(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-119258(P2021-119258A)
(43)【公開日】2021年8月12日
(54)【発明の名称】熱処理炉、加熱装置、ワイヤ電極の製造方法および熱拡散処理方法
(51)【国際特許分類】
C21D 9/62 20060101AFI20210716BHJP
B23H 7/08 20060101ALI20210716BHJP
F27B 9/06 20060101ALI20210716BHJP
F27D 11/04 20060101ALI20210716BHJP
F27B 9/28 20060101ALI20210716BHJP
【FI】
C21D9/62 102
B23H7/08
F27B9/06 E
F27D11/04
F27B9/28
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-13123(P2020-13123)
(22)【出願日】2020年1月30日
(11)【特許番号】特許第6905106号(P6905106)
(45)【特許公報発行日】2021年7月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000132725
【氏名又は名称】株式会社ソディック
(72)【発明者】
【氏名】河原 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 智昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝
【テーマコード(参考)】
3C059
4K043
4K050
4K063
【Fターム(参考)】
3C059AB05
3C059DA06
3C059DB03
4K043AA02
4K043CA05
4K043EA06
4K043FA12
4K043HA04
4K050AA02
4K050BA03
4K050CD05
4K050CG28
4K050EA07
4K063AA05
4K063AA12
4K063BA03
4K063CA01
4K063CA04
4K063FA81
(57)【要約】
【課題】 ワイヤ電極を製造する際の熱拡散工程において、素線に電流を流すという抵抗加熱方式により消費電力を大幅に削減し、さらに回転電極の個数、配置に工夫を凝らすことにより、熱処理炉の小型化を実現する。
【解決手段】本発明は、ワイヤ電極用の素線を加熱して熱拡散処理を行う熱処理炉であって、電圧が印加される第1,第2,第3の回転電極と、回転電極を回転駆動するモータと制御装置を備え、第1,第2,第3の回転電極は、素線の走行方向上流側から第2の回転電極、第1の回転電極、第3の回転電極の順に素線が略V字状または略I
字状に掛け渡されるように配置され、素線を走行させるとともに、第1,第2,第3の回転電極に電圧を印加して、第1の加熱区間および第2の加熱区間を走行する前記素線に電流を流して加熱することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛鍍金後の素線を所定の速度で移動させながら前記素線を加熱して熱拡散処理を行う熱処理炉であって、
電圧が印加される第1の回転電極、第2の回転電極および第3の回転電極と、前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を回転駆動するモータと、制御装置を備え、
前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極は、前記素線の走行方向上流側から前記第2の回転電極、前記第1の回転電極、前記第3の回転電極の順に前記素線が略V字状または略I状に掛け渡されるように配置され、
前記制御装置からの指令により前記モータを駆動して前記素線を走行させるとともに、前記第1の回転電極に電圧を印加し、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極に前記第1の回転電極とは符号が反対の電圧を印加して、
前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間を走行する前記素線に電流を流して加熱することを特徴とする熱処理炉。
【請求項2】
前記素線の走行経路上にはダンサーローラ装置が設けられ、前記制御装置は、前記ダンサーローラ装置の位置を検出して前記モータの回転を制御することを特徴とする請求項1記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記第1の加熱区間および前記第2の加熱区間には断熱カバーが設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の熱処理炉。
【請求項4】
請求項1から3いずれかの熱処理炉と、前記熱処理炉に前記素線を送出する送出装置と、前記熱処理炉から排出された熱処理線を巻き取る巻取装置を備えた加熱装置。
【請求項5】
ワイヤ電極に使用される素線を加熱して熱拡散処理を行うワイヤ電極の製造方法であって、
