【実施例】
【0038】
以下の実施例は、実例としての提供しており、それに限定するものではない。当業者は、様々な重要でないパラメーターを変更又は改変することによって本質的に同じ又は類似の結果を得ることができることを容易に認識している。
【0039】
実施例1:SI-1X4とSI-1X4.2との配列相違
SI-1X4.2は、SI-1X4分子の改変型であり、カバット番号付けシステムで表すV71A、T75S、N76S、A93T及びS107Tの5つのアミノ酸変更を含む。これらの変更のいくつかは、これらがCDRループになく且つ結合及び活性にとって重要な場合であっても、抗原と潜在的に相互作用する75、76及び93に特に位置する。
図4は、SI-1X4.2とSI-1X4との間の5つのアミノ酸相違を示している。
【0040】
実施例2:BLIを用いた上皮成長因子受容体に対する抗体の特性評価
モノマーEGFR細胞外ドメイン結合は、BLItz機器(ForteBio社)でのバイオレイヤー干渉(BLI)結合アッセイにおいて測定した。25μg/mLのSI-1C3、SI-1C4、SI-1C6、SI-1X1、SI-1X2、SI-1X5及びSI-1X6をPBSにて希釈し、抗huIgG Fc BLItzバイオセンサーチップ上で120秒間捕獲した。チップをPBSで30秒間洗浄して、588nMで結合のためのEGFR(ProSpec Bio、PKA-344)サンプルに移した。チップに対するEGFR ECDの結合は、120秒の会合時間にわたるバイオレイヤー干渉信号(Δnm)として記録した。チップをPBSに移し、解離を240秒間(*SI-1C6の解離時間のみ120秒間)観察した。
図5及び6は、抗体をロードしたバイオセンサーに対するEGFRの会合ステップで始まっているデータを報告している。各図は、ベンチマーク抗体としてのSI-1C4に対する比較を示している。
【0041】
SI-1C3及びSI-1X2が、Fabとして示しているEGFR結合ドメインを共有しているため、それらの結合プロファイルは、類似しており、SI-1X1と表示するscFv形態よりも強い(
図6)。各々は、SI-1C4と比較してEGFRに非常に遅いオフレートを有しており、それらのオンレートによって影響を受けない。SI-1X1は、EGFRに対する結合がより弱いオンレートを示し得るが、非常に強く結合したままである。同じ傾向は、
図5にも観察され、SI-1C6及びSI-1X6として表示されているEGFR結合ドメインのFabバージョンは、SI-1X5として表示されているそれらの代表的なscFvよりも速いレートで結合する。二重特異性抗体のFabサイド上にEGFR結合ドメインを有することは、scFvバージョンよりも速いオンレートで結合するが、同程度のオフレートを示すように見える。SI-1X3及びSI-1X4は、このアッセイにおいてモノマーEGFR結合を示さず(データ不図示)、二量体EGFR結合は、下記ELISAにおいて調査する。
【0042】
実施例3:BL1を使用したEGFR及びHer3に対する抗体の特性評価
EGFR及びHer3細胞外ドメインに対する二重特異性結合は、BLItz機器(ForteBio社)でのバイオレイヤー干渉(BLI)結合アッセイにおいて測定した。200nMのSI-1C1、SI-1C3、SI-1C4、SI-1C6、SI-1X1、SI-1X2、SI-1X3、SI-1X4、SI-1X5及びSI-1X6を、1Xカイネティクス緩衝液(ForteBio社)にて希釈して、抗huIgG Fc BLItzバイオセンサーチップ上で120秒間捕獲した。チップをKBで30秒間洗浄して、200nMで結合のためのEGFRサンプル(ProSpec Bio、PKA-344)に移した。チップに対するEGFR ECDの結合は、120秒の会合時間にわたるバイオレイヤー干渉信号(Δnm)として記録した。チップをKBに移し、解離を60秒間観察した。本プロセスは、200nMで120秒間、及びKBにおける60秒の類似の解離ステップでHer3 ECDサンプル(Sino Biological、10201-H08H-10)と共に繰り返した。
図7-10は、抗体をロードしたバイオセンサーに対するEGFRの会合ステップで始まっているデータを報告している。抗体は、Fcによってセンサーに結合されている間、EGFR及びHer3に関する二重特異性結合を同時に示すことが可能である。
図7及び
