【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST) 海洋生物多様性および生態系の保全・再生に資する基盤技術の創出 「シングルセルゲノム情報に基づいた海洋難培養微生物メタオミックス解析による環境リスク数理モデルの構築」委託研究、及び、平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業 個人型研究(さきがけ) 統合1細胞解析の革新的技術基盤 「組織内の細胞多様性を明らかにする超並列ゲノム解析技術の創成」委託研究、産業技術力強化法第1
【解決手段】2つ以上の細胞または細胞様構造物を含む試料を用い、該細胞または細胞様構造物を1細胞または構造物単位ずつ液滴中に封入する工程と、該液滴をゲル化してゲルカプセルを生成する工程と、該ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して前記細胞または細胞様構造物を溶解する工程であって、該細胞中のポリヌクレオチドが該ゲルカプセル内に溶出し該ポリヌクレオチドに結合する物質が除去された状態で前記ゲルカプセル内に保持される、工程と、該ポリヌクレオチドを増幅用試薬に接触させて該ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程とを含む、細胞中のポリヌクレオチドを増幅する方法を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面では、細胞中のポリヌクレオチドを増幅する方法が提供される。方法は、2つ以上の細胞または細胞様構造物を含む試料を用い、細胞または細胞様構造物を1細胞または構造物単位ずつ液滴中に封入する工程と、液滴をゲル化してゲルカプセルを生成する工程と、ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して前記細胞または細胞様構造物を溶解する工程であって、細胞中のポリヌクレオチドがゲルカプセル内に溶出しポリヌクレオチドに結合する物質が除去された状態でゲルカプセル内に保持される、工程と、ポリヌクレオチドを増幅用試薬に接触させてポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程とを含み得る。本発明の他の局面では、かかる方法において用いられる、組成物または装置が提供され得る。
【0009】
本発明の方法、組成物または装置は、細胞のゲノム配列をシングルセルレベルで決定するためのものとしてさらに規定され得る。また、本発明の方法、組成物または装置は、ゲノムライブラリーの作製のためのものとしてさらに規定され得る。
【0010】
本発明の実施形態の例として、以下のものが挙げられる。
(項目A1) 2つ以上の細胞または細胞様構造物を含む試料を用い、該細胞または細胞様構造物を1細胞または構造物単位ずつ液滴中に封入する工程と、
該液滴をゲル化してゲルカプセルを生成する工程と、
該ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して前記細胞または細胞様構造物を溶解する工程であって、該細胞中のポリヌクレオチドが該ゲルカプセル内に溶出し該ポリヌクレオチドに結合する物質が除去された状態で前記ゲルカプセル内に保持される、工程と、
該ポリヌクレオチドを増幅用試薬に接触させて該ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程と
を含む、細胞または細胞様構造物中のポリヌクレオチドを増幅する方法。
(項目A2) 前記項目に記載の方法によって増幅したポリヌクレオチドから、前記細胞のゲノムDNAの全配列を決定する工程を含む、細胞のゲノム配列をシングルセルレベルで決定する方法。
(項目A3) 前記項目のいずれかに記載の方法によって前記ポリヌクレオチドが増幅されたゲルカプセルを1個毎に選別し、分別収集する工程を含む、ゲノムライブラリーの作製方法。
(項目A4) 前記細胞が、微生物細胞を含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目A5) 前記ゲルカプセルを前記溶解用試薬に浸漬した後、前記ゲルカプセルから前記溶解用試薬及び夾雑物質が除去されることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目A6) 前記細胞または細胞様構造物の懸濁液をマイクロ流路中に流動させ、オイルで前記懸濁液をせん断することにより前記細胞または細胞様構造物を封入した前記液滴が作製されることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目A7) 前記液滴の直径が1〜250μmであることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目A8) 前記ゲルカプセルの直径が1〜250μmであることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目A9) 前記ゲルカプセルがアガロース、アクリルアミド、光硬化性樹脂、PEG、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、マトリゲル、又はコラーゲンから形成されることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目A10) 前記溶解用試薬がリゾチーム、ラビアーゼ、ヤタラーゼ、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ザイモリアーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン、ムタノライシン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フェノール、クロロホルム、グアニジン塩酸塩、尿素、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、TCEP-HCl、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、ドデシル-β-D-マルトシド、Nonidet P-40、およびZwittergent 3-12からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目A11) 前記ゲルカプセルがヒドロゲルカプセルであることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目A12) 前記増幅する工程が、恒温鎖置換増幅反応によって行われることを特徴とする、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目B1) 細胞または細胞様構造物を1細胞または構造物単位ずつ液滴中に封入する液滴作製部と、
前記液滴をゲル化してゲルカプセルを生成するゲルカプセル生成部と、
前記ゲルカプセルを溶解用試薬に浸漬する溶解用試薬浸漬部と、
前記ゲルカプセルから夾雑物質を除去する除去部と、
前記ゲルカプセルを増幅用試薬に浸漬する増幅用試薬浸漬部と、
を備えることを特徴とする、細胞中のポリヌクレオチドを増幅するための装置。
(項目B1−1) 前記項目のいずれか1つまたは複数に記載の特徴を備える、前記項目に記載の装置。
(項目B2) 増幅用試薬浸漬部において増幅されたポリヌクレオチド中の核酸配列の配列決定を行う配列決定部をさらに備え、細胞のゲノム配列をシングルセルレベルで決定するためのものであることをさらに特徴とする、前記項目のいずれかに記載の装置。
(項目B3) 前記ゲルカプセルを選別し、前記ゲルカプセルを収容容器に収容する選別部をさらに備え、ゲノムライブラリーの作製のためのものであることをさらに特徴とする、前記項目のいずれかに記載の装置。
(項目B4) 前記液滴作製部が、マイクロ流路を備える、前記項目のいずれかに記載の装置。
(項目C1) ゲルカプセルまたはその材料を含む、細胞中の核酸をシングルセルレベルで増幅するための組成物。
(項目C2) ゲルカプセルまたはその材料を含む、ゲノムライブラリーを作製するための組成物。
(項目C3) ゲルカプセルまたはその材料と、シングルセル状態の細胞とを含む、細胞中の核酸をシングルセルレベルで増幅するための組成物。
(項目C4) ゲルカプセルまたはその材料、シングルセル状態の細胞とを含む、ゲノムライブラリーを作製するための組成物。
(項目C5) ゲルカプセルまたはその材料、シングルセル状態の細胞とを含む、シングルセルレベルで、細胞中の核酸を配列決定するための組成物。
(項目D1) 細胞中の核酸をシングルセルレベルで増幅するための、溶解用試薬を含む組成物であって、該溶解用試薬が、リゾチーム、ラビアーゼ、ヤタラーゼ、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ザイモリアーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン、ムタノライシン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フェノール、クロロホルム、グアニジン塩酸塩、尿素、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、TCEP-HCl、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、ドデシル-β-D-マルトシド、Nonidet P-40、およびZwittergent 3-12からなる群から選択される少なくとも1つを含む、組成物。
(項目D1−1) 前記項目のいずれか1つまたは複数に記載の特徴を備える、前記項目のいずれかに記載の組成物。
(項目E1) 細胞中の核酸をシングルセルレベルで増幅するための、ゲルカプセルの材料と、必要に応じて、1以上の試薬を含む、キット。
(項目E2) 前記1以上の試薬が、溶解用試薬を含む、前記に記載のキット。
(項目E3) 前記溶解用試薬が、リゾチーム、ラビアーゼ、ヤタラーゼ、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ザイモリアーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン、ムタノライシン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フェノール、クロロホルム、グアニジン塩酸塩、尿素、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、TCEP-HCl、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、ドデシル-β-D-マルトシド、Nonidet P-40、およびZwittergent 3-12からなる群から選択される少なくとも1つを含む、前記項目のいずれかに記載のキット。
