【課題】社会システムの思考空間上の概念モデルとしての物理空間とこれと関連する情報空間上の見取図を描く必要があり、この見取図を思考情報空間上に変換して設計対象となる社会システムをデザインモデル化して記述する方法を提供する。
【解決手段】人間の精神性、身体性、実在性を内包する現実世界の構造を模式化した物理空間概念と、その背後に存在する現実世界の様相を表す情報空間概念と、物理空間と情報空間の関係性の場の概念を組合せる過程と、組合せ操作による超社会システムの思考空間概念モデルのイメージを意識空間上の自己意識、当事者意識、連帯意識によって図表上で統合した思考空間のデザインモデルへの転換操作を行う過程と、デザインモデルの構成要素を物理空間概念に転換して図表化し構想設計のための汎用格子譜の構成を得る過程によって、デザイン思考に基づく社会的な物事のデザインや設計の対象を構造化、可視化して図表表現する。
人間の精神活動を内包する社会的な物事を個の意識と該意識が関心を払う意識のスパンで観る社会システムとの実在的な関係性の上に成立する思考の形を超社会システムと定義したデザインや設計を可能にするために、デザインや設計の対象として思考情報技術的な扱いを可能にする該超社会システムに関する記述が一定の約束の上で構造化され可視化した形で求められる事に鑑みて構成される人間の思考を支援するコンピュータの図表表現のアプリケーションソフトを構築する為の表現技術に関わるデザイン思考対象の定式化の方法であって、
人間の精神性、身体性、実在性を内包する現実世界の構造を模式化した物理空間概念と、その背後に存在する該現実世界の様相を表す情報空間概念と、該物理空間と該情報空間の関係性の場の概念を組合せる過程と、
該組合せ操作による超社会システムの思考空間概念モデルのイメージを意識空間上の自己意識、当事者意識、連帯意識によって図表上で統合した思考空間のデザインモデルへの転換操作を行う過程と、
該デザインモデルの構成要素を物理空間概念に転換して図表化し構想設計のための汎用格子譜(特許文献3の格子譜;意匠)の構成を得る過程によって、
デザイン思考に基づく社会的な物事のデザインや設計の対象の機能、役割、働きを一つの面上に構造化、可視化して図表表現する該超社会システムの構成と記述の方法。
請求項1において定義した物理空間概念とその背後にある情報空間概念の両面で表現される日常的な空間に於ける社会的な物事の概念的な思考の見取図を、現在の状況が未来に継承されながら命の再生を伴って社会的動的平衡をもって推移する実在性を代表する生存線上に展開される中で、人間の精神活動が社会に関わって営為される物事の流れから切り取って把握しその思考空間的な概念を図式表現することのより該超社会システムの記述の手掛かりを得るステップと
上記見取図を概念モデルとした上で該概念モデルを統合的な構造を生存線上の時間的流れの中で立体的な形でイメージ化して表現するステップと、
該立体的なイメージに基づいて理解した関係性を伴う意識構造に基づいてデザイン思考で扱える形態の思考空間への転換を物事の表と裏の見取図を時間と空間を軸として構成される一つの面上に写像する為にメビュウスの輪の論理で切断して180°ひねりを加えた上で二つの断面を一つの点上で重ね合わせて再接合するステップと、
その再接合に際して重ね合わせの営為を関係性の軸の方向と理解し該関係性の軸が持つ意味と役割を時空面上に写像して空間変換し関係性の場を構成する思考情報空間の獲得手順に上記の一連のプロセスによるデザイン対象である超社会システムに関する平面表現化によって得られる思考空間を時空面において実体性*実在性*実存性の三元化要素で構成される立体的思考の写像として構成する手順を加えて複合構成するステップと、
上記複合構成によって平面表現した物理空間*意識空間*情報空間から構成される思考情報空間に上記超社会システムの概念上の意味を当て嵌めたデザインモデルを社会単位として構成するステップと、
意識空間に於ける関係性の場の機能と役割を脳神経科学や認知科学の知見を活用して明確化するステップとを、
組込むことによりデザイン思考に基づく社会的な物事のデザインや設計の対象の機能、役割、働きを一つの面上に構造化、可視化して図表表現する該超社会システムの構成と記述の方法。
