(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-117955(P2021-117955A)
(43)【公開日】2021年8月10日
(54)【発明の名称】深化型構想設計法ADDiD
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/00 20120101AFI20210712BHJP
【FI】
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-21909(P2020-21909)
(22)【出願日】2020年1月27日
(71)【出願人】
【識別番号】519343364
【氏名又は名称】石黒 広洲
(72)【発明者】
【氏名】石黒 広洲
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】構想力と創造力に拠って何かを産み出す事が産業の基本であることを前提にした上で、デザイン思考の対象として注視する社会システムに関わる新しい構造を発想して創出しながら、構造化、可視化するデザインの表現技術によって設計図の図表描写を行う深化型構想設計法ADDiDを提供する。
【解決手段】格子譜の記述内容に対して記述文法を適用して構想譜上におけるデザイン思考によるデザイン過程を進めた上で、思考情報技術の活用によって空間転換して物事の未来像を物理空間概念で表現される形式を意図しながら、構想機能付き電子計算機のソフトウェア画像或は一般的な紙面上に一瞥出来る様式で描いた構想譜を図表の形で構造化、可視化して設計することにより、該構想譜の内容に従って社会システムのデザイン業務の運用を情報技術的に操作することが可能になり構想作業の効率を改善する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連帯型社会の考え方を核にした個(個人或は個別組織;有機体)の意識と社会システム体とを結びながらこれら両者の間の情報の授受を行う知的な関係性の場から構成されるところの、思考情報的な特性を有する連帯型の構想体モデルである超社会システムを想定した上で、該構想体モデルを記述する機能を備えた格子譜を所与の条件とした構想機能付き電子計算機のアプリケーションソフトとして働く図表作成ソフトによる構想譜の構成法であって、
上記超社会システムである構想体の表現を可能にした白紙の格子譜上に、変革への構想や政策デザインを要求する構想体の名称を明確に定義した上で、
該格子譜の各格子に対して内容記述に関する基本記述文法、構造記述文法、要素記述文法、操作記述文法から構成される記述文法に従って日常語と専門用語からなる自然言語表現による構想内容の構想譜への記述と、
上記関係性の場に於いてはこれを意識空間と認識した上で意識の統一場の論理を適用して連帯型の意識作用が働く様に、課題解決に向けた変革の為の主要な社会的操作となる使命(ミッション)、場の文脈(場のコンテクスト)、戦略と政策(エンゲージメント)、合意(コンセンサス)、約束としての覚悟と責任を伴う行動宣言(コミットメント)の概念を表現する要素内容の記述と、
該要素内容を自律的な個の意識を起点とする超社会システムの構成と作動の確認によって統合的な動きを調整可能にする記述文法の全体構成とによって、
個と社会が連帯性をもって関係性を築く中で社会を構成する要素を必要かつ十分性を織り込むべく試行錯誤を含めた思索の深化を受止める形式を有する構想譜の表現形態により構想を設計可能にする深化型構想設計法ADDiD。
【請求項2】
請求項1において、時間軸概念と空間軸概念とこれら両軸の関係性軸概念が作る三次元表現を擬して模式化した格子構造を有する平面的図表上に描く情報技術的な構想アルゴリズムを有する概念構造を有し、格子譜の内容記述に関する基本記述文法、構造記述文法、要素記述文法、操作記述文法から構成される記述文法に従って図表化して記述・設計することを可能にした、図表様式の格子譜を所与の条件として構想内容を構想譜の形で図表化表現する構想設計の具体化方法であって、
図表の横軸に時間軸概念を縦軸に空間軸概念を設定し両者の交叉部分に一つの格子を割当てて関係性の場を構成する格子状要素表現から成る格子譜図表を擁し、時間軸概念と空間軸概念を両者の間に入った関係性の場で夫々二つに分割することで得られる時空の四つの部分軸概念の一方の内部時間軸概念と内部空間軸概念を内部軸系とし、もう一方の外部時間軸概念と外部空間軸概念を外部軸系とすることによって構成される四つの主格子と第五の主格子である関係性の場が構成する構造的セットを行為網とし、該行為網内の内部時間軸概念*内部空間軸概念が作る主格子を個の意識に割当て、外部時間軸概念*外部空間軸概念が作る主格子を社会システム体に割当て両者が関係性の場を介して対角線上に結ばれる形に構成し、
更に内部時間軸概念*外部空間軸概念が作る主格子を社会的記憶の覚醒とし個の意識と社会システム体を結び付ける構想時点に於ける社会の全体的な様相を意味する事柄で構成される要素とすると共に内部空間軸概念*外部時間軸概念が作る主格子を個の意識と社会システム体を結び付ける構想の当事者自体が希求する未来像への方向性を示す未来進化戦略を表現する要素として認識し、
上記五つの主格子内の表現を前提とした上で、四つの内外時空軸概念表現を単なる数学的な軸概念で捉えるのではなく、物理的な帯状もしくは管状の構造的要素とする基盤肢要素の格子として理解し、五つの主格子と同格の四つの準格子の記述方法を用いて表現する思考デザインモデルを社会的なモデル表現に転換した形の構想譜を想定した上で、
上記各要素の五つの主格子及び四つの準格子の中に夫々の要素概念を構想体モデルの内容を受止めた形で自然言語を用いた構想譜として明記する上で、所定の細部記述文法を適用しながら内容記述の部分に対して日常語或は専門用語による自然語表現もしくは必要に応じて格子譜上に図表化記述された格子譜表現を用いて要素記述し構想譜を得ることを特徴とする構想設計に関わる図表化表現の方法である深化型構想設計法ADDiD。
【請求項3】
上記請求項2に於ける個の意識の要素を社会の現状に対する問題意識或は変革意識などを関係性の場に対する反発的な精神的なエネルギーと見做して構想をデザインモードで操作する如く上記所定の記述文法に従った請求項1、請求項2の手続きを適用した構想の図表化を行うモードと、前記請求項2の個の内部時間軸と内部空間軸から構成される格子状の部分に対する記述モード時の扱いでは個の意識の要素ではなく社会に蓄積された文化的な心に関わる文化のモードの要素表現に割当て、構想の各要素に関して現状もしくは未来の状況を描いて図表化する如く、上記所定の記述文法に従った請求項1、項2の手続きを適用して図表化を行うモードの二種類の使用モードに応じて選択して使い分けて該要素を図式化する方法或は、
前記請求項2の関係性の場に於ける関係性を、統治型、取引型、連帯型の種別の中で連帯型を主眼に設定した連帯的関係の場と表現した上で、上記請求項1、請求項2の手続きを適用して構想の図表化を行う方法あるいは、
必要に応じて九つの要素の一部の要素に於いては取引型の関係を関係性の場の特性に設定して構想を成立させる如く選択的に関係性モードを設定して、上記請求項1、請求項2の手続きを適用して構想の図表化を行う方法或は、