前記素線は、第2の回転電極、第1の回転電極、第3の回転電極の順に掛け渡されることで形成される略V字状または略I状の経路を走行し、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間において前記素線に電流を流すことにより前記素線を加熱して熱拡散処理を行うことを特徴とするワイヤ電極の製造方法。
【請求項6】
ワイヤ電極に使用される素線を加熱して熱拡散処理を行う熱拡散処理方法であって、
前記素線は、第2の回転電極、第1の回転電極、第3の回転電極の順に掛け渡されることで形成される略V字状または略I状の経路を走行し、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間において前記素線に電流を流すことにより前記素線を加熱して熱拡散処理を行うことを特徴とする熱拡散処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤ電極製造において熱拡散処理を行うことが可能な熱処理炉および加熱装置に関する。また本発明は、黄銅のコアと亜鉛の被覆層を熱拡散させてワイヤ電極の表面に拡散層を生成するワイヤ電極の製造方法および熱拡散処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属加工に使われる方法の1つにワイヤ放電加工がある。このワイヤ放電加工は、放電加工用ワイヤであるワイヤ電極に電圧を印加して連続的に走行させながら、ワイヤ電極と被加工物との間で放電を生じさせ、その放電エネルギによって被加工物を溶断し、被加工物を所望の加工形状にカットする技術である。
【0003】
ワイヤ放電加工に使用されるワイヤ電極は、金属で成る線径がφ0.03mm以上φ0.3mm以下の長尺線状の工具電極である。ワイヤ電極の放電加工特性を向上させるために、従前から黄銅の芯線に亜鉛鍍金を施して被覆し、黄銅のコアと亜鉛の被覆層の二層以上の多層構造を有する、いわゆる複合ワイヤ電極が実施されている。複合ワイヤ電極は、性質の異なる複数の層を有していない構造の黄銅ワイヤ電極(以下、複合ワイヤ電極に対して単層ワイヤ電極という)と比べて、耐熱性および抗張力と導電性とを両立させる上で優位にある。
【0004】
しかしながら、鍍金によって黄銅の芯線に被覆された亜鉛の被覆層(亜鉛鍍金層)は、複合ワイヤ電極のコアとなる素線の芯線に定着しにくい。そのため、伸線加工における線引きによって縮径するときに、表面が荒れて、部分的には被覆層が剥離してしまうことがある。特に、電気亜鉛鍍金では、亜鉛の被覆層をあまり厚くすることができず、ワイヤ電極の標準的な線径であるφ0.2mmまで縮径することが容易ではない。
【0005】
よって黄銅の芯線に亜鉛鍍金を施した後に熱拡散処理を行ってワイヤ電極の外表面に拡散合金層を形成することで、線引きしても破壊されにくく表面粗さが向上したワイヤ電極が開発されている。
【0006】
特許文献1は、ワイヤ電極の製造方法に関する発明であって、熱拡散工程において亜鉛の被覆層を有する素線を複数のヒータを備える電気式の熱処理炉の中に導入し、そして、素線を熱処理炉の中に水平に張架して所定の一定速度で水平方向に直線走行させながら被覆層が所定の亜鉛濃度の亜鉛リッチ黄銅になるまで所定の一定温度雰囲気下に曝して所定時間だけ連続的に輻射的に加熱することが記載されている(その段落0052、
図3)。
【0007】
特許文献2は、放電加工用電極線に関する発明であって、電極線の製造方法として亜鉛メッキ工程(第1工程)、熱処理工程(第2工程)、伸線工程(第3工程)を有し、第2工程では所定の熱処理条件(熱処理の温度、時間)で亜鉛メッキした芯材を高温電気炉に通過させて熱処理を行なうこと、さらに高温電気炉では、α黄銅の表面にβ黄銅層が形成され、次いでβ黄銅層の外層にγ黄銅層が形成されることが記載されている(その段落0039、
図2)。
【0008】
特許文献3は、ワイヤ放電加工用電極線の製造方法に関する発明であって、芯線に電気亜鉛メッキ処理を施すことにより芯線の外周面に亜鉛層および外部銅層を形成して被覆線材を得て、次いで、被覆線材に対して熱処理炉などを用いて不活性ガス雰囲気中(例えば、窒素ガス雰囲気中)において300〜500℃で1〜6時間加熱する熱処理を施し、ワイヤ放電加工用電極線を得ることが記載されている(その段落0013−0015)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6124333号公報
【特許文献2】特許第6584765号公報
【特許文献3】特開平6−190635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来ワイヤ電極の外表面に拡散合金層を形成する熱拡散処理においては複数のヒータ等を備える電気式熱処理炉の炉内を300〜500℃の高温とし、芯線を一定時間載置もしくは通過させて加熱拡散するために炉内の温度を高温に維持する必要がある。そのため熱拡散処理工程における消費電力は膨大であり、ワイヤ電極の製造にかかる全体電力のうち50%を占めるまでになっていた。よって、製造現場では消費電力の削減が大きな課題となっている。
