特開2021-11900(P2021-11900A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 武蔵精密工業株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社浅田可鍛鋳鉄所の特許一覧

<>
  • 特開2021011900-差動装置 図000003
  • 特開2021011900-差動装置 図000004
  • 特開2021011900-差動装置 図000005
  • 特開2021011900-差動装置 図000006
  • 特開2021011900-差動装置 図000007
  • 特開2021011900-差動装置 図000008
  • 特開2021011900-差動装置 図000009
  • 特開2021011900-差動装置 図000010
  • 特開2021011900-差動装置 図000011
  • 特開2021011900-差動装置 図000012
  • 特開2021011900-差動装置 図000013
  • 特開2021011900-差動装置 図000014
  • 特開2021011900-差動装置 図000015
  • 特開2021011900-差動装置 図000016
  • 特開2021011900-差動装置 図000017
  • 特開2021011900-差動装置 図000018
  • 特開2021011900-差動装置 図000019
  • 特開2021011900-差動装置 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-11900(P2021-11900A)
(43)【公開日】2021年2月4日
(54)【発明の名称】差動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 48/40 20120101AFI20210108BHJP
   B22C 9/24 20060101ALI20210108BHJP
   B22C 9/02 20060101ALI20210108BHJP
【FI】
   F16H48/40
   B22C9/24 Z
   B22C9/02 103F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-125495(P2019-125495)
(22)【出願日】2019年7月4日
(71)【出願人】
【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】595048681
【氏名又は名称】武蔵キャスティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002192
【氏名又は名称】特許業務法人落合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 浩二
(72)【発明者】
【氏名】森 裕之
(72)【発明者】
【氏名】杉村 友彰
(72)【発明者】
【氏名】須原 直宏
【テーマコード(参考)】
3J027
4E093
【Fターム(参考)】
3J027FA17
3J027FA20
3J027FA50
3J027FB02
3J027HB07
3J027HC07
4E093TA10
4E093UC01
(57)【要約】
【課題】鋳造されたデフケースと、デフケース内に収納される差動ギヤ機構と、鋳造の後で機械加工によりデフケースに形成される加工部とを備え、デフケースの内面が差動ギヤ機構のギヤ支持面を有する差動装置において、鋳造後にデフケース内面を機械加工する場合には、その加工量のばらつきを少なくしたり加工量の低減を図り、またデフケース内面の一部をコスト節減のために非加工面とする場合には、その非加工面と加工部との相対位置の精度を高める。
【解決手段】デフケース3の鋳造の際に同一の成形型Nで成形される被成形面が、デフケース3の内面3iと、デフケース3の、外部に露出した同一型成形外面とを含み、デフケース3の内面3iにおけるピニオンギヤ支持面9pは、デフケース3の鋳造後も機械加工されない非加工面である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造されたデフケース(3)と、前記デフケース(3)内に収納される差動ギヤ機構(20)と、前記鋳造の後で機械加工により前記デフケース(3)に形成される加工部とを備え、前記差動ギヤ機構(20)が、第1軸線(X1)回りに回転可能な一対のサイドギヤ(23)と、前記第1軸線(X1)と直交する第2軸線(X2)方向に延びるピニオン軸(21)と、前記ピニオン軸(21)回りに回転可能であって前記一対のサイドギヤ(23)に噛合する複数のピニオンギヤ(22)とを備えると共に、前記デフケース(3)の内面(3i)が、前記サイドギヤ(23)及び前記ピニオンギヤ(22)の各背面を支持するサイドギヤ支持面(9s)及びピニオンギヤ支持面(9p)を有する差動装置において、
前記加工部は、前記デフケース(3)に設けられて前記ピニオン軸(21)を挿通、支持するピニオン軸支持孔(3ch)を少なくとも含み、
前記鋳造の際に同一の成形型(N,N′,N″)で成形される被成形面が、前記内面(3i)と、前記デフケース(3)の、外部に露出した同一型成形外面とを含み、
前記ピニオンギヤ支持面(9p)は、前記デフケース(3)の鋳造後も機械加工されない非加工面であることを特徴とする差動装置。
【請求項2】
前記同一型成形外面は、前記デフケース(3)に設けられて前記差動ギヤ機構(20)を該デフケース(3)内に組み入れ可能な作業窓(H)を含み、
前記作業窓(H)の周囲には、前記同一型成形外面の一部であって、前記デフケース(3)及び前記加工装置相互を互いに直交する3方向に位置決めするための複数の加工基準面(f1〜f8)が配置されることを特徴とする、請求項1に記載の差動装置。
【請求項3】
前記同一の成形型は、一対の中子型半体(C1,C2)相互を型合わせすることで成形される砂中子(N)であり、
前記同一型成形外面は、前記デフケース(3)及び前記加工装置相互を第1軸線(X1)の方向に位置決めするための、該第1軸線(X1)と直交する平面よりなる第1加工基準面(f1)を備え、
前記第1加工基準面(f1)は、前記一対の中子型半体(C1,C2)相互の型合わせ面(fc)と平行となる向きに設定されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の差動装置。
【請求項4】
