特開2021-116798(P2021-116798A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-116798(P2021-116798A)
(43)【公開日】2021年8月10日
(54)【発明の名称】ガソリン直噴エンジン用燃料レール
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/02 20060101AFI20210712BHJP
【FI】
   F02M55/02 360C
   F02M55/02 360A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-12952(P2020-12952)
(22)【出願日】2020年1月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】日野林 和真
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和弘
【テーマコード(参考)】
3G066
【Fターム(参考)】
3G066AA02
3G066AD05
3G066BA54
3G066BA58
3G066CB03
3G066CC03
(57)【要約】
【課題】 インジェクターホルダーの本管レール本体接合面の形状の不均一に起因するインジェクターホルダーの位置ずれを防止し、インジェクターホルダー接続部の位置精度の優れたガソリン直噴エンジン用燃料レールの提供。
【解決手段】 本管レールにインジェクターホルダーをろう付け接合して構成されるガソリン直噴エンジン用燃料レールにおいて、インジェクターホルダーに形成されたレール本体接合用円弧面状凹部に4個の当該ホルダー仮付け用突起を十字位置に設け、前記十字位置に配置した4個の突起を介してインジェクターホルダーのレール本体接合用円弧面状凹部をレール本体に仮付けした後ろう付け接合して構成したことを特徴とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本管レールに少なくとも一つのインジェクターホルダーを有するガソリン直噴エンジン用燃料レールであって、前記本管レールの周壁部に設けられた当該レールの流通路に通ずる貫孔部に前記インジェクターホルダーをろう付け接合して構成されるガソリン直噴エンジン用燃料レールにおいて、前記インジェクターホルダーに形成されたレール本体接合用円弧面状凹部に4個の当該インジェクターホルダー仮付け用突起が十字位置に設けられ、かつ前記4個の突起のうち、2個の突起は本管レール本体の軸方向と平行な位置の当該ホルダー接合用円弧面状凹部の底辺部に、残り2個の突起はレール本体の軸方向と直角方向位置の当該ホルダー接合用円弧面状凹部の縁部分にそれぞれ設けられ、前記十字位置に配置した4個のインジェクターホルダー仮付け用突起を介して当該インジェクターホルダーのレール本体接合用円弧面状凹部をレール本体に仮付けした後ろう付け接合して構成したことを特徴とするガソリン直噴エンジン用燃料レール。
【請求項2】
前記レール本体接合用円弧面状凹部に設ける4個のインジェクターホルダー仮付け用突起は、それぞれポンチングによる当該レール素材の塑性変形で生じるくぼみにより該レール本体接合用円弧面状凹部の内側に張り出す突出部を突起として形成することを特徴とする請求項1に記載のガソリン直噴エンジン用燃料レール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子燃料噴射式自動車エンジン等の燃料加圧ポンプから送給された高圧燃料をエンジンのシリンダー内に直接噴射する燃料インジェクター(噴射ノズル)を介して供給するための燃料レールに係り、より詳しくはレールからインジェクターへ直接燃料を供給するタイプにおけるガソリン直噴エンジン用燃料レールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のガソリン直噴エンジン用燃料レールとしては、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。この特許文献1には、例えば図3図4に示すように、燃料レール本体である本管レール11に、複数のインジェクターホルダー(筒状ソケット)12及び固定用ブラケット13を備えたガソリン直噴エンジン用燃料レールが記載されている。図中、11−1は流通路、11−1aは内周壁面、14は圧力センサー用ボス、15はプラグ、16はインレットコレクターである。
