【解決手段】本発明は、(a)反応性イソシアナート官能基を含む硬化剤、(b)(a)中の反応性イソシアナート官能基と反応する官能基を含むフィルム形成化合物、(c)光潜在性触媒、(d)60℃(140°F)超の引火点を有するβ−ジケトン、及び(e)60℃(140°F)以下の引火点を有するβ−ジケトンを含む硬化性フィルム形成組成物に関する。さらに本発明は、イソシアナート官能性硬化剤を含む硬化性フィルム形成組成物に、(i)光潜在性触媒、(ii)60℃(140°F)超の引火点を有するβ−ジケトン、及び(iii)60℃(140°F)以下の引火点を有するβ−ジケトンを含む触媒成分を添加することで、硬化性フィルム形成組成物の硬化速度を制御し、またウェットエッジタイムを増加させる方法に関する。
フィルム形成化合物(b)が、アクリルポリマー、ポリエーテルポリマー及びポリエステルポリマーのうちの少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の硬化性フィルム形成組成物。
光潜在性触媒(c)が、チタン、スズ、アルミニウム、ジルコニウム又はビスマスの少なくとも1種の有機金属化合物を含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の硬化性フィルム形成組成物。
β−ジケトン(d)が、100〜800g/当量のアセトアセタート当量を有するアセトアセタート官能樹脂を含む、請求項1から4までのいずれか一項に記載の硬化性フィルム形成組成物。
アセトアセタート官能樹脂(d)が、ポリアルキレンポリマー、ポリエーテルポリマー、アクリルポリマー及びポリエステルポリマーのうちの1種又は複数種を含む、請求項6に記載の硬化性フィルム形成組成物。
アセトアセタート官能樹脂(ii)が、ポリアルキレンポリマー、ポリエーテルポリマー、アクリルポリマー及びポリエステルポリマーのうちの1種又は複数種を含む、請求項13に記載の方法。
フィルム形成化合物(b)が、アクリルポリマー、ポリエーテルポリマー及びポリエステルポリマーのうちの少なくとも1種を含む、請求項10から16までのいずれか一項に記載の方法。
触媒成分を硬化性フィルム形成組成物に添加した後に、硬化性フィルム形成組成物を基材に塗布してコーティングされた基材を形成する工程、及びコーティングされた基材を、硬化性フィルム形成組成物を少なくとも部分的に硬化させるのに十分な時間にわたる条件に曝露する工程をさらに含む、請求項10から17までのいずれか一項に記載の方法。
コーティングされた基材を、硬化性フィルム形成組成物を少なくとも部分的に硬化させるのに十分な時間にわたり化学放射線又は高められた温度に曝露する、請求項18に記載の方法。
アセトアセタート官能樹脂(d)が、ポリアルキレンポリマー、ポリエーテルポリマー、アクリルポリマー及びポリエステルポリマーのうちの1種又は複数種を含む、請求項22に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
発明の詳細な説明
すべての実施例以外において、または、別段の記載されていない限りは、明細書及び特許請求の範囲で使用される原料量、反応条件などを表す数字はすべて、いかなる場合も「約」という用語により修飾されていると理解されるべきである。よって、そうではないと記載されていない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメーターは、本発明により得られる望ましい特性に応じて変化し得る近似値である。少なくとも特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限しようとすることなく、各数値パラメーターは、報告された有効桁数に鑑みて、通常の丸め手法を適用することにより、少なくとも解釈されるべきである。
【0009】
本発明の幅広い範囲を記載した数値範囲及びパラメーターは近似値であるものの、特定の例に記載の数値は、できるだけ正確に報告される。しかしながら、いずれの数値も、それらの各試験測定に見られる標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0010】
また、本明細書に挙げられるいずれの数値範囲も、この範囲に包含されるあらゆる部分範囲を含むことを意図していると理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、挙げられた最小値1と挙げられた最大値10との間にある(及びこれらを含む)、すなわち1以上の最小値及び10以下の最大値を有するあらゆる部分範囲を含むことを意図している。
【0011】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、冠詞「ある1つの(a、an)及び「その(the)」は、明白且つ明確に1つの指示物に限定されていない限り、複数の指示物を含む。
【0012】
硬化性フィルム形成組成物において使用される硬化剤(a)は、ビウレット及びイソシアヌラートを含むジイソシアナート及び/又はトリイソシアナートのような1種又は複数種のポリイソシアナートから選択され得る。ジイソシアナートとしては、トルエンジイソシアナート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、イソホロンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートと2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナートとの異性体混合物、1,6−ヘキサメチレンジイソシアナート、テトラメチルキシリレンジイソシアナート及び/又は4,4’−ジフェニルメチレンジイソシアナートが挙げられる。1,4−テトラメチレンジイソシアナート及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートを含む任意の適切なジイソシアナートのビウレットを使用してもよい。また、脂環式ジイソシアナート、例えばイソホロンジイソシアナート及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)のビウレットを用いてもよい。ビウレットを調製可能な適切なアラルキルジイソシアナートの例は、メタキシリレンジイソシアナート及びα,α,α’,α’−テトラメチルメタキシリレンジイソシアナートである。
【0013】
また、三官能性イソシアナート、例えば、イソホロンジイソシアナートのトリマー、トリイソシアナトノナン、トリフェニルメタントリイソシアナート、1,3,5−ベンゼントリイソシアナート、2,4,6−トルエントリイソシアナート、CYTEC IndustriesによりCYTHANE3160という名称で販売されるトリメチロールとテトラメチルキシレンジイソシアナートとの付加物、並びにBayer Corporationから入手可能なヘキサメチレンジイソシアナートのイソシアヌラートであるDESMODUR N3300を硬化剤として使用してもよい。詳細には、使用されるポリイソシアナートは、ジイソシアナート、例えばヘキサメチレンジイソシアナート及びイソホロンジイソシアナートのトリマーである。
【0014】
また、ポリイソシアナートは、先に開示されたポリイソシアナートのうちの1種であって、イソシアナート官能基を有するポリウレタンプレポリマーを形成するのに当業者に公知の適切な材料及び技術を使用して、1種又は複数種のポリアミン及び/又はポリオールで鎖が伸張されているものであってもよい。特に適切なポリイソシアナートは、米国特許出願公開第2013/0344253A1号の段落[0012]〜[0033]に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。
【0015】
硬化剤(a)は、硬化性フィルム形成組成物において、組成物中の樹脂固形分の総重量を基準として、10〜90重量パーセント範囲にある量で、例えば少なくとも40重量パーセント、又は少なくとも45重量パーセント、且つ最大65重量パーセント、又は最大60重量パーセントで存在する。
【0016】
「硬化性」という用語は、例えば硬化性組成物との関連で使用されるように、例えば熱(周囲条件による硬化を含む)及び/又は触媒に曝露することが挙げられるがこれらに限定されることはない手段により当該組成物が官能基で重合可能又は架橋可能であることを意味する。
【0017】
「硬化(cure、cured)」という用語又はそれに類似する用語は、硬化組成物又は硬化性組成物、例えば幾つかの特定の記載にある「硬化組成物」の関連で使用されるように、硬化性組成物を形成する少なくとも一部の重合性及び/又は架橋性成分が重合及び/又は架橋していることを意味する。さらに、重合性組成物の硬化とは、前記組成物を、例えば熱硬化であるがこれに限定されることはない硬化条件に曝露すること、組成物の反応性官能基を反応させること、並びに重合及び重合体(polymerizate)の形成が生じることを指す。重合性組成物を硬化条件に曝露すると、重合に続いて、大部分の反応性末端基の反応が生じた後に、残りの未反応の反応性末端基の反応速度が次第に遅くなる。重合性組成物を、これが少なくとも部分的に硬化するまで硬化条件に曝露してもよい。「少なくとも部分的に硬化」という用語は、重合性組成物を硬化条件に曝露し、ここで組成物の少なくとも一部の反応性基の反応が生じて、重合体が形成されることを意味する。また、実質的に完全な硬化が達成されて、さらなる硬化によりポリマー特性、例えば硬度がさらに著しく改善されなくなるまで、重合性組成物を硬化条件に曝露してもよい。
【0018】
本発明の硬化性フィルム形成組成物は、(a)中のイソシアナート基と反応する複数個の官能基を有する少なくとも1種のフィルム形成化合物(b)をさらに含む。典型的に、このような官能基は、ヒドロキシル、チオール及び/又はアミン官能基である。「反応性」という用語は、自発的に、又は熱を適用して、又は触媒の存在下で、又は当業者に公知のその他の任意の手段により、それ自体及び/又はその他の官能基と化学的な反応を起こすことができる官能基を指す。
【0019】