前記同一型成形外面は、前記デフケース(3)及び前記加工装置相互を前記第1軸線(X1)と直交する第2軸線(X2)の方向、及び前記第1,第2軸線(X1,X2)と直交する第3軸線(X3)の方向に位置決めする複数の第2・第3加工基準面(f2,f5〜f8)を備え、
前記複数の第2・第3加工基準面(f2,f5〜f8)の何れもが前記砂中子(N,N′,N″)の、一方の前記中子型半体(C1,C2)で成形した特定成形面(Nca2)により成形されたことを特徴とする、請求項3に記載の差動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動装置、特に鋳造されたデフケースと、デフケース内に収納される差動ギヤ機構と、前記鋳造の後で機械加工によりデフケースに形成される加工部とを備え、デフケースの内面が差動ギヤ機構のギヤ支持面を有する差動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記差動装置は、例えば、下記特許文献1に開示されるように既に知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭61−26442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の差動装置では、デフケースの鋳造後に、デフケースの外面(例えば外周フランジ部の外面)を加工基準面として、加工装置をデフケースに対し位置決めした上で、デフケースの内面やその他の部位を機械加工している。この場合、デフケースの鋳造過程では、デフケースの外面(従って加工基準面)が主成形型で成形されるのに対し、デフケースの内面は、主成形型とは別個の成形型(例えば砂中子)で成形される。そのため、加工基準面に対するデフケース内面の相対位置に多少のずれが生じる虞れがあり、そのずれに因りデフケース内面の機械加工量がばらついたり増えたりする虞れがある。
【0005】
ところで、コスト節減のために、デフケースの内面を、ケース鋳造後に機械加工しない非加工面とすることが考えられる。この場合に、仮に特許文献1のようにデフケース外面を加工基準面として例えばピニオン軸支持孔を機械加工すると、その加工部即ちピニオン軸支持孔と、鋳造後も機械加工されないデフケースの内面(例えばピニオンギヤ支持面)との相対位置のずれに起因して、ピニオンギヤ延いては差動装置の円滑な作動に支障を及ぼす虞れがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、上記した問題を簡単な構造で解決可能とした差動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、鋳造されたデフケースと、前記デフケース内に収納される差動ギヤ機構と、前記鋳造の後で機械加工により前記デフケースに形成される加工部とを備え、前記差動ギヤ機構が、第1軸線回りに回転可能な一対のサイドギヤと、前記第1軸線と直交する第2軸線方向に延びるピニオン軸と、前記ピニオン軸回りに回転可能であって前記一対のサイドギヤに噛合する複数のピニオンギヤとを備えると共に、前記デフケースの内面が、前記サイドギヤ及び前記ピニオンギヤの各背面を支持するサイドギヤ支持面及びピニオンギヤ支持面を有する差動装置において、前記加工部は、前記デフケースに設けられて前記ピニオン軸を挿通、支持するピニオン軸支持孔を少なくとも含み、前記鋳造の際に同一の成形型で成形される被成形面が、前記内面と、前記デフケースの、外部に露出した同一型成形外面とを含み、前記ピニオンギヤ支持面は、前記デフケースの鋳造後も機械加工されない非加工面であることを第1の特徴とする。
【0008】
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記同一型成形外面は、前記デフケースに設けられて前記差動ギヤ機構を該デフケース内に組み入れ可能な作業窓を含み、前記作業窓の周囲には、前記同一型成形外面の一部であって、前記デフケース及び前記加工装置相互を互いに直交する3方向に位置決めするための複数の前記加工基準面が配置されることを第2の特徴とする。
【0009】
また本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記同一の成形型が、一対の中子型半体相互を型合わせすることで成形される砂中子であり、前記同一型成形外面が、前記デフケース及び前記加工装置相互を第1軸線の方向に位置決めするための、該第1軸線と直交する平面よりなる第1加工基準面を備え、前記第1加工基準面が、前記一対の中子型半体相互の型合わせ面と平行となる向きに設定されることを第3の特徴とする。
【0010】
また本発明は、第3の特徴に加えて、前記同一型成形外面は、前記デフケース及び前記加工装置相互を前記第1軸線と直交する第2軸線の方向、及び前記第1,第2軸線と直交する第3軸線の方向に位置決めする複数の第2・第3加工基準面を備え、前記複数の第2・第3加工基準面の何れもが前記砂中子の、一方の前記中子型半体で成形した特定成形面により成形されたことを第4の特徴としている。
【0011】
本発明において、「第2・第3加工基準面」には、デフケース及び加工装置相互の位置決めに関して、第2軸線X2及び第3軸線X3の各方向の位置決めを同一面で共通に行う第1タイプの加工基準面(例えば、後述する第1,第4〜第6実施形態のf2,f6〜f8)が含まれ、また第2軸線X2及び第3軸線X3の各方向の位置決めを異なる面で個別に行う第2タイプの加工基準面(例えば、後述する第2,第3実施形態のf3,f4;ff5,f4)も含まれる。
【発明の効果】
【0012】
第1の特徴によれば、デフケース内面のうちピニオンギヤ支持面を非加工面としたことで、デフケース内面に対する加工工数を少なくして、コスト節減が図られる。またデフケースの鋳造の際に同一の成形型により、デフケースの内面と、外部に露出した同一型成形外面とが成形されるので、この同一型成形外面を機械加工時の加工基準面にすれば、機械加工されたピニオン軸支持孔と、非加工面のピニオンギヤ支持面との相対位置のずれを無くすか又は僅少にすることができ、差動装置の円滑な作動を図る上で有利となり、また鋳造後にピニオンギヤ支持面以外のデフケース内面(例えばサイドギヤ支持面)を機械加工する場合には、加工量のばらつきを少なくしたり加工量を低減することが可能となる。
【0013】
第2の特徴によれば、デフケースの鋳造の際にデフケースの内面と同一の成形型で成形される同一型成形外面に作業窓が含まれ、この作業窓の周囲に、デフケース及び加工装置相互を3方向に位置決めするための複数の加工基準面が配置されるので、デフケースの内面と作業窓の周囲とに跨がる領域を成形する単一の成形型を用いて、デフケースの内面及び複数の加工基準面を精度よく容易に成形可能となる。