【0011】
さらに熱拡散処理においては、熱処理炉内で芯線を所定の速度で水平方向に直線走行しながら段階的に加熱して拡散させる方法が一般的であり、その場合は必要な熱拡散反応を得るために熱処理炉の全長を大きくする必要があるため、装置の大型化が避けられない。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みて、抵抗加熱方式を利用した熱拡散処理を行うことで省電力化を図り、さらに熱処理炉の小型化を実現し、熱拡散処理時間の短縮化を図ることを目的とする。その他の本発明のワイヤ電極の有利な点は、発明の詳細な説明において、その都度説明する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、亜鉛鍍金後の素線を所定の速度で移動させながら前記素線を加熱して熱拡散処理を行う熱処理炉であって、電圧が印加される第1の回転電極、第2の回転電極および第3の回転電極と、前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を回転駆動するモータと、制御装置を備え、前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極は、前記素線の走行方向上流側から前記第2の回転電極、前記第1の回転電極、前記第3の回転電極の順に前記素線が略V字状または略I状に掛け渡されるように配置され、前記制御装置からの指令により前記モータを駆動して前記素線を走行させるとともに、前記第1の回転電極に電圧を印加し、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極に前記第1の回転電極とは符号が反対の電圧を印加して、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間を走行する前記素線に電流を流して加熱することを特徴とする。
また本発明は、ワイヤ電極に使用される素線を加熱して熱拡散処理を行うワイヤ電極の製造方法であって、前記素線は、第2の回転電極、第1の回転電極、第3の回転電極の順に掛け渡されることで形成される略V字状または略I状の経路を走行し、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間において前記素線に電流を流すことにより前記素線を加熱して熱拡散処理を行うことを特徴とする。
さらに本発明は、ワイヤ電極に使用される素線を加熱して熱拡散処理を行う熱拡散処理方法であって、前記素線は、第2の回転電極、第1の回転電極、第3の回転電極の順に掛け渡されることで形成される略V字状または略I状の経路を走行し、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間において前記素線に電流を流すことにより前記素線を加熱して熱拡散処理を行うことを特徴とする。
【0014】
ここで「素線が略V字状に掛け渡されるように配置」されるとは、
図5のように第2の回転電極1A、第1の回転電極1Cおよび第3の回転電極1Bの順に素線を掛け渡した際に、第2の回転電極1Aと第1の回転電極1Cの間にある素線と第3の回転電極1Bと第1の回転電極1Cの間ある素線同士が角度をもって離反し、V字状になっていることをいう。
また「素線が略I状に掛け渡されるように配置」されるとは、
図2のように第2の回転電極1A、第1の回転電極1Cおよび第3の回転電極1Bの順に素線を掛け渡した際に、第2の回転電極1Aと第1の回転電極1Cの間にある素線と第3の回転電極1Bと第1の回転電極1Cの間ある素線同士が略並行となって、I字状になっていることをいう。
【0015】
本発明によれば、素線に熱拡散処理を施す際に、第1,第2,第3の回転電極に電圧を印加して素線に電流を流すことにより、素線自体の抵抗を利用して素線を加熱するため、従来の電気式熱処理炉と比較して大幅に消費電力を削減することが可能となり、さらには熱拡散処理時間の短縮化を図ることが可能となる。
また、第1,第2,第3の回転電極の配置構成により素線が略V字状または略I状に掛け渡されているため、より少ない空間で最長の加熱区間を得ることができ、熱処理炉の小型化を実現することが可能となる。
【0016】
本発明の熱処理炉は、前記素線の走行経路上にはダンサーローラ装置が設けられ、前記制御装置は、前記ダンサーローラ装置の位置を検出して前記モータの回転を制御することを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、素線の走行経路上にダンサーローラ装置を設け、ダンサーローラ(ダンサーアーム)の位置によって第1,第2,第3の回転電極の回転速度を変更するため、常に一定のテンション(張力)で素線を送ることが可能となる。一定のテンションがかかった素線は第1,第2,第3の回転電極に確実に接触するため、適切に素線を加熱することが可能となる。
【0018】
