりも狭く、底部の幅は前記繊維配列部基部の幅よりも広く、前記溝部の少なくとも一端は開放されており、
前記溝部の開放された部分から底部に前記繊維配列部基部が挿入され固定されており、前記溝部の表面から外側に向かって前記繊維が配列していることを特徴とする植物繊維ブラシ。
【請求項2】
前記植物繊維は、棕櫚繊維、麻繊維、パーム繊維、サイザル繊維、バナナ繊維、ヤシ繊維及び竹繊維から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の植物繊維ブラシ。
【請求項3】
前記繊維配列部は一列又は複数列に配列されている請求項1に記載の植物繊維ブラシ。
【請求項4】
前記繊維配列部は直線、曲線、ジグザク線又は螺旋状に配列されている請求項1〜3のいずれかに記載の植物繊維ブラシ。
【請求項5】
前記金属ワイヤーが挿入された後、溝部の開放された部分は封鎖されている請求項1〜4のいずれかに記載の植物繊維ブラシ。
【請求項6】
前記植物繊維ブラシは、掃除ブラシ、除塵ブラシ、洋服ブラシ、美容ブラシ、歯ブラシ、キッチンブラシ、櫛、ほうきである請求項1〜5のいずれかに記載の植物繊維ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然の植物繊維を使用したブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
天然の棕櫚繊維は従来からたわしに使用されている。たわしは、網状になっている棕櫚の木の皮繊維を解繊し、所定長にカットし、繊維配列体とし、金属ワイヤーで挟んで捩り、金属ワイヤーをループ状にして作成される。天然の棕櫚繊維は絡みやすく、機械化しにくく、前記作業はほとんどが手作業で行われてきた。このため、棕櫚繊維を使ったブラシは、あまり提案されてこなかった。特許文献1には、たわしを使用したマッサージ用ブラシが提案されている。このマッサージ用ブラシは、たわしの両端に紐固定部を設け、この紐固定部に紐を結んでマッサージ用ブラシとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平2−23296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来のマッサージ用ブラシはたわしをブラシにしただけであるので、棕櫚繊維は様々な方向に向いており、マッサージ以外の用途に使用するには問題があった。
【0005】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、植物繊維が一定の方向に配列されており、毛抜けが発生しにくく、掃除用や美容用などにも適用できる汎用性のあるブラシを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の植物繊維ブラシは、台部と前記台部に固定された繊維配列部を含む植物繊維ブラシであって、前記繊維配列部は、植物繊維が解繊かつ拡幅され、所定長にカットされ、中央部を金属製ワイヤーで挟んで撚られ、前記ワイヤーを支点にして折り曲げられており、前記台部には溝部が形成されており、前記溝部の表面の幅は繊維配列部基部の幅よりも狭く、底部の幅は前記繊維配列部基部の幅よりも広く、前記溝部の少なくとも一端は開放されており、前記溝部の開放された部分から底部に前記繊維配列部基部が挿入され固定されており、前記溝部の表面から外側に向かって前記繊維が配列していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の植物繊維ブラシは、台部溝部の表面の幅は繊維配列部基部の幅よりも狭く、底部の幅は繊維配列部基部の幅よりも広く、溝部の少なくとも一端は開放されており、溝部の開放された部分から底部に前記繊維配列部基部(金属ワイヤーで撚られた部分)が挿入され固定されており、溝部の表面から外側に向かって繊維が配列していることにより、植物繊維が一定の方向に配列され、掃除用や美容用などにも適用できる汎用性のあるブラシを提供できる。また、前記ブラシの基部は繊維が金属製ワイヤーで挟んで撚られているため、毛抜けが発生しにくいブラシが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態における棕櫚繊維を解繊かつ拡幅し、所定長にカットし、中央部に2本の金属製ワイヤーを配置した工程を示す模式的外観図である。
【
図2】
図2は同、金属製ワイヤーを撚った状態を示す模式的外観図である。
【
図3】
図3は同、金属製ワイヤーを支点にして棕櫚繊維を2つに折り曲げた模式的斜視図である。
【
図5】
図5は同、台部の溝部の開放端部を埋めた状態の模式的斜視図である。
【
図6】
図6Aは同、台部の溝部を楔形とした模式的断面図、
図6Bは台部5の溝部6’の底部を横長の矩形とし、上部を幅の狭い矩形の組み合わせとした模式的断面図、
