特開2021-117002(P2021-117002A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2021-117002ヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-117002(P2021-117002A)
(43)【公開日】2021年8月10日
(54)【発明の名称】ヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/41 20060101AFI20210712BHJP
【FI】
   G01N21/41 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-7989(P2020-7989)
(22)【出願日】2020年1月22日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼平成31年1月31日開催 共生創造理工学科卒業研究II発表会 東京都八王子市丹木町1−236 学校法人創価大学 ▲2▼令和1年8月19日掲載 https://www.ieice−taikai.jp/2019society/jpn/program.html ▲3▼令和1年11月20日配布 The 8th Asia−Pacific Optical Sensors Conference予稿集USB オークランド大学 オークランド、ニュージーランド国
(71)【出願人】
【識別番号】598123138
【氏名又は名称】学校法人 創価大学
(71)【出願人】
【識別番号】515117682
【氏名又は名称】株式会社コアシステムジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井田 旬一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 光弘
(72)【発明者】
【氏名】西山 道子
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 一弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 博幸
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB01
2G059CC04
2G059EE02
2G059FF12
2G059GG02
2G059HH01
2G059JJ01
2G059JJ17
2G059KK01
(57)【要約】
【課題】二酸化炭素を検知の対象とすることができるヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサを提供する。
【解決手段】ヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ1は、コア5a及びクラッド6aを有する光伝送部2と、コア5b及びクラッド6bを有するヘテロコア部3とを備え、ヘテロコア部3のコア5bが光伝送部2のコア5aよりも小径である光ファイバ4を備える。ヘテロコア部3のクラッド6aの外周面に表面プラズモン共鳴又は局在表面プラズモン共鳴を励起することが可能な金属膜7aを備え、金属膜7aの外周面に二酸化炭素を吸脱着可能なイオン液体層7bを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア及びクラッドを有する光伝送部と、該光伝送部のコア及びクラッドに各々連なるコア及びクラッドを有するヘテロコア部とを備え、該ヘテロコア部のコアが該光伝送部のコアよりも小径である光ファイバを備えるヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサであって、
該ヘテロコア部のクラッドの外周面に表面プラズモン共鳴又は局在表面プラズモン共鳴を励起することが可能な金属膜を備え、
該金属膜の外周面に二酸化炭素を吸脱着可能なイオン液体層を備えることを特徴とするヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ。
【請求項2】
請求項1記載のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサにおいて、前記イオン液体は、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートであることを特徴とするヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサにおいて、前記イオン液体層は、前記イオン液体と、二酸化炭素を吸脱着可能なポリマーとの混合物のゲルからなることを特徴とするヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ。
【請求項4】
請求項3記載のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサにおいて、前記ポリマーは、ポリフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合樹脂であることを特徴とするヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ。
【請求項5】
請求項3又は請求項4載のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサにおいて、前記ゲルは、前記イオン液体と前記ポリマーとを1:1〜10:1の範囲の質量比で含む混合物であることを特徴とするヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コア及びクラッドを有する光伝送部と、該光伝送部のコア及びクラッドに各々連なる一方、該光伝送部のコアと異なる直径のコア及びクラッドを有するヘテロコア部とを備えるヘテロコア光ファイバを各種センサに用いることが検討されている。
【0003】
従来、ヘテロコア光ファイバを用いるヘテロコア光ファイバセンサとして、例えば、前記ヘテロコア部の前記クラッドの外周面に形成された表面プラズモン共鳴又は局在表面プラズモン共鳴を励起することが可能な金属膜と、該金属膜の外周面に形成された誘電体膜と、該誘電体膜の外周面に形成された水素吸蔵金属膜とを備えるヘテロコア光ファイバ水素センサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−59300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のヘテロコア光ファイバ水素センサによれば、光伝送部のコアからの伝搬する光をヘテロコア部のコアの外界から漏洩可能にして、ヘテロコア部のクラッドの外周面に形成された金属膜に表面プラズモン共鳴(SPR)を励起させることができる。
