【解決手段】呼吸用ガス流を患者の気道へ供給するための患者インタフェースは、熱水分交換器(HME)を備えてもよい。熱水分交換器(HME)は、呼吸用ガス流の流路内に位置されてもよい。熱水分交換器(HME)は、患者により吐き出されるガスから熱及び水分を吸収してもよく、また、患者の気道へ供給されるべく入ってくる呼吸用ガス流は、熱水分交換器(HME)内に保持される熱及び水分によって加熱されて湿潤されてもよい。
【背景技術】
【0002】
2 技術の背景
2.1 技術の分野
本技術は、呼吸器関連疾患の検出、診断、治療、予防、及び、改善のうちの1つ以上に関する。特に、本技術は、医療装置又は医療機器及びこれらの使用に関する。
【0003】
2.2 関連技術の説明
2.2.1 人の呼吸器系及びその疾患
身体の呼吸器系は、ガス交換を容易にする。鼻及び口は、患者の気道への入口を形成する。
【0004】
気道は一連の分岐管から成り、これらの分岐管は、それらが肺の中へとより深くまで入り込むにつれて、より細くなり、より短くなり、より多くなる。肺の主な機能はガス交換であり、それにより、酸素が空気から静脈血中へと移動できるとともに、二酸化炭素が外部へ移動できる。気管は左右の主気管支へと分かれ、更に、これらの主気管支は最終的に複数の終末細気管支へと分かれる。気管支は、誘導気道を形成するとともに、ガス交換に関与しない。気道の更なる分割は、呼吸細気管支に通じ、最終的に肺胞に通じる。肺の肺胞領域は、ガス交換が行われる場所であり、呼吸域と称される。これについては、2011年に出版されたJohn B.West、Lippincott Williams&Wilkinsによる“Respiratory Physiology”第9版を参照されたい。
【0005】
様々な呼吸器疾患が存在する。特定の疾患は、特別な事象、例えば無呼吸、呼吸低下、及び、過呼吸によって特徴付けられる場合がある。
【0006】
睡眠呼吸障害(SDB)の一形態である閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、睡眠中の上部気道の閉塞又は閉鎖を含む事象によって特徴付けられる。閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、異常に小さい上気道と、睡眠中の舌、軟口蓋、及び、後口腔咽頭壁の領域における筋緊張の通常の損失との組み合わせに起因する。病状により、罹患患者は、一般に30〜120秒の持続期間にわたって、時として夜ごとに200〜300回呼吸を停止する。それにより、しばしば、過度の日中傾眠を引き起こすとともに、循環器疾患及び脳損傷を引き起こす場合がある。該症候群は特に中高年の肥満男性において一般的な疾患であるが、罹患者はその問題に気付いていない場合がある。これについては、米国特許第4,944,310号(Sullivan)を参照されたい。
【0007】
チェーン−ストークス呼吸(CSR)は、睡眠呼吸障害の他の形態である。チェーン−ストークス呼吸(CSR)は、チェーン−ストークス呼吸(CSR)サイクルとして知られる換気量の増大及び減少の律動的な交互の周期が存在する患者の呼吸制御器の疾患である。チェーン−ストークス呼吸(CSR)は、動脈血の脱酸素及び再酸素化の繰り返しによって特徴付けられる。チェーン−ストークス呼吸(CSR)は、反復性の低酸素症に起因して有害であると考えられる。一部の患者において、チェーン−ストークス呼吸(CSR)は、重度の睡眠乱れ、交感神経作用の増大、及び、後負荷の増大を引き起こす、睡眠からの繰り返し覚醒と関連付けられる。これについては、米国特許第6,532,959号(Berthon−Jones)を参照されたい。
【0008】
肥満低換気症候群(OHS)は、低換気の他の既知の原因がない場合の重度の肥満と覚醒慢性的高炭酸ガス血症との組み合わせとして規定される。症状としては、呼吸困難、起床時の頭痛、及び、過度の日中の眠気が挙げられる。
【0009】
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、特定の特徴を共通して有する任意の一群の下気道疾患を包含する。これらの特徴としては、空気移動に対する抵抗の増大、呼吸の長い呼気相、及び、肺の正常な弾力性の損失が挙げられる。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の例は、肺気腫及び慢性気管支炎である。慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、慢性的なタバコ喫煙(第一危険因子)、職業被爆、空気汚染、及び、遺伝因子によって引き起こされる。症状としては、労作時の呼吸困難、慢性咳、及び、痰が出ることが挙げられる。
【0010】
神経筋疾患(NMD)は、内在筋病変を介して直接的に或いは神経病変を介して間接的に筋肉の機能を低下させる多くの疾患及び病気を包含する広義語である。一部の神経筋疾患(NMD)患者は、歩行能力の喪失をもたらす進行性筋肉機能障害、車いすに束縛されること、嚥下障害、呼吸筋力低下、及び、最終的には呼吸不全による死によって特徴付けられる。神経筋疾患は急速進行性と緩徐進行性とに分けられる。すなわち、(i)急速進行性疾患:数か月にわたって悪化して数年内に死をもたらす筋肉機能障害によって特徴付けられる(例えば、十代の若者の筋萎縮側索硬化症(ALS)及びデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD));(ii)可変進行性又は緩徐進行性の疾患:数年にわたって悪化して平均余命をほんの少し減少させる筋肉機能障害によって特徴付けられる(例えば、肢帯筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、及び、筋強直性ジストロフィー)。神経筋疾患(NMD)における呼吸不全の症状としては、逓増的な全身衰弱、嚥下障害、労作時及び安静時の呼吸困難、疲労、眠気、起床時の頭痛、並びに、集中及び情緒変化の困難が挙げられる。
【0011】
胸壁疾患は、呼吸筋と胸郭との間の非効率的な結合をもたらす一群の胸郭変形である。疾患は、通常、拘束性障害によって特徴付けられるとともに、長期高炭酸ガス性呼吸不全の可能性を共有する。脊柱側弯症及び/又は脊椎後側弯症が重度の呼吸不全を引き起こす場合がある。呼吸不全の症状としては、労作時の呼吸困難、末梢浮腫、起座呼吸、反復性肺感染症、起床時の頭痛、疲れ、睡眠の質の低下、及び、食欲低下が挙げられる。
【0012】
そのような状態を治療する或いは改善するために一連の治療が使用されてきた。また、それ以外には、呼吸器疾患の発症を防止するために健常人がそのような治療をうまく利用する場合がある。しかしながら、これらは多くの欠点を有する。
【0013】
2.2.2 治療
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)を治療するために鼻持続的気道陽圧(CPAP)治療が使用されてきた。前提は、持続的気道陽圧が、空気圧スプリントとして作用するとともに、軟口蓋及び舌を後口腔咽頭壁から離れるように前方へ押し進めることによって上気道閉塞を防止し得ることである。鼻持続的気道陽圧(CPAP)治療による閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療が自発的な場合があり、そのため、患者は、そのような治療を与えるために使用される装置が不快であること、使用するのが難しいこと、高価であること、或いは、審美的に魅力がないことのうちの1つ以上であると考えれば、治療を順守しないことを選ぶ場合がある。
【0014】
非侵襲的換気(NIV)は、呼吸の仕事の一部又は全部を行うことによって患者が深く息を吸うのを助けるべく及び/又は適切な酸素レベルを体内で維持するべく上気道を通じて換気補助を患者に与える。換気補助は、患者インタフェースを介して与えられる。非侵襲的換気(NIV)は、チェーン−ストークス呼吸(CSR)、肥満低換気症候群(OHS)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、MD、及び、胸壁疾患を治療するために使用されてきた。幾つかの形態では、これらの治療の快適さ及び有効性が向上されてもよい。
【0015】
侵襲的換気(IV)は、もはや自分自身で効果的に呼吸できない患者に対して換気補助を与えるとともに、気管切開チューブを使用して与えられる場合がある。幾つかの形態では、これらの治療の快適さ及び有効性が向上される場合がある。
【0016】
2.2.3 診断及び治療システム
これらの治療は、治療システム又は治療装置によって与えられてもよい。システム及び装置は、病状を治療することなく病状を診断するために使用されてもよい。
【0017】
治療システムは、呼吸圧治療装置(RPT装置)、空気回路、加湿器、患者インタフェース、及び、データ管理を備えてもよい。
【0018】
治療システムの他の形態は下顎再配置装置である。
【0019】
2.2.3.1 患者インタフェース
患者インタフェースは、例えば空気の流れを与えることによって呼吸機器をそのユーザに接続するために使用されてもよい。空気の流れは、マスクを介して鼻及び/又は口へ、チューブを介して口へ、或いは、気管切開チューブを介してユーザの気管へ与えられてもよい。適用されるべき治療に応じて、患者インタフェースは、治療をもたらすのに十分な周囲圧力との差異がある圧力のガス、例えば約10cmH
2Oの陽圧のガスの送出を容易にするべく、例えば患者の顔面領域とシールを形成してもよい。酸素の送出などの他の形態の治療に関して、患者インタフェースは、約10cmH
2Oの陽圧の所定量のガスの気道への送出を容易にするのに十分なシールを含まなくてもよい。
【0020】
患者インタフェースの設計は、多くの課題を与える。顔は複雑な三次元形状を有する。鼻のサイズ及び形状は、個人個人でかなり異なる。頭部は骨、軟骨、及び、軟組織を含むため、顔面の異なる領域は、機械的な力に対して異なって応答する。顎又は下顎骨は、頭蓋骨の他の骨に対して移動する場合がある。呼吸治療の期間の過程中に頭部全体が移動する場合がある。
【0021】
これらの課題の結果として、幾つかのマスクは、非常に目立ち、審美的に望ましくない、高価である、嵌め付け具合が悪い、使用するのが難しい、及び、特に長期間にわたって着用されるとき或いは患者がシステムに不慣れなときに不快であるといったことのうちの1つ以上に見舞われる。例えば、飛行士のためにのみ設計されたマスク、個人的保護機器の一部として設計されたマスク、SCUBAマスク、又は、麻酔薬の投与のために設計されたマスクは、それらの当初の適用においては許容できる場合があるが、それにもかかわらず、長期間にわたって、例えば数時間にわたって着用するには不快であり、望ましくない。この不快感は、患者の治療の順守における低下をもたらす場合がある。これは、マスクが睡眠中に着用されなければならない場合にはなおさらそうである。
【0022】
鼻持続的気道陽圧(CPAP)治療は、患者が治療を順守すれば、特定の呼吸器疾患を治療するのに非常に有効である。マスクが不快であれば或いはマスクを使用するのが難しければ、患者が治療を順守しない場合がある。患者が自分達のマスクを定期的に洗うことがしばしば推奨されるため、マスクを掃除するのが難しければ(例えば、組み付け又は分解が難しければ)、患者が自分達のマスクを掃除しない場合があり、これが患者の順守に影響を及ぼす場合がある。
【0023】
他の用途(例えば、飛行士)のためのマスクが睡眠呼吸障害の治療で用いるのに適さない場合があるが、睡眠呼吸障害の治療で用いるように設計されたマスクが他の用途に適する場合がある。
【0024】
これらの理由のため、睡眠中に鼻持続的気道陽圧(CPAP)を供給するための患者インタフェースは別個の分野を成す。
【0025】
2.2.3.1.1 シール形成部
患者インタフェースはシール形成部を含む場合がある。シール形成部は患者の顔面と直接に接触するため、シール形成部の形状及び形態は、患者インタフェースの有効性及び快適さに直接に影響を及ぼし得る。
【0026】
患者インタフェースは、シール形成部が使用時に顔面と係合するようになっている場合の設計意図にしたがって部分的に特徴付けられ得る。患者インタフェースの1つの形態において、シール形成部は、それぞれの左右の鼻孔と係合するための2つの従属部を備える場合がある。患者インタフェースの1つの形態において、シール形成部は、使用時に両方の鼻孔を取り囲む単一の要素を備える場合がある。そのような単一の要素は、例えば顔面の上唇領域上及び鼻梁領域上に重なり合うようになっている場合がある。患者インタフェースの1つの形態において、シール形成部は、例えば顔面の下唇領域に対してシールを形成することにより、使用時に口領域を取り囲む要素を備える場合がある。患者インタフェースの1つの形態において、シール形成部は、使用時に鼻孔領域及び口領域の両方を取り囲む単一の要素を備える場合がある。これらの異なるタイプの患者インタフェースは、鼻マスク、フルフェースマスク、鼻枕、鼻パフ、及び、口鼻マスクを含むそれらの製造業者による様々な名前によって知られている。
【0027】
患者の顔面の1つの領域で有効となり得るシール形成部は、例えば患者の顔面の異なる形状、構造、ばらつき、及び、敏感領域に起因して、他の領域で適さない場合がある。例えば、患者の額の上に重なり合う水泳ゴーグルにおけるシールは、患者の鼻で使用するのに適さない場合がある。
【0028】
特定のシール形成部は、1つの形態が幅広い範囲の異なる顔面の形状及びサイズに適合するとともに快適で有効であるように大量生産を目的に設計される場合がある。患者の顔面の形状と大量生産された患者インタフェースのシール形成部との間に不適合が存在する程度まで、シールが生じるべく一方又は両方が適合しなければならない。
【0029】
1つのタイプのシール形成部は、患者インタフェースの外周にわたって延在するとともに、シール形成部をユーザの顔面と突き合わせ係合させた状態で力が患者インタフェースに印加されるときにユーザの顔面に対してシールするようになっている。シール形成部は、空気充填クッション又は流体充填クッション、或いは、ゴムなどのエラストマーから形成される弾性シール要素の成形面又は形成面を含む場合がある。この種のシール形成部を用いると、嵌め合いが適切でなければ、シール形成部と顔面との間に隙間が存在し、また、患者インタフェースを顔面に押して付けてシールを達成するために更なる力が必要とされる。
【0030】
他のタイプのシール形成部は、陽圧がマスク内に印加されるときにユーザの顔面に対する自己シール作用をもたらすようにマスクの外周にわたって位置される薄い材料のフラップシールを組み込む。これまでのスタイルのシール形成部のように、顔面とマスクとの間の適合が良くなければ、シールを行うために更なる力が必要とされる場合があり、或いは、マスクが意図せずに漏れる場合がある。また、シール形成部の形状が患者の形状と適合しなければ、シール形成部が使用時に折れる或いは座屈する場合があり、それにより、意図しない漏れが生じる。
【0031】
他のタイプのシール形成部は、例えば鼻孔内へ挿入するための摩擦嵌合要素を備えてもよいが、一部の患者はこれらが不快だと考える。
【0032】
他の形態のシール形成部は、シールを行うために接着剤を使用する場合がある。一部の患者は、接着剤を自分達の顔面に絶えず塗布して除去することが不便であると感じる場合がある。
【0033】
一連の患者インタフェースシール形成部技術は、レスメドリミテッドに譲渡された以下の特許出願、すなわち、国際特許出願公開第1998/004,310号明細書;国際特許出願公開第2006/074,513号明細書;国際特許出願公開第2010/135,785号明細書に開示される。
【0034】
1つの形態の鼻枕がPuritan Bennettにより製造されるAdam Circuitにおいて見出される。他の鼻枕又は鼻パフは、Puritan Bennettコーポレーションに譲渡された米国特許第4,782,832号明細書(Trimble及びその他)の主題である。
【0035】
レスメドリミテッドは、鼻枕を組み込む以下の製品、すなわち、SWIFT (登録商標)鼻枕マスク、SWIFT (登録商標) II鼻枕マスク、SWIFT (登録商標) LT鼻枕マスク、SWIFT (登録商標) FX鼻枕マスク、及び、LIBERTYフルフェースマスクを製造してきた。レスメドリミテッドに譲渡された以下の特許出願、すなわち、国際特許出願公開第2004/073,778号明細書(数ある中でも、ResMed SWIFT (登録商標)鼻枕の態様について記載する)、米国特許出願公開第2009/0044808号明細書(数ある中でも、ResMed SWIFT (登録商標) LT鼻枕の態様について記載する)、国際特許出願公開第2005/063,328号明細書及び国際特許出願公開第2006/130,903号明細書(数ある中でも、ResMed LIBERTYフルフェースマスクの態様について記載する)、国際特許出願公開第2009/052,560号明細書(数ある中でも、ResMed SWIFT (登録商標) FX鼻枕の態様について記載する)は、鼻枕マスクについて記載する。
【0036】
2.2.3.1.2 位置決め安定化
陽圧空気治療のために使用される患者インタフェースのシール形成部は、シールに支障を来す空気圧の対応する力に晒される。したがって、シール形成部を位置決めしてそれを顔の適切な部分とのシール関係に維持するために様々な技術が使用されてきた。
【0037】
1つの技術は接着剤の使用である。これについては、例えば米国特許出願公開第2010/0000534号明細書を参照されたい。しかしながら、これらは一部の患者にとって不快な場合がある。
【0038】
他の技術は、1つ以上のストラップ及び安定化ハーネスの使用である。多くのそのようなハーネスは、似合わない、嵩張る、不快、及び、使用し難いといったことの1つ以上に見舞われる。
【0039】
2.2.3.1.3 ベント技術
患者インタフェースシステムの幾つかの形態は、吐き出された二酸化炭素の流出を可能にするためのベントを含んでもよい。ベントは、患者インタフェースの内部空間、例えばプレナムチャンバから、患者インタフェースの外部、例えば周囲環境へのガスの流れを可能にしてもよい。ベントがオリフィスを備えてもよく、また、マスクの使用時にガスがオリフィスを通じて流れてもよい。多くのそのようなベントは雑音がある。他のベントは、使用時に塞がって不十分な流出をもたらす場合がある。一部のベントは、例えば雑音或いは集束気流によって、患者1000のベッドパートナー1100の睡眠を乱す場合がある。
【0040】
レスメドリミテッドは多くの改良されたマスクベント技術を開発してきた。これについては、国際特許出願公開第1998/034,665号明細書;国際特許出願公開第2000/078,381号明細書;米国特許第6,581,594号明細書;米国特許出願公開第2009/0050156号明細書;米国特許出願公開第2009/0044808号明細書を参照されたい。
【0041】
【表1】
【0042】
様々な対象の音圧レベル値が以下に挙げられる。
【0043】
【表2】
【0044】
2.2.3.2 呼吸圧治療(RPT)装置