請求項1、請求項2、請求項3において、思考空間のデザインモデル構成(行為系社会単位)を図表化する際に、デザイン上の必要性に応じて当事者型デザインモデルと俯瞰型デザインモデルを選択的に利用することを可能にしたデザインモデルの選択的活用に合せ、
デザイン論理の流れの中で思考空間概念構成モデル、空間遷移概念モデル、意識特性モデル、デザインモデル、技術哲学モデル、デザイン操作モデル、汎用格子譜による表現を選択的に適用し、
デザイン対象の特性に適合出来る様にデザイン思考の幅と図表表現の形を拡張する事を可能にする超社会システムの構成と記述の方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
デザイン思考の遂行に際しての課題であるデザイン対象の技術的な表現としての超社会システムの定義と記述を確立する為の空間的構造変換の流れを示すのが
図1「超社会システムの定義と記述の為の空間的構造変換過程」で示したプロセスであり、まず社会に於ける物事に対する技術的な定義をした
図1のデザイン対象となる超社会システムの定義10で示した内容(i)〜(iii)を再確認する。特に留意するのはデザイナーのタイプであり、まず当事者型で論理を展開したあと専門家を導入する俯瞰型に展開する手順を踏むことにする。ステップ1〜ステップ5までのプロセスつまりステップ1;超社会システムの見取図(記述の為の空間イメージ)の把握、ステップ2;理性の働きで「原初状態(オリジナル状態)」を生存(命の原理)と判断する、ステップ3;メビュウスの輪の論理による180°捻り、ステップ4;思考空間のデザインモデル構成(超社会システムに適用)、ステップ5;思考空間のデザインモデル構成(超社会システムに適用)に拠って超社会システムの機能、役割、働きを構造的に明確化することで、一定の約束の上で構造化された形のデザイン対象の技術的な表現を獲得できることになる。デザイン対象となる超社会システムの定義10の結果11は次のステップ1とステップ2の一連のステップ12に繋がっていて、個々のステップの結果は次のステップの与件として手順が順次繋がっていく。
【0016】
図1に於ける空間変換のステップ1は超社会システムの見取図の描写つまりデザイン対象の記述のための空間イメージの把握であり、
図2「デザイン思考に於ける超社会システムの三元見取図」とその補図である補図aと補図bで示す如く物事の表の顔である実体性20を伴った物理空間100と物事の裏の顔である実存性30を有する情報空間200及び生存の基軸である実在性40の構成要素の三元表現の思考空間概念構成モデルを構成している。これら二つの空間は命の原理を伴った持続可能な生存の方向つまり「生きる」の意識空間の実在性40を社会の原初状態とする概念で結ばれていると理解されるが、空間変換過程における手順上での現段階では
図2上で物心二元論的な理解で相互に独立した概念で補図aと補図bにおいてそれぞれ表現されている。補図aで示される物理空間100における意識のスパン24を規定する超社会システム包絡線25で示されるシステム側では超社会システムの枠組み=脳の作動*社会的関係の場*社会システム(=社会システム観(社会システム体+環境)+当事者の身体性)で定義し、人間の側では超社会システム包絡線25の意識のスパン24に内包される超自我的感性の働きによる人包絡線26で示される。個の意識のスパン24を規定する超社会システム包絡線25の物理的な意味は、自己が関わる場所性を有する社会システムの未来の姿を思考の中で観ている境界を意味する事から、場所性を示す空間軸と未来を観る時間軸を関係性の場を通して把握する実体性を表現している事である。人間の枠組み=当事者の精神性*実在性*身体性(属性、参画)で定義される。超社会システムに於いては個々の人間の精神活動を個の意識で代表させてシステムの概念構成を図っているので、
図2で示した様に意識のスパンの中にシステムの枠組みに内包的に重畳した形で人間の枠組みが描かれる構造の模式図で表現されている。上記意識のスパンが観る超社会システムの枠組みの三つの要素である脳の作動21、社会システム観22、社会的関係性の場23と実体性の軸20の交点をそれぞれA、P、Q、Bと符号化し以下のステップで引用する。
図2上の補図である補図bにおいて情報空間200は情報空間の枠組み=現在の状況*関係性の場*未来への最適な道筋で定義され、これら三つの要素は実在性の軸30を共有しておりそれぞれ交点a、p、q、bで交叉している概念で表現される。ステップ1に続くステップ2においては理性の働きで原初状態を生存(命の原理)と判断する中で、