(項目E3−1) 前記項目のいずれか1つまたは複数に記載の特徴を備える、前記項目のいずれかに記載のキット。
【0011】
本発明において、上記の1つまたは複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得ることが意図される。本発明のなおさらなる実施形態および利点は、必要に応じて以下の詳細な説明を読んで理解すれば、当業者に認識される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、細胞集団において個々のシングルセルの解析を簡便に行うことができる。とりわけ、本発明によれば、細胞集団におけるシングルセルレベルでのゲノム増幅およびその配列決定を簡便に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を最良の形態を示しながら説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0015】
(定義)
以下に本明細書において特に使用される用語の定義および/または基本的技術内容を適宜説明する。
【0016】
本明細書において、「細胞」とは、遺伝情報を有する分子を内包する粒子であって、(単独で可能かどうかにかかわらず)複製されることが可能である任意の粒子を指す。本明細書における「細胞」としては、単細胞生物の細胞、細菌、多細胞生物由来の細胞、真菌などが包含される。
【0017】
本明細書において、「細胞様構造物」とは、遺伝情報を有する分子を内包する任意の粒子を指す。本明細書における「細胞様構造物」としては、細胞内小器官、例えば、ミトコンドリア、細胞核、および葉緑体、ならびにウイルスなどが包含される。
【0018】
本明細書において、「ゲル」とは、コロイド溶液(ゾル)において、高分子物質またはコロイド粒子がその相互作用により全体として網目構造をつくり,溶媒あるいは分散媒である液相を多量に含んだまま流動性を失った状態のことをいう。本明細書において、「ゲル化」とは、溶液を「ゲル」の状態に変化させることをいう。
【0019】
本明細書において、「ゲルカプセル」とは、その中に細胞または細胞様構造物を保持することが可能なゲル状の微粒子状構造体を指す。
【0020】
本明細書において、「遺伝子分析」とは生体サンプル中の核酸(DNA、RNA等)の状態を調べることをいう。1つの実施形態では、遺伝子分析は、核酸増幅反応を利用するものを挙げることができる。これらを含め、遺伝子分析の例としては、配列決定、遺伝子型判定・多型分析(SNP分析、コピー数多型、制限酵素断片長多型、リピート数多型)、発現解析、蛍光消光プローブ(Quenching Probe:Q−Probe)、SYBR green法、融解曲線分析、リアルタイムPCR、定量RT−PCR、デジタルPCRなどを挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「シングルセルレベル」とは、1つの細胞または細胞様構造物に含まれる遺伝情報に対して、他の細胞または細胞様構造物に含まれる遺伝情報と区別した状態で処理を行うことをいう。例えば、「シングルセルレベル」でのポリヌクレオチドを増幅する場合、ある細胞中のポリヌクレオチドと、他の細胞中のポリヌクレオチドが区別可能な状態でそれぞれの増幅が行われる。
【0022】
本明細書において、「シングルセル解析」とは、1つの細胞または細胞様構造物に含まれる遺伝情報を、他の細胞または細胞様構造物に含まれる遺伝情報と区別した状態で解析することを指す。
【0023】
(好ましい実施形態の説明)
以下に好ましい実施形態の説明を記載するが、この実施形態は本発明の例示であり、本発明の範囲はそのような好ましい実施形態に限定されないことが理解されるべきである。当業者はまた、以下のような好ましい実施例を参考にして、本発明の範囲内にある改変、変更などを容易に行うことができることが理解されるべきである。これらの実施形態について、当業者は適宜、任意の実施形態を組み合わせ得る。
【0024】
(細胞中のポリヌクレオチド増幅方法)
一つの局面において、本発明は、細胞中のポリヌクレオチドを増幅する方法を提供する。この増幅方法は、2つ以上の細胞または細胞様構造物(例えば、ウイルス、小器官(Mt,Nuc)等を含む)を含む試料を用い、該細胞または細胞様構造物を1細胞または構造物単位ずつ液滴中に封入する工程と、該液滴をゲル化してゲルカプセルを生成する工程と、該ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して前記細胞または細胞様構造物を溶解する工程であって、該細胞中のポリヌクレオチドが該ゲルカプセル内に溶出し該ポリヌクレオチドに結合する物質が除去された状態で前記ゲルカプセル内に保持される、工程と、該ポリヌクレオチドを増幅用試薬に接触させて該ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程とを含む。本発明の増幅方法は、いわゆるシングルセルレベルでのゲノムまたはそれに類似する遺伝子集合物を個別に増幅し得るものである。本発明の増幅方法は、個別のゲノム増幅を、非常に簡便な手法で実現するものであり、そのため、100個単位、1000個単位、1万個単位、10万個単位あるいはそれ以上の単位の細胞について一時期にゲノム情報を取得することができ、それゆえライブラリーとすることもできるものである。
【0025】
本発明の方法における液滴中への封入工程は、下記(液滴生成)の項または他の項に詳述されている任意の実施形態を採用することができる。
【0026】
1つの実施形態では、本発明の増幅方法において対象としうる細胞または細胞様構造物は、2つ以上の任意の数字であり、例えば、10個以上、50個以上、100個以上、500個以上、1000個以上、5000個以上、1万個以上、5万個以上、10万個以上、50万個以上、100万個以上、500万個以上、1000万個以上であり得る。本発明の増幅方法は、従来のシングルセル反応系、例えば、0.2mL、1.5mLマイクロチューブ反応系を用いるよりも多数の細胞を対象とし得る。
【0027】
本発明の増幅方法において対象とし得る細胞または細胞様構造物は、(細胞および細胞様構造物)の項に説明されている任意のものを採用することができる。1つの好ましい実施形態では、細胞が対象とされ得る。別の実施形態では、細胞様構造物が対象とされ、その中でも、ウイルス、あるいはミトコンドリア、核等の細胞小器官等を対象とすることができる。
【0028】
本発明の増幅方法において、提供される細胞または細胞様構造物を含む試料は、どのような形で提供されてもよい。試料に含まれる媒体は、(細胞および細胞様構造物)の項から選択した任意の細胞または細胞様構造物に対して適切な媒体(バッファー、塩、栄養素や他の成分等を含む)を選択することができる。このような成分としては、液滴生成に適した成分であればどのような成分を使用してもよい。ゲル化する際にも適切な成分であることが好ましい。そのような成分としては、PBS、Tris-HCl、TE、HEPESなどの緩衝液のほか、滅菌水、海水、人工海水、各種液体培地等を挙げることができるがこれらに限定されない。液滴を生成するためには、界面活性剤を含まない水またはバッファーなどの媒体が好ましい場合がある。
【0029】
本明細書において、細胞または細胞様構造物を1細胞または構造物単位ずつの液滴中への封入は、(液滴作製)の項に記載される任意の実施形態を採用することができる。代表的には、マイクロ流路を用い、細胞または細胞様構造物の懸濁液をマイクロ流路中に流動させ、懸濁液をせん断することにより、1つずつの細胞または細胞様構造物を封入した液滴を作製することができ、(液滴作製)での説明の他、実施例において例示される代表例を参考に、当業者は、適宜成分やパラメータを調製して実施することができる。
【0030】
本発明の増幅方法において、液滴をゲル化してゲルカプセルを生成する工程は、下記(ゲル化)の項に記載される任意の実施形態を採用することができる。
【0031】
1つの実施形態では、ゲル化は、液滴あるいは液滴の材料(例えば、細胞または細胞様構造物を含む試料)にゲルカプセルの材料が含まれるように構成した作製した液滴を冷却することによって行うことができるし、あるいは、光等の刺激を与えることでゲル化させることもできる。
【0032】
ゲルカプセルの材料としては、下記(ゲル化)の項に記載される任意の材料を用いることができる。
【0033】
本発明において、細胞または細胞様構造物を溶解する工程は、ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して実現することができ、下記(溶解)の項目に記載される任意の実施形態を採用することができる。
【0034】
ここで、細胞または細胞様構造物を溶解する工程では、細胞中のポリヌクレオチドが該ゲルカプセル内に溶出しそのポリヌクレオチドに結合する物質が除去された状態でこのゲルカプセル内に保持されるように処理されることが重要である。
【0035】
このように、ポリヌクレオチドに結合する物質が除去された状態を維持するためには、多種類の溶解剤を段階的あるいは同時に加えることで、細胞または細胞様構造物の細胞壁・細胞膜構造を確実に破壊し、細胞内に含まれるタンパク質、ポリヌクレオチドに結合する物質までを変性させることが必要である。溶解は細胞外層の破壊から段階的に試薬を加えて達成される。さらに、溶解操作後にゲルカプセル内に残存する溶解物および前記溶解試薬は、後段のポリヌクレオチド増幅を阻害するため、適切な洗浄液を用いてゲルカプセル内を通液させ、前記阻害物質をゲルカプセル外に放出することが望ましい場合がある。これらの操作をゲルカプセル内で完遂するために、ポリヌクレオチドをゲルカプセル内に保持しながら、各種薬液と細胞溶解物の浸透・放出を達成するヒドロゲル構造を取ることが望ましい場合がある。ゲルカプセルを用いることにより、遺伝物質を保持したまま、残留試薬を希薄化することができる。このステップは繰り返すことも可能である。阻害が出ないレベルにまで試薬を希薄化することで、下流の操作、例えば、増幅反応をスムーズに行うことができる。
【0036】
本発明において、ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程は、ポリヌクレオチドを増幅用試薬に接触させることにより実現することができ、下記(増幅)に規定される任意の実施形態を採用することができる。