一連の用途では、例えば工業規模の換気システムでは、空気圧発生器が知られている。しかしながら、医療用途のための空気圧発生器は、より一般的な空気圧発生器によって満たされない特定の要件、例えば医療装置の信頼性要件、サイズ要件、及び、重量要件などを有する。また、医療治療のために設計される装置でさえ、快適さ、雑音、使用の容易さ、有効性、サイズ、重量、製造可能性、コスト、及び、信頼性のうちの1つ以上を含む欠点に見舞われる場合がある。
【0045】
特定のRPT装置の特別な要件の一例は、音響雑音である。
【0046】
【表3】
【0047】
睡眠呼吸障害を治療するために使用される1つの既知の呼吸圧治療(RPT)装置は、レスメドにより製造されるS9 Sleep Therapy Systemである。呼吸圧治療(RPT)装置の他の例は換気装置である。成人用換気装置及び小児用換気装置のResMed Stellar(商標)シリーズなどの換気装置は、例えばこれらに限定されないが神経筋疾患(NMD)、肥満低換気症候群(OHS)、及び、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの多くの病状を治療するために一連の患者のための侵襲的及び非侵襲的な非依存換気への支援をもたらすことができる。
【0048】
ResMed Elisee(商標)150換気装置及びResMed VS III(商標)換気装置は、多くの病状を治療するために成人患者又は小児患者に適した侵襲的及び非侵襲的な依存換気への支援をもたらすことができる。これらの換気装置は、単一又は二重の四肢回路を用いて容量換気モード及び気圧換気モードをもたらす。呼吸圧治療(RPT)装置は、一般に、モータ駆動ブロワ又は圧縮ガスリザーバなどの圧力発生器を備えるとともに、空気の流れを患者の気道へ供給するように構成される。ある場合には、空気の流れが陽圧で患者の気道へ供給されてもよい。呼吸圧治療(RPT)装置の出口は、空気回路を介して、前述の患者インタフェースなどの患者インタフェースに接続される。
【0049】
2.2.3.3 加湿器
加湿を伴わない空気流の送出は、気道の乾燥を引き起こす場合がある。呼吸圧治療(RPT)装置と患者インタフェースとを伴う加湿器の使用は、鼻粘膜の乾燥を最小限に抑えるとともに患者気道の快適さを高める加湿ガスを生み出す。また、より涼しい気候では、一般に患者インタフェース内及び患者インタフェース周囲の顔面領域に対して印加される暖かい空気が、冷たい空気よりも快適である。一連の人工的な加湿装置及び加湿システムが知られているが、これらは医療用加湿器の特別な要件を満たさない場合がある。
【0050】
医療用加湿器は、必要時に、一般的には患者が(例えば病院で)寝ている場合又は休んでいる場合に、外気に対する空気流の湿度及び/又は温度を高めるために使用される。結果として、医療用加湿器は、ベッドサイドに配置するべく小さくてもよく、また、患者の周囲環境を加湿する及び/又は加熱することなく患者へ送出される空気流の加湿及び/又は加熱のみを行うように構成されてもよい。例えば部屋型システム(例えば、サウナ、エアコン、蒸発冷却器)は、患者によって吸い込まれる空気を加湿することもできるが、これらのシステムは、部屋全体を加湿する及び/又は加熱する場合もあり、それにより居住者に対して不快感をもたらす場合がある。更に、医療用加湿器は、工業用加湿器よりも厳しい安全制約を有する場合がある。
【0051】
多くの医療用加湿器が知られているが、これらの加湿器は、1つ以上の欠点に見舞われ得る。一部の医療用加湿器は不十分な加湿を行う場合があり、一部の加湿器は患者により使用するのが難しい或いは不便である。
【0052】
2.2.4 熱水分交換器(HME)
熱水分交換器は、一般に、凝縮面及び吸収面として作用し得る発泡体、紙、又は、物質から形成される。材料は、水分保持能力を向上させるために吸湿塩を伴ってもよい。適した塩は、塩化カルシウムを含む。
【0053】
熱水分交換器(HME)は、患者の気道からの呼気ガス中に存在する熱及び水分を部分的に回復させるためにPAP治療などのRPT治療で利用されてもよい。この熱及び水分は、呼吸用ガス流が吸気前にHMEを通過するように受動的態様で保持されて患者へと再循環され得る。したがって、HMEの使用は、加熱型加湿器システムの必要性を回避しつつ加湿されない外気を用いたPAP治療に関連する任意の有害な効果を最小限に抑えるためにPAP治療中に大部分の患者に必要とされる水分及び湿度(一般的には>10mg/lとして認識される)を与えることができる。加熱型加湿器ではなくHMEを使用すると、空気送出チューブ内で凝縮により引き起こされる閉塞の可能性を下げることもできる。
【0054】
PAP治療における熱水分交換器(HME)の使用は、加熱型加湿器に伴って必要とされる更なる電力の必要性を回避でき、余分な関連する構成要素の必要性を減らすことができる。これは、製造コストを減らすことができるとともに、持続的気道陽圧(CPAP)治療ユニットの全体のサイズも減らすことができる。
【0055】
持続的気道陽圧(CPAP)治療における熱水分交換器(HME)の使用に伴う共通の課題は、流れインピーダンスも最小限に抑えるとともにCO
2流出の快適で安全なレベルも維持しつつ十分な熱及び水分を与えることができるHMEの能力に関連する。流れインピーダンスは、患者呼吸努力(呼吸仕事量)に影響を与える場合があるとともに、事象(無呼吸、呼吸低下、いびき)検出アルゴリズムに影響を及ぼす場合があり、したがって、多くの場合に、それを最小限に抑えることが求められる。また、通気による熱及び水分の損失も考慮して、この損失を妨げるべくHMEが機能しているようにするべきである。
【0056】
RPT治療におけるHMEの現在の形態は、患者加湿を無視できることが分かってきており、流れインピーダンス及び/又はCO
2流出に伴う問題を有する。例えば、排気ベントの周囲で或いは治療システムの流量発生器側でHMEユニットをエルボー内に配置することは、患者加湿を無視できる(吸湿性の)利点を伴いつつ、インピーダンス及び/又はCO
2流出に伴う問題を呈してきた。この形態では、ベント流がHMEを通じた主要な流れである。ベント流は、HMEを通じて流れてベントを通じて直接に流出する患者又は流量発生器からの流れである。また、HMEの現在の形態は、十分な加湿レベルを患者に与えるために患者呼気中に十分な水分交換を可能にしない。したがって、治療の流れに対する許容できるインピーダンス及び許容できるCO
2流出を有しつつ所望の患者加湿を達成するために、PAP治療などのRPT治療におけるHME使用にとって優れた構造及び形態を与える必要性がある。
【発明を実施するための形態】
【0082】
5 本技術の実施例の詳細な説明
本技術を更に詳しく説明する前に、本技術が本明細書中に記載される様々であってもよい特定の実施例に限定されないことが理解されるべきである。また、この開示の中で使用される用語は、本明細書中で論じられる特定の実施例を説明するという目的のためにすぎず、限定しようとするものでないことも理解されるべきである。
【0083】
以下の説明は、1つ以上の共通の特性及び/又は特徴を共有し得る様々な実施例に関連して与えられる。任意の1つの実施例の1つ以上の特徴が他の1つの実施例又は他の複数の実施例のうちの1つ以上の特徴と組み合わされてもよいことが理解されるべきである。また、任意の実施例における任意の単一の特徴又は特徴の組み合わせが更なる実施例を構成してもよい。
【0084】
5.1 治療
1つの形態において、本技術は、患者1000の気道の入口に陽圧を印加するステップを備える呼吸器疾患を治療するための方法を備える。
【0085】
本技術の特定の実施例では、陽圧の所定量の空気が一方又は両方の鼻孔を介して患者の鼻通路へ供給される。
【0086】
本技術の特定の実施例では、口呼吸が制限され、限定され、或いは、防止される。
【0087】
5.2 治療システム
1つの形態において、本技術は、呼吸器疾患を治療するための機器又は装置を備える。機器又は装置は、患者インタフェース3000に通じる空気回路4170を介して空気などの加圧呼吸ガスを患者1000へ供給するためのRPT装置4000を備えてもよい。
【0088】
5.3 患者インタフェース
本技術の1つの態様に係る非侵襲的な患者インタフェース3000は、以下の機能的態様、すなわち、シール形成構造体3100、プレナムチャンバ3200、位置決め安定化構造体3300、及び、空気回路4170への接続のための接続ポート3600の1つの形態を備える。幾つかの形態では、機能的態様が1つ以上の物理的な構成要素によって与えられてもよい。幾つかの形態では、1つの物理的構成要素が1つ以上の機能的態様を与えてもよい。使用時、シール形成構造体3100は、陽圧の空気の気道への供給を容易にするために患者の気道への入口を取り囲むように配置される。
【0089】
5.3.1 シール形成構造体
本技術の1つの形態において、シール形成構造体3100は、シール形成面を与えるとともに、クッション機能を更に与えてもよい。
【0090】
本技術に係るシール形成構造体3100は、シリコーンなどの柔軟な、可撓性のある、弾性材料から構成されてもよい。
【0091】
1つの形態では、シール形成構造体3100がシールフランジ3110と支持フランジ3120とを備える。シールフランジ3110は、プレナムチャンバ3200の外周3210にわたって延在する約1mm未満、例えば約0.25mm〜約0.45mmの厚さを有する比較的薄い部材を備えてもよい。支持フランジ3120がシールフランジ3110よりも相対的に厚くてもよい。支持フランジ3120は、シールフランジ3110とプレナムチャンバ3200の周縁3220との間に配置されるとともに、外周3210の経路の少なくとも一部にわたって延在する。支持フランジ3120は、スプリング状要素であり或いはスプリング状要素を含み、使用時にシールフランジ3110を座屈しないように支持するべく機能する。使用時、シールフランジ3110は、該シールフランジを顔面との緊密なシール係合状態へと付勢するべくシールフランジの下面に作用するプレナムチャンバ3200内のシステム圧力に容易に応答し得る。
【0092】
1つの形態において、非侵襲的な患者インタフェース3000のシール形成部は、一対の鼻パフ又は一対の鼻枕を備え、それぞれの鼻パフ又は鼻枕は、患者の鼻のそれぞれの鼻孔とシールを形成するように構成されて配置される。
【0093】
本技術の一態様に係る鼻枕は、その少なくとも一部が患者の鼻の下面でシールを形成する円錐台と、柄部と、円錐台の下面にあって円錐台を柄部に接続する可撓性領域とを含む。また、本技術の鼻枕が接続される構造体は、柄部の基部に隣接する可撓性領域を含む。可撓性領域は、円錐台と鼻枕が接続される構造体との相対動作−変位及び傾動の両方−に順応するユニバーサルジョイント構造を促進するように協調して作用し得る。例えば、円錐台は、柄部が接続される構造体へ向けて軸方向に移動されてもよい。
【0094】
1つの形態において、非侵襲的な患者インタフェース3000は、患者の顔面の上側の唇の領域(すなわち、上唇)で使用時にシールを形成するシール形成部を備える。
【0095】
1つの形態において、非侵襲的な患者インタフェース3000は、患者の顔面の顎領域で使用時にシールを形成するシール形成部を備える。
【0096】
5.3.2 プレナムチャンバ
プレナムチャンバ3200は、使用時にシールが生じる領域で平均的な人の顔の表面輪郭に対して相補的であるように形成される外周3210を有する。使用時、プレナムチャンバ3200の周縁3220は、顔の隣接する表面に近接して位置される。顔との実際の接触はシール形成構造体3100によってもたらされる。シール形成構造体3100は、使用時に、プレナムチャンバ3200の全周3210にわたって延在してもよい。
【0097】
5.3.3 位置決め安定化構造体
本技術の患者インタフェース3000のシール形成部3100は、使用時に位置決め安定化構造体3300によってシール位置に保持される。
【0098】
5.3.4 ベント
1つの形態において、患者インタフェース3000は、吐き出される二酸化炭素の流出を可能にするように構成されて配置されるベント3400を含む。
【0099】
本技術に係るベント3400の1つの形態は、複数の穴、例えば約20〜約80個の穴、又は、約40〜約60個の穴、又は、約45〜約55個の穴を備える。
【0100】
ベント3400はプレナムチャンバ3200に位置される。或いは、ベント3400は、チューブ分離構造体3500、例えばスイベル3510に位置される。
【0101】
5.3.5 分離構造体
1つの形態おいて、患者インタフェース3000は、少なくとも1つのチューブ分離構造体3500、例えばスイベル3510や、ボール及びソケット3520を含む。
【0102】
5.3.6 接続ポート
接続ポート3600が空気回路4170への接続を可能にする。
【0103】
5.3.7 前頭支持体
1つの形態では、患者インタフェース3000が前頭支持体3700を含む。
【0104】
5.3.8 窒息防止弁
1つの形態では、患者インタフェース3000が窒息防止弁3800を含む。
【0105】
5.3.9 ポート
本技術の1つの形態において、患者インタフェース3000は、プレナムチャンバ3200内の容積へのアクセスを可能にする1つ以上のポートを含む。1つの形態において、これは、医師が補給酸素を供給できるようにする。1つの形態において、これは、圧力などのプレナムチャンバ3200内のガスの特性の直接的な測定を可能にする。
【0106】
5.4 RPT装置
本技術の1つの態様に係るRPT装置4000は、機械的な空気圧式の構成要素4100と電気構成要素4200とを備えるとともに、1つ以上のアルゴリズム4300を実行するように構成される。RPT装置は外部ハウジング4010を有してもよく、外部ハウジング4010は、2つの部分を成して、すなわち、上部4012と下部4014とを成して形成されてもよい。また、外部ハウジング4010が1つ以上のパネル4015を含んでもよい。RPT装置4000は、RPT装置4000の1つ以上の内部構成要素を支持する筐体4016を備える。RPT装置4000がハンドル4018を含んでもよい。
【0107】
RPT装置4000の空気圧経路は、1つ以上の空気経路部品、例えば、入口空気フィルタ4112と、入口マフラ4122と、陽圧の空気を供給できる圧力発生器4140(例えば、ブロワ4142)と、出口マフラ4124と、圧力センサ4272及び流量センサ4274などの1つ以上のトランスデューサ4270とを備えてもよい。
【0108】
空気経路部品のうちの1つ以上は、空気圧ブロック4020と称される取り外し可能な一体的な構造体内に位置されてもよい。空気圧ブロック4020が外部ハウジング4010内に位置されてもよい。1つの形態において、空気圧ブロック4020は、筐体4016の一部によって支持され或いは筐体4016の一部として形成される。
【0109】
RPT装置4000は、電源4210と、1つ以上の入力装置4220と、中央コントローラ4230と、治療装置コントローラ4240と、圧力発生器4140と、1つ以上の保護回路4250と、メモリ4260と、トランスデューサ4270と、データ通信インタフェース4280と、1つ以上の出力装置4290とを含んでもよい。電気構成要素4200が単一の印刷回路基板アセンブリ(PCBA)4202上に装着されてもよい。別の形態では、RPT装置4000が複数のPCBA4202を含んでもよい。
【0110】
5.4.1 RPT装置の機械的及び空気圧式の構成要素
RPT装置は、一体的なユニット内に以下の構成要素のうちの1つ以上を備えてもよい。別の形態では、以下の構成要素のうちの1つ以上がそれぞれの別個のユニットとして位置されてもよい。
【0111】
5.4.1.1 空気フィルタ
本技術の1つの形態に係るRPT装置は、1つの空気フィルタ4110又は複数の空気フィルタ4110を含んでもよい。
【0112】
1つの形態では、入口空気フィルタ4112が圧力発生器4140の上流側の空気圧経路の冒頭に位置される。
図4B参照。
【0113】
1つの形態では、出口空気フィルタ4114、例えば抗菌フィルタが空気圧ブロック4020の出口と患者インタフェース3000との間に位置される。
図4B参照。
【0114】
5.4.1.2 マフラ
本技術の1つの形態では、入口マフラ4122が圧力発生器4140の上流側の空気圧経路内に位置される。
図4B参照。
【0115】
本技術の1つの形態では、出口マフラ4124が圧力発生器4140と患者インタフェース3000との間の空気圧経路内に位置される。
図4B参照。
【0116】
5.4.1.3 圧力発生器
本技術の一形態では、陽圧の空気の流れ又は供給を生み出すための圧力発生器4140が制御可能なブロワ4142である。例えば、ブロワ4142は、1つ以上のインペラが渦巻きを成して収容されるブラシレスDCモータ4144を含んでもよい。ブロワは、約4cmH
2O〜約20cmH
2Oの範囲内、又は、他の形態では最大で約30cmH
2Oの陽圧の所定量の空気を例えば最大で約120リットル/分の割合で送出することができてもよい。ブロワは、以下の特許又は特許出願、すなわち、米国特許第7,866,944号明細書、米国特許第8,638,014号明細書、米国特許第8,636,479号明細書、及び、PCT国際特許出願公開第2013/020167号明細書のうちのいずれか1つに記載され、その内容は、それらの全体が本願に組み入れられる。
【0117】
圧力発生器4140は治療装置コントローラ4240の制御下にある。
【0118】
1つの形態において、圧力発生器4140は、ピストン駆動ポンプ、高圧源(例えば、圧縮空気リザーバ)に接続される圧力調整器、又は、ベローズであってもよい。
【0119】
5.4.1.4 トランスデューサ
トランスデューサは、RPT装置の内部であってもよく、或いは、RPT装置の外部であってもよい。外部トランスデューサは、空気回路、例えば患者インタフェースの一部に例えば位置されてもよく或いは該一部を形成してもよい。外部トランスデューサは、データをRPT装置へ送信する又は伝えるドップラーレーダー移動センサなどの非接触センサの形態を成してもよい。
【0120】
本技術の1つの形態では、1つ以上のトランスデューサ4270が圧力発生器4140の上流側及び/又は下流側に位置される。1つ以上のトランスデューサ4270は、空気圧経路内のそのポイントの特性、例えば流量、圧力、又は、温度などを測定するように構成されて配置されてもよい。
【0121】
本技術の1つの形態では、1つ以上のトランスデューサ4270が患者インタフェース3000に近接して位置されてもよい。
【0122】
1つの形態において、トランスデューサ4270からの信号は、例えばローパスフィルタリング、ハイパスフィルタリング、又は、バンドパスフィルタリングなどによってフィルタ処理されてもよい。
【0123】
5.4.1.4.1 流量トランスデューサ
本技術に係る流量トランスデューサ4274は、差圧トランスデューサ、例えばSENSIRIONが提供しているSDP600シリーズ差圧トランスデューサに基づいてもよい。
【0124】
1つの形態において、流量トランスデューサ4274からの総流量Qtなどの流量を表わす信号は、中央コントローラ4230によって受けられる。
【0125】