図2上の実在性40を今ここに居て未来へ向かう生存意識に関連がある意識特性と理解し、実体性20や実在性30と共有する超社会システムを規定する範囲に於ける意識の形態として生存を判断するため生存意識=自己意識+拡張意識(=当事者意識*連帯意識)の構成をとる。なお、意識の対象になる社会システム観22は意識が観る社会システム体(企業体、事業体、自治体、行政体など物理的な準システム体+身体性)と該社会システム体と個の意識との共通の環境で構成されていると捉える。なおここで言う環境自体が超社会システムや準社会体の役割や機能を有することもあり、社会は入れ子状態で構成されている事を念頭に入れておく必要がある。
【0017】
図1のステップ1とステップ2の統合ステップ12で把握した結果の見取図である
図2の変換の結果13は
図3「物事の空間遷移概念モデル」で示す物事の空間遷移概念モデルを示す
図1のステップ3;メビュウスの輪の論理による180°ひねりの手順の与件となる。
図3「物事の空間遷移概念モデル」のリング400は人間をはじめとする命あるものの生存における再生・輪廻の世界観を図式化して表現した概念図である。リング400は命が社会的な動的平衡の中で再生的に循環していることを示し、意識が働く今ここに於いて
図2で把握した社会的な物事(モノ、コト)の表裏を表す物理空間100と情報空間200の二つの空間の今ここに於ける表裏一体とした思考情報空間50が
図3の生存線40上における意識が有する関心の幅に基づく営為として認識されると考える。まず細部ステップAとしてリング400上の点線で囲まれた思考情報空間は補図である補図cにおいて今ここの切断線60で切断され、細部ステップBとして図cのリング400が表はAB線で裏はab線で切断された状態の補図dのリボン410に位相転換される。細部ステップCとしてリボン410は切断線60で切断された後で180°捻りを加えた状態の図で表現されており、次のステップの構造変換に備えた構造理解の下で注釈がつけられている。注視すべき第一の点は補図cにおいて思考情報空間50が右下がりで表現され結果として表面と透視した裏面が共に右下がりになる様に表現されていることである。これは右方向に向かう様に設定した生存線40を基準に観察すると表面では「個の意識」が起点になっていてデザイン対象の技術的な再定義の為に重要な上記第一の要件を担い、この意識のスパンが観る社会システムが後から付いて来る当たり前の社会の在り方を示し、裏面では現在の状況があって未来が後から付いてくることを示している。第二の注目点は補図d中のリボン410の左端の実体性20と右端の実存性30の方向であり、実存性30は下端bと上端aとが捻りによって天地が逆になっている事である。この状態で両端を重ね合わせ実在1と実在2を中心点としながら再接合すると、捻りの構造特性からメビュウスの輪が出来上がり表裏の概念が実在点の繋がりである関係性の軸上の一点において一つの面の上で繋がる関係性構成が為されることになる。第三の視点は全ての軸の交叉点が「真の実在」であるとするものである。第四の注視点はメビュウスの輪はデザイン思考に於ける思考の流れを表すと共に輪廻の世界の概念を象徴していることである。
【0018】
図1のステップ3の結果13である
図3の中の補図dの概念図は、ステップ4;思考空間のデザインモデル構成の与件となり、細部ステップDとして
図4「重ね合せ再接合による思考情報空間の意識特性モデル」の構成を得ることになる。
図4は紙面表現の制約により平面構成になっているが、関係性の軸は時空面と直行しているので思考情報空間は三次元構成と理解出来、同様に実体性*実存性*実在性の空間的な意識特性も三次元空間を構成している事が判明する。ステップ1とステップ2の内容から意識の機能である感性、悟性、理性の働きはそれぞれ実体性、実存性、実存性の特性や働きとリンクしていることも認識できる。これら意識の機能と働きの原点は時空面と関係性軸の立体交差の交点でもあり、
図3の生存線40上に存在することから上記の様に「真の実在」と称するものである。細部ステップEとして関係性軸の要素を時空面に投影したのが社会的関係の場の確認であり、実在性の要素を実体性*実存性の面つまり時空面に投影したのが関係性の場であることも容易に理解される。