本発明の熱処理炉は、前記第1の加熱区間および前記第2の加熱区間に断熱カバーが設けられていることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、素線に電流を流す加熱区間である第1の加熱区間および第2の加熱区間に断熱カバーが設けられているため、放熱を抑制することが可能となり、より少ない消費電力で熱拡散処理を行うことが可能となる。
【0020】
本発明の加熱装置は、本発明の熱処理炉と、前記熱処理炉に前記素線を送出する送出装置と、前記熱処理炉から排出された熱処理線を巻き取る巻取装置を備える。
【0021】
本発明の加熱装置は、熱処理炉と、送出装置と、巻取装置を備えているため、素線の送り出しから熱処理線の巻き取りまで熱拡散処理工程を一つの装置で処理することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、ワイヤ電極を製造する際の熱拡散工程において、素線に電流を流すという抵抗加熱方式により消費電力を大幅に削減し、さらに回転電極の個数、配置に工夫を凝らすことにより、熱処理炉の小型化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の加熱装置100の概要を示す模式図である。
【
図2】本発明の熱処理炉10の概要示す側面模式図である。
【
図3】上記実施形態のダンサーローラ装置4の概要示す側面模式図である。
【
図4】上記実施形態の熱処理炉10の構成を示すブロック図である。
【
図5】上記実施形態の回転電極1A,1B,1Cのその他の配置構成を示す側面模式図である。
【
図6】上記実施形態のワイヤ電極の製造方法におけるプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の加熱装置100の概要を示す模式図であり、
図2は、本発明の熱処理炉10の概要示す側面模式図である。
図4は、上記実施形態の熱処理炉10の構成を示すブロック図である。
本発明の加熱装置100は、亜鉛鍍金後の素線21に電流を流すことで素線21を加熱して熱拡散処理を行うための装置であり、本発明の熱処理炉10と送出装置20と巻取装置30から構成される。
加熱装置100では、送出装置20から送られた亜鉛鍍金後の素線21を熱処理炉10内に導入し、所定の走行速度で走行させて抵抗加熱方式により素線21に熱拡散処理を行った後、熱処理線22として巻取装置30に巻き取る。
【0025】
熱処理炉10は、電極間に電圧を印加して素線21を加熱するための熱処理炉であり、回転電極1A(第2の回転電極)と、回転電極1B(第3の回転電極)と、回転電極1C(第1の回転電極)と、回転電極を回転するためのモータ11と、素線21を搬送する複数のローラ3,3・・・と、ダンサーローラ装置4と、冷却ポンプ5と、素線21の温度を検出する温度センサ61と、回転電極の温度を検出する温度センサ62と、制御装置7と、直流安定化電源8と、加熱区間を覆う断熱カバー91,91と、回転電極1A,1B,1Cを覆う冷却カバー93と、各種部材を配置するための筐体92を備える。
【0026】
図5は、上記実施形態の回転電極1A,1B,1Cのその他の配置構成を示す側面模式図である。
回転電極1A,1B,1Cは、円柱状の通電ローラであり、筐体92内の上方に回転電極1A,1Bが設けられ、回転電極1Aと回転電極1Bの間で筐体92内の下方に回転電極1Cが設けられている。回転電極1A,1B,1Cの周囲は冷却カバー93によりそれぞれ覆われている。
回転電極1A,1B,1Cは、その外周面に素線21が巻きまわされて、素線21がその間に張架されている。回転電極1A,1B,1Cは、各々に設けられたモータ11によって回転駆動され、回転電極1A,1B,1Cの回転により、素線21は所定の速度で熱処理炉10内を走行する。具体的には素線21は、筐体92に設けられた搬入口から挿入されてローラ3を介して上方に向かって走行し、回転電極1Aの回転により走行方向を変えて下方へ向かう。その後、回転電極1Cの回転により、今度は上方へ走行した後、回転電極1Bに巻きまわされて、搬出口から排出される。
回転電極1A,1B,1Cの配置は、
図2のように回転電極1A、回転電極1Cおよび回転電極1Bの順に素線を掛け渡した際に、回転電極1Aと回転電極1Cの間にある素線と回転電極1Bと回転電極1Cの間ある素線同士が略並行となって、I字状になっていてもよいし、
図5のように素線同士が角度をもって離反し、V字状になっていてもよい。
【0027】
回転電極1A,1Bは直流安定化電源8により負の電圧が印加され、回転電極1Cには正の電圧が印加される。そのため、回転電極1Aと回転電極1Cの間である第1の加熱区間K1および回転電極1Cと回転電極1Bの間である第2の加熱区間K2に張架された素線21には電流が流れて自身の抵抗により発熱する。具体的には、電流は回転電極1Aから素線21を通って回転電極1Cへ流れ、同様に回転電極1Bから素線21を通って回転電極1Cへ流れる。この電流に伴って、素線21の表面では熱拡散が生じ、良質な拡散層が形成される。素線21は第1の加熱区間K1で加熱され、さらに第2の加熱区間K2で加熱されることにより、拡散処理が急速に進み、素線21の外表面の拡散層は亜鉛リッチ黄銅化して熱処理線22として、外部へ排出される。