5.4.1.4.2 圧力トランスデューサ
本技術に係る圧力トランスデューサ4272は、空気圧経路と流体連通した状態で位置される。適した圧力トランスデューサの一例は、HONEYWELL ASDXシリーズからのセンサである。別の適した圧力トランスデューサは、GENERAL ELECTRICが提供しているNPAシリーズからのセンサである。
【0126】
1つの形態では、圧力トランスデューサ4272からの信号が中央コントローラ4230によって受けられる。
【0127】
5.4.1.4.3 モータ速度トランスデューサ
本技術の1つの形態では、モータ4144及び/又はブロワ4142の回転速度を決定するためにモータ速度トランスデューサ4276が使用される。モータ速度トランスデューサ4276からのモータ速度信号が治療装置コントローラ4240へ供給されてもよい。モータ速度トランスデューサ4276は、例えば、ホール効果センサなどの速度センサであってもよい。
【0128】
5.4.1.5 逆流出防止弁
本技術の1つの形態では、逆流出防止弁が加湿器5000と空気圧ブロック4020との間に位置される。逆流出防止弁は、水が加湿器5000から例えばモータ4144へ向けて上流側へ流れる危険を減らすように構成されて配置される。
【0129】
5.4.1.6 空気回路
本技術の一態様に係る空気回路4170は、使用時に空気流が空気圧ブロック4020及び患者インタフェース3000などの2つの構成要素間で移動できるようにするべく構成されて配置される導管又はチューブである。
【0130】
特に、空気回路4170は、空気圧ブロックの出口及び患者インタフェースと流体接続してもよい。空気回路が空気送出チューブと称されてもよい。ある場合には、吸気及び呼気のための回路の別個の肢が存在してもよい。他の場合には、単一の肢が使用される。
【0131】
5.4.1.7 酸素送出
本技術の1つの形態では、空気圧ブロック4020の上流側などの空気圧経路内の1つ以上のポイントへ、空気回路4170へ、及び/又は、患者インタフェース3000へ補給酸素4180が送出される。
【0132】
5.4.2 RPT装置電気構成要素
5.4.2.1 電源
電源4210は、RPT装置4000の外部ハウジング4010の内部又は外部に位置されてもよい。
【0133】
本技術の1つの形態において、電源4210は、RPT装置4000のみに電力を供給する。本技術の他の形態において、電源4210は、RPT装置4000及び加湿器5000の両方へ電力を供給する。
【0134】
5.4.2.2 入力装置
本技術の1つの形態において、RPT装置4000は、人が装置と情報をやりとりできるようにするために、ボタン、スイッチ、又は、ダイヤルの形態を成す1つ以上の入力装置4220を含む。ボタン、スイッチ、又は、ダイヤルは、物理的な装置であってもよく、或いは、タッチスクリーンを介してアクセスできるソフトウェア装置であってもよい。ボタン、スイッチ、又は、ダイヤルは、1つの形態では、外部ハウジング4010に対して物理的に接続されてもよく、或いは、他の形態では、中央コントローラ4230に対して電気的な接続状態にある受信器と無線通信状態にあってもよい。
【0135】
1つの形態において、入力装置4220は、人が値及び/又はメニューオプションを選択できるようにするべく構成されて配置されてもよい。
【0136】
5.4.2.3 中央コントローラ
本技術の1つの形態において、中央コントローラ4230は、RPT装置4000を制御するのに適した1又は複数のプロセッサである。
【0137】
適したプロセッサは、x86 INTELプロセッサ、ARM Holdingsが提供しているARM Cortex−Mプロセッサに基づくプロセッサ、例えばST MICROELECTRONICが提供しているSTM32シリーズマイクロコントローラなどを含んでもよい。本技術の特定の別の形態では、ST MICROELECTRONICSが提供しているSTR9シリーズマイクロコントローラなどの32ビットRISC CPU、或いは、TEXAS INSTRUMENTSによって製造されるマイクロコントローラのMSP430ファミリーからのプロセッサなどの16ビットRISC CPUも適しているかもしれない。
【0138】
本技術の1つの形態では、中央コントローラ4230が専用の電子回路である。
【0139】
1つの形態では、中央コントローラ4230が特定用途向け集積回路である。他の形態では、中央コントローラ4230が別個の電子構成要素を備える。
【0140】
中央コントローラ4230は、1つ以上のトランスデューサ4270及び1つ以上の入力装置4220から入力信号を受けるように構成されてもよい。
【0141】
中央コントローラ4230は、出力装置4290、治療装置コントローラ4240、データ通信インタフェース4280、及び、加湿器コントローラ5250のうちの1つ以上へ出力信号を供給するように構成されてもよい。
【0142】
本技術の幾つかの形態において、中央コントローラ4230は、例えばメモリ4260などの持続性コンピュータ可読記憶媒体に記憶されるコンピュータプログラムとして表わされる1つ以上のアルゴリズム4300などの本明細書中に記載される1つ以上の方法論を実施するように構成される。本技術の幾つかの形態では、中央コントローラ4230がRPT装置4000と一体化されてもよい。しかしながら、本技術の幾つかの形態では、幾つかの方法論が遠隔的に位置される装置によって行われてもよい。例えば、遠隔的に位置される装置は、換気装置のための制御設定を決定してもよく、或いは、本明細書中に記載される例えば任意のセンサなどからの記憶データの解析によって呼吸関連事象を検出してもよい。
【0143】
5.4.2.4 クロック
RPT装置4000は、中央コントローラ4230に接続されるクロック4232を含んでもよい。
【0144】
5.4.2.5 治療装置コントローラ
本技術の1つの形態において、治療装置コントローラ4240は、中央コントローラ4230により実行されるアルゴリズム4300の一部を形成する制御モジュール4330である。
【0145】
本技術の1つの形態では、治療装置コントローラ4240が専用のモータ制御集積回路である。例えば、1つの形態では、ONSEMIにより製造されるMC33035ブラシレスDCモータコントローラが使用される。
【0146】
5.4.2.6 保護回路
本技術に係る1つ以上の保護回路4250は、電気保護回路、温度及び/又は圧力安全回路を備えてもよい。
【0147】
5.4.2.7 メモリ
本技術の1つの形態によれば、RPT装置4000は、メモリ4260、例えば不揮発性メモリを含む。幾つかの形態では、メモリ4260がバッテリ給電式のスタティックRAMを含んでもよい。幾つかの形態では、メモリ4260が揮発性RAMを含んでもよい。
【0148】
メモリ4260がPCBA4202に位置されてもよい。メモリ4260は、EEPROM又はNANDフラッシュの形態を成してもよい。
【0149】
これに加えて或いは代えて、RPT装置4000は、取り外し可能な形態のメモリ4260、例えばSecure Digital(SD)標準規格にしたがって形成されるメモリカードを含む。
【0150】
本技術の1つの形態において、メモリ4260は、1つ以上のアルゴリズム4300などの本明細書中に記載される1つ以上の方法論を表わすコンピュータプログラム命令が記憶される持続性コンピュータ可読記憶媒体として作用する。
【0151】
5.4.2.8 データ通信システム
本技術の1つの形態では、データ通信インタフェース4280が設けられて中央コントローラ4230に接続される。データ通信インタフェース4280は、遠隔外部通信ネットワーク4282及び/又は局所外部通信ネットワーク4284に接続できてもよい。遠隔外部通信ネットワーク4282が遠隔外部装置4286に接続できてもよい。局所外部通信ネットワーク4284が局所外部装置4288に接続できてもよい。
【0152】
1つの形態では、データ通信インタフェース4280が中央コントローラ4230の一部である。他の形態において、データ通信インタフェース4280は、中央コントローラ4230とは別個であり、集積回路又はプロセッサを備えてもよい。
【0153】
1つの形態では、遠隔外部通信ネットワーク4282がインターネットである。データ通信インタフェース4280は、インターネットに接続するために有線通信(例えば、イーサネット又は光ファイバ)又は無線プロトコル(例えば、CDMA、GSM、LTE)を使用してもよい。
【0154】
1つの形態において、局所外部通信ネットワーク4284は、ブルートゥース(登録商標)又はコンシューマー赤外線プロトコルなどの1つ以上の通信規格を利用する。
【0155】
1つの形態において、遠隔外部装置4286は、1つ以上のコンピュータ、例えば一群のネットワークコンピュータである。1つの形態において、遠隔外部装置4286は、物理的なコンピュータではなく、仮想コンピュータであってもよい。いずれの場合にも、そのような遠隔外部装置4286は、医師などの適切に権限が与えられた人にアクセスできてもよい。
【0156】
局所外部装置4288は、パーソナルコンピュータ、携帯電話、タブレット、又は、遠隔制御器であってもよい。
【0157】
5.4.2.9 随意的なディスプレイ、アラームを含む出力装置
本技術に係る出力装置4290は、視覚ユニット、オーディオユニット、及び、触覚ユニットのうちの1つ以上の形態を成してもよい。視覚ディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)又は発光ダイオード(LED)ディスプレイであってもよい。
【0158】
5.4.2.9.1 ディスプレイドライバ
ディスプレイドライバ4292は、ディスプレイ4294上に表示するようになっている文字、記号、又は、画像を入力として受けて、それらをコマンドへと変換し、該コマンドにより、ディスプレイ4294はそれらの文字、記号、又は、画像を表示する。
【0159】
5.4.2.9.2 ディスプレイ
ディスプレイ4294は、ディスプレイドライバ4292から受けられるコマンドに応じて文字、記号、又は、画像を視覚的に表示するように構成される。例えば、ディスプレイ4294が8セグメントディスプレイであってもよく、その場合、ディスプレイドライバ4292は、それぞれの文字又は記号、例えば数字”0”を、8個のそれぞれのセグメントが特定の文字又は記号を表示するべく起動されるようになっているかどうかを示す8個の論理信号へと変換する。
【0160】
5.4.3 RPT装置アルゴリズム
5.4.3.1 前処理モジュール
本技術の1つの形態に係る前処理モジュール4310は、トランスデューサ4270、例えば流量トランスデューサ4274又は圧力トランスデューサ4272から信号を入力として受けるとともに、他のモジュール、例えば治療エンジンモジュール4320への入力として使用される1つ以上の出力値を計算するために1つ以上のプロセスステップを行う。
【0161】
本技術の1つの形態において、出力値は、インタフェース又はマスクの圧力Pm、呼吸流量Qr、及び、意図しない漏れ流量Qlを含む。
【0162】
本技術の様々な形態において、前処理モジュール4310は、以下のアルゴリズム、すなわち、圧力補償4312、ベント流量4314(例えば、意図する漏れ)、漏れ流量4316(例えば、意図しない漏れ)、及び、呼吸流量4318のうちの1つ以上を備える。
【0163】
5.4.3.1.1 圧力補償
本技術の1つの形態において、圧力補償アルゴリズム4312は、空気圧ブロックの出口付近の空気圧経路内の圧力を示す信号を入力として受ける。圧力補償アルゴリズム4312は、空気回路4170を通じた圧力降下を推定して、患者インタフェース3000内の推定圧力Pmを出力として与える。
【0164】
5.4.3.1.2 ベント流量
本技術の1つの形態において、ベント流量計算アルゴリズム4314は、患者インタフェース3000内の推定圧力Pmを入力として受けるとともに、患者インタフェース3000におけるベント3400からの空気のベント流量Qvを推定する。
【0165】
5.4.3.1.3 漏れ流量
本技術の1つの形態において、漏れ流量アルゴリズム4316は、総流量Qt及びベント流量Qvを入力として受けるとともに、幾つかの呼吸サイクルを含むように十分に長い期間、例えば約10秒にわたって総流量Qtとベント流量Qvとの間の差の平均を計算することによって、意図しない漏れ、すなわち、漏れ流量Qlの推定値を出力として与える。
【0166】
1つの形態において、漏れ流量アルゴリズム4316は、総流量Qt、ベント流量Qv、及び、患者インタフェース3000内の推定圧力Pmを入力として受けるとともに、漏れコンダクタンスを計算して漏れ流量Qlを漏れコンダクタンス及び圧力Pmの関数となるように決定することによって漏れ流量Qlを出力として与える。漏れコンダクタンスは、総流量Qtとベント流量Qvとの間の差に等しいローパスフィルタリングされた非ベント流量及び圧力Pmのローパスフィルタリングされた平方根の商として計算されてもよく、この場合、ローパスフィルタ時定数は、幾つかの呼吸サイクルを含むように十分に長い値、例えば約10秒を有する。
【0167】
5.4.3.1.4 呼吸流量
本技術の1つの形態において、呼吸流量アルゴリズム4318は、総流量Qt、ベント流量Qv、及び、漏れ流量Qlを入力として受けるとともに、ベント流量Qv及び漏れ流量Qlを総流量Qtから差し引くことによって、患者へ向かう空気の呼吸流量Qrを推定する。
【0168】
5.4.3.2 治療エンジンモジュール
本技術の1つの形態において、治療エンジンモジュール4320は、患者インタフェース3000内の圧力Pm及び患者へと向かう空気の呼吸流量のうちの1つ以上を入力として受けて、1つ以上の治療パラメータを出力として与える。
【0169】
本技術の1つの形態では、治療パラメータが持続的気道陽圧(CPAP)治療圧Ptである。
【0170】
本技術の1つの形態において、治療パラメータは、圧力サポートのレベル、及び、目標換気量のうちの1つ以上である。
【0171】
様々な形態において、治療エンジンモジュール4320は、以下のアルゴリズム、すなわち、位相決定4321、波形決定4322、換気量決定4323、吸気流量限界決定4324、無呼吸/呼吸低下決定4325、いびき決定4326、気道開通性決定4327、及び、治療パラメータ決定4328のうちの1つ以上を備える。
【0172】
5.4.3.2.1 位相決定
本技術の1つの形態では、RPT装置4000が位相を決定しない。
【0173】
本技術の1つの形態において、位相決定アルゴリズム4321は、呼吸流量Qrを示す信号を入力として受けるとともに、患者1000の呼吸サイクルの位相Φを出力として与える。
【0174】
1つの形態において、位相出力は、吸気又は呼気のいずれかの値に伴って変わる離散変数である。この形態の1つの実施において、位相Φは、呼吸流量Qrがプラスの閾値を超えるプラスの値を有するときに吸気の離散値を有するように決定され、また、位相Φは、呼吸流量Qrがマイナスの閾値よりも大きいマイナスの値を有するときに呼気の離散値を有するように決定される。この実施では慣例により、吸気中の位相値が0に設定されてもよく、一方、吸気中の位相値が1に設定されてもよい。
【0175】
1つの形態において、位相出力は、吸気、中間吸息一時停止、及び、呼気のうちの1つの値に伴って変わる離散変数である。
【0176】
1つの形態において、位相出力は、例えば0から1まで或いは0から2πラジアンまで変化する連続変数である。
【0177】
5.4.3.2.2 波形決定
本技術の1つの形態において、治療エンジンモジュール4320は、患者の呼吸サイクルの全体にわたって略一定の治療圧力を与える。
【0178】
本技術の1つの形態において、治療エンジンモジュール4320は、圧力対位相の波形にしたがって呼吸サイクルにわたり変化する治療圧力を与える。
【0179】
本技術の1つの形態において、波形決定アルゴリズム4322は、圧力−位相波形P(Φ)を出力として与える。圧力−位相波形P(Φ)は0〜1の間の値がとられてもよい。
【0180】
所定の波形P(Φ)は、位相値Φの関数としての値Pのルックアップテーブルとして与えられてもよい。或いは、所定の波形P(Φ)は、所定のパラメータ記述にしたがって波形P(Φ)を特徴付ける1つ以上のパラメータとして与えられてもよい。
【0181】
1つの形態において、波形は、位相の全ての値に関して略一定のレベルに維持される。
【0182】
1つの形態において、波形は、位相の幾つかの値に関して一定の高い値を有するとともに位相の他の値に関して一定の低い値を有する方形波である。この形態では、戻されるパラメータが位相の閾値であってもよく、この閾値を超えると、波形が低レベルから高レベルへと立ち上がる。
【0183】
1つの形態において、波形P(Φ)は、2つの指数関数的部分、すなわち、閾値に至るまでの位相の値における1つの時定数にしたがった指数関数的増大と、閾値を上回る位相の値における指数関数的減少とを有する。この形態において、戻されるパラメータは、2つの時定数及び閾値であってもよい。
【0184】
5.4.3.2.3 換気量決定
本技術の1つの形態において、換気量決定アルゴリズム4323は、呼吸流量Qrを入力として受けるとともに、患者換気量Ventを示す指標を決定する。
【0185】
1つの形態において、換気量決定アルゴリズム4323は、患者換気量Ventの現在の値を呼吸流量Qrのローパスフィルタリングされた絶対値の半分として決定する。
【0186】
5.4.3.2.4 吸気流量限界の決定
本技術の1つの形態において、中央コントローラ4230は、吸気流量限界の検出のために1つ以上のアルゴリズム4324を実行する。
【0187】
1つの形態において、アルゴリズム4324は、呼吸流量信号Qrを入力として受けるとともに、息の吸気部分が吸気流量限界を示す程度の指標を出力として与える。
【0188】
本技術の1つの形態では、それぞれの呼吸の吸気部分がゼロ交差検出器によって特定される。時間点を表わす多くの等間隔のポイント(例えば65個のポイント)がそれぞれの呼吸ごとに吸気流量−時間曲線に沿って補間器により補間される。ポイントにより描かれる曲線は、その後、呼吸の速度及び深さの変化の影響を除去するべく1の長さ(持続時間/期間)及び1の面積を有するようにスケーラーによってスケーリングされる。スケーリングされた呼吸は、その後、
図6Aに示される呼吸の吸気部分と同様の正常な閉塞性でない呼吸を表わす予め記憶されたテンプレートと比較器内で比較される。このテンプレートから吸気中の任意の時間に特定の閾値(一般に1スケール単位)を超えて逸脱する呼吸、例えば試験要素により決定される咳、ため息、飲み込み、及び、しゃっくりに起因する呼吸は拒絶される。拒絶されないデータに関しては、第1のそのようなスケーリングされたポイントの移動平均が前の幾つかの吸気事象において中央コントローラ4230により計算される。これは、第2のそのようなポイント等に関して同じ吸気事象にわたって繰り返される。したがって、例えば、65個のスケーリングされたデータポイントは、中央コントローラ4230によってもたらされるとともに、前の幾つかの吸気事象、例えば3つの事象の移動平均を表わす。(例えば65個の)ポイントの連続的に更新される値の移動平均は、以下、Qs(t)として示される”スケール流量”と呼ばれる。或いは、移動平均ではなく単一の吸気事象を利用できる。