図6Cは溝部’の底部を楔形とし、上部を幅の狭い矩形の組み合わせとした模式的断面図である。
【
図7】
図7は別の実施形態における棕櫚繊維列を3列にした棕櫚繊維ブラシの模式的斜視図である。
【
図8】
図8Aはさらに別の実施形態における棕櫚繊維列を螺旋状とした棕櫚繊維ブラシの模式的斜視図、
図8Bは同棕櫚繊維列を円筒の長さ方向に配列した棕櫚繊維ブラシの模式的斜視図である。
【
図9】
図9Aはさらに別の実施形態における金属製台を使用した棕櫚繊維ブラシの模式的斜視図、
図9Bは同断面図である。
【
図10】
図10はさらに別の実施形態の棕櫚繊維ブラシの模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、台部と前記台部に固定された繊維配列部を含む植物繊維ブラシである。植物繊維は肌に優しいことから好ましい。植物繊維としては、棕櫚繊維、麻繊維、パーム繊維、サイザル繊維、バナナ繊維、ヤシ繊維、竹繊維などが好ましく、この中でも棕櫚繊維が好ましい。以下においては、棕櫚繊維を例に挙げて説明する。
【0010】
棕櫚繊維は従来からたわしに使用されているものを使用できる。棕櫚繊維配列部は、棕櫚繊維が解繊かつ拡幅され、所定長にカットされ、配列され、中央部を金属製ワイヤーで挟んで撚られ、前記ワイヤーを支点にして繊維は2つに折り曲げられている。繊維が金属製ワイヤーで撚られた部分は繊維配列部の基部となる。この基部は繊維が金属製ワイヤーで挟んで撚られているため、毛抜けが発生しにくいブラシとなる。
【0011】
折り曲げる前の棕櫚繊維の平均繊維長は20〜600mmが好ましく、より好ましくは40〜400mmであり、さらに好ましくは50〜200mmである。金属製ワイヤーは1本でもよいし、複数本でもよい。1本の場合は折り曲げて使用する。
【0012】
台部には溝部が形成されており、溝部の表面の幅は繊維配列部基部(金属ワイヤーで撚られた部分)の幅よりも狭く、底部の幅は前記繊維配列部基部の幅よりも広く、前記溝部の少なくとも一端は開放されており、溝部の開放された部分から底部に前記金属ワイヤーが挿入され固定されており、溝部の表面から外側に向かって棕櫚繊維が配列している。これにより、棕櫚繊維配列部を溝部内に固定し、棕櫚繊維の脱落を防止している。台部表面からの棕櫚繊維の平均繊維長は、5〜290mmが好ましく、より好ましくは10〜190mmであり、さらに好ましくは20〜90mmである。前記繊維長であれば、様々な用途に適用できる。
【0013】
棕櫚繊維は一列又は複数列に配列されているのが好ましい。複数列は2〜10列が好ましい。 棕櫚繊維は直線、曲線、ジグザク線又は螺旋状などに配列されているのが好ましい。棕櫚繊維の配列は溝部によって決まるので、用途に合わせて様々な配列ができる。
【0014】
金属ワイヤーが挿入された後、溝部の開放された部分は封鎖されていてもよい。このようにすると美観が向上する。また、溝部全体に樹脂を充填してもよい。これにより、溝部内に塵埃が溜まることを防止できる。
【0015】
棕櫚ブラシは、卓上ブラシ、掃除ブラシ、除塵ブラシ、洋服ブラシ、美容ブラシ、歯ブラシ、キッチンブラシ、櫛、ほうきなどに適用できる。
【0016】
以下図面を用いて説明する。以下の図面中、同一符号は同一物体または部品を示す。
図1は本発明の一実施形態における棕櫚繊維を解繊かつ拡幅し、所定長にカットし、中央部に1本の金属製ワイヤー折り曲げて配置した工程を示す模式的外観図である。すなわち、棕櫚繊維1の中央部に棕櫚繊維を挟むように金属製ワイヤー2を配置し、金属製ワイヤー2の一端部は把持部3で固定し、他端部はフック4に掛ける。この状態でフック4を回転すると金属製ワイヤー2には撚りが入り、棕櫚繊維1は金属製ワイヤー2に固定される。
図2は金属製ワイヤーを撚った状態を示す模式的外観図である。金属製ワイヤーとしては、ステンレス鋼線、真鍮線、鉄線、銅線などを使用できる。金属製ワイヤーの直径は0.1〜2mmが好ましく、より好ましくは0.5〜1.8mmである。
【0017】
次に、
図3に示すように、金属製ワイヤー2を支点にして棕櫚繊維1を2つに折り曲げる。この時、棕櫚繊維の長さが一定となるようにカットする。
【0018】
図4Aは同、棕櫚繊維ブラシ10の模式的斜視図、
図4Bは同模式的断面図である。台部5には溝部6が形成されており、溝部6の表面の幅は繊維配列部基部(金属ワイヤーで撚られた部分)2の幅よりも狭く、底部の幅は繊維配列部基部2の幅よりも広く、溝部6の少なくとも一端は開放されており、溝部5の端部の開放された部分から底部に金属ワイヤー2が挿入され固定されており、溝部6の表面から外側に向かって棕櫚繊維1が配列している。台部5は木材、樹脂、金属など任意の材料を使用できる。この例は、テーブルの上の掃除ブラシ、除塵ブラシなどに適用できる。