このガソリン直噴エンジン用燃料レールにおいて、インジェクターホルダー12は、図4にその取り付け構造の断面図を示すように、仕上げ加工孔12−1と横孔12−2が切削加工により設けられ、内部を流通路11−1となした円筒状の本管レール11の軸方向にわたる周壁部に穿設した貫孔11−2の部分に形成した当該ホルダー接合用円弧面状凹部12−3に本管レール11と相互にろう付け接合されている。
【0003】
上記ガソリン直噴エンジン用燃料レールの製造工程において、インジェクターホルダー12を本管レール11にろう付けする際には、図5に示すようにインジェクターホルダー12の位置精度や組み立て精度を確保するために当該ホルダー接合用円弧面状凹部12−3に仮付け用突起17を設けてプロジェクション溶接機による仮付けを行う。具体的には、インジェクターホルダー12のインジェクターホルダー接合用円弧面状凹部12−3の軸方向と平行な位置に溶接等により2個の仮付け用突起17を設け、その仮付け用突起17を介してインジェクターホルダー12をレール本体11の周壁部に当接させてプロジェクション溶接機により仮付けを行い、この仮付け固定した後に、炉中ろう付けにより本管レール11と一体的にろう付け固着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−7651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記した従来のガソリン直噴エンジン用燃料レールは、以下に記載する問題を有している。
即ち、インジェクターホルダー12の該ホルダー接合用円弧面状凹部12−3は、切削加工等により形成するが、本管レール11との当接面である当該円弧面状凹部(カット面)12−3の形状が不均一となりやすく、そのためプロジェクション溶接の際に行われる本管レール11本体とインジェクターホルダー12のセット時に該本管レール本体とインジェクターホルダーの偏心による円周方向の位置ずれが生じ易く、その位置ずれにより本管レール11本体の円周面とインジェクターホルダー接合用円弧面状凹部12−3間の隙間が大きくなると、インジェクターホルダー接続部の位置精度及び仮付け強度を十分に確保することが困難となる。このため、従来は前記したように、インジェクターホルダー12のホルダー接合用円弧面状凹部12−3の底辺部の、レール本体の軸方向と平行な位置にレール本体との溶着強度を確保するための2個の仮付け用突起17を設け、この2個の仮付け用突起17を介してインジェクターホルダー12を本管レール11に当接させてプロジェクション溶接による仮付けを行っている。
しかし、インジェクターホルダー12のホルダー接合用円弧面状凹部12−3の底辺部にレール本体の軸方向と平行な位置に2個の仮付け用突起17を設けて仮付けする方法では、インジェクターホルダー12のレール密着性は良好でも、本管レール11本体とインジェクターホルダー12のセット時における当該インジェクターホルダーの接合用円弧面状凹部12−3と本管レール11のそれぞれの中心位置合せが的確に行われず、レール本体とインジェクターホルダーの円周方向の位置ずれを完全に解消することができず、インジェクターホルダー接続部の位置精度を十分に高めることができないという問題がある。又、レール本体とインジェクターホルダーの円周方向の位置ずれが生じた状態の場合、プロジェクション溶接機における仮付け時の電流が効率よく流れないため電力費も高くついたり、後工程で行うろう付けでの適正クリアランスから外れてろう付け不良を起こすという問題がある。
【0006】
本発明は、前記した従来のガソリン直噴エンジン用燃料レールの有する前記問題を解決するためになされたものであり、特にレール本体にインジェクターホルダーが直に取付けられた構造のガソリン直噴エンジン用燃料レールにおいて、本管レールとの当接面であるインジェクターホルダーの接合用円弧面状凹部(カット面)の形状の不均一に起因する本管レール本体とインジェクターホルダーの円周方向の位置ずれを防止し、インジェクターホルダー接続部の位置精度の優れたガソリン直噴エンジン用燃料レールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るガソリン直噴エンジン用燃料レールは、本管レールに少なくとも一つのインジェクターホルダーを有するガソリン直噴エンジン用燃料レールであって、前記本管レールの周壁部に設けられた当該レールの流