【解決手段】平らな圧延製品(2)の材料特性に特有である少なくとも1つの測定変数(M)を検出するセンサ装置(6)が、圧延スタンド(1)の上流および/または下流に配置されている。材料特性は、特に、圧延製品(2)の電磁的特性または機械的特性とすることができる。センサ装置(6)は、検出された測定変数(M)を圧延ミルの制御装置(9)に伝達する。制御装置(9)は、測定変数(M)を考慮に入れて、圧延スタンド(1)の制御値(A)を決定する。圧延スタンド(1)の制御により、平らな圧延製品(2)の材料特性に影響が与えられる。制御値(A)は、圧延スタンド(1)の上側および下側のワークロール(3、4)が回転する周辺速度(vO、vU)の比である。
前記圧延ミルが少なくとも1つの第2の圧延スタンド(24)を有し、前記第2の圧延スタンド(24)が前記センサ装置(6)と前記第1の圧延スタンド(1)との間に配置されておらず、または前記圧延ミルが少なくとも1つの第2の圧延スタンド(24)を有し、前記第2の圧延スタンド(24)のうちの少なくとも1つが前記センサ装置(6)と前記第1の圧延スタンド(1)との間に配置されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の圧延ミル。
前記制御装置(9)は、前記制御装置(9)が前記上側周辺速度(vO)の、前記下側周辺速度(vU)に対する前記比を0.5から2.0の間、特に0.9から1.1の間であるように決定するように設計されている
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の圧延ミル。
前記上側ワークロール(3)が上側駆動部(14)によって駆動され、前記下側ワークロール(4)が前記上側駆動部(14)と異なる下側駆動部(15)によって駆動される
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の圧延ミル。
前記上側ワークロール(3)および前記下側ワークロール(4)が共通の駆動部(16)によって駆動され、前記上側ワークロール(3)に連動回転するように接続されている上側出力シャフト(19)の速度の、前記下側ワークロール(4)に連動回転するように接続されている下側出力シャフト(20)の速度に対する比を連続的に調整することができるトランスミッション(17)が、一方の側の前記共通の駆動部(16)と他方の側の前記上側ワークロール(3)および前記下側ワークロール(4)との間に配置されている
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の圧延ミル。
前記第1の圧延スタンド(1)が上側ワークロール(3)および下側ワークロール(4)を有し、前記制御装置(9)は、前記測定変数(M)を考慮に入れて決定された前記制御値(A)が、前記第1の圧延スタンド(1)の前記上側ワークロール(3)および/もしくは前記下側ワークロール(4)の温度変更、ならびに/または前記第1の圧延スタンド(1)における圧延前の前記平らな圧延製品(2)の温度変更であるように設計されている
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の圧延ミル。
前記センサ装置(6)が前記第1の圧延スタンド(1)の上流に配置され、前記制御装置(9)は、前記制御装置(9)が、前記測定変数(M)を考慮に入れて決定された前記制御値(A)を、前記センサ装置(6)から前記第1の圧延スタンド(1)までの前記平らな圧延製品(2)の行路を考慮に入れて、前記第1の圧延スタンド(1)に出力するように設計されている
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の圧延ミル。
− 前記制御装置(9)がモデル(12)を備え、前記モデル(12)を用いて、前記制御装置(9)が、前記測定変数(M)を考慮に入れて前記第1の圧延スタンド(1)の前記制御値(1)を決定し、前記測定変数(M)を考慮に入れて決定された前記制御値(A)を考慮に入れて、前記第1の圧延スタンド(1)における圧延後の前記平らな圧延製品(2)の前記材料特性の予測値(E)をさらに決定し、
− 前記第1の圧延スタンド(1)における圧延後の前記平らな圧延製品(2)の前記材料特性に特有である少なくとも1つのさらなる測定変数(M’)を検出することができるさらなるセンサ装置(13)が、前記第1の圧延スタンド(1)の下流に配置され、
− 前記さらなるセンサ装置(13)が、前記制御装置(9)に接続されて、前記検出されたさらなる測定変数(M’)を伝達し、
− 前記制御装置(9)は、前記制御装置(9)が前記第1の圧延スタンド(1)から前記さらなるセンサ装置(13)までの前記平らな圧延製品(2)の行路を考慮に入れて決定する時点について、前記制御装置(9)が前記さらなる測定変数(M’)を使用するように設計され、
− 前記制御装置(9)は、前記制御装置(9)が前記材料特性の前記さらなる測定変数(M’)と前記予測値(E)との比較に基づいて前記モデル(12)を適合化するように設計されている
ことを特徴とする、請求項7に記載の圧延ミル。
前記制御装置(9)は、前記制御値(A)を決定する際、前記制御装置(9)が、前記伝達された測定変数(M)に加えて、前記第1の圧延スタンド(1)における前記平らな圧延製品(2)の前記圧延前の前記平らな圧延製品(2)の温度(T)、および/または前記第1の圧延スタンド(1)における前記平らな圧延製品(2)の前記圧延中の圧延力(F)、および/または前記第1の圧延スタンド(1)における前記平らな圧延製品(2)の前記圧延中のパス減少を考慮に入れるように設計されている
ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の圧延ミル。
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属で構成されている平らな圧延製品(flat rolled product)を圧延するための第1の圧延スタンドを有する圧延ミルであって、
− センサ装置が第1の圧延スタンドの上流および/または下流に配置され、
− センサ装置は、圧延ミルの制御装置(control device)に接続されて、検出された測定変数を伝達し、
− 制御装置は、第1の圧延スタンドの制御値を決定するという状況において、伝達された測定変数を考慮に入れるように設計され、
