【解決手段】土砂Sの粒度分布の実測データを取得する粒度実測工程と、土砂Sと液体Lを入れて加振した後の透明な容器5を撮影して容器5の画像データを取得する撮影工程とを複数種類の土砂Sに対して行い、土砂Sの粒度分布の実測データと容器5の画像データとの相関関係を示す複数組の粒度分布関係データを教師データとして用いて、粒度分布機械学習部により、入力を容器5の画像データとし、出力を土砂Sの粒度分布の推定データとする粒度分布推定モデルを機械学習によって予め生成しておく。推定対象土砂Sに対して撮影工程を行って取得した容器5の画像データを粒度分布処理部に入力し、粒度分布処理部が粒度分布推定モデルを用いて推定対象土砂Sの粒度分布の推定データを出力する。
事前作業として、土砂の粒度分布を実測する粒度実測工程と、その土砂を液体に予め設定した所定割合で混入した混合液を透明な容器の中で加振して前記土砂の粒子どうしを分離させた状態にした時点から予め設定した所定の経過時間の間に、前記混合液が収容されている前記容器を前記容器の外側の前記容器の周面に対向する方向から撮影装置で撮影する撮影工程とを複数種類の土砂に対して行い、それぞれの土砂における前記粒度実測工程で取得した土砂の粒度分布の実測データと前記撮影工程で取得した前記容器の画像データとの相関関係を示す粒度分布関係データを記憶させた粒度分布機械学習部により、複数組の前記粒度分布関係データを教師データとして用いて、入力を前記容器の画像データとし、出力をその前記容器の画像データから推定される土砂の粒度分布の推定データとする粒度分布推定モデルを機械学習によって予め生成しておき、
土砂の粒度分布を推定する際には、その推定対象土砂に対して前記撮影工程を行って取得した前記容器の画像データを粒度分布処理部に入力し、前記粒度分布処理部が前記粒度分布推定モデルを用いて前記推定対象土砂の粒度分布の推定データを出力することを特徴とする土砂の特性推定方法。
前記粒度分布処理部が前記推定対象土砂の粒度分布の推定データを出力した後に、その推定対象土砂における前記容器の画像データと、その推定対象土砂に対して前記粒度実測工程を行って取得した前記推定対象土砂の粒度分布の実測データとの相関関係を示す前記粒度分布関係データを新たな教師データとして前記粒度分布機械学習部に記憶させる請求項1に記載の土砂の特性推定方法。
前記撮影工程において、前記容器を加振しているときに発生する音の音データを取得し、前記土砂の粒度分布の実測データと前記容器の画像データと前記音データとの相関関係を示す前記粒度分布関係データを記憶させた前記粒度分布機械学習部により、複数組の前記粒度分布関係データを教師データとして用いて、入力を前記容器の画像データおよび前記音データとし、出力をその前記容器の画像データおよび前記音データから推定される土砂の粒度分布の推定データとする粒度分布推定モデルを機械学習により予め生成しておき、
土砂の粒度分布を推定する際には、その推定対象土砂に対して前記撮影工程を行って取得した前記容器の画像データおよび前記音データを前記粒度分布処理部に入力し、前記粒度分布処理部が前記粒度分布推定モデルを用いて前記推定対象土砂の粒度分布の推定データを出力する請求項1または2に記載の土砂の特性推定方法。
複数種類の土砂における、土砂の粒度分布の実測データとその土砂の含水比およびコーン指数の相関を示す実測データとの相関関係を示すコーン指数関係データを記憶させたコーン指数機械学習部により、複数組の前記コーン指数関係データを教師データとして用いて、入力を前記土砂の粒度分布のデータとし、出力をその前記土砂の粒度分布のデータから推定される土砂の含水比およびコーン指数の相関を示す推定データとするコーン指数推定モデルを機械学習によって予め生成しておき、
前記推定対象土砂の含水比およびコーン指数の相関を推定する際には、前記粒度分布処理部から出力された前記推定対象土砂の粒度分布の推定データをコーン指数処理部に入力し、前記コーン指数処理部が前記コーン指数推定モデルを用いて前記推定対象土砂の含水比およびコーン指数の相関を示す推定データを出力する請求項1〜3のいずれかに記載の土砂の特性推定方法。
