特開2021-116332(P2021-116332A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-116332(P2021-116332A)
(43)【公開日】2021年8月10日
(54)【発明の名称】眠気抑制剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C11B 9/00 20060101AFI20210712BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20210712BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20210712BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20210712BHJP
   A61K 31/11 20060101ALN20210712BHJP
   A61P 25/26 20060101ALN20210712BHJP
   A61K 47/44 20170101ALN20210712BHJP
   A23L 33/105 20160101ALN20210712BHJP
   A23L 33/10 20160101ALN20210712BHJP
   A61L 9/01 20060101ALN20210712BHJP
   A61L 9/013 20060101ALN20210712BHJP
【FI】
   C11B9/00 J
   A61K8/33
   A61K8/9789
   A61Q13/00 101
   A61K31/11
   A61P25/26
   A61K47/44
   A23L33/105
   A23L33/10
   A61L9/01 J
   A61L9/01 Q
   A61L9/013
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-9226(P2020-9226)
(22)【出願日】2020年1月23日
(71)【出願人】
【識別番号】308040638
【氏名又は名称】株式会社バスクリン
(71)【出願人】
【識別番号】505398941
【氏名又は名称】東日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】荘司 博行
(72)【発明者】
【氏名】倉林 敦志
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C180
4C206
4H059
【Fターム(参考)】
4B018MD07
4B018MD48
4B018ME14
4C076AA11
4C076BB25
4C076CC01
4C076EE53W
4C076FF52
4C083AA121
4C083AA122
4C083AC211
4C083AC212
4C083BB13
4C083BB41
4C083DD23
4C083EE06
4C083KK02
4C180AA13
4C180AA20
4C180CA04
4C180EB03X
4C180EC01
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB03
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206ZA02
4H059BA19
4H059BB14
4H059BC10
4H059BC23
4H059DA09
4H059EA36
(57)【要約】
【課題】嗅いでも負担にならない眠気抑制剤、及び、その製造方法を提供する。
【解決手段】シンナムアルデヒドとカシアオイルを含有する香料組成物である眠気抑制剤である。シンナムアルデヒドとカシアオイルとを混合する香料組成物である眠気抑制剤の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンナムアルデヒドとカシアオイルを含有する香料組成物であることを特徴とする眠気抑制剤。
【請求項2】
シンナムアルデヒド(カシアオイルに含まれるシンナムアルデヒドを除く)とカシアオイルの配合割合が、質量比で60:40〜90:10であることを特徴とする請求項1記載の眠気抑制剤。
【請求項3】
芳香剤であることを特徴とする請求項1または2記載の眠気抑制剤。
【請求項4】
シンナムアルデヒドとカシアオイルとを混合することを特徴とする香料組成物である眠気抑制剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眠気抑制剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガム、ミントタブレット、コーヒー、ドリンク剤など、カフェインや刺激物の入った飲食物を使って、眠気を抑制させる方法が知られている(例えば、特許文献1)。しかし、運転を仕事としているドライバーにとって、眠気を抑制させる刺激物の摂取は健康上、少なからず体に負担となっている。そのため、毎日使用しても体に負担の少ない眠気抑制剤の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2863586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような事情から、飲食物ではなく、香料組成物を用いて眠気を抑制する手段が考えられるが、例えばアリルイソチオシアネートなどの刺激の強い匂い成分は、香料としての使用が禁止されているため、利用できなかった。また、刺激の強い匂い成分は、嗜好性としては決して良いとは言えず、運転中に常に嗅いでいるには抵抗があるものであった。