図8において観察されているように、Fab(SI-1X2、SI-1X6)であるEGFR結合ドメインの表示は、それらのscFv形態(それぞれSI-1X1、SI-1X5)よりも結合が強いオンレートを有する。ここで、EGFR及びHer3は、同じFab>>scFvオンレート傾向を示す。SI-1X3及びSI-1X4は、モノマーEGFRに対する結合を示さないが、各分子は、SI-1X1、SI-1X2、SI-1X5及びSI-1X6と同じαHer3結合ドメインを使用しているため、予想通り、各々は、Her3を結合する能力を有する。SI-1X3及びSI-1X4は、下記ELISAにおいて二量体EGFR結合に関して調査する。
【0043】
実施例4:二量体EGFR ELISAアッセイ
以前観察したように、SI-1X3及びSI-1X4は、BLIアッセイにおいてEGFRのモノマー形態を結合することができなかった(
図9)。このことは、SI-1C5、SI-1X3及びSI-1X4において使用するαEGFR結合ドメインがインビトロでEGFRに結合するために、二価結合が必要であることを示唆している(Perez et al, Chin Clin Oncol 2014;3(1):5)。このことを観察するために、我々は、EGFRの二量体形態を使用して、他のEGFR結合抗体に対する抗体結合に関してELISAを用いた。
【0044】
ELISAは、組織内で作成したラビットFcに融合した、二量体EGFR ECD試薬であるSI-2C1を使用して実行した。EGFRを、Maxisorp免疫プレート(Nunc)上に3μg/mL(PBS)でコートし4℃で一晩置いた。プレートを、3%BSA及び0.05%Tween20含有PBSにて室温で2時間ブロックした。抗体は、SI-1C5、SI-1X3及びSI-1X4を除いて10ug/mLで捕獲し、SI-1C5、SI-1X3及びSI-1X4は、50μg/mLで捕獲した(nMで報告している)。全ては、室温で1時間、PBST(1%BSA)で3倍希釈している。ヤギαヒトIgG-HRP抗体(Jackson ImmunoResearch, 109-035-098)を使用して、PBST(1%BSA)での1:2000希釈にて抗体のFc部分を検出し、TMB(Thermo Scientific)にて5分間進めて、停止液として2MのH2S04を用いた。PBST(1%BSA)用いた3回の洗浄を、各ステップの間に実行した。全データポイントは、同じものを3つ用いて実行し、450nmで回収した(
図10)。SI-1C5、SI-1X3及びSI-1X4の全ては、他の分子と比較して、このELISAフォーマットにおいて高濃度で二量体EGFR ECDに結合した。
【0045】
実施例5:Octetを用いた1C5.2及び1X4.2の結合カイネティクス
カイネティクスは、抗ヒトFcセンサー(ForteBio、AHC #18-5060)を用いたForteBio Octet Red96機器を使用して決定した。結合実験は、1000RPMでの混合にて30℃で実行した。EGFRタンパク質は、C末端ポリヒスチジンタグを有するヒトEGFRの細胞外ドメイン(Met1-Ser645)である。全てのサンプルは、10Xカイネティクス緩衝液(ForteBio #18-5032)にて希釈した。1C5.2、1X6及び1X4.2をそれぞれ8つのセンサー上に300秒間10μg/mlでロードして、次に、10Xカイネティクス緩衝液での60秒間をベースラインとした。EGFRタンパク質との会合を、単一濃度(300、100、33.33、11.11、3.705、1.235、0.4116及び0nM)のEGFRタンパク質にて各センサーを用いて300秒間実行した。次に、解離を、10Xカイネティクス緩衝液において900秒間実行した。1C5.2及び1X4.2に関する典型的な会合及び解離トレースを
図11に示している。
【0046】
ForteBio Data Analysis Software v9.0を使用してデータ分析を実行した。ソフトウェア曲線のあてはめを実行して、1C5.2(表2)、1X4.2(表3)及び1X6(表4)の4つの最適曲線あてはめを用いて平均値を出し、KD、k(on)及びk(dis)を決定した。SI-1C5.2及びSI-1X4.2の平均KDは、それぞれ19.2nM及び18.4nMであった。SI-1C6に関する平均KDは、3.04nMであった。1C5.2及び1X4.2は、実施例1にて説明したように、1C5及び1X4と比較して、5つのアミノ酸変化を含んでいた。これらの変化は、
図10の1C5及び1X4で得られたデータと比較すると、EGFR ECDに対する改良された結合性を占めた。