【0189】
スケール流量から、部分的な閉塞の決定に関連する2つの形状係数が形成されてもよい。
【0190】
形状係数1は、平均の全体(例えば65個)のスケール流量ポイントに対する中間(例えば32個)のスケール流量ポイントの平均の比率である。この比率が1を超える場合には、呼吸が正常であると解釈される。比率が1以下である場合には、呼吸が閉塞性であると解釈される。約1.17の比率は、部分的に閉塞性の呼吸と閉塞性でない呼吸との間の閾値として解釈され、典型的なユーザにおいて適正な酸素化の維持を可能にする適切な閉塞度合いと同じである。
【0191】
形状係数2は、中間(例えば32個)のポイントにわたってとられる単位スケール流量からのRMS偏差として計算される。約0.2単位のRMS偏差は、正常であると解釈される。ゼロのRMS偏差は、全体的に流量制限される呼吸であると解釈される。RMS偏差がゼロに近づけば近づくほど、呼吸は、流量がより制限されていると解釈される。
【0192】
形状係数1及び2は、選択的に或いは組み合わせて使用されてもよい。本技術の他の形態において、サンプリングされるポイントの数、呼吸の数、及び、中間ポイントの数は、前述した数と異なってもよい。また、閾値は、前述の閾値以外となり得る。
【0193】
5.4.3.2.5 無呼吸及び呼吸低下の決定
本技術の1つの形態において、中央コントローラ4230は、無呼吸/呼吸低下の存在の決定のために1つ以上のアルゴリズム4325を実行する。
【0194】
1つ以上のアルゴリズム4325は、呼吸流量信号Qrを入力として受けるとともに、無呼吸又は呼吸低下が検出されたことを示すフラグを出力として与えてもよい。
【0195】
1つの形態において、無呼吸は、呼吸流量Qrの関数が所定の期間にわたって流量閾値を下回るときに検出されたと言われる。関数は、ピーク流量、相対的に短期の平均流量、又は、相対的に短期の平均流量とピーク流量との中間の流量、例えばRMS流量を決定してもよい。流量閾値は、流量の相対的に長期の指標であってもよい。
【0196】
1つの形態において、呼吸低下は、呼吸流量Qrの関数が所定の期間にわたって第2の流量閾値を下回るときに検出されたと言われる。関数は、ピーク流量、相対的に短期の平均流量、又は、相対的に短期の平均流量とピーク流量との中間の流量、例えばRMS流量を決定してもよい。第2の流量閾値は、流量の相対的に長期の指標であってもよい。第2の流量閾値は、無呼吸を検出するために使用される流量閾値よりも大きい。
【0197】
5.4.3.2.6 いびきの決定
本技術の1つの形態において、中央コントローラ4230は、いびきの検出のために1つ以上のいびきアルゴリズム4326を実行する。
【0198】
1つの形態において、いびきアルゴリズム4326は、呼吸流量信号Qrを入力として受けるとともに、いびきが存在している度合いの指標を出力として与える。
【0199】
アルゴリズム4326は、30〜300Hzの範囲内の流量信号の強度を決定するステップを備えてもよい。また、アルゴリズム4326は、背景雑音、例えばブロワからのシステム内の空気流の音を減らすために呼吸流量信号Qrをフィルタ処理するステップを備えてもよい。
【0200】
5.4.3.2.7 気道開通性の決定
本技術の1つの形態において、中央コントローラ4230は、気道開通性の決定のために1つ以上のアルゴリズム4327を実行する。
【0201】
1つの形態において、気道開通性アルゴリズム4327は、呼吸流量信号Qrを入力として受けるとともに、約0.75Hz〜約3Hzの周波数範囲内の信号のパワーを決定する。この周波数範囲内のピークの存在は、開放気道を示すと解釈される。ピークの不存在は、閉塞気道の兆候であると解釈される。
【0202】
1つの形態において、ピークが探し求められる周波数範囲は、治療圧力Ptにおける小さな強制振動の周波数である。1つの実施において、強制振動は、約1cmH
2Oの振幅を伴う2Hzの周波数を有する。
【0203】
1つの形態において、気道開通性アルゴリズム4327は、呼吸流量信号Qrを入力として受けるとともに、心原性信号の存在又は不存在を決定する。心原性信号の不存在は、閉塞気道の兆候であると解釈される。
【0204】
5.4.3.2.8 治療パラメータの決定
本技術の1つの形態において、中央コントローラ4230は、治療エンジンモジュール4320における他のアルゴリズムのうちの1つ以上により戻される値を使用して1つ以上の治療パラメータの決定のための1つ以上のアルゴリズム4328を実行する。
【0205】
本技術の1つの形態では、治療パラメータが瞬間治療圧力Ptである。この形態の1つの実施では、治療圧力Ptが以下の式によって与えられる。
Pt=AP(Φ)+P
0 (1)
【0206】
ここで、Aは圧力サポートであり、P(Φ)は、位相の現在の値Φにおける圧力−位相波形値(0〜1の範囲内)であり、また、P
0はベース圧力である。
【0207】
パラメータA,P
0の値に応じて様々な治療モードが規定されてもよい。本技術のこの形態の幾つかの実施では、圧力サポートAが完全に同じくゼロであり、したがって、治療圧力Ptは、呼吸サイクルの全体にわたってベース圧力P
0に完全に同じく等しい。そのような実施は、一般に、持続的気道陽圧(CPAP)治療の先頭でグループ化される。
【0208】
ベース圧力P
0は、処方される及び/又はRPT装置4000へ手動入力される一定の値であってもよい。この代替方法は、時として、一定持続的気道陽圧(CPAP)治療と称される。或いは、ベース圧力P
0は、治療エンジンモジュール4320におけるそれぞれのアルゴリズムにより戻される流量限界、無呼吸、呼吸低下、開通性、及び、いびきなどの睡眠呼吸障害事象のうちの1つ以上の指数又は指標の関数として連続的に計算されてもよい。この代替方法は、時として、APAP治療と称される。
【0209】
陽圧換気と称されるこの形態の他の実施において、圧力サポートAはゼロでない。RPT装置4000がサーボ換気装置として作用する幾つかのそのような実施において、治療パラメータ決定アルゴリズム4328は、換気量の現在の指標Vent及び目標換気量値Vtgtを入力として取得するとともに、換気量の現在の指標Ventを換気量の目標値Vtgtへと至らせるべく圧力サポートAの値を計算する。そのような実施において、圧力−位相波形P(Φ)は、呼吸サイクルの吸気部分中に高い値を達成するとともに呼吸サイクルの呼気部分中に低い値を達成するように構成される。
【0210】
そのような実施において、治療パラメータ決定アルゴリズム4328は、圧力サポートAを計算するために連続制御方法論を適用してもよい。1つのそのような連続制御方法論は比例積分(PI)制御であり、この制御にしたがって圧力サポートが以下のように計算される。
【0212】
ここで、Gは、PI制御のゲインである。
【0213】
治療パラメータ決定アルゴリズム4328により適用されてもよい他の連続制御方法論としては、比例(P)制御、比例差動(PD)制御、及び、比例積分差動(PID)制御が挙げられる。
【0214】
離散制御方法論と称される他の制御方法論は、所定値の離散セットのうちの1つである圧力サポートAを戻す。
【0215】
図4Eは、アルゴリズム4328の1つの実施として中央コントローラ4230により行われる方法4500を示すフローチャートである。方法4500はステップ4520から始まり、このステップにおいて、中央コントローラ4230は、無呼吸/呼吸低下の存在の指標と第1の閾値とを比較するとともに、無呼吸/呼吸低下の存在の指標が所定の期間にわたって第1の閾値を超えてしまっており、それにより、無呼吸/呼吸低下が生じていることを示しているかどうかを決定する。そうであれば、方法4500がステップ4540へ移行し、そうでなければ、方法4500がステップ4530へ移行する。ステップ4540において、中央コントローラ4230は、気道開通性の指標と第2の閾値とを比較する。気道開通性の指標が第2の閾値を超え、それにより、気道が開通していることを示す場合には、検出された無呼吸/呼吸低下が中枢性であると見なされて、方法4500がステップ4560へ移行し、そうでなければ、無呼吸/呼吸低下が閉塞性であると見なされて、方法4500がステップ4550へ移行する。
【0216】
ステップ4530において、中央コントローラ4230は、流量限界の指標と第3の閾値とを比較する。流量限界の指標が第3の閾値を超え、それにより、呼吸流量が制限されることを示す場合には、方法4500がステップ4550へ移行し、そうでなければ、方法4500がステップ4560へ移行する。
【0217】
ステップ4550において、中央コントローラ4230は、所定の圧力増分ΔPだけ治療圧力Ptを増大させる。ただし、増大される治療圧力Ptは上限Pmaxを超えないものとする。1つの実施では、所定の圧力増分ΔP及び上限Pmaxがそれぞれ1cmH
2O及び20cmH
2Oである。その後、方法4500はステップ4520に戻る。
【0218】
ステップ4560において、中央コントローラ4230は、減少分だけ治療圧力Ptを減少させる。ただし、減少される治療圧力Ptは下限Pminを下回らないものとする。その後、方法4500はステップ4520に戻る。1つの実施では、任意の検出事象がない場合の下限PminへのPtの減少が指数関数的であるように、減少分がPt−Pminの値に比例する。1つの実施において、比例定数は、Ptの指数関数的な減少の時定数τが60分であり且つ下限Pminが4cmH
2Oであるように設定される。他の実施において、時定数τは、1分程度の低さから300分程度の高さとなり得る或いは5分程度の低さから180分程度の高さとなり得る。或いは、任意の検出事象がない場合の下限PminへのPtの減少がチ直線的であるようにようにPtの減少を予め決定することができる。
【0219】
5.4.3.3 制御モジュール
本技術の1つの態様に係る治療制御モジュール4330は、治療エンジンモジュール4320から治療パラメータを入力として受けるとともに、治療パラメータにしたがってガス流を送出するために圧力発生器4140を制御する。
【0220】
本技術の1つの形態では、治療パラメータが治療圧力Ptであり、また、治療制御モジュール4330は、患者インタフェース3000でのそのマスク圧力Pmが治療圧力Ptに等しいガス流を送出するために治療装置4245を制御する。
【0221】
5.4.3.4 故障状態の検出
本技術の1つの形態において、中央コントローラ4230は、故障状態の検出のために1つ以上の方法を実行する。1つ以上の方法により検出される故障状態は、以下のうちの少なくとも1つを含む。
・電源障害(電力なし或いは不十分な電力)
・トランスデューサ故障検出
・構成要素の存在を検出できないこと
・推奨範囲外の動作パラメータ(例えば、圧力、流量、温度、PaO
2)
・検出可能なアラーム信号を発生させるための試験アラームの故障
【0222】
故障状態の検出時、対応するアルゴリズムが以下のうちの1つ以上によって故障の存在を信号で伝える。
・聞き取れる、目に見える、及び/又は、動力学的な(例えば振動する)アラームの開始
・メッセージを外部装置へ送る
・事故の記録
【0223】
5.5 加湿器
5.5.1 加湿器
本技術の1つの形態では、患者へ送出するための空気又はガスの絶対湿度を外気に対して変えるために(例えば
図5Aに示されるような)加湿器5000が設けられる。一般に、加湿器5000は、患者の気道へ送出する前の空気流の絶対湿度及び温度を(外気に対して)増大させるために使用される。
【0224】
加湿器5000は、加湿器リザーバ5110、空気流を受けるための加湿器入口5002、及び、加湿された空気流を送出するための加湿器出口5004を備えてもよい。
図5A及び
図5Bに示される幾つかの形態では、加湿器リザーバ5110の入口及び出口がそれぞれ加湿器入口5002及び加湿器出口5004であってもよい。加湿器5000は加湿器ベース5006を更に備えてもよく、加湿器ベース5006は、加湿器リザーバ5110を受けるようになっていてもよく、また、加熱要素5240を備えてもよい。
【0225】
5.5.2 加湿器の機械的な構成要素
5.5.2.1 水リザーバ
1つの構成によれば、加湿器5000は、空気流の加湿のために使用されるべき所定量の液体(例えば水)を保持する或いは維持するように構成される水リザーバ5110を備えてもよい。水リザーバ5110は、ある晩の睡眠などの少なくとも呼吸治療の継続時間にわたって適切な加湿を行うために所定の最大量の水を保持するように構成される。一般に、リザーバ5110は、数百ミリリットルの水、例えば300ミリリットル(ml)、325ml、350ml、又は、400mlの水を保持するように構成される。他の形態において、加湿器5000は、建物の給水システムなどの外部水源から所定量の水を受けるように構成されてもよい。
【0226】
1つの態様によれば、水リザーバ5110は、空気流がRPT装置4000を通じて移動する際にRPT装置4000からの空気流に対して湿気を加えるように構成される。1つの形態において、水リザーバ5110は、該リザーバ内の所定量の水と接触しつつリザーバ5110を通じて曲がりくねった経路で移動するように空気流を促すべく構成されてもよい。
【0227】
1つの形態によれば、リザーバ5110は、例えば
図5A及び
図5Bに示されるように横方向で加湿器5000から取り外しできてもよい。
【0228】
リザーバ5110は、例えばリザーバ5110がその通常の作動方向から移動される及び/又は回転されるときに液体が例えば任意の開口を通じて及び/又はその下位構成要素間でリザーバから出るのを妨げるように構成されてもよい。加湿器5000により加湿されるべき空気流は一般に加圧されるため、リザーバ5110は、漏れ及び/又は流れインピーダンスによる空気圧の損失を防止するように構成されてもよい。
【0229】
5.5.2.2 伝導部
1つの構成によれば、リザーバ5110は、加熱要素5240からリザーバ5110内の所定量の水への熱の効率的な移動を可能にするように構成される伝導部5120を備える。1つの形態では、伝導部5120がプレートとして配置されてもよいが、他の形状が適している場合もある。伝導部5120の全て或いは一部は、アルミニウム(例えば、約2mm厚、例えば1mm、1.5mm、2.5mm、又は、3mmの厚さ)、他の熱伝導金属又は何らかのプラスチックなどの熱伝導性材料から形成されてもよい。ある場合には、適した形状の少ない伝導材料を用いて適した熱伝導率が達成されてもよい。
【0230】
5.5.2.3 加湿器リザーバドック
1つの形態において、加湿器5000は、加湿器リザーバ5110を受けるように構成される(
図5Bに示されるような)加湿器リザーバドック5130を備えてもよい。幾つかの構成において、加湿器リザーバドック5130は、リザーバ5110をリザーバドック5130内に保持するように構成されるロックレバー5135などのロック機能部を備えてもよい。
【0231】
5.5.2.4 水位インジケータ
加湿器リザーバ5110は、
図5A−
図5Bに示されるような水位インジケータ5150を備えてもよい。幾つかの形態において、水位インジケータ5150は、加湿器リザーバ5110内の所定量の水の量に関して1つ以上の表示を患者1000又は介護人などのユーザに与えてもよい。水位インジケータ5150により与えられる1つ以上の表示は、水、水の任意の部分の最大、所定量の表示、例えば25%、50%、又は、75%或いは200ml、300ml、又は、400mlなどの量を含んでもよい。
【0232】
5.5.3 加湿器の電気的及び熱的な構成要素
加湿器5000は、以下に挙げられる構成要素などの多くの電気的及び/又は熱的な構成要素を備えてもよい。
【0233】
5.5.3.1 加湿器トランスデューサ
加湿器5000は、前述したトランスデューサ4270に代えて或いは加えて、1つ以上の加湿器トランスデューサ(センサ)5210を備えてもよい。
図5Cに示されるように、加湿器トランスデューサ5210は、空気圧センサ5212、空気流量センサ5214、温度センサ5216、又は、湿度センサ5218のうちの1つ以上を含んでもよい。加湿器トランスデューサ5210は、中央コントローラ4230及び/又は加湿器コントローラ5250などのコントローラへ通信されてもよい1つ以上の出力信号をもたらしてもよい。幾つかの形態において、加湿器トランスデューサは、出力信号をコントローラへ通信しつつ加湿器5000の外部(例えば空気回路4170内)に位置されてもよい。
【0234】
5.5.3.1.1 圧力トランスデューサ
1つ以上の圧力トランスデューサ5212が、RPT装置4000に設けられる圧力トランスデューサ4272に加えて或いは代えて加湿器5000に設けられてもよい。
【0235】
5.5.3.1.2 流量トランスデューサ
1つ以上の流量トランスデューサ5214が、RPT装置4000に設けられる流量トランスデューサ4274に加えて或いは代えて加湿器5000に設けられてもよい。
【0236】
5.5.3.1.3 温度トランスデューサ
加湿器5000は1つ以上の温度トランスデューサ5216を備えてもよい。1つ以上の温度トランスデューサ5216は、1つ以上の温度、例えば加熱要素5240の温度及び/又は加湿器出口5004の下流側の空気流の温度を測定するように構成されてもよい。幾つかの形態において、加湿器5000は、外気の温度を検出するために温度センサ5216を更に備えてもよい。
【0237】
5.5.3.1.4 湿度トランスデューサ
1つの形態において、加湿器5000は、外気などのガスの湿度を検出するために1つ以上の湿度センサ5218を備えてもよい。湿度センサ5218は、幾つかの形態では、加湿器5000から送出されるガスの湿度を測定するために加湿器出口5004へ向けて配置されてもよい。湿度センサは、絶対湿度センサ又は相対湿度センサであってもよい。
【0238】
5.5.3.2 加熱要素
加熱要素5240は、ある場合には、加湿器リザーバ5110内の所定量の水及び/又は空気流のうちの1つ以上に対して熱入力を行うために加湿器5000に設けられてもよい。加熱要素5240は、電気抵抗加熱トラックなどの発熱構成要素を備えてもよい。加熱要素5240の1つの適した例は、その文書全体が参照することにより本願に組み入れられるPCT国際特許出願公開第2012/171072号明細書に記載されるような層状加熱要素である。
【0239】
幾つかの形態では、熱が主に伝導によって加湿器リザーバ5110へ与えられてもよい場合には
図5Bに示されるように加熱要素5240が加湿器ベース5006に設けられてもよい。
【0240】
5.5.3.3 加湿器コントローラ
本技術の1つの構成によれば、加湿器5000は、
図5Cに示されるような加湿器コントローラ5250を備えてもよい。1つの形態では、加湿器コントローラ5250が中央コントローラ4230の一部であってもよい。他の形態において、加湿器コントローラ5250は、中央コントローラ4230と通信してもよい別個のコントローラであってもよい。
【0241】