− センサ装置は、平らな圧延製品の材料特性に特有である少なくとも1つの測定変数が検出され得るように設計され、
− 制御値による第1の圧延スタンドの制御により、平らな圧延製品の材料特性に影響が与えられ、
− 第1の圧延スタンドは、上側ワークロールおよび下側ワークロールを有する圧延ミルから始まる。
【0002】
本発明の文脈においては、「第1の圧延スタンド(first rolling stand)」という用語は、圧延ミルが複数の圧延スタンドを必ず有すること、および第1の圧延スタンドは平らな圧延製品が最初に通って流れる最前の圧延スタンドであることを意味するように意図するものではない。むしろ、まずは、圧延ミルが第1の圧延スタンドしか有しない場合を含むように意図されている。この場合には、第1の圧延スタンドしか存在しない。その上、圧延ミルが複数の圧延スタンドを有する場合には、「第1の圧延スタンド」という用語はまた、それを圧延ミルの他の圧延スタンドと区別するだけの働きをしているにすぎない。一方、意図されている暗示的順序はない。したがって、この場合ですら、第1の圧延スタンドは、圧延ミルの一連の圧延スタンドのいずれの場所にも配置され得る。したがって、ほんの一例として、平らな圧延製品が、圧延スタンドAを最初に通って流れ、次いで圧延スタンドBを通って流れ、次いで圧延スタンドCを通って流れ、最後に圧延スタンドDを通って流れる場合、第1の圧延スタンドは圧延スタンドA〜Dのうちのいずれかであり、他の圧延スタンドは第2の圧延スタンドであってもよい。
【0003】
平らな圧延製品の生産においては、平らな圧延製品の幾何学的特性、つまり、特に、その幅および厚さを最大限可能な限り精密に設定することを目的とする。またこれは、輪郭または外形にもあてはまる。平坦性も維持すべきである。これらのおよびまた可能な他の幾何学的特性に加えてさらに、平らな圧延製品の材料特性も設定すべきである。材料特性は、平らな圧延製品が、後の使用の際に、たとえば、特定の降伏強度、特定の材料硬度、または特定の着磁性を有するべき特性である。そのため、材料特性は、材料が、その特別な現在の状態(たとえば、温度)と関係していない、またその幾何学的特性とも関係していない特性である。特定の材料特性が材料それ自体から切り離される理由は、金属が粒状構造であるからである。
【0004】
材料特性は、少なくとも部分的には、平らな圧延製品の圧延中に設定され得る。しかしながら、材料特性の実際値と所望の目標値との間に差があることが多い。この場合には、熱間圧延後、平らな圧延製品を熱処理する必要がある。これは、圧延製品に「ゴス集合組織(Goss texture)」を確立すべき場合に特に、極めてあてはまる。しかしながら、特定の鋼、特にAHSS(advanced high strength steel、進化型高強度鋼)、ならびにマルテンサイトグレードおよびベイナイトグレードの場合にも、同様の問題に直面する。熱処理の場合には、圧延製品は、材料特性を設定するために、たとえば、熱間圧延後、冷却区域において適切な方式で冷却され得、または冷間圧延という状況においては、焼鈍しステップにおいて処理され得る。代替として、この処理は、冷間圧延後、または2つの冷間圧延ステップ間に行われ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、必要に応じて単純かつ信頼できる方式で、平らな圧延製品の電気的、磁気的、または機械的な材料特性の選択的な調整を可能にするやり方を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、請求項1の特徴を有する圧延ミルを用いて達成される。この圧延ミルの有利な改良点は、従属請求項2〜15の主題を形成する。
【0011】
本発明によれば、冒頭に述べたタイプの圧延ミルにおいては、制御装置は、測定変数を考慮に入れて決定された制御値が、上側ワークロールが回転する上側周辺速度の、下側ワークロールが回転する下側周辺速度に対する比であるように設計されている。
【0012】
したがって、平らな圧延製品の対応する材料特性を、測定の時点に、直接、決定することができる測定変数が検出される。したがって、一方の測定変数と他方の材料特性との間に直接的な機能的関係が存在する。対照的に、複雑なモデル計算を行う必要がなく、それによって、たとえば、時間に関する展開をモデル化することができる。
【0013】
この場合、「測定の時点に(at the point in time of measurement)」という語句は、平らな圧延製品の状態の変化、たとえば、その温度の変化により、材料特性も同様に、時間の経過とともに必ず変化し続けることを暗示するように意図するものではない。ただし、材料特性は、圧延製品の対応する処理を用いて、たとえば、第1の圧延スタンドにおいて圧延することによって、もしくは何らかの他の圧延スタンドにおいて圧延することによって、または後の時点での熱的処理を用いて、別の値に設定することができる。
【0014】
圧延ミルは、すでに述べた第1の圧延スタンドのみを有すること、結果的には、単一の圧延スタンドのみを有することが可能である。この場合には、センサ装置は、圧延スタンドのそれ自体のすぐ上流またはすぐ下流に全体的に配置される。しかしながら、この圧延ミルもまた同様に、第1の圧延スタンドに加えて、少なくとも1つの第2の圧延スタンドを有することが可能である。この場合、いくつかの異なる実施形態が可能である。
【0015】
したがって、たとえば、第2の圧延スタンドが、センサ装置と第1の圧延スタンドとの間に配置されないこともあり得る。この実施形態は、たとえば、センサ装置がマルチスタンド圧延トレインの最前の圧延スタンドの上流に配置され、測定変数を考慮に入れて制御装置によって決定された制御値が最前の圧延スタンドに作用し、または逆に、センサアセンブリがマルチスタンド圧延トレインの最後の圧延スタンドの下流に配置され、測定変数を考慮に入れて制御装置によって決定された制御値が最後の圧延スタンドに作用するとき、具現化される。同様に、この実施形態は、たとえば、センサアセンブリがマルチスタンド圧延トレインの2つの圧延スタンド間に配置され、測定変数を考慮に入れて制御装置によって決定された制御値がこれらの2つの圧延スタンドのうちの一方に作用し、または制御装置が、2つのそのような制御値を決定し、それぞれの制御値がこれら2つの圧延スタンドのそれぞれの圧延スタンドに作用するとき、具現化される。
【0016】