上記請求項1、請求項2に於ける関係性の場の中で連帯型を細分化し、時空軸の関係性を表現する基盤肢系の関係性要素と、請求項1で扱った四つの主格子で構成する行為網系の関係性要素との、両者を結ぶ連帯の核として実在性を保証する真の実在を構想に関わる個の当事者意識に設定して構想のプロセスを遂行する中心的要素を明確化した上で、上記請求項1、請求項2の手続きを適用して構想の図表化を行う方法あるいは
上記請求項1、請求項2において、格子譜を構成する九つの格子自体を構想体に設定した入れ子状態表現したり、各格子に記述する内容記述部分の細部項目自体を構想体と認識したりした上で、上記請求項1、請求項2の手続きを適用して構想の図表化を行うに際して、構想譜を構成する九つの格子が表現する記述要素の中で全体的なデザイン上必要と考えられ更に図表上スペース的に可能な範囲において、記述される特定の記述要素に関して通常は自由な表現が許されている形を保持する中で、自然言語記述の要素内容をズームインして格子譜構造の全体的或は基盤肢と行為網のどちらかの表現を選択して記述内容に置き換え構造化・可視化した表現を採用することが出来るものであり、表現スペースが許される範囲の同一図表上で合体的な階層記述に関して構造上相似形のフラクタル構造化をシームレスな形で表現する方法を、
必要に応じて同時または選択的に設定して上記請求項1、請求項2で規定する手続きを適用して構想の図表化を行う方法による深化型構想設計法ADDiD。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
自然科学と社会科学とをハイブリッドに組み合わせて文理融合した新しい形態の社会技術に属し、物事に対して人間の持つ創造的なデザイン思考が生み出す表現情報を図表化することで構造化・可視化・言語化した構想設計を可能にするための思考情報技術と表現技術を提供するものである。より詳しくは、人間の精神性を司る個の意識を内包する実社会に於ける物事の構造を在るが儘に認識し、情報空気案上で時間*空間*関係性の三次元構造を有して構成される実社会の人間の営みを写像した超社会システムと称する構想体を、思考情報空間上に投影して文法を有する格子の配列で概念構成する白紙の格子譜で表現する。該格子譜上の各格子の記述文法をデザイン思考の定式化の過程で得られたデザイン思考エンジンによる意識の統一場の論理で空間変換し、格子譜を構想譜の形に転換する思考の変換と表現の技術を用いて、構想体の記述モデルとデザインモデルとして構想を設計可能にするもので、社会技術としての創造的な思考情報技術の開発が為された。この思考情報技術は関連発明で得られた構想に関わるデザイン思考と超社会システムに対する個別技術を統合したものである。
【背景技術】
【0002】
これまで「構想は設計出来るか?」と云う問いに答え得る情報技術が存在していなかった。そもそも構想と云う事柄が未来をつくる(例えば、下記非特許文献1)ために社会技術を用いて設計出来ると考える概念そのものが存在しなかった。しかし「構想力」に関しては哲学の領域で既に論じられていて行為や技術との関係も含めて必要な知見が得られているが(例えば、非特許文献4)、具体的な技術的手法への転換は見られない。しかし、哲学的発想の存在を認めるとすれば、構想に関わる技術が存在し得ないとするのは早計である。ここで辞書を引用して整理すれば、構想とは「これから行おうとする物事の全体の内容や実現方法を考え、その骨子を体系的にまとめる行為、またその考え」と定義出来る。一般的に、構想は上記定義の後者の「考え」の範疇である包括的な全体性を表す概念として用いられる。前者の体系的も概念的であり、どの程度構造化出来るかは不明である。更に一歩進めて用語としての構想が特許でどの様な意味で用いられているかを検索すると、設計という行為群そのものを包括的に表現する上記定義における「考え」の範疇で使われており、構想の方法論自体が技術的に扱われるケースは特許の段階では存在しない。一方で、社会の情報化が進展し物事の在り様が多様化して複雑になるにつれて、人間のデザイン思考に限界が生じる。この人間の思考限界に対応するためにAI(人工知能)が適用されるケースも出現している。これは物事を分析するつまり「知る」ことに適用出来るとして物事が「分る」状況になったとしても、新しい物事を「つくる」ことに直接役に立たない。次にAIが出したデータ分析に対する答えを人間が正しく解釈して判断し状況として「判る」ことが必要となる。更に次の段階の「解る」つまり課題解決への戦略的な道へと導くのも人間の作業になる。そこで、物事の未来像を描く構想の作業に於いて当事者自身の「個の意識」と外界である「社会システム体」及び両者の関係性から成る3つの異質な要素を統合して未来像を描くことを考える中で、当該する意識の持ち様とこれをどの様に評価するかが問われている。
【0003】
哲学的な知見示す構想力(例えば、非特許文献4)の議論では自律的な意識と感性を構想力の源泉に挙げており、構想力が非決定論的であることを示唆している。構想が技術的ではあっても純粋な技術になり辛い要素があり、設計対象にするには工夫が必要と判明する。従来ここで指摘する3つの異質な要素を同列にならべて対等な関係を情報技術的に理解する発想が存在しない。社会システム論の領域では横軸尺度に手段と目的を、縦軸尺度に内的と外的とを用いた2次元思考(例えば、非特許文献2)が議論されてきたが、ここでは縦軸と横軸が数学的に直交していない不備に加え四つの格子を結ぶための独立した関係性の場の概念が存在しない。そもそも内的と外的の尺度には手段と目的の要素意外に原因と結果の要素を内包しているのが現実であり上記社会システム論では次元が縮退しているので、発想の一つのヒントにはなるがそのまま利用できない。またニュートン力学と並ぶ西洋文明の根幹をなす西洋哲学で定義されている弁証法では、正反合の三元的要素で物事を考える形で定式化されている中で、合(統合)を「止揚」で表現しているものの、三つの各要素の数学的次元と相互の関係性への言及が無く哲学の観念領域にあるため、人間の超自我を含んだ意識(例えば、非特許文献10)までを扱う思考情報技術への転用はそのままでは難しい状況にある。一方の東洋の哲学の根幹を成す華厳教学では意識に係る「関係性」を重視する中で関係性の帰結するところを「梵我一如」の発想で一つにまとめてしまう観念的論理に則っている(例えば、非特許文献5)が、それ以上の情報技術的な展開が困難なことから構造的な発想になり辛い。これを受けた専門的な考え方が関係科学の領域で進んでいて現代物理学との融合方向にあるが(例えば、非特許文献6)、未だに概念提供の段階であり実用的な観点からは技術系独自の発想が必要である。従って、様々な科学的な知見を哲学によって結び付けて情報技術に転用することが求められているとして、ニュートン力学的な発想では上記の技術的限界を超える事は難しく(例えば、非特許科学8)、今後は現代物理学である量子力学の知見(例えば、非特許文献8)を情報技術の考え方を媒介にした上で脳科学に於ける意識に関する知見(例えば、非特許文献9)も統合して情報技術を応用した社会技術の形に転換することが必要である。その際、思考情報技術の特性として段階的な発展を展望することになり、本発明はその嚆矢と為り得る革新的な試みである。
【先行技術文献】
【0004】
新しい領域のため先行技術がほとんど存在しないので、関連する一連の発明を示す特許文献以外に本発明の技術的な説明の基盤となる諸科学領域に於ける文献の考え方の不備を補いながらヒントを得ている。
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許願 整理番号 HISHIR2−T11