ここで、回転電極1A,1Bには負の電圧が印加され、回転電極1Cには正の電圧が印加されるとしたが、回転電極1A,1Bに正の電圧が印加され、回転電極1Cに負の電圧が印加されてもよい。
【0028】
モータ11は、回転電極1A,1B,1Cを回転させるためにそれぞれ設けられた部材であり、具体的にはサーボモータが使用される。モータ11は制御装置7からの指令信号に従って回転電極1A,1B,1Cの回転制御を行う。
【0029】
ローラ3,3・・・は、素線21を搬送するために筐体92内に設けられたものであり、素線21を弛ませないように間隔をあけて設置され、素線21を円滑に走行させる。
【0030】
図3は、上記実施形態のダンサーローラ装置4の概要示す側面模式図である。
ダンサーローラ装置4は、素線21に一定のテンション(張力)を与えた状態を保つための部材であり、素線21を巻きまわすためのダンサーローラ41と、ダンサーローラ41を先端に軸支したダンサーアーム42と、ダンサーアーム42の回転軸に取り付けられたダンサーアーム42の角度を検出するためのポテンショメータ43と、張力を付与するためのダンサーウエイト44から構成される。ダンサーウエイト44の大きさおよび位置を調整することにより、素線21に付与する張力を調整している。
【0031】
冷却ポンプ5は、回転電極1A,1B,1Cを冷却するための冷却装置である。液状の冷却媒体を循環させる管路51が冷却カバー93に取り付けられており、冷却ポンプ5によって管路51内の冷却媒体を循環させて冷却カバー93内の回転電極1A,1B,1Cを強制的に冷却する。
【0032】
温度センサ61は、素線21の温度を検出する検出器であり、例えば非接触式の温度センサである赤外線センサが用いられる。温度センサ61は、素線21の走行路の近傍で、かつ第1の加熱区間K1または第2の加熱区間K2の近傍に設けられる。
【0033】
温度センサ62は、回転電極1A,1B,1Cの温度、特に回転電極1A,1B,1Cに取り付けられたロータリーコネクタの温度を検出する検出器であり、例えば非接触式の温度センサである赤外線センサが用いられる。温度センサ62は回転電極1A,1B,1C全てに取り付けられていてもよいし、負荷の高い回転電極1Bのみに取り付けられていてもよい。
【0034】
制御装置7は、加熱装置100全体の制御を行う装置であり、制御部71と操作部72を備える。
【0035】
制御部71は加熱装置100全体の制御を行うものであり、例えばモータ11の駆動制御や、回転電極1A,1B,1Cに印加する印加電圧の制御、温度センサ61,62による異常検知等を行う。
【0036】
モータ11の駆動制御に関して、制御部71はダンサーアーム42に取り付けられたポテンショメータ43によってダンサーアーム42の角度を検出し、その角度の値によってモータ11に指令を行い、回転電極1A,1B,1Cの回転速度の制御を行う。具体的には、ダンサーアーム42が略水平の平衡位置の時には回転電極1A,1B,1Cの回転速度をそのまま維持し、ダンサーアーム42が上方に移動した場合は、回転電極1A,1B,1Cの回転速度を徐々に減速する。また、ダンサーアーム42が下方に移動した場合は、回転電極1A,1B,1Cの回転速度を徐々に加速する。
このようにダンサーアーム42の位置によって、回転電極1A,1B,1Cの回転速度を変更するため、常に一定のテンション(張力)で素線21を送ることが可能となる。
【0037】
また制御部71は、温度センサ61,62により検出された素線21の温度または回転電極1A,1B,1Cの温度が異常値である場合は、回転電極1A,1B,1Cへの電圧の印加を停止する。
【0038】
操作部72は、印加電圧値の設定等、加熱装置100に対する各種設定を行うものであり、例えば表示部と一体となったタッチパネルとすることが好適である。なお、操作部72は、タッチパネルに限定されるものではなく、表示部を設けてマウス、ジョイスティック、タッチペン等の入力装置やキーボード等のコマンド入力装置を用いてもよい。
【0039】
送出装置20は、亜鉛鍍金後の素線21が巻き取られたペイオフリール27からローラ26を駆動して素線21を熱処理炉10に搬出する装置である。
【0040】
巻取装置30は、熱拡散処理が終了し、熱処理炉10から排出された熱処理線22を、ローラ36を駆動することによりスプール37に巻き取る装置である。
【0041】
(ワイヤ電極の製造方法の流れ)
図6は、ワイヤ電極の製造方法における実施の形態のプロセスを示すフローチャートである。以下、具体的に、銅65重量%で亜鉛35重量%の黄銅で成るコアと拡散層の表層を有する線径がφ0.2mmの黄銅複合ワイヤ電極を製造するプロセスを実施例として本発明の好ましい実施の形態を説明する。
【0042】
ワイヤ電極を製造するプロセスの第1の工程は、黄銅の母線を生成するために、所定の割合で原材料の銅と亜鉛を溶解炉に投入して溶融させ混合する黄銅生成工程である。具体的に、溶解炉に投入した銅または亜鉛の濃度を測定しながら溶融している銅と亜鉛の混合比が最終的にワイヤ電極のコアにおける所望の重量比になるように、銅板または銅のインゴットと亜鉛の粉体を選択的に溶解炉に投入する。実施例では、銅と亜鉛の重量比が65/35であるように調整される。