フィルム形成化合物は、ヒドロキシル官能性付加ポリマー、ポリエステルポリマー、ポリウレタンポリマー及び/又はポリエーテルポリマーを含んでいてもよい。「ポリマー」とは、ホモポリマー及びコポリマーを含むポリマー、並びにオリゴマーを意味する。「複合材料」とは、2種以上の異なる材料の組み合わせを意味する。
【0020】
しばしば、複数個のヒドロキシル官能基を有するアクリルポリマー及び/又はポリエステルポリマーが使用される。「及び/又は」という表現は、羅列において使用される場合、羅列にある各個別要素及び要素の任意の組み合わせを含む諸実施形態の選択肢を包含することを意味することに言及したい。例えば、「A、B及び/又はC」の羅列は、A、又はB、又はC、又はA+B、又はA+C、又はB+C、又はA+B+Cを含む7つの個別の実施形態を包含することを意味する。
【0021】
適切な付加ポリマーとしては、1種又は複数種のその他の重合性エチレン性不飽和モノマーを任意選択で一緒に有する1種又は複数種のエチレン性不飽和モノマー、例えばアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルのコポリマーが挙げられる。アクリル酸又はメタクリル酸の有用なアルキルエステルとしては、アルキル基において1個〜30個、通常4個〜18個の炭素原子を含む脂肪族アルキルエステルが挙げられる。非限定的な例としては、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、ブチルメタクリラート、エチルアクリラート、ブチルアクリラート及び2−エチルヘキシルアクリラートが挙げられる。適切なその他の共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、ビニル芳香族化合物、例えばスチレン及びビニルトルエン、ニトリル、例えばアクリロニトリル及びメタクリロニトリル、ハロゲン化ビニル及びハロゲン化ビニリデン、例えば塩化ビニル及びフッ化ビニリデン、並びにビニルエステル、例えば酢酸ビニルが挙げられる。
【0022】
アクリルコポリマーは、コポリマーを生成するために使用される反応物において1種又は複数種のヒドロキシル官能性モノマーを含むことでポリマーにしばしば組み込まれるヒドロキシル官能基を包含してよい。有用なヒドロキシル官能性モノマーとしては、典型的に2個〜4個の炭素原子をヒドロキシアルキル基において有するヒドロキシアルキルアクリラート及びメタクリラート、例えばヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシプロピルアクリラート、4−ヒドロキシブチルアクリラート、カプロラクトンとヒドロキシアルキルアクリラートとのヒドロキシ官能性付加物、及び相応するメタクリラート、並びに下記のβ−ヒドロキシエステル官能性モノマーが挙げられる。
【0023】
β−ヒドロキシエステル官能性モノマーは、エチレン性不飽和エポキシ官能性モノマーと約13個〜約20個の炭素原子を有するカルボン酸とから、又はエチレン性不飽和酸官能性モノマーと、このエチレン性不飽和酸官能性モノマーにより重合可能ではない少なくとも5個の炭素原子を含むエポキシ化合物とから調製可能である。
【0024】
β−ヒドロキシエステル官能性モノマーを調製するために使用される有用なエチレン性不飽和エポキシ官能性モノマーとしては、グリシジルアクリラート、グリシジルメタクリラート、アリルグリシジルエーテル、メタリルグリシジルエーテル、エチレン性不飽和モノイソシアナートとグリシドールのようなヒドロキシ官能性モノエポキシドとの1:1(モル)の付加物、及びマレイン酸のような重合性ポリカルボン酸のグリシジルエステルが挙げられるが、これらに限定されることはない。グリシジルアクリラート及びグリシジルメタクリラートが特に適している。カルボン酸の例としては、イソステアリン酸のような飽和モノカルボン酸及び芳香族不飽和カルボン酸が挙げられるが、これらに限定されることはない。
【0025】
β−ヒドロキシエステル官能性モノマーを調製するために使用される有用なエチレン性不飽和酸官能性モノマーとしては、モノカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ジカルボン酸、例えばイタコン酸、マレイン酸及びフマル酸、並びにジカルボン酸のモノエステル、例えばマレイン酸モノブチル及びイタコン酸モノブチルが挙げられる。エチレン性不飽和酸官能性モノマー及びエポキシ化合物を1:1の当量比で反応させることが一般的である。エポキシ化合物は、フリーラジカルにより開始される不飽和酸官能性モノマーとの重合に関与するエチレン性不飽和部分を含まない。有用なエポキシ化合物としては、1,2−ペンテンオキシド、スチレンオキシド、及び通常8個〜30個の炭素原子を含むグリシジルエステル又はエーテル、例えばブチルグリシジルエーテル、オクチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル及びパラ−(t−ブチル)フェニルグリシジルエーテルが挙げられる。一般的なグリシジルエステルとしては、以下の構造:
【化1】
のものが挙げられ、式中、Rは、約4個〜約26個の炭素原子を含む炭化水素基である。通常、Rは、約8個〜約10個の炭素原子を有する分枝鎖状の炭化水素基、例えばネオペンタノアート、ネオヘプタノアート又はネオデカノアートである。カルボン酸の適切なグリシジルエステルとしては、VERSATIC ACID 911及びCARDURA Eが挙げられ、これらはいずれも、Shell Chemical Co.から市販されている。
【0026】
本発明の特定の例において、硬化性フィルム形成組成物において使用されるポリマーは、フッ素化ポリマーを含む。適切なフルオロポリマーの非限定的な例としては、Asahi Glass CompanyからLUMIFLONという名称で入手可能なフルオロエチレン−アルキルビニルエーテル交互コポリマー(例えば米国特許第4,345,057号に記載のもの)、ミネソタ州セントポールの3MからFLUORADという名称で市販されているフルオロ脂肪族ポリマーエステル、及び過フッ化ヒドロキシル官能性(メタ)アクリラート樹脂が挙げられる。
【0027】
ポリエステルポリマーを硬化性フィルム形成組成物において使用してもよい。このようなポリマーは、公知の手法で多価アルコールとポリカルボン酸とを縮合することより調製可能である。適切な多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン及びペンタエリトリトールが挙げられるが、これらに限定されない。適切なポリカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸及びトリメリット酸が挙げられるが、これらに限定されない。先に言及したポリカルボン酸の他には、これらの酸の官能性等価物、例えばこれらの酸が存在する無水物、又はこれらの酸の低級アルキルエステル、例えばメチルエステルを使用してもよい。カプロラクトンのような環状エステルから誘導されたポリエステルも適している。
【0028】
また、硬化性フィルム形成組成物においてポリウレタンを使用してもよい。使用可能なポリウレタンのなかにはポリマーポリオールがあり、ポリウレタンは、OH/NCOの当量比が1:1を上回り、それにより遊離ヒドロキシル基が生成物中に存在するように、先に言及したようなポリエステルポリオール又はアクリルポリオールとポリイソシアナートとを反応させることで調製されることが一般的である。ポリウレタンポリオールを調製するために使用される有機ポリイソシアナートは、脂肪族若しくは芳香族ポリイソシアナート又はこれらの混合物であってもよい。しばしばジイソシアナートが使用されるが、ジイソシアナートの代わりに、又はこれと組み合わせて、より高級のポリイソシアナートを使用してもよい。適切な芳香族ジイソシアナートの例は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート及びトルエンジイソシアナートである。適切な脂肪族ジイソシアナートの例は、直鎖状の脂肪族ジイソシアナート、例えば1,6−ヘキサメチレンジイソシアナートである。また、脂環式ジイソシアナートを用いてもよい。例としては、イソホロンジイソシアナート及び4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)が挙げられる。適切な高級ポリイソシアナートの例は、1,2,4−ベンゼントリイソシアナート及びポリメチレンポリフェニルイソシアナートである。ポリエステルと同様に、ポリウレタンを未反応のカルボン酸基で調製することができ、これによって、アミンのような塩基で中和してから、水性媒体への分散が可能になる。
【0029】
ポリエーテルポリオールの例は、以下の構造式:
(i):
【化2】
又は
(ii):
【化3】
を有するものを含むポリアルキレンエーテルポリオールであり、
式中、置換基R
1は、水素であるか、1個〜5個の炭素原子を含む低級アルキル(混合置換基を含む)であり、nは、一般的に2〜6であり、mは、8〜100以上である。ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシテトラエチレン)グリコール、ポリ(オキシ−1,2−プロピレン)グリコール及びポリ(オキシ−1,2−ブチレン)グリコールが含まれる。
【0030】
また、様々なポリオール、例えばジオールをオキシアルキル化することにより形成されるポリエーテルポリオール、例えばエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ビスフェノールAなど、又はその他の高級ポリオール、例えばトリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールなども有用である。記載された利用可能な官能性がより高いポリオールは、例えば、スクロース又はソルビトールのような化合物をオキシアルキル化することにより作製可能である。一般的に用いられるオキシアルキル化の一方法は、ポリオールと、アルキレンオキシド、例えばプロピレンオキシド又はエチレンオキシドとを酸触媒又は塩基触媒の存在下で反応させることである。特定のポリエーテルとしては、E.I. Du Pont de Nemours and Company,Inc.,から入手可能なTERATHANE及びTERACOLという名称で販売されているもの、並びにGreat Lakes Chemical Corpの子会社であるQ O Chemicals,Inc.,から入手可能なPOLYMEGが挙げられる。