複数種類の土砂における、土砂の粒度分布の実測データとその土砂の含水比および乾燥密度の相関を示す実測データとの相関関係を示す乾燥密度関係データを記憶させた乾燥密度機械学習部により、複数組の前記乾燥密度関係データを教師データとして用いて、入力を前記土砂の粒度分布のデータとし、出力をその前記土砂の粒度分布のデータから推定される土砂の含水比および乾燥密度の相関を示す推定データとする乾燥密度推定モデルを機械学習によって予め生成しておき、
前記推定対象土砂の含水比および乾燥密度の相関を推定する際には、前記粒度分布処理部から出力された前記推定対象土砂の粒度分布の推定データを乾燥密度処理部に入力し、前記乾燥密度処理部が前記乾燥密度推定モデルを用いて前記推定対象土砂の含水比および乾燥密度の相関を示す推定データを出力する請求項1〜4のいずれかに記載の土砂の特性推定方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の土砂の特性推定方法および特性推定システムを図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1に例示するように、本発明の土砂の特性推定システム1は、撮影装置2と、撮影装置2に通信可能な特性推定装置3とを備えている。撮影装置2としては、デジタルカメラや多機能携帯端末(スマートフォンやタブレット等)などを用いる。特性推定装置3としては、コンピュータや多機能携帯端末などを用いる。特性推定システム1は例えば、撮影装置2と特性推定装置3とを兼用するカメラを備えたノート型のコンピュータや多機能携帯端末などで構成することもできる。特性推定装置3は、粒度分布機械学習部と粒度分布処理部を有している。粒度分布機械学習部および粒度分布処理部の詳細は後述する。
【0014】
本発明の土砂の特性推定方法では、特性推定システム1と透明な容器5と液体Lを用いて土砂Sの粒度分布(粒径加積曲線)を推定する。この実施形態では、さらに、撮影用のケーシング6と照明機器7を使用する。ケーシング6と照明機器7は任意で用いることができる。
【0015】
透明な容器5としては、例えば、ガラス製やプラスチック製の密閉可能な容器を用いる。容器5の透明度は外部から内部が視認可能であればよく、無色透明に限定されない。容器5の大きさは適宜決定できるが、例えば、内容量が200ml〜1000ml程度の容器5を用いるとよい。この実施形態では、容器5として略円筒形状のガラス製のビンとその蓋を使用しているが、容器5の材質や形状は特に限定されず、例えば、角筒形状の容器5を使用してもよい。液体Lとしては、水や油などが例示できる。この実施形態では、液体Lとして水を用いている。
【0016】
土砂Sを液体Lに混入した混合液を容器5の中で加振すると、土砂Sと液体Lとが撹拌されて土砂Sの粒子どうしが分離した状態となる。そして、加振した後の容器5を載置すると、
図2や
図3に例示するように、土砂Sを構成する比較的粒径の小さい粒子(例えば、粘性土)が、容器5の周面に付着した状態や液体Lに紛れて浮遊した状態となる。一方で、土砂Sを構成する比較的粒径の大きい粒子(例えば、砂や礫)は容器5の底に堆積した状態となる。
【0017】
土砂Sの粒度分布が異なると、この加振した後の容器5の周面に付着する土砂Sの状況や、液体Lに紛れて浮遊した状態となる土砂Sの状況、容器5の底に堆積する土砂Sの状況などが異なる。本発明者らは、この土砂Sを液体Lに混入した混合液を容器5の中で加振した後の状況と、土砂Sの粒度分布との相関性に着目して本発明を創作した。
【0018】
この特性推定方法では、施工現場などで土砂Sの粒度分布を推定する以前に、以下で説明する事前作業を予め行っておく。
【0019】
事前作業では、複数種類の土砂Sに対して、粒度実測工程と撮影工程を行う。土砂Sに粒径の比較的大きい礫(例えば、粒径が4.75mm以上)や枝などの不純物が含まれている場合には、予め篩などを使用して土砂Sから礫や不純物を取り除いておく。より好ましくは、予め篩などを使用して土砂Sから粒径が2mm以上の礫を取り除いておくとよい。
【0020】
粒度実測工程では、土砂Sの粒度分布を実測して土砂Sの粒度分布の実測データを取得する。粒度実測工程では、例えば、JIS A 1204に規定されている土の粒度試験方法に従って土砂Sの粒度分布を実測する。その他の方法で土砂Sの粒度分布を実測してもよい。