【0014】
第3の特徴によれば、上記同一の成形型が、一対の中子型半体相互を型合わせすることで成形される砂中子であり、上記同一型成形外面が、第1軸線の方向に位置決めするための、第1軸線と直交する平面よりなる第1加工基準面を備え、第1加工基準面が、一対の中子型半体相互の型合わせ面と平行となる向きに設定されるので、一対の中子型半体相互が型合わせ面に沿う方向で多少ずれて型合わせされた場合でも、型合わせ面と平行関係の第1加工基準面により、デフケース及び加工装置相互を第1軸線の方向に支障なく位置決めでき、これにより、位置決め精度の向上が図られる。
【0015】
第4の特徴によれば、上記同一型成形外面が、第2,第3軸線の方向に位置決めするための複数の第2・第3加工基準面を備え、その複数の第2・第3加工基準面の何れもが、砂中子の、一方の中子型半体で成形した特定成形面により成形されるので、一対の中子型半体相互が上記の如く多少ずれて型合わせされた場合でも、複数有る第2・第3加工基準面相互の位置関係は、単一の型(即ち一方の中子型半体)に由来する上記特定成形面により精度よく定まる。これにより、デフケース及び加工装置相互を第2,第3軸線方向にも支障なく位置決め可能となり、位置決め精度が更に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る差動装置を示す全体縦断面図(図2の1−1線断面図)
図2図1の2−2線断面図
図3】デフケース単体の斜視図
図4】デフケース単体の側面図(図3の4矢視図)
図5】デフケース単体の平面図(図3の5矢視図)であって、第1位置決め治具でデフケース及び加工装置相互が第1軸線方向に位置決めされる一例を示す
図6】デフケース単体の、第1軸受ボス側から見た正面図(図3の6矢視図)
図7図6の7−7線断面図
図8図6の8−8線断面図
図9図4の9−9線断面図であって、第2位置決め治具でデフケース及び加工装置相互が第2,第3軸線方向に位置決めされる一例を示す
図10】デフケースの鋳造に用いる砂中子の一例を示す斜視図
図11図10の11矢視図であって、(a)は砂中子と砂中子成形型との関係を示し、また(b)は砂中子とデフケース輪郭(従って鋳造型本体)との関係を示す
図12】第2実施形態を示すものであって、(a)はデフケース単体の斜視図、(b)は図12(a)のb矢視図、(c)は図12(b)のc−c線断面図、(d)は図12(b)のd−d線断面図
図13】第3実施形態を示すものであって、(a)はデフケース単体の斜視図、(b)は図13(a)のb矢視図、(c)は図13(b)のc−c線断面図、(d)は図13(b)のd−d線断面図
図14】第4実施形態を示すものであって、(a)はデフケース単体の斜視図、(b)は図14(a)のb矢視図、(c)は図14(b)のc−c線断面図、(d)は図14(b)のd−d線断面図
図15】第5実施形態を示すものであって、(a)はデフケース単体の斜視図、(b)は図15(a)のb矢視図、(c)は図15(b)のc−c線断面図、(d)は図15(b)のd−d線断面図
図16】第6実施形態を示すものであって、(a)はデフケース単体の斜視図、(b)は図16(a)のb矢視図、(c)は図16(b)のc−c線断面図、(d)は図16(b)のd−d線断面図
図17】第7実施形態を示すものであって、(a)はデフケース単体の斜視図、(b)は図17(a)のb−b線断面図、(c)は砂中子の斜視図(図10対応図)
図18】第8実施形態を示すものであって、(a)はデフケース単体の斜視図、(b)は図18(a)のb−b線断面図(図12(b)対応図)、(c)は砂中子の斜視図(図17(c)対応図)
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。
【0018】
先ず、図1図11を参照して、第1実施形態について説明する。図1において、車両(例えば自動車)のミッションケースMC内には、図示しない動力源(例えば車載のエンジン)からの動力を一対の出力軸としての左右車軸S1,S2に分配して伝達する差動装置10が収容される。差動装置10は、金属製のデフケース3と、デフケース3に内蔵される差動ギヤ機構20とを備える。
【0019】
デフケース3は、内部に差動ギヤ機構20を収納した中空のケース本体3cと、ケース本体3cの右側部及び左側部に一体に連設されて第1軸線X1上に並ぶ第1,第2軸受ボス3b1,3b2と、ケース本体3cの外周部に径方向外向きに一体に形成されて、第1軸線X1を中心とした円の周方向に延びるフランジ部3fとを備える。ケース本体3cは、概略球体状に形成されるものであり、それの内面3ciは、デフケース3の中心O回りの球面状に形成される。
【0020】
そして、第1及び第2軸受ボス3b1,3b2は、それらボス3b1,3b2の外周側において軸受13,14を介してミッションケースMCに第1軸線X1回りに回転自在に支持される。また第1及び第2軸受ボス3b1,3b2には、第1軸線X1の方向に延びる軸受孔h1,h2が中心部を縦通しており、その両軸受孔h1,h2には、左右の車軸S1,S2がそれぞれ回転自在に嵌合、支持される。そして、各軸受孔h1,h2の内周面は、デフケース3の内面3iの一部を構成する。
【0021】
尚、図示はしないが、軸受ボス3b1,3b2と車軸S1,S2との嵌合面の一方には、その他方との相対回転に伴いミッションケースMC内の潤滑油をデフケース3内に送り込むねじポンプ作用を発揮し得る螺旋溝を必要に応じて機械加工してもよい。或いは、軸受ボス3b1,3b2の内周面に、第1軸線X1に沿った直線上の油溝を鋳造時に型成形してもよい。
【0022】
デフケース3のフランジ部3fは、ケース本体3cの外周面にリング板状に一体に突設されており、これにリングギヤRの内周ハブ部Rbが複数のボルトBで着脱可能に結合される。尚、図示例のフランジ部3fは、ケース本体3cの中心Oから軸方向(即ち第1軸線X1に沿う方向)で第2軸受ボス3b2側にオフセットした位置に配置される。
【0023】
リングギヤRは、ヘリカルギヤ(斜歯)状の歯部Ragを外周に有しており、その歯部Ragは、動力源に連なる変速装置の出力部となる駆動ギヤ31と噛合する。そして、駆動ギヤ31からの回転駆動力は、リングギヤR及びフランジ部3fを介してデフケース3のケース本体3cに伝達される。尚、図1において、歯部Ragは、表示を簡略化するために、歯筋に沿う断面表示とした。
【0024】