【0031】
JEFFAMINE(登録商標)の商標名で市販されている有用なアミン官能性フィルム形成ポリマーであるポリオキシプロピレンアミン、当技術分野で知られているように調製されたアミン官能性アクリルポリマー及びポリエステルポリマーも適している。
【0032】
フィルム形成化合物(b)は、フィルム形成組成物において、組成物中の樹脂固形分の総重量を基準として、10〜90重量パーセントの範囲にある量で、例えば少なくとも35重量パーセント、又は少なくとも40重量パーセント、且つ最大60重量パーセント、又は最大50重量パーセントで存在する。
【0033】
イソシアナート官能基を有する硬化剤(a)は、硬化性フィルム形成組成物において、フィルム形成化合物(b)に対して過剰に使用してもよい。例えば、硬化剤におけるイソシアナート基:フィルム形成化合物における官能基の当量比は、1.1〜5.0:1、しばしば1.1〜1.7:1、又は1.5〜1.7:1であってもよい。
【0034】
マルチパック(multi−pack:複液型)樹脂組成物であるDESOTHANE CA8905HP又はDESOTHANE HS CA8925/I1050は、どちらもPPG Aerospaceから入手可能であり、本発明の組成物における硬化剤(a)及びフィルム形成化合物(b)として使用可能である。或いは、脂肪族ポリイソシアナートの混合物であるDESOTHANE CA8000Bを硬化剤(a)として使用しても、ポリオール樹脂と顔料及びフィラーのブレンドとの混合物であるDESOTHANE CA8800/B70846、又はポリオール樹脂の溶液と37.79重量%の非揮発性物質との混合物であるDESOTHANE CA8000/B900Aをフィルム形成化合物(b)として使用してもよい。別の場合では、脂肪族ポリイソシアナートと100重量%の非揮発性物質との混合物であるDESOTHANE CA9005Bを硬化剤(a)として使用してもよく、ポリオール樹脂溶液と47.92重量%の非揮発性物質との混合物であるDESOTHANE CA9005HPをフィルム形成化合物(b)として使用してもよい。
【0035】
本発明の硬化性フィルム形成組成物は、(c)光潜在性触媒をさらに含む。当技術分野において公知のポリウレタン架橋のためのSn、Bi、Zr、Al及びTiに基づく任意の光潜在性触媒、例えば米国特許第8,318,830号、米国特許第8,933,138号及び米国特許出願公開第20140018461号に開示されているものが適している。光潜在性触媒(c)は、チタン、スズ、アルミニウム、ジルコニウム及び/又はビスマスの少なくとも1種の有機金属化合物をしばしば含む。市販されているUV潜在性チタン触媒としては、BASFから入手可能なSOLYFAST10及びSOLYFAST12、並びにSigma−Aldrichから入手可能なオキソビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナト)チタン(IV)、CAS#152248−67−4が挙げられる。
【0036】
光潜在性触媒(c)は、フィルム形成組成物において、組成物中の樹脂固形分の総重量を基準として、0.01〜2.0重量パーセントの範囲にある量で、例えば少なくとも0.05重量パーセント又は少なくとも0.1重量パーセント且つ最大1.0重量パーセント又は最大0.5重量パーセントで存在する。
【0037】
本発明の硬化性フィルム形成組成物は、(d)60℃(140°F)超の引火点を有するβ−ジケトンをさらに含む。引火点は、「クローズドカップ」引火点試験(“Closed Cup” flash point test)、2016としても知られるASTM D56−16−「タグ密閉式試験器による引火点の試験方法(Test Method for Flash Point by Tag Closed Tester)」を使用して求めることができる。一般的に、このようなβ−ジケトンとしては、脂肪族ヒンダードβ−ジケトン、例えば1,3−ジケトンが挙げられる。
【0038】
適切な脂肪族ヒンダード1,3−ジケトンの例は、以下のものである:
【化4】
【0039】
或いは、60℃(140°F)超の引火点を有するβ−ジケトン(d)は、100〜800g/当量のアセトアセタート当量(重量)を有するアセトアセタート官能樹脂を含んでいてもよい。このような樹脂は、ポリエチレン又はポリプロピレンのようなポリアルキレンポリマー、ポリエーテルポリマー、アクリルポリマー、及びポリエステルポリマーのうちの1種又は複数種を含んでいてもよい。これらの樹脂は、ヒドロキシル官能基をさらに含んでいてもよい。
【0040】
アセトアセタート樹脂は、ポリマー状のポリオールにおけるヒドロキシル官能基と、例えばtert−ブチルアセトアセタートのような物質を含むアセトアセタートとの間で、従来のエステル交換化学によるエステル交換反応により調製可能である。この主題についての詳細な扱いは、Witzman等による「アセトアセチル化コーティング樹脂の調製方法の比較(Comparison of Methods for the Preparation of Acetoacetylated Coating Resins)」、Journal of Coatings Technology、第62巻、No.789、1990年10月という表題の論文で見ることができる。
【0041】
適切なアセトアセタート樹脂としては、一般式:
【化5】
を有するものが挙げられ、式中、Rは、ポリアルキレン、ポリエーテル、ポリエステル、アクリルポリオール、ポリヒドロキシポリエステル若しくはポリオキシポリオール、又はこれらの組み合わせから選択されるポリマーの群を表す。
【0042】
本発明における適したアセトアセタート樹脂は、アセトアセタート当量(重量)が、約100〜約800(グラム/当量)、通常約100〜約500、より頻繁には約100〜約300である。
【0043】
アセトアセタート樹脂は、例えば、King Industriesから入手可能なK−FLEX XM−B301及びK−FLEX7301として、Nuplex Resinsから入手可能なSETALUX17−1450、17−7202、57−7205及びSETAL26−3705として、市販されている。
【0044】
理論により縛られることを意図してはいないが、ヒンダード脂肪族β−ジケトンにおけるより長い末端有機基、およびアセトアセタート官能樹脂におけるポリマー鎖により、光潜在性触媒の金属原子における「遮蔽効果」がもたらされるため、イソシアナート及び活性水素(例えばヒドロキシル、アミン、チオール)の反応の触媒作用が制御され、硬化性フィルム形成組成物のウェットエッジタイム(wet−edge time)が効果的に改善されると考えられる。
【0045】
β−ジケトン(d)は、フィルム形成組成物において、組成物中の樹脂固形分の総重量を基準として、0.01〜10.0重量パーセントの範囲にある量で、例えば少なくとも0.05重量パーセント、又は少なくとも0.1重量パーセント、又は少なくとも0.2重量パーセント、且つ最大5.0重量パーセント、又は最大4重量パーセント、又は最大2重量パーセントで存在する。β−ジケトン(d)が脂肪族ヒンダードβ−ジケトン、例えば先に記載のもののいずれかを含む場合、これは、フィルム形成組成物において、0.01〜8.0重量パーセントの範囲にある量で存在することが一般的である。β−ジケトン(d)が樹脂を含む場合、これは、フィルム形成組成物において、0.01〜10.0重量パーセントの範囲にある量で存在することが一般的である。
【0046】
本発明の硬化性フィルム形成組成物は、(e)60℃(140°F)以下の引火点を有するβ−ジケトンをさらに含む。一般的に、このようなβ−ジケトンとしては、脂肪族β−ジケトン、例えば2,4−ペンタンジオン及び3−メチル−2,4−ペンタンジオンが挙げられる。
【0047】
β−ジケトン(e)は、フィルム形成組成物において、組成物中の樹脂固形分の総重量を基準として、0.05〜20.0重量パーセントの範囲にある量で、例えば少なくとも0.1重量パーセント又は少なくとも0.25重量パーセント且つ最大10.0重量パーセント又は最大5重量パーセント又は最大3重量パーセントで存在する。
【0048】
β−ジケトン(d)と(e)とを組み合わせることで、本発明の硬化性フィルム形成組成物は、以下の例に示されるように、どちらのβ−ジケトンも含有していない組成物に比べて、延びたポットライフ及び改善されたウェットエッジタイムの双方、並びにより短縮された貼付乾燥時間を実証することができる。コーティング組成物が基材にいつでも塗布(適用)可能であり、且つ塗布するのになおも十分粘度が低い時間間隔、すなわち、成分を混合して硬化性組成物を形成してから硬化性組成物がその意図される目的のためには表面にもはや適当に塗布可能ではなくなるまでの期間は、一般的に可使時間(working time)又は「ポットライフ」(“pot life”)と称される。組成物の粘度が初期粘度から2倍になるまでにかかる時間を「ポットライフ」として定量的に報告する。どちらのβ−ジケトンもポットライフの延長に寄与するが、β−ジケトン(d)の蒸発速度がより遅いことで、これが組成物においてより長く残留して、改善されたウェットエッジタイムをさらにもたらすことができると考えられる。
【0049】
硬化性フィルム形成組成物は、ワンパッケージ(一液型)又はマルチパッケージ(複液型)の系として調製可能である。周囲硬化コーティングの場合、これらの硬化コーティングをワンパッケージとして貯蔵することは実践的ではなく、それよりもむしろ、これらの硬化コーティングは、成分が使用前に硬化するのを防止するために、マルチパッケージコーティングとして貯蔵される必要がある。「マルチパッケージコーティング」という用語は、様々な成分が塗布の直前まで個別に維持されるコーティングを意味する。本発明の組成物は、通常マルチパッケージコーティング、例えばツーパッケージ(二液型)コーティングであり、ここで硬化剤(a)が第一のパッケージであり、フィルム形成化合物(b)が第二のパッケージである。