【0037】
(液滴生成)
本発明は、2つ以上の細胞または細胞様構造物を含む試料を用い、細胞または細胞様構造物を1細胞または構造物単位ずつ液滴中に封入することを包含し得る。また、本発明において、装置は、細胞または細胞様構造物を1細胞または構造物単位ずつ液滴中に封入する液滴作製部を備え得る。
【0038】
液滴作製は、例えば、マイクロ流路を用いて行うことができる。液滴作製部は、マイクロ流路を備え得る。細胞または細胞様構造物の懸濁液をマイクロ流路中に流動させ、懸濁液をせん断することにより、1つずつの細胞または細胞様構造物を封入した液滴を作製し得る。せん断は、一定間隔で行い得る。懸濁液のせん断は、オイルを用いて行うことができる。オイルとしては、例えば、鉱物油(例えば、ライトミネラルオイル)、植物油、シリコーンオイル、フッ素化オイル、を用い得る。懸濁液の濃度、流路中の流速、せん断の間隔を調整し、当業者は、液滴あたり1つ以上の細胞または細胞様構造物が封入されないように液滴作製を行うことが可能である。
【0039】
液滴の直径は、約1〜250μm、より好ましくは約10〜200μmであってよく、例えば、液滴の直径は、約1μm、約5μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約40μm、約50μm、約80μm、約100μm、約150μm、約200μm、または約250μmであってよい。
【0040】
(ゲル化)
本発明は、液滴をゲル化してゲルカプセルを生成する工程を包含し得る。また、本発明において、装置は、液滴をゲル化してゲルカプセルを生成するゲルカプセル生成部を備え得る。液滴のゲル化は、液滴にゲルカプセルの材料が含まれるように構成し、作製した液滴を冷却することによって行うことができる。あるいは、液滴に対して光等の刺激を与えることによってゲル化を行うこともできる。液滴にゲルカプセルの材料が含まれるようにするには、例えば、細胞または細胞様構造物の懸濁液にゲルカプセルの材料を含めておくことによって行うことができる。
【0041】
ゲルカプセルの直径は、約1〜250μm、より好ましくは約10〜200μmであってよく、例えば、約1μm、約5μm、約10μm、約15μm、約20μm、約25μm、約30μm、約40μm、約50μm、約80μm、約100μm、約150μm、約200μm、または約250μmであってよい。ゲルカプセルの直径は、作製する液滴と同じであってもよいが、ゲル化に際して直径が変化してもよい。
【0042】
ゲルカプセルの材料は、アガロース、アクリルアミド、光硬化性樹脂(例えば、PEG-DA)、PEG、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、マトリゲル、コラーゲンなどを含み得る。
【0043】
ゲルカプセルは、ヒドロゲルカプセルであってよい。本明細書において、「ヒドロゲル」とは、高分子物質またはコロイド粒子の網目構造によって保持されている溶媒あるいは分散媒が水であるものを指す。
【0044】
大量の細胞からまとめてDNAを取り出す際などは、フェノール・クロロホルム抽出とエタノール沈殿によってDNAを精製し得る。しかしながら、単一細胞からの遺伝物質の取得・分析を企図する場合、1細胞毎の遺伝物質の量は非常に微量であり、ロスなく個別に核酸のみの状態に変換する必要がある。単一細胞に対しては、一般的なバルクスケールでの手順で核酸精製を試みても、全く核酸が取り出せないか、あるいは、夾雑物由来の核酸しか抽出できない結果になる。1細胞実験ではコンタミや標的遺伝物質のロスは大きな問題となるが、単一の細胞または細胞様構造物を封入したゲルカプセルを用いることによって、精製した遺伝物質(例えば、DNA)をゲルカプセル中に保持することができ、また、外部からの分子の夾雑の可能性を排除することができる。また、操作面でも非常に簡単な操作で、大量の1細胞を並列処理することができる。ゲル化した液滴を含む試験管を遠心し、上清を除去し、洗浄液に置換するというステップを行うことができる。あるいは、ゲル化した液滴をフィルターでろ過し、上清を除去したのち、洗浄液を通液させ、最後にゲルカプセルを回収するというステップでも行うことができる。ゲルカプセルを用いることにより、遺伝物質を保持したまま、残留試薬を希薄化することができる。このステップは繰り返すことも可能である。阻害が出ないレベルにまで試薬を希薄化することで、下流の操作、例えば、増幅反応をスムーズに行うことができる。
【0045】
本発明の1つの局面において、ゲルカプセルまたはその材料を含む組成物が提供され得る。上述または後述の点から、かかる組成物は、細胞中の核酸をシングルセルレベルで増幅するために有用であり得る。また、かかる組成物は、ゲノムライブラリーを作製するために有用であり得る。さらなる実施形態において、ゲルカプセルまたはその材料と、シングルセル状態の細胞とを含む組成物が提供され得る。上述または後述の点から、かかる組成物は、細胞中の核酸をシングルセルレベルで増幅するために有用であり得る。また、かかる組成物は、ゲノムライブラリーを作製するために有用であり得る。かかる組成物は、シングルセルレベルで細胞中の核酸を配列決定するために有用であり得る。
【0046】
(溶解)
本発明は、ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して前記細胞または細胞様構造物を溶解することを包含し得る。また、本発明において、装置は、ゲルカプセルを溶解用試薬に浸漬する溶解用試薬浸漬部を備え得る。溶解の際、細胞中のポリヌクレオチドがゲルカプセル内に溶出しポリヌクレオチドに結合する物質が除去された状態でゲルカプセル内に保持され得る。溶解用試薬には、例えば、酵素、界面活性剤、その他変性剤、還元剤およびpH調節剤があり、それらの組み合わせもまた用いることができる。本発明の1つの局面では、細胞中の核酸をシングルセルレベルで増幅するための、溶解用試薬を含む組成物が提供され得る。
【0047】
溶解用試薬は、リゾチーム、ラビアーゼ、ヤタラーゼ、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ザイモリアーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン、ムタノライシン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フェノール、クロロホルム、グアニジン塩酸塩、尿素、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、TCEP-HCl、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、ドデシル-β-D-マルトシド、Nonidet P-40、Zwittergent 3-12からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。溶解用試薬は、リゾチーム、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ドデシル硫酸ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から少なくとも1種選択される場合がある。
【0048】
細胞または細胞様構造物における一部の配列の有無を検出することのみを目的とする場合には、積極的な細胞または細胞様構造物の溶解を行う必要は必ずしもなく、物理的な刺激または熱的な刺激による、細胞または細胞様構造物からの核酸の漏出に基づいて検出を行うことも可能である。しかしながら、ゲノム全域などの大量の情報を単一細胞から得るためには、積極的に細胞または細胞様構造物を破壊し、その中の遺伝物質を完全な状態で細胞から単離することが好ましい。また、ゲルカプセルを用いている場合、熱的・機械的な刺激は、ゲルカプセルの崩壊につながるおそれもあり、溶解試薬を用いることが好ましい場合があり得る。
【0049】
多様な微生物について、細胞ごとに核酸の増幅または分析を行う場合、溶解試薬または溶解試薬の組合せとして、ある程度強力なものを用いることが望ましい。例えば、グラム陽性菌は厚いペプチドグリカン層を有する細胞壁を有するため、緩和なもののみでは細胞が十分に溶解できない可能性がある。
【0050】
強力な溶解試薬は、DNA増幅等の反応を阻害する可能性があり、下流の反応の前に十分に除去されることが好ましい。ゲルカプセルを用いている場合には、ゲルカプセルによって解析または増幅の対象となる遺伝物質が保持されるため、遺伝物質が少量である単一細胞解析においても溶解試薬の除去を行うことができ、そのため、強力な溶解試薬または溶解試薬の組合せを用いることが可能である。そして、強力な溶解試薬または溶解試薬の組合せを用いることは、多様な細胞(細胞壁を有するものやその他の種類の微生物を含む)の種類を問わず、網羅的な核酸の増幅またはゲノム解析を可能にし得る。方法は、ゲルカプセルから溶解用試薬および/または夾雑物質を除去する工程を含み得る。また、溶解用試薬浸漬部は、ゲルカプセルから溶解用試薬および/または夾雑物質を除去する手段を備える。
【0051】
標的分子が細胞表面マーカーや核酸の一部であり、その存在自体を検知することが目的である場合には、溶解操作が部分的、あるいは溶解操作がなされなくても、目的を達成できる可能性がある。他方で、ゲノムDNAの全長の増幅を企図する場合、ゲノムDNAは、細胞中に1分子しか存在しないことが通常であるため、完全に細胞または細胞様構造物の溶解が進み、またDNAから結合タンパク質類を十分に除去する必要がある。これにより、腸内微生物のような数百種以上の微生物からなる検体を対象とした際にも、そのすべてを均質に溶解し、その全てから全ゲノム増幅を行うことが可能となる。また、それにより、ライブラリ調製を行い、最終的に全ゲノム配列情報を得ることが可能となる。
【0052】
(増幅)
本発明は、ポリヌクレオチドを増幅用試薬に接触させてポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅することを包含し得る。また、本発明において、装置は、ゲルカプセルを増幅用試薬に浸漬する増幅用試薬浸漬部を備え得る。増幅用試薬浸漬部は、増幅用試薬への浸漬後、必要に応じて、ゲルカプセルの温度を調節するための手段を備え得る。
【0053】