【0043】
第2の工程は、母線を鋳造する母線鋳造工程である。母線は、所望の混合比で混合され溶融している黄銅を溶解炉から線状に連続的に流し出しながら冷却して生成される。母線の線径は、鋳造による成形が可能な範囲で後の亜鉛鍍金工程における芯線の線径に可能な限り近い大きさにされる。
【0044】
第3の工程は、線引ダイスに母線を順次通過させ、伸線加工によって母線を段階的に縮径して亜鉛鍍金工程における芯線を形成する芯線形成工程である。鋳造される母線には、製造にともなって生じる竹のような節目と表面に小さな凹凸があるので、少なくとも2回の伸線加工によって段階的に縮径すると同時に形成される芯線の線径を一定にする。
【0045】
第4の工程は、芯線形成工程で得た芯線に電気亜鉛鍍金法によって亜鉛鍍金を施す亜鉛鍍金工程である。亜鉛鍍金工程では、鍍金浴槽を挟んで芯線を所定の一定の張力をもって張架し、走行速度を検出して巻取速度を調整することによって芯線を一定の走行速度で走行させる。アルカリ電解線状浴槽で表面の被膜が除去され、水洗浄装置で表面に残っているアルカリ洗浄液が洗い流された後に、酸性の電気鍍金浴槽の中に導入される。鍍金浴槽から導出される素線は、温風ヒータで亜鉛鍍金面が十分に乾燥させられてから、巻取装置によってスプールに巻き取られる。
【0046】
第5の工程は、電気亜鉛鍍金法による亜鉛鍍金後の素線を本発明の加熱装置100にて連続的に加熱して拡散させる熱拡散工程である。具体的には、電気亜鉛鍍金によって亜鉛の被覆層が形成された素線21は、ペイオフリール27に巻き取られており、ローラ26を駆動して送出装置20から熱処理炉10の筐体92に設けられた搬入口から挿入される。素線21は回転電極1A,1B,1Cの回転により回転電極1Aから回転電極1Cへ第1の加熱区間K1を通過し、その後、回転電極1Cから回転電極1Bへ第2の加熱区間K2を通過する。素線21が走行している間、回転電極1A,1B,1Cに電圧が印加されて、第1の加熱区間K1および第2の加熱区間K2において素線21に電流が流れ、素線21の表面で熱拡散が生じ、拡散層が形成される。素線21は第1の加熱区間K1で加熱され、さらに第2の加熱区間K2で加熱されることにより、拡散処理が急速に進み、素線21の外表面の拡散層は亜鉛リッチ黄銅化して熱処理線22として、外部へ排出される。
素線21は、亜鉛の被覆層の全域、言い換えると、外周面全面が均一に亜鉛リッチ黄銅化したときに順次熱処理炉10の外に導出される。そして、熱処理炉10から導出した素線21は常温の空気に曝して自然冷却され、その後に拡散が停止して被覆層が固定される。
熱拡散処理が終了し、熱処理炉10から排出された熱処理線22は、巻取装置30のローラ36によってスプール37に巻き取られる。
【0047】
第6の工程は素線伸線工程であり、素線を線引ダイスに通して任意の所望の線径のワイヤ電極を生成する。黄銅複合ワイヤ電極線を製造することができる。
【0048】
以上に説明される本発明の熱処理炉、加熱装置、ワイヤ電極の製造方法および熱拡散処理方法は、具体的な実施の形態に限定されるべきではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、金属加工の技術分野に利用できる。特に、金属を高精度に切断して金型あるいは部品を製造するワイヤカットに適用される。本発明は、ワイヤガットにおいて加工精度に優れ加工速度が向上した改良された工具電極をより安価に提供する。本発明は、金属加工の技術分野の発展に寄与する。
【符号の説明】
【0050】
1A 第2の回転電極
1B 第3の回転電極
1C 第1の回転電極
3 ローラ
4 ダンサーローラ装置
5 冷却ポンプ
7 制御装置
8 直流安定化電源
10 熱処理炉
11 モータ
20 送出装置
21 素線
22 熱処理線
26 ローラ
27 ペイオフリール
30 巻取装置
36 ローラ
37 スプール
61,62 温度センサ
91 断熱カバー
92 筐体
93 冷却カバー
100 加熱装置
【手続補正書】
【提出日】2021年2月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛鍍金後の素線を所定の速度で移動させながら前記素線を加熱して熱拡散処理を行う熱処理炉であって、
電圧が印加される第1の回転電極、第2の回転電極および第3の回転電極と、前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を回転駆動するモータと、制御装置を備え、
前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を冷却し前記素線の接触表面温度を安定させ熱拡散処理を促進する冷却カバーと、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間には、加熱中の前記素線の表面温度低下を抑制して熱拡散処理を促進する断熱カバーが設けられており、
前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極は、前記素線の走行方向上流側から前記第2の回転電極、前記第1の回転電極、前記第3の回転電極の順に前記素線が略V字状または略I字状に掛け渡されるように配置され、