【0050】
硬化性フィルム形成組成物の成分(c)、(d)及び(e)を、硬化性フィルム形成組成物に個別に添加しても、3種の成分をすべて含有する触媒パッケージとして添加してもよいし、これらを単独又は様々な組み合わせで硬化剤(a)又はフィルム形成化合物(b)に添加してもよい。
【0051】
本発明の硬化性フィルム形成組成物は、溶媒をさらに含んでいてもよい。適切な溶媒の例としては、アルコール、例えば3−ブトキシプロパン−2−オール及び1−プロパノール、ケトン、例えばアセトン、2,6−ジメチルヘプタン−4−オン、4,6−ジメチルヘプタン−2−オン及びヘプタン−2−オン、エステル、例えば1(又は2)−(2−メトキシメチルエトキシ)アセタート、酢酸エチル及び酢酸2−メトキシ−1−メチルエチル、並びにキシレン及び4−クロロ−α,α,α−トリフルオロトルエンを含む芳香族溶媒が挙げられる。また、溶媒の混合物を使用してもよい。溶媒ブレンドの特定の例としては、PPG Aerospaceから入手可能なDESOTHANE CA8000C及びCA9005Cが挙げられる。溶媒が存在する場合、これを個別パッケージとして提供してもよいし、及び/又はその他の2つのパッケージの片方若しくは双方と組み合わせてもよい。安定性の目的で、異なる溶媒が異なるパッケージ内に存在していてもよい。
【0052】
本発明のフィルム形成組成物は、フィラーをさらに含んでいてもよい。存在し得るフィラーの例としては、微粉状の鉱物、例えば硫酸バリウム、フュームドシリカ及びコロイド状シリカを含むシリカ、アルミナ、コロイド状アルミナ、二酸化チタン、ジルコニア、コロイド状ジルコニア、粘土、マイカ、ドロマイト、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸カルシウム及び/又はメタケイ酸カルシウムが挙げられる。
【0053】
さらに、フィルム形成組成物としては、硬化性組成物の特定の用途にいくらか依存する様々な任意選択の原料及び/又は添加剤、例えば顔料又はその他の着色剤、強化剤、チキソトロープ剤、促進剤、界面活性剤、可塑剤、増量剤、安定剤、腐食防止剤、希釈剤、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外光吸収剤及び酸化防止剤を挙げることができる。硬化性フィルム形成組成物は、カラーコートであっても、クリアコートであってもよく、不透明、半透明、有色透明(tinted transparent)又は無色透明であってもよい。
【0054】
本発明の硬化性フィルム形成組成物を、基材上でコーティングとして使用してもよい。適切な基材としては、鉄系金属、アルミニウム、アルミニウム合金、銅及びその他の金属のような硬質金属基材、並びに合金基材が挙げられる。本発明の実施に際して使用される鉄系金属基材としては、鉄、鋼及びこれらの合金を挙げることができる。有用な鋼材料の非限定的な例としては、冷間圧延鋼、亜鉛めっき(亜鉛被覆された)鋼、電気亜鉛めっき鋼、ステンレス鋼、酸洗した鋼、亜鉛−鉄合金、例えばGALVANNEAL、及びこれらの組み合わせが挙げられる。また、鉄系金属及び非鉄金属の組み合わせ又は複合材を使用してもよい。本発明の特定の例において、基材は、複合材料、例えばプラスチック又は繊維ガラス複合材を含む。基材はしばしば、タービン及び航空機部品、例えばエーロフォイル、ウィング、スタビライザー、ラダー、エルロン、エンジン入口、プロペラ、ロータ、機体などに使用される。
【0055】
任意のコーティング組成物を基材の表面に堆積させる前に、必須ではないが、表面を徹底的に洗浄及び脱脂させることで表面から異物を除去することが一般的である。このような洗浄は、基材を最終的な使用形状に形成(スタンピング、溶接など)した後で行われることが一般的である。基材の表面は、物理的又は化学的な手段により、例えば機械的に表面を研磨することにより、又は当業者によく知られた市販されているアルカリ性又は酸性洗浄剤、例えばメタケイ酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムで洗浄/脱脂することにより、きれいにすることが可能である。洗浄剤の非限定的な例は、PPG Industries,Inc.から市販されているアルカリ性洗浄剤であるCHEMKLEEN163である。
【0056】
洗浄工程の後に、基材を、脱イオン水、溶媒又はリンス剤の水溶液で濯いで、残渣のすべてを除去してもよい。基材を、例えばエアナイフを使用することで、基材を高温に短時間曝露することにより水をフラッシュオフすることで、又は基材をスキージロール間に通すことで空気乾燥させてもよい。
【0057】
基材は、露出され洗浄された表面であってもよく、基材は、油が付いていても、1種又は複数種の前処理用組成物で前処理されていても、且つ/又は電着塗装、噴霧、ディップコーティング、ロールコーティング、カーテンコーティングなどを含むがこれらに限定されることのない任意の方法により塗布された1種又は複数種のコーティング組成物、プライマー、トップコートなどで事前に塗装されていてもよい。
【0058】
硬化性フィルム形成組成物を基材の少なくとも1つの表面に塗布する。基材は、1つの連続的な表面又は2つ以上の表面、例えば2つの対置した表面を有していてもよい。
【0059】
組成物を、噴霧、浸漬/含浸、刷毛塗り又はフローコーティングを含む多くの方法のうちの1つ又は複数により基材に塗布してもよいが、これらは、ほとんどの場合、噴霧により塗布される。空気噴霧及び静電噴霧用の通常の噴霧技術及び設備、並びに手動の方法又は自動の方法のどちらかを使用することができる。コーティング層は、乾燥フィルムの厚みが、15ミル(381ミクロン)まで又は10ミル(254ミクロン)まで、例えば1〜5ミル(25.4〜127ミクロン)、しばしば1〜3ミル(25.4〜76.2ミクロン)であることが一般的である。
【0060】
基材上にて、フィルム形成組成物を、基材の表面、又はプライマーコート、又は電着コート(electrocoat)若しくはトップコートのようなその他のコーティングに直接塗布することができる。適切なプライマーとしては、市販されている航空宇宙産業に準拠したプライマー、例えば高固形分エポキシプライマーが挙げられる。特定の例は、PPG Aerospaceにより供給される耐食性エポキシプライマーDESOPRIME CA7700である。複数のコーティング層、例えばプライマー及び着色されたベースコートを、本発明の硬化性フィルム形成組成物を塗布する前に基材に塗布してもよい。
【0061】
組成物は、モノコートとして基材に塗布されても、様々なコーティング層が塗布された基材を含む多層コーティング複合材の一部であってもよい。したがって、組成物は、前処理層、プライマー、ベースコート及び/又はクリアコートとして使用されてもよい。少なくとも1つのベースコート及びクリアコートは、着色剤を含有していてもよい。本発明の硬化性フィルム形成組成物がクリアコートである場合、β−ジケトン(b)は、より分子量の低い脂肪族ヒンダードβ−ジケトン及び/又は上記のアセトアセタート官能樹脂であってもよい。硬化性フィルム形成組成物が顔料着色剤(すなわちプライマー、ベースコート及びモノコート)を含有する場合、アセトアセタート官能樹脂は、先に言及した硬化制御特性をもたらす際に、β−ジケトン(b)としてより効果的である。
【0062】
本発明により、硬化性フィルム形成組成物の硬化速度を制御する方法、及び硬化性フィルム形成組成物のウェットエッジタイムを増加させる方法がさらにもたらされる。これらの方法は、硬化性フィルム形成組成物に、
(i) 光潜在性触媒、例えば先に開示したもののいずれか、
(ii) 60℃(140°F)超の引火点を有するβ−ジケトン、例えば先に開示したもののいずれか、及び
(iii) 60℃(140°F)以下の引火点を有する脂肪族β−ジケトン、例えば先に開示したもののいずれかを含む触媒成分を添加する工程を含む。
硬化性フィルム形成組成物は、
(a) 反応性イソシアナート官能基を含む硬化剤、及び
(b) 硬化剤(a)中の反応性イソシアナート官能基と反応する官能基を含むフィルム形成化合物
を含む。
【0063】
硬化剤(a)及びフィルム形成化合物(b)は、先に論じたもののいずれかであってもよい。
【0064】
触媒成分を硬化性フィルム形成組成物に添加した後に、本方法は、硬化性フィルム形成組成物を基材に塗布してコーティングされた基材を形成する工程、及びコーティングされた基材を、硬化性フィルム形成組成物を少なくとも部分的に硬化させるのに十分な時間にわたり条件に曝露する工程をさらに含んでいてもよい。組成物は、周囲温度で静置することで、又は周囲温度での硬化と焼付けとを組み合わせることで、又は焼付けのみで硬化させることができる。「周囲」条件とは、熱又はその他のエネルギーが適用されないことを意味し、例えば、硬化性組成物が、反応を促進するための炉内での焼付け、強制空気、照射などの使用なしで熱硬化反応を起こす場合、この反応は、周囲条件のもとで生じると言われる。通常、周囲温度は、60〜90°F(15.6〜32.2℃)の範囲にあり、例えば、一般的な室温の72°F(22.2℃)である。組成物は、周囲条件のもと5時間未満で硬化することが一般的であろう。また、組成物を、100〜160°F(37.8〜71.1℃)の温度で15分〜3時間の時間にわたり焼付けすることにより、又は周囲硬化と焼付けとを組み合わせることにより硬化させてもよい。或いは、コーティングされた基材を、硬化性フィルム形成組成物を少なくとも部分的に硬化させるのに十分な時間にわたり化学放射線に曝露してもよい。一般的な化学放射線の条件は、UV線総量が0.5〜10J/cm
2の場合に、1〜500mW/cm
2、例えば1〜250mW/cm
2又は1〜100mW/cm
2の放射強度で、315〜400nm(UVA)である。組成物は、化学放射線に曝露した後に、2時間未満で硬化することが一般的であろう。
【0065】
上記の各特性及び例、並びにこれらの組み合わせは、本発明により包含されていると言うことができる。したがって、本発明は、以下の非限定的な態様に関する。
【0066】
1.