図4は
図1のステップ5の結果17としてステップ6の与件となり、
図5「思考空間のデザインモデル構成(行為系社会単位)」と
図5の一部である意識空間600をズームアップした
図6「意識空間の機能(関係性の場の技術哲学モデル)」を得ることが出来る。
図4の表現の把握は構造的な概念単独でも意味があり、弁証法と関連付けて解釈することが可能である。
【0019】
図1のステップ5;思考空間のデザインモデル構成(超社会システムに適用)に於いて、細部ステップFでは
図4による思考情報空間の意識の作用の構造を示す結果を
図2の思考空間に写像することによって
図5が得られる。
図5の意識空間600が物理空間と情報空間を結ぶデザイン対象の技術的な再定義の為に重要であるとして上記で指摘した第三の要件としての意識空間の存在とその必要性が明示出来たことになる。
図5の表現形態は思考情報空間における「社会単位」正確には行為系社会単位と称することが出来、勿論この形態は超社会システムを意味するものであるが、デザイン思考の対象としての普遍性を備えた知的行為の表現であると共に、人間の精神活動を内包した物事の物理空間に於いても基本的な社会的要素となっている。つまり上記社会単位は超社会システムの部品的な要素であり、相互に対等な関係性の上で時間軸と空間軸によって要素間相互に階層的或はハイパー構造的に結ばれていると理解する必要がある。但し後述する様に時空軸には軸機能だけでなくシステム的要素も存在しているが、ここでは社会単位の行為系に限って説明しており、
図5で図示された行為を支える社会的な基盤系の要素に就いてはここでは省略されていることを付記しておく。
図5における関係性の在り方は連帯的であり、支配や取引を超えたデザイン思考によって新しい関係性の下での新しい価値を創り出すための基本的な機能として物事に作用出来る構造が創り出されたことを意味する。従って
図5の意識空間600の役割がデザイン対象の技術的な再定義の為の第二と第四の要件として重要な役割と働きを担う関係性の場であり、思考空間上では社会的な関係の場として機能する存在となる。
図5の表現で当事者型と俯瞰型による物理空間の捉え方が異なっている。俯瞰型でも当然当事者の意識を採り入れるのは上記デザイン原論や超社会システム定義のから当然であるが、意識の展開スパンが少し広い概念になってくる。これは
図2に於ける意識が観る社会システムの内容に変化が生じることでもある。特に個の意識の部分が個の意識による価値評価結果の時間的な積分である文化システム或は日常的な観点では文化活動と称する包括的な概念に置き換えて発想する事に留意する必要がある。そこから意識が観る社会システムも文化システムを除いた社会経済システムに読み替えて図式を理解することになる。なお意識空間の構成要員が当事者に加えてもし第三者的な専門家がシステムに参加している場合は、当事者間の調整役的な機能を果たすことになる。何れの場合も
図5の基本的な時空面上に於ける構造は不変であるが、両者を区別するためにデザインモデルとしては当事者型デザインモデル(動的平衡観準拠)と俯瞰型デザインモデル(静的平衡観準拠)とに呼称を分けておく。前者はデザインモードに後者は記述モードにおいて利用される。細部ステップGは
図5で構造化した意識空間の作用について脳神経科学や認知科学の知見を活用して関係性の場を構造化し可視化する手順を示すものであり、更に科学*哲学*技術の役割の概念を創造と構想に関わる意識の働きで読み解いた結果として
図6;意識空間の機能(関係性の場の技術哲学モデル)が得られ、思考情報空間上の意識が司る構想力の具体的な技術要素の源泉となる為、三次元構成のデザイン思考に基づく構想法の実現に直結することになる。なお、
図6には思考物理空間が併記されており、その三つの要素は感性軸を構成するニューラルネット*ワーキングメモリ(意識)*五感・五体で表現される事柄であり、脳神経科学の成果を活用するとここまで理解出来る状況にある。関係性の働きは理性の軸上で作用する判断の機能を主体に作用する中で、拡張意識の働きと哲学的な機能に拠って超社会システム全体に作用する構造を実現している。「生きることはつくること」であると理解する技術哲学も
図6に表現されており、つくる=創る*造る*作るの三つの「つくる」が機能分担して上記技術哲学が意味する事柄の働きを実現していると理解出来る。また