【0021】
撮影工程では、土砂Sを液体Lに予め設定した所定割合で混合した混合液を容器5の中に入れる。土砂Sと液体Lとの混合割合は使用する容器5の大きさや液体Lの種類に応じて適宜設定できる。具体的には例えば、容器5に入れる土砂Sの量は、重量または体積を基準にして予め設定した一定の条件とする。液体Lとして水を用いる場合には、容器5に入れる水量は、例えば、土砂Sの含水比が予め設定した一定値となる水量に調整する。土砂Sの含水比は例えば、100%〜200%の範囲内の所定値に設定するとよい。液体Lとして水以外の油などを用いる場合には、例えば、土砂Sの含水比を予め設定した所定値に調整した後に、予め設定した所定の重量または体積の液体Lを容器5に入れる。
【0022】
容器5に入れる土砂Sと液体Lの量は、土砂Sと液体Lを入れた容器5を載置した状態で、容器5の内空部の下端部から液面位置まで高さが、容器5の内空部の下端部から上端部までの高さの30%〜70%の範囲内になるように設定することが好ましい。
【0023】
次いで、土砂Sを液体Lに混入した混合液を容器5の中で加振して、土砂Sと液体Lとを撹拌し、土砂Sの粒子どうしを分離させた状態にする。容器5は作業者が振ってもよいが、容器5を加振する方向や加振速度、加振回数などは予め設定した一定の条件に統一することが好ましい。より好ましくは、加振機や振とう機などの機器を使用して容器5を予め設定した一定の条件で加振するとよい。
【0024】
次いで、
図1に例示するように、加振し終えた容器5を載置する。そして、土砂Sの粒子どうしを分離させた状態にした時点から予め設定した所定の経過時間の間に、混合液が収容されている容器5を容器5の外側の容器5の周面に対向する方向から撮影装置2で撮影する。これにより、
図2や
図3に例示するような、容器5の画像データを取得する。土砂Sの粒子どうしを分離させた状態にした時点から容器5を撮影するまでの時間が長いと、土砂Sの粒度分布に相関性がある、容器5の周面に付着している土砂Sや液体Lに紛れ込んで浮遊している土砂Sが容器5の底に堆積した状態になってしまう。そのため、前述した所定の経過時間は例えば、5分以内に設定する。
【0025】
容器5を撮影する際には、容器5を撮影する角度や画角、明度、背景などの撮影条件を一定の条件に統一することが好ましい。撮影工程では、容器5の向きを変えて、容器5の周面の周方向全周に渡って複数枚の容器5の画像データを取得するとよい。この実施形態のように、容器5を囲うケーシング6と、ケーシング6内の照度を調整する照明機器7を使用すると、容器5を一定の撮影条件で撮影できる。容器5を撮影する際の撮影装置2の設定は、カラー撮影にすることもできるが、モノクローム撮影にするとより好ましい。以上により、撮影工程が完了する。
【0026】
事前作業では、前述した粒度実測工程および撮影工程を複数種類の土砂Sに対してそれぞれ行うことで、それぞれの土砂Sにおける土砂Sの粒度分布の実測データと容器5の画像データとの相関関係を示す粒度分布関係データを取得する。そして、それぞれの土砂Sにおける粒度分布関係データを特性推定装置3の粒度分布機械学習部に記憶させる。粒度分布機械学習部には粒度分布関係データを多数記憶させることが好ましい。
【0027】
そして、事前作業では、粒度分布機械学習部により、記憶させた複数組の粒度分布関係データを教師データとして用いて、入力を容器5の画像データとし、出力をその容器5の画像データから推定される土砂Sの粒度分布の推定データとする粒度分布推定モデルを機械学習によって予め生成しておく。以上により事前作業が完了する。
【0028】
粒度分布機械学習部は、記憶されている複数組の粒度分布関係データを教師データとして用いて、土砂Sの粒度分布に関係する容器5の画像データにおける特徴を機械学習して、粒度分布推定モデルを生成する。前述した特徴としては、例えば、容器5の周面に付着している土砂Sの量や粒子の大きさ、土砂Sが紛れ込んでいる液体Lの濃淡、容器5の底に堆積している土砂Sの量や堆積の仕方、堆積している土砂Sの粒子の大きさなどが挙げられる。粒度分布機械学習部による機械学習の手法としては、例えば、ニューラルネットワークや回帰、クラスタリングなどが例示できる。