差動ギヤ機構20は、ケース本体3cの中心Oで第1軸線X1と直交する第2軸線X2上に配置されてケース本体3cに支持されるピニオン軸21と、このピニオン軸21に回転自在に支持される一対のピニオンギヤ22,22と、各ピニオンギヤ22と噛合し且つ第1軸線X1回りに回転可能な左右のサイドギヤ23,23とを備える。両サイドギヤ23,23は、差動ギヤ機構20の出力ギヤとして機能するものであり、両サイドギヤ23,23の内周面には、左右の車軸S1,S2の内端部がスプライン嵌合される。
【0025】
ピニオンギヤ22及びサイドギヤ23の各背面は、デフケース3の内面3i(より具体的にはケース本体3cの内面3ci)に設けたピニオンギヤ支持面9p及びサイドギヤ支持面9sにそれぞれピニオンギヤワッシャWp及びサイドギヤワッシャWsを介して(或いはワッシャを介さずに直接)回転自在に支承される。
【0026】
ピニオン軸21は、ケース本体3cの外周端部に形成されて第2軸線X2上に延びる一対のピニオン軸支持孔3chに挿通、保持される。またケース本体3cには、ピニオン軸21の一端部を横切るよう貫通する抜け止めピン17が挿着(例えば圧入)され、この抜け止めピン17により、ピニオン軸21のピニオン軸支持孔3chからの離脱が阻止される。
【0027】
ケース本体3cの内面3ciの少なくとも一部(例えばピニオン軸支持孔3ch)は、本実施形態ではデフケース8の鋳造後において、加工装置、例えばマシニングセンタの加工具(例えばドリル)により機械加工される。
【0028】
そして、駆動ギヤ31からリングギヤRを経てデフケース3のケース本体3cに伝達された回転駆動力は、差動ギヤ機構20を介して左右の車軸S1,S2に対し差動回転を許容しつつ分配伝達される。尚、差動ギヤ機構20の差動機能は従来周知であるので、説明を省略する。
【0029】
図2図4に示すように、デフケース3は、第1軸線X1に沿う方向でフランジ部3fよりも第1軸受ボス3b1側のケース本体3cの側壁に一対の作業窓Hを有する。この一対の作業窓Hは、第1軸線X1と直交する投影面(例えば図2図6を参照)で見て、第2軸線X2を挟んでその両側方に配置され、換言すれば、第1,第2軸線X1,X2を含む仮想平面F3を挟んでその両側に対称的に配置されるようにケース本体3cの上記側壁に形成される。
【0030】
そして、ケース本体3cの、一対の作業窓Hに挟まれた側壁部分30は、第1軸受ボス3b1側にドーム状に湾曲すると共に、前記投影面で見て第2軸線X2に沿って延びる幅広の帯状に形成される。この帯状の側壁部分30は、中間部に第1軸受ボス3b1が連設され、また両端部(即ちケース本体3cの外周端部となる部分)がフランジ部3fの内周部に一体に接続される。
【0031】
作業窓Hは、ケース本体3cの内面3ciに対する切削加工やケース本体3c内への差動ギヤ機構20の組付けを許容するための作業窓であり、その目的に即した十分大きい形状に形成される。即ち、本実施形態の作業窓Hは、第1軸線X1に沿う方向でフランジ部3fの根元部分まで延び且つケース本体3cの周方向に幅広く開口するように形成されている。
【0032】
ところでデフケース3は、金属材料(例えばアルミ、アルミ合金、鋳鉄等)で鋳造成形されるものであり、その鋳造後にデフケース3の所定部位が機械加工される。その機械加工の対象となる加工部としては、例えばピニオン軸支持孔3ch、軸受孔h1,h2、第1,第2軸受ボス3b1,3b2の外周面、サイドギヤ支持面9s、フランジ部3fのボルト孔等が含まれる。尚、図3図9には、単体状態のデフケース3が示されるが、これらは、上記機械加工が終了したデフケース3の各部を示す。
【0033】
またデフケース3は、後述するように、鋳造の際に単一の砂中子Nを用いて、デフケース3の内面3i(より具体的にはケース本体3cの内面3ci及び軸受孔h1,h2)と、内面3i以外の被成形面であってケース外に露出した同一型成形外面とが同時に成形される。上記同一型成形外面には、例えば作業窓Hが含まれる。そして、作業窓Hの周囲(例えば作業窓Hの開口縁部Haやその周辺部(例えば作業窓Hに臨むケース本体3c外面の、フランジ部3fの側面と面一な特定平面部分f1))には、上記同一型成形外面の一部であって、次に説明するようにデフケース3の機械加工時の加工基準面として利用可能な面が含まれる。
【0034】
上記した特定平面部分f1は、第1軸線X1と直交するものであって、デフケース3の機械加工の際にデフケース3及び加工装置(図示せず)相互を第1軸線X1の方向に位置決めするための第1加工基準面となる。例えば、図5に例示したように、加工装置の位置決め治具J1の一対の先部J1aを第1加工基準面f1に押し当てることで、デフケース3及び加工装置相互を第1軸線X1の方向に位置決め可能である。尚、その位置決めに際しては、デフケース3を何らかの固定手段に固定した状態で加工装置をデフケース3側に移動させているが、それとは逆に、加工装置を固定した状態でデフケース3を移動させるようにしてもよい。
【0035】
また、各作業窓Hの開口縁部Haには、第2軸線X2の方向の両端部において、一対の第2・第3加工基準面f2が各々切欠き状に凹設される。その第2・第3加工基準面f2の凹状底面は、図9に例示したように、第1軸線X1から、第3軸線X3に沿って外径側に向かうにつれて第2軸線X2側に傾斜した斜面にそれぞれ形成されている。
【0036】
そして、図9に例示したように、加工装置の一対の位置決め治具J2,J2を、第1,第2軸線X1,X2を含む仮想平面F3を挟んで対向配置し且つその両位置決め治具J2の各一対の先部J2a,J2aを第2・第3加工基準面f2に押し当てるようにして、第3軸線X3の方向でデフケース3を両位置決め治具J2により挟持する。これにより、デフケース3及び加工装置相互を第2,第3軸線X2,X3の方向に一挙に位置決めすることが可能である。而して、本実施形態の第2・第3加工基準面f2は、前記した第1タイプの加工基準面である。
【0037】
第1加工基準面f1および第2・第3加工基準面f2は、後述するように、デフケース3の鋳造の際に同一の成形型、即ち砂中子Nにより、デフケース3の内面3iと共に成形される。また本実施形態では、第1加工基準面f1、及び第2・第3加工基準面f2、並びにピニオンギヤ支持面9pは、デフケース3の鋳造後も機械加工されない非加工面とされる。
【0038】
ところで図10図11には、上記した砂中子Nの一例が示される。即ち、砂中子Nは、デフケース3のケース本体3cの内面3ciを成形する概略球状の本体内面成形部Naと、本体内面成形部Naに連設されて一対の軸受面h1,h2を各々成形する一対の軸受面成形部Nbと、本体内面成形部Naに連設されてデフケース3の一対の作業窓H及びその周辺部を成形する一対の窓等成形部Ncと、一対の窓等成形部Ncにそれぞれ連なる一対の支持腕部Ndとを備える。尚、両支持腕部Ndは、砂中子Nが収容設置されるキャビティを有してデフケース3の外面を成形する鋳造型(図示せず)に砂中子Nを固定、支持するのに利用される。