【表2】
【表3】
【表4】
【0047】
実施例6:腫瘍細胞株に対する例示的な二重特異性抗体の結合試験
二重特異性抗体SI-1X1、SI-1X2、SI-1X3、SI-1X4、SI-1X5及びSI-1X6並びアイソタイプコントロールは、フローサイトメトリーによって、腫瘍細胞株であるA431(扁平上皮がん、ATCC CRL-1555)及びBxPC3(膵臓腺がん、ATCC CRL-1687)に対する結合について試験した。細胞を、10%ウシ胎児血清含有RPMI-1640において生育させ、指数増殖期にある間に分析のために回収した。5×106個の細胞のアリコートをPBSで一回洗浄して、次に、250μlのPBS+1%ウシ血清アルブミン(BSA)で再懸濁し、非特異的結合から膜をブロックするために4℃で15分間インキュベートした。PBS/1%BSAにて10μg/mlに希釈した250μlの抗体を5μg/mlの最終的な抗体濃度となるように各サンプルに加えた。細胞を一次抗体と混合しながら4℃で1時間インキュベートした。次に細胞を1mlのPBS/1%BSAにて二回洗浄して、500μlのPE共役マウス-抗ヒトIgG-Fcに再懸濁し、混合しながら4℃で45分間インキュベートした。サンプルを再び1mlのPBS/1%BSAにて二回洗浄して、300mlのPBSに再懸濁し、FACScaliburフローサイトメーターを使用して分析した。サンプルごとに、10000イベントをFL-2チャネルにて回収した。ヒストグラムを、FCSExpressソフトウェアを使用して作成し、SI-1Xヒストグラムは、アイソタイプコントロール染色由来のヒストグラムと重ねた。全6つの二重特異性抗体は、コントロール染色に対するヒストグラムシフトを示し、細胞結合を示した。このデータは、
図12(A431細胞結合)及び
図13(BxPC3細胞結合)に示している。
【0048】
実施例7:細胞結合アッセイによるSI-1C5.2及びSI-1X4.2の特性評価
二重特異性抗体であるSI-1X4.2、一重特異性抗体であるSI-1C5.2及びSI-1C1並びにアイソタイプコントロールは、フローサイトメトリーによって、腫瘍細胞株であるA431(扁平上皮がん、ATCC CRL-1555)(
図14)及びFaDu(低咽頭扁平上皮癌腫、ATCC HTB-43)(
図15)に対する結合について試験した。細胞を10%ウシ胎児血清含有RPMI-1640培地において生育させ、指数増殖期にある間に分析のために回収した。細胞を、PBSで一回洗浄して、次に、5x106個/mlの細胞の濃度でPBS+5%ウシ胎児血清アルブミン(FBS)に再懸濁し、4℃で15分間インキュベートして非特異的結合から膜をブロックした。100μlの細胞アリコートを96ウェルプレートにある100μlの抗体アリコート(また、PBS+5%FBSで希釈したもの)に加えた。サンプルを一次抗体と共に氷上で45分間インキュベートした。次に、細胞を200μlのPBS+5%FBSにて二回洗浄し、そして、100μlのPE共役マウス-抗ヒトIgG-Fcに再懸濁し、30分間氷上でインキュベートした。サンプルを再び200μlのPBS+5%FBSにて二回洗浄し、200μlのPBSに再懸濁し、FACScaliburフローサイトメーターを使用して分析した。サンプルごとに、10000イベントをFL-2チャネルにて回収した。ヒストグラムを、FCSExpressソフトウェアを使用して分析し、幾何平均蛍光強度(GMFI)をデータセットごとに決定した。EC50結合値は、Graphpad Prismソフトウェアを用いて、GMFI対抗体濃度をプロットすることによって決定した。二重特異性抗体であるSI-1X4.2は、一重特異性抗EGFR抗体であるSI-1C5.2と類似の結合プロファイルを、両細胞株において類似のEC50として示した。他の一重特異性抗Her3抗体であるSI-1C1は、細胞表面上のHer3の低発現レベルに起因して、おそらく2つの細胞株に弱く結合する。1C5.2及び1X4.2は、実施例1にて説明したように、1C5及び1X4と比較して、5つのアミノ酸変化を含んでいた。これらの変化は、親分子である1X4と比較すると、標的細胞に対する結合が向上していることを示している。
【0049】
実施例8:腫瘍細胞株に対しうるSI-1X抗体の抗増殖効果