【0029】
施工現場などで採取した土砂Sの粒度分布を推定する際には、その推定対象土砂Sに対して前述した撮影工程を行ってその推定対象土砂Sにおける容器5の画像データを取得する。即ち、事前作業で使用した容器5と同型の容器5に、予め設定した所定割合で推定対象土砂Sと液体Lを入れる。次いで、その液体Lに推定対象土砂Sを混入した混合液を容器5の中で加振して推定対象土砂Sの粒子どうしを分離させた状態にした後に、容器5を載置する。そして、推定対象土砂Sの粒子どうしを分離させた状態にした時点から予め設定した所定の経過時間の間に、混合液が収容されている容器5を撮影装置2で撮影して、容器5の画像データを取得する。ケーシング6と照明機器7を使用すると、室外でも概ね事前作業のときと同じ撮影条件で容器5を撮影できる。
【0030】
次いで、その取得した容器5の画像データを特性推定装置3の粒度分布処理部に入力する。すると、粒子分布処理部が粒子分布機械学習部によって生成された粒子分布推定モデルを用いて、
図4に例示するような、入力された容器5の画像データから推定される推定対象土砂Sの粒度分布の推定データを出力する。
【0031】
このように、本発明によれば、土砂Sに土塊が含まれている場合にも、土砂Sを液体Lに混入した混合液を容器5の中で加振することで土砂Sの粒子どうしを速やかに効率よく分離させることができる。それ故、土砂Sの粒度分布を精度よく推定するには有利である。
【0032】
さらに、土砂Sと液体Lを入れて加振した後の容器5の画像データを用いることで、土砂Sを単純に撮影した画像データよりも、土砂Sの粒度分布の推定に寄与する土砂Sの特徴を表す情報をより多く得ることができる。それ故、機械学習の教師データとして土砂Sを単純に撮影した画像データを用いる場合よりも、より推定精度の高い粒度分布推定モデルを生成することが可能となる。
【0033】
粒度分布推定モデルを予め生成しておくことで、施工現場などで土砂Sの粒度分布を推定する際には、その推定対象土砂Sを液体Lに混入した混合液を容器5の中で加振した後に、その容器5を撮影装置2によって撮影し、その取得した容器5の画像データを粒度分布処理部に入力するだけで、粒度分布推定モデルによって推定された推定対象土砂Sの粒度分布の推定データを出力することが可能となる。それ故、施工現場などでも推定対象土砂Sの粒度分布を簡便に精度よく推定できる。特性推定システム1は、デジタルカメラやノート型のコンピュータ、多機能携帯端末などの比較的コンパクトな機材で構成でき、撮影工程で使用する容器5も200ml〜1000ml程度の小さなものでよいので、非常に利便性が高い。
【0034】
様々な色の土砂Sが存在するが、土砂Sの色と土砂Sの粒度分布との相関性は比較的弱いと考えられる。それ故、容器5の画像データとしては単色(モノクローム)の画像データを用いることが好ましい。単色の画像データにして土砂Sの色の情報を除くことで、粒度分布機械学習部が粒度分布推定モデルを生成する際に、土砂Sの粒度分布の特性推定基準としてノイズとなり得る土砂Sの色に対する重み付けを重くするようなことを回避できる。それ故、粒度分布推定モデルの推定精度を高めるには有利になる。
【0035】
土砂Sに粒径が大きい礫が含まれている場合には、その粒径が大きい礫が容器5の画像データに比較的大きく表示されるが、粒径が大きい礫の形状と土砂Sの粒度分布との相関性は比較的弱いと考えられる。それ故、予め篩などを使用して土砂Sから比較的大きい礫、具体的には例えば、粒径が4.75mm以上の礫、より好ましくは粒径が2mm以上の礫を取り除いておくとよい。粒径が比較的大きい礫を土砂Sから取り除いておくことで、粒度分布機械学習部が粒度分布推定モデルを生成する際に、土砂Sの粒度分布の特性推定基準としてノイズとなり得る礫の形状に対する重み付けを過度に重くするようなことを回避できる。それ故、粒度分布推定モデルの推定精度を高めるにはより有利になる。なお、本発明では、土砂Sから粒径が比較的大きい礫を取り除かない場合にも、土砂Sの粒度分布を推定することは可能である。
【0036】