【0006】
そこで、水素雰囲気中に前記ヘテロコア光ファイバ水素センサを配置すると、水素吸蔵金属膜が水素を含み、その誘電関数及び屈折率が変化し、該誘電関数の変化によって前記金属膜における、表面プラズモン共鳴(SPR)の共鳴波長が変化するので、該共鳴波長の変化量から水素を計測することができるとされている。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のヘテロコア光ファイバ水素センサは、水素という特定の化学種を検知の対象とするだけであり、他の化学種、例えば、二酸化炭素を検知の対象とすることが困難であるという不都合がある。
【0008】
本発明は、かかる不都合を解消して、二酸化炭素を検知の対象とすることができるヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために、本発明のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサは、コア及びクラッドを有する光伝送部と、該光伝送部のコア及びクラッドに各々連なるコア及びクラッドを有するヘテロコア部とを備え、該ヘテロコア部のコアが該光伝送部のコアよりも小径である光ファイバを備えるヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサであって、該ヘテロコア部のクラッドの外周面に表面プラズモン共鳴又は局在表面プラズモン共鳴を励起することが可能な金属膜を備え、該金属膜の外周面に二酸化炭素を吸脱着可能なイオン液体層を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサによれば、光伝送部のコアからの伝搬する光がヘテロコア部のコアの外界から漏洩し、ヘテロコア部のクラッドと該クラッドの外周面に形成された金属膜との界面で全反射することにより、該金属膜にエバネッセント波を励起させ、該エバネッセント波により、該金属膜に表面プラズモン共鳴(SPR)を励起させる。一方、前記金属膜の外表面に形成されたイオン液体層は二酸化炭素を吸脱着可能であり、二酸化炭素を吸着すると該イオン液体の誘電関数が変化し、該誘電関数の変化に伴って該金属膜における表面プラズモン共鳴(SPR)の共鳴波長が変化する。
【0011】
この結果、前記全反射における反射スペクトル自体にシフトを生じ、前記光伝送部の伝搬光の光強度が変化するので、該光強度の変化を検出することにより、二酸化炭素を検知することができる。
【0012】
本発明のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサにおいて、前記イオン液体は、二酸化炭素を吸脱着可能であればどのようなものであってもよいが、例えば、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを用いることができる。
【0013】
また、本発明のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサにおいて、前記イオン液体層は、前記イオン液体と、二酸化炭素を吸脱着可能なポリマーとの混合物のゲルからなることが好ましい。前記イオン液体層は、前記ゲルからなることにより、前記金属膜の外表面に固定することができる。
【0014】
また、本発明のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサにおいて、前記ゲルを構成するポリマーは、二酸化炭素を吸脱着可能であればどのようなものであってもよいが、例えば、ポリフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合樹脂を用いることができる。
【0015】
また、本発明のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサにおいて、前記ゲルは、前記イオン液体と前記ポリマーとを1:1〜10:1の範囲の質量比で含む混合物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサのセンサ部の構成を示す説明的断面図。
図2】本発明のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサの装置構成の一例を示す説明図。
図3】本発明のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサによる二酸化炭素の検知結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ1は、光伝送部2,2の間に挟まれた所定長のヘテロコア部3を有するヘテロコア光ファイバ4を備える。光伝送部2は、コア5aと、コア5aの外周面を被覆するクラッド6aとからなるマルチモード光ファイバであり、ヘテロコア部3は、コア5aより小径のコア5bと、コア5bの外周面を被覆するクラッド6bとからなるシングルモード光ファイバである。
【0019】
ヘテロコア光ファイバセンサ1は、ヘテロコア部3のクラッド6bの外周面に形成された表面プラズモン共鳴又は局在表面プラズモン共鳴を励起することが可能な金属膜7aを備え、金属膜7aの外周面に二酸化炭素を吸脱着可能なイオン液体層7bを備えている。
【0020】
金属膜7aは、金又は銀からなり、スパッタリングにより形成することができる。イオン液体層7bは、二酸化炭素を吸脱着可能なイオン液体と、ポリマーとの混合物のゲルからなり、ヘテロコア部3のクラッド6bの外周面に形成された金属膜7aの外周面に前記混合物をディップコーティングにより付着させた後、乾燥してゲル化させることにより形成することができる。
【0021】
二酸化炭素を吸脱着可能な前記イオン液体としては、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([EMIM][BF])、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロエタンスルフォニル)アミド([EMIM][TFSA])、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(ペンタフルオロエタンスルフォニル)アミド([EMIM][BETA])、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムノナフルオロブタンスルフォネート([EMIM][NFBS])、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムトトラシアノボレート([EMIM][B(CN)])、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド([EMIM][TfN])、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムジシアナミド([EMIM][DCN])、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート([BMIM][BF])、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロフォスフェート([BMIM][PF6])、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムメチルサルフェート([BMIM][CHSO])、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロ−メチルスルフォニル)イミド([BMIM][TfN])、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロ−メチルスルフォニル)イミド([HMIM][TfN])等のイミダゾリウム系イオン液体、ブチル−メチルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド([MeBuPyrr][TfN])等のピロリジニウム系イオン液体、テトラブチルアンモニウムグリシネート([N4444][Gly])、テトラメチルアンモニウムグリシネート([N1111][Gly])、1,1,1−トリメチルヒドラジニウムグリシネート([aN111][Gly])等のアミノ酸イオン液体、ポリ[1−(p−ビニルベンジル)−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート](P[VBBI] [BF])、ポリ[1−(2−メタクリロイルオキシ)エチル−3−ブチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート](P[MABI] [BF])、ポリ[1−(p−ビニルベンジル)−3−ブチルイミダゾリウムビス(トリフルオロ−メチルスルフォニル)イミド](P[VBBI] [TfN])、ポリ[(p−ビニルベンジル)トリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート](P[VBTMA] [BF])、ポリ[2-(メタクリロイルオキシ)エチルトリメチルアンモニウムテトラフルオロボレート](P[MATMA] [BF])、ポリ(1−アリル−3−ビニルイミダゾリウムブロマイド)(PAVB)等のポリイオン液体等を挙げることができる。
【0022】
また、前記ポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合樹脂(PVDF−HFP)、ポリ(4−ビニルピリジン)、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)、N,N,N´,N´−テトラ(トリフルオロメタンスフォニル)−ヘキサン−1,6−ジアミド、N,N,N´,N´−テトラ(トリフルオロメタンスフォニル)−ドデカン−1,12−ジアミド等を挙げることができる。また、前記ポリマーとして、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PDDA)、ポリ(アリルアミンヒドロクロライド)(PAH)、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)等を使用できる可能性がある。
【0023】
二酸化炭素を吸脱着可能な前記イオン液体と、前記ポリマーとの混合物は、前記イオン液体と、前記ポリマーとを、例えば、1:1〜10:1の範囲の質量比で混合することにより調製することができる。
【0024】
図2に示すように、本実施形態のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ1は、被検出部21にヘテロコア光ファイバ4のヘテロコア部3を配置したときに、光ファイバ4の一方の端部にLED等の光源22を備え、光ファイバ4の他方の端部に例えばスペクトルアナライザ、分光器、フォトダイオード等の検出装置23を備える。また、検出装置23には、検出装置23で検出された反射光の強度の変化度合いを解析するパソコン等の解析装置24が接続されている。
【0025】
本実施形態のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ1では、光伝送部2のコア5aからの伝搬する光がヘテロコア部3のコア5bの外界から漏洩し、ヘテロコア部3のクラッド6aと金属膜7aとの界面で全反射することにより生じたエバネッセント波により、金属膜7aに表面プラズモン共鳴(SPR)を励起させる。一方、金属膜7aの外表面に形成されたイオン液体層7bは二酸化炭素を吸脱着可能であり、二酸化炭素を吸着すると該イオン液体の誘電関数が変化し、該誘電関数の変化に伴って金属膜7aにおける表面プラズモン共鳴(SPR)の共鳴波長が変化する。
【0026】
この結果、前記全反射における反射スペクトル自体にシフトを生じ、光伝送部2の伝搬光の光強度が変化するので、光強度の変化を検出装置23で検出し、解析装置24で解析することにより、二酸化炭素を検知することができる。
【0027】
次に、LEDからなる光源22から、光伝送部2のコア5aに波長850nmの光線を照射する一方、被検出部21に窒素(N)と二酸化炭素(CO)とを所定時間ずつ交互に供給し、検出装置23で検出される光強度の変化を解析装置24で解析した。結果を図3に示す。
【0028】
図3から、本実施形態のヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ1によれば、二酸化炭素(CO)を供給したときの光損失が、窒素(N)を供給したときよりも大きくなっており、二酸化炭素(CO)を検知することができることが明らかである。
【0029】
尚、本実施形態では、イオン液体層7bを、前記イオン液体と、前記ポリマーとの混合物を乾燥してゲル化させることにより形成しているが、イオン液体層7bは、予め金属膜7a上に調製したメゾポーラスシリカの細孔内に含侵法により固定することにより形成してもよく、シリカナノ粒子と、ポリエチレンイミン等の二酸化炭素を吸脱着可能なカチオンポリマーとをLbL法により金属膜7a上に交互に堆積させてことにより形成してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1…ヘテロコア光ファイバ二酸化炭素センサ、 2…光伝送部、 3…ヘテロコア部、 4…光ファイバ、 5a、5b…コア、 6a、6b…クラッド、 7a…金属膜、 7b…イオン液体層、 21…被検出部、 22…光源22、 23…検出装置、 24…解析装置。
図1
図2
図3