代替として、第2の圧延スタンドのうちの少なくとも1つが、センサ装置と第1の圧延スタンドとの間に配置されることもあり得る。この実施形態は、たとえば、センサ装置がマルチスタンド圧延トレインの最前の圧延スタンドの上流に配置され、測定変数を考慮に入れて制御装置によって決定された制御値が最前の圧延スタンド以外の圧延スタンドに作用し、または逆に、センサアセンブリがマルチスタンド圧延トレインの最後の圧延スタンドの下流に配置され、測定変数を考慮に入れて制御装置によって決定された制御値が最後の圧延スタンド以外の圧延スタンドに作用するとき、具現化される。
【0017】
もちろん、これらの手法の組合せも可能である。したがって、たとえば、センサ装置がマルチスタンド圧延トレインの最前の圧延スタンドの上流に配置され得、前方の圧延スタンドに一方が作用し、別の圧延スタンドに他方が作用する複数の制御値が、測定変数を考慮に入れて制御装置によって決定され得る。逆に、同様に、センサアセンブリがマルチスタンド圧延トレインの最後の圧延スタンドの下流に配置することがあり得、さらには、最後の圧延スタンドに一方が作用し、別の圧延スタンドに他方が作用する複数の制御値が、測定変数を考慮に入れて制御装置によって決定されることもあり得る。
【0018】
好ましくは、制御装置は、制御装置が、上側周辺速度の、下側周辺速度に対する比を0.5から2.0の間、特に、0.9から1.1の間であるように決定するように設計されている。それによって、実際に関係するすべての場合をカバーすることができる。
【0019】
互いに異なる周辺速度を具現化できるようにするために、上側ワークロールを上側駆動部によって駆動させ、下側ワークロールを上側駆動部と異なる下側駆動部によって駆動させることが可能である。この場合には、異なる周辺速度は、単純に2つの駆動部の設定を異なる速度に対応させることだけによって具現化可能である。
【0020】
代替として、上側ワークロールおよび下側ワークロールを共通の駆動部によって駆動させることが可能である。この場合には、上側ワークロールに連動回転する(conjoint rotation)ように接続されている上側出力シャフトの速度の、下側ワークロールに連動回転するように接続されている下側出力シャフトの速度に対する比を継続的に調整することができるトランスミッション(transmission)が、一方の側の共通駆動部と他方の側の上側ワークロールおよび下側ワークロールとの間に配置されている。
【0021】
互いに対する周辺速度の比を設定することに加えて、制御装置は、測定変数を考慮に入れて決定された制御値が、第1の圧延スタンドの上側ワークロールおよび/もしくは下側ワークロール、ならびに/または第1の圧延スタンドにおける圧延前の平らな圧延製品の温度変更であるように設計することが可能である。たとえば、冷却は、水噴霧(spraying on water)によって行うことができ、または加熱は、誘導加熱によって行うことができる。
【0022】
センサ装置が第1の圧延スタンドの上流に配置されている場合、好ましくは、制御装置は、制御装置が、測定変数を考慮に入れて決定された制御値を、センサ装置から第1の圧延スタンドまでの平らな圧延製品の行路を考慮に入れて、第1の圧延スタンドに出力するように設計されている。したがって、第1の圧延スタンドを制御する際には、制御装置は、平らな圧延製品の特定の区分についての測定変数の検出と、第1の圧延スタンドにおける平らな圧延製品の同じ区分の圧延と、の間に経過する搬送時間を考慮に入れる。
【0023】
好ましくは、制御装置はモデルを含み、このモデルを用いて、制御装置は、測定変数を考慮に入れて第1の圧延スタンドの制御値を決定し、測定変数を考慮に入れて決定された制御値を考慮に入れて、第1の圧延スタンドにおける圧延後の平らな圧延製品の材料特性の予測値をさらに決定する。さらに好ましくは、第1の圧延スタンドにおける圧延後の平らな圧延製品の材料特性に特有である少なくとも1つのさらなる測定変数を検出することができるさらなるセンサ装置が、第1の圧延スタンドの下流に配置されている。さらなるセンサ装置は、制御装置に接続されて、検出されたさらなる測定変数を伝達する。最後に、制御装置は、制御装置が第1の圧延スタンドからさらなるセンサ装置までの平らな圧延製品の行路を考慮に入れて決定する時点について、制御装置がさらなる測定変数を使用し、材料特性のさらなる測定変数と予測値との比較に基づいてモデルを適合化するようなやり方で設計されていることが好ましい。この手順を用いて、モデルは、平らな圧延製品の実際の振舞いにますます良く次第に適合し得る。
【0024】
好ましくは、制御装置は、制御値を決定する際、制御装置が、伝達された測定変数に加えて、第1の圧延スタンドにおける平らな圧延製品の圧延前の平らな圧延製品の温度、および/または第1の圧延スタンドにおける平らな圧延製品の圧延中の圧延力、および/または第1の圧延スタンドにおける平らな圧延製品の圧延中のパス減少を考慮に入れるように設計されている。それによって、より高い精度による所望の材料特性を設定することが可能である。所要の依存関係は、たとえば、特徴マップの形態で、制御装置に記憶され得る。
【0025】
好ましい実施形態においては、センサ装置は、励起要素、および第1のセンサ要素を備える。ベース信号が、励起要素によって、平らな圧延製品において励起される。励起されたベース信号に基づく第1のセンサ信号が、第1のセンサ要素によって検出される。センサ装置は、第1のセンサ信号を考慮に入れて伝達された測定変数を決定することができる。代替として、伝達された測定変数が、第1のセンサ信号を含むことが可能である。
【0026】
個々の場合には、第1のセンサ信号を独占的に検出することが可能であり得る。しかしながら、概して、センサ装置は、いくつかの第2のセンサ要素をさらに含む。この場合には、第1のセンサ要素から搬送方向に見たとき、それぞれの第2のセンサ要素は、第1のセンサ要素の上流もしくは下流に、および/または横方向にオフセットされて配置されている。励起されたベース信号に基づいた、第1のセンサ信号と同じ種類のそれぞれの第2のセンサ信号が、それぞれの第2のセンサ要素によって検出される。センサ装置は、伝達された測定変数を、それぞれの第2のセンサ信号も考慮に入れながら決定することが可能である。たとえば、対応するセンサ信号の差または割合が、形成され得る。代替として、伝達された測定変数はまた、それぞれの第2のセンサ信号も含むことが可能である。この場合には、同様の評価を制御装置によって行うことができる。