教師データの数が多いほど、粒度分布推定モデルの推定精度を高めるには有利になる。そのため、粒度分布処理部が推定対象土砂Sの粒度分布データを出力した後には、その推定対象土砂Sにおける容器5の画像データと、その推定対象土砂Sに対して粒度実測工程を行って取得した推定対象土砂Sの粒度分布の実測データとの粒度分布関係データを新たな教師データとして粒度分布機械学習部に記憶させることが好ましい。このように、粒度分布機械学習部に記憶させる粒度分布関係データの数を増やしていき、粒度分布機械学習部によって生成する粒度分布推定モデルを更新していくことで、粒度分布推定モデルの推定精度を高めていくことができる。
【0037】
本発明の土砂の特性推定方法および特性推定システム1は
図5に例示するような構成にすることもできる。
【0038】
土砂Sを液体Lに混入した混合液を容器5の中で加振しているときには、土砂Sの粒子どうしがぶつかることや容器5に粒子がぶつかることで、音が発生する。土砂Sの粒度分布が異なると、この容器5を加振しているときに発生する音の高さや音色なども異なる。そのため、この実施形態では、土砂Sの粒度分布を推定する要素として、容器5を加振しているときに発生する音と土砂Sの粒度分布との相関性も加味する。
【0039】
この実施形態の特性推定システム1は、撮影装置2および特性推定装置3に加えて、録音装置4を備えている。この特性推定システム1を用いる特性推定方法では、
図5に例示するように、撮影工程において、容器5を加振しているときに発生する音の音データを録音装置4によって取得する。音データとしては例えば、音紋データや周波数分布データなどが挙げられる。録音装置4による録音条件は一定の条件に統一させることが好ましい。
【0040】
この実施形態のように、防音ケース8の内側に録音装置4を配置して、容器5を防音ケース8の内部で加振すると、周囲の雑音の影響を低減することができ、室外でも概ね一定の録音条件で音データを取得できる。音データを取得する場合の容器5は、ガラス製のビンのように、容器5と土砂Sとが衝突したときに音が発生しやすい材質であることが好ましい。
【0041】
この特性推定方法の事前作業では、土砂Sの粒度分布の実測データと容器5の画像データと音データとの相関関係を示す粒度分布関係データを、特性推定装置3の粒度分布機械学習部に記憶させる。そして、粒度分布機械学習部により、その記憶されている複数組の粒度分布関係データを教師データとして用いて、入力を容器5の画像データおよび音データとし、出力をその容器5の画像データおよび音データから推定される土砂Sの粒度分布の推定データとする粒度分布推定モデルを機械学習により予め生成しておく。
【0042】
施工現場などで採取した土砂Sの粒度分布を推定する際には、その推定対象土砂Sに対する撮影工程を行って容器5の画像データと音データを取得する。そして、その取得した容器5の画像データと音データを特性推定装置3の粒度分布処理部に入力する。すると、粒度分布処理部が粒度分布機械学習部によって生成された粒度分布推定モデルを用いて、推定対象土砂Sの粒度分布の推定データを出力する。
【0043】
このように、土砂Sの粒度分布の推定に、容器5を加振しているときに発生する音の音データを利用すると、容器5の画像データと音データとから土砂Sの粒度分布を複合的に推定できるので、土砂Sの粒度分布の推定精度を補完することができる。
【0044】
本発明の土砂の特性推定方法および特性推定システム1は次のような構成にすることもできる。
【0045】
図6に例示するように、土砂Sの含水比とコーン指数との相関を示すデータと、土砂Sの粒度分布のデータとの間には相関性がある。そのため、土砂Sの粒度分布のデータからその土砂Sの含水比とコーン指数との相関を示すデータを推定することが可能である。
【0046】
この実施形態の特性推定システム1は、さらに、コーン指数機械学習部とコーン指数処理部を有している。粒度分布機械学習部および粒度分布処理部を有する特性推定装置3に、コーン指数機械学習部およびコーン指数処理部を組み込んだ特性推定システム1にすることもできるし、粒度分布機械学習部および粒度分布処理部を有する特性推定装置3と、コーン指数機械学習部およびコーン指数処理部を有する別の特性推定装置3とを有する特性推定システム1にすることもできる。
【0047】