【特許文献2】特許願 整理番号 HISHIR2−T12
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】社会科学;断絶の時代(P.Fドラッカー著/林雄一郎訳;ダイヤモンド社)
【非特許文献2】社会科学;文化システム論(T.パーソンズ著/丸山哲央編著;ミネルヴァ書房)
【非特許文献3】デザイン論;デザイン原論(河北秀也著;新曜社)
【非特許文献4】人文科学;構想力の論理;三木清全集第八巻(三木清著;岩崎書店)
【非特許文献5】人文科学;華厳経を読む(木村清孝著;NHK出版)
【非特許文献6】自然科学;量子力学と意識の役割(竹内忠雄監修;たま出版)
【非特許文献7】自然科学;生命誌とは何か(中村桂子著;講談社)
【非特許文献8】自然科学;断片と全体(ボーム著/佐野正博訳;工作舎)
【非特許文献9】脳科学;意識と自己(A.ダマシオ著/田中三彦訳;講談社)
【非特許文献10】脳科学;トランスパーソナル心理学入門(諸富祥彦著;講談社)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生態系の持続可能性にまで深刻な影響を与える地球環境の変化や地下資源の枯渇によるゼロサム社会の出現更には成熟化社会に於ける量から質重視への転換など人類全体的課題が山積する現代社会において、都市や地域或は国の産業や経済に於ける社会的、経済的な環境変化に対応するための産業構造変革やSDGsへの対応更には地方経済活性化の対策としてのまち興し例えば地方創生の様なマクロな社会的物事に関する社会的な課題に対応して、様々な領域や分野の全体性を保ちながら統合的に変革する必要性が出現している状況で、これらに関係の深い学術、環境、生活・文化などの要素を含めた社会問題や社会的イノベーションに関わる企業、自治体・行政体の経営問題や政策デザインに関する発展的で未来志向の構想・設計及びその爲の分析・評価の用に供する体系的な構想法つまり統合的・合理的な情報技術的方法論が存在しないので、端的に言って物は扱えても産業構造或はまち興しの様な情報論的な事柄を知的生産性の確保をした状態で扱えない状況にある。過去のデータを用いて問題解決の目標となる未来を予測する事が合理的な処方として一般化しているが、これはあくまで3年から5年程度の短期的な対処法に過ぎず、人生百年時代への統合的な構想と評されるものとは言えない。この状況を打開するには半世紀前にP.Fドラッカーが『断絶の時代』で「未来は予測するものではなくつくるものである」と指摘したことを受止めることになる。つまり意識の持ち様や物事への思考方法については予測に頼る方法ではなく、必要条件に加え十分性を確保しながら「未来をその様に創れば良い」を構想し合意を得て仕組みを動かしていく方法に改める必要がある。この方法論が判らない為に、世のリーダ達は自信を持った形の行動を起こせないでいる。
【0008】
一方で、従来型の量と物中心の科学技術万能の時代から物事の質を重視した文明転換期を迎える中で、産業構造そのものを変革していく必要があり国を挙げて「地方創生」に取り組んでいる。しかし、超社会システムを扱うための現状の情報技術が未熟なため人間社会の明確な未来像を描くことが困難であり、産業や経済面での社会的課題や経営問題に対して部分的な取り組みしか出来ていない状況にある。ここで重要になるのが人間同志の経済的格差だけでなく企業の大小による格差や産業間の盛衰にも関わる格差まで、個人の問題だけでなく人間が作っている社会システムに関わる両面的な現象の存在への眼差しである。この現象は、あちら立てればこちらが立たず的なものであり、まず分断(断絶)が発生した結果として格差が生じている現象になっている。産業の発展には社会を構成している基本としての人間を「個の意識」で捉え、意識が捉える社会システムに就いて三次元思考の情報技術を強化する観点から有機的な超社会システムの形で認識して表現することが求められる。この部分の詳細分析は関連発明2においてなされている。社会的課題に対して個々の人間が当事者意識に基づいて思考情報技術的に観察し、自分事として関心を深めることがもう一つの課題であり、人間の意識の持ち様を構想法に組込むことでWin−Winの状況を創り出す思考情報技術の成立が望まれる。AI技術(人工知能)が喧伝されるが問題はもっと深い処にあるので、深化した三次元思考の設計理論に期待が掛かってくる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
50年以上も棚上げされて来た構想法の体系化つまり未来を「つくる」社会技術としての情報技術への展開に関しては、発見と発明の二段構えの発想に基づくブレークスルーつまり価値の転換に繋がるイノベーションが必要であり、思考技術への量子力学的発想による観察理論の適用、意識や思考と情報に関わる脳科学の発見の活用、生命誌(非特許文献7)が語る「命の原理」の適用、社会心理学上の超自我の発想など科学的なパラダイムの転換を発想に組込む中で、これらを思考情報技術の世界に呼び込んでいくことが必須となる。より詳しくは、その中で重要な要素が生命誌に基づく38億年を経た命の原理を合理性の根拠とする「個の意識(内部)」と「社会システム体(外部)」及び相互の「社会的関係の場」の三つの要素で構成される「社会単位」の概念で把握できることを確かめ、この社会単位が個の意識が関心を持つ具体的なテーマによってモデル化された構想体として扱われることになる。そこで構想の対象となる複合的且つ階層性を有する社会の物事に関する構成と記述を本発明の関連発明である特許文献2「超社会システムの構成と記述の方法」に明示した如く超社会システムの形で構造化・可視化して記述する方法が必要である。上記特許文献2の実施例の一つである格子譜を与件の一つとして採用し構想法に展開する。
【0010】
上記個の意識を構想法の基本に組込むために、デザイン思考エンジン(特許文献1参照)に於ける意識空間の機能を本発明のもう一つの与件として取り込んでいる。与件とする前記超社会システムの記述方法である格子譜とデザイン思考エンジンの基本である意識空間の機能を融合させた上で、格子譜に対して具体的な構想体の情報技術な観点で捉えた基本記述、構造記述、要素記述、操作記述に関わる記述文法を設定することで、具体的な構想譜への展開がなされ構想譜上に構想を設計する手法が確立出来る。そこで考案された方法論が、思考情報的な特性を有する連帯型の構想体モデルである超社会システムを想定した上で、該構想体モデルを記述する機能を備えた格子譜を所与の条件とした構想機能付き電子計算機のアプリケーションソフトとして働く図表作成ソフトによる構想譜の構成法である。連帯型(Associational;本発明の表記)の意識による関係性を基本に構築された社会システム(Social System)を構造化、可視化、言語化して記述(Description)することで構想を2.5次元表現した構想譜の図表様式を用いて、デザイン対象の構想体を設計(Design)する手順を有する基本構成を有し、更に
(a)全体像の記述と設計の間及びその時の全体と部分の展開をもシームレスに移行可能に出来る様に原則一枚の図表で構造化且つ可視化して表現する中で、
(b)構想を設計可能にするため時間、空間、連帯的な関係性の場で思考と思索を遂行する三次元思考法を組込むことで網羅性と十分性を確保しながら、
(c)これまで実現出来なかった人間の意識を起点とした上で人間の意識の働きを内包する、連帯意識で関係性を構築する社会システムを取り扱える可視化された図表表現中心のデザイン論理を構築し、