(a) 反応性イソシアナート官能基を含む硬化剤、
(b) (a)中の反応性イソシアナート官能基と反応する官能基を含むフィルム形成化合物、
(c) 光潜在性触媒、
(d) 60℃(140°F)超の引火点を有するβ−ジケトン、及び
(e) 60℃(140°F)以下の引火点を有するβ−ジケトン
を含む硬化性フィルム形成組成物。
【0067】
2. 硬化剤(a)が、ジイソシアナート及びトリイソシアナートのうちの少なくとも1種を含む、態様1に記載の硬化性フィルム形成組成物。
【0068】
3. フィルム形成化合物(b)が、アクリルポリマー、ポリエーテルポリマー及びポリエステルポリマーのうちの少なくとも1種を含む、態様1又は2に記載の硬化性フィルム形成組成物。
【0069】
4. 光潜在性触媒(c)が、チタン、スズ、アルミニウム、ジルコニウム又はビスマスの少なくとも1種の有機金属化合物を含む、態様1から3までのいずれか1つに記載の硬化性フィルム形成組成物。
【0070】
5. β−ジケトン(d)が、脂肪族ヒンダードβ−ジケトンを含む、態様1から4までのいずれか1つに記載の硬化性フィルム形成組成物。
【0071】
6. β−ジケトン(d)が、100〜800g/当量のアセトアセタート当量(重量)を有するアセトアセタート官能樹脂を含む、態様1から4までのいずれか1つに記載の硬化性フィルム形成組成物。
【0072】
7. アセトアセタート官能樹脂(d)が、ポリアルキレンポリマー、ポリエーテルポリマー、アクリルポリマー及びポリエステルポリマーのうちの1種又は複数種を含む、態様6に記載の硬化性フィルム形成組成物。
【0073】
8. β−ジケトン(e)が2,4−ペンタンジオンを含む、態様1から7までのいずれか1つに記載の硬化性フィルム形成組成物。
【0074】
9. クリアコートを含む、態様1に記載の硬化性フィルム形成組成物。
【0075】
10. 硬化性フィルム形成組成物の硬化速度を制御し、且つ/又は硬化性フィルム形成組成物のウェットエッジタイムを増加させる方法であって、
(a) 反応性イソシアナート官能基を含む硬化剤、及び
(b) 硬化剤(a)中の反応性イソシアナート官能基と反応する官能基を含むフィルム形成化合物
を含む硬化性フィルム形成組成物に、
(i) 光潜在性触媒、
(ii) 60℃(140°F)超の引火点を有するβ−ジケトン、及び
(iii) 60℃(140°F)以下の引火点を有する脂肪族β−ジケトン
を含む触媒成分を添加する工程を含む、方法。
【0076】
11. 光潜在性触媒(i)が、チタン、スズ、アルミニウム、ジルコニウム又はビスマスの少なくとも1種の有機金属化合物を含む、態様10に記載の方法。
【0077】
12. β−ジケトン(ii)が脂肪族ヒンダードβ−ジケトンを含む、態様10又は11に記載の方法。
【0078】
13. β−ジケトン(ii)が、100〜800g/当量のアセトアセタート当量(重量)を有するアセトアセタート官能樹脂を含む、態様10又は11に記載の方法。
【0079】
14. アセトアセタート官能樹脂(ii)が、ポリアルキレンポリマー、ポリエーテルポリマー、アクリルポリマー及びポリエステルポリマーのうちの1種又は複数種を含む、態様13に記載の方法。
【0080】
15. β−ジケトン(iii)が2,4−ペンタンジオンを含む、態様10から14までのいずれか1つに記載の方法。
【0081】
16. 硬化剤(a)が、ジイソシアナート及びトリイソシアナートのうちの少なくとも1種を含む、態様10から15までのいずれか1つに記載の方法。
【0082】
17. フィルム形成化合物(b)が、アクリルポリマー、ポリエーテルポリマー及びポリエステルポリマーのうちの少なくとも1種を含む、態様10から16までのいずれか1つに記載の方法。
【0083】
18. 触媒成分を硬化性フィルム形成組成物に添加した後に、硬化性フィルム形成組成物を基材に塗布してコーティングされた基材を形成する工程、及びコーティングされた基材を、硬化性フィルム形成組成物を少なくとも部分的に硬化させるのに十分な時間にわたり条件に曝露する工程をさらに含む、態様10から17までのいずれか1つに記載の方法。
【0084】
19. コーティングされた基材を、硬化性フィルム形成組成物を少なくとも部分的に硬化させるのに十分な時間にわたり化学放射線又は高められた温度に曝露する、態様18に記載の方法。
【0085】
以下の例は、本発明の様々な態様を説明することを意図するものであって、いかなる場合も本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0086】
設備及び試験方法
UV−Aランプ
Cure−Tek Ultraviolet Paint Curing Lamp−UVA400A(400ワットの公称電力)を、H&S Auto Shotから購入した。UV放射強度を1.5〜2.0mW/cm
2の範囲に設定した。
【0087】
粘度
コーティングについて、混合したばかりの粘度及びポットライフ粘度を、#2 Signature Zahnカップで測定し、秒単位で報告した。工業用途の場合、良好な外観及び高い性能、例えば噴霧塗布後の光沢度及び接着性を得るためには、30秒未満の粘度で3〜4時間のポットライフを有することが推奨される。
【0088】
ウェットエッジの評価
この試験を、毎分75〜125リニアフィート(毎秒0.381〜0.635メートル)の空気流を用いて、スプレーブース内で実施した。混合した組成物の層を、12×24インチ(304.8×609.6mm)のパネルの表面全体に、0.8〜1.0ミル(20〜25マイクロメートル)の乾燥フィルムの厚みで噴霧した。30分後に、別のコーティング層をパネルの半分を覆うように噴霧した。2回目の塗布後に、パネルをスプレーブース内に1時間にわたり維持して、溶媒をフラッシュオフさせた。硬化のために、このパネルをUV−Aランプに30分にわたり曝露した。ウェットエッジ領域(2回目のコーティング塗布からオーバースプレーされた領域)及びツーコート(two−coat)の重なり領域の双方における20度光沢度及びヘイズ値を測定した。高光沢コーティングの場合、ヘイズ値は50未満であるものとし、20度光沢度の値は80より高いものとする。
【0089】
貼付乾燥時間
コーティングを噴霧塗布した後に、コーティングされたパネルを、スプレーブース内で60分にわたり周囲温度及び湿度で乾燥させ、溶媒をフラッシュオフさせた。これらのパネルをUV−Aランプの下に置き、硬化を促進させ、30分にわたり曝露した。UV−Aランプからパネルを取り除いた後で5分以内に、幅1インチのマスキングテープの条片、例えば2307又は同等のタイプのものを用いて、貼付乾燥(dry−to−tape)の結果を調べた。約5ポンドの応力でテープロールを使用することで、テープを押し付けた。さらなる硬化のためにコーティングを周囲温度のままにし、30分ごとにテープを貼って硬化を監視した。24時間後にマスキングテープの条片を取り除き、コーティング表面におけるテープ跡又は残渣について、各条片の下の領域を目視で調べた。貼付乾燥時間を、コーティングの塗布が完了してから目視可能なテープ跡又は残渣がなくなる時点までの期間として求めた。
【0090】
MEK耐性
ASTM D5402(2015)に準拠して、MEK溶媒に浸したガーゼ布を使用することで、耐溶剤性を求めた。顕著な傷が観察された時点で、MEK二重摩擦を記録した。200回のMEK二重摩擦の後に、顕著な傷が観察されなかった場合、200回超として結果を記録した。本発明については、光潜在性触媒をポリウレタンコーティングに添加することで促進されたコーティングの硬化の効率を、紫外光に曝露した後にMEK二重摩擦により求めた。
【0091】
光沢度及びヘイズ
ウェットエッジの領域に対する光沢度を、ASTM D523(鏡面光沢度の標準試験方法(Standard Test Method for Specular Gloss)、2014)に準拠して、BYK−Gardnerヘイズ−光沢度測定器を使用して求めた。60°での光沢度の値が70より高い試料を比較するためには、20°の配置が有利である。硬化性フィルム形成組成物を、20度で80よりも高い光沢度を示すように設計したため、光沢度のデータをすべて、20度で試験した。ウェットエッジの改善を監視するための比較として、光沢度の測定値が低いパネルも20度で試験した。
【0092】