この実施形態では、事前作業において、複数種類の土砂Sにおける、土砂Sの粒度分布の実測データとその土砂Sの含水比およびコーン指数の相関を示す実測データとの相関関係を示すコーン指数関係データをコーン指数機械学習部に記憶させる。土砂Sの含水比およびコーン指数の相関を示す実測データは、例えば、JIS A 1228に規定されている締固めた土のコーン指数試験方法に従って取得する。土砂Sの含水比およびコーン指数の相関を示す実測データは他の方法で取得してもよい。過去に実施した工事などで蓄積していたコーン指数関係データをコーン指数機械学習部に記憶させてもよい。
【0048】
そして、コーン指数機械学習部により、記憶させている複数組のコーン指数関係データを教師データとして用いて、入力を土砂Sの粒度分布のデータとし、出力をその土砂Sの粒度分布のデータから推定される土砂Sの含水比およびコーン指数の相関を示す推定データとするコーン指数推定モデルを機械学習によって予め生成しておく。
【0049】
推定対象土砂Sの含水比およびコーン指数の相関を推定する際には、前述した粒度分布処理部から出力された土砂Sの粒度分布の推定データをコーン指数処理部に入力する。すると、コーン指数処理部が、コーン指数機械学習部が生成したコーン指数推定モデルを用いて、推定対象土砂Sの含水比およびコーン指数の相関を示す推定データを出力する。
【0050】
このような構成にすると、推定対象土砂Sの粒度分布の推定データに加えて、推定対象土砂Sの含水比とコーン指数との相関を示す推定データを簡便に得ることができるので、特性推定システム1の利便性がより高くなる。
【0051】
本発明の土砂の特性推定方法および特性推定システム1は次のような構成にすることもできる。
【0052】
図7に例示するように、土砂Sの含水比と乾燥密度との相関(締固め曲線)を示すデータと、土砂Sの粒度分布のデータとの間には相関性がある。そのため、土砂Sの粒度分布のデータからその土砂Sの含水比と乾燥密度との相関を示すデータを推定することが可能である。
【0053】
この実施形態の特性推定システム1は、さらに、乾燥密度機械学習部と乾燥密度処理部を有している。粒度分布機械学習部および粒度分布処理部を有する特性推定装置3に、乾燥密度学習部および乾燥密度処理部を組み込んだ特性推定システム1にすることもできるし、粒度分布機械学習部および粒度分布処理部を有する特性推定装置3と、乾燥密度機械学習部および乾燥密度処理部を有する別の特性推定装置3とを有する特性推定システム1にすることもできる。粒度分布機械学習部および粒度分布処理部と、コーン指数機械学習部およびコーン指数処理部と、乾燥密度機械学習部および乾燥密度処理部とを兼ね備えた特性推定システム1にすることもできる。
【0054】
この実施形態では、事前作業において、複数種類の土砂Sにおける、土砂Sの粒度分布の実測データとその土砂Sの含水比および乾燥密度の相関を示す実測データとの相関関係を示す乾燥密度関係データを乾燥密度機械学習部に記憶させる。土砂Sの含水比および乾燥密度の相関を示す実測データは、例えば、JIS A 1210に規定されている突固めによる土の締固め試験方法に従って取得する。土砂Sの含水比および乾燥密度の相関を示す実測データは他の方法で取得してもよい。過去に行った工事などで蓄積している乾燥密度関係データを乾燥密度機械学習部に記憶させてもよい。
【0055】
そして、乾燥密度機械学習部により、記憶させている複数組の乾燥密度関係データを教師データとして用いて、入力を土砂Sの粒度分布のデータとし、出力をその土砂Sの粒度分布のデータから推定される土砂Sの含水比および乾燥密度の相関を示す推定データとする乾燥密度推定モデルを機械学習によって予め生成しておく。
【0056】
推定対象土砂Sの含水比および乾燥密度の相関を推定する際には、前述した粒度分布処理部から出力された土砂Sの粒度分布の推定データを乾燥密度処理部に入力する。すると、乾燥密度処理部が、乾燥密度機械学習部が生成した乾燥密度推定モデルを用いて、推定対象土砂Sの含水比および乾燥密度の相関を示す推定データを出力する。
【0057】
このような構成にすると、推定対象土砂Sの粒度分布の推定データに加えて、推定対象土砂Sの含水比と乾燥密度との相関を示す推定データを簡便に得ることができるので、特性推定システム1の利便性がより高くなる。