1つの形態において、加湿器コントローラ5250は、例えば空気流、リザーバ5110内の水、及び/又は、加湿器5000の特性(例えば、温度、湿度、圧力、及び/又は、流量)の指標を入力として受けてもよい。加湿器コントローラ5250は、加湿器アルゴリズムを実行する又は実施する及び/又は1つ以上の出力信号を供給するように構成されてもよい。
【0242】
図5Cに示されるように、加湿器コントローラは、1つ以上のコントローラ、例えば、中央加湿器コントローラ5251、加熱型空気回路4171の温度を制御するように構成される加熱型空気回路コントローラ5254、及び/又は、加熱要素5240の温度を制御するように構成される加熱要素コントローラ5252などを備えてもよい。
【0243】
5.6 呼吸波形
図6Bは、睡眠中の人の典型的な呼吸波形モデルを示す。水平軸は時間であり、また、垂直軸は呼吸流量である。パラメータ値が変化する場合があるが、典型的な呼吸は、以下の近似値、すなわち、1回換気量Vt、0.5L、吸気時間Ti、1.6s、ピーク吸気流量Qpeak、0.4L/s、呼気時間Te、2.4s、ピーク呼気流量Qpeak、−0.5L/sを有する場合がある。呼吸の総持続時間Ttotは約4sである。人は、一般に、約7.5L/分の換気量Ventを伴って1分当たり約15回の呼吸速度(BPM)で呼吸する。典型的のデューティサイクル、すなわち、Ttotに対するTiの比率は約40%である。
【0244】
図6Bは、通常は約90秒の期間にわたって呼吸するNon−REM睡眠中の患者を示し、この場合、約34回の吸息を伴って、自動PAPを用いて治療されるとともに、マスク圧は約11cmH
2Oである。最も上側のチャネルは酸素飽和度測定(SpO
2)を示し、スケールは、垂直方向で90〜99%の飽和範囲を有する。患者は、図示の期間の全体にわたって約95%の飽和を維持した。2番目のチャネルは定量的な呼吸空気流を示し、スケールは、垂直方向で−1〜+1LPSの範囲であり、また、プラスの吸気を伴う。3番目及び4番目のチャネルには胸部動作及び腹部動作が示される。
【0245】
図6Cは、治療前の患者の睡眠ポリグラフィを示す。上端から下端まで6分の水平長さを伴って11個の信号チャネルが存在する。上側の2つのチャネルはいずれも、異なる頭皮位置からのEEG(脳波図)である。2番目のEEGにおける周期的なスパイクは、皮質覚醒及び関連する活動を表わす。下側の3番目のチャネルは顎下EMG(筋電図)である。覚醒時間付近の活動の増大は、オトガイ舌回復を表わす。4番目及び5番目のチャネルはEOG(眼電図)である。6番目のチャネルは心電図である。7番目のチャネルは、70%未満から90%を超える反復的な脱飽和を伴うパルス酸素飽和度測定(SpO
2)を示す。8番目のチャネルは、差動圧力トランスデューサに接続される鼻カニューレを使用する呼吸空気流である。25〜35秒の繰り返しの無呼吸は、EEG覚醒及びEMG活動の増大と一致する回復呼吸の10〜15秒のバーストと交互に起こる。9番目のチャネルは胸部の動作を示し、また、10番目のチャネルは腹部の動作を示す腹部は、覚醒をもたらす無呼吸の長さにわたる動作のクレッシェンドを示す。回復過呼吸中の粗雑な身体動作に起因して、いずれも覚醒中に乱雑にある。したがって、無呼吸は閉塞性であり、また、病状は深刻である。最も下側のチャネルは、ある姿勢をとっており、この例では変化を示さない。
【0246】
図6Dは、患者が一連の完全閉塞性無呼吸を経験している場合の患者流量データを示す。記録の持続時間は約160秒である。流量は約+1L/s〜約−1.5L/sの範囲である。それぞれの無呼吸は約10〜15s続く。
【0247】
5.7 熱水分交換器(HME)
5.7.1 HMEの概要
図7A〜
図7Dは、本技術に係るHMEの例を示す。
図7Aは、波形構造体7002を備えるHME7000の断面を示し、波形構造体7002は、蛇腹形状層7001を形成するために略平坦な上端基板構造体7010と略平坦な下端基板構造体7020との間に複数の波形部7030を備える。層7001は、波形構造体7002の上面と上端構造体7010との間に形成される複数の上チャネル7012を備える。また、層7001は、波形構造体7002の下面と下端構造体7020との間に形成される複数の下チャネル7022を備える。HME7000は、熱及び水分を交換するために呼吸用ガス及び呼気ガスの流れが波形構造体の表面に沿って複数の上チャネル7012及び下チャネル7022を通じて流れることができるようにする。水分は、患者から吐き出される呼気ガスから吸収されて、波形構造体7002の材料に保持される。波形部7030、上端構造体7010、及び/又は、下端構造体7020の材料は、水及び/又は熱を吸収できる紙又は紙ベースの材料を備えてもよい。波形部7030、上端構造体7010、及び/又は、下端構造体7020の材料は、多孔性、水透過性、及び/又は、空気透過性であってもよい。保持された水分は、その後、患者の気道へ送出される呼吸用ガス流を加湿することによって患者へ再送出されてもよい。言い換えると、患者の気道へ送出される呼吸用ガス流は、HME7000から水分を吸収してもよい。
図7Bは、これらの例に係るHMEの様々な寸法を描く。
【0248】
複数の波形部7030は、波形構造体7002と複数の上チャネル7012及び下チャネル7022により与えられる周囲の容積との間で起こる熱及び水分の交換のための活性表面領域の増大を可能にする波形構造体7002の表面積を増大させる。上端構造体7010及び下端構造体7020は、波形構造体7030と同じ熱水分交換材料から形成されてもよい。或いは、上端構造体7010及び/又は下端構造体7020は、波形構造体7002を支持するために水分を吸収しない硬質材料又は半硬質材料から形成されてもよい。
【0249】
HME7000の加湿性能は、所定の容積の空間内に設けられるHME7000の有効表面積に依存する。有効表面積は、熱水分交換が起こるHMEの表面に沿って流れる呼吸用ガス流に晒されるHME7000の表面積である。HME7000の単位体積当たりの表面積は、HME7000の熱水分交換部内に波形部7030を設けることによって調整され得る。また、単位体積当たりの表面積は、HME7000の単位体積当たりの表面積に影響を与える波形部又は襞のフィン厚、ピッチ、又は、高さのうちの少なくとも1つを変えることによって調整されてもよい。
【0250】
HME7000は、
図7Cに示されるように、HME7000の垂直軸に沿って積み重ねられる複数の層7001を備えてもよい。層7001は、下端構造体7020が下層の隣接する層7001の波形構造体7002の上に積み重ねられるように垂直に積み重ねられてもよい。水平方向で積み重ねられるHMEの幾つかの層7001が存在してもよい。HME7000の垂直軸に沿って積み重ねられる波形構造体7002を備える多くの層7001を有することにより、HMEの単位体積当たりの表面積が更に増大する。所定の大きさの範囲内のこの表面積の増大は、HME7000の熱水分交換における効率を高めることができる。また、層7001は、所定の大きさの範囲内で層の数を増大させて単位体積当たりの表面積を増大させるために、
図7Dに描かれるように予荷重下で圧縮されてもよい。予荷重は、以下の式によって計算される。
【0252】
ここで、Pは予荷重であり、h
startは、圧縮前の波形部又は襞の高さであり、この場合、h
finalは、圧縮後の波形部の高さである。
【0253】
或いは、HME7000の最終的な三次元形状は、患者インタフェース3000のプレナムチャンバ3200内に嵌合するようになっている不規則な形状のHME7000を生み出すために、異なるサイズ及び形状の層7001を組み合わせることによって形成されてもよい。層7001は、所望の形状及びサイズを成すようにレーザカットされてもよい。
【0254】
別の例を示す
図8A〜
図8Dに示されるように、HME7000は、複数の波形部7030を形成するべく下端構造体7020の表面から延在する波形構造体7002を備える単一ストリップ層7001から丸められてもよい。単一ストリップ層7001は、波形部7030の上側折り曲げ部7031が下端構造体7020の下面と係合するように丸められてもよい。この形態は、複数のチャネル7012が単一ストリップ層7001の各ロール間で維持されるようにする。HME7000は、患者インタフェース3000のプレナムチャンバ3200内に位置されてもよい。
【0255】
図9A〜
図9Jは本技術の他の例を示す。この例における患者インタフェース3000は取り外し可能に係合できるクッションアセンブリ3130を有し、クッションアセンブリ3130は、マスクフレーム3250に取り外し可能に係合する弾性フランジを備えるクリップの形態を成す複数のクッションアセンブリ係合部材3135を備える。マスクフレーム3250は、凹部又は穴の形態を成すマスクフレーム係合部材3255を備え、マスクフレーム係合部材3255は、クッションアセンブリ係合部材3135の弾性フランジがマスクフレーム係合部材を通過してこれに取り外し可能に係合できるようにする。或いは、クッションアセンブリ3130は、フック、接着、干渉、又は、摩擦係合などの他の方法によってマスクフレームに係合してもよい。クッションアセンブリ3130はシール形成構造体3100を備える。シール形成構造体3100は、患者の気道の入口とシールを形成してもよい。また、患者インタフェース3000のシール形成構造体3100は、一対の鼻パフ又は鼻枕を備えてもよく、それぞれの鼻パフ又は鼻枕は、患者の鼻のそれぞれの鼻孔とシールを形成するように構成されて配置される。或いは、シール形成構造体は、鼻孔及び口とシールを形成してもよい。
【0256】
典型的な患者インタフェース3000は、患者インタフェース3000と取り外し可能に係合する取り外し可能なHME7000を更に備え、また、HME7000は、ベントアダプタ3410のHMEハウジング部3420内に位置されてもよい。HME7000は、HMEフレーム7003上に位置される少なくとも1つのHME係合部材7004を備えてもよい。少なくとも1つのHME係合部材7004がクリップを備えてもよく、各クリップは、対応するベントアダプタ係合部材3415と取り外し可能に係合してもよい。ベントアダプタ3410は、ベント3400と、該ベントの前側に位置されるマスク入口3260とを備えてもよい。ベントアダプタ3410は、患者インタフェース3000の残りの部分に取り外し可能に係合して、取り外し可能に係合するHME7000をそのHMEハウジング部3420内に位置決めするようになっていてもよい。ベントアダプタ3410は、患者インタフェース3000のプレナムチャンバ3200内の呼吸用ガスの流路中にHME7000を位置決めしてもよく、或いは、HMEの複数のチャネル7012,7022を呼吸用ガス流の流路と略一直線になる或いは平行になるように方向付け、それにより、チャネル7012,7022を介してHMEを通過する流れを可能にしてもよい。患者の気道の入口に近接してHME7000を位置決めすることにより、呼気中にHME7000の材料に対して与えられる湿気の捕捉及び保持を最大にしてもよい。また、チャネル7012,7022の方向付けは、患者から吐き出される加湿されたガス流がHMEのチャネル7012,7022を通じて反対方向に流れることができるようにしてもよい。
【0257】
図12A〜
図12Dに示されるベントアダプタ3410は、HME7000をプレナムチャンバ3200内に位置決めしてもよく、また、前記プレナムチャンバ3200を前方プレナムチャンバ3240と後方プレナムチャンバ3230とに分けてもよい。HME7000のこの位置決めは、患者の気道の入口を後方プレナムチャンバ3230に隣接してHME7000の後側に位置させた状態でベント3400及び入口3260をHME7000の前側に前方プレナムチャンバ3240の一部として位置させてもよい。この形態は、患者から吐き出されるガス流が通気前に後方プレナムチャンバ3240に流れ込むことができるようにし、それにより、任意の湿気をベント3400からの損失の前にHME7000内で保持できるようにしてもよい。また、この形態は、捕捉された湿気の患者への再送出前に呼吸用ガス流がHME7000を通じて流れることができるようにしてもよい。したがって、ハウジング部3410は、患者インタフェース3000の流路内に位置されるHME7000を介して加湿空気を患者へと再送出するための形態を備えてもよい。
【0258】
ベントアダプタ3410は、HMEフレーム7003のそれぞれの係合部材7004を受けるための受け部3440を含んでもよい。受け部3440は、スナップ嵌合状態で係合部材7004と解放可能に結合してもよい。ベントアダプタ3410は、該ベントアダプタ3410をマスクフレーム3250に解放可能に結合するための取り付け部材3450を含んでもよい。取り付け部材3450は、スナップ嵌合を用いてベントアダプタ3410をマスクフレームに取り付けてもよい。
【0259】
また、補助ベント3401を後方プレナムチャンバ3240内のHMEの後側に位置させて、この容積内で増大するCO
2を相殺することもできる。例えば、フルフェースマスクの場合、後方プレナムチャンバ3240内の更なる容積(すなわち、デッドスペース容積)は、より小さいマスクと比べると、このスペース内で起こる望ましくない及び/又は過度のCO
2増大をもたらす場合がある。この結果を軽減するために、補助ベント3401をHME7000の後側又は患者側で患者の気道付近に位置させることができる。HME7000の後側に補助ベント3401を位置させることにより、加湿された呼吸用ガス流の何らかの通気が患者への送出前にもたらされる。加湿空気のこの通気を補償するため、プレナムチャンバ3200の所定の容積内の呼吸用ガス流を加湿できるHME7000の能力を高めることによって全体の加湿性能が維持されてもよい。
【0260】
ベントアダプタ3410は、呼吸用ガスの入ってくる流れをCO
2流出の流れから分離するためのバッフル3430を含んでもよい。バッフル3430は、これらのガス流が互いに干渉しないようにこれらのガス流を互いから分離してもよい。参照することによりその全体が本願に組み入れられる米国特許第7,934,501号明細書は、典型的な患者インタフェース3000に適用できる場合があるバッフルの更なる例及び特徴について記載する。
【0261】
図10〜
図10Fは、本技術に係るHMEフレーム7003の例を描く。HMEフレーム7003は、1つ以上の係合部材7004を含んでもよい。係合部材7004は、ベントアダプタ3410と解放可能に係合してもよい。或いは、係合部材7004は、HMEフレーム7003を方向付けて患者インタフェース3000のプレナムチャンバ3200又はマスクフレーム3250と解放可能に係合させることができるようにしてもよい。HMEフレームが1つ以上のフレーム開口7006を含んでもよく、該フレーム開口7006は、呼吸用ガス流及び/又は呼気ガス流がフレーム開口7006及びHME層7001を通過できるようにする。HMEフレーム7003は、1つ以上のHME保持部材7005を含んでもよい。HME保持部材7005はHME層7001を所定位置に保持してもよく、また、HME保持部材7005は、HMEフレーム7003のための構造的な支持を行ってもよい。HME保持部材7005は、HMEフレーム7003の前面及び/又は後面に設けられてもよい。
図10A及び
図10Bにそれぞれ示される正面図及び背面図では、HMEフレーム7003が略長方形の形状を有する。患者インタフェース3000内の空間の最も効果的な利用をもたらすべくHMEフレーム7003が他の形状を同様に有することが理解されるべきである。例えば、HMEフレーム7003は、正方形、楕円形、円形、三角形、又は、他の多角形の形状を有してもよい。したがって、HME層7001は、HMEフレーム7003の形状に応じてHMEフレーム7003の内部形状に適合するように形成されてもよい。
図10DはHMEフレーム7003の平面図を示し、この図では、本技術のこの例に係るHMEフレーム7003が患者インタフェース3000の形状に相当するようにその側端で後方に湾曲されるのが分かる。言うまでもなく、HMEフレーム7003は、患者インタフェース3000の形状に応じて、この図から同様に平坦である形状又は前方に湾曲される形状を有してもよい。
【0262】
図11A〜
図11Gに示されるように、HME7000は、層7001を成して積み重ねられてもよく、また、HMEフレーム7003を支持する硬質部を更に備えてもよい。HME層7001は、1つ以上のHME保持部材7005によってHMEフレーム7003内に保持されてもよい。HMEフレーム7003は、波形部7030によって画定されてHME7000の層7001を貫いて延びる複数のチャネル7012,7022と位置合わせされるフレーム開口7006を備えてもよい。フレーム開口7006は、ガス流がHMEを通じて両方向で流れることができるようにし、それにより、熱及び水分の交換を保持して患者へ再送出できるようにする。HMEフレーム7003の内側に湾曲された所定の三次元形状は、患者インタフェース3000のプレナムチャンバ3200内に嵌合して、患者インタフェース3000が顔面上に位置されるときに患者の顔面との接触を回避するようになっている。他の所定の三次元形状は、患者インタフェース3000のプレナムチャンバ3200内に嵌合するHME7000の能力を維持しつつ患者の顔面との接触を回避するように与えられてもよい。
【0263】
図13Aは、適切な熱水分交換器(HME又はHMX)を選択するために従ってもよい典型的なプロセスのフロー図を示す。典型的なプロセスは、加湿性能に関して望ましいパラメータをHMEが取得できるかどうかを検査するために使用されてもよい。プロセスはISO9360から適合される。プロセスは、様々な検査条件下で、加湿された肺をシミュレートして、前記肺を患者インタフェースと流体連通する状態に配置することを伴う。検査条件は以下を含んでもよい。
i)加湿無し
ii)マスク内HMEを使用しした受動加湿。複数の層を備える波形状のHMEは、
図13Dの「検査済みHME(襞F)」の欄に挙げられる特性を伴う
図13Cに示されるF−襞の波形構造体を備えて使用された。
iii)23℃、RH80%で給電式加湿器H5iを使用する能動的な加湿
iv)30℃、RH80%で給電式加湿器H5iを使用する能動的な加湿
【0264】
図13Bに表わされる典型的な結果に示されるように、加湿された肺の重量損失は、RPT治療を受ける患者の肺で失われる湿度をシミュレートするための指標として使用された。予期されるように、加湿無しi)は、任意の付加的な加湿を伴うことなくRPT治療を受ける患者により失われる湿度をシミュレートして、最も高い重量損失を示した。これは、最終的に、呼吸の不快感をもたらす場合がある。受動加湿は、23℃、RH80%でのH5iによる能動加湿よりも良好に機能した。また、受動加湿は、30℃、RH80%で給電式加湿器H5iを使用する極端な加湿に性能が近かった。試験は、15.5℃、RH30%の周囲条件下で行われた。検査で使用されたHMEは、
図13Dの「検査済みHME(襞F)」の欄に挙げられる特性のように単位体積当たりの表面積を5.4m
2/m
3として6%の予荷重を受けた。
【0265】