加熱処理(80度以上)を伴う反応はゲル(例えば、アガロースゲル)の再溶解を招く可能性があるため、個別粒子化していた形状を崩壊させ、単一細胞隔離を無効化してしまう場合がある。この場合、約60度以下の酵素反応がゲル液滴形状を保つために望ましい。恒温鎖置換増幅反応(multiple displacement amplification)は、この温度の範囲内で実行可能であり、また、ゲノムDNA全域の増幅が可能である点で好ましい。用いる酵素としては、例えば、phi29ポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Aacポリメラーゼ、リコンビナーゼポリメラーゼが挙げられる。
【0054】
特定の細胞(例えば、特定の微生物)を検出することを目的としたPCRを実施する場合、その微生物に応じた特定プライマーを使用することが一般的である。しかしながら、ゲノム全体の増幅を行う場合には、ランダムプライマーを用いることが好ましい。
【0055】
mRNAはゲノムDNAを元に細胞内に数千から数万種存在し、個々の分子量も多い。このためRNAを対象とした発現解析では、遺伝子の種類や発現量を絶対(相対)的に求めることが目的となるため、遺伝子の一部(数十塩基)だけを読み取って、どの遺伝子がどれだけ発現しているかを定量することが可能である。ゲノムDNAを対象とする場合、原則的にゲノムDNAは1細胞に1分子しか存在しないため、その1分子しか無い配列情報を漏らさず増やすことが、その数百万塩基の全てを解読するためには必要となり得る。ゲルカプセル中での処理は、そのような増幅にとって有利である。また、配列決定のための核酸を、1細胞から一部ずつの断片的な情報ではなく、全体として得られることはシングルセル解析において有利である。
【0056】
(細胞および細胞様構造物)
本発明において対象とする細胞または細胞様構造物は、特段限定されるものではないが、例えば、微生物(例えば、細菌、真菌、単細胞動物)、多細胞生物の細胞(例えば、体細胞、生殖細胞、培養細胞、腫瘍細胞、動物細胞、植物細胞)、細胞内器官(ミトコンドリア、核、葉緑体)、ウイルスが挙げられる。
【0057】
ゲノム配列既知の生物の細胞については、その中でどの遺伝子が発現しているかRNA を計測するという意図が発生し得るが、ゲノム配列および/または遺伝子の情報が未知の生物の解析の場合には、RNA解析の前に、ゲノム自体の情報を得る必要がある。その場合には、ゲルカプセルを用いる本発明の方法によるシングルセルレベルでのゲノム配列の増幅は有利である。
【0058】
本発明においては、2つ以上の細胞または細胞様構造物を含む試料を用いることができる。2つ以上の細胞は、複数の生物に由来するものであってもよい。試料として、例えば、微生物試料、組織試料、共生微生物および宿主生物の混合試料、動物・ヒト検体より取り出した微生物および細胞を含む試料が挙げられる。微生物試料としては、細菌叢試料の他、2種以下の細胞または細胞様構造物を含有する試料、真菌等の細菌以外の細胞または細胞用構造物が含有される試料が挙げられる。ヒト検体より取り出した微生物および細胞を含む試料としては、糞便、唾液、喀痰、手術洗浄液、血液、皮膚・身体粘膜の拭い液やスワブなどが挙げられ、直接的に利用することも可能であるが、細胞や微生物を分離する操作を行ってから使用してもよい。
【0059】
本発明において、対象とし得る微生物は、限定されるものではないが、真正細菌、大腸菌、枯草菌、藍色細菌、球菌、桿菌、ラセン菌、グラム陰性菌、グラム陽性菌、古細菌、真菌などが挙げられる。本発明で対象とし得る細菌は、例えば、Negibacteria、Eobacteria、Deinococci、Deinococci、Deinococcales、Thermales、Chloroflexi、Anaerolineae、Anaerolineales、Caldilineae、Chloroflexales、Herpetosiphonales、Thermomicrobia、Thermomicrobiales、Sphaerobacterales、Ktedonobacteria、Ktedonobacterales、Thermogemmatisporales、Glycobacteria、Cyanobacteria、Gloeobacterophyceae、Gloeobacterales、Nostocophyceae、Synechococcophycidae、Synechococcales、Nostocophycidae、Chroococcales、Oscillatoriales、Nostocales、Pseudanabaenales、Spirochaetes、Spirochaetes、Spirochaetales、Fibrobacteres、Fibrobacteria、Gemmatimonadetes、Gemmatimonadetes、Gemmatimonadales、Chlorobi、Chlorobea、Chlorobiales、Ignavibacteria、Ignavibacteriales、Bacteroidetes、Bacteroidia、Bacteroidales、Flavobacteriia、Flavobacteriales、Sphingobacteriia、Sphingobacteriales、Cytophagia、Cytophagales、Planctomycetes、Planctomycea、Planctomycetales、Phycisphaerae、Phycisphaerales、Chlamydiae、Chlamydiae、Chlamydiales、Verrucomicrobia、Verrucomicrobiae、Verrucomicrobiales、Opitutae、Opitutales、Puniceicoccales、Spartobacteria、Chthoniobacterales、Lentisphaerae、Lentisphaeria、Lentisphaerales、Victivallales、Proteobacteria、Alphaproteobacteria、Rhodospirillales、Rickettsiales、Rhodobacterales、Sphingomonadales、Caulobacterales、Rhizobiales、Parvularculales、Kordiimonadales、Sneathiellales、Kiloniellales、Betaproteobacteria、Burkholderiales、Hydrogenophilales、Methylophilales、Neisseriales、Nitrosomonadales、Rhodocyclales、Procabacteriales、Gammaproteobacteria、Chromatiales、Acidithiobacillales、Xanthomonadales、Cardiobacteriales、Thiotrichales、Legionellales、Methylococcales、Oceanospirillales、Pseudomonadales、Alteromonadales、Vibrionales、Aeromonadales、Enterobacteriales、Pasteurellales、Deltaproteobacteria、Desulfurellales、Desulfovibrionales、Desulfobacterales、Desulfarculales、Desulfuromonadales、Syntrophobacterales、Bdellovibrionales、Myxococcales、Epsilonproteobacteria、Campylobacterales、Nautiliales、Acidobacteria、Acidobacteria、Acidobacteriales、Holophagae、Holophagales、Acanthopleuribacterales、Aquificae、Aquificae、Aquificales、Deferribacteres、Deferribacteres、Geovibriales、Thermodesulfobacteria、Thermodesulfobacteria、Thermodesulfobacteriales、Nitrospirae、Nitrospira、Nitrospirales、Fusobacteria、Fusobacteriia、Fusobacteriales、Synergistetes、Synergistia、Synergistales、Caldiserica、Caldisericia、Caldisericales、Elusimicrobia、Elusimicrobia、Elusimicrobiales、Armatimonadetes、Armatimonadia、Armatimonadales、Chthonomonadetes、Chthonomonadales、Fimbriimonadia、Fimbriimonadales、Posibacteria、Thermotogae、Thermotogae、Thermotagales、Firmicutes、Bacilli、Bacillales、Lactobacillales、Clostridia、Clostridiales、Halanaerobiales、Thermoanaerobacterales、Natranaerobiales、Negativicutes、Selenomonadales、Erysipelotrichia、Erysipelotrichales、Thermolithobacteria、Thermolithobacterales、Tenericutes、Mollicutes、Mycoplasmatales、Entomoplasmatales、Acholeplasmatales、Anaeroplasmatales、Actinobacteria、Actinobacteria、Actinomycetales、Actinopolysporales、Bifidobacteriales、Catenulisporales、Corynebacteriales、Frankiales、Glycomycetales、Jiangellales、Kineosporiales、Micrococcales、Micromonosporales、Propionibacteriales、Pseudonocardiales、Streptomycetales、Streptosporangiales、Dictyoglomi、Dictyoglomia、Dictyoglomales、Chrysiogenetes、Chrysiogenetes、Chrysiogenales、Haloplasmatalesなどの細菌が挙げられる。また、それらのうちの複数が混在する試料において、細胞毎の網羅的な解析を行うことができる。
【0060】
(組成物・キット)
