(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-116618(P2021-116618A)
(43)【公開日】2021年8月10日
(54)【発明の名称】鉄筋コンクリートのせん断補強方法及び補強材
(51)【国際特許分類】
E04G 23/02 20060101AFI20210712BHJP
【FI】
E04G23/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2020-11276(P2020-11276)
(22)【出願日】2020年1月27日
(71)【出願人】
【識別番号】515179358
【氏名又は名称】衛藤 武志
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 武志
【テーマコード(参考)】
2E176
【Fターム(参考)】
2E176AA02
2E176BB29
(57)【要約】
【課題】補強効果と密閉性に優れた鉄筋コンクリート部材のせん断補強方法を提案する。
【解決手段】本発明に係る鉄筋コンクリートのせん断補強方法及び補強材は、鉄筋コンクリート体内に補強材100を挿入し、該挿入した補強材100の内側に流動性固化材を注入して当該補強材100をコンクリート6に形成した挿入孔7の内で膨張する工程を含み、補強材100として、繊維織物1を筒形としその両端には鏡布を配設し、当該形の外表面に密閉層を形成した補強材100を使用する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート部材の補強方法であって、鉄筋コンクリート部材に形成した挿入孔の中に筒形の補強材を挿入し、該挿入した補強材の内側に流動性固化材を注入して当該補強材を前記鉄筋コンクリート部材の挿入孔の内壁に押し付ける工程を含み、前記補強材の繊維織物の外表面に密閉層を形成した補強材を使用する、補強方法。
【請求項2】
前記補強材における前記繊維織物の筒形の上下端部には鏡布が配置されている、請求項1に記載の補強方法。
【請求項3】
鉄筋コンクリートに使用する補強材であって、筒形に編成され、密閉層が外表面に形成された補強材。
【請求項4】
前記補強材の前記繊維織物の上下端に配置されている前記鏡布のどちらか一方には注入口が配設されている、請求項3に記載の補強材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリートのせん断補強(改修)に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、鉄筋コンクリート部材の補強方法ではコンクリートに挿入孔を形成 した後に鉄筋を挿入して、せん断補強する方法が広く知られている。これら の補強方法は鉄筋の防錆を目的とするコンクリートかぶり厚さが必要となるが、鉄筋を挿入した後の挿入孔の封止にも、なんらかの防錆処置による方法がとられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−105808
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術の上記補強方法には、錆から鉄筋を防錆する目的としたコンクリートかぶり厚さを必要とするので鉄筋の長さとなる補強材の定着長さに制限がある。また、地下や水中に存置するコンクリート部材の挿入孔の封止では、水圧にたいする止水も重要なので、このようなコンクリート部材であっても支障なく補強できる技術も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鉄筋コンクリートを補強するために本発明に係る補強方法は、鉄筋コンクリート部材に形成した挿入孔の中に筒形の補強材を挿入し、該挿入した補強材の内側に流動性固化材を注入して当該補強材を前記鉄筋コンクリート部材に形成した挿入孔の内で膨張する工程を含み、前記補強材の繊維織物の外表面に密閉層を形成する密閉工程を同時におこなうことを特徴とした、補強方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る補強方法と補強材は、防錆の必要がない高ヤング率の化学繊維で作った織物とすれば、コンクリートかぶり厚さが不要となり、コンクリート部材への補強は、かぶり厚さの範囲まで形成できるから補強材の定着長さが延長され補強範囲はコンクリートの全断面に及ぶので補強効果が高い。また、補強材とコンクリート部材の層間には密閉層が設けてあるので止水に有効である。また、筒形の上下端部に鏡布が配置されるので膨張時の端部の湾曲が小さくなり筒形の補強材は挿入孔の内壁面の全長に渡り密閉されるから補強と止水に有効となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(A)補強材100をなす繊維織物1の断面図、(B)補強 材100の折り畳み方を説明する断面図。