通路に通ずる貫孔部に前記インジェクターホルダーをろう付け接合して構成されるガソリン直噴エンジン用燃料レールにおいて、前記インジェクターホルダーに形成されたレール本体接合用円弧面状凹部に4個の当該インジェクターホルダー仮付け用突起が十字位置に設けられ、かつ前記4個の突起のうち、2個の突起は本管レール本体の軸方向と平行な位置の当該ホルダー接合用円弧面状凹部の底辺部に、残り2個の突起はレール本体の軸方向と直角方向位置の当該ホルダー接合用円弧面状凹部の縁部分にそれぞれ設けられ、前記十字位置に配置した4個の突起を介して当該インジェクターホルダーのレール本体接合用円弧面状凹部をレール本体に仮付けした後ろう付け接合して構成したことを特徴とするものである。
【0008】
又、本発明に係るガソリン直噴エンジン用燃料レールにおいて、前記レール本体接合用円弧面状凹部に設ける4個のインジェクターホルダー仮付け用突起は、それぞれポンチングによる当該レール素材の塑性変形で生じるくぼみにより該レール本体接合用円弧面状凹部の内側に張り出す突出部を突起として形成することを特徴とするものである。
【0009】
かかる構成のガソリン直噴エンジン用燃料レールにおいて、レール本体接合用円弧面状凹部の十字位置に設ける4個のインジェクターホルダー仮付け用突起のうち、2個の突起を本管レール本体の軸方向と平行な位置のインジェクターホルダー接合用円弧面状凹部の底辺部に、残り2個の突起をレール本体の軸方向と直角方向位置の当該ホルダー接合用円弧面状凹部の縁部分にそれぞれ設けたのは、インジェクターホルダー接合用円弧面状凹部の形状の不均一に起因する本管レール本体とインジェクターホルダーの位置ずれを防止し、かつレール本体とインジェクターホルダーの仮付け強度を高めるためである。又、レール本体接合用円弧面状凹部に設ける前記突起の形成方法としてポンチングによる当該レール素材の塑性変形を利用して形成する方法を採用したのは、突起の形成が簡単であるのみならず当該突起を所定の位置に的確にしかも均一な形状に簡単に形成することができるためである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るガソリン直噴エンジン用燃料レールは、レール本体接合用円弧面状凹部に設けるインジェクターホルダー仮付け用突起を4個用い、この4個のインジェクターホルダー仮付け用突起をレール本体接合用円弧面状凹部の十字位置に設けるとともに、このレール本体接合用円弧面状凹部の十字位置に設ける4個の当該ホルダー仮付け用突起のうち、2個の突起を本管レール本体の軸方向と平行な位置のインジェクターホルダー接合用円弧面状凹部の底辺部に、残り2個の突起をレール本体の軸方向と直角方向位置の当該ホルダー接合用円弧面状凹部の縁部分にそれぞれ設けたことにより、ろう付けの際に行われる本管レール本体とインジェクターホルダーのセット時に、インジェクターホルダー接合用円弧面状凹部の形状の不均一に起因する本管レール本体とインジェクターホルダーの円周方向の位置ずれが防止され、当該ホルダーの位置精度の向上がはかられることによりレール本体とインジェクターホルダーの仮付け強度が高められる。又、インジェクターホルダーの位置精度の向上がはかられることにより、プロジェクション溶接機における溶接時の電流が効率よく流れるので省電力もはかられる。さらに、レール本体接合用円弧面状凹部に設けるインジェクターホルダー仮付け用突起の形成方法としてポンチングによる当該レール素材の塑性変形により形成する方法を採用したことにより、突起の形成が簡単であるのみならず当該突起を所定の位置に的確にしかも均一な形状に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るガソリン直噴エンジン用燃料レールのインジェクターホルダーの一実施例を示す図で、(A)は正面図、(B)は図(A)のb−b線上の断面図である。
図2図1に示すインジェクターホルダーのレール本体接合用円弧面状凹部にポンチングにより形成したインジェクターホルダー仮付け用突起の一部を拡大して示す平面図である。
図3】同上のガソリン直噴エンジン用燃料レールの一例を示す平面図である。
図4図3のA−A線上の拡大断面図である。
図5図3に示すガソリン直噴エンジン用燃料レールの従来のインジェクターホルダーの一例を示す拡大正面図である。
【0012】