反射ヘイズを、E430−11(短縮されたゴニオフォトメトリーにより高光沢表面の光沢度を測定するための標準試験方法(Standard Test Methods for Measurement of Gloss of High−Gloss Surfaces by Abridged Goniophotometry)、2011)に準拠して求めた。
【0093】
耐衝撃性
耐衝撃性を、ASTM D2794(急速な変形の影響に対する有機コーティングの耐性についての標準試験方法(Standard Test Method for Resistance of Organic Coatings to the Effects of Rapid Deformation)、2010)に準拠して、BYK−Gardner 5546 Metal SPIヘビーデューティー衝撃試験機(Heavy−Duty Impact Tester)により、インチ−ポンドの単位で求めた。
【0094】
スカイドロール耐性
一晩にわたり周囲硬化させ、コーティングされたパネルを、作動油Skydrol LD−4(Solutia,Inc.から入手可能)中において140°Fの温度で24時間にわたり浸漬した。コーティングの表面を、塗装剥がれ、膨れ又は著しい変色について調べた。コーティングの欠陥のいずれの兆候も「不合格」と記録し、それ以外は「合格」と記録した。
【0095】
クロスハッチ接着性
クロスハッチ接着性を、ASTM D3359(テープ試験により接着性を測定する標準試験方法(Standard Test Methods for Measuring Adhesion by Tape Test))、方法B、2009に準拠して求めた。コーティングを通してクロスハッチパターンを基材に写す。幅1インチのマスキングテープの条片(例えば3M250又は同等のもの)を用いた。4.5ポンドのゴム被覆ローラを2回通過させることでテープを押し込んだ。パネルに対して垂直に1回の急な動きでテープを取り除いた。用意した評価システムを使用して、クロスハッチ領域で塗料を目視検査することにより接着性を評価した。コーティング系を7日にわたり完全に硬化させた後に、乾燥接着性(dry adhesion)を試験した。完全に硬化したコーティング系について、これを140°Fの水に24時間にわたり浸漬した後に、湿潤接着性(wet adhesion)を試験した。水からパネルを取り出し、紙タオルでふき取って乾燥させ、5分後に試験を行った。パネルを以下のように評価した:
a) 5B:カットした部分のエッジが完全に平滑である;格子の正方形のいずれも剥離していない。
b) 4B:コーティングの小さな薄片が交点において剥離している;領域の5%未満が影響を受けている。
c) 3B:コーティングの小さな薄片が、エッジに沿って、カットした部分の交点において剥離している。影響を受けた領域は、格子の5〜15%である。
d) 2B:コーティングは、エッジに沿って、正方形の部分において薄片化した。影響を受けた領域は、格子の15〜35%である。
e) 1B:コーティングは、カットした部分のエッジに沿って、大きなリボン状で薄片化し、正方形はすべて剥離した。影響を受けた領域は、格子の35〜65%である。
f) 0B:グレード1よりも悪い薄片化及び剥離。
【0096】
例における使用のために、以下のエポキシプライマー及びポリウレタンベースコートを基材に塗布した:DESOPRIME CA7700は、PPG Aerospaceにより供給される耐食性エポキシプライマーである。100重量部のCA7700ベース成分を76.9重量部のCA7700BE活性化剤と混合する。DESOTHANE HS CA8000/B70846は、PPG Aerospaceにより供給される3成分系の周囲硬化白色ポリウレタントップコートである。100重量部のCA8000/B70846ベース成分を39.0重量部のCA8000B活性化剤及び31.0重量部のCA8000Cと混合する。
【0097】
例示的な配合物において使用される原材料は、引火点のデータを含む以下の表に記載及び要約されている。引火点のデータは、サプライヤーにより提供され、「クローズドカップ」引火点試験(“Closed Cup” flash point test)、2016としても知られるASTM D56−16−「タグ密閉式試験器による引火点の試験方法(Test Method for Flash Point by Tag Closed Tester)」を使用することで測定されたものとして示された。
【表1】
【0098】
基材調製手順:
毎分75〜125リニアフィート(毎秒0.381〜0.635メートル)の空気流を用いて、コーティング層をHPLVスプレーガンによりスプレーブース内で塗布した。まず、アルミニウムパネルを、溶媒、例えばケトンで拭いて油脂を除去し、SCOTCHBRITEで磨き、溶媒で再び洗浄した。航空宇宙産業品質のプライマーを、洗浄した表面に塗布して、乾燥フィルムの厚みを1.0ミル(25マイクロメートル)にした。プライマーの周囲硬化の2時間後に、CA8000/B70846ベースコートをプライマー上に塗布して、およそ2ミル(50ミクロン)の乾燥フィルムの厚みを得た。
【0099】
対照例1〜9及び本発明の例1〜5についてのコーティングの塗布手順:
ベースコートの周囲硬化の2〜8時間後に、毎分75〜125リニアフィート(毎秒0.381〜0.635メートル)の空気流を用いて、クリアコートをスプレーブース内で塗布して、およそ2ミル(50ミクロン)の乾燥フィルムの厚みを得た。
【0100】
コーティングの塗布後に、コーティングされたパネルをスプレーブース内で乾燥させ、溶媒を1時間にわたりフラッシュオフさせた。その後、これらのパネルをUV−Aランプの下に30分にわたり置いた。メチルケトン耐性及び貼付乾燥特性を測定して、乾燥時間を監視した。
【0101】
例示的な配合物
各例の組成物を、以下の表で羅列された原料から調製した。それぞれが、性能、例えば耐薬品性、柔軟性及び耐候性を調整するために、3種の異なる構造のポリオールを含む。K−FLEX A308は、第一級ヒドロキシル基及び260mgKOH/gの水酸基価を有する低粘度で100%活性の直鎖状飽和脂肪族ポリエステルジオールである。CAPA4101は、第一級ヒドロキシル基末端且つ216〜232mgKOH/gの水酸基価を有する四官能性ポリオールである。JONCRYL909は、中固形分ポリウレタンコーティング塗布のための111〜123mgKOH/gの水酸基価を有する速硬化性アクリルポリオールである。耐薬品性をより高くするためには、ポリイソシアナートのポリオールに対する当量比を1.4に設定する。航空宇宙産業用コーティングの用途の場合、重力式スプレーガンで塗布するために、コーティングの揮発性有機含有率(VOC)が420g/Lになるように配合し、固形分含有率が57.8%になるように配合する。対照例2〜7では、光潜在性触媒を、配合物の総重量を基準として0.2重量%、又は樹脂の総固形重量を基準として0.35重量%の濃度で使用した。
対照例
【表2】
【表3】
1. 対照1は、触媒なしのポリウレタンコーティングである。これは、4時間後の粘度が低いが、硬化するのに約16時間かかった。
2. 対照2は、配合物全体を基準として0.20重量%の光潜在性触媒で配合したポリウレタンコーティングである。これは、優れたMEK耐性を伴って非常に迅速に硬化したが、ポットライフが非常に短く、30分でゲル化した。
3. 対照3は、配合物全体を基準として0.25重量%の2,4−ペンタンジオンと併用した光潜在性触媒で配合したポリウレタンコーティングである。粘度は著しく減少しており、ポットライフは3時間まで延びた。これは優れたMEK耐性を伴って非常に迅速に硬化したが、3時間後に高い粘度を発現し、4時間でゲル化した。
4. 対照4は、配合物全体を基準として0.25重量%の2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(TMHD)と併用した光潜在性触媒で配合したポリウレタンコーティングである。また、粘度が著しく減少しており、ポットライフは2時間まで延びた。コーティングフィルムは紫外光に曝露した後に湿潤しているため、TMHD、すなわちヒンダードジケトンの添加により、硬化が明らかに遅延した。この組成物は、硬化して貼付乾燥の段階になるのに、さらに2〜3時間必要とした。
5. 対照5は、配合物全体を基準として0.50重量%の2,4−ペンタンジオンと併用した光潜在性触媒で配合したポリウレタンコーティングである。粘度は著しく減少しており、ポットライフは3時間まで延びた。これは優れたMEK耐性を伴って非常に迅速に硬化したが、4時間後に高い粘度を発現した。