【
図2】鉄筋コンクリートに形成した挿入孔7内に補強材100、
図1(B)を挿入する様子を示した図。
【
図3】鉄筋コンクリートに形成した挿入孔7内に補強材100に流動性硬化材4を充填して膨張した補強材100を示す断面図(A)とその正面図(B)
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1(A)に、本発明に係る補強材100を、断面図で例示してある。補強材100をなす繊維織物1は、高ヤング率の化学繊維からなる織物である。繊維織物1は筒形に形成され外表面に密閉層を形成している。
【0009】
繊維織物1は軸方向にして筒形とし、補強材100として使用する。 繊維織物1を筒形にしたときの突き合わせ端部は縫製または接着あるいはその両方で係合されている。あるいは、筒形に丸めるだけで端部は連結せずフリーにしておくことも可能である。
【0010】
図1(A)から分かるように、前記補強材100をなす繊維織物1の 上下端部の筒内面の全周に、鏡布2が縫製または接着あるいはその両方で係合されており、鏡布2は繊維織物1に使用される織物と同等かそれ以下の伸度の繊維織物又はプラスチックシートあるいは不織布で形成されている。
【0011】
鏡布2には流動性硬化材4を注入するための注入口3が配設されている。注入口3は繊維織物又はプラスチックシートあるいは不織布で円筒形に形成されたものが鏡布2に縫製または接着あるいはその両方で係合されている。
【0012】
図1(B)は補強材100を折り畳んだ形態を、断面図で例示してある。繊維織物1の筒状の内側に鏡布2を仕込んだ後に繊維織物1を折り畳むことで省容量化される。
【0013】
図2は
図1(B)の補強材100を折り畳んだ形態で、鉄筋コンクリート部材に形成した挿入孔7の中に補強材100を挿入した図。繊維織 物1の筒形に形成され外表面に密閉層が形成され、密閉層は、硬化性樹脂を外表面に塗布することで形成する。または、あらかじめ、コンクリート部材に形成してある挿入孔7の内面に密閉層を形成してもよい、あるいはその両方で形成してもよい。
【0014】
図3(A)と(B)に、
図2の補強材100を折り畳んだ形態で使用 する鉄筋コンクリートの補強工程に関し、簡単に図示して説明する。
【0015】
鉄筋コンクリート部材に形成する挿入孔7は挿入口から穿孔してコンクリート断面を貫通する形態で形成する(
図2)。あるいは貫通せずに コンクリートを少し残した形態で形成してもよい。
【0016】
挿入孔7に挿入された前記補強材100は、折り畳まれた状態で、挿入孔7の中に配置する。そして、補強材100にある、注入口3を使用して流動性固化材4を注入し、補強材100を膨張させて挿入孔7の内壁へ押し付ける
図3(A)、(B)。流動性 固化材4は例えばモルタルで、養生後に固化する。この流動性固化材注入時、鏡布2が流動性固化材4の漏出を防止する。
【0017】
鏡布2は繊維織物1と同等かそれ以下の伸度をもち形状維持の精度が高いので挿入孔7の内壁の全周と全長に渡って繊維織物1は均一に定着がなされる。
【0018】
補強材100の外表面に成形した密閉層である硬化性樹脂は、硬化すると補強材100と挿入孔7の内面とが定着するので補強材100は緊張材として作用する。さらに、補強材100の外表面と挿入孔7の内面に生じている凹凸やクラックにたいして硬化性樹脂は密実に充填されるので、水の侵入や浸透を止めるから漏水及び鉄筋の防錆がなされる。
【0019】
鉄筋コンクリート部材に形成する挿入孔7は入口から穿孔してコンク リート断面を貫通する形態で形成するので、補強材100の定着はコンクリートの全断面の範囲に及ぶから定着を長くとることができる。
【符号の説明】
【0020】
100補強材
1 繊維織物
2 鏡布
3 注入口
4 流動性硬化材
5a 縦鉄筋
5b 横鉄筋
6 コンクリート
7 挿入孔
8 密閉層