図13Cは、予荷重を受けないHMEに備えられる波形構造体を形成する様々な波形部形態又は襞形態を示す。F−襞は、HMEの複数の波形層を備える波形構造体を形成するために使用されてもよい。予荷重を受けない組み付け形態において、波形構造体は、0.9mmの高さと65gsmのペーパーグレードとを有する波形状の紙から形成されてもよい。
【0266】
図13Dは、本技術の実施例に係る様々な波形構造体のパラメータを示す。襞F形態を成す複数の層を備える「検査済みHME」が6%の予荷重を受けた。この形態は、8360mm
3の総体積と5.42m
2/m
3の単位体積当たりの表面積とをHMEに与えた。全体の流れインピーダンスは0.47cmH
2Oであることが分かった。最適な条件下でのHMEは、4560mm
3の総体積と7.5m
2/m
3の単位体積当たりの表面積とを与えるべく32%の予荷重下で積み重ねられる26個の層を備えてもよい。HMEは1.6cmH
2Oの流れインピーダンスを有し、この流れインピーダンスは、より小さいHMEに対して、許容できるインピーダンス範囲内で向上された加湿性能を与え得る。
図13Eは、
図13Dに挙げられるパラメータを与えるように測定された寸法を示す。波形部外周長は、単一の波形部又は襞を形成する紙材料の長さである。
図13Dに挙げられるように、この長さは、波形部を更に小さい体積へと圧縮するために予荷重が増大される際に検査済みHMEと最適なHMEとの間で維持される。予荷重下の圧縮力は、襞ピッチを維持しつつ襞高さを減らすために波形部の折り曲げ部に加えられる。積層体は、図示の三次元形状へと垂直に積み重ねられる複数の層に相当し、この場合、積層体高さは、予荷重が増大されるにつれて減少され、それにより、HMEの単位体積当たりの表面積が増大される。
【0267】
本技術の実施例は、様々なフルフェース患者インタフェース3000の機能的なデッドスペース内に位置されるHME7000を対象にする(
図14A〜
図14F、
図15A〜
図15、及び、
図16参照)。HME7000は、それが患者1000の気道と患者インタフェース3000のマスクベント3400/入口3260との間にとどまるようにプレナムチャンバ3200内に位置されてもよい。HME7000は、プレナムチャンバ3200の内壁に接続されてもよい支持膜7050によって支持されて所定位置に保持されてもよい。これらの実施例におけるHME7000は、形状が円形であるとともに、約5〜10mmの厚さを有する。或いは、HME材料は、プレナムチャンバ3200の内側形状に合わせて直接に組み付く輪郭形状へと成形され、この場合、HMEは、プレナムチャンバ3200の内部に対して相補的な形状を成す。この場合、形状は、約1〜10mmの厚さを有する三次元的な表面であってもよい。
【0268】
本技術の1つの態様に係る非侵襲的な患者インタフェース3000の例において、患者インタフェース3000は、以下の機能的な態様、すなわち、シール形成構造体3100、プレナムチャンバ3200、プレナムチャンバ3200内の機能的なデッドスペース内に位置されるHME7000、HME7000を所定位置に保持するための支持膜7050構造体、位置決め安定化構造体3300、及び、空気回路4170に接続するための接続ポート又は入口3260を備えてもよい。幾つかの形態では、機能的態様が1つ以上の物理的な構成要素によって与えられてもよい。幾つかの形態では、1つの物理的構成要素が1つ以上の機能的態様を与えてもよい。使用時、シール形成構造体3100は、陽圧の空気の気道への供給を容易にするために患者の気道への入口を取り囲むように配置される。
【0269】
位置決め安定化構造体3300は、患者インタフェース3000を患者1000に対して解放可能に固定するために設けられてもよい。位置決め安定化構造体3300は、空気圧シールがシール形成構造体3100によって患者の気道の周囲に形成されるように患者インタフェースを患者1000に対して快適に且つ確実に嵌め付けることができるようにするべく、長さ調整可能な複数のストラップを含んでもよい。位置決め安定化構造体3300のストラップを患者インタフェース3000に解放可能に固定するためにストラップコネクタ3301が設けられてもよい。位置決め安定化構造体3300のストラップは、長さ調整のため、及び、位置決め安定化構造体3300のストラップをストラップコネクタ3301に取り付けてストラップコネクタ3301から取り外すことができるようにするために、フックアンドループ材料を含んでもよい。ストラップコネクタ3301が患者インタフェース3000に解放可能に取り付けられてもよく、或いは、ストラップコネクタが患者インタフェースと一体に形成されてもよいことが理解されるべきである。
【0270】
患者インタフェース内でのHME7000の位置取りは、吸湿性能を調整するべく変更されてもよい。例えば、HMEと患者1000の気道との間の距離が調整されてもよい。また、HME7000とベント3400及び/又は入口3260との間の距離が調整されてもよい。HME7000の位置取りの調整は、患者1000の気道に対するHME7000の位置を調整することによってHMEの吸湿性能を変えることができる。すなわち、HME7000が患者1000の気道に近づいて位置されればされるほど、HME7000は、呼気中に湿気の供給源に近づくとともに、吸気中に加湿の標的に近づく。しかしながら、HME7000は、それが患者の顔面との接触を回避するように位置されてもよい。同様に、HME7000の位置の調整は、入口3260に対する位置取りとベント3400に対する位置により影響されるCO
2流出への影響とに起因して、流れのインピーダンスに影響を及ぼし得る。患者インタフェース3000の機能的なデッドスペース内にHME7000を位置させることにより、HMEは、HME7000が空気送出導管内又はエルボー内で占める体積と比べて大きな体積を占めることができる。これは、ひいては、より大きな自由度でHME7000をより大きな容積内に位置させて、治療流れ及びCO
2流出に対するインピーダンスを最小限に抑えることができる一方で、吸湿性能の最大化を可能にする。前述の利点の全ては成形HME挿入体にも当てはまるが、HME挿入体の概念は、より大きな設計管理をもたらす場合があるとともに、相反する機能間のトレードオフを減少させ得る。同様に、これらの特性を調整するためにHME7000の厚さ及び面積が変えられてもよい。例えば、表面積が増大したHME7000は吸湿性能が向上する。また、より薄いHME7000は、その透過性を高めることができ、したがって、インピーダンスを減少させることができる。
【0271】
これらの例において、可撓性の支持膜7050は、プレナムチャンバ3200の内壁中に接続するように位置されてもよく、また、HME7000を患者インタフェース3000の機能的なデッドスペース内で支持してもよい。可撓性の支持膜7050は、シリコーンなどの可撓性材料から形成されてもよいが、HME材料から形成することもできる。可撓性は、HME7000を保持する可撓性支持膜7050を容易に操作して移動させることができるようにする。また、可撓性支持膜7050は、ベント3400を通じた任意の加湿損失を回避するために、患者1000の気道から吐き出される加湿空気を透過させなくてもよい。可撓性支持膜7050の不透過性は、吸湿性能を最大にするべく吐き出される加湿空気がHME7000を通過するようにしてもよい。
【0272】
他の例において、HME7000は、支持膜7050により支持される鼻マスクの形態を成す患者インタフェース3000のプレナムチャンバ3200内の機能的なデッドスペース内に位置されてもよい。
【0273】
本技術の1つの例において、周囲湿度を上回って付加された湿度は、10cm
3の体積を伴う直径が35cmの
図17に示されるようなHumiflo HMEを使用して測定される。HMEは、ResMed Quattro FX患者インタフェースの機能的なデッドスペース内に位置される。なお、患者インタフェースでの漏れは、患者インタフェースのプレナムチャンバを通じた平均流量の増大をもたらす可能性があり、それにより、最終的には、システムを通じた損失に起因して患者インタフェース内の湿度を低下させることによって悪影響を及ぼす。付加された湿度は、4cmH
2O〜20cmH
2Oの範囲の治療圧(20L/分〜50L/分の範囲の流量)で測定された。
図17は、約5mg/L〜18mg/Lの付加絶対湿度の付加を示す。より具体的には、グラフは、同じ流量における9.5mg/L〜17.5mg/Lの付加絶対湿度を示す。特定の圧力での経時的な湿度は、吸気中に生じる最小湿度から呼気中の最大湿度までの範囲をとる。平均湿度は、呼吸サイクルの全体にわたって比較指標として測定された。
【0274】
5.8 用語解説
本技術の開示目的のため、本技術の特定の形態では、以下の定義のうちの1つ以上が適用される場合がある。本技術の他の形態では、別の定義が適用される場合がある。
【0275】
5.8.1 総則
空気:本技術の特定の形態において、空気は、大気中の空気を意味するように解釈されてもよく、また、本技術の他の形態において、空気は、呼吸用ガスの何らかの他の組み合わせ、例えば酸素が混入された大気の空気を意味するように解釈されてもよい。
【0276】
周囲:本技術の特定の形態において、周囲という用語は、(i)治療システム又は患者の外部、及び、(ii)治療システム又は患者を直接に取り囲む環境を意味するように解釈される。
【0277】
例えば、加湿器に対する周囲湿度は、加湿器を直接に取り囲む空気の湿度、例えば患者が寝ている部屋内の湿度であってもよい。そのような周囲湿度は、患者が寝ている部屋の外側の湿度と異なってもよい。
【0278】
他の例において、周囲圧力は、身体を直接に取り囲む圧力又は体外の圧力であってもよい。
【0279】
特定の形態において、周囲(例えば、音響)雑音は、例えばRPT装置により発生される雑音或いはマスク又は患者インタフェースから発する雑音以外の、患者が位置される部屋内の背景雑音レベルであると見なされてもよい。周囲雑音は、部屋の外側の雑音源によって発生される場合もある。
【0280】
持続的気道陽圧(CPAP):持続的気道陽圧(CPAP)治療は、大気に対して持続的にプラスで且つ好ましくは患者の呼吸サイクルにわたって略一定である圧力で所定量の空気を気道への入口に印加することを意味するべく解釈される。幾つかの形態において、気道への入口における圧力は、呼気中においては僅かに高く、吸気中においては僅かに低い。幾つかの形態において、圧力は、患者の異なる呼吸サイクル間で変化し、例えば、部分上気道閉塞の兆候の検出に応じて増大され、また、部分上気道閉塞の兆候がない場合には減少される。
【0281】
5.8.2 呼吸サイクルの態様
無呼吸:無呼吸は、所定の持続時間、例えば10秒にわたって流量が所定の閾値を下回って降下するときに起こると言われる。閉塞性無呼吸は、患者努力にもかかわらず気道の何らかの閉塞が空気の流れを許容しないときに起こると言われる。中枢性無呼吸は、気道が開通しているにもかかわらず、呼吸努力の減少又は呼吸努力の欠如に起因する無呼吸が検出されるときに起こると言われる。混合性無呼吸は、呼吸努力の減少又は呼吸努力の欠如が気道閉塞と重なるときに起こる。
【0282】
呼吸率:通常は1分間当たりの呼吸において測定される患者の自発呼吸の比率。
【0283】
デューティサイクル:総呼吸時間Ttotに対する吸気時間Tiの割合。
【0284】
努力(呼吸):呼吸努力は、呼吸しようとする自発的に呼吸する人によって行われる作業であると言われる。
【0285】
呼吸サイクルの呼気部分:呼気流の開始から吸気流の開始までの期間。
【0286】
流量限界:流量限界は、患者による努力の増大が対応する流量の増大を引き起こさない患者の呼吸における事象の状態であると解釈される。呼吸サイクルの吸気部分中に流量限界が起こる場合、それは、吸気流量限界と見なされてもよい。呼吸サイクルの呼気部分中に流量限界が起こる場合、それは、呼気流量限界と見なされてもよい。
【0287】
流量限界の吸気波形のタイプは以下の通りである。
(i)平坦:立ち上がりの後に比較的平らな部分が続き、その後、立ち下がる。
(ii)M形状:2つの局所的なピークを有し、一方が立ち上がり区間にあり、もう一方が立下り区間にあり、また、2つのピーク間に比較的平らな部分がある。
(iii)椅子形状:単一の局所的なピークを有し、該ピークは立ち上がり区間にあり、その後、比較的平らな部分が続く。
(iv)逆椅子形状:比較的平らな部分の後に、単一の局所的なピークが続き、該ピークが立下り区間にある。
【0288】
呼吸低下:呼吸低下は、流れの中断ではなく、流量の減少であると解釈される。1つの形態において、呼吸低下は、所定の持続時間にわたって閾値を下回る流量の減少があるときに起こると言われる場合がある。中枢性呼吸低下は、呼吸努力の低下に起因する呼吸低下が検出されるときに起こると言われる。成人における1つの形態では、以下のうちのいずれかを来すと、呼吸低下と見なされる。すなわち、(i)少なくとも10秒にわたって呼吸する患者における30%減少+関連する4%脱飽和、又は、(ii)少なくとも3%の関連する脱飽和又は覚醒を伴う、少なくとも10秒にわたって呼吸する患者における減少(しかし、50%未満)。
【0289】
過呼吸:通常の流量よりも高いレベルへの流量の増大。
【0290】
呼吸サイクルの吸気部分:吸気流の開始から呼気流の開始までの期間が呼吸サイクルの吸気部分であると解釈される。
【0291】
開通性(気道):気道が開放している度合、又は、気道が開放する範囲。開通気道は開放している。気道開通性は、例えば開通している1(1)の値及び閉じられている(閉塞されている)ゼロ(0)の値を用いて定量化されてもよい。
【0292】
呼気終末陽圧(PEEP):呼気の終わりに存在する肺内の大気圧を上回る圧力。
【0293】
ピーク流量(Qpeak):呼吸流波形の吸気部分中の流量の最大値。
【0294】
呼吸流量、気流量、患者気流量、呼吸気流量(Qr):これらの同義語は、通常はリットル/分の単位で表わされる患者が直面する実際の呼吸流量である“真の呼吸流量”又は“真の呼吸気流量”とは対照的に、RPT装置の呼吸気流量の推定値を示すものと理解されてもよい。
【0295】
1回換気量(Vt):余分な努力が加えられないときの通常の呼吸中に吸い込まれる或いは吐き出される空気の量。
【0296】
(吸気)時間(Ti):呼吸流波形の吸気部分の持続時間。
【0297】
(呼気)時間(Te):呼吸流波形の呼気部分の持続時間。
【0298】
(総)時間(Ttot):1つの呼吸流波形の吸気部分の開始と後続の呼吸流波形の吸気部分の開始との間の総持続時間。
【0299】
典型的な最近の換気量:何らかの所定のタイムスケールにわたる最近の値がその周囲に集まる傾向がある換気量の値、すなわち、換気量の最近の値の中心的傾向の指標。
【0300】
上気道閉塞(UAO):一部上気道閉塞及び完全上気道閉塞の両方を含む。これは、上気道にわたる圧力差が増大するにつれて流量のレベルが僅かだけ増大する或いは更には減少してもよい流量限界の状態(スターリング抵抗挙動)と関連付けられてもよい。
【0301】
換気量(Vent):吸気流量及び呼気流量の両方を含む、患者の呼吸器系によって交換されるガスの単位時間当たりの総量の指標。1分当たりの量として表わされる際、この量は、しばしば、“分時換気量”と称される。分時換気量は、時として、単に、1分当たりの量であると理解されるボリュームとして与えられる。
【0302】
5.8.3 RPT装置パラメータ
流量(又は流れ):単位時間当たりに送出される空気の瞬時の量(又は質量)。流量及び換気量は単位時間当たり同じ大きさの量又は質量を有するが、流量は、かなり短い時間にわたって測定される。ある場合には、流量への言及は、スカラー量、すなわち、大きさのみを有する量への言及となる。他の場合には、流量への言及は、ベクトル量、すなわち、大きさ及び方向の両方を有する量への言及となる。符号付きの量として言及される場合、流量は、患者の呼吸サイクルの吸気部分に関しては名目上プラスであってもよく、また、したがって、患者の呼吸サイクルの呼気部分に関してはマイナスであってもよい。流量には記号Qが与えられる。総流量Qtは、RPT装置から出る空気の流量である。ベント流量Qvは、吐き出されたガスの流出を可能にするためのベントから出る空気の流量である。漏れ流量Qlは、患者インタフェースシステムからの意図しない漏れの流量である。呼吸流量Qrは、患者の呼吸器系内へ受けられる空気の流量である。
【0303】
漏れ:漏れという用語は、周囲への空気の流れであると解釈される。漏れは、例えば吐き出されるCO
2の流出を可能にするために意図的であってもよい。漏れは、例えばマスクと患者の顔面との間の不完全なシールの結果として意図的でなくてもよい。1つの例では、漏れがスイベルエルボーで起こる場合がある。
【0304】
伝導雑音(音響):この文書中の伝導雑音とは、空気回路や患者インタフェースなどの空気圧経路及びその内部の空気によって患者へ伝えられる雑音のことである。1つの形態において、伝導雑音は、空気回路の端部で音圧レベルを測定することによって定量化されてもよい。
【0305】
放射雑音(音響):この文書中の放射雑音とは、外気によって患者へ伝えられる雑音のことである。1つの形態において、放射雑音は、ISO3744にしたがって対象物体の音響パワーレベル/音圧レベルを測定することによって定量化されてもよい。
【0306】
ベント雑音(音響):この文書中のベント雑音とは、患者インタフェースにおけるベント穴などの任意のベントを通過する空気の流れによって発生される雑音のことである。
【0307】
圧力:単位面積当たりの力。圧力は、cmH
2O、g−f/cm
2、ヘクトパスカルを含む一連の単位で測定されてもよい。1cmH
2Oは、1g−f/cm
2に等しいとともに、約0.98ヘクトパスカルである。この明細書中では、別段に述べられなければ、圧力がcmH
2Oの単位で与えられる。患者インタフェース内の圧力には記号Pmが与えられるが、現在の時間の瞬間のマスク圧Pmによって達成されるべき目標値を表わす治療圧力には符号Ptが与えられる。
【0308】
音響パワー:音波によって伝えられる単位時間当たりのエネルギー。音響パワーは、音圧の平方と波面の面積との積に比例する。音響パワーは、通常、デシベルSWLの単位、すなわち、通常は10
−12ワットとして解釈される、基準パワーに対するデシベルの単位で与えられる。
【0309】
音圧:媒体を通じて進む音波の結果としての所定の時刻での周囲圧力からの局所的な偏り。音圧は、通常、デシベルSPLの単位、すなわち、人の聴力の閾値と見なされる、通常は20×10
−6パスカル(Pa)として解釈される、基準圧力に対するデシベルの単位で与えられる。
【0310】
5.8.4 換気装置の用語
適応サーボ換気装置:所定の目標換気量ではなく変化可能な換気量を有する換気装置。変化可能な目標換気量は、患者の何らかの特徴、例えば患者の呼吸特徴から学習されてもよい。
【0311】
バックアップレート:換気装置が違う方法で起動されなければ患者へ向けて送出する最小呼吸速度(一般に、単位が呼吸数/分)を定める換気装置のパラメータ。
【0312】
周期付け:換気装置の吸気段階の終了。自発呼吸している患者へ換気装置が息を送出するときに、呼吸サイクルの吸気部分の終わりに、換気装置は、息の送出を停止するべく周期付けられると言われる。