抗Her3/EGFR二重特異性抗体の潜在的な増殖阻害性を評価するために、扁平上皮がん腫瘍系統であるA431細胞(ATCC CRL-1555, Manassas, Va.)の増殖に対する効果を試験した。膵臓腺がん腫瘍系統であるBxPC3の増殖に対する効果(ATCC CRL-1687, Manassas, Va.)も試験した。株ごとに、細胞を、100μlの1%ウシ胎児血清含有RPMI-1640培地にて6000細胞/ウェルの密度で96ウェル組織培養プレートに播種した。4時間後、試験抗体を0.0015nMから100nMにわたる様々な濃度で加えた。細胞を試験抗体の存在下で72時間培養した。各ウェルに、20μlのMTS試薬(Promega, Madison, WI)を加えて、細胞を37℃で2時間インキュベートした。MTSは、活発に増殖している細胞によって容易に取り込まれて、(490nmで容易に光を吸収する)ホルマザンへと還元され、培地に分泌される。インキュベーション後、OD490値は、BioTek(Winooski、VT)ELx800吸光度計を使用して測定した。(培地だけで処理された)コントロール細胞のOD490値も、代謝活性のベースラインを定めるために抗体追加時にこの方法で取得した。増殖は、72時間のOD490からコントロールベースラインのOD490を減算することによって算出することができる。抗体力価測定からのデータは、以下の式によってコントロール集団%で表した:コントロール増殖%=(試験増殖/コントロール増殖)*100。
【0050】
A431細胞増殖に対する様々な二重特異性抗Her3/抗EGFR抗体の効果を
図16及び
図17に示している。SI-1X2は、コントロール抗体であるSI-1C1(抗Her3)、SI-1C3(抗EGFR)又は共にアプライしたSI-1C1及びSI-1C3よりも効果的な抗増殖効果を示した。SI-1X1は、抗増殖効果を示した。但し、その程度は、SI-1C3及びSI-1C1とSI-1C3との組み合わせでみられるほどではない。
図17は、阻害プロットとIC50値を示している。同様の結果が、SI-1X5及びSI-1X6において観察された。SI-1X6は、SI-1X5及びコントロール抗体SI-1C1(抗Her3)よりも強力であるが、それは、コントロール抗体SI-1C6(抗EGFR)及びSI-1C1とSI-1C6との組み合わせに類似する潜在的な抗増殖効果を示した。これは、
図17のIC50値と共に見ることができる。
【0051】
これらの分子は、BxPC3細胞株の抗増殖効果についても試験した(
図18及び
図19)。また、SI-1X2は、コントロール抗体であるSI-1C1(抗Her3)、SI-1C3(抗EGFR)又は共にアプライしたSI-1C1及びSI-1C3よりも効果的な抗増殖効果を示した。SI-1X1は、SI-1C1よりも効果的であったが、SI-1C3及びSI-1C1とSI-1C3との組み合わせよりも弱かった。阻害曲線及びIC50値を
図19に示している。SI-1X5とSI-1X6の両方とも、コントロール抗体SI-1C1(抗Her3)、SI-1C6(抗EGFR)又はSI-1C1とSI-1C6との組み合わせよりもBxPC3増殖を強く阻害した。このデータは、IC50値と共に
図19に示している。
【0052】
実施例9:腫瘍細胞株に対するSI-1C5.2及びSI-1X4.2の抗増殖効果
抗Her3/EGFR二重特異性抗体の潜在的な増殖阻害性を評価するために、FaDu(鼻咽頭扁平上皮癌腫株、ATCC HTB-43)、及びA431(扁平上皮癌腫、ATCC CRL-1555)細胞の増殖に対する効果を試験した。細胞を、100μlの1%ウシ胎児血清含有RPMI-1640培地にて6000細胞/ウェルの密度で96ウェル組織培養プレートに播種した。4時間後、試験抗体を0.0015nMから100nMにわたる様々な濃度で加えた。細胞を試験抗体の存在下で72時間培養した。各ウェルに、11μlのアラマーブルー試薬(Thermo Scientific)を加えて、細胞を37℃で2時間インキュベートした。アラマーブルーは、活発に増殖している細胞に容易に取り込まれて、還元され、培地に分泌される。アラマーブルーの還元型は、強い蛍光性がある。インキュベーションの後、蛍光は、Molecular Devices(Sunnyvale, CA) FilterMax F5マルチモードプレートリーダーを使用し、535nmの励起波長及び595nmの放出波長で測定した。(培地だけで処理された)コントロール細胞の蛍光も、代謝活性のベースラインを定めるために抗体追加時にこの方法で取得した。増殖は、72時間の蛍光からコントロールベースラインの蛍光を減算することによって算出することができる。抗体力価測定からのデータは、以下の式によってコントロール集団%で表した: コントロール増殖%=(試験増殖/コントロール増殖)*100。