本発明の1つの局面は、本発明の方法において用いられ得る組成物またはキットを提供する。本発明において、細胞中の核酸をシングルセルレベルで増幅するための組成物が提供され得る。組成物は、ゲルカプセルまたはその材料を含み得る。ゲルカプセルを用いることは、本明細書の他の箇所に記載されるとおり、細胞中の核酸をシングルセルレベルで増幅することについて有利であり得る。本発明において、ゲノムライブラリーを作製するための組成物が提供され得る。ゲルカプセルを用いることは、本明細書の他の箇所に記載されるとおり、ゲノムライブラリーを作製するために有利であり得る。
【0061】
本発明において、ゲルカプセルまたはその材料と、シングルセル状態の細胞とを含む、細胞中の核酸をシングルセルレベルで増幅するための組成物が提供され得る。組成物は、本明細書の他の箇所に記載される方法の工程に供され、シングルセルレベルでの核酸増幅に用いられ得る。本発明において、ゲルカプセルまたはその材料、シングルセル状態の細胞とを含む、ゲノムライブラリーを作製するための組成物が提供され得る。組成物は、明細書の他の箇所に記載される方法の工程に供され、ゲノムライブラリーを作製に用いられ得る。本発明において、ゲルカプセルまたはその材料、シングルセル状態の細胞とを含む、シングルセルレベルで、細胞中の核酸を配列決定するための組成物が提供され得る。組成物は、明細書の他の箇所に記載される方法の工程に供され、シングルセルレベルでの細胞中の核酸の配列決定に用いられ得る。
【0062】
本発明の1つの局面において、細胞中の核酸をシングルセルレベルで増幅するための、溶解用試薬を含む組成物が提供される。溶解用試薬は、リゾチーム、ラビアーゼ、ヤタラーゼ、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ザイモリアーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン、ムタノライシン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フェノール、クロロホルム、グアニジン塩酸塩、尿素、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、TCEP-HCl、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、ドデシル-β-D-マルトシド、Nonidet P-40、Zwittergent 3-12からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0063】
細胞中の核酸をシングルセルレベルで増幅するためのキットが提供され得る。キットは、例えば、ゲルカプセルの材料と、必要に応じて、1以上の試薬を含み得る。前記1以上の試薬としては、溶解用試薬が挙げられる。
【0064】
(ゲノムライブラリーの作製方法及びゲノムライブラリーの作製装置)
本発明は、多様な微生物からポリヌクレオチドをゲルカプセル内に精製し、ゲルカプセル内で増幅したポリヌクレオチドをゲノムライブラリー化する方法を提供し得る。本発明の1つの局面において、簡易な操作で細胞の溶解とゲノム増幅を行うゲノムライブラリーの作製方法及びゲノムライブラリーの作製装置が提供され得る。
【0065】
微生物1細胞からゲノム解析を行う際には、1細胞毎にゲノム増幅反応を行うために細胞を一つずつ反応容器に移し替える操作が必要である。従来の細胞分取技術のフローサイトメトリーでは、小さな非生物粒子と微生物を分けて反応に供することが難しく、容器中の反応液量が微生物体積の数十億倍以上のマイクロリットルで過度に大きい。このため、反応時にコンタミネーションや増幅エラーを頻繁に生じ、純粋な1細胞からの増幅核酸サンプルが得られる歩留まりが低かった。
【0066】
また、最大並列処理能力も数百反応が限度であり、環境中の何千種以上の微生物からゲノムDNAを1細胞単位で網羅的に解析することは困難であった。課題解決には、微生物1個に合わせたスケールで大量の反応環境を作りだし、そこで細胞溶解や酵素反応を順次行い、微量なゲノムDNAを精製したのち並列増幅させて、保管と再解析が可能な形状で増幅核酸試料を調達する方法が必要である。
【0067】
WO2017/218486号公報には、マイクロ流路を使用してゲルビーズを作製し、単一細胞分析をすることが記載されている。しかしながら、WO2017/218486号公報には微生物試料へ対応した詳細な条件等が規定されていない。
【0068】
特表2017−532024号公報には、個々の細胞から核酸をハイスループットに単離し、溶解、バーコード化などの調製を行う方法と装置が記載されている。しかしながら、特表2017−532024号公報に記載の方法と装置が対象としているのはmRNAであり、ゲノムDNAではない。また、硬い細胞壁をもつ微生物試料への適用は不可能である。
【0069】
Single−cell genome sequencing at ultra high−throughput with microfluidic droplet barcoding Nat Biotechnol. 2017Jul; 35(7):640−646には、マイクロ流路を使用してゲルビーズを作製し、単一微生物細胞のゲノム解析をすることが記載されている。当該文献に記載の方法では、微生物試料を酵素液で消化したのち、ゲノムDNAにバーコード配列を付加するため、ゲル内部でのDNA増幅は行っていない。DNA増幅を行っていないため、再解析が不可能であり、興味のあるサンプルについて詳細な評価を行えない。また、ゲノム解読率は0.1%以下にとどまっている。
【0070】
Virtual microfluidics for digital quantification and single−cell sequencing Nature Methods volume 13,pages 759−762(2016)には、腸内微生物を分散させた溶媒全体をゲル化させ、ゲル中で微生物を溶解したのちゲノム増幅を行うことが記載されている。また、蛍光色素で標識したゲノム増幅スポットを針で打ち抜き回収し、再度ゲノム増幅を行って全ゲノム解読を行うことが記載されている。しかし、当該文献に記載のゲル本体はサイズが大きいため溶菌とDNA増幅反応が不十分であり、ゲノム解読率は平均10%と低い。
【0071】
Massively parallel whole genome amplification for single−cell sequencing using droplet micro fluidicsには、微生物細胞を溶菌液とともに液滴に閉じ込め、ついで全ゲノム増幅試薬を含む第2の液滴と融合する特殊なマイクロ流路を用いた微生物1細胞のゲノム増幅法が記載されている。当該文献のゲノム増幅法では、ゲルビーズ化しないため、弱い溶菌条件しか適用できず、一部の微生物にしか適用できない。また、ゲル化を行わないため、ライブラリー化のための分別収集が容易でない。
【0072】
本発明のゲノムライブラリーの作製方法は、1以上の微生物を含む試料を用い、該微生物の細胞を1細胞ずつ液滴中に封入する工程と、前記液滴をゲル化してゲルカプセルを生成する工程と、前記ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して前記細胞を溶解し、ポリヌクレオチドを前記ゲルカプセル内に溶出し前記ゲルカプセル内に保持する工程と、前記ゲルカプセルを増幅用試薬に浸漬して前記ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程と、前記ポリヌクレオチドが増幅されたゲルカプセルを1個毎に選別し、分別収集する工程と、を有する場合がある。
【0073】
また、本発明のゲノムライブラリーの作製方法は、前記細胞の懸濁液をマイクロ流路中に流動させ、オイルで前記懸濁液をせん断することにより前記細胞を封入した前記液滴を作製する場合がある。また、本発明のゲノムライブラリーの作製方法は、前記液滴の直径が1〜250μmである場合がある。また、本発明のゲノムライブラリーの作製方法は、前記ゲルカプセルの直径が1〜250μmである場合がある。また、本発明のゲノムライブラリーの作製方法は、前記ゲルカプセルがアガロース、アクリルアミド、光硬化性樹脂、PEG、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、マトリゲル、又はコラーゲンから形成される場合がある。また、本発明のゲノムライブラリーの作製方法は、前記ゲルカプセルがヒドロゲルカプセルである場合がある。
【0074】
また、本発明のゲノムライブラリーの作製方法は、前記ゲルカプセルを前記溶解用試薬に浸漬した後、前記ゲルカプセルから前記溶解用試薬及び夾雑物質を除去する工程を有する場合がある。
【0075】
また、本発明のゲノムライブラリーの作製方法は、前記溶解用試薬がリゾチーム、ラビアーゼ、ヤタラーゼ、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ザイモリアーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン、ムタノライシン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フェノール、クロロホルム、グアニジン塩酸塩、尿素、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、TCEP-HCl、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、ドデシル-β-D-マルトシド、Nonidet P-40、Zwittergent 3-12からなる群から少なくとも1種選択される場合がある。
【0076】
また、本発明のゲノムライブラリーの作製方法は、前記ゲノムライブラリーの作製方法が、未培養微生物由来1細胞ゲノムのライブラリー化と全ゲノム解析のための細胞操作方法である場合がある。
【0077】
また、本発明のゲノムライブラリーの作製装置は、細胞を1細胞ずつ液滴中に封入する液滴作製部と、前記液滴をゲル化してゲルカプセルを生成するゲルカプセル生成部と、前記ゲルカプセルを溶解用試薬に浸漬する溶解用試薬浸漬部と、前記ゲルカプセルから夾雑物質を除去する除去部と、前記ゲルカプセルを増幅用試薬に浸漬する増幅用試薬浸漬部と、前記ゲルカプセルを選別し、前記ゲルカプセルを収容容器に収容する選別部と、を備える場合がある。
【0078】
本発明によれば、簡易な操作で細胞の溶解とゲノム増幅を行うゲノムライブラリーの作製方法及びゲノムライブラリーの作製装置を提供することができる。
【0079】
ゲノムライブラリーの作製方法及びゲノムライブラリーの作製装置の実施形態の例として、以下の実施形態を挙げることができる。