図6のマクロな領域分担としての情報空間においては、科学の基本機能である「知る」ことを起点として三つの「わかる」に関してわかる=分る*判る*解るがそれぞれ科学*哲学*技術の基本的な働きを有し思考全体の機能を引き受けていると理解出来る。関係性に関わる造るは一般的な機能として表現されるケミストリーとも表現される役割を持ち、建造、醸造、製造など言葉の上でもその様に複合的な意味を持って使われている。つまり
図6は思考空間の基本機能として実社会を映し出していることが判明し、
図5にズームアウトしながら内挿すれば、
図5が超社会システムの社会単位となるデザインモデルと称する意味が深化した形で把握可能になる。
【0020】
上記説明では論理的な流れを重視したため個別の用語の意味の説明が細部に亘っていない。時間と空間、個、社会システム、関係性、意識のスパン(関心の幅)、連帯、実存性、原初状態などに関するものがそれであり、デザイン思考を扱う本発明ではまず概念的な形で物事を表現していることに留意することが求められる。
図7「個の意識と社会システム観の構造」及び実施例として後述する
図8、
図9で用いている実用的な概念の時間と空間は日常的な言葉でもあるので特に留意する必要がある。まず時間軸は物理的な実時間ではなく時間経過的な概念に加えて物事や命の生存つまり生死にリンクした包括的な生存環境を与える時間軸概念の総称(内部)であり、生存に関わる状況や行為更には力や特性など様々な表現対象に関して個の自己意識が認識する内部時間概念と、個の意識が観る外部としての社会システムに関わる外部時間概念に分けて理解する中で、二つの時間的概念は同じ概念でも表現が異なる。更に、内部時間概念では社会システムが関連する個への影響要素についても考慮する必要がある。そして空間に関しては物理的な三次元的概念ではなく生存や存在に関わる場所性と深く関連する抽象化概念を意味するものであり、個の内部では知的な思考に関わる状況、力、特性など知的環境を与える内部空間概念を意味し、外部では個や社会システムの行動や思考的な影響力を有する活動などの目に見える外部空間概念を表現する事柄である。これらの定義から物理的な時間軸は内部時間概念と外部時間概念に分けて理解し、物理的な場所性に関わる空間軸は内部空間概念と外部空間概念に分けて理解する中で、更に細部の要素内容は単なる軸としての構造的な要素に加え機能と役割を有してデザイン的営為の行為系を支えるシステムの基盤系の構造要素として理解することが出来る。次に個に就いては一般的には個人を表す言葉であるが個別の個でもあるので個別対その上位組織の関係の中で個(個別)を扱うことが可能であり、また個のグループ対制度的な組織におけるグループも組織化されていない個を意味することも思考上の概念として許される。社会システムに関しては超社会システムの形態をとる場合が含まれ、更に例えばある個人の人生設計や著作も自己の外部の様々な社会的な事柄との関係性を考慮に入れれば社会システムの概念で扱うことが可能になる。次に意識のスパンであるがこれは意識的に関心を持った事柄を意識との関係性の上で表現するものであり、スパンの幅と奥行きによって様々な対象が表現出来る。個の人生、産業構造の変革、まち興しや国づくり、世界界平和など普遍的な事柄について構造を持ったものとして意識関心を払い一つの概念的な塊で捉えた物理空間の表現となる。
図7「個の意識と社会システム観の構造」は上記の個の意識のスパンが観る基盤系の物理空間上での環境を個の意識と社会システムの共通の環境として把握した上でその時空軸と関係性軸で構成される空間上での構造を説明する図表であり、デザイン操作をする際の物理空間上の超社会システムの構想体モデルを意味する。
図7において個の意識200と個の身体性とこれを内包する社会システム体300が社会的関係の場400で結ばれている構成は、
図2の補図aを物理空間上に写し取った図であり、デザイン原論中で環境と呼んでいる事柄は人間(個の意識)と社会システム体300に共通の構成要素であると理解出来、更にデザイン原論で言及している環境は生存の基盤の意味を有する働きを意味している。なお社会システム体300は個の身体性を内包しているが、個の意識と社会システム体300に共通の社会インフラである上記デザイン原論が説く環境は以下で説明する。個の意識の系列の構成要素を