【0053】
Fadu及びA431細胞増殖に対するSI-1C5.2及びSI-1X4.2の効果は、それぞれ、
図20及び
図21に示している。両細胞株において、SI-1X4.2は、コントロール抗体、SI-1C5.2(抗EGFRマブ)、SI-1C1(抗Her3マブ)又は共にアプライしたSI-1C1及びSI-1C7よりも改良された効果的な抗増殖効果を示した。
【0054】
実施例10:SI-1X二重特異性抗体のADCC活性
いくつかの腫瘍細胞株に対する細胞傷害活性を媒介するSI-1X抗体の能力を試験した。通常の健常なボランティアから全血を取得した。血液を等量のリン酸緩衝食塩水(PBS)で希釈した。希釈した血液の20mlアリコートを、15mlのFicol Pacque PLUSの上に慎重に重層した(GE Life Sciences cat# 17-1440-02; Pittsburgh, PA)。チューブを、40分間、300gでブレーキをかけることなく遠心した。遠心後、ほとんどのプラズマ層を慎重に吸引し、(PBMCを含む)バフィーコートをピペットにて慎重に可能な限り取り除いた。PBMCを50mlのチューブに貯めて、50mlまでPBSを各チューブに加えた。チューブを1300RPMで10分間遠心して、上清を慎重に吸引した。細胞を40mlのPBSに再懸濁して、再び遠心した。このプロセスは、合計2回の洗浄液のために繰り返した。最終的な洗浄後、細胞を30mlのRPMI-1630+10%FBSに再懸濁して、37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。
【0055】
試験標的細胞は、頭頸部扁平上皮癌腫株、FaDu(ATCC HTB-43、Manassus、VA)及び非小細胞肺腺がん細胞株(NCI-H1975)(ATCC CRL-5908, Manassus, VA)とした。標的細胞は、以下の通り、カルセインでラベル化した。細胞を、単層として生育して、アクターゼを用いてのインキュベーションによって分離した。細胞を、血清なしのRPMIにて二回洗浄した。4x106細胞/mlである1mlの細胞を、1mlのRPMI(血清なし)+20μMカルセインAM(Sigma cat# C1359; St. Louis, MO)と混合した。細胞を、10分ごとに穏やかに混合しながら、37℃で30分間インキュベートした。ラベル化後、細胞を14mlRPMI+10%FBS+2.5mMプロベネシド(アッセイ培地)を用いて二回洗浄した。プロベネシド(Sigma cat# P8761; St. Louis, MO)は、アニオン性輸送体阻害剤であり、細胞内カルセインの自然放出を減らすことが知られている。細胞を20mlのアッセイ培地にて再懸濁し、37℃、5%CO2で2時間回復させた。次に、細胞をアッセイ培地にて一回洗浄して、200,000細胞/mlまで希釈した。カルセインラベル化細胞の50μlアリコート(10,000個の細胞)を96ウェル丸底プレートに等分した。(3X終濃度での)50μlの抗体を細胞に加えて、氷上で40分間結合させた。前の日のPBMCを300gで5分間遠心して、20mlの新しいアッセイ培地に再懸濁し、計数した後、6x106細胞/mlとなるように希釈した。50μlのPBMC(300,000)を各ウェルに加えて、プレートを37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。各抗体を、50nMから0.00005nMまでの10倍の段階希釈を介して、同じものを3つ用いて滴定した。カルセインの最大及び自然放出を測定するために、コントロールウェルは、抗体非存在下のラベル化標的細胞及びエフェクター細胞を含むようにセットアップした。
【0056】
4時間のインキュベーション後、8%IGEPAL CA-630(Sigma cat# I8896; St. Louis, MO)を含む50μlのアッセイ培地を(最大カルセイン放出を測定するために)ラベル化標的細胞のみを含むコントロールウェルに加えた。50μlのアッセイ培地を、全量が200μl/ウェルになるように全ての他のウェルに加えた。プレートを2000RPMで10分間遠心して、150μlの上清をV型底部の96ウェルプレートに慎重に移した。これらのプレートを更に10分間、2000RPMで遠心して、100mlの上清を黒色クリア底部96ウェルプレートに慎重に移した。上清のカルセインを、485nMの励起波長及び535nMの放出波長を使用して、各サンプルの蛍光を測定することによって数量化した。特異的溶解のパーセントは、以下の通りに算出した:
特異的溶解%=[(試験サンプル値=自然放出)/(最大放出=自然放出)*100
【0057】
データを
図22及び
図23に示している。両細胞株に関して、SI-1X6.4は、細胞傷害活性を媒介したが、コントロール抗体、SI-1C6.2、SI-1C7又はSI-1C6.2+SI-1C7の組み合わせよりも特に効果的であるというわけではなかった。SI-1X6.4は、我々のベンチマーク抗体であるSI-1C4よりもEC50が低い細胞傷害活性を媒介した。両細胞株に関して、SI-1X4.2は、コントロール抗体とほぼ同じ程度で細胞傷害活性を媒介した。しかしながら、ベンチマークであるSI-1C4ほど、細胞傷害活性の媒介が効果的ではなかった。これは、SI-1X4.2よりも低い親和性に起因するものと思われる。
【0058】
実施例11:SI-1X二重特異性抗体の温度安定性
Protein Thermal Shift Studyをタンパク質熱安定性分析のために実行した。タンパク質溶融反応は、Protein Thermal Shift BufferTM及びProtein Thermal Shift DyeTM(Applied Biosystems)を用いてセットアップした。簡潔に言えば、20ulの反応混合物が5ugのタンパク質、5ulのProtein Thermal Shift BufferTM及び8Xになるよう希釈した2.5μのProtein Thermal ShiftTM Dyeを含むようにする。ネガティブコントロールについては、PBSを代わりに用いた。反応混合物をMicroAmp Optical Reaction Plateに加えて、MicroAmp Optical Adhesive Filmによって封止した。各サンプルは、同じものが4つ一組になるようにした。タンパク質溶融反応は、25-90℃を1%増加するApplied Biosystem Real-Time PCR Systemにて実行し、Protein Thermal Shift SoftwareTMによって分析した。
図24は、SI-1X2、SI-1X4.2、SI-1X6.4、SI-1C3、SI-1C3、SI-1C6.2、SI-1C5.2及びSI-1C7の温度曲線を示している。表5は、これらの分子のTmを示している。Tmは、タンパク質の50%がアンフォールドするのに必要な温度と定義している。二重特異性分子である1X2、1X4.2及び1X6の全ては、MAb(1C3、1C6.2、1C5.2)及びFc-scFv(1C7)分子の全てと同様に66℃付近にTmを有する。
【表5】
【0059】
実施例12:SI-1X二重特異性抗体の血清安定性分子
SI-1C5.2、SI-1C6.2、SI-1X4.2及びSI-1X6.4の血清安定性は、37℃での0、3及び7日目の時点と、分解が生じることが既知の条件である55℃での7日目の追加の時点において、95%ヒト血清(Atlanta Biologics, S40110)における100μg/mLでのインキュベーション後、ELISAによるモノマーEGFR ECD対する結合比較によって決定した。4℃で一晩、ELISAプレートを、PBS中で3μg/mLのモノマーEGFR ECD(SI-2R4)でコートした。コートしたELISAプレートを、25℃で2時間、3%BSA PBSTによってブロックし、PBSTを用いて3回洗浄した。SI-1C6.2及びSI-1X6.4を、1%BSA PBSTにて1:10となるように希釈して、プレート全体が4xとなるように希釈した。SI-1C5.2及びSI-1X4.2を、1%BSA PBSTにて1:2となるように希釈して、プレート全体が4xとなるように希釈し、25℃で1時間インキュベートした。25℃で1時間、1%BSA PBST中で1μg/mLのHer3 ECDラビットIgG1(SI-1R1)を用いた抗原捕獲の前に、PBST用いた3回以上の洗浄を実行した。ヤギ抗ラビットIgG-HRP(Bio-Rad 172-1019)二次抗体を25℃で1時間1%BSA PBSTでの1:5000希釈で加える前に、PBSTを用いた3回以上の洗浄を実行した。100μlのPierce1-ステップUltra TMB ELISA(Pierce, 34028)で、10分間、100μlの2M H2S04で最終的にクエンチする前に、最後にPBSTを用いた3回の洗浄を行なう。プレートを450nmで読み取った。ELISAデータをプロットして、GraphPad Prism 6を使用して曲線を作成した。