【0027】
ベース信号は、たとえば、渦電流とすることができる。代替として、ベース信号は、音波信号、特に超音波信号とすることができる。
【0028】
励起要素から第1のセンサ要素までの接続線は、好ましくは、搬送方向に平行に延びている。これにより、結果的に、特に信頼性のある評価がもたらされる。
【0029】
すでに述べたように、材料特性は、圧延製品の電磁的特性または機械的特性とすることができる。
【0030】
個々の場合には、熱間圧延を行ってもよい。しかしながら、概して、冷間圧延が行われる。したがって、圧延ミルは、概して、冷間圧延ミルである。
【0031】
本発明の上述の特性、特徴、および利点、ならびにこれらが達成される方式については、図面と組み合わせてより詳細に説明する例示の実施形態の次の説明と併せてより明確におよび明瞭に理解できることになろう。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1によれば、任意の圧延ミルと同様に、圧延ミルが、少なくとも1つの第1の圧延スタンド1を有する。第1の圧延スタンド1は、金属、特にストリップで構成されている平らな圧延製品2を圧延するのに使用される。特に、平らな圧延製品2を構成している金属は、鋼またはアルミニウムとすることができる。鋼の場合には、平らな圧延製品は、特に、相対的にシリコンの比率が高い(通常、2%から4%の間)電気鋼板とすることができる。
【0034】
圧延は、熱間圧延とすることができる。この場合には、圧延ミルは、熱間圧延ミルである。しかしながら、概して、冷間圧延が含まれる。この場合には、圧延ミルは、冷間圧延ミルである。
【0035】
図1の、また他の図の第1の圧延スタンド1については、上側ワークロール3および下側ワークロール4しか示されていない。しかしながら、概して、第1の圧延スタンド1は、さらなるロール、たとえば、4重スタンドの場合には、ワークロール3、4に加えて支持ロール、ならびに6重スタンドの場合には、ワークロール3、4および支持ロールに加えて、ワークロール3、4と支持ロールとの間に配置されている中間ロールをさらに有する。他の構成、たとえば、「20段ロール」圧延スタンドも可能である。特定の実施形態に関係なく、上側ワークロール3は、上側周辺速度vOで回転し、一方、下側ワークロール4は、下側周辺速度vUで回転する。上側および下側の周辺速度vOとvUはともに、0よりも大きい。
【0036】
図1における例示によれば、圧延ミルは、リバース圧延ミル(reversing rolling mill)として設計されている。そのため、この圧延ミルは、第1の圧延スタンド1の上流および下流に、平らな圧延製品2を巻き取るためのそれぞれのコイラ5を有する。第1の圧延スタンド1に関して、「上流(upstream)」および「下流(downstream)」という用語は、平らな圧延製品2が第1の圧延スタンド1において圧延される搬送方向xに関して常に見なすべきである。そのため、リバース圧延ミルにおいては、「上流」および「下流」という用語は、それぞれの圧延パス中のみに定義され、それぞれの次の圧延パスにおいては反転される。
【0037】
センサ装置6が、第1の圧延スタンド1の下流に配置されている。センサ装置6を用いて、測定変数Mを検出することができる。検出された測定変数Mは、平らな圧延製品2の材料特性に特有である。そのような特性の例は、圧延された製品2の導電率、相対透磁度、および磁気飽和度、またはより概括的には、電磁的特性である。材料特性のさらなる例は、圧延製品2の耐力、降伏強度、破断点伸び、またはより概括的には、機械的特性である。前述の変数は、無方向性(すなわち、等方性)、または方向性(すなわち、異方性)のいずれであってもよい。変数は、圧延製品2を構成している金属の粒状構造、および該当する場合には、粒子の配列にすべて基づいている。
【0038】
センサ装置6の1つの可能な実施形態については、
図2〜
図4と併せて以下に説明する。ただし、本発明は、センサ装置6のこの実施形態に限定するものではない。
【0039】
図2〜
図4によれば、センサ装置6は、励起要素7を備える。ベース信号が、励起要素7によって、平らな圧延製品2において励起され得る。たとえば、
図3および
図4における例示によれば、励起要素7は、励起電流IAが断続的に供給されるコイルとして設計され得、それによって、圧延製品2にベース信号としての渦電流IWが生成される。
図3は、励起要素7に励起電流IAが供給される時点におけるセンサ装置4を示している。
【0040】
センサ装置6は、第1のセンサ要素8aをさらに備える。第1のセンサ信号Iaが、第1のセンサ要素8aによって検出される。第1のセンサ信号Iaの検出は、ベース信号の励起後、すなわち、別の後の時点において行われる。この後の時点においては、概して、励起されているベース信号はない。しかしながら、先に励起されたベース信号は、まだ完全には消えていない。第1のセンサ信号Iaは、励起されたベース信号に基づいている。たとえば、
図3および
図4における例示によれば、第1のセンサ要素8aは、コイルとして設計され得、そのため、渦電流IWにより、電流が第1のセンサ要素8aにおいて誘起され、それにより、第1のセンサ信号Iaが形成される。
【0041】
図2〜
図4においては、第1のセンサ要素8aは、励起要素7と異なる要素として示されている。この実施形態は、通常の場合である。この場合には、第1のセンサ要素8aは、圧延製品2の搬送方向xに見たとき、励起要素7の下流に配置されている。この場合には、励起要素7から第1のセンサ要素8aまでの接続線は、好ましくは、搬送方向xに平行に延びている。しかしながら、個々の場合には、第1のセンサ要素8aはまた、励起要素7と同一であってもよい。この実施形態は、特に、ベース信号の励起と励起されたベース信号の検出との間の期間が十分に短いとき、可能である場合がある。
【0042】
図1によれば、センサ装置6は、圧延ミルのための制御装置9に接続されている。センサ装置6が制御装置9に接続されていることにより、特に、検出された測定変数Mが制御装置9に伝達可能である。伝達された測定変数Mは、第1のセンサ信号Iaを含むことが可能である。伝達された測定変量Mがさらなる成分をまったく含んでいない場合、伝達された測定変数Mは、第1のセンサ信号Iaと同一であってもよい。代替として、測定変数Mを決定するために、センサ装置6が、まずは、第1のセンサ信号Ia(および可能性としてさらなる信号)を評価し、この評価の結果を測定変数Mとすることが可能である。たとえば、センサ装置6は、励起信号IAに関して第1のセンサ信号Iaを設定し、それによって、測定変数Mを決定することができる。