(実施形態1) 1以上の微生物を含む試料を用い、該微生物の細胞を1細胞ずつ液滴中に封入する工程と、
前記液滴をゲル化してゲルカプセルを生成する工程と、
前記ゲルカプセルを1種以上の溶解用試薬に浸漬して前記細胞を溶解し、ポリヌクレオチドを前記ゲルカプセル内に溶出し前記ゲルカプセル内に保持する工程と、
前記ゲルカプセルを増幅用試薬に浸漬して前記ポリヌクレオチドをゲルカプセル内で増幅する工程と、
前記ポリヌクレオチドが増幅されたゲルカプセルを1個毎に選別し、分別収集する工程と、
を有することを特徴とするゲノムライブラリーの作製方法。
(実施形態2) 前記ゲルカプセルを前記溶解用試薬に浸漬した後、前記ゲルカプセルから前記溶解用試薬及び夾雑物質を除去する工程を有することを特徴とする実施形態1に記載のゲノムライブラリーの作製方法。
(実施形態3) 前記細胞の懸濁液をマイクロ流路中に流動させ、オイルで前記懸濁液をせん断することにより前記細胞を封入した前記液滴を作製することを特徴とする実施形態1又は2に記載のゲノムライブラリーの作製方法。
(実施形態4) 前記液滴の直径が1〜250μmであることを特徴とする実施形態3に記載のゲノムライブラリーの作製方法。
(実施形態5) 前記ゲルカプセルの直径が1〜250μmであることを特徴とする実施形態1〜4の何れか1つに記載のゲノムライブラリーの作製方法。
(実施形態6) 前記ゲルカプセルがアガロース、アクリルアミド、光硬化性樹脂、PEG、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、マトリゲル、又はコラーゲンから形成されることを特徴とする実施形態1〜5の何れか1つに記載のゲノムライブラリーの作製方法。
(実施形態7) 前記溶解用試薬がリゾチーム、ラビアーゼ、ヤタラーゼ、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ザイモリアーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン、ムタノライシン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フェノール、クロロホルム、グアニジン塩酸塩、尿素、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、TCEP-HCl、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、ドデシル-β-D-マルトシド、Nonidet P-40、Zwittergent 3-12からなる群から少なくとも1種選択されることを特徴とする実施形態1〜6のいずれか1つに記載のゲノムライブラリーの作製方法。
(実施形態8) 前記ゲルカプセルがヒドロゲルカプセルであることを特徴とする実施形態1〜7の何れか1つに記載のゲノムライブラリーの作製方法。
(実施形態9) 前記ゲノムライブラリーの作製方法が、未培養微生物由来1細胞ゲノムのライブラリー化と全ゲノム解析のための細胞操作方法であることを特徴とする実施形態1〜8の何れか1つに記載のゲノムライブラリーの作製方法。
(実施形態10) 細胞を1細胞ずつ液滴中に封入する液滴作製部と、
前記液滴をゲル化してゲルカプセルを生成するゲルカプセル生成部と、
前記ゲルカプセルを溶解用試薬に浸漬する溶解用試薬浸漬部と、
前記ゲルカプセルから夾雑物質を除去する除去部と、
前記ゲルカプセルを増幅用試薬に浸漬する増幅用試薬浸漬部と、
前記ゲルカプセルを選別し、前記ゲルカプセルを収容容器に収容する選別部と、を備え
ることを特徴とするゲノムライブラリーの作製装置。
【0080】
(データ・データベース・データ処理)
多数の細胞または細胞様構造物の集合、および前記細胞または細胞様構造物に由来するゲルカプセルまたはゲノムライブラリーの集合から、データ取得または解析に供するものを選択することが可能である。例えば、本発明において、細胞または細胞様構造物を2以上含む集合から、当該細胞または細胞様構造物の核酸配列に基づいて、細胞または細胞様構造物を少なくとも1つを含むサブ集団を生成する工程を包含する、細胞または細胞様構造物を含むサブ集団を生成してもよい。サブ集団の生成は、配列決定や、配列決定リードに基づくゲノムドラフトの作成などの工程の労力を低減することができる。
【0081】
本開示の1つの実施形態において、別々に提供された2つ以上の細胞または細胞様構造物を、当該細胞または細胞様構造物に由来する核酸情報に基づいて選別することができる。必要に応じて、当該選別された細胞または細胞様構造物を分析することが可能である。選別は、例えば、PCRから配列決定を行い、部分配列を解読すること、特定の遺伝子配列の有無を確認すること、DNA収量を参照することなど、いくつかの選別を行うことが可能である。
【0082】
本開示の1つの実施形態において、配列決定後に、2つ以上の細胞または細胞様構造物に由来する核酸情報を選別してもよい。2つ以上の細胞または細胞様構造物に由来する核酸情報を、当該細胞または細胞様構造物ごとの核酸情報の集合として提供した後、当該核酸情報の全部または一部に基づいて、当該核酸情報を該細胞または細胞様構造物ごとに選別することができる。必要に応じて、選別された核酸情報を分析することができる。
【0083】
本開示の1つの実施形態において、得られた配列情報は、データベースとして記録することができる。データベースは、データの自動的構築・提供システム上で記録され得る。データベースは、1つの細胞または細胞様構造物に由来する配列情報をそれぞれ区別して格納することができる。それぞれの配列情報は、分類してまとめることが可能である。分類としては、生物種ごとに分類することが望ましい。分類したクラスターは、他種生物の配列情報のコンタミネーションがなく、それに基づいてクラスター内での完全な配列情報の構築を行うことができる。完全な配列情報の構築の際に、再分類を行うこともできる。分析で得られた情報は、新たに得られた1つの細胞または細胞様構造物に由来する配列情報の分類の精緻化に用いることも可能である。
【0084】
本明細書において「または」は、文章中に列挙されている事項の「少なくとも1つ以上」を採用できるときに使用される。「もしくは」も同様である。本明細書において「2つの値」の「範囲内」と明記した場合、その範囲には2つの値自体も含む。
【0085】
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0086】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0087】
以下、本発明の実施例について、添付の
図1〜
図7を参照して説明する。以下に説明する実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0088】
1.マウス腸内微生物由来の1細胞増幅ゲノムライブラリーの作製
試料であるマウス糞便より採集したマウス腸内微生物から1細胞増幅ゲノムライブラリー17を作製した。本実施例では、ゲノムDNA14を採取し増幅してゲノムライブラリー17を作製するが、メッセンジャーRNAやその他のポリヌクレオチドを採取し増幅してそれらのポリヌクレオチドライブラリーを作製することもできる。なお試料は、同種の微生物のみが含まれているもの又は異種の微生物が含まれているものの何れでもよく、少なくとも一つの微生物が含まれていればよい。
【0089】
実験は、雄性ICRマウス(66週齢)(東京実験動物社)の糞便を容量1.5mLのチューブ(1212-10, SSIbio)(図示せず)に採取し、500μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)(Dulbecco's Phosphate-Buffered Saline, 14190-144, Thermo Fisher Scientific社)中で破砕機(ASPES-50、ASONE社)を用いて固形物がなくなるまですり潰した。2,000×gで2秒間遠心分離し(himac CF15RX, 工機ホールディングス社)、上清を回収する操作を2回繰り返した後、15,000×gで3分間遠心することでマウス腸内微生物を集菌した。
【0090】
菌体のペレットをPBSで2回遠心洗浄した後、PBS中に懸濁することでマウス腸内微生物の細胞懸濁液を取得した。調製した細胞懸濁液中の細胞濃度を測定し(顕微鏡:CKX41, OLYMPUS社、バクテリア計算盤A161,2-5679-01, アズワン社)、終濃度1.5%になるように超低融点アガロース(A5030-10G, SIGMA-ALDRICH社)を加えることで、ゲルカプセル11作製に用いる腸内微生物懸濁液1を調製した(細胞終濃度:1.5×10
3cells/μL)。
【0091】
ポリジメチルシロキサン(Sylgard 184: Dow Corning社)を用いて自作したマイクロ流路2を用いて、微小液滴3の作製および微小液滴3内へのマウス腸内微生物1細胞4の封入を行った。
図1に示すように、本実施例では、第一流路5、第二流路6、第三流路7及び第四流路8からなり、隣接する流路が直角に配置されたマイクロ流路2を用いたが、略T字状に接続したマイクロ流路2を使用することも可能である。本実施例のマイクロ流路2は、幅34μm、高さ50μmのものを使用したが、作製する微小液滴3の大きさや封入する1細胞4の大きさによりマイクロ流路2のサイズは適宜変更可能である。
【0092】
次に、第一流路5(水相インレット)から腸内微生物懸濁液1を導入し、第二流路6及び第四流路8(油相インレット)からPico−Surf1(2% in Novec7
500)(Sphere Fluidics社)(以下、「オイル10」という)を導入して腸内微生物懸濁液1をせん断することで、直径50μmの微小液滴3を作製し、第三流路7を流動させて容量0.2mLのチューブ9に回収した。微小液滴3は、500液滴/秒の速度で約45万個作製した。微小液滴3内の細胞濃度は、0.1cells/dropletである。
【0093】
本実施例では、微小液滴3の直径を50μmと均一にすることで、1細胞4ずつ微小液滴3に封入され易くしている。1細胞4の大きさを考慮すると、微小液滴3の直径は、例えば1〜250μmであり、20〜200μmであることが好ましい。
【0094】
図2に示すように、チューブ9内には複数の微小液滴3とオイル10が収容されるが、微小液滴3はオイル10よりも比重が軽いため上層に集積する。
【0095】
次に、チューブ9を氷上で15分間冷却し、超低融点アガロースにより微小液滴3をゲル化した。ゲル化した微小液滴3がゲルカプセル11である。微小液滴3の直径が50μmであることからゲルカプセル11の直径も50μmとなる。また、ゲルカプセル11の直径は、例えば1〜250μmであり、20〜200μmであることが好ましい。ゲルカプセル11の直径を均一とすることにより、後述する溶菌試薬13の各ゲルカプセル11内への浸透率をより均一化することができる。