(d)自然科学、社会科学、人文科学領域の構想関連分野の知見を生命誌の論理の下での合理性で読み解いて思考の根底に置き、東洋の哲学である華厳教学で物事の観え方と関係性を読み解いた文理融合型の特性を明らかにし、
従来の一般的な構想法に比してデザイン的方法論を深堀りした深化型(in Depth)であると捉えて構成することを可能にした上で、連帯を核とする深化型構想設計法を
Associational social system
Description and
Design
in
Depthの英語表現からADDiD(下線部分抽出)と略記し、深化型構想設計法ADDiDと総称して構想設計の方法を確立することで、デザイン思考分野の不都合な情報技術の未熟な状態を解消する方法を提供する。本発明の与件(関連発明)をまとめておく。
【0011】
上記の社会単位は人間の精神性を内包した有機的な社会システムを構成する「超社会システム」の構成部品的な特性を有し、人間の精神性は個の意識とその特性である感性・悟性・理性に関わる機能によって特徴付けられている。ここで言う有機的とは社会システムの中に人間の精神活動を内包している形態を意味すると共に、構成要素の論理に非決定論的な特性を有するものと考えことを意味する。関係性の場を全て論理的に扱うことは出来ないので、関係性の場の論理を非決定論的であると理解して人間の知恵に拠って関係性上での合意を確保する構想知と捉えることであり、デザインのアート性つまり芸術的要素を組込むことを前提とする。なお本発明で引用した上記二つの関連発明(特許文献1、2)に共通的な原理が存在し、それはデザイン原論(非特許文献3)が説く『「デザイン」とは、人間の創造力、構想力をもって生活、産業、環境に働きかけ、その改善を図る営みと要約できる。つまり、人間の幸せという大きな目的のもとに、創造力、構想力駆使し、私達の周囲に働きかけ、様々な関係を調整する行為を総称して「デザイン」と呼ぶ。』の定義である。本発明の与件として採用した上記デザイン原論から導かれた個の意識と社会システム及び相互に対等性を有しながら結び付く社会的関係の場から成る三次元の物理空間上の構成体とする自律分散型の超社会システムを思考情報空間に写像した構想体の記述モデルである
図1で示す格子譜自体は、画面や紙面上で扱えるよう一枚構成の面状の表現を採用する。またもう一つの与件は上記デザイン原論から導いたデザイン思考エンジンを規定する意識空間の構成を示す
図2である。
図1や
図2の関係性の場は三次元構造におけるの関係性軸を二次元面上に投影した2.5次元的な表現として理解した上で活用することが記述文法上の条件となる。網一つに
図1の要点は、人間の基本的構造に関するデザイン思考上で理解すべき思考情報技術の要点は、当事者の存在の精神性、実在性、身体性への三元的認識である。身体性は社会システムに物理的に内包されると認識出来て、当事者の身体性と一般的な社会システムと合わせて社会システム体と称する。この認知的把握の方法は上記関連発明2に於ける発見的な事柄であり、情報技術的なブレークスルーである。この発見に既知の事柄として定式化された意識の三つの要素としての感性、悟性、理性の特性を重畳させてモデル化がなされ、
図2で示した最深部に真の実在が構える意識空間と意識の統一場が定義されている。
図2は
図4で示す構造記述文法の根底を支える役割を有していて内容が引用される。
【0012】
格子譜が構成するオブジェクト指向の言語を用いる形の構想を構想譜の形態で構造化・可視化して図表で表現することによって、少なくとも以下の具体的な効果及び示唆的な効果を得ることを構想法の存立価値として評価出来る。
(1)構想体の形成に当事者の意識を組込む仕組みにより、当事者が責任と覚悟を持って構想を操作しその内容を遂行することが可能になる。そこから社会システムの側にも同様な論理が生じるのでWin−Win型社会の実現に近づく。
(2)格子譜の定式化に際して時空軸とこれらの関係性を用いて記述するで、複雑な事柄が相互に絡み合う現実社会或はその部分である日常的世界を手段と目的や原因と結果の組合せと相互の関係性を合理的且つ合目的的に把握して正しい処置を施すことが容易になり、論理的な正統性と健全性が向上する。
(3)格子譜の構造を細分化して基盤肢と行為網の組合せで物事を考えることにより、複雑な事柄が相互に絡み合う現実社会或はその部分である日常的世界に対して、実体性、実存性、実在性の三つの切り口で正統性・健全性を確保しながら合理的且つ合目的的に把握して表現出来るので、構想から計画策定更には計画遂行の中で効果的な本質的処置を施すことが可能になる。なお実体性、実存性、実在性の特性と機能に関しては上記でも説明した様に特許文献1(
図6;意識空間参照)から引用した上記
図2(意識空間)で別途解明されている。
(4)人間を内包した物事の記述を可能にしたことで、産業・経済の基礎や起点になっている人間の正統性ある生き方やライフスタイルにまで遡って把握するが出来るようになり、上質な社会へ前進する可能が増大しこれらが産業・経済の発展に好ましい価値的循環をもたらす。
(5)各格子の「関係性の場」に物事に対する人間の意識や意志に関わる非決定論的な部分を集約し、その場に対して当事者の合意形成を集中的に操作し調整する、本発明による構想法の普遍化によって各種領域における物事の構想設計が可能になり、国づくり戦略やまちづくり施策など非決定論的な人間の意識や意志が決め手になる事柄に於いても、従来漠然と捉えられていた事柄に対する未来像の設計に対して確信を持って実施することが可能になる。ここから、人生100年時代に相応しいる国家百年の計そしてその先の縄文時代から続く万年の日本文明のその先の未来を築くビジョンと構想に繋がる発想が生まれ易くなる。
(6)格子譜に拠って具体的に実現した三次元デザイン思考の確立により、従来扱いが困難であった人間の精神性を含む社会的な物事を構想譜によって正確に記述して技術的に表現出来る思考情報技術が提供できるので、AI技術で懸念されている人間の意志を超えた行動による闇の世界であると言われる「ディストピア」状況を制約する光の世界の意志による社会技術に関わる社会的正義に対する根拠を示すことが可能になる。
【0013】
(7)デザイン思考に関わる物事を初期段階から系統立てて扱う領域の正統性を担保するため、生命の発生論に準拠する三次元思考法に基づく表現技術を確立することにより、現実の無定形な社会をモデル化し構想体と名付けた形ある構造体として扱うことが可能になった。これを基盤肢と行為網に分けて構成することで、現代物理学の領域を組込む試金石の役割を負う事が可能になり、基盤肢に関して思考上の運動エネルギーを持つ形あるモノに比定し、行為網を精神的な摂動エネルギーに比定して特殊相対性理論から連続性を有する概念に関わる技術的な解釈を得ることが出来る。特に現代物理学の量子論と連続した発想に基づく摂動エネルギーの存在とエネルギー準位の働きを社会科学に適用する学問的発展に結び付く事を期待したい。人間の意識の働き、超自我の社会的特性、構想体のモデル化、構想行為の理論化など、人間の社会的な行動についての思考運動の形体論や精神的活動に関わる人間の頭脳内の思考エネルギーや摂動エネルギーを扱える現代物理学を思考物理空間論(学)の領域と仮に称するとすれば、本発明はこの分野を開拓する手掛かりを与える。