【0313】
EPAP(又はEEP):換気装置が所定の時間に達成しようとする所望のマスク圧力を生み出すために呼気中の変化する圧力が加えられるベース圧力。
【0314】
IPAP:呼吸の吸気部分中に換気装置が達成しようとする所望のマスク圧力。
【0315】
圧力サポート:換気装置呼気中の圧力を超える換気装置吸気中の圧力の増大を示す数であり、一般的には、吸気中の最大値と呼気中の最小値との間の圧力の差(例えば、PS=IPAP−EPAP)を意味する。幾つかの文脈において、圧力サポートは、換気装置が実際に達成する差ではなく、換気装置が達成しようとする差を意味する。
【0316】
サーボ換気装置:目標換気量を有する、患者換気量を測定する換気装置であって、患者換気量を目標換気量へと至らせるべく圧力サポートのレベルを調整する換気装置。
【0317】
自発性/時限(S/T)−自発呼吸している患者の呼吸の開始を検出しようとする換気装置又は他の装置のモード。しかしながら、所定の期間内に装置が呼吸を検出できない場合、装置は、息の送出を自動的に開始する。
【0319】
トリガ状態:換気装置が空気の息を自発呼吸患者へ送出するときに、換気装置は、患者の努力により呼吸サイクルの呼吸部分の開始時にそうするようにトリガされると言われる。
【0320】
換気装置:呼吸の仕事の一部又は全部を果たすために患者に対して圧力サポートをもたらす機械的な装置。
【0321】
5.8.5 顔面の生体構造
各鼻孔の外側の外壁又は「翼」(複数形:alae)
【0322】
鼻翼最外点(alare):鼻翼の最も外側にある点。
【0323】
鼻翼湾曲(又は鼻翼頂部)点:頬との鼻翼の結合により形成される折れ目で見出される各鼻翼の湾曲ベースラインにおける最も後側の点。
【0324】
耳介(auricle):耳の視認できる全体の外側部分。
【0325】
(鼻)骨格:鼻の骨格は、鼻骨、上顎骨前頭突起、及び、前頭骨の鼻部を備える。
【0326】
(鼻)軟骨骨格:鼻の軟骨骨格は、鼻中隔、外側軟骨、大鼻翼軟骨、及び、小鼻翼軟骨を備える。
【0327】
鼻柱:鼻孔を分離するとともに鼻尖点から上唇まで延びる皮膚片。
【0328】
鼻柱角度:鼻孔開口の中点を通って引かれるラインと鼻棘を横切りつつフランクフォート水平面に対して垂直に引かれるラインとの間の角度。
【0329】
フランクフォート水平面:眼窩縁の最下点から左耳珠点まで延在するライン。耳珠点は、耳介の耳毛よりも上側の切痕における最深点である。
【0330】
眉間:軟組織上に位置される、額の正中矢状面内の最隆起点。
【0331】
側鼻軟骨:軟骨の略三角形プレート。その上縁は鼻骨及び上顎骨前頭突起に取り付けられ、また、その下縁は大鼻翼軟骨に接続される。
【0332】
大鼻翼軟骨:外側鼻軟骨の下側に位置する軟骨のプレート。大鼻翼軟骨は、鼻孔の前部の周囲で湾曲される。大鼻翼軟骨の後端は、鼻翼の3つ或いは4つの小軟骨を含む頑丈な線維膜によって上顎骨前頭突起に接続される。
【0333】
鼻孔(鼻の穴):鼻腔への入口を形成する略楕円形の開口。鼻孔(nares)の単数形は鼻孔(naris(nostril))である。鼻孔は、鼻中隔によって分離される。
【0334】
鼻唇溝(Naso−labial sulcus)又は鼻唇溝(Naso−labial fold):頬を上唇から分離する、鼻の両側から口の角まで延びる皮膚の襞又は溝。
【0335】
鼻唇角:鼻棘を横切る状態での鼻柱と上唇との間の角度。
【0336】
下耳底:顔面の皮膚に対する耳介の取り付け最下点。
【0337】
上耳底:顔面の皮膚に対する耳介の取り付け最上点。
【0338】
鼻尖:頭部の一部の残りの側面図で特定され得る鼻の最突出点又は頂点。
【0339】
人中:鼻中隔の下縁から上唇領域の唇の上端まで延びる正中溝。
【0340】
ポゴニオン:軟組織上に位置される、顎の最前中点。
【0341】
稜部(鼻堤):鼻稜部は、鼻根から鼻尖まで延在する鼻の正中突起。
【0342】
矢状面:身体を右半分と左半分とに分ける前(正面)から後(背面)まで通り過ぎる垂直面。
【0343】
鼻根:軟組織上に位置される、前頭鼻骨縫合の領域上に横たわる最凹点。
【0344】
中隔軟骨(鼻中隔軟骨):鼻中隔軟骨は、中隔の一部を形成するとともに、鼻腔の前部を分ける。
【0345】
鼻翼最下点:鼻翼基部が上(上側)唇の皮膚と結合する鼻翼基部の下縁点。
【0346】
鼻棘点:軟組織上に位置される、鼻柱が正中矢状面内で上唇と合流する点。
【0347】
頤上点:下唇中点と軟組織ポゴニオンとの間の下唇の中線における最凹点。
【0348】
5.8.6 頭蓋骨の生体構造
前頭骨:前頭骨は、額として知られる領域に対応する、大垂直部、すなわち、前頭鱗を含む。
【0349】
下顎骨:下顎骨は下側の顎を形成する。オトガイ隆起は、頤を形成する顎の骨隆起である。
【0350】
上顎骨:上顎骨は、上側の顎を形成するとともに、下顎骨よりも上側及び眼窩よりも下側に位置される。上顎骨前頭突起は、鼻の側面によって上方へ突出するとともに、鼻の側面境界の一部を形成する。
【0351】
鼻骨:鼻骨は、異なる個体でサイズ及び形状が異なる2つの小さい楕円形の骨である。鼻骨は、顔面の中央部及び部に並んで配置されるとともに、それらの接合によって鼻の“梁”を形成する。
【0352】
ナジオン:前頭骨と2つの鼻骨との交わりであり、眼と鼻梁の上部とのちょうど間にある陥凹領域である。
【0353】
後頭骨:後頭骨は頭蓋の後下部に位置される。後頭骨は、楕円開口、すなわち、大後頭孔を含み、この大後頭孔を通じて頭蓋腔が脊柱管と連通する。大後頭孔の背後の湾曲板が後頭鱗である。
【0354】
眼窩:眼球を収容するための頭蓋骨の腔。
【0355】
頭頂骨:頭頂骨は、互いに接合されるときに頭蓋の天盤及び側面を形成する骨である。
【0356】
側頭骨:側頭骨は、頭蓋骨の基部及び側部に位置されるとともに、こめかみとして知られる顔面の部分を支持する。
【0357】
頬骨:顔面は、顔面の上部及び側部に位置されて頬の隆起を形成する2つの頬骨を含む。
【0358】
5.8.7 呼吸器系の構造
横隔膜:胸郭の底部を横切って延在する筋層。横隔膜は、心臓、肺、肋骨を収容する胸腔を腹腔から分離する。横隔膜が収縮すると、胸腔の容積が増大して、空気が肺内へ引き込まれる。
【0359】
喉頭:喉頭又は発声器は、声帯を収容するとともに、咽頭の下部(下咽頭)を気管と接続する。
【0360】
肺:人の呼吸器。肺の伝導領域は、気管、気管支、細気管支、及び、終末細気管支を含む。呼吸器領域は、呼吸細気管支、肺胞管、及び、肺胞を含む。
【0361】
鼻腔:鼻腔(nasal cavity)(又は鼻腔(nasal fossa))は、顔面の中央の鼻の上後にある大きい空気充填空間である。鼻腔は、鼻中隔と呼ばれる垂直ひれによって2つに分けられる。鼻腔の両側には、鼻甲介(conchae)(単数形「concha」)又は鼻甲介(turbinate)と呼ばれる3つの水平な延出部がある。鼻腔の前方には、背部が後鼻孔を介して鼻咽頭へと一体化する鼻がある。
【0362】
咽頭:鼻腔の真下(下方)に位置されるとともに食道及び喉頭の上に位置される咽喉の一部。喉頭は、通常、3つの部分、すなわち、鼻咽頭(上咽頭)(咽頭の鼻部)と、中咽頭(oropharynx)(中咽頭(mesopharynx))(咽頭の口部)と、咽喉頭(下咽頭)とに分けられる。
【0363】
5.8.8 材料
シリコーン又はシリコーンエラストマー:合成ゴム。この明細書において、シリコーンへの言及は、液状シリコーンゴム(LSR)又は圧縮成形シリコーンゴム(CMSR)への言及である。市販のLSRの1つの形態は、Dow Corningにより製造されるSILASTIC(この商標の下で販売される一連の製品に含まれる)である。LSRの他の製造業者はWackerである。正反対のことが別段に明示されなければ、LSRの好ましい形態は、ASTM D2240を使用して測定される約35〜約45の範囲内のショアA(又はタイプA)圧入硬度を有する。
【0364】
ポリカーボネート:ビスフェノールAカーボネートの一般的に透明な熱可塑性高分子。
【0365】
5.8.9 患者インタフェースの態様
窒息防止弁(AAV):フェイルセーフ態様で大気へ開放することによって患者による過剰なCO
2再呼吸の危険を減らすマスクシステムの構成要素又はサブアセンブリ。
【0366】
エルボー:所定の角度にわたって方向を変えるべく空気流の軸線を方向付ける導管。1つの形態では、角度が約90°であってもよい。他の形態では、角度が90°未満であってもよい。導管が略円形断面を有してもよい。他の形態では、導管が楕円又は長方形の断面を有してもよい。
【0367】
マスクフレーム:マスクフレームは、ヘッドギアとの2つ以上の接続点間の張力負荷を支持するマスク構造体を意味するように解釈される。マスクフレームは、マスクにおける気密でない負荷支持構造体であってもよい。しかしながら、マスクフレームの幾つかの形態が気密であってもよい。
【0368】
ヘッドギア:ヘッドギアは、頭部上で用いるようになっている位置決め安定化構造体の一形態を意味するように解釈される。ヘッドギアは、呼吸療法を与えるために患者インタフェースを患者の顔面上の所定位置に位置決めして保持するように構成される1つ以上の支柱、紐、補強材の集合体を備えてもよい。幾つかの紐は、発泡体と布との積層複合体などの柔軟な可撓性の弾性材料から形成される。
【0369】
膜:膜は、曲げ耐性を実質的に有さないが伸長耐性を有する一般的に薄い要素を意味するように解釈される。
【0370】
プレナムチャンバ:マスクプレナムチャンバは、所定容積の空間を取り囲む壁を有する患者インタフェースの部分を意味するように解釈され、前記容積は、使用時に大気圧を上回って加圧される空気を内部に有する。外殻がマスクプレナムチャンバの壁の一部を形成してもよい。
【0371】
シール:名詞形(「シール」)は、2つの表面の界面を通じた空気の流れに意図的に抵抗する構造体又は障壁を意味するように解釈される。動詞形(「シールする」)は、空気の流れに抵抗することを意味するように解釈される。
【0372】
外殻:外殻は、曲げ剛性、引張剛性、及び、圧縮剛性を有する湾曲した二次元構造体、例えばマスクの湾曲構造壁を形成するマスクの部分を意味するように解釈される。外殻は、その全体の寸法と比べて比較的薄い。幾つかの形態では、外殻が面取りされてもよい。そのような壁は気密であるが、幾つかの形態では、それらの壁が気密でなくてもよい。
【0373】
補強材:補強材は、他の構成要素の曲げ抵抗を少なくとも1つの方向で高めるようになっている構造的な構成要素を意味するように解釈される。
【0374】
支柱:支柱は、他の構成要素の圧縮抵抗を少なくとも1つの方向で高めるようになっている構造的な構成要素であるように解釈される。
【0375】
スイベル:(名詞)低トルク下で、独立に、共通の軸線の周りで回転するように構成される構成要素のサブアセンブリ。1つの形態において、スイベルは、少なくとも360°の角度にわたって回転するように構成されてもよい。他の形態において、スイベルは、360°未満の角度にわたって回転するように構成されてもよい。構成要素のサブアセンブリは、空気送出導管との関連で使用されるときには、円筒状の導管の適合された対を備える。使用時にスイベルからの空気流の漏れが殆どない或いは全くない。
【0376】
紐:紐は、張力に抵抗するようになっている構造的な構成要素であると解釈される。
【0377】
ベント:(名詞)吐き出されたガスの流出を可能にするための、例えばマスクの内部からの空気の意図的な流れを可能にする構造体、又は、外気への導管。
【0378】
5.8.10 患者インタフェースに関して使用される用語
(表面の)曲率:1つの方向で上方に曲がるとともに異なる方向で下方に曲がるサドル形状を有する表面の領域は、マイナスの曲率を有すると言われる。2つの主方向で同じように曲がるドーム形状を有する表面の領域は、プラスの曲率を有すると言われる。平坦な表面は、ゼロ曲率を有するように解釈される。
【0379】
軟質:以下のうちの1つ以上である材料、構造体、又は、複合体の品質。
・指圧に容易に順応する。
・それ自体の重量を支持させられるときにその形状を保つことができない。
・硬質ではない。
・僅かな労力で弾性的に伸長され得る或いは曲げられ得る。
【0380】
軟質であるという品質が関連する方向を有してもよく、したがって、特定の材料、構造体、又は、複合体は、第1の方向で軟質であってもよいが、第2の方向で、例えば第1の方向と垂直な第2の方向で高剛性又は硬質であってもよい。
【0381】
弾性:1秒などの比較的短い時間内で、略弾力的に変形できるとともに、荷重除去時にエネルギーの略全てを解放できる。
【0382】
硬質:指圧に応じて、及び/又は、患者インタフェースを患者の気道への入口とのシール関係に設定して維持するときに一般に直面される張力又は負荷に応じて、容易に変形しない。
【0383】
半硬質:気道陽圧治療中に一般に印加される機械的な力の作用下で実質的に歪まないように十分に硬質であることを意味する。
【0384】
5.9 他の所見
この特許文献の開示の一部は、著作権保護を受ける題材を含む。著作権所有者は、特許文献又は特許開示のうちのいずれかによる複製に何ら異存はない。これは、複製が、特許商標局の特許ファイル又は記録に現れるが、そのほかの点では全ての著作権を何であれ留保するからである。
【0385】
文脈が別段に明確に指示する場合を除き、値の範囲が与えられる場合、その範囲の上限と下限との間にある下限の単位の1/10までのそれぞれの値、及び、任意の他の述べられた値又はその述べられた範囲内にある値は、本技術内に含まれることが理解される。これらの介在範囲の該介在範囲内に独立に含まれてもよい上限及び下限も、述べられた範囲内の任意の特に排除された限界値の制約下で本技術内に含まれる。述べられた範囲がその限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれた限界値のいずれか一方又は両方を排除する範囲も本技術内に含まれる。
【0386】
また、1又は複数の値が本技術の一部として実施されるように本明細書中で述べられる場合には、別段に述べられなければ、そのような値が近似されてもよいことが理解され、また、そのような値は、任意の適した有効数字まで利用されてもよい。ただし、実用的な技術的実施がそれを許容する或いは必要とする場合に限る。
【0387】
別段に規定されなければ、本明細書中で使用される全ての技術用語及び科学用語は、この技術が属する技術分野における当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法及び材料と同様又は等価な任意の方法及び材料を本技術の実施又は試験で使用することもできるが、本明細書中には、限られた数の典型的な方法及び材料が記載される。
【0388】
特定の材料が一構成要素を構成するために使用されるのが好ましいと見なされる場合、同様の特性を有する自明な別の材料が代替物として使用されてもよい。また、反対のことが明示されなければ、本明細書中に記載される任意の全ての構成要素は、一緒に或いは個別に製造され得る、したがって製造されてもよいと理解される。
【0389】
本明細書中において及び添付の特許請求の範囲において使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び、「その(the)」は、文脈が別段に明確に指示しなければ、それらの複数の等価物を含むことが留意されなければならない。
【0390】
本明細書中で言及される全ての刊行物は、それらの刊行物の主題である方法及び/又は材料を開示して説明するべく、参照することにより本願に組み入れられる。本明細書中で論じられる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のためだけに与えられているにすぎない。本明細書中のいずれも、本技術が従前の発明に基づきそのような刊行物に先行する権利を有さないという自白として解釈されるべきでない。また、与えられる刊行物の日付は、実際の公開日とは異なる場合があり、公開日は独立に確認される必要があるかもしれない。
【0391】
「備える(comprises)」及び「備えている(comprising)」という用語は、非排他的態様で要素、構成要素、又は、ステップに言及しているとして、したがって、言及された要素、構成要素、又は、ステップが、存在し又は利用されてもよく、或いは、明確に言及されない他の要素、構成要素、又は、ステップと組み合わされてもよいことを示唆しているとして解釈されるべきである。
【0392】
詳細な説明で使用される主題の表題は、読者の参照を容易にするためだけに含まれており、開示又は特許請求の範囲の全体にわたって見出される主題を限定するために使用されるべきでない。主題の表題は、1又は複数の特許請求項の範囲を限定的に解釈して使用されるべきでない。
【0393】
本明細書中の技術を特定の実施例に関連して説明してきたが、これらの実施例が本技術の原理及び用途の単なる例示にすぎないことが理解されるべきである。ある場合には、専門用語及び記号が、本技術を実施するために必要とされない特定の詳細を示唆する場合がある。例えば、「第1」及び「第2」という用語が使用される場合があるが、別段に明記されなければ、それらの用語は、任意の順序を示すように意図されず、別個の要素間を区別するために利用される場合がある。また、方法論におけるプロセスステップが所定の順序で説明され或いは図示される場合があるが、そのような順序付けは必要とされない。当業者であれば分かるように、そのような順序付けが変更されてもよく、及び/又は、その態様が同時に或いは更には同期して行われてもよい。
【0394】
したがって、本技術の思想及び範囲から逸脱することなく、例示された実施例に対して多数の変更が成されてもよく、また、他の構成が考え出されてもよいことが理解されるべきである。
【0395】
さらに、本発明では以下の例を含むことも好ましい。
[付記項1]
患者の鼻孔の入口を少なくとも含む患者の気道の入口へ呼吸用ガス流を送出するための患者インタフェースであって、前記患者インタフェースは、
水分交換のための少なくとも1つの波形構造体を備える熱水分交換器(HME)を備え、前記波形構造体が複数の波形部を備え、前記複数の波形部は、前記波形構造体の表面に沿う前記熱水分交換器(HME)を通じた呼吸用ガス流を可能にするための複数のチャネルを形成し、
前記波形構造体が呼気ガス流からの水分を保持し、
前記保持された水分が加湿のために呼吸用ガス流へ与えられる、患者インタフェース。
[付記項2]
前記熱水分交換器(HME)は、前記複数のチャネルが呼吸用ガス流の流路と略平行になるように方向付けられる、請求項1に記載の患者インタフェース。
[付記項3]
前記熱水分交換器(HME)が略平坦な下端構造体を更に備え、
前記波形構造体は、層を形成するために前記下端構造体に係合される、請求項1又は請求項2に記載の患者インタフェース。
[付記項4]
前記波形構造体の各波形部が上側折り曲げ部及び下側折り曲げ部を備え、
各下側折り曲げ部が前記下端構造体の表面に係合される、請求項3に記載の患者インタフェース。
[付記項5]