【0039】
そして、砂中子Nの成形には、例えば図11(a)で簡略的に示すように、砂中子成形面を有する第1,第2中子型半体C1,C2よりなる中子型Cが使用される。即ち、その第1,第2中子型半体C1,C2の相互を、その間に鋳造用砂材を入れ且つ型合わせして固めることで成形される。而して、砂中子Nの外表面には、第1,第2中子型半体C1,C2相互の型合わせ面fcに対応して微小な突起状或いは微小な段差状に形成されたパーティングラインPL1が生じる可能性が有る。
【0040】
上記型合わせ面fcは、ケース本体3cの内面3ciが球面状であっても型抜きを支障なく行い得るよう、少なくともケース本体3cの周壁部においてはケース本体3cの中心Oを通る仮想平面上に設定される。
【0041】
特に本実施形態の第1,第2中子型半体C1,C2は、ケース本体3cを成形する部位においては、相互の型合わせ面fcが、ケース本体3cの中心Oを通って第1軸線X1と直交する所謂横割り方向の向き(従って第1加工基準面f1と平行となる向き)に設定される。これにより、第1,第2中子型半体C1,C2相互が型合わせ面fcに沿う方向で少しずれて型合わせされた場合でも、型合わせ面fcと平行関係にある第1加工基準面f1により、デフケース3及び加工装置相互を第1軸線X1の方向に支障なく位置決めできるため、位置決め精度の向上が図られる。
【0042】
また第1加工基準面f1は、砂中子Nの、特に第2中子型半体C2で成形した特定成形面(より具体的には窓等成形部Ncの外面に突設した第1加工基準面成形部Nca1)により成形される。
【0043】
一方、複数ある第2・第3加工基準面f2は、その何れもが砂中子Nの、特に第1中子型半体C1で成形した特定成形面(より具体的には窓等成形部Ncの外面に突設した各一対の第2・第3加工基準面成形部Nca2)により成形される。尚、このように窓等成形部Ncの外面に第2・第3加工基準面成形部Nca2が突設されても型抜きに支障が出ないよう、本実施形態の型合わせ面fcは、図11(a)に示されるように窓等成形部Ncにおいては第2・第3加工基準面成形部Nca2の側面に接するよう配置される。
【0044】
ところでケース本体3cの内面3ciには、ピニオンギヤ支持面9pの一部を通る凹溝G1が、砂中子Nによりデフケース3の鋳造と同時に成形される。この凹溝G1は、ピニオンギヤ支持面9pにおいて、砂中子Nの型合わせ面fcに対応したパーティングラインPL1を収め得る位置に配置される。そして、このパーティングラインPL1は、ケース本体3cにおいては、その中心Oを通り且つ第1軸線X1と直交してピニオンギヤ支持面9pを二分する第1の仮想平面F1上に存する。
【0045】
また上記凹溝G1は、砂中子Nの本体内面成形部Naの外面に突設した凹溝成形用突条部Naaにより成形される。この場合、凹溝成形用突条部Naaは、これの頂部に型合わせ面fc(従ってパーティングラインPL1)が通るように形成される。
【0046】
また砂中子Nの本体内面成形部Na、特にサイドギヤ支持面9sに対応した部位には、ケース本体3cの内面3ci(より具体的にはサイドギヤ支持面9s及びその周辺部)に各複数の油通路o1を形成するための複数の油通路成形突部Nao1が突設される。また、サイドギヤワッシャWsの外周に径方向外向きに突設した回止め凸部(図示せず)と係合する係合部o2を形成するための複数の突部Nao2も突設される。尚、これら油通路o1及び係合部o2は、必要に応じて省略してもよい。
【0047】
次に第1実施形態の作用を説明する。
【0048】
デフケース3は、前述の砂中子Nと、この砂中子Nをキャビティ内の所定位置に保持した鋳造型(図示せず)とを用いて鋳造成形され、その鋳造後にデフケース3の所定部位が機械加工される。その機械加工の対象となる加工部としては、例えば、前述のようにピニオン軸支持孔3ch、軸受孔h1,h2、第1,第2軸受ボス3b1,3b2の外周面、サイドギヤ支持面9s等が含まれる。
【0049】
そして、それらの機械加工に際しては予め不図示の加工装置の位置決め治具J1を第1加工基準面f1に押し当てることで、デフケース3及び加工装置相互の第1軸線X1方向の位置決めがなされ、さらに加工装置の一対の位置決め治具J2の先部J2a,J2aを複数の第2・第3加工基準面f2に押し当てることで、デフケース3及び加工装置相互の、第2,第3軸線X2,X3方向の位置決めがなされる。かくして、3方向、即ち第1〜第3軸線X1〜X3の方向の位置決めが終了し、その後に加工装置による機械加工が開始される。
【0050】
ところで本実施形態では、デフケース3の鋳造の際に単一の砂中子N(即ち同一の成形型)により、デフケース3の内面3iと、デフケース3外に露出した同一型成形外面とが同時に成形され、その同一型成形外面には作業窓Hが含まれる。そして、作業窓Hの周囲には、同一型成形外面の一部であって、鋳造後における機械加工の基準面となる加工基準面f1,f2が存する。これにより、それら加工基準面f1,f2に基づき位置決めされた加工装置で機械加工された加工部と、デフケース3の内面3iとの相対位置のずれを無くすか又は僅少にすることが可能となる。そのため、デフケース3の鋳造後に、これの内面3i又は内面3iに通じる部分(例えば、ピニオン軸支持孔3ch、サイドギヤ支持面9s,軸受孔h1,h2等)を機械加工する場合には、その加工量のばらつきを少なくしたり加工量の低減を図ることができる。
【0051】
また本実施形態では、デフケース3の内面3iの少なくとも一部(例えばピニオンギヤ支持面9p)を非加工面としているが、このような場合でも、非加工面(例えばピニオンギヤ支持面9p)と、加工部(例えばピニオン軸支持孔3ch)との相対位置の精度を高めることができるため、差動装置10の円滑な作動を図る上で有利となる。
【0052】
また特に本実施形態では、デフケース3の鋳造の際に単一の砂中子N(即ち同一の成形型)で成形される作業窓Hの周囲に、前記同一型成形外面の一部であって、加工装置に対し3方向(第1〜第3軸線X1〜X3の方向)の位置決めを行う各複数の加工基準面f1,f2が配置される。これにより、デフケース3の内面3iと、作業窓Hの周囲(例えば開口縁部Haやその周辺部)とに跨がる領域を成形する単一の砂中子Nを以て、デフケース3の内面3i及び複数の加工基準面f1,f2を精度よく容易に成形可能となる。
【0053】
その上、デフケース3の内面3iにおけるギヤ支持面のうちピニオンギヤ支持面9pを、デフケース3の鋳造後も機械加工されない非加工面としたことで、それだけデフケース3の加工工数が少なくなってコスト節減が達成される。
【0054】