【0096】
次に、チューブ9に20μLの1H,1H,2H,2H−パーフルオロ−1−オクタノール(SIGMA-ALDRICH社)を加え、下層のオイル10を取り除いた後、アセトン(富士フイルム和光純薬社)(500μL)、イソプロパノール(500μL)(富士フイルム和光純薬社)のを順に加えて遠心洗浄し、オイル10の除去を行った。オイル10を除去するための遠心洗浄は後述の除去部25により行う。本実施例では、ゲルカプセル11に浸透したオイル10も夾雑物質に含まれるものとする。さらに、500μLのPBSを添加して遠心洗浄を3回行い、ゲルカプセル11を水層(PBS)12に懸濁した状態とした。
図3に示すように、ゲルカプセル11は水層12よりも比重が重いため下層に集積する。
【0097】
続いて、溶解用試薬としての溶菌試薬13にゲルカプセル11を順次浸漬し、ゲルカプセル11内部で細胞4の細胞壁等の収集目的物以外の部分を溶解し、ゲルカプセル11内にゲノムDNA14を溶出させた。
【0098】
具体的には、チューブ9に溶菌試薬13の1種であるリゾチーム(10U/μL)(R1804M、Epicentre)を加え、細胞4を溶解した。次に、チューブ9に溶菌試薬13の1種であるアクロモペプチダーゼ(850U/mL)(015-09951、富士フイルム和光純薬社)を加えた。次に、チューブ9に溶菌試薬13の1種であるプロテアーゼK(1mg/mL)(MC5005、Promega)及びドデシル硫酸ナトリウム(SDS)0.5%(71736-100ML、SIGMA-ALDRICH社)を加え、細胞4を溶解した後に遠心洗浄を5回行いプロテアーゼ及び溶解した細胞4のゲノムDNA14以外の成分(夾雑物質)をチューブ9から除去した。続いて、溶菌試薬13の1種である水酸化カリウムを含む水溶液であるBuffer D2(QIAGEN社)にゲルカプセル11を浸漬し、残存成分の溶解とゲノムDNA14の変性を行った。本実施例で使用する溶菌試液13は、上述のとおり、リゾチーム、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼK、ドデシル硫酸ナトリウム及びBuffer D2である。なお、水酸化カリウムは通常のDNA増幅反応工程でも使用するが、溶菌の効果も兼ねていることから、本実施例では溶菌試薬13の一つとしている。ゲルカプセル11の溶菌試薬13への浸漬は短時間であるため、溶出させたゲノムDNA14が溶菌試薬13によりゲルカプセル11外に流出されることはなく、ゲルカプセル11内に保持される。本実施例では、ゲルカプセル11に浸透した溶菌試薬13も夾雑物質に含まれるものとする。
【0099】
本実施例は、リゾチーム、アクロモペプチダーゼ及びプロテアーゼKを順次加え、ドデシル硫酸ナトリウムを加えて細胞4を溶解した後、Buffer D2を入れる前にのみ遠心洗浄を行うことで十分な洗浄効果を得ることができる。しかしながら、各溶菌試薬13により細胞4を溶解した後に遠心洗浄を行ってもよい。
【0100】
このように、複数種類の溶菌試薬13により細胞4の溶解を行うことで、目的のゲノムDNA14を採取することができ、溶菌試薬13への浸漬後に遠心洗浄を行うことで、溶菌試薬13や溶解した細胞4のポリヌクレオチド以外の成分等の夾雑物質を除去し、続くゲノムDNA増幅反応を阻害することのなくゲノムDNA14を精製することができる。
【0101】
水酸化カリウム溶液(Buffer D2)中で変性したゲノムDNA14を保持するゲルカプセル11を含むチューブ9に増幅用試薬15を加え、ゲルカプセル11を増幅用試薬15に浸漬した。具体的には、鎖置換型DNA合成酵素であるphi29DNAポリメラーゼを用いたMDA(Multiple Displacement Amplification)法を使用した。ここでは、全ゲノム増幅反応試薬REPLI−g Single Cell Kit(QIAGEN社)に浸漬し、3時間の全ゲノム増幅反応を行った(S1000 サーマルサイクラー, Bio-Rad社)。増幅用試薬15(REPLI−g Single Cell Kit)には水酸化カリウム溶液(Buffer D2)を中和する成分が含まれている。
【0102】
全ゲノム増幅後のゲルカプセル11をTris−EDTAを用いて遠心洗浄した後、
図5に示すように、染色用試薬であるSYBRグリーン(S7563、Thermo Fisher Scientific社)による蛍光性DNAインターカレーターで染色を行った。なお、染色はEvagreen(31000、コスモ・バイオ株式会社)等、他の公知の染色用試薬を使用してもよい。
【0103】
フローサイトメーター30(BD FACSMelody セルソーター, BD Biosciences社)により所定以上に増幅したゲノムDNA14を保持するゲルカプセル11を選別し、1μLのPBSを事前に添加した収容容器としてのプレート16(PCR-96-FS-C、Axygen社)に個別に回収した。なお、ゲルカプセル11の選別は、ゲルカプセル11をスライドガラスに滴下して、顕微鏡観察の下で蛍光を示すゲルカプセル11を、マイクロピペット(例えば、Microdispenser, Drummond Scientific社など)を用いて個別に採取してもよい。
【0104】
回収した個々のゲルカプセル11に対して65度で加熱(S1000 サーマルサイクラー, Bio-Rad社)を行うことによりゲルカプセル11を溶解した後、各プレート16のウェル内でMDA法による二次増幅を行った。このゲルカプセル11を収容したプレート16を多数蓄積することでマウス腸内微生物由来の1細胞増幅ゲノムライブラリー17とすることができる。
【0105】
二次増幅を行う前のゲルカプセル11集団は、Tris−EDTA中にて4℃で冷蔵保存した。1細胞増幅ゲノムライブラリー17は後続の実験に用いるまで−20℃又は−80℃で冷凍することで長期保存することができる。
【0106】
ここで、
図6を参照して1細胞増幅ゲノムライブラリー17の作製装置18について説明する。作製装置18は、マイクロ流路2により1細胞4を微小液滴3中に封入する液滴作製部19を備えている。生成された微小液滴3はチューブ9に収容される。
【0107】
また、作製装置18は、微小液滴3をゲル化してゲルカプセル11を生成するゲルカプセル生成部20を備えている。ゲルカプセル生成部20は冷却部21を有し、微小液滴3をチューブ9に収容した状態で冷却可能となっている。また、ゲルカプセル生成部20は微小液滴3をチューブ9に収容した状態で紫外線を照射する紫外線照射部22を有しており、光硬化性樹脂を使用してゲルカプセル11を生成することもできる。なお、冷却部21か紫外線照射部22の何れか一方のみを有していてもよい。
【0108】
また、作製装置18は、ゲルカプセル11を収容したチューブ9に溶菌試薬13を注入し、ゲルカプセル11を溶菌試薬13に浸漬させる溶解用試薬浸漬部23を備えている。溶菌試薬13は溶解用試薬注入部24からチューブ9内に注入される。
【0109】
また、作製装置18は、ゲルカプセル11からオイル10や溶菌試薬13を含む夾雑物質を除去する除去部25を備えている。除去部25は遠心洗浄部26を有し、ゲルカプセル11を溶菌試薬13に所定時間浸漬させた後、遠心洗浄部26により溶菌試薬13及び夾雑物質をゲルカプセル11内及びチューブ9内から除去する。
【0110】
また、作製装置18は、ゲルカプセル11内に保持されたゲノムDNA14を増幅させる増幅用試薬15に浸漬する増幅用試薬浸漬部27を備える。増幅用試薬15は、増幅用試薬注入部28からチューブ9内に注入される。
【0111】
また、作製装置18は、所定以上に増幅したゲノムDNA14を保持するゲルカプセル11を選別する選別部29を備える。選別部29は、フローサイトメーター30を有し、所定以上に増幅したゲノムDNA14を保持するゲルカプセル11を選別しプレート16に回収する。なお、所定以上に増幅したゲノムDNA14を保持しないゲルカプセル11は他の容器31に回収する。
【0112】
2.1細胞増幅ゲノムライブラリーから全ゲノム解読
次に、1細胞増幅ゲノムライブラリー17から全ゲノム解読を実施し解析した。具体的には、1細胞増幅ゲノムライブラリー17中の各増幅ゲノムの一部を用いて、16S rRNA遺伝子のV3V4領域に対してPCR法を行った(6.25μL PrimeSTAR Max DNA Polymerase(R045B、タカラバイオ)、0.5μL 10μM Primer Forward(5’-TCGTCGGCAGCGTCAGATGTGTATAAGAGACAGCCTACGGGNGGCWGCAG-3’(配列番号1))、0.5μL 10μM Primer Reverse(5’-GTCTCGTGGGCTCGGAGATGTGTATAAGAGACAGGACTACHVGGGTATCTAATCC-3’(配列番号2)), 1.0μL DNA希釈液, 4.25μL UltraPure DNase/RNase-Free Distilled Water(10977-015, Thermo Fisher Scientific)(S1000 サーマルサイクラー, Bio-Rad)。PCRの反応条件は、初期熱変性を95℃、5分、熱変性を98℃、10秒、アニーリング51℃、15秒、伸長反応を72℃、5秒で27サイクル行い、72℃、5分の反応後、4℃で保存した。アガロースゲル電気泳動(泳動槽:Mupid-exU, EXU-1, Mupid、マーカー:GeneRuler
TM 1kb DNA Ladder, #SM0318, Fermentas、染色:Midori Green Direct, NE-MG06,日本ジェネティクス、ローディングバッファー:6× Loading Buffer, 9157, タカラバイオ)(泳動条件:100V, 15 min)によってPCR産物の有無を確認後、増幅が見られたサンプルについてサンガー法(株式会社ファスマックのDNAシーケンス外注サービス)を用いてシークエンス解析を行った。PCR産物が取得できたサンプルについてNextera XT DNA sample prep kit(Illumina社, FC-131-1096)によるライブラリー調製を行い、Miseq(Illumina社, SY-410-1003)を用いた全ゲノムシークエンスによって2×75bpのペアエンドリード(3.99Gb)を取得した。SPAdes(Bankevich et al. Journal of computational biology, 19(5), 455-477.2012(http://doi.org/10.1089/cmb.2012.0021)を用いてシークエンスデータのアセンブリを行った後、QUAST(Gurevich et al. Bioinformatics. 2013 29(8):1072-5. doi: 10.1093/bioinformatics/btt086.)を用いてアセンブリの評価を行った。ゲノム解読率(コンプリート率)およびコンタミネーション度の評価にはCheckM(Parks et al., Genome Research 2015. 25: 1043-1055, doi:10.1101/gr.186072.114)を用いた。