【0005】
そこで本発明の目的は、嗅いでも負担にならない眠気抑制剤、及び、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは上記課題を解決すべくさらに鋭意検討した結果、シンナムアルデヒドとカシアオイルを配合した香料組成物である眠気抑制剤とすることによって、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の眠気抑制剤は、シンナムアルデヒドとカシアオイルを含有する香料組成物であることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の眠気抑制剤は、シンナムアルデヒド(カシアオイルに含まれるシンナムアルデヒドを除く)とカシアオイルの配合割合が、質量比で60:40〜90:10であることが好ましい。
【0009】
本発明の眠気抑制剤は、芳香剤であることが好ましい。
【0010】
本発明の眠気抑制剤の製造方法は、シンナムアルデヒドとカシアオイルとを混合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、嗅いでも負担にならない眠気抑制剤、及び、その製造方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の眠気抑制剤は、シンナムアルデヒドとカシアオイルを含有する香料組成物であることを特徴とするものである。詳しいメカニズムは明らかではないが、シンナムアルデヒドによって眠気抑制効果が得られ、また、カシアオイルによって、シンナムアルデヒドによる刺激の負担が低減されつつ、眠気抑制効果は保持されるものと考えられる。
【0013】
以下、本発明の眠気抑制剤が含有する成分について詳述する。
【0014】
[シンナムアルデヒド]
シンナムアルデヒドは特に限定されず、天然物由来であっても、有機合成で合成したものであってもよい。また、市販品を用いてもよい。
【0015】
本発明の眠気抑制剤において、シンナムアルデヒドの配合量は特に限定されないが、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは20〜95質量%、さらに好ましくは40〜85質量%である。また、カシアオイルに含まれるシンナムアルデヒドとの合計の含有量としては、好ましくは、6〜99.5質量%、より好ましくは25〜99質量%、さらに好ましくは45〜90質量%である。シンナムアルデヒドの含有量が上記範囲より少ないと、十分な睡眠抑制効果が得られず、上記範囲より多いと、香りの嗜好性に劣る。
【0016】
[カシアオイル]
カシアオイルは特に限定されず、カシアの樹皮から得られたオイルであればよい。カシアオイルの製造方法は特に限定されず、公知慣用の方法で製造すればよく、例えば、水蒸気蒸留でオイルを得ればよい。また、市販品を用いてもよい。
【0017】
本発明の眠気抑制剤において、カシアオイルの配合量は特に限定されないが、好ましくは5〜95質量%、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは15〜35質量%である。カシアオイルの配合量が上記範囲より少ないと、香りの嗜好性に劣り、上記範囲より多いと、十分な睡眠抑制効果が得られない。
【0018】
また、本発明の眠気抑制剤において、シンナムアルデヒド(カシアオイルに含まれるシンナムアルデヒドを除く)とカシアオイルの配合割合は、質量比で、好ましくは5:95〜95:5、より好ましくは60:40〜90:10、さらに好ましくは65:35〜85:15である。この範囲であれば、十分な睡眠抑制効果が得られ、かつ、香りの嗜好性も良い。
【0019】
また、本発明の眠気抑制剤において、クマリンの含有量は、好ましくは0.05〜4.3質量%、より好ましくは0.1〜1.8質量%、さらに好ましくは0.2〜1.6質量%であり、さらに好ましくは0.2〜1.2質量%であり、特に好ましくは0.2〜0.8質量%である。クマリンはカシアオイルに含まれる成分であるが、通常、カシアオイルにおけるクマリンの含有量は1.5〜4質量%である。このことから、眠気抑制剤中のクマリン含有量を測定することで、眠気抑制剤におけるカシアオイルの配合量を推定することができる。
【0020】
[任意成分]
本発明の眠気抑制剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、香料組成物に配合される公知慣用の成分を含有してもよい。そのような任意成分としては、溶剤、水、界面活性剤、硫酸ナトリウム等の無機塩、固化剤、増粘剤、ゲル化剤、pH調整剤、キレート剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、染料、顔料、紫外線吸収剤、分散剤等が挙げられる。
【0021】
溶剤としては、例えば、エタノール等の炭素数2〜4の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の炭素数2〜12の2〜6価の多価アルコール、前記アルコールのアルキル(炭素数1〜6)のエーテル誘導体、流動パラフィン、流動イソパラフィン等の飽和炭化水素が挙げられる。多価アルコールのアルキルエーテル系溶剤の市販品の例としては、例えばクラレ社製のソルフィット、ソルフィット−AC等が挙げられる。また、流動イソパラフィン系溶剤の市販品の例としては、例えば出光興産社製のIPソルベント1016、IPソルベント1620、IPソルベント2028、IPソルベント2835等が挙げられる。
【0022】