(8)上記三次元思考の効果に関しては、産業や経済など社会的な出来事を一次元思考で表現するワンイッシュウ型のニュートン力学の論理に基づく物事への発想に拠って表現が単純すぎるが故に言葉足らずになったり説明不足になったりする不都合を、三次元化による説明要素の追加によって社会技術的に解消することに効果を発揮できる。この発想は経済成長の在り方を質から考える場合や社会の構造を一方面から見て分断と論じる発想の解消などにも適用可能である。
(9)これに関連した空間論でいえば、通常の物理空間と情報空間との交叉空間を意識空間と称し、これら三つの空間はデザイン思考に於いて当事者意識が観る思考情報空間を構成すると共に、一般的な表現で言う超情報空間の一部を成すものでもあることを示唆する根拠を与える効果を有する。
(10)人間の意識と生態系が超社会システムの目的項である事が明確になり、人間社会が自然環境と一体的に運営されるべきことを示唆する。
(11)上記で触れた連帯性への取組の中で取り上げたグローカル哲学の発想は、国内では地方創生の根幹であり、国際的な関係性においても活用されている哲学である一方、原初状態の社会的な正義(善)の論理に照らして当然連帯的な互恵であるべき関係性が一方的に近い取引に陥っている状況から脱却するための社会科学的な理論的根拠に為り得る。科学技術基本法にリンクした付帯的な効果として事柄を扱う発想につながる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の所与条件とする格子譜の構成を示す図である。関連する発明から引用したデザイン対象を規定する図の意味を有する。
【
図2】意識空間を説明する特許文献1からの与件としての引用図である。
【
図3】格子譜/構想譜の構造化文法の基本的枠組みを示す図である。
【
図4】格子譜を構成する基盤肢と行為網及び両者を同心円状に階層化する構造記述文法を示す図である。
【
図5】記述文法の詳細な要素記述文法を図表化した
図4の補足である。
【
図6】記述文法の記述な操作記述文法を図表化した
図4の補足である。
【
図7】構想譜設計機能付き電子計算機の機能構成を示す図である。
【
図8】構想譜の実施例を示し基盤肢の内容を中心に例示した図である。
【
図9】構想譜の実施例で
図6の続きの行為網の内容を追加した図である。
【
図10】
図7「改善意識の発露」部分をズームインし詳細化した図である。
【
図11】
図8の「暮らし易い地域環境作りの骨組み」部分をズームインして詳細化した図である。
【
図12】
図7の「産業構造の転換」部分をズームインして詳細化した図である。
【
図13】デザイン対象の汎世界イメージモデルを示す思考実施例図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
構想を効率的且つ効果的に進めるための構想譜を得るのに必要なことは、本発明の与件である
図1「汎用格子譜の構成」から得られる格子譜の各格子の基本的な定義を前提にした上で、
図1上の関係性の場に
図2「意識空間の機能(関係性の場の技術哲学モデル」で示した意識空間内の意識の統一場を適用しながら、各格子の要素に関わる思考の流れを受止めて構想過程を適切に構成する事にある。具体的には、個々の超社会システムとしての構想体を記述しデザインする構想譜のための記述文法を規定することである。構想譜の記述に際しては、
図5の要素記述文法で定義されている様に「使用言語;自然言語(日常語+専門用語)...単語、単語群、短い構文」を守ることになる。構想譜はオブジェクト指向言語であることから、階層化とハイパーリンク機能を駆使しながら構想譜を適切に描くことでによってそのまま構想が組立てられることに留意する。
【0016】
構想譜を描くための
図1の格子譜への記述に関わる構造記述文法を明らかにする
図3「格子譜/構想譜の構造化文法の基本的枠組み;基本記述文法」には、時空軸要素の定義と行為系要素の定義を示す表が付加されており、更に図表様式の構造定義の2.5次元表示と合わせて白紙の格子譜を活用して構想譜を構成するための基本記述文法を与えている。
図1及び
図3には説明のため煩雑さを避けて既に基本文法は付加されている。更に、
図4「基盤肢と行為網の枠組み;構造記述文法」は三つの補図で構成して
図1で定義した格子譜に関する高位の構造記述文法を与えるものであり、補図cは基盤肢を補図dは行為網を構成する要素群として夫々結節場と作用場において
図4で示す様に各構成要素と結ばれており、これらは
図4の関係性の場において示す如く、真の実在から発する当事者意識によって相互に関連付けて調整される様に操作される。
図4で示す基本的な文法の枠組みとの関連で記せば、
図4補図cの基盤肢は同補図dの行為網を支える全体的な思考運動エネルギー系の要素群であり、補図cの▲1▼と▲2▼は時間系の要素として行為系に効用的作用を付与でき、▲3▼と▲4▼は空間系の要素として行為系に作用を及ぼし▲5▼結節場は▲1▼〜▲4▼を結び付けて行為系の作用を統合化する役割を持つ。補図cの結節場の構造=時間軸*空間軸*関係性の場で構成され、補図dの作用場の構造=実体性*実存性*実在性で構成される。補図d行為網の役割は一般的な構想操作を詳しく表現する構造記述文法であり、意識の働きによって思索的な摂動エネルギーを生み出す要素群である。通常の物理空間と情報空間の交叉部分である関係性の場を構成して技術哲学モデルを与える当事者意識の働きを定義する意識空間に就いては別の特許文献1から引用した
図2の図表に拠って意識の統一場として説明されおり、以下の説明でも適宜引用する。個の意識を▲A▼に設定するのは、「個起点」の思考・思索の目的性を示す発想であり、
図2の意識の統一場の論理が適用される意識の働きに拠って、
−▲A▼・▲E▼・▲D▼は実体系;想いを形にする感性(感情、情動)の働き
−▲B▼・▲E▼・▲C▼は実存系;物事の様相がわかる悟性の働き(現状、進化の根拠)
−▲E▼そのものは実在系;関係性は生存を確かにする理性の働き
となり、自律的な「個の意識」の標準的な流れの▲A▼〜▲E▼は一方向に流れるのではなく、意識の働き(作用)によって標準的には関係性の場である▲E▼を核にした次の様な流れを構成し、“どちらへ向かう”の思索的な方向性を「つくる」働きをする。意識の流れは希求(現状への反発力から来る改善や変化の意識)から覚悟と責任を伴う約束事としてのコミットメントに向かう精神的な摂動エネルギーの流れとなる。
図4補図e「階層表記図」は関係性の場の論理を図で表したものであり、自己の最深部に存在する真の実在を核とする関係性▲5▼で結ばれる基盤肢を関係性▲E▼として同心円状に構成される行為網▲A▼〜▲D▼が、上位の関係性の場として働く関係性軸の階層的構成と役割を描いている。
図3と
図4の各要素の詳細な要素記述文法を定義するのが
図5の表が示す要素記述文法であり、構想の操作上の流れを規定するのが
図6の表形式で示す操作記述文法である。表形式で示す
図5は
図3の基本記述文法を詳細化して再定義したものであり、同じく表形式で示す
図6は基盤肢と行為網の関係操作を細部に渡って定義するもので、これら相互の関係性の中で進行するデザイン思考の流れを構想過程に於ける自律的な当事者意識の働きによる標準的な流れの理論として図表表現で文法定義している。基盤肢と行為網を結ぶのが真の実在であり、実在の本質的根拠とする真の実在の概念は命の論理に基づく実在の根底にあるものであり、
図2でも位置づけと役割が明記されている。