【0043】
しばしば、センサ装置6は、第1のセンサ要素8aに加えて、いくつかの第2のセンサ要素8b〜8dを備える。第2のセンサ要素8b〜8dは、第1のセンサ要素8aと異なる(概して、励起要素7とも異なる)要素である。励起要素7から見たとき、第2のセンサ要素8b〜8dは、個々の場合に励起要素7から離れていることがあり得る場合でも、概して、励起要素7の下流に配置されている。第2のセンサ要素8b〜8dを用いて、第2のセンサ信号Ib〜Idを検出することが可能である。第2のセンサ信号Ib〜Idは、同様に、励起されたベース信号IWに基づいた、第1のセンサ信号Iaと同じ種類である。第2のセンサ信号Ib〜Idは、概して、第1のセンサ信号Iaと同時に検出される。
【0044】
第2のセンサ要素8b〜8dも追加的に存在する場合、センサ装置6は、たとえば、測定変数Mとしてセンサ信号Ia〜Idをすべて一緒に伝達することができ、すなわち、第1のセンサ信号Iaと第2のセンサ信号Ib〜Idとの両方を伝達することができる。この場合には、センサ信号Ia〜Idの対応する評価は、制御装置9によって行われる。代替として、センサ信号Ia〜Idの評価は、センサ装置6によってあらかじめ(完全にまたは一部)行われていてもよく、この評価の結果は、測定変数Mとして伝達され得る。
【0045】
第1のセンサ要素8aに対する第2のセンサ要素8b〜8dの配置に関しては、様々な配置および実施形態が可能である。
【0046】
たとえば、センサ装置6は、搬送方向xに見たとき、第1のセンサ要素8aから横方向にオフセットされて配置されている第2のセンサ要素8b、8cを有することができる。この場合には、センサ装置6は、第2のセンサ信号Ibとの関連で第1のセンサ信号Icを設定し、それによって、測定変数Mを決定することができる。この場合には、特に、測定変数Mは、センサ信号Ia、Ib、Icの差または割合から決定し得る。
図2に例示されているように、第1のセンサ要素8aの2つの側にそれぞれ、それぞれの第2のセンサ要素8b、8cがある場合、センサ装置6は、これら2つの第2のセンサ信号Ib、Icの平均値との関連で第1のセンサ信号Iaを設定することができる。
【0047】
代替としてまたは追加として、センサ装置6は、第1のセンサ要素8aから搬送方向xに見たとき、第1のセンサ要素8aの上流または下流に配置されている第2のセンサ要素8dを有することが可能である。この場合には、第1のセンサ要素8aの下流に配置されていることが通常の場合である。第2のセンサ要素8dが第1のセンサ要素8aの上流または下流に配置されている場合であっても、センサ装置6は、第2のセンサ信号8dに関連して第1のセンサ信号Iaを設定し、それによって、測定変数Mを決定することができる。この場合においても、特に、測定変数Mは、センサ信号Ia、Idの差または割合から決定し得る。
【0048】
図5によれば、制御装置9は、ステップS1において、制御装置9に伝達される測定変数Mを受信する。ステップS2においては、制御装置9は、第1の圧延スタンド1の制御値Aを決定する。
図5における例示によれば、制御装置9は、制御値Aを決定する際に、伝達された測定変数Mを少なくとも考慮に入れる。しばしば、制御装置9は、制御値Aを決定する際に、さらなる変数データ、たとえば、第1の圧延スタンド1における圧延前の平らな圧延製品2の温度T、および/または第1の圧延スタンド1における平らな圧延製品2の圧延中の圧延力F、および/または第1の圧延スタンド1における平らな圧延製品2の圧延中のパス減少もまたさらに考慮に入れる。温度Tおよび圧延力Fは、当業者にはよく知られているものである対応するセンサによって検出され得る。入り口側(
図1参照)における平らな圧延製品2の厚さd1に対する出口側における平らな圧延製品2の厚さd2のパス減少、すなわち比は、たとえばパススケジュールに基づいて、制御装置9に知らせることができる。さらには、制御装置9は、特に、測定変数Mを評価するという状況において、センサ装置6の領域内の平らな圧延製品2の速度を考慮に入れることもできる。必要に応じて、励起要素7および/またはセンサ要素8a〜8dの位置もまた、同様に考慮に入れることができる。ステップS3においては、制御装置9は、決定された制御値Aに従って第1の圧延スタンド1を調整する。
【0049】
制御装置9は、反復方式で、ステップS1〜S3を繰り返し行う。繰返しが行われる時定数は、概して、0.1sから1.0sの間、特に0.2sから0.5sの間の範囲内である。
【0050】
制御装置9は、制御装置9が
図5における手順を行うように設計されている。
図1における例示によれば、さらには、制御装置9は、概して、ソフトウェアプログラマブル制御装置として設計されている。この場合には、制御装置9は、制御プログラム10を用いてプログラミングされている。制御プログラム10は、制御装置9によって実行され得るプログラムコード11を含む。動作に際して、制御装置9は、プログラムコード11を実行する。制御装置9によるプログラムコード11の実行は、制御装置9が、対応する設計である効果をもたらす。
【0051】
ベース信号が渦電流IW、したがって、電気的変数である実施形態について、
図1〜
図5と併せて上記に説明してきた。これらの実施形態は、測定変数Mが電気的材料特性または電磁的材料特性に特有であることになっている場合、特に好都合である。ただし、これらの実施形態はまた、機械的材料特性についての推論も可能にし得る。
【0052】
別の実施形態について、
図6〜
図8と併せて以下に説明する。ここでは、
図6〜
図8は、全体的に
図2〜
図4に類似する実施形態を示している。違いは、
図6〜
図8においては、励起要素7が、音波信号、特に超音波信号を出力することである。これに対応する方式においては、センサ要素8a〜8dもまた、対応する音波信号を検出するように設計されている。他の点においては、
図2〜
図4における実施形態が類似した方式で使用され得る。
【0053】
図9は、
図1の圧延ミルの変更形態を示している。違いは、
図9による圧延ミルの実施形態においては、センサ装置6は、第1の圧延スタンド1のもはや下流には配置されておらず、第1の圧延スタンド1の上流に配置されていることである。他の点においては、