任意成分を配合する場合の配合量は、特に限定されないが、0〜90質量%が好ましい。任意成分がこの範囲であれば、十分な睡眠抑制効果が得られる。
【0023】
本発明の眠気抑制剤の対象は特に限定されないが、自動車運転時のドライバーに好適に用いることができる。
【0024】
本発明の眠気抑制剤の性状は特に限定されず、液状でも固形状でもゲル状でもよく、上記の任意成分を用いて、所望の性状に調整すればよい。
【0025】
シンナムアルデヒドは肌に刺激性があるため、本発明の眠気抑制剤は、製剤としては直接人体に触れることがない芳香剤であることが好ましい。本発明の眠気抑制剤をそのまま芳香剤として用いてもよく、また、基材に担持して芳香剤としてもよい。担持方法は特に限定されないが、具体例としては、例えば、紙製素材、金属製やプラスチック製の粒子状や板状などの任意の形状の基材の表面に、本発明の眠気抑制剤を塗布した後、乾燥させて担持させる方法が挙げられる。また、例えば、開孔部を有する基材、例えば、ビーズ等の細孔が開いた粒子、編み物、多孔質材料などの開孔部に、本発明の眠気抑制剤を充填し、必要に応じて乾燥させて担持させる方法が挙げられる。
【0026】
芳香剤が収容される容器は、開放部を有し、該開放部から本発明の眠気抑制剤の芳香成分が揮散される容器であればよい。該開放部は、非使用時には蓋等で塞がれていてもよい。また、芳香剤を濾紙などに浸み込ませて使用してもよい。容器の材質は特に限定されず、例えば、プラスチック製、金属製、紙製、布製などが挙げられる。容器の形状は開放部があれば特に限定されず、プラスチックや金属の成型物である容器や、紙製や布製の袋状の容器などが挙げられる。
【0027】
本発明の眠気抑制剤の製造方法は、シンナムアルデヒドとカシアオイルとを混合することを特徴とするものである。シンナムアルデヒドとカシアオイルとは、上記の割合となるように混合することが好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら制限されるものではない。なお、特に断りがない限り、「部」は質量部を、「%」は質量%を意味する。
【0029】
[香料組成物の調製]
カシアオイル18.75%、シンナムアルデヒド43.75%、ジプロピレングリコール37.5%を、電子天秤を用いて正確に量り取り均一になるよう混合し、香料組成物を得た。カシアオイルは、ゼネラルアロマティック社製を使用したが特に限定するものではない。
【0030】
[試験用試料の作製]
上記の手順で得た香料組成物を、球形のケイ酸カルシウムに、香料組成物:球形のケイ酸カルシウム=1.6:1の割合で混合し均一に含浸させて、ケイ酸カルシウムに香料組成物を担持させ、芳香剤とした。この芳香剤0.8gをアルミ分包に詰め、試験用試料として用いた。
【0031】
[眠気抑制効果の評価]
ドライバーの眠気検知装置FEELythm(富士通社製)を用いて、自動車運転中の1時間あたりの眠気検知発生回数、接続時間のうち眠気検知が発生した時間割合、1時間あたりの眠気予兆発生回数、及び、接続時間のうち眠気予兆が発生した時間割合を計測し、上記試験用試料の有無で比較した。尚、ドライバーとして、夜勤のあるパトロール隊員を対象とし、5名の平均で評価した。また、上記試験用試料は開封し、クリップにてドライバーの衣服に装着した。比較対象として、匂いだけ上記香料組成物に似せた組成物(フェニルエチルアルコール25%、フェニルアセトアルデヒド25%、エチルシンナメート40%、ジプロピレングリコール10%の混合物)を用いて上記と同様に作製した芳香剤0.8gをアルミ分包に詰めた試験用試料(プラセボ)についても同様に評価した。評価結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1に示す結果から、上記で作製したシンナムアルデヒドとカシアオイルを配合した芳香剤は、芳香剤を用いなかった場合およびプラセボを用いた場合と比べて、眠気検知発生回数、眠気検知が発生した時間割合、眠気予兆発生回数、および、眠気予兆が発生した時間割合のいずれにおいても減少したことから、優れた眠気抑制効果を有することが分かる。
【0034】
[嗜好性等の評価]
上記で調製したシンナムアルデヒドとカシアオイルを配合した香料組成物から作製した芳香剤0.8gをアルミ分包に詰めた試験用試料を用いて成人6名(男性4名、女性2名)で好き嫌いの嗜好性、香りの強さ、総合順位について、上記で作製したプラセボの芳香剤0.8gをアルミ分包に詰めた試験用試料、シンナムアルデヒドのみを配合をした香料組成物(シンナムアルデヒド62.5%、ジプロピレングリコール37.5%)を用いて上記と同様に作製した芳香剤0.8gをアルミ分包に詰めた試験用試料、及び、カシアオイルのみを配合した香料組成物(カシアオイル62.5%、ジプロピレングリコール37.5%)を用いて上記と同様に作製した芳香剤0.8gをアルミ分包に詰めた試験用試料と比較調査をした。評価結果を表2に示す。調査結果より、シンナムアルデヒドとカシアオイルを配合した香料組成物が、香料として最も適していると判断できる。
【0035】
【表2】
評価者6名 平均値
カシア=カシアオイルのみ 本香料=シンナムアルデヒドとカシアオイル アルデ=シンナムアルデヒドのみ プラセ=プラセボ
嗜好性評価 1:嫌い、2:やや嫌い、3:どちらとも言えない、4:やや好き、5:好き
香りの強さ 1:弱い、2:やや弱い、3:ちょうどよい、4:やや強い、5:強い
総合順位 1:1番目に良い、2:2番目に良い、3:3番目に良い、4:4番目に良い
【0036】
以上の結果から、本発明の眠気抑制剤、即ち、シンナムアルデヒドとカシアオイルを含有する香料組成物は、嗅いでも負担にならず、眠気を抑制できることが分かる。