前記制御装置からの指令により前記モータを駆動して前記素線を走行させるとともに、前記第1の回転電極に電圧を印加し、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極に前記第1の回転電極とは符号が反対の電圧を印加して、
前記第1の加熱区間および前記第2の加熱区間を走行する前記素線に電流を流して加熱することを特徴とする熱処理炉。
【請求項2】
前記素線の走行経路上にはダンサーローラ装置が設けられ、前記制御装置は、前記ダンサーローラ装置の位置を検出して前記モータの回転を制御することを特徴とする請求項1記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記素線を搬送する複数のローラが設けられている請求項1または請求項2記載の熱処理炉。
【請求項4】
請求項1から3いずれかの熱処理炉と、前記熱処理炉に前記素線を送出する送出装置と、前記熱処理炉から排出された熱処理線を巻き取る巻取装置を備えた加熱装置。
【請求項5】
ワイヤ電極に使用される素線を加熱して熱拡散処理を行うワイヤ電極の製造方法であって、
前記素線は、第2の回転電極、第1の回転電極、第3の回転電極の順に掛け渡されることで形成される略V字状または略I字状の経路を走行し、前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を冷却しながら、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間において前記素線に電流を流すことにより前記素線を加熱して熱拡散処理を行うことを特徴とするワイヤ電極の製造方法。
【請求項6】
ワイヤ電極に使用される素線を加熱して熱拡散処理を行う熱拡散処理方法であって、
前記素線は、第2の回転電極、第1の回転電極、第3の回転電極の順に掛け渡されることで形成される略V字状または略I字状の経路を走行し、前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を冷却しながら、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間において前記素線に電流を流すことにより前記素線を加熱して熱拡散処理を行うことを特徴とする熱拡散処理方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
本発明は、亜鉛鍍金後の素線を所定の速度で移動させながら前記素線を加熱して熱拡散処理を行う熱処理炉であって、電圧が印加される第1の回転電極、第2の回転電極および第3の回転電極と、前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を回転駆動するモータと、制御装置
と、前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を冷却する冷却カバーと、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間には、加熱中の前記素線の表面温度低下を抑制する断熱カバーを備え、前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極は、前記素線の走行方向上流側から前記第2の回転電極、前記第1の回転電極、前記第3の回転電極の順に前記素線が略V字状または略I
字状に掛け渡されるように配置され、前記制御装置からの指令により前記モータを駆動して前記素線を走行させるとともに、前記第1の回転電極に電圧を印加し、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極に前記第1の回転電極とは符号が反対の電圧を印加して、
前記第1の加熱区間および
前記第2の加熱区間を走行する前記素線に電流を流して加熱することを特徴とする。
また本発明は、ワイヤ電極に使用される素線を加熱して熱拡散処理を行うワイヤ電極の製造方法であって、前記素線は、第2の回転電極、第1の回転電極、第3の回転電極の順に掛け渡されることで形成される略V字状または略I
字状の経路を走行し、
前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を冷却しながら、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間において前記素線に電流を流すことにより前記素線を加熱して熱拡散処理を行うことを特徴とする。
さらに本発明は、ワイヤ電極に使用される素線を加熱して熱拡散処理を行う熱拡散処理方法であって、前記素線は、第2の回転電極、第1の回転電極、第3の回転電極の順に掛け渡されることで形成される略V字状または略I
字状の経路を走行し、
前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を冷却しながら、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間において前記素線に電流を流すことにより前記素線を加熱して熱拡散処理を行うことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