図1の実施形態、および前記実施形態、たとえばソフトウェアプログラマブル制御装置としての制御装置9の実施形態を基礎とする
図2〜
図8における実施形態もまた、引き続き使用することができる。
図9による実施形態の状況において、特に、制御装置9は、制御装置9が測定変数Mを考慮に入れて決定する制御値Aを、センサ装置6から第1の圧延スタンド1までの平らな圧延製品2の行路を考慮に入れて、第1の圧延スタンド1に出力することが可能である。この点に関する詳細については、
図10と併せて以下に説明するさらなる実施形態と併せて説明する。
【0054】
図10は、
図9をその開始点として見なす。そのため、
図9とまったく同様に、
図10による実施形態におけるセンサ装置6は、第1の圧延スタンド1の上流に配置されている。制御装置9は、たとえばプログラムコード11の実行に基づいて、モデル12を含む。さらなるセンサ装置13が、第1の圧延スタンド1の下流にさらに配置されている。さらなるセンサ装置13を用いて、少なくとも1つのさらなる測定変数M’を検出することができる。検出されたさらなる測定変数M’は、第1の圧延スタンド1において圧延された後の平らな圧延製品2の材料特性に特有である。そのため、さらなる測定変数M’は、測定変数Mと同じ材料特性に特有であり、したがって、測定変数Mへの手法の点で同様である。違いは、測定変数Mは、第1の圧延スタンド1における圧延前の平らな圧延製品2の材料特性に特有であり、一方、測定変数M’は、第1の圧延スタンド1における圧延後の平らな圧延製品2の材料特性に特有であることである。
【0055】
同様に、さらなるセンサ装置13は、圧延ミルの制御装置9に接続されている。さらなるセンサ装置13が制御装置9に接続されていることにより、特に、検出されたさらなる測定変数M’が制御装置9に伝達され得る。
【0056】
図10における圧延ミルの動作モードについては、
図11と併せて以下に説明する。センサ装置6から第1の圧延スタンド1までの平らな圧延製品2の行路を考慮に入れることに関係する限りにおいては、
図11もまた、
図9の圧延ミルの動作を示している。
【0057】
図11によれば、制御装置9は、ステップS11において、制御装置9に伝達される測定変数Mを受信する。ステップS11は、
図2におけるステップS1に1:1に対応する。ステップS12においては、制御装置9は、第1の圧延スタンド1の制御値Aを決定する。ステップS12は、
図2におけるステップ2に基本的に対応する。違いは、ステップS12においては、制御装置9は、モデル12を用いて制御値Aを決定することである。制御値Aの決定には、とりわけ、モデルパラメータkが組み込まれている。
【0058】
ステップS13においては、この制御値A、すなわち、ステップS12において決定された制御値Aを考慮に入れて、制御装置9は、第1の圧延スタンド1において圧延した後の平らな圧延製品2の材料特性の予測値Eを決定する。この決定もまた、モデル12を用いて行われる。
【0059】
ステップS14においては、制御装置9は、第1の待機時間t1の間、待機する。第1の待機時間t1は、平らな圧延製品2の特定の区分が、センサ装置6から開始して第1の圧延スタンド1に到達するのに必要な時間に対応する。したがって、基本的には、制御装置9は、センサ装置6から第1の圧延スタンド1までの平らな圧延製品2の行路を具現化する。最も単純な場合には、第1の待機時間t1(
図10参照)は、第1の圧延スタンド1の上流の平らな圧延製品2の搬送速度v1で除した、センサ装置6から第1の圧延スタンド1までの距離a1に対応する。さらなる圧延スタンドがセンサ装置6と第1の圧延スタンド1との間に配置されている場合、複数の時間を加えることによって、第1の待機時間t1を決定する必要がある場合があり、各時間は、特定の区分に特有であり、それぞれの区分における平らな圧延製品2の搬送速度、およびそれぞれの区分の長さから得られる。
【0060】
ステップS15においては、したがって、第1の待機時間t1の満了後、制御装置9は、決定された制御値Aに従って第1の圧延スタンド1を制御する。ステップS15は、
図2におけるステップS3に実質的に対応する。したがって、制御装置9は、結果として、センサ装置からの平らな圧延製品2の行路を考慮に入れて、制御値Aを第1の圧延スタンド1に出力する。
【0061】
次いで、ステップS16においては、制御装置9は、第2の待機時間t2の間、待機する。第2の待機時間t2は、平らな圧延製品2の特定の区分が、第1の圧延スタンド1から開始してさらなるセンサ装置13に到達するのに必要な時間に対応する。したがって、基本的には、制御装置9は、第1の圧延スタンド1からさらなるセンサ装置13までの平らな圧延製品2の行路を具現化する。最も単純な場合t1においては(再度、
図10を参照)、第2の待機時間t2は、圧延スタンド1の下流の平らな圧延製品2の搬送速度v2で除した、第1の圧延スタンド1からさらなるセンサ装置13までの距離a2に対応する。さらなる圧延スタンドが第1の圧延スタンド1とさらなるセンサ装置13との間に配置されている場合、複数の時間を加えることによって、第2の待機時間t2を決定する必要がある場合があり、各時間は、特定の区分に特有であり、それぞれの区分における平らな圧延製品2の搬送速度、およびそれぞれ区分の長さから得られる。
【0062】
ステップS17においては、したがって、第2の待機時間t2の満了後、制御装置9は、この時点にさらなるセンサ装置13によって検出されるさらなる測定変数M’をさらなるセンサ装置13から受信する。ステップS18においては、制御装置9は、材料特性Eのさらなる測定変数M’と予測値Eとの比較からモデルパラメータkを補正し、それによって、モデル12を適合化する。結果として、モデル12の適合の一部として、制御装置9は、制御装置9が第1の圧延スタンド1からさらなるセンサ装置13までの平らな圧延製品2の行路を考慮に入れて決定した時点について、さらなる測定変数M’を使用する。
【0063】
制御装置9は、ステップS1〜S3と同様の方式で、反復方式でステップS11〜S18を繰り返し行う。ステップS1〜S3に関する上記の内容は、類似した形で適用され得る。
【0064】
実際には、ステップS11〜S18、およびその順序は、わずかに異なったやり方でさらに具現化される。たとえば、ステップS11〜S18は、いくつかの過程において行うことができる。また、ステップS11〜S18の順序は、並行して行われる2つの部分に分割することもできる。この場合には、第1の部分は、ステップS11〜S15を含み、第2の部分は、ステップS16〜S18を含む。