図6の<当事者意識の流れ>としての具体的な構想過程(デザイン過程)の操作に於ける基本的なステップは次の様に規定される。流れの中で、希求事項への関心は維持され、ステップ毎に順次精神的エネルギーが高まって行く。行為網の流れの基本は関係性▲E▼を核にして、▲A▼、▲B▼、▲C▼、▲D▼の順序で行為系操作が流れる中で、関係を制御する意識のステップを踏み各要素の主要行為が引き出される。これらの意識の働きと流れそして関連する行為の総体が知の統合を示すプロセスであり社会的操作となる。
【0017】
重要なことは、当事者意識の流れの中の主要行為の一つの観察に関わる重要な原理が存在することである。つまり、連帯型構想体モデルの成り立ちに関わるもので当事者の問題意識から発する複雑な様相を示す物事への関心と注目を前提とする思考情報空間に関する意識のスパンが大きな枠組みとして存在するため、観察がニュートン力学的方法では観察そのものが不能となり、量子力学の摂動理論から派生する観察理論の適用を基本的な原理として受け止めることが必須と考え、これを
図5▲6▼▲イ▼の表現法の項で定義している平衡観で定義しているが内容的には特許文献2(関連発明)による動的平衡論からの派生である。。
【0018】
普遍的な格子譜を示す
図3(汎用格子譜)の“図表様式の定義”を基本構造とした上で“時空軸要素の定義”と“行為系要素の定義”に加え、
図3「格子譜/構想譜の基本記述文法」の基本的枠組みと
図4「基盤肢と行為網の構造記述文法の基本的枠組み」に分けて定義した補図c、補図d、補図eで構成する構想に関わる構造記述文法の適用により、想定する連帯型の構想体モデルの図表(構想譜)が構成出来る。格子譜の図表は手書きで実施するのは現代的ではなく、一般的には
図7で示す構成を有する構想機能付き電子計算機のソフトウェアを媒介手段として画面操作されて作成され、通常はこの画面を紙面に印刷した図表用紙の形で利用されるものであるが、遠隔的に送信して配布することも行われる。
図7において、意識の統一場情報10は本発明の所与の条件
図2であり、オフライン(OFL)で上記のプロセスを経て
図1を白紙化した汎用格子譜情報20(白紙の格子譜)と記述文法情報30に予め
図5、
図6によって定義される情報を提供して記憶する一般的なプロセスが存在する。構想譜作成操作において、所与条件である汎用格子譜情報20は初期画面表示部40を経て表示手段60に、意識の統一場情報10と記述文法情報30は夫々の情報を記憶機能付きの情報表示制御部50経由で入力のカーソール指定が可能な表示手段60に情報を提供している。表示手段60に表示された情報を構想の当事者もしくは当事者の意を汲んだ代行者がカーソール指定に従って入力情報100を表示制御部50に入力する。操作の初期状態においては記述文法を内在させた形態の格子譜が構想譜用原図として白紙の状態で表示される格子譜上の各要素に、記述文法に従って必要な情報を順次に入力して構想譜を組み上げていく。入力の途中経過は表示制御部50の記憶機能に保持されているので、作業を中断した後で続きの作業に戻ったり既に入力済の項目に戻って修正したりすることも自由に行いながら当事者が意図した構想譜を得ることが出来る。文法に不慣れな状況では白紙の格子譜上に文法的コメントを付しておき、後でこれを消去する構成にすることは、この領域の技術者にとって容易な作業である。
図7の構想機能付き電子計算機による一連の作業のソフトウェアは、格子譜原図情報と記述文法が与えられれば市販の表計算ソフトを用いて事が容易に構成する事が可能でありこの分野の技術者にとって特段の説明を要しないものである。実施例で取り上げるハイパーリンク機能も同様に一般的な表計算ソフト上の操作で行われる。なお、記述文法情報30に関しては内容の学習と使い方の訓練を済ませていれば常に参照する必要がなく、紙に印刷して座右に置いて参照することも可能である。また、上記の格子譜の定義と記述文法による構想譜記述の説明があれば、この構想譜を作動させる構想機能付き電子計算機の構築は、この分野の技術者にとって市販のパソコンとその上で動く表計算ソフトを活用
して容易に行える。
【0019】
格子内の所定のスペース内で構想表現する必要がある構想譜上の記述内容が格子内に収まらなく、しかも細部を省略すると意味を成さなくなる要素に対しての表現或は表示の自由度を組込み、その要素ごとズームインして下位システムの位置付けで原図とのリンクを明示した上で格子譜表現の部分展開を行ったり、全ての部分要素を全体化してズームアウトした形で上位システムとして表現したり、記述スペースの制約からくる表現的制限を緩和するため文字サイズを調整して階層化表現を行った上で電子的に画面制御を行ってハイパーリンク構造で自由に表現するハイパー情報思考を組込んだ形にしたりする分離型階層記述を前提にする記述と表示の方法や、使用する電子計算機の機能に拠っては画面制御自体をピンチ方式で拡大縮小する統合型階層記述を同時或は選択的に組み込むことが出来る。
【実施例】
【0020】
実施例にはジレンマが存在する。本発明は新規性が高いので理論が確立しないとこれを活用する判断が出来ない。特に社会的課題への適用は困難である。しかし、実施例が無いと理論の正当性が証明出来ない。しかし、そもそもデザインとは実物そのものではないため、構想譜で示せれば実施例にはなる。そこで提案的なデザインを試行して本発明の潜在能力の一端を示すことにする。構想譜自体が自然言語記述で構成するオブジェクト言語であり、構想譜の適切な組合せで構造化することで可視化されるので、構想譜のレベルですべての構想内容を語る表現が出来上がる可能性を秘めている。すなわち、まず全体像を一枚の構想譜で示し、必要な細部展開の表現をハイパーリンクで実現することが出来る。
【実施例1】
【0021】
提案的な実施例であってもグローバル時代を考慮して該当する構想体の外側の汎世界を地球的な世界に置くため、上記の如く汎時間軸を広義の持続可能性に定め、産業では持続可能な産業構造やまちづくりそして関連する人材育成までを視野に入れる。同様に汎空間軸を広義の快適性に設定して様々な段階での構想を設計する。
図3で示した格子譜を前提にして
図4、
図5、
図6で示した記述文法を参照して文法で定義された自然言語の語句を用いて格子内に設計(デザイン)内容を表現する。まず特定のテーマとして選んだ構想体名を「N市産業構造変革構想」とし、副題「地域資源の活用」を加えた形で方向性を規定しながら構想譜を設計した実施例を
図8から
図12のセットで示す。なお、これらの図表はスペースの関係で構造性を保った上で簡略化して表現される。構想譜の設計手順は記述文法を守る限りに於いて固定の必要はなく、構想当事者による様々な思索的推論過程つまり試行錯誤を経て行われるが、ここでは通常実施する如く大きく途中の二つのステップに分けた形で実施例を示す。上記
図7で構成を示した構想機能付き電子計算機を用いて設計した
図8「N市産業構造変革構想I」は該構想設計全体の途中経過を表示し、まず設定したテーマにとって必要と考える主要な基盤肢要素を設定した内容記述を表現している。次にN市の現状の産業基盤を前提にした上で基盤肢要素群の時空概念名を設定し、各概念名に対応した内容記述スペースに現状を基本にし、必要な改善や変革を加えた形での事柄の要素記述を行う。
図9「N市産業構造変革構想II」は