【0113】
その結果、解析した全44個のシングルセルゲノムでは、半数でゲノム解読率(コンプリート率)が50%を超え、その中の4つでは90%を超えた。またコンタミネーション度は平均1.9%と低値であった(表1参照)。
【0114】
【表1-1】
【表1-2】
【0115】
以上の値を国際基準Minimum information about a single amplified genome(MISAG)(Bowers et al., Nature Biotechnology 2017 35(8):725-731. doi: 10.1038/nbt.3893.4)に照らし合わせた結果、マウス糞便から獲得した1細胞由来のゲノム情報は、中品質から高品質として評価されるゲノム情報であった。本実施例の手法によって、グラム陽性菌についてもゲノム情報を得ることが可能であった。
【0116】
特に、フィルミクテス門モリクテス綱マイコプラズマ目を近縁とする新規微生物について、95%以上のコンプリート率を有する1.76Mbのゲノム情報が取得された。さらに、取得された新規ゲノムは、一般的なモリクテス綱微生物と同様に脂質およびアミノ酸の合成系を欠損していることが確認され、マウスに対する寄生生物であることが推測された。一方で、大部分のモリクテス綱微生物では欠損しているペプチドグリカン合成系が保存されており、既知のモリクテス綱微生物と異なる性状を示すことも予想された。
【0117】
なお、今回の実験系において1TBのシークエンスデータが得られると仮定した場合、ゲノム解読率(コンプリート率)が50%超えるサンプルの取得率は、5500シングルセルゲノムデータ、2200微生物種となる。これは、従来のメタゲノムシークエンスで同等のデータ量から解析した場合の5〜17倍にも昇るものである(
図7参照)。
【0118】
以上のように、本実施例のゲノムライブラリー17の作製方法は、1以上の微生物を含む試料を用い、該微生物の細胞を1細胞4ずつ微小液滴3中に封入する工程と、微小液滴3をゲル化してゲルカプセル11を生成する工程と、ゲルカプセル11を1種以上の溶菌試薬13に浸漬して細胞4を溶解し、ゲノムDNA14をゲルカプセル11内に溶出しゲルカプセル11内に保持する工程と、ゲルカプセル11を増幅用試薬15に浸漬してゲノムDNA14をゲルカプセル11内で増幅する工程と、ゲノムDNA14が増幅されたゲルカプセル11を1個毎に選別し、分別収集する工程と、を有することにより、微生物を多量生産されるゲルカプセル11にランダムに封入して個別にゲノムDNA14を増幅することができる。また、簡易な操作で細胞4の溶解とゲノム増幅を続けて行うことができる。また、従来法での1反応相当の試薬量で、数十〜数百万個の並列的な1細胞ゲノム増幅反応が実現でき、ランニングコストを圧倒的に安価とすることができる。また、二次増幅時には、増幅が進行したゲルカプセル11のみを選抜することができるため、非生物粒子を対象とした不要な反応操作を避けることができる。また、1細胞増幅ゲノムライブラリー17の作製時には、ゲルカプセル11に含まれる十分な鋳型量(ピコグラム相当)で増幅が再開するため、コンタミネーション分子の増幅によるデータ劣化を極めて効果的に抑制できる。また、1細胞増幅ゲノムライブラリー17はマイクログラム容量(細胞百万個以上に相当する量)が得られ、従来法での正常な増幅ゲノム獲得の歩留まりの問題を解消することができる。また、1細胞増幅ゲノムライブラリー17は冷蔵・冷凍条件での長期保管が可能であり、全ゲノム配列解読にとどまらず特定遺伝子配列のスクリーニング等の再解析を行うことができる。貴重な環境微生物試料の生物情報を増幅核酸サンプルとして永続的に再解析可能とする点は、DNAシークエンス技術がまだなお進展する中で大きな利点となる。また、微生物のゲノムだけではなく、細胞内に保持されているプラスミド情報も同時に解析することが可能であるため、プラスミド上の物質生産遺伝子や耐性遺伝子の検出なども可能となる。
【0119】
また、本実施例のゲノムライブラリー17の作製方法は、ゲルカプセル11を溶菌試薬13に浸漬した後、ゲルカプセル11から溶菌試薬13及び夾雑物質を除去する工程を有することにより、通常の反応ではゲノム増幅反応を阻害するような強力な複数種の試薬群から構成される溶菌試薬13を使用しても、当該溶菌試薬13の洗浄除去が可能である。さらにコンタミネーション分子を同時に除去してデータ劣化を極めて効果的に抑制できる。
【0120】
また、本実施例のゲノムライブラリー17の作製方法は、細胞4の腸内微生物懸濁液1をマイクロ流路2中に流動させ、オイル10で腸内微生物懸濁液1をせん断することにより細胞4を封入した微小液滴3を作製することにより、直径が均一な微小液滴3を作製することができる。
【0121】
また、本実施例のゲノムライブラリー17の作製方法は、微小液滴3の直径が1〜250μm、例えば、20〜200μmであることにより、細胞4が微小液滴3に1細胞ずつ封入される確率を高めることができる。
【0122】
また、本実施例のゲノムライブラリー17の作製方法は、ゲルカプセル11の直径が1〜250μm、例えば、20〜200μmであることにより、細胞4がゲルカプセル11に1細胞ずつ封入される確率を高めることができる。
【0123】
また、本実施例のゲノムライブラリー17の作製方法は、ゲルカプセル11がアガロース、アクリルアミド、光硬化性樹脂、PEG、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、マトリゲル、又はコラーゲンから形成されることにより、容易にゲルカプセル11を作製することができる。
【0124】
また、本実施例のゲノムライブラリー17の作製方法は、溶菌試薬13がリゾチーム、ラビアーゼ、ヤタラーゼ、アクロモペプチダーゼ、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、ザイモリアーゼ、キチナーゼ、リソスタフィン、ムタノライシン、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、フェノール、クロロホルム、グアニジン塩酸塩、尿素、2−メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、TCEP-HCl、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、Triton X-100、Triton X-114、NP-40、Brij-35、Brij-58、Tween 20、Tween 80、オクチルグルコシド、オクチルチオグルコシド、CHAPS、CHAPSO、ドデシル-β-D-マルトシド、Nonidet P-40、およびZwittergent 3-12からなる群から少なくとも1種選択されることにより、細胞4の一部を溶解しゲノムDNA14を採取することができる。
【0125】
また、本実施例のゲノムライブラリー17の作製方法は、ゲルカプセル11がヒドロゲルカプセルであることにより、微小液滴3からゲルカプセル11を生成することができる。
【0126】
また、本実施例のゲノムライブラリー17の作製方法が、未培養微生物由来1細胞ゲノムのライブラリー化と全ゲノム解析のための細胞操作方法であることにより、貴重な環境微生物試料の生物情報を増幅核酸サンプルとして永続的に再解析可能とする。
【0127】
また、本実施例のゲノムライブラリー17の作製装置18が、細胞4を1細胞ずつ微小液滴3中に封入する液滴作製部19と、微小液滴3をゲル化してゲルカプセル11を生成するゲルカプセル生成部20と、ゲルカプセル11を溶菌試薬13に浸漬する溶解用試薬浸漬部23と、ゲルカプセル11から夾雑物質を除去する除去部25と、ゲルカプセル11を増幅用試薬15に浸漬する増幅用試薬浸漬部27と、ゲルカプセル11を選別し、ゲルカプセル11をプレート16に収容する選別部29と、を備えることにより、微生物を多量生産されるゲルカプセル11にランダムに封入して個別にゲノムDNA14を増幅することができる。また、簡易な操作で細胞4の溶解とゲノム増幅を続けて行うことができる。また、従来法での1反応相当の試薬量で、数十〜数百万個の並列的な1細胞ゲノム増幅反応が実現でき、ランニングコストを圧倒的に安価とすることができる。また、二次増幅時には、増幅が進行したゲルカプセル11のみを選抜することができるため、非生物粒子を対象とした不要な反応操作を避けることができる。また、1細胞増幅ゲノムライブラリー17の作製時には、ゲルカプセル11に含まれる十分な鋳型量(ピコグラム相当)で増幅が再開するため、コンタミネーション分子の増幅によるデータ劣化を極めて効果的に抑制できる。また、1細胞増幅ゲノムライブラリー17はマイクログラム容量(細胞百万個以上に相当する量)が得られ、従来法での正常な増幅ゲノム獲得の歩留まりの問題を解消することができる。また、1細胞増幅ゲノムライブラリー17は冷蔵・冷凍条件での長期保管が可能であり、全ゲノム配列解読にとどまらず特定遺伝子配列のスクリーニング等の再解析を行うことができる。貴重な環境微生物試料の生物情報を増幅核酸サンプルとして永続的に再解析可能とする点は、DNAシークエンス技術がまだなお進展する中で大きな利点となる。また、微生物のゲノムだけではなく、細胞内に保持されているプラスミド情報も同時に解析することが可能であるため、プラスミド上の物質生産遺伝子や耐性遺伝子の検出なども可能となる。
【0128】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において、種々の変形実施が可能である。例えば、チューブ9やプレート16は他の公知の容器を使用することができる。また、海水、土壌、唾液、喀痰、手術洗浄液、血液、皮膚・口腔から採取した組織及び動植物組織破砕液などを試料として用いることもできる。
【0129】
(注記)
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。本願は、日本国特許出願第2018-089259号(2018年5月6日出願)に対して優先権を主張するものであり、その内容の全体は、本願において参考として援用される。