【0065】
また、同様にステップS14およびS16を省略することも可能である。この場合には、残りのステップS11〜S13、S15、S17、およびS18の直接的、非同期的な実施が行われ得る。この場合には、ステップS12において決定されたそれぞれの制御値A、およびステップS13において決定されたそれぞれの予測値Eは、たとえば、バッファメモリ(図示せず)に一時的にバッファリングされ得る。ステップS17において検出されたそれぞれのさらなる測定変数M’もまた、オプションで、バッファメモリに一時的にバッファリングされ得る。この場合には、実行の時点が、記憶されると同時にそれぞれの調整値Aに割り当てられる。類似した形で、利用の時点が、この場合にはそれぞれの予測値Eに割り当てられる。さらには、検出の時点も、オプションで、それぞれのさらなる測定変数M’に割り当てられ得る。この場合には、実行の時点に達したばかりの記憶された制御値Aは、ステップS15のそれぞれの実行に向けて出力される。類似した形で、利用の時点が現在の時間と一致する記憶された予測値Eは、ステップS18のそれぞれの実行に向けて使用される。この状況においては、必要な程度まで、記憶された制御値Aおよび記憶された予測値Eの補間を行うことが可能である。また、さらなる測定変数M’およびその検出の時点が記憶される場合、これもまた、さらなる測定変数M’に同様に適用される。
【0066】
ただし、特定の実装形態に関係なく、ステップS18におけるモデル12の適合化が、ステップS12およびS13の後の実行すべてに作用することが重要である。
【0067】
制御値Aの性質は、制御値Aによる第1の圧延スタンド1の制御により、平らな圧延製品2の材料特性に影響が与えられるように決定される。特に、
図12および
図13における例示によれば、制御装置9は、制御値Aとして、上側周辺速度vOの、下側周辺速度vUに対する比を決定する。これにより、結果的に、非対称の圧延がもたらされ、ここでは、2つのワークロール3、4が互いに異なる周辺速度vO、vUで回転する。
図12および
図13の例示によれば、制御値Aは、上側周辺速度vO(またはその目標値vO*)を決定する際に、たとえば下側周辺速度vU(またはその目標値vU*)に乗ずる必要がある係数として含めることができる。
【0068】
概して、上側周辺速度vOの、下側周辺速度vUに対する比は、0.5から2.0の間、特に0.9から1.1の間である。概して、2つのワークロール3、4のうちのどちらが、他方のワークロール4、3よりも高速で回転するかについては関係ない。
【0069】
図12は、制御工学の観点で具現化するのに特に単純な実施形態をさらに示している。具体的に言えば、
図12の実施形態の状況においては、上側ワークロール3は、上側駆動部14によって駆動され、一方、下側ワークロール4は、下側駆動部15によって駆動される。
図12による実施形態の状況においては、下側駆動部15は、上側駆動部14と異なる駆動部である。この場合には、必要なのは、上側駆動部14および下側駆動部15に対する対応する目標値vO*、vU*を指定することだけである。
【0070】
対照的に、
図13における実施形態における上側ワークロール3および下側ワークロール4は、共通の駆動部16によって駆動される。この場合には、トランスミッション17が、一方の側の共通駆動部16と他方の側の上側ワークロール3および下側ワークロール4との間に配置されている。トランスミッションは、一方には入力シャフト18、他方には上側出力シャフト19および下側出力シャフト20を有する。入力シャフト18は、共通の駆動部16に連動回転するように接続されている。上側出力シャフト19は、上側ワークロール3に連動回転するように接続され、一方、下側出力シャフト20は、下側ワークロール4に連動回転するように接続されている。入力シャフト18は、上側出力シャフト19と下側出力シャフト20との両方に対して作用する。
【0071】
トランスミッション17は、上側出力シャフト19の速度の、下側出力シャフト20の速度に対する比が、トランスミッション17によって継続的に調整され得るように設計されている。たとえば、トランスミッション17は、一方にはスプリッタブロック21を有することができ、ここで、駆動トレインは、上側ワークロール3と下側ワークロール4との間で分けられる。次いで、スプリッタブロック21と上側ワークロール3との間に、中間トランスミッション22を配置することができ、この中間トランスミッション22を用いて、中間トランスミッション22の入力速度に対する出力速度の連続的変動が可能になる。この種類の中間トランスミッション22は、当業者にはよく知られているものである。例は、遊星トランスミッション、および差動トランスミッションである。スプリッタブロック21と上側ワークロール3との間に配置することの代替としてまたはそれに加えて、中間トランスミッション(図示せず)は、スプリッタブロック21と下側ワークロール4との間に配置することも可能である。
【0072】
図14は、オプションで、ワークロール3、4の周辺速度vO、vUに作用する制御値Aに加えて決定され得る別のタイプの制御値Aを示している。
図14によれば、制御値Aは、上側ワークロール3の温度変更とすることができ、それは、対応する変更装置23を介して上側ワークロール3に作用する。たとえば、水噴霧によって上側ワークロール3の冷却を行うことができる。代替としてまたは追加として、制御値Aは、下側ワークロール4の温度変更とすることができる。たとえば、上側ワークロール3と同様に、水噴霧による下側ワークロール4の冷却は、対応する変更装置23’を介して行うことができる。代替としてまたは追加として、制御値Aは、第1の圧延スタンド1における圧延前の平らな圧延製品2の温度変更とすることができる。平らな圧延製品2の加熱、特に、誘導加熱は、たとえば、対応する変更装置23”を介して行うことができる。
【0073】
本発明の基本原理および様々な可能な実施形態について、
図1〜
図14と併せて上記に説明してきた。
図1〜
図14の状況においては、たった1つの圧延スタンド1、すなわち、第1の圧延スタンド1を有するリバース圧延ミルについて検討してきた。しかしながら、リバース圧延ミルとして実装されているか否かに関わらず、圧延ミルが、第2の圧延スタンド24と以下で称されるさらなる圧延スタンドを追加的に有する場合、全体的に類似している実施形態もまた可能である。