ここで「素線が略V字状に掛け渡されるように配置」されるとは、
図5のように第2の回転電極1A、第1の回転電極1Cおよび第3の回転電極1Bの順に素線を掛け渡した際に、第2の回転電極1Aと第1の回転電極1Cの間にある素線と第3の回転電極1Bと第1の回転電極1Cの間ある素線同士が角度をもって離反し、V字状になっていることをいう。
また「素線が略I
字状に掛け渡されるように配置」されるとは、
図2のように第2の回転電極1A、第1の回転電極1Cおよび第3の回転電極1Bの順に素線を掛け渡した際に、第2の回転電極1Aと第1の回転電極1Cの間にある素線と第3の回転電極1Bと第1の回転電極1Cの間ある素線同士が略並行となって、I字状になっていることをいう。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明によれば、素線に熱拡散処理を施す際に、第1,第2,第3の回転電極に電圧を印加して素線に電流を流すことにより、素線自体の抵抗を利用して素線を加熱するため、従来の電気式熱処理炉と比較して大幅に消費電力を削減することが可能となり、さらには熱拡散処理時間の短縮化を図ることが可能となる。
また、第1,第2,第3の回転電極の配置構成により素線が略V字状または略I
字状に掛け渡されているため、より少ない空間で最長の加熱区間を得ることができ、熱処理炉の小型化を実現することが可能となる。
【手続補正書】
【提出日】2021年5月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛鍍金後の素線を所定の速度で移動させながら前記素線を加熱して熱拡散処理を行う熱処理炉であって、
電圧が印加される第1の回転電極、第2の回転電極および第3の回転電極と、前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を回転駆動するモータと、制御装置を備え、
前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を冷却する冷却カバーと、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間には、加熱中の前記素線の表面温度低下を抑制して熱拡散処理を促進する断熱カバーが設けられており、
前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極は、前記素線の走行方向上流側から前記第2の回転電極、前記第1の回転電極、前記第3の回転電極の順に前記素線が略V字状または略I字状に掛け渡されるように配置され、
前記制御装置からの指令により前記モータを駆動して前記素線を走行させるとともに、前記第1の回転電極に電圧を印加し、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極に前記第1の回転電極とは符号が反対の電圧を印加して、
前記第1の加熱区間および前記第2の加熱区間を走行する前記素線に電流を流して加熱することを特徴とする熱処理炉。
【請求項2】
前記素線の走行経路上にはダンサーローラ装置が設けられ、前記制御装置は、前記ダンサーローラ装置の位置を検出して前記モータの回転を制御することを特徴とする請求項1記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記素線を搬送する複数のローラが設けられている請求項1または請求項2記載の熱処理炉。
【請求項4】
請求項1から3いずれかの熱処理炉と、前記熱処理炉に前記素線を送出する送出装置と、前記熱処理炉から排出された熱処理線を巻き取る巻取装置を備えた加熱装置。
【請求項5】
ワイヤ電極に使用される素線を加熱して熱拡散処理を行うワイヤ電極の製造方法であって、
前記素線は、第2の回転電極、第1の回転電極、第3の回転電極の順に掛け渡されることで形成される略V字状または略I字状の経路を走行し、前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を冷却しながら、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間において前記素線に電流を流すことにより前記素線を加熱して熱拡散処理を行うことを特徴とするワイヤ電極の製造方法。
【請求項6】
ワイヤ電極に使用される素線を加熱して熱拡散処理を行う熱拡散処理方法であって、
前記素線は、第2の回転電極、第1の回転電極、第3の回転電極の順に掛け渡されることで形成される略V字状または略I字状の経路を走行し、前記第1の回転電極、前記第2の回転電極および前記第3の回転電極を冷却しながら、前記第2の回転電極と前記第1の回転電極の間である第1の加熱区間および前記第3の回転電極と前記第1の回転電極の間である第2の加熱区間において前記素線に電流を流すことにより前記素線を加熱して熱拡散処理を行うことを特徴とする熱拡散処理方法。