図8で示したデザインの途中段階であるN市産業構造変革構想Iに引き続いて設計作業を進めた後の設計の進行結果を示す表現であり、基盤肢の設計内容を参照しながら行為網要素の概念名とその概念を受止めた内容を検討して記述を進めた後で、関係性の場の内容を見直し追加記述した結果をN市産業構造変革構想IIで表現する。この段階で図表的には構想譜の第一次設計作業が完了するが、更に全体を見回して追加や訂正することも可能であり、未来像を描くための思考錯誤を繰り返すのが一般的な方法である。なお、使用される文字サイズは内容に合わせたスペースを確保できる様に選択され、構想譜は原則としてまず一枚構成で全体を一瞥出来る様に表現する。各格子要素に記述が収まらない場合は、個別の各要素概念自体を下位の構想体と見做してズームイン図表を別途追加してサブ図表の設計を行う。その際、格子要素の位置づけが単なる説明的な状態記述つまり基盤肢なのか、操作行為を伴う設計(デザイン)的記述つまり行為網なのかを当事者意識を持って判断し表現方法を選ぶことが必要である。勿論必要に応じて基盤肢と行為網の両方で表現する場合も存在する。この事を説明できる例として
図9で示す九個の格子の中で改善意識の発露110の格子名には下線が施されており、この要素名をクリックすると指定の場所にハイパーリンクする様に構成され、ここでは
図11「暮らし易い地域環境作りの骨組み」にリンクする。
図10「改善意識の発露」は
図9の記述スペースの制限をクリアーする仕掛けを使った詳細表現を示し、
図9で概略表現した項目の内容記述を
図5補図dで示す行為網表現で詳細化することで、重要な要素としてより詳細に判り易く構造化・可視化している。
図11の「戻る」をクリックすれば元の
図9の表示に戻るよう構成出来る。
図11の暮らし易い地域環境作りの骨組み310の格子には更なるリンクが
図12「暮らし易い地域環境作りの骨組み」で示す詳細内容に張られ、自然/命を大切にして独自資源を活かして何かをつくる意識によるデザイン(設計)を展開している。また
図9で示す産業構造の転換210の格子にもハイパーリンクが設定されており、
図12「産業構造の転換」にリンクして詳細が記述される。
図11と同様に
図12、
図13でも元の図に戻る機能は設定されている。
図10と
図12においては動的な行為的作用を示す詳細な要素表記による意識表現であることから
図5の補図dで規定する行為網形式を用いているが、状況的な詳細表現を構造化・可視化する場合は
図11の表現の様に
図5の補図cで規定する基盤肢表現を用いることが出来る自由度を有する。なおハイパーリンクの仕掛けは市販の表計算のアプリケーションソフトウエアの利用が可能である。実施例で示した様なハイパーリンクを用いた階層化によって、個の意識を起点とした物事を時空とその関係性で構成される社会単位の縦横無尽なつながりを表現できるので、該社会単位つまり記述文法を伴った格子譜表現は一つのビジュアル化記述文法を伴ったオブジェクト指向言語の意味と役割を有する事が判る。
図7〜
図12までの一連の構想譜セットは、階層構造とハイパーリンク状況を示す例であると共に、記述文法の使い方の例も示す。
【実施例2】
【0022】
図13「デザイン対象の汎世界イメージモデル」は超社会システム概念を世界規模に拡大して把握するための連合の論理の表現に用いた本発明の実施例であり、個の意識が観る自律型世界システムを描いている。個々の超社会システムNは個の意識が観る自律分散型プレジデントシステムであり、上記
図1や
図3の格子譜で定義した汎時間軸(時間管;Time tube)と汎空間軸(Space tube)の二つの軸(管)に拠って世界記憶及び自律的連帯意識の世界と連合の原理によって結ばれている。コンピュータの世界からの比喩で示せば、分散型マルチプロセッサ構成のシステムに於いてシステム同志がバスとバスアービタ構造で結ばれ、プロセッサ自体が人間であることになる。この形の根底を成すのは連帯型関係性を定義するグローカル哲学であり、各種業界団体や国連の構造更には世界平和の原理を表現する意図を有する実施例である。構想記述文法上での構成定義である
図3で示した汎時間軸と同じく
図3で示した汎空間軸は構想体が外部世界と繋がっている事を表しており、外部世界を汎世界と捉えて一般化した名称である。従って具体的な構想体モデルが属する世界の中で構想譜を表現する場合は、その外部世界モデルに相応しい名称に転換するのが最善である。グローバルな時代感覚に沿って構想体の外部世界つまり汎世界を最大限広く設定する必要がある。地球的且つ世界的な世界観と生命観に関して人類全体で共有可能な普遍的価値と考えられる命の原理を重視した理性的視点に立てば、実施例1と同様に広義の「持続可能性」を汎時間軸に設定することで世界的に共通な時間価値を強調する論理が有用である。空間軸に就いては人間の感性的視点が必要となる特性を有するので設定を一義的に行うのは困難であるが、人間だけでなくすべての生命体が棲み分け出来る為には世界的・地球的な観点での共通価値として広義の「快適性」を汎空間軸に設定して前記汎時間軸の「持続可能性」とセットにすることが出来る。更に論理を追求すれば「社会的な正義」の根源は、命の原理に基づく原初状態の上に在ると共に、独立した個とその外界とが適者生存を意図して新しい関係性を築き生存することにある。なお
図13上に注書きした「社会単位Axは自律分散型プレジデントシステム」に於けるプレジデントとは、誰かの指図で作動するエージェントに対比する用語として用いており、自律性を持った自律互恵のグローカル哲学で作動することを指している。デザイン作業にアート性(有機的思考性)が入るのはこの様に軸の意味に共有価値を入れることに由来するが、時空軸を構成する要素自体にもデザイン思考エンジンの発想が適用出来、その中の関係性の場において構成要素のアート性(非決定論性)を吸収する事に心掛けることで、極力曖昧さを除去することが可能である。生きる為に人間が何かをつくると云う事は確率的な曖昧さを残す技術的な事柄であるが、本発明が提供する格子譜の構造を守ることでデザイン誤差を減らすことが可能になる。必要に応じた超社会システム構成の社会単位の微細化によって関係性を局所化することで誤差が制御可能な範囲に調整出来る事は、公知のサイバネティクス理論が示している。システムで許容される制御可能な微細な誤差を許容した上で、意識の精神的エネルギーを地方創生に照らすのか、日本全体の産業構造変革に向けるのか、世界平和を願うのか、より良い人生を設計するのか。全ては生存の流れの中でしかデザインが意味を有しないことを改めて認識する。なお精神のエネルギー論は哲学者ベルクソンが取りあげているが(宇波彰訳第三文明社)ここでは説明を省略する。
【0023】
本発明は人間の意識の発揮による精神行動(心の働き)を内包する様々な領域の物事で活用可能である。構想法を有効に活用する為に留意すべき重要な人間の在り方が問われる。産業と人間のつながりに関しては、経済産業省が発行する資料『価値創造』に於いて説かれており、人間と関連が深い本発明でも情報技術面だけでなく、個と社会システムの両方で以下の人間性が強調される。
(a)「質」の時代への認識
上記『価値創造』の根幹に「質」更には「上質化」への視線があり、そこからイノベーションの重要さが強調されている。質実現の本質は創造と関連が深く、創造つまり「無から有を生み出す事」は機械ではなく個々の人間の頭脳が在って初めて可能になることは自明である。そこには個の精神的なエネルギーが大きく働く事を軽視してはならない。むしろ個の尊厳を重視することが重要であり、発明や工夫への動機付けを怠ると質の時代への転換が危うくなる。
(b)「個起点」の厳守