図7の様に環境=10内部生存基盤1、環境30=外部生存基盤とし社会システム体300のそれを環境20=知的思考基盤、環境40=知的行動基盤と称することにして
図7の細部が描かれている。この様に超社会システムの基盤系の構成要素は、生存の時間概念性及びデザイン思考の知的空間性の理解によって、上記内部と外部両方の時間軸の概念及び空間軸の概念の理解と結びつくことが判明する。上記環境の概念の分析結果はデザイン原論が説く人間の幸せが関わる生活や産業に於ける諸活動の社会的インフラとの関連を捉えて
図8で説明する実施例において追認している。また
図7の関係性の場400に於ける行為系関係性(当事者意識)と基盤系の関係性要素(生存系関係の場)50を結び付ける役割を担うのが真の実在100であり、全ての事柄の核になるのが生存の流れに於ける今ここを切り取った実在性の中心を示す概念となる。生存の流れの中で今ここの全体像を切り取ったものが動的平衡状態にある超社会システムであると理解し定式化するものである。
図2で示した物理空間に於いて示されているのはデザインに関わる営為の行動的な要素の流れであるが、行動的な営為を支える社会システムと人間との双方に共通的に求められる基盤系の社会インフラについては、その存在が暗黙の了解のもとで無意識領域に落とした当たり前の事柄として表現が省略されている事を理解することが必要である。上記でも指摘した様に、この要素は上記デザイン原論において環境の一言で表現されている事柄であるが、以下の分析に関わる要素でもある。つまり、思考の流れをデザインするための行為系の措置を要する実際の社会的な物事の中には、社会的なインフラ自体の変革が求められることも稀ではなく、この部分の変革の為の構想設計が必要な状況も発生する。デザイン原論の定義中で環境に働きかけることの意味は、社会インフラ自体の改善も視野に入れることであると理解出来る。さて基盤系を成す社会的なインフラの役割を分析すれば、
図5上の表現で言えば時間軸と空間軸及び関係性軸上の場の要素が基盤系に該当することが判る。時間軸と空間軸は人間の内部つまり精神的な思考の場合とその外部である社会システムでは同じ時間や空間の概念でも表現が異なるので両者を分けて定義すると、
図7で示す様に環境を構成する物理空間上の内部時間軸(内部時間概念)は内部生存基盤の要素に、外部時間軸(外部時間概念)は外部生存基盤の要素になる。内部空間軸(内部空間概念)は内部知的基盤の要素に、外部空間軸(外部空間概念)は外部行動基盤の要素になる。関係性軸の時空面への写像である関係性の場における基盤系については生存系の四つの基盤要素を結び付ける生存系関係の場として扱うことが出来る。
図2に於いてデザイン思考に於ける意識自体の主要構成要素を自己意識、当事者意識、連帯意識で把握しているが、これは
図6で表現した物理思考空間の在り方とリンクしており最新の脳神経科学の知見を活用して論理を構成したものである。自己意識は生きるに直結した意識であり、拡張意識としての当事者意識と連帯意識は生きることの質を高めながら、生きる事はつくることと考えた場合の創る、造る、作るや、つくる為の情報収集に関わって分る、判る、解るの流れを感性、悟性、理性を司る意識の機能との融合で実現することを理解する。連帯に関しては様々な意味に用いられるので注意が必要である。本発明では人間と社会システムの関係性に就いて支配・非支配、取引、連帯の三つの関係性に大別した時の連帯を意味し、人格的には超自我(トランスパーソナル)の形態を示す当事者の連帯意識を想定している。この人格的特性を有していないと人間の精神性を代表する心の働きとして個の意識を扱うことが困難であると共に、物事の観察において意識のスパンを中心とした形で正しく物事を捉えることが出来ないことが指摘出来る。実存性(リアリティ)は実体性(アクチュアリティ)と対比して定義されるが、「存」は存じているつまり知っている或は分っている事柄に使われている意味を重視した非物質系の情報空間上の概念として定義し、「体」の表現で物或は物質系の物理空間上の意味を有することは常識の範囲と言えるが、物をモノとして単なる物質だけでなく該物質が持つ機能的な特性も合わせて表現することが一般的であり、本発明でもその様な理解の下で実体性を定義し使用している。
【0021】