更に本実施形態では、デフケース3及び加工装置相互を第2,第3軸線X2,X3の方向に位置決めする複数の第2・第3加工基準面f2の何れもが砂中子Nの、特に第1中子型半体C1で成形した特定成形面(より具体的には窓等成形部Ncの外面に突設した複数の第2・第3加工基準面成形部Nca2)により成形される。これにより、第1,第2中子型半体C1,C2相互が型合わせ面fcに沿う方向で少しずれて型合わせされた場合でも、複数有る第2・第3加工基準面f2相互の位置関係は、単一の型(即ち第1中子型半体C1)に由来する上記特定成形面(第2・第3加工基準面成形部Nca2)により精度よく定まるため、デフケース3及び加工装置相互を第2,第3軸線X2,X3の方向にも支障なく位置決め可能となり、位置決め精度が更に向上する。
【0055】
ところで本実施形態のデフケース3においては、ピニオンギヤ支持面9pの一部を通る凹溝G1が、デフケース3の内面3iと共に上記した砂中子N(より具体的には本体内面成形部Naの凹溝成形用突条部Naa)で成形され、その凹溝G1は、砂中子成形型Cの型合わせ面fcに対応してデフケース3の内面3iにパーティングラインPL1が生じた場合でも凹溝G1内にパーティングラインPL1を収め得る位置に配置される。
【0056】
これにより、鋳造後のデフケース3の内面3iに上記パーティングラインPL1が生じても、それは、凹溝G1内に留まってピニオンギヤ支持面9pには食み出さないため、後加工でパーティングラインPL1を除去する必要はなくなり、加工コスト節減が図られる。しかも凹溝G1は、これがピニオンギヤ支持面9p上に存することで、ピニオンギヤ支持面9pに潤滑油を導く油溝に兼用可能となるため、構造の簡素化が図られ、更なるコスト節減が図られる。
【0057】
その上、本実施形態では、サイドギヤ支持面9sが、第1軸線X1と直交する平面状であり、凹溝G1がピニオンギヤ支持面9pにおいて、第1軸線X1と直交する第1の仮想平面F1上に存するパーティングラインPL1を収め得る位置に配設されるため、第1軸線X1に沿う方向が、型成形後の砂中子Nの型抜き方向となる。これにより、第1軸線X1と直交する平面であるサイドギヤ支持面9sは、これに抜き勾配を特別に設定する必要はないため、サイドギヤ支持面9sを、後加工無しで或いは後加工量を低減しつつ精度よく成形可能となる。
【0058】
また図12には、本発明の第2実施形態が示される。第1実施形態のデフケース3では、各作業窓Hの周囲に設けた第2・第3加工基準面f2が、第2軸線X2及び第3軸線X3の各方向の位置決めを同一面で共通に行う前記第1タイプの加工基準面であるものを示したが、第2実施形態では、第2・第3加工基準面f3,f4が、第2軸線X2及び第3軸線X3の各方向の位置決めを異なる面で個別に行う第2タイプの加工基準面である点で相違する。
【0059】
即ち、第2実施形態では、作業窓Hに臨むケース本体3c外面の、フランジ部3fの側面と面一な特定平面部分(即ち第1加工基準面)f1の中間部に、横断面V字状の溝42が凹設され、そのV字状の溝42の内面が、第2軸線X2の方向の位置決めを行う加工基準面f3を構成し、また作業窓Hの開口縁部Haの中間部外側面が、第3軸線X3と直交する平面に形成されていて第3軸線X3の方向の位置決めを行う加工基準面f4を構成する。そして、その両加工基準面f3,f4が本発明の第2・第3加工基準面を構成している。
【0060】
尚、その両加工基準面f3,f4に対しては、加工装置の別々の位置決め治具(図示せず)が接離可能に係合して位置決めが行われる。
【0061】
この第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるので、第2実施形態の各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素の参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。そして、この第2実施形態においても、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
【0062】
また図13には、本発明の第3実施形態が示される。この第3実施形態では、デフケース3及び加工装置相互の位置決め、特に第2軸線X2の方向の位置決めを行うための加工基準面f5の構造のみが第2実施形態と相違する。
【0063】
即ち、第3実施形態では、作業窓Hの開口縁部Haの中間部外側面が、第3軸線X3と直交する平面に形成されていて第3軸線X3の方向の位置決めを行う加工基準面f4を構成する点は、第2実施形態の加工基準面f4と同様であるが、第2軸線X2の方向の位置決めを行うために特に第3実施形態では、作業窓Hの窓孔内周面の、第2軸線X2の方向で両内端面が、第2軸線X2の方向の位置決めを行う加工基準面f5を構成する。
【0064】
尚、その両加工基準面f4,f5に対しては、加工装置の別々の位置決め治具(図示せず)が接離可能に係合して位置決めが行われる。
【0065】
この第3実施形態のその他の構成は、第2実施形態と同様であるので、第2実施形態の各構成要素には、第2実施形態の対応する構成要素の参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。そして、この第3実施形態においても、第2実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
【0066】
更に第3実施形態では、デフケース3及び加工装置相互を第2,第3軸線X2,X3の方向に位置決めする複数の第2・第3加工基準面f5,f4の何れもが砂中子Nの、特に第1中子型半体C1で成形した特定成形面により成形されるため、第1,第2中子型半体C1,C2相互が型合わせ面fcに沿う方向で少しずれて型合わせされた場合でも、複数有る第2・第3加工基準面f5,f4相互の位置関係は、単一の型(即ち第1中子型半体C1)に由来する上記特定成形面により精度よく定まる。これにより、デフケース3及び加工装置相互を第2,第3軸線X2,X3の方向に支障なく位置決め可能となる。
【0067】
また図14には、本発明の第4実施形態が示される。この第4実施形態では、各作業窓Hの周囲に設けた第2・第3加工基準面f6が前記第1タイプの加工基準面である点で第1実施形態と同様であるが、その第2・第3加工基準面f6の構造が、第1実施形態の第2・第3加工基準面f2とは相違する。
【0068】
即ち、デフケース3及び加工装置相互の位置決めに関して、第4実施形態では、作業窓Hに臨むケース本体3c外面の、フランジ部3fの側面と面一な特定平面部分(即ち第1加工基準面)f1の中間部に、底部が先細りの角錐状窪み44が凹設され、その角錐状窪み44の内面が、第2軸線X2及び第3軸線X3の各方向の位置決めを行う第2・第3加工基準面f6を構成する。