【0060】
ELISAの結果は、
図25にEC50として報告しており、37℃で保持した際の小さい分解の好ましいプロファイルを示している。55℃の場合、分子が分解条件に当てはまるとEC50はほぼ対数シフトする。SI-1C5.2のEC50値は、37℃で0日目の589.7pMから7日目の755.2pMにシフト(Δ165.5pM)し、55℃で7日目の6.522nMにシフト(Δ5932.3pM)する。SI-1C6のEC50値は、37℃で0日目の218.2pMから7日目の226.6pMにシフト(Δ8.4pM)し、55℃で7日目の1.322nMにシフト(Δ1103pM)する。SI-1X4.2のEC50値は、37℃で0日目の429.3pMから7日目の466.7pMにシフト(Δ37.4pM)し、55℃で7日目の4.248nMにシフト(Δ3818.7pM)する。SI-1X6のEC50値は、37℃で0日目の209.3pMから7日目の237.3pMにシフト(Δ28pM)し、55℃で7日目の4.112nMにシフト(Δ3902.7pM)する。
【0061】
実施例13:SI-1X分子のPK半減期
それらの半減期をインビボで試験するために、薬物動態実験をSDラットにおいて実行した。二重特異性抗体(1C6 10mg/kg、1X6 10mg/kg、1X2 10mg/kg、1X4 32mg/kg)の単一尾静脈注入を、体重(190-212gの範囲)によってランダムに分けた4匹の雌ラットのグループに行った。血液(〜150μL)を各時点で眼窩叢から採血し、血清を処理して、分析まで-80℃で保存した。調査期間は、28日とした。
【0062】
抗体濃度は、3つのELISAアッセイを使用して決定した。アッセイ1(EGFR ECDコートELISA)において、組換え型EGFR-ラビットFcをプレートにコートして、ウェルをPBST(0.05%Tween含有リン酸緩衝食塩水)にて洗浄し、1%BSA含有PBSTでブロックした。次に、血清又は血清希釈スタンダードを加えて、PBST洗浄を行い、HRPラベル化ラビット-抗-ヒトIgG(BOSTER)を追加して、PBST洗浄を更に行った。次にTMBを加えて、プレートを暗室で2.5分インキュベートした。呈色反応を2Mの硫酸の添加によって止めた。プレートを450nm波長で読み取った。アッセイ2(Her3コートELISA)において、血清を同様のELISAを用いて検出したが、組換え型HER3-Hisは、捕捉試薬として用いた。アッセイ3(サンドイッチELISA)において、組換えHER3-Hisをコートして、血清又は血清希釈スタンダードを追加し、PBST洗浄を行って、EGFR-ラビットFcを含むPBSTを追加し、PBST洗浄を更に行った。次に、HRPラベル化ヤギ-抗-ラビットIgG(BOSTER)を加えた。PKパラメーターを非コンパートメントモデルで決定した。
【0063】
図26-28は、それぞれ、3つの異なるアッセイを用いた4つの抗体の血清中濃度データを示している。インビボPK調査からの適したPKパラメーターを表6に挙げている。PKデータは、半減期、Cmax及びAUCを含む。半減期は、血清からの抗体の除去を特徴づけるベータフェーズを表す。Cmaxは、観察された最大血清中濃度を表す。AUCは、濃度時間曲線下の領域を表す。
【表6】
【0064】
実施例14:マウス異種移植調査
本実施例では、Faduの前臨床モデル(頭頸部扁平上皮癌腫異種移植片モデル)におけるHER3、EGFRの同時遮断に関するSI-1X2、SI-1X4.2及びSI-1X6の活性を試験し、それらの力価を抗HER3抗体と組み合わせたセツキシマブ及びセツキシマブと比較した。
【0065】
全マウス調査は、組織ガイドラインに従う、動物実験委員会が認可した動物プロトコールによって行った。6週齢の雌Balb/cヌードマウスは、ペキンバイタルリバーラボラトリーズから購入し、12時間の光サイクルで飲食自由なエアフィルター層流キャビネットに収容した。動物グループのサイズを計算して、検出力80%及びP値0.01にて25%の治療グループとプラセボグループとの間の平均差を測定した。異種移植片を有する宿主マウスをコントロールか治療グループにランダム且つ等しく分けた。動物実験は、制御された非盲検法にて実行した。細胞株由来異物移植調査について、マウス毎に150μlの培地に懸濁された2X106個のFaduをマウスの皮下に注入した。