前記を考慮した上で、産業構造の変革を構想するとき、供給側の生産関連技術から発想するだけでなく、消費者や受益者の立場に寄り添った供給側の見方と連帯意識が重要であり、供給者側の関係者も当然まずは一人の人間として消費や受益の当事者であると考えるべきである。これが「個起点」の考え方であり、まずは構想自体に関する考え方のイノベーションからスタートするべきである。
(c)「対等性」の確保
様々な場面でアンケートを取る作業が行われるが、上から目線で調査したりアリバイ作り的な発想が先に存在したり、情報公開が進んでいない状況があったりするケースが多く、個と社会システムが対等な立場で物事を進める文化が育っていない状態への認識が薄い状態自体の変革が課題である。
(d)「自律性」と「当事者性」への留意
個が対等性を主張する際に必要なことは、個々の人間の自律的かつ社会システムとの連帯的な行動である。そこから個起点が尊重され質に関わる自由な発想が生まれることにつながる。当然該個は当事者意識を有し、物事を自分事として理解して構想を立てることが重要である。俯瞰的や客観的なる言葉は机上の空論を招き観察の次元が低下する事を意味する。これらの言葉は構想を評価する時点において思い起こすものである。構想は「想い」を「構える」と解かれ、個の想いが起点になる根本を忘れてはならない。
(e)「連帯性」への取組
個を尊重する余り社会システムつまり組織・団体や制度の公的な秩序維持などを軽視する二者択一的な発想になりがちであるが、ここではグローカルな哲学的発想が重要であり、個(ローカル)と社会システム(グローバル)を社会的関係の場で融合して合意(コンセンサス)を構築する対等性を有する「連帯性」の重要性が指摘出来る。新しい産業の開発とライフスタイルの関係も連帯的な緩やかな繋がりの発想が前提となり、経済成長と自然環境保全など双方が当事者としての対等意識と相手への尊敬の念を持った発想で取り組むことが必須である。
(f)「超自我」への認識
上記連帯性の基本が要求するものは自律性を前提とした超自我(トランスパーソナル)な人格であり、この特性は私人としての個人的な行動だけでなく組織の一員として或は専門分野を担う専門家として更には文化の担い手の一員としての行動に於いても、夫々の領域や分野の枠やしがらみを超えて行動できる精神性が重要であると認識し、人格を成長させて行く事が重要である。
(g)階層性対応の活用
超社会システムは社会的な物事つまり人間社会を在りの儘に捉えているので、本発明による構想譜は実施例でも示した様に時空とその関係性の場においてフラクラル構造を保持した階層性やハイパーネットワーク性を有することで、実社会を在るが儘に表現可能なことに留意して活用する。
(h)「生きることはつくること」の合目的的合理性の認知
本発明の合理性に関わる論拠は38億年を語る生命誌に準拠した「命の原理」であり、生命体は生きるために外界との関係性をつくり、更に自然選択に耐える適者生存によって種を創り出し進化してきた。人間社会も環境変化に対する適者であることを意図して構想を立て、連帯的な関係性を創りながら賢明な人間(ホモサピエンス)として生き残ることに留意する必要がある。
(i)アート性
本発明において上記で説明したデザインのアート性(人間の有機性由来)は非決定論的であり、全面的には科学の対象にならないが故に思考情報技術の領域における発明であるが、時間軸上での尺度としての持続可能性と空間軸上での尺度としての快適性に内在する非決定論性において、その構成要素となるデザイン対象は関係性の論理に内在され実務上の操作も当事者性を有する人間が取り扱うことになるが、実務的な関係性の核心であるコンセンサス(合意)における覚悟と責任によって非決定論的なあいまいさが概ね吸収されることになることを十分理解して有効性ある構想を行うことが求められる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
(a)社会的な物事の全体構想を構想譜の形で設計することにより、必要条件への対応に関して項目的に十分性を確保して要素を組込むことが可能になるので、構想操作の先の個別の計画策定とその調整の精度保証が容易になる。過去のデータに頼る予測ベースから脱却を図ることで、不都合な計画が削減出来て構想内容の自術の面で知的生産性が向上し経費削減や期間短縮に繋がる。
(b)構想譜は設計やデザインの工程だけでなく、前後の工程である現状分析、問題の診断、課題の構造分析、効果の予測、事後評価などの構成法にも活用可能であり、これらが思考の流れにおいて設計時の思考構造を温存した形態のシームレスな思索に結び就くことから、課題解決への道を切り拓く上で行動的な誤差が減少出来て無駄が削減され、工程的な面で知的生産性の向上効果が期待できる。
(c)一方、ソーシャルイノベーションなど創造性を必要とする事柄に於いて、経済産業省が発行した資料『価値創造』で指摘する人材育成と創造の場の創生との課題に取り組む施策に資する。つまり、本発明の構想法により構造化・可視化・言語化した普遍的な手法として未来構想を組込むことで、時代の変化に適応できる産業構造の変革とこれに対応できる人材育成を円滑な形で実施が可能になる。
(d)「つくる」に関わる構想法の確立に拠って域経営論など新しい論理を組み立てる手掛かりが得られ、地域の産業・経済の長期に亘る総合的かつ統合的な計画に取り組むことが可能になり、地域社会の健全かつ正統な発展への展望が得られる。この発想は広く総合政策学の様な社会科学や人文科学との学際領域に適用可能であり、未来を知るための予測ではなく未来をつくるための構想に資する学問の組立にも資する。
【0025】
本発明が前提とする主な関係性は連帯型であるが、関係性の在り方を見極めた上で部分的に取引型の関係性を適用してもある程度の効果は期待できる。また、格子譜そして構想譜の構造を決める軸と格子の図表上の配置や各種設定については、格子の位置関係に関して回転形や対象形も記述可能であり、数学的・物理的・社会的な意味が少しずつ異なって来たとしてもこれらは単なる見方の違いとして新規性が存在しない事は自明である。格子図や構想図なる呼称も類似の発想である。構想の対象である構想体は産業や企業に関わる事業や経済活動だけでなく、生活、文化、学術、環境などの人間社会の諸活動全般が想定でき、更に身近な人間個人の人生設計や著作から地域経営論更には世界を視野に入れた恒久平和やSDGsの課題の様に幅広い領域や分野に於ける物事までが視野に入る。これらを当事者としてどの様に取り組むのかは人それぞれの課題になり、出来る事から取り組むとして、自らが立てた構想に則って前向きな方向性を模索する事が出来る。地方創生に関わる「まち・ひと・しごと創生」の遂行こそ構想法を必要としている。また、格子譜と構想譜に関わる記述文法の理解と習熟に関しては、例えば音楽の楽譜と演奏の関係と類似の問題が存在し、構想のためのイマジネーション力を訓練出来るゲームの様な形態のトレーニングキットの構築に構想譜の作成方法を展開することも容易かつ有用である。更に
図9の社会的記憶の覚醒の要素にAI(人工知能)を組み合わせて思考効率を向上させる親AI的な発想も有用であるが、人間社会の持続可能性を考えればあくまで人間自身の思考の補助に利用するべきである。本発明の論理をAIに移植しようとすることは部分的には可能であるが、人間の生存を原初とする命の論理に則って許されないことが重要であり、「真の実在」機能自体の電子化は禁止するのが効果的な活用法である。なお本発明は超社会システムのシミュレーションの世界に活用できるので、AIとの境界を何処に置くかには留意するべきである。