【0069】
そして、第1加工基準面f1および第2・第3加工基準面f6に対しては、図15(d)に例示したように第2・第3加工基準面f6に嵌入可能な位置決め凸部J1aaを先端面に有した位置決め治具J1′の先部J1aを押し当てることで、第1〜第3軸線X1〜X3の各方向の位置決めが一挙に行われる。
【0070】
この第4実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるので、第4実施形態の各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素の参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。そして、この第4実施形態においても、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
【0071】
更に第4実施形態では、デフケース3及び加工装置相互を第1軸線X1の方向に位置決めする第1加工基準面f1、並びに第2,第3軸線X2,X3の方向に位置決めする複数の第2・第3加工基準面f6の何れもが砂中子Nの、特に第2中子型半体C2で成形した特定成形面により成形されるため、第1,第2中子型半体C1,C2相互が型合わせ面fcに沿う方向に少しずれて型合わせされた場合でも、第1加工基準面f1並びに第2・第3加工基準面f6相互の位置関係は、単一の型(即ち、第2中子型半体C2)に由来する上記特定成形面により精度よく定まるため、デフケース3及び加工装置相互を第1〜第3軸線X1〜X3の方向に支障なく位置決め可能となる。
【0072】
また図15には、本発明の第5実施形態が示される。この第5実施形態では、各作業窓Hの周囲に設けられて第2軸線X2及び第3軸線X3の各方向の位置決めを行う第2・第3加工基準面f7の構造のみが第4実施形態のそれと相違する。
【0073】
即ち、第4実施形態では、作業窓Hに臨むケース本体3c外面の、フランジ部3fの側面と面一な特定平面部分(即ち第1加工基準面)f1の中間部に角錐状窪み44が凹設されていて、その角錐状窪み44の内面を第2・第3加工基準面f6としたが、第5実施形態では、上記特定平面部分(即ち第1加工基準面)f1の中間部に円錐状窪み45が凹設されて、この円錐状窪み45の内面が第2・第3加工基準面f7を構成する。
【0074】
この第5実施形態のその他の構成は、第4実施形態と同様であるので、第5実施形態の各構成要素には、第4実施形態の対応する構成要素の参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。そして、この第5実施形態においても、第4実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
【0075】
また図16には、本発明の第6実施形態が示される。この第6実施形態では、各作業窓Hの周囲に設けた第2・第3加工基準面f8が前記第1タイプの加工基準面である点で第1実施形態と同様であるが、その第2・第3加工基準面f8の構造が、第1実施形態の第2・第3加工基準面f2とは相違する。
【0076】
即ち、デフケース3及び加工装置相互の位置決めに関して、第6実施形態では、作業窓Hの開口縁部Haの中間部外側面に横断面V字状の溝46が凹設され、そのV字状の溝46の内面が、第2軸線X2及び第3軸線X3の各方向の位置決めを行う第2・第3加工基準面f8を構成する。
【0077】
そして、第2・第3加工基準面f8に対しては、これに嵌入可能な位置決め凸部を先端面に有した一対の位置決め治具(図示せず)の先部を両作業窓Hの外側方側より押し当てることで、第2軸線X2及び第3軸線X3の各方向の位置決めが一挙に行われる。
【0078】
この第6実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるので、第6実施形態の各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素の参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。そして、この第6実施形態においても、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
【0079】
また図17には、本発明の第7実施形態が示される。この第7実施形態では、デフケース3の内面3i等を鋳造成形するための砂中子を成形する砂中子成形型の型合わせ面と、それに関連してデフケース3の内面3iに現れるパーティングラインの位置が第1〜第6実施形態とは異なる。
【0080】
即ち、第1〜第6実施形態で用いる第1,第2中子型半体C1,C2は、相互の型合わせ面fcが第1軸線X1と直交する所謂横割り方向の向きに設定されるのに対し、第7実施形態で用いる不図示の第1,第2中子型半体C1,C2の型合わせ面fc′は、第1軸線X1を含み且つ第2軸線X2と直交する第2の仮想平面F2上(即ち第1の縦割り方向)に設定されている。
【0081】
そして、ケース本体3cの内面3ciには、型合わせ面fc′に対応して第2の仮想平面F2上に存するパーティングラインPL2が生じるが、このパーティングラインPL2を溝内面に含む位置に凹溝G2が形成される。この凹溝G2は、砂中子N′によりデフケース3の鋳造と同時に成形される。
【0082】
より具体的に言えば、凹溝G2は、砂中子N′の本体内面成形部Na′の外面に突設した凹溝成形用突条部Naa′により成形される。この場合、凹溝成形用突条部Naa′は、これの頂部に型合わせ面fc′(従ってパーティングラインPL2)が通るように形成される。
【0083】
而して、第7実施形態の凹溝G2は、特にサイドギヤ支持面9sにおいては、一対のピニオンギヤ支持面9pの相互間に在ってサイドギヤ支持面9sを二分する第2の仮想平面F2上に存するパーティングラインPL2を収め得る位置に在るので、凹溝G2(従ってパーティングラインPL2)がピニオンギヤ支持面9pを通る虞れはない。これにより、各々のピニオンギヤ支持面9pを、単一の型(即ち第1又は第2中子型半体C1,C2にで成形される砂中子N′のピニオンギヤ支持面成形部)により精度よく成形可能となる。しかも凹溝G2は、これがサイドギヤ支持面9s上に存することで、サイドギヤ支持面9sに潤滑油を導く油溝に兼用可能となる。
【0084】