6. 対照6は、配合物全体を基準として1.50重量%の2,4−ペンタンジオンと併用した光潜在性触媒で配合したポリウレタンコーティングである。粘度は著しく減少しており、ポットライフは4時間まで延びた。これは優れたMEK耐性を伴って非常に迅速に硬化した。
7. 対照7は、配合物全体を基準として1.50重量%のTMHDと併用した光潜在性触媒で配合したポリウレタンコーティングである。粘度は著しく減少し、4時間までのポットライフが達成された。これはさらに、TMHD、すなわちヒンダードジケトンの添加により硬化が著しく遅延したことを示し、紫外光に曝露した後でさえ湿潤したコーティングフィルムを示し、硬化が完了するのにさらに3〜4時間かかった。
【0102】
表3に示されるように、ポリウレタンコーティングは、触媒の不在下で非常にゆっくりと硬化した(対照例1)。光潜在性触媒をポリウレタンコーティングに添加することで、UV放射線に曝露した後の硬化が著しく促進され、優れた耐薬品性がもたらされた。ジケトンなしのコーティング組成物(対照例2)は、ポットライフが非常に短く、光潜在性触媒の存在下で、30分未満でゲル化した。光潜在性触媒で触媒作用を受けたポリウレタンコーティングにジケトンを添加(対照例3〜7)することで、ポットライフが著しく延びた。低引火点のジケトン、例えば2,4−ペンタンジオンを組み込む(対照例3、5及び6)と、硬化の速度が低下しなかった。しかしながら、高引火点のヒンダードジケトン、例えば2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオンを組み込む(対照例4及び7)と、硬化が著しく遅延され、UV放射後に、コーティングは湿潤したフィルムとして発現された。
【0103】
ウェットエッジの結果
以下の2種の溶媒を、1.5%の2,4−ペンタンジオンを含む触媒されたポリウレタンコーティング配合物に添加して、ウェットエッジタイムを評価した。対照例8は、溶媒の3−メチル−2,4−ペンタンジオンを含んでいた。これは、173℃の沸点及び135°Fの引火点を有する液状のジケトンである。対照例9は、引火点が高く蒸発が遅い溶媒であるDOWANOL DPMAを含有していた。これは、209℃の沸点及び190°Fの引火点を有する液体である。
【表4】
【表5】
対照例6は、配合物全体を基準として1.50重量%の2,4−ペンタンジオンを含んでいた、光潜在性触媒の触媒作用を受けたポリウレタンコーティングである。
対照例8は、配合物全体を基準として1.50重量%の2,4−ペンタンジオン及び1.0重量%の3−メチル−2,4−ペンタンジオンを含んでいた、光潜在性触媒の触媒作用を受けたポリウレタンコーティングである。
対照例9は、配合物全体を基準として1.50重量%の2,4−ペンタンジオン及び1.0重量%のDOWANOL DPMAを含んでいた、光潜在性触媒の触媒作用を受けたポリウレタンコーティングである。
【0104】
表5に示されるように、1.50%の2,4−ペンタンジオンを含んでいた、触媒されたポリウレタンコーティング(対照例6)は、良好に制御されたポットライフを示し、迅速に硬化して優れたMEK耐性を示すが、コーティングは、光沢度が非常に低く、且つヘイズ値が高く、このことは、ウェットエッジが不良であることを示す。135°Fの引火点を有する低引火点のジケトン(3−メチル−2,4−ペンタンジオン、対照例8)、又は190°Fの引火点を有する蒸発の遅い溶媒(DOWANOL DPMA、対照例9)を添加すると、ウェットエッジタイムは改善されなかった。
【0105】
対照例6、8及び9はすべて、光沢度が非常に低く、且つヘイズ値が非常に高く、一般的に許容可能な外観基準について、50未満であるヘイズ要件及び80超である20度光沢度要件の達成からは非常に遠かった。
【0106】
本発明の例
例1は、配合物全体を基準として0.25重量%の2,4−ペンタンジオン及び0.25重量%の2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(TMHD)で配合した、光潜在性触媒の触媒作用を受けたポリウレタンコーティングである。
【0107】
例2は、配合物全体を基準として0.50重量%の2,4−ペンタンジオン及び0.25重量%のTMHDで配合した、光潜在性触媒の触媒作用を受けたポリウレタンコーティングである。
【0108】
例3は、配合物全体を基準として1.00重量%の2,4−ペンタンジオン及び0.25重量%のTMHDで配合した、光潜在性触媒の触媒作用を受けたポリウレタンコーティングである。
【0109】
例4は、配合物全体を基準として1.50重量%の2,4−ペンタンジオン及び0.125重量%のTMHDで配合した、光潜在性触媒の触媒作用を受けたポリウレタンコーティングである。
【0110】
例5は、配合物全体を基準として1.50重量%の2,4−ペンタンジオン及び0.25重量%のTMHDで配合した、光潜在性触媒の触媒作用を受けたポリウレタンコーティングである。
【表6】
【表7】
【0111】
表7に示されるように、高引火点のジケトン、例えば2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(TMHD)と併用した低引火点のジケトン、例えば2,4−ペンタンジオンで配合した、光潜在性触媒で触媒された本発明のポリウレタンコーティングは、高引火点のジケトン、例えば2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン(TMHD)と併用した低引火点のジケトン、例えば2,4−ペンタンジオンで配合されると、良好に制御されたポットライフ、非常に迅速な硬化、優れたMEK耐性及び劇的に短縮された貼付乾燥時間を示すのみならず、意外なことに、パネルのオーバースプレー領域において高い光沢度及び低いヘイズ値を伴って、30分のウェットエッジタイムを示した。
【0112】
例1〜5の組成物を、UV放射線に曝露した後に、周囲温度で一晩にわたりさらに硬化させ、耐衝撃性、乾燥接着性、湿潤接着性及びスカイドロール耐性の諸特性について試験した。表8の結果は、本発明の組成物が、優れた耐衝撃性、スカイドロール流体耐性、乾燥接着性及び湿潤接着性を示したことを表す。
【0113】
対照例10〜14及び本発明の例6〜11についてのコーティング塗布手順
プライマーの周囲硬化の2時間後に、毎分75〜125リニアフィート(毎分0.381〜0.635メートル)の空気流を用いて、トップコートをスプレーブース内で塗布し、およそ2ミル(50ミクロン)の乾燥フィルムの厚みを得た。
【0114】
コーティングを塗布した後に、コーティングされたパネルをスプレーブース内で乾燥させ、溶媒を15分にわたりフラッシュオフさせた。その後、パネルをUV−Aランプの下に30分にわたり置いた。コーティングの乾燥時間を貼付乾燥時間により測定し、硬化したコーティング及びウェットエッジ領域の光沢度を測定した。
【0115】
以下のエポキシプライマーを、以下の例で使用する基材に塗布した:DESOPRIME CA7502は、PPG Aerospaceにより供給される耐食性エポキシプライマーである。100重量部のCA7502ベース成分を76.9重量部のCA7502B活性化剤及び19.2重量部のCA7502Cシンナーと混合する。
【0116】
対照例10〜14及び本発明の例6〜11についての例示的な配合物
ベース成分の調製
以下の各例についてのベース成分の組成物を表8でリストされた原料から調製した。それぞれが、性能特性、例えば耐薬品性、柔軟性及び耐候性を調整するために、3種の異なる構造のポリオールを含有する。K−FLEX A308は、第一級ヒドロキシル基及び260mgKOH/gの水酸基価を有する低粘度で100%活性の直鎖状飽和脂肪族ポリエステルジオールである。CAPA4101は、第一級ヒドロキシル基末端且つ216〜232mgKOH/gの水酸基価を有する四官能性ポリオールである。JONCRYL909は、中固形分ポリウレタンコーティング塗布のための111〜123mgKOH/gの水酸基価を有する速硬化性アクリルポリオールである。
【0117】