前記層が略平坦な上端構造体を更に備え、前記各波形部の前記上側折り曲げ部は、蛇腹形状層を形成するべく前記波形構造体が前記上端構造体と前記下端構造体との間に配置されるように前記上端構造体の表面に係合される、請求項4に記載の患者インタフェース。
[付記項6]
前記上端構造体及び/又は前記下端構造体が水分非吸収体である、請求項4又は請求項5に記載の患者インタフェース。
[付記項7]
前記上端構造体及び/又は前記下端構造体の厚さが0.03〜0.12mmである、請求項6に記載の患者インタフェース。
[付記項8]
前記熱水分交換器(HME)は、前記患者インタフェースのプレナムチャンバ内に嵌合するように構成される所定の三次元形状を形成する複数の層を備える、請求項3から7のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項9]
前記複数の層は、所定の三次元形状を形成するようにレーザカットされる、請求項8に記載の患者インタフェース。
[付記項10]
前記複数の層は、所定の三次元形状を形成するように積み重ねられる、請求項8又は請求項9に記載の患者インタフェース。
[付記項11]
少なくとも1つの前記層は、他の層とは異なるサイズ及び/又は形状を備える、請求項8から10のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項12]
前記所定の三次元形状は、患者の顔面との接触を回避するために内側に湾曲される部分を備える、請求項8から11のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項13]
前記所定の三次元形状が不規則な形状である、請求項8から12のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項14]
前記熱水分交換器(HME)は、4〜14m
2/m
3の単位体積当たりの所定の表面積を有するように構造化される、請求項1から13のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項15]
前記熱水分交換器(HME)は、50〜100mm/10分の所定の水吸収率を有するように構造化される、請求項1から14のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項16]
前記熱水分交換器(HME)が生体適合性添加剤を更に備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項17]
前記生体適合性添加剤がCaCl
2である、請求項16に記載の患者インタフェース。
[付記項18]
前記熱水分交換器(HME)の流れインピーダンスが100L/分の所定の流量で0〜2.5cmH
2Oである、請求項1から17のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項19]
前記流れインピーダンスが100L/分の所定の流量で0〜1.6cmH
2Oである、請求項18に記載の患者インタフェース。
[付記項20]
前記流れインピーダンスは、前記熱水分交換器(HME)の密度を所定の密度まで減少させることによって減少される、請求項19に記載の患者インタフェース。
[付記項21]
前記波形構造体の所定のシート密度が0.02〜0.4g/cm
3である、請求項20に記載の患者インタフェース。
[付記項22]
前記流れインピーダンスは、前記各波形部のピッチを1〜4mmまで増大させることによって減少される、請求項18から21のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項23]
前記流れインピーダンスは、前記チャネルの数を増大させることによって減少される、請求項18から22のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項24]
前記流れインピーダンスは、呼吸用ガス流の流路内の前記複数のチャネルの全容積を増大させることによって減少される、請求項18から23のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項25]
患者の鼻孔の入口を少なくとも含む患者の気道の入口へ呼吸用ガス流を送出するための患者インタフェースであって、前記患者インタフェースが
複数の層を備える熱水分交換器(HME)を備え、前記層が所定の三次元形状へと積み重ねられる、患者インタフェース。
[付記項26]
前記所定の三次元形状が不規則な形状である、請求項25に記載の患者インタフェース。
[付記項27]
各層が複数の波形部を備える波形構造体を備え、前記複数の波形部は、水分交換のために前記波形構造体の表面に沿う呼吸用ガス流を可能にするための複数のチャネルを形成し、
前記波形構造体が呼気ガス流からの水分を保持し、前記保持された水分が加湿のために呼吸用ガス流へ与えられる、請求項26に記載の患者インタフェース。
[付記項28]
前記熱水分交換器(HME)が略平坦な下端構造体を更に備え、
前記波形構造体は、層を形成するために前記下端構造体に係合される、請求項25から27のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項29]
各波形部が上側折り曲げ部及び下側折り曲げ部を備え、前記下側折り曲げ部が前記下端構造体の表面に係合される、請求項28に記載の患者インタフェース。
[付記項30]
前記層が略平坦な上端構造体を更に備え、前記各波形部の前記上側折り曲げ部は、蛇腹形状層を形成するべく前記波形構造体が前記上端構造体と前記下端構造体との間に配置されるように前記上端構造体の表面に係合される、請求項29に記載の患者インタフェース。
[付記項31]
前記熱水分交換器(HME)は、該熱水分交換器(HME)の垂直軸に沿って垂直に積み重ねられる複数の層を備える、請求項29に記載の患者インタフェース。
[付記項32]
前記上端構造体及び/又は前記下端構造体が15〜100gsmの重量を有する、請求項30又は請求項31に記載の患者インタフェース。
[付記項33]
患者の鼻孔の入口を少なくとも含む患者の気道の入口へ呼吸用ガス流を送出するための患者インタフェースと取り外し可能に係合する熱水分交換器(HME)であって、前記熱水分交換器(HME)は、
該熱水分交換器(HME)の外周面を周方向に取り囲む硬質フレームを備え、
前記硬質フレームは、前記熱水分交換器(HME)を呼吸用ガス流の流路内に位置させるために前記患者インタフェースのプレナムチャンバの内面に取り外し可能に係合するように構成される、熱水分交換器(HME)。
[付記項34]
前記硬質フレームは、前記プレナムチャンバの内面に係合するための少なくとも1つの係合部材を備える、請求項33に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項35]
前記係合部材は、前記プレナムチャンバの内面に係合するためのクリップを備える、請求項34に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項36]
前記熱水分交換器(HME)が水分交換のための少なくとも1つの波形構造体を備え、前記波形構造体が複数の波形部を備え、前記複数の波形部は、水分交換のために前記波形構造体の表面に沿う呼吸用ガス流を可能にするための複数のチャネルを形成し、
前記波形構造体が呼気ガス流からの水分を保持し、
前記保持された水分が加湿のために呼吸用ガス流へ与えられる、請求項33から35のいずれか一項に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項37]
前記熱水分交換器(HME)が略平坦な下端構造体を更に備え、
前記波形構造体は、層を形成するために前記下端構造体に係合される、請求項36に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項38]
前記波形構造体の各波形部が下側折り曲げ部を備え、
各下側折り曲げ部が前記下端構造体の表面に係合される、請求項37に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項39]
前記下端構造体の厚さが0.03〜0.12mmである、請求項38に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項40]
前記熱水分交換器(HME)は、前記患者インタフェースのプレナムチャンバ内に嵌合するように構成される所定の三次元形状を形成する複数の層を備える、請求項33から39のいずれか一項に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項41]
前記複数の層は、所定の三次元形状を形成するようにレーザカットされる、請求項39に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項42]
前記複数の層は、所定の三次元形状を形成するように積み重ねられる、請求項40又は請求項41に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項43]
前記所定の三次元形状は、患者の顔面との接触を回避するために内側に湾曲される部分を備える、請求項40から42のいずれか一項に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項44]
前記所定の三次元形状が不規則な形状である、請求項40から43のいずれか一項に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項45]
前記熱水分交換器(HME)は、4〜14m
2/m
3の単位体積当たりの所定の表面積を有するように構造化される、請求項33から44のいずれか一項に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項46]
前記熱水分交換器(HME)は、50〜100mm/10分の所定の水吸収率を有するように構造化される、請求項33から45のいずれか一項に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項47]
前記熱水分交換器(HME)が乾燥添加剤を更に備える、請求項33から46のいずれか一項に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項48]
前記乾燥添加剤がCaCl
2である、請求項47に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項49]
前記熱水分交換器(HME)の流れインピーダンスが100L/分の所定の流量で0〜2.5cmH
2Oである、請求項33から48のいずれか一項に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項50]
前記流れインピーダンスが100L/分の所定の流量で0〜1.6cmH
2Oである、請求項49に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項51]
前記熱水分交換器(HME)が0.02〜0.4g/cm
3のシート密度を有するように構造化される、請求項33から50のいずれか一項に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項52]
前記波形構造体が1〜4mmのピッチを有する、請求項34から51のいずれか一項に記載の熱水分交換器(HME)。
[付記項53]
患者の鼻孔の入口を少なくとも含む患者の気道の入口へ呼吸用ガス流を送出するための患者インタフェースであって、前記患者インタフェースは、
前記患者インタフェースのプレナムチャンバを第1の前方チャンバと第2の後方チャンバとに分けるように構成される熱水分交換器(HME)を備え、前記熱水分交換器(HME)は、前記第1の前方チャンバから前記第2の後方チャンバへと流れる呼吸用ガス流を加湿するために前記プレナムチャンバ内に位置され、前記第2の後方チャンバは、患者の顔面の一部でシールするためのシール形成構造体を備え、
前記第1の前方チャンバは、呼吸用ガス流を前記第1の前方チャンバ内へと受けるための入口と、前記第1の前方チャンバからの呼気ガス流の流出のためのベントとを備える、患者インタフェース。
[付記項54]
前記ベントは、呼気ガスの流出を略一定の流量に調整するように構成される、請求項53に記載の患者インタフェース。
[付記項55]
前記患者インタフェースは、
前記ベント及び前記入口を備えるベントアダプタと、
開口及び前記シール形成構造体を備えるクッションアセンブリと
を更に備え、
前記ベントアダプタは、前記プレナムチャンバを形成するために前記クッションアセンブリに取り外し可能に係合するように構成される、請求項53又は請求項54に記載の患者インタフェース。
[付記項56]
前記ベントアダプタの前部が前記第1の前方チャンバの少なくとも1つの壁を形成する、請求項55に記載の患者インタフェース。
[付記項57]
前記ベントアダプタは、前記熱水分交換器(HME)を収容するためのハウジング部を形成する壁を備える、請求項56に記載の患者インタフェース。
[付記項58]
前記ハウジング部は、前記熱水分交換器(HME)を前記プレナムチャンバ内に位置決めするように構成される、請求項57に記載の患者インタフェース。
[付記項59]
前記入口は、呼吸用ガス流を前記入口へ送出するための導管に取り外し可能に係合するように構成される、請求項53から58のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項60]
前記熱水分交換器(HME)が前記患者インタフェースに解放可能に係合するように構成される、請求項53から59のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項61]
前記熱水分交換器(HME)は、前記患者インタフェースに解放可能に係合するための少なくとも1つの係合部材を備える請求項60に記載の患者インタフェース。
[付記項62]
前記係合部材は、接着係合可能な部分、クリップ、弾性フランジ、フック、又は、ループから成るグループのうちの1つから選択される、請求項61に記載の患者インタフェース。
[付記項63]
前記係合部材が複数のクリップである、請求項62に記載の患者インタフェース。
[付記項64]
前記患者インタフェースは、前記熱水分交換器(HME)に対して構造的な支持を与えるためのフレームを更に備える、請求項53から63のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項65]
前記フレームが前記熱水分交換器(HME)の外周面を周方向で取り囲み、前記層は、複数のチャネルが開口を貫通して延びるように前記フレームを貫通して延在する開口内に位置される、請求項64に記載の患者インタフェース。
[付記項66]
前記熱水分交換器(HME)は、前記フレームの前記開口内で積み重ねられる複数の層を備える、請求項65に記載の患者インタフェース。
[付記項67]
各層が水分交換のための波形構造体を備え、前記波形構造体が複数の波形部を備え、前記複数の波形部は、水分交換のために前記波形構造体の表面に沿う呼吸用ガス流を可能にするための複数のチャネルを形成し、
前記波形構造体が呼気ガス流からの水分を保持し、
前記保持された水分が加湿のために呼吸用ガス流へ与えられる、請求項66に記載の患者インタフェース。
[付記項68]
前記フレームは、該フレームの外面上に位置される係合部材を備え、
前記係合部材が前記患者インタフェースの内面と解放可能に係合する、請求項64から67のいずれか一項に記載の患者インタフェース。
[付記項69]
前記フレームが複数の前記係合部材を備える、請求項68に記載の患者インタフェース。
[付記項70]
前記フレームは、前記保持された水分を前記層に供給するために水分保持リザーバを更に備える、請求項69に記載の患者インタフェース。
[付記項71]
前記水分保持リザーバが水分吸収材料によって形成される、請求項70に記載の患者インタフェース。
[付記項72]
前記水分吸収材料が高密度スポンジである、請求項71に記載の患者インタフェース。
[付記項73]
患者インタフェースによって送出される呼吸用ガス流を加湿するための熱水分交換器(HME)を製造する方法であって、
前記熱水分交換器(HME)が所望の流れインピーダンスを有し、
前記熱水分交換器(HME)の少なくとも1つの部分を波形状にして、前記熱水分交換器(HME)を通じた波形構造体の表面に沿う呼吸用ガス流を可能にするための複数のチャネルを形成するステップと、
前記チャネルを形成する波形部の数を調整して前記チャネルを通じた呼吸用ガス流の流量を増大させることにより所望の流れインピーダンスを達成するステップと、
を備える方法。
[付記項74]
患者気道の入口へ呼吸用ガス流を送出するための患者インタフェースを製造する方法であって、
前記患者インタフェースが、呼吸用ガス流を加湿するのに望ましい加湿性能を有する熱水分交換器(HME)を備え、
前記患者インタフェースを製造するステップと、
呼吸用ガス流を患者へ送出するための前記患者インタフェースのプレナムチャンバの容積を決定するステップと、
前記熱水分交換器(HME)の少なくとも1つの部分を波形状にして、前記熱水分交換器(HME)を通じた波形構造体の表面に沿う呼吸用ガス流を可能にするための複数のチャネルを形成するステップと、
所望の付加絶対湿度を得るべく前記プレナムチャンバの前記容積に基づいて前記熱水分交換器(HME)の単位体積当たりの表面積を増大させるために前記チャネルを形成する波形部の数を調整するステップと、
呼吸用ガス流の流路で前記患者インタフェースの前記プレナムチャンバ内に前記熱水分交換器(HME)を取り外し可能に或いは取り外し不能に固定するステップと、
を備える方法。
[付記項75]
呼吸用ガス流を加湿するのに望ましい加湿性能を得るために単位体積当たりの表面積が増大した熱水分交換器(HME)を製造する方法であって、
所望の加湿性能を決定するステップと、
前記熱水分交換器(HME)の少なくとも1つの部分を波形状にして、前記熱水分交換器(HME)を通じた波形構造体の表面に沿う呼吸用ガス流を可能にするための複数のチャネルを形成するステップと、
前記熱水分交換器(HME)の単位体積当たりの表面積を増大させるために前記チャネルを形成する波形部の数を調整するステップと、
所望の加湿性能を得るべく前記熱水分交換器(HME)の単位体積当たりの表面積を更に増大させるために前記熱水分交換器(HME)を波形状の層へと積み重ねるステップと、
を備える方法。
[付記項76]
患者インタフェースにより送出される呼吸用ガス流を加湿するための熱水分交換器(HME)の加湿性能を所望のレベルまで高めるための製造方法であって、
前記熱水分交換器(HME)の所要の加湿性能を決定するステップと、
前記熱水分交換器(HME)の加湿性能を高めるべく単位体積当たりの表面積を増大させるために前記熱水分交換器(HME)を貫くように複数のチャネルをレーザカットするステップと、
所望の加湿性能が得られるまでレーザカットにより前記チャネルの数を増大させるステップと、
を備える方法。