【0066】
腫瘍が100-250mm3の平均体積に達すると、マウスを9つのグループ(グループ当たり6匹のマウス)にランダムに分けた。ビヒクルコントロール、1C6(25mg/kg)、1C4(25mg/kg)、1C6+1C1(25mg/kg+50mg/kg)、SI-1X2(25mg/kg)、SI-1X6(10mg/kg)、SI-1X6(25mg/kg)及びSI-1X4.2(10mg/kg)、SI-1X4(25mg/kg)。全ての試験物質を、静脈内注入を介して週に一回投与した。腫瘍を全治療期間にわたり3日毎にデジタルノギスで測定し、体積を以下の式を用いて決定した:1/2×縦×横2。マウスの体重を、最初の投与前と、治療期間及び回復期間の間毎週記録を付けた。
【0067】
SI-1X2、SI-1X6及びSI-1X4.2とSI-1X6との組み合わせの全ての試験グループは、低用量SI-1X4.2 10mg/kgのグループを除いて、SI-1C6のポジティブコントロールと比較して著しく腫瘍成長を阻害した(
図29-30)。さらに、低用量SI-1X4.2 10mg/kgのグループを除いて、治療停止の2週後に再発が観察されなかった。
【0068】
医薬組成物
「有効量」という用語は、例えば、対象における疾患を改善するために所望の効果を成し遂げる効果的な薬量を指す。疾患ががんである場合、有効量の薬は、限定するものではないが、がん細胞の成長、がん細胞の増殖、がん細胞の運動性、末梢器官へのがん細胞の浸潤、腫瘍転移及び腫瘍成長を含む一又は複数の特徴を阻害する(例えば、ある程度遅延させる、阻害するか又は止める)ことができる。あるいは、疾患ががんの場合、有効量の薬は、対象に投与されると、腫瘍成長を遅延又は止めること、腫瘍サイズ(例えば、体積又は質量)を低下させること、がんと関連した1又は複数の症状をある程度緩和すること、無増悪生存期間を延長すること、(例えば、部分的反応又は完全反応を含む)客観的反応が得られること、全生存期間を長くすることの1又は複数を成し遂げることができる。薬は、存在しているがん細胞の成長を防止する及び/又は殺すことができる適度に、細胞増殖抑制性で及び/又は細胞毒性である。
【0069】
対象(例えば治療を必要とするヒト患者)への投与のための適切な組成物の製剤に関して、本願明細書に開示される抗体は、選択した投与ルートに従って、従来技術で知られている医薬的に許容可能なキャリアと共に混合又は組み合わせてもよい。本願明細書に開示される抗体の応用形態については特段の制限が存在しない。そして、適切な投与ルート及び適切な組成物の選択は、過度の実験を行なうことなく、従来技術において知られている。
【0070】
多くの投与形態が可能であるが、例示的な投与形態は、特に静脈内又は動脈内注入に関する溶液注入である。通常、注入のための適切な医薬組成物としては、医薬的に適切なキャリア又は賦形剤(例えば、限定するものではないが、緩衝液、界面活性剤又は安定剤)を挙げることができる。例示的な緩衝液としては、限定するものではないが、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液又はクエン酸緩衝液を挙げることができる。例示的な界面活性剤としては、限定するものではないが、ポリソルベートを挙げることができる。例示的な安定剤は、限定するものではないが、ヒトアルブミンを挙げることができる。
【0071】
同様に、当業者は、状態(例えばがん)を効果的に治療する本願に開示の抗体の有効量又は濃度を決定する能力を有する。当業者は、過度に実験することなく、他のパラメーター(例えば医薬組成物の様々な成分の割合、投与量及び頻度)を得ることができる。例えば、注入に適切な溶液としては、限定するものではないが、約1から約20、約1〜約10mg抗体/mlを挙げることができる。例示的な用量としては、限定するものではないが、約0.1から約20、約1から約5mg/Kg体重を挙げることができる。例示的な投与頻度としては、限定するものではないが、1日1回又は週3回を挙げることができる。
【0072】
本開示は、特定の実施形態又は実施例に関して記載しているが、実施形態は、解説のためであり、本開示の範囲を制限するものではないことを理解できるだろう。本開示の別の実施形態は、本開示に関係する当業者にとって明白であろう。かかる別の実施形態は、本開示の範囲内に含まれると考える。従って、本開示の範囲は、添付された特許請求の範囲によって規定され、上述の記述によってサポートされる。