上記の社会的な動的平衡の概念は、人間の生命体に関わる生命科学文献『動的平衡』(福島伸一;木楽舎)で議論されているが、本発明ではこれを連続的に考え人間がつくる社会に適用したものである。人間の頭脳内に存在すると云う脳神経科学文献『意識と自己』(A.ダマシオ著/田中三彦訳(講談社)で議論されるワーキングメモリの働きは、意識が働く関係性の場と同様な概念を有していると理解出来るので、該ワーキングメモリの中で流れる思考のイメージの一瞬を切り出すのが本発明に於ける意識のスパンが観る動的平衡の考え方である。該イメージが観るのは、社会の現状そのものである静的平衡観であったり、希求する未来像への道筋である動的平衡観であったりすると考えられる。静的平衡観は感性の働きを中心にして物事を観察したまま記述する記述モードの場合を示し、動的平衡観はデザイン行為そのものを示す設計モードの場合となる。設計モードでは人間の悟性は内部感覚に基づいて未来を観る想像力に働くことを理解することで、この様な仕組みが見えて来る。
図1補図aはまさしくこの結果を示した図である。
【実施例1】
【0022】
図5、
図6、
図7による超社会システムに関する思考上の情報技術的な表現としての構成と記述は、表現空間上の概念変換を伴った形の普遍性を有するが故に単純な形の実施例を掲げるとすれば、まずはデザイン結果を実務に適用する際の物理空間上での操作への展開が必要でありまた重要と考えられる。
図8「超社会システムのデザイン操作モデル」は超社会システムのデザイン時における物理空間上に於ける実務操作系の概念を示した図であり、
図5、
図6、
図7のデザイン思考上の概念をデザインや設計操作に適用したデザイン操作モデルを示している。
図5、
図6、
図7から
図8の表現へは構造的な観点で要素上の解釈が存在するので以下に説明を加えながら事例の紹介をする。ポイントは
図5に於ける時間軸と空間軸の在り様と時空の関係性軸の表現であり、数学的な軸の概念を物理的な社会基盤となる概念要素として扱う必要性を認識することである。
図2で示した物理空間に於いて示されているのはデザインに関わる営為の行動的な要素の流れであるが、行動的な営為を支える社会システムと人間との双方に共通的に求められる基盤系の社会インフラについては、その存在が暗黙の了解のもとで無意識領域に落とした当たり前の事柄として表現が省略されている事を理解することが必要である。この要素は上記デザイン原論において環境の一言で表現されている事柄であるが、以下の分析に関わる要素でもある。つまり、思考の流れをデザインするための行為系の措置を要する実際の社会的な物事の中には、社会的なインフラ自体の変革が求められることも稀ではなく、この部分の変革の為の構想設計が必要な状況も発生する。デザイン原論の定義中で環境に働きかけることの意味は、社会インフラ自体の改善も視野に入れることであると理解出来る。さて基盤系を成す社会的なインフラの役割を分析すれば、
図5上の表現で言えば時間軸と空間軸及び関係性軸上の場の要素が基盤系に該当することが判る。時間軸と空間軸は人間の内部つまり精神的な思考の場合と社会システムでは同じ時間や空間の概念でも表現が異なるので両者を分けて定義すると、
図7を参照しながら描く
図9「構想設計のための汎用格子譜の構成」で示す様に物理空間上では内部時間軸(内部時間概念)は内部生存基盤の要素に、外部時間軸(外部時間概念)は外部生存基盤の要素になる。内部空間軸(内部空間概念)は内部知的基盤の要素に、外部空間軸(外部空間概念)は外部行動基盤の要素になる。関係性軸の時空面への写像である関係性の場における基盤系については生存系の四つの基盤要素を結び付ける生存系関係の場として扱うことが出来る。次に物理空間上では行為系については
図8で示す様に五つの要素に分けて表現されており、ミッション(使命感)、場のコンテクスト(関心事の文脈・分析)、エンゲージメント(戦略・効果予測)、コンセンサス(合意)、コミットメント(実装・達成への意志)が要素の細部記述の例と共にそれぞれ図上の指定席に収まっている。操作は概ねこの要素の順に手続きされるが、行為系の常套として試行錯誤的な操作が存在することは実務上では認識する必要が指摘出来る。関係性の場に於ける行為系要素であるコンセンサスと基盤系の関係性要素(生存系関係の場)を結び付ける役割を担うのが真の実在であり、これは
図3〜