【0074】
したがって、たとえば、
図15〜
図20における例示によれば、圧延ミルが複数の圧延スタンド1、24を有することが可能であり、圧延スタンド1、24を、圧延製品2が次々と連続的に流れる。そのため、この場合には、圧延ミルは、マルチスタンド圧延トレインとして設計されている。ただし、直列に配置された全部で5つの圧延スタンド1、24のそれぞれ示した数は、単に例示にすぎない。
図15〜
図20においても、第2の圧延スタンド24のワークロールのみが示されている。ただし、概して、第1の圧延スタンド1と同様に、第2の圧延スタンド24は、さらなるロールを有する。さらには、単に、圧延スタンド1、24、圧延製品2、およびセンサ装置6、ならびにオプションでさらなるセンサ装置13のみが、
図15〜
図20に示されている。ただし、圧延ミルのさらなる構成要素、特に、制御装置9が存在する。その上、制御装置9は、概して、制御値Aによる第1の圧延スタンド1の制御のみが
図15〜
図20に例示されている場合であっても、圧延ミルの圧延スタンド1、24すべてに作用する。
【0075】
図15〜
図20における実施形態は、ほとんど同じである。ただし、それらは、センサ装置6の配置、センサ装置6に対する、および第1の圧延スタンド1に対する相対的な第2の圧延スタンド24の配置、ならびにさらなるセンサ装置13が存在しているか、または存在していないかという点で異なっている。
【0076】
具体的に言えば、
図15および
図16における実施形態におけるセンサ装置6は、圧延トレインの最後の圧延スタンド1、24の下流に配置されている。
図15における実施形態においては、制御値A、すなわち、測定変数Mを考慮に入れて決定された制御値Aは、圧延トレインの最後の圧延スタンド1に作用する。この場合には、第2の圧延スタンド24は、センサ装置6と第1の圧延スタンド1との間に配置されていない。対照的に、
図16における実施形態においては、制御値A、すなわち、測定変数Mを考慮に入れて決定された制御値Aは、圧延トレインの別の圧延スタンド1、たとえば、圧延トレインの最後の圧延スタンド24のすぐ上流に配置された、圧延トレインの最後から2番目の圧延スタンドに作用する。この場合には、第2の圧延スタンド24のうちの少なくとも1つ、具体的には、圧延トレインの少なくとも最後の圧延スタンド24は、センサ装置6と第1の圧延スタンド1との間に配置されている。
【0077】
図17〜
図20における実施形態においては、センサ装置6は、圧延トレインの最前の圧延スタンド1、24の上流に配置されている。
図17および
図19における実施形態においては、制御値A、すなわち、測定変数Mを考慮に入れて決定された制御値Aは、圧延トレインの最前の圧延スタンド1に作用する。そのため、この場合には、第2の圧延スタンド24は、センサ装置6と第1の圧延スタンド1との間には配置されていない。対照的に、
図18および
図20における実施形態においては、制御値A、すなわち、測定変数Mを考慮に入れて決定された制御値Aは、圧延トレインの別の圧延スタンド1、たとえば、圧延トレインの最前の圧延スタンド24のすぐ下流に配置された圧延スタンド1に作用する。この場合には、第2の圧延スタンド24のうちの少なくとも1つ、具体的には、圧延トレインの少なくとも最前の圧延スタンド24は、センサ装置6と第1の圧延スタンド1との間に配置されている。
【0078】
図19および
図20における実施形態においては、さらなるセンサ装置13は、圧延トレインの最後の圧延スタンド1、24の下流にさらに配置され、したがって、モデル12の対応する適合化を行うことができる。対照的に、
図17および
図18における実施形態においては、さらなるセンサ装置13は存在しない。
【0079】
図15〜
図20における実施形態は、マルチスタンド圧延トレインの単なる可能な実施形態にすぎない。たとえば、複数の第2の圧延スタンド24を第1の圧延スタンド1とセンサ装置6との間に配置することができる。極端な場合には、センサ装置6は、圧延トレインの最後の圧延スタンド24の下流に配置され得、圧延トレインの最前の圧延スタンド1に作用することも、または逆に、圧延トレインの最前の圧延スタンド24の上流に配置され得、圧延トレインの最後の圧延スタンド1に作用することもできる。また、複数のセンサ装置6および/または複数のさらなるセンサ装置13、たとえばそれぞれのセンサ装置6および/またはさらなるセンサ装置13を、圧延トレインの個々の圧延スタンド1、24それぞれの上流および/または下流に設けることも可能である。また、すべての圧延スタンド1、24の場合とは限らないが、いくつかの圧延スタンド1、24間にそのような構成を具現化することも可能である。また、制御装置9が、単一のセンサ装置の測定変数Mを使用して、別の第1の圧延スタンド1にそれぞれが作用する複数の制御値Aを決定することも可能である。特定の場合において採用される実施形態は、当業者の自由裁量による。
【0080】
どの実施形態がいずれの特定の場合において採用されるかに関係なく、
図15〜
図20におけるそれぞれの圧延ミルの動作モードは、本発明に適用される限りでは、単一の圧延スタンド1、すなわち、第1の圧延スタンド1を備えるリバース圧延ミルについて
図1〜
図14と併せて上記に説明したのと同じである。
【0081】
本発明は、多くの利点を有する。特に、本発明による手順を圧延ミルの連続的な稼働に簡単に統合することが可能である。電気鋼板の場合、また他の鋼グレードの場合にも、冷間圧延後または2つの冷間圧延ステップ間の焼鈍しは、もはや必要でなく、またはなおも限られた程度までしか必要でないことが多い。AHSSの場合、ならびにマルテンサイトグレードおよびベイナイトグレードの場合には、熱間圧延トレインの冷却区域における冷却に起因する材料特性のバンディングは、低減すること、またはなくすことができる。制御値Aによる平らな圧延製品2への作用が、平らな圧延製品2の横方向における局所分解により行われ得る限りにおいては(これは、特に熱的変更を伴う場合である)、また特定の状況下では、複数のセンサ装置6を並べて配置することも可能であり得る。
【0082】
本発明は、好ましい例示的な実施形態を用いて詳細により具体的に示し説明してきたが、本発明は、開示される例によって限定されるものではなく、他の変形形態はそれらから当業者によって本発明の保護範囲を超えることなく導き出すことができる。