本発明の改善の対象とするガソリン直噴エンジン用燃料レールは、前記した従来品と同様の構成を有するが、本発明に係るガソリン直噴エンジン用燃料レールは、本管レール1の軸方向にわたる周壁部に穿設した貫孔の部分にろう付け接合するインジェクターホルダーとして、図1(A)(B)に示すインジェクターホルダー2を用いて本管レール1にろう付け接合して構成されている点に大きな特徴を有する。
即ち、本願発明に係るガソリン直噴エンジン用燃料レールにおけるインジェクターホルダー2は、仕上げ加工孔2−1と横孔2−2が切削加工により設けられ内部を流通路1−1となした円筒状の本管レール1の軸方向にわたる周壁部に穿設した貫孔11−2(図4参照)と相対向する部分に切削加工によりカットして形成した当該ホルダー接合用円弧面状凹部2−3に、4個の当該ホルダー仮付け用突起3−1a、3−1bが図1(A)に示すように十字位置に設けられている。この4個のホルダー仮付け用突起は、当該ホルダーの位置精度を考慮して、ホルダー仮付け用突起3−1aは本管レール1のレール本体の軸方向と平行な位置の当該ホルダー接合用円弧面状凹部2−3の底辺部2−3aに、残りのホルダー仮付け用突起3−1bは本管レール1のレール本体の軸方向と直角方向位置の当該ホルダー接合用円弧面状凹部2−3の縁2−3b部分に、それぞれ設けられている。
【0013】
前記インジェクターホルダーのレール本体接合用円弧面状凹部2−3の底辺部2−3aと縁2−3b部分に設ける4個のホルダー仮付け用突起3−1a、3−1bは、図2に拡大して示すようにポンチングにより適当な深さのくぼみ(凹部)3−1cを形成することにより当該レール素材が塑性変形してレール本体接合用円弧面状凹部2−3の内側に張り出してできる突出部をホルダー仮付け用突起3−1a、3−1bとして利用する。
【0014】
本願発明において、ホルダー仮付け用突起3−1a、3−1bを4個用い、その4個の該ホルダー仮付け用突起を当該ホルダー接合用円弧面状凹部2−3に図1(A)(B)に示すように十字位置に設けることとしたのは、以下に示す理由による。
即ち、ホルダー接合用円弧面状凹部2−3に設けるホルダー仮付け用突起の個数を4個に規定したのは、インジェクターホルダー2と本管レール1との密着性と配置バランスを考慮したためである。なお、このホルダー仮付け用突起の個数としては、本管レール1及びインジェクターホルダーの直径(太さ)や突起の大きさ等によっては4個以上設ける場合も考えられるが、本発明では通常使用されているガソリン直噴エンジン用燃料レールを基準にして4個に設定した。又、4個のインジェクターホルダー仮付け用突起3−1a、3−1bのうち、2個の当該突起3−1aを本管レール本体の軸方向と平行な位置のインジェクターホルダー接合用円弧面状凹部2−3の底辺部2−3aに設け、他の2個の当該突起3−1bをレール本体の軸方向と直角方向位置の当該ホルダー接合用円弧面状凹部2−3の縁2−3b部分に設けたのは、本管レール1本体とインジェクターホルダー2のセット時における当該レール本体とインジェクターホルダーの円周方向の位置ずれを防止するためである。
具体的には、本管レール本体の軸方向と平行な位置に設けた2個のホルダー仮付け用突起3−1aと、本管レール本体の軸方向と直角方向位置に設けた残り2個のホルダー仮付け用突起3−1bにより本管レール1本体に対するインジェクターホルダー2の接触状態が安定するので、インジェクターホルダー接合用円弧面状凹部の形状の不均一が吸収され、本管レール1本体に対するインジェクターホルダー2の円周方向の位置ずれを防止できることにより、プロジェクション溶接機による本管レール1本体とインジェクターホルダー2の仮付け強度をより高めることが可能となる。特に、本管レール本体の軸方向と平行な位置に設けた2個のホルダー仮付け用突起3−1aにより、本管レール本体1とインジェクターホルダー2の仮付け強度をより高めることが可能となり、本管レール本体の軸方向と直角方向位置に設けた残り2個のホルダー仮付け用突起3−1bにより、本管レール1本体とインジェクターホルダー2の位置ずれを防止できることにより、プロジェクション溶接機における溶接時の電流が効率よく流れるので省電力もはかられるのみならず、後工程でのろう付け不良を起こすこともない。
【符号の説明】
【0015】
1 本管レール
1−1 流通路
2 インジェクターホルダー
2−1 仕上げ加工孔
2−2 横孔
2−3 インジェクターホルダー接合用円弧面状凹部
2−3a ホルダー接合用円弧面状凹部の底辺部
2−3b ホルダー接合用円弧面状凹部の縁
3−1a、3−1b ホルダー仮付け用突起
3−1c くぼみ
図1
図2
図3
図4
図5