図7に於いて既に表現している重要な機能である。重ねて説明すれば、この真の実在は時空系では時空面と関係性軸の交点であり、生存系では実体性*実存性と実在性が同時に存在する場所であり、意識の機能では感性、悟性、理性が交叉する原点であると理解出来る。哲学的には「今ここに居てどちらへ向かう」を問う精神的な起点の役割を担う事柄と考えられる。
【実施例2】
【0023】
図5と
図6更に
図7や
図8に示した構造と表現はデザインの根幹の一つである構想力の源泉であることから、本発明の関連的な展開と位置付ける構想法に関わる発明(特許文献2)の与件として設定する本発明の
図9「構想設計のための汎用格子譜の構成」は、表現技術の一つの様式であり、本発明の一つの効果的な実施例として掲げる事が出来る。
図5のデザインモデルで示される超社会システムはシステム的に上位の超社会システムと独立であり、自律分散システムの位置付けでフラクタル構造の下に時間軸と空間軸の二つの軸で相互に結ばれている構造が観察できる。
図6と
図7を参照しながら描かれた
図9の格子譜に於いては、当事者が意識している超社会システム自体の外部世界、つまり今ここにおける自己意識以外の事柄或は他者の意識の観る社会システムの世界を外部世界とする事柄と繋がる時間軸を汎時間軸とし、該外部と繋がる空間軸を汎空間軸と称して夫々基盤系の要素として組込んでいる。汎時間軸は外部時間軸の外側に繋がっており、汎空間軸は外部空間軸の外側にそれぞれ繋がっていて世界へのデイ入り口となっていると理解する。
図9は本発明の実施例であるが要素表現は構想法の普遍性に伴って一般的な概念名で表現されている。
図9における構想体名とは、構想の設計においてデザイン対象とする超社会システム自体の名称であり、意識が観る社会的な物事を表したデザインのテーマの名称として理解する事柄である。
【実施例3】
【0024】
図4の表現は上記でも触れた様に、関係性を西洋哲学的な発想で捉えればこれらの意識特性の構造は弁証法の正反合の論理と密接な思考的関連があり、直交する正反の論理を実体性と実存性で代表すれば合は実在性であり、正反からの合としての止揚(アウッフヘーベン)は実在性の論理と関係性の機能に拠って得られることが判明する。つまり弁証法は三次元思考が持つ機能的な特性によって初めてその役割や働きが有効になってくると考えられる。部分的な実施であるが、
図4の表現もって弁証法の思考概念の図表を用いて可視出来る様に構造化した一つの実施例と考えることで、物事に関する弁証法的な論理展開に活用可能である。
【実施例4】
【0025】
図8「超社会システムのデザイン操作モデル」は超社会システムの実施例であると共に、構想のデザイン過程(設計)の流れを示す図表でもある。超社会システムの操作方法自体がデザインの行為系モデルであり、
図8の表現は
図9の格子譜を基本にして記述されている。この考え方を延長すれば、後述するように
図9で示す格子譜は構想設計や政策デザインなどに於ける分析、効果の予測、評価などにもシームレスな表現形態で利用できることが判る。
【実施例5】
【0026】
生命誌の流れを構築する時の概念構成に使うことが出来、
図5で示した社会単位の構成は生命の起源に遡って適用できる。A.I.オパーリン著『生命;その本質、起源、発展』(発生論)によれば、『生命の特徴は、それが空間に単に拡散しているのではなく、外界から限られた個体であることであり、また外界と絶えず相互作用し、与えられた条件の中でその連続的な存在や不断の自己更新と自己再生産とに極めてよく適合した内部構造をもつ非常に複雑な系である』と定義している。この定義は命の原理とも言えるものであり単細胞の生命体に生命の「原初状態」を定める事柄と言える。意識の形を読み替えて適用すれば人間更には人間がつくる一般的な社会システムにまで連続的に適用できる考え方であり、外界に関して与えられた条件下で関心を払うスパンの範囲ではこの外界は本発明で考える意識が観る社会システムを意味するので、オパーリンの生命の起源論は正に
図5で示した社会単位そのものと考えることが出来る。逆に社会単位の存在は、上記の原初状態に繋がる合理性を有していることになる。この考え方は更にダーウィンの進化論に結びつくものであり、
図2や
図5で示した未来への最適な道筋の概念は進化論が説く適者生存(自然選択)への道筋であり、超社会システムの営為が
図2、
図3に於ける生存線40上で為されることと連続していると考えることが出来る。