以下の例で使用するベース成分を、表2に要約された原料の量で高速分散型カウルスブレード(cowls blades)を使用して調製した。4分の1サイズの缶に、原料1〜11を低速で混合しながら充填し、透明な溶液を作製した。原料12及び13をゆっくりと装入し、良好な分散を示す良好な渦流のために、分散速度を適宜調整した。混合物を30分にわたる高速度の混合で分散させた。セラミック微小球粉砕媒体を混合物に装入し、約30分にわたり粉砕し続け、7の粉砕度(fineness grind)を達成した。その後、以下の特性を有する安定な顔料着色されたベース成分が得られた:ガロンあたりの重量12.09lbs/ガロン及び非揮発性物質の固形分含有率74.43パーセント。
【表8】
【0118】
ポリウレタンコーティングの調製
ポリウレタンコーティングを、以下の表にある特定量の、先で調製したベース成分、イソシアナートプレポリマー、溶媒、添加剤及び触媒を混合することで調製した。ポットライフ粘度、貼付乾燥時間及びその他のコーティング特性を評価した。
【0119】
耐薬品性をより高くするために、ポリイソシアナートのポリオールに対する当量比を1.50に設定した。航空宇宙産業用コーティングの用途の場合、重力式スプレーガンで塗布するために、コーティングの揮発性有機含有率(VOC)が420g/Lになるように配合し、固形分含有率が57.8%になるように配合する。対照例11〜15及び本発明の各例では、光潜在性触媒を、ポリウレタンコーティング混合物100部を基準として0.10部の水準で使用した。
【0120】
対照例
対照例10、11及び12
対照例10は、光潜在性触媒なしの従来のポリウレタンコーティング組成物である。対照例11は、0.10部の光潜在性触媒を有するポリウレタンコーティングである。対照例12は、0.10部の光潜在性触媒及び1.00部のアセトアセタート樹脂K−Flex XM−B301を有するポリウレタンコーティングである。これはアセトアセタート系の樹脂であり、固形分含有率が100重量パーセントであり、アセトアセタート当量(重量)が220である。
【表9】
【表10】
【0121】
表10からの結果は、対照例10が、3時間のポットライフを有するものの、乾燥に10時間かかったこと、対照例11が、光潜在性触媒の添加により3時間の貼付乾燥時間を達成したものの、ポットライフが減少して90分でゲル化したこと、対照例12が、光潜在性触媒とアセトアセタート樹脂との組み合わせで配合されると、さらに短いポットライフを有し、60分でゲル化したことを示した。これらの結果は、光潜在性触媒を添加することで、UV放射線に曝露した後の硬化が促進されるものの、ポットライフが非常に短くなることを示した。光潜在性触媒をアセトアセタート樹脂と一緒にポリウレタンコーティングに添加することで、ポットライフがより短くなった。
【0122】
対照例13及び14
対照例13は、0.10部の光潜在性触媒及び1.50部のアセチルアセトン溶媒を有するポリウレタンコーティングである。対照例14は、光潜在性触媒を0.10部、アセチルアセトンを1.50部及び1,150のアセトアセタート当量(重量)を有するアセトアセタート官能樹脂Setalux17−7202を4部有するポリウレタンコーティングである。
【表11】
【表12】
【0123】
表12に示されるように、光潜在性触媒をアセチルアセトン溶媒と併用してポリウレタンコーティング組成物に添加することで、効果的にポットライフが制御され、貼付乾燥時間が減少した。しかしながら、コーティングは曇っており、UVで促進した硬化後の光沢度がより低かった。ヘイズ及び光沢度におけるウェットエッジの結果も不良であった(対照例13)。対照例14では、光潜在性触媒及びアセチルアセトン溶媒に加えて、1,000超の当量(重量)を有するアセトアセタート官能樹脂(SETALUX17−7202)をポリウレタンコーティングに添加した。これは、UV硬化後のフィルム特性又はウェットエッジのどちらの結果においても改善を示さず、このことは、アセトアセタート樹脂の化学的な構造がフィルム特性及びウェットエッジタイムの改善に対して重要であることを示していた。
【0124】
本発明の例6〜11
対照例13に示されるように、光潜在性触媒の触媒作用を受けたポリウレタンコーティングにアセチルアセトン溶媒を添加することで、ポットライフが増加し、且つ貼付乾燥時間が減少したものの、曇った光沢度の低いフィルムができあがり、ウェットエッジ外観は不良であった。触媒されたポリウレタンコーティングは、ポットライフが少なくとも3時間であり、光沢度が高く、且つウェットエッジタイムが良好であること、例えばヘイズ値が50未満であり、且つ20度光沢度が80超であることが望ましい。
【0125】
以下の本発明の例(表13)では、0.10部の光潜在性触媒を使用してポリウレタンコーティングを触媒し、1.50部のアセチルアセトン溶媒を使用してポットライフを制御した。さらに、以下の量の異なるアセトアセタート樹脂を使用して、光沢度を改善し、且つウェットエッジタイムを改善した。
・ 例6は、0.25部のK−Flex XM−B301と組み合わされている。
・ 例7は、0.50部のK−Flex XM−B301と組み合わされている。
・ 例8は、1.00部のK−Flex XM−B301と組み合わされている。
・ 例9は、2.00部のK−Flex XM−B301と組み合わされている。
・ 例10は、0.25部のK−Flex7301と組み合わされている。
・ 例11は、0.50部のK−Flex7301と組み合わされている。
【表13】
【表14】
【0126】
表14に示されるように、光潜在性触媒、アセチルアセトン溶媒及びアセトアセタート樹脂の組み合わせを添加することで、ポリウレタンコーティングは、貼付乾燥時間の著しい低下を伴って、かなり素早く乾燥し、それでいて、良好なポットライフ、延びたウェットエッジタイム、並びに光沢度及びヘイズのような改善された特性を有していた。
【0127】
例6〜9を、220の当量(重量)を有する0.25〜2.0部のアセトアセタート樹脂K−FLEX XM−B301で変性した。変性されたポリウレタンコーティングの粘度は、周囲温度で3時間後も低いままであった。UVで促進した硬化の後のコーティング表面について、光沢度は80より高く、ヘイズは50未満であった。30分でのウェットエッジ領域は、高い光沢度及び低いヘイズも示し、これは、対照例よりもはるかに良好であることが明らかであった。アセトアセタート樹脂を添加することで、光沢度及びウェットエッジの外観が改善されたものの、過剰量のアセトアセタート樹脂は、硬化を遅延させ、貼付乾燥時間を増加させた。例えば、2.0部のK−FLEX XM−B301を触媒されたポリウレタンコーティングに添加した場合(例9)、貼付乾燥時間は、0.25部の樹脂を有する例6の組成物よりも2時間遅かった。例10及び11は、0.25部及び0.50部の、125の当量(重量)を有するアセトアセタート樹脂K−FLEX7301で変性され、ポットライフ、貼付乾燥時間、30分でのウェットエッジ、並びに光沢度及びヘイズのようなその他のフィルム特性において類似した結果を示した。
【0128】
本発明の例6〜11のコーティングを、UV硬化に曝露した後に、周囲温度で一晩にわたりさらに硬化させ、耐衝撃性、乾燥接着性、湿潤接着性及びスカイドロール耐性について、それらの特性を試験した。表14の結果は、コーティングが、UV放射で促進した硬化の後に屈強な物理特性を発現し、優れた耐衝撃性、スカイドロール流体耐性、乾燥接着性及び湿潤接着性を示したことを表した。
【0129】
光潜在性触媒、アセチルアセトン溶媒及びアセトアセタート樹脂の組み合わせをポリウレタンコーティングに添加することで、ポットライフが良好に制御され、著しく減少した貼付乾燥時間を伴って硬化が迅速になるのみならず、オーバースプレー領域において高い光沢度及び低いヘイズ値を伴ってウェットエッジタイムが改善された新たなコーティングが発見された。
【0130】
本明細書に示される本発明の様々な例はそれぞれ、本発明の範囲について非限定的であると理解される。
【0131】
本発明の特定の態様を例示の目的で上述してきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく本発明の詳細の変形例を数多く生成することが可能であることは、当業者にとって明らかであろう。
本発明の特定の態様を例示の目的で上述してきたが、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく本発明の詳細の変形例を数多く生成することが可能であることは、当業者にとって明らかであろう。