その上、サイドギヤ支持面9sには、車軸S1,S2を嵌挿させる軸受孔h1,h2が開口していて、その開口部に凹溝G2が直接連通しているため、車軸S1,S2及び軸受孔h1,h2相互の嵌合部に流通する潤滑油を、サイドギヤ支持面9s側に効率よく導入可能となる。これにより、サイドギヤ23、延いてはデフケース3内の差動ギヤ機構20各部に対する潤滑性能の向上が図られる。
【0085】
この第7実施形態のその他の構成は、第1実施形態と同様であるので、第7実施形態の各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素の参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。そして、この第7実施形態においても、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
【0086】
また図18には、本発明の第8実施形態が示される。先の第7実施形態で用いる第1,第2中子型半体C1,C2の型合わせ面fc′は、第1軸線X1を含み且つ第2軸線X2と直交する第2の仮想平面F2上(即ち第1の縦割り方向)に設定されるのに対して、第8実施形態は、型合わせ面fc″が、第1,第2軸線X1,X2を含む第3の仮想平面F3上(即ち第2の縦割り方向)に設定される点で、第7実施形態と相違する。
【0087】
そして、ケース本体3cの内面3ciには、型合わせ面fc″に対応して第3の仮想平面F3上に存するパーティングラインPL3が生じるが、このパーティングラインPL3を溝内面に含む位置に凹溝G3が形成される。この凹溝G3は、砂中子N″によりデフケース3の鋳造と同時に成形される。
【0088】
より具体的に言えば、凹溝G3は、砂中子N″の本体内面成形部Na″の外面に突設した凹溝成形用突条部Naa″により成形される。この場合、凹溝成形用突条部Naa″は、これの頂部に型合わせ面fc″(従ってパーティングラインPL3)が通るように形成される。
【0089】
而して、第8実施形態の凹溝G3は、特にサイドギヤ支持面9s及びピニオンギヤ支持面9pにおいて、その両ギヤ支持面9s,9pを各々二分する第3の仮想平面F3上に存するパーティングラインPL3を収め得る位置に在るので、凹溝G3(従ってパーティングラインPL3)がサイドギヤ支持面9sのみならずピニオンギヤ支持面9pをも横切る配置となって、サイドギヤ支持面9s及びピニオンギヤ支持面9pの両方に潤滑油を導く油溝に兼用可能となる。
【0090】
その上、サイドギヤ支持面9sには、第7実施形態と同様、軸受孔h1,h2が開口していて、その開口部に凹溝G3が直接連通しているため、車軸S1,S2及び軸受孔h1,h2相互の嵌合部に流通する潤滑油を、サイドギヤ支持面9s側に効率よく導入可能となり、サイドギヤ23、延いてはデフケース3内の差動ギヤ機構20各部に対する潤滑性能の向上が図られる。
【0091】
この第8実施形態のその他の構成は、第7実施形態と同様であるので、第8実施形態の各構成要素には、第7実施形態の対応する構成要素の参照符号を付すにとどめ、それ以上の説明は省略する。そして、この第8実施形態においても、第7実施形態と基本的に同様の作用効果を達成可能である。
【0092】
尚、上記した第7,第8実施形態の特徴部分(即ちパーティングラインPL2,PL3及び凹溝G2,G3)の構造は、第1〜第6実施形態に適用してもよい。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【0094】
例えば、上記実施形態では、差動装置10を車両用差動装置、特に左右の駆動車輪間の差動装置として実施したものを示したが、本発明では、差動装置10を前後の駆動車輪間の差動装置として実施してもよく、或いはまた車両以外の種々の機械装置における差動装置として実施してもよい。
【0095】
また、前記実施形態では、デフケース3のフランジ部3fとリングギヤRとの結合を複数のボルトBで結合するものを例示したが、フランジ部3fとリングギヤRとの結合を溶接(例えばレーザ溶接、電子ビーム溶接等)で行うようにしてもよい。
【0096】
また前記実施形態では、リングギヤRの歯部Ragをヘリカルギヤとしたものを示したが、リングギヤは、駆動ギヤ31との噛合により第1軸線X1に沿う方向のスラスト荷重を受ける歯形状の他のギヤ(例えばベベルギヤ、ハイポイドギヤ等)であってもよい。或いはまた、駆動ギヤ31との噛合により上記スラスト荷重を受けない歯形状のギヤ(例えばスパーギヤ)でもよい。
【0097】
また前記実施形態では、サイドギヤ支持面9sを第1軸線X1と直交する平面状に形成したものを示したが、サイドギヤ支持面9sを、テーパ面或いは球面状に形成してもよい。また前記実施形態では、ピニオンギヤ支持面9pを球面状に形成したものを示したが、ピニオンギヤ支持面9pをテーパ面、或いは第2軸線X2と直交する平面状に形成してもよい。
【0098】
また前記実施形態では、デフケース3の内面3iにおけるギヤ支持面9p又は9sに凹溝G1〜G3を設けて、この凹溝G1〜G3内に、砂中子Nの型合わせ面fc,fc′,fc″に対応してギヤ支持面9p又は9sに生じるパーティングラインPL1〜PL3を収め得るようにしたものを示したが、本発明では、このような凹溝G1〜G3を省略してもよい。
【0099】
またデフケース3の機械加工のための加工基準面f1〜f8は、これが同一の成形型としての砂中子N,N′,N″でデフケース3の内面3iと共にデフケース3外面に露出して成形される同一型成形外面に含まれ且つデフケース3及び加工装置相互を互いに直交する3方向に位置決め可能な面であれば、前記実施形態で示したものに限定されない。
【0100】
また前記実施形態では、デフケース3の、砂中子N,N′,N″で成形される上記同一型成形外面に作業窓Hが含まれ、その作業窓Hの周囲の特定部分を加工基準面f1〜f8に利用するものを示したが、上記同一型成形外面に含まれる、作業窓H以外の成形部(例えば、デフケースの不図示の潤滑油流通用開口部等)を加工基準面に利用してもよい。
【符号の説明】
【0101】
C1,C2・・一対の中子型半体としての第1,第2中子型半体
f1・・・・・第1加工基準面
f2〜f8・・第2・第3加工基準面
fc・・・・・型合わせ面
H・・・・・・作業窓
N,N′,N″・・同一の成形型としての砂中子
Nca2・・・特定成形面としての第2・第3加工基準面成形部
R・・・・・・リングギヤ
X1〜X3・・第1軸線〜第3軸線
3・・・・・・デフケース
9p,9s・・ギヤ支持面としてのピニオン支持面,サイドギヤ支持面
10・・・・・差動装置
20・・・・・差動ギヤ機構
22,23・・ピニオンギヤ,サイドギヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18