【0019】
図5は同、台部5の溝部6の開放端部を充填材8で埋めた状態の模式的斜視図である。開放端部を埋める充填材8は、台部5と同一材料でもよいし、異なった材料でもよい。
【0020】
図6Aは同、台部5の溝部6を楔形とした模式的断面図である。
図6Bは台部5の溝部6’の底部を横長の矩形とし、上部を幅の狭い矩形の組み合わせとした模式的断面図である。
図6Cは溝部6”の底部を楔形とし、上部を幅の狭い矩形の組み合わせとした模式的断面図である。このような構造であれば底部に金属ワイヤー2が挿入され固定できる。
図6A−C以外に、溝部の底部が楕円、長円、その他の変形であってもよい。
【0021】
図7は別の実施形態における棕櫚繊維列を3列にした棕櫚繊維ブラシ11の模式的斜視図である。台部5には溝部6a,6b,6cが形成され、この底部に金属ワイヤー2が挿入固定され、棕櫚繊維1a,1b,1cが配列している。この例は、掃除ブラシ、除塵ブラシ、洋服ブラシ、髪用ブラシ、キッチンブラシなどに適用できる。
【0022】
図8はさらに別の実施形態における棕櫚繊維列を螺旋状とした棕櫚繊維ブラシ12の模式的斜視図である。台部5には螺旋状に2本の溝部が形成され、この底部に金属ワイヤーが挿入固定され、棕櫚繊維1a,1bが配列している。螺旋溝は2列に限定されず、1列でも、3列以上の複数列であってもよい。
図8Bは円筒上の台部5の長さ方向に溝部6a,6b,6cが形成され、この中に棕櫚繊維1a,1b,1cの列を配列した棕櫚繊維ブラシ13の模式的斜視図である。これらの例は、美容ブラシに適用できる。
【0023】
図9Aはさらに別の実施形態における金属製台9を使用した棕櫚繊維ブラシ14の模式的斜視図、
図9Bは同断面図である。金属製台9はステンレス板、亜鉛メッキ軟鋼鉄板などを使用できる。金属製台9の厚さは0.05〜2mm程度が好ましい。この例は、そのままでもブラシに適用でき、あるいは別の台に金属製台9部分を埋め込んでブラシにすることもできる。
【0024】
図10はさらに別の実施形態の棕櫚繊維ブラシ15の模式的斜視図である。台5の上に棕櫚繊維1が間隔をあけて配列している。毛並みも一定ではなく、針金を増やすことにより棕櫚繊維1の間隔をあけることができる。この例は、美容ブラシ、櫛などに適用できる。
【実施例】
【0025】
以下実施例を用いてさらに本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定して解釈されない。
【0026】
(実施例1)
国産の棕櫚繊維を解繊し、繊維長を100mmにカットし、
図1に示すように配列し、中央部を直径1.2mmのステンレス線で挟んで撚った。撚り数は10回/100mmの割合とした。撚った後の状態を
図2に示す。この棕櫚繊維を、前記ワイヤーを支点にして2つに折り曲げられた。この状態を
図3に示す。ステンレス線の撚り部分から繊維の先端までの長さは45mmであり、重量は12gであった。
台部として高さ35mm、幅35mm、長さ85mmの木材を用い、
図6Aに示す溝部6を切削加工で作成した。溝部6は底部の幅8mm、表面の幅4mm、高さ12mmであった。この溝部6の開放端から
図3の棕櫚繊維を2つ折りした基部のワイヤー部分を、溝部の底部に挿入した。ワイヤー部分と溝部の底部の摩擦力により、ワイヤー部分は溝部の底部に固定できた。
このようにして得られた棕櫚繊維ブラシは
図4A,
図4Bに示すとおりであり、棕櫚繊維1の配列部の高さは30mm、長さは70mm、幅は基部が4mm、先端部が12mmであった。この棕櫚繊維ブラシは卓上ブラシとして使い勝手が良かった。また、毛抜けが発生しない利点があった。
【0027】
(実施例2)
厚さ1mmの亜鉛メッキ軟鋼鉄板をプレス加工し、
図9A,
図9Bに示す、高さ14mm、溝の底の幅8mm、溝の表面の幅4mm、長さ75mmの台部9に
図3の棕櫚繊維を2つ折りした基部のワイヤー部分を挿入した。得られた棕櫚繊維ブラシは
図9A,
図9Bに示すとおりであり、棕櫚繊維1の配列部の高さは30mm、長さは70mm、幅は基部が4mm、先端部が12mmであった。この棕櫚繊維ブラシは卓上ブラシとして使い勝手が良かった。また、別の台に金属製台9部分を埋め込んでブラシにすることもできた。このブラシも毛抜けが発生しない利点があった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明の棕櫚繊維ブラシは、卓上ブラシ、掃除ブラシ、除塵ブラシ、洋服ブラシ、美容ブラシ、歯ブラシ、キッチンブラシ、櫛、ほうきなどに有用である。
【符号の説明】
【0029】
1,1a,1b,1c 棕櫚繊維
2 金属製ワイヤー
3 把持部
4 フック4
5 台部
6,6’,6”,6a,6b,6c 溝部
8 充填材
9 金属製台部
10,11,12,13,14,15 棕櫚繊維ブラシ