(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-119275(P2021-119275A)
(43)【公開日】2021年8月12日
(54)【発明の名称】圧力差抑制装置
(51)【国際特許分類】
E06B 5/00 20060101AFI20210716BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20210716BHJP
B62D 25/24 20060101ALI20210716BHJP
【FI】
E06B5/00 Z
B60R21/00 310N
B62D25/24 Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-13122(P2020-13122)
(22)【出願日】2020年1月30日
(71)【出願人】
【識別番号】520036684
【氏名又は名称】岡本 雅治
(74)【代理人】
【識別番号】110002686
【氏名又は名称】協明国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 雅治
(72)【発明者】
【氏名】加澤 慶久
【テーマコード(参考)】
2E039
2E239
3D203
【Fターム(参考)】
2E039AC00
2E239AC00
3D203BB06
3D203BB35
3D203CB45
(57)【要約】
【課題】簡易な構造でありながら、通常時も浸水時も扉を開閉し易い圧力差抑制装置を提供する。
【解決手段】圧力差抑制装置1は、第1空間10と第2空間20とを区画する区画壁14に貫通して設けられる開口部2に開閉自在に取り付けられる第1フラップ部3と、前記第1フラップ部に貫通して設けられるフラップ開口部4に開閉自在に取り付けられる第2フラップ部5とを備え、前記第1フラップ部は、前記区画壁の前記第1空間側における前記開口部の周縁部に回動自在に一方端が軸支され、圧力を受けると前記第1空間側への流動体の流入する許容するように他方端が開放される構成とされ、前記第2フラップ部は、前記フラップ開口部を通じて常時流動体の流入出を許容する構成とされていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1空間と第2空間とを区画する区画壁に貫通して設けられる開口部に開閉自在に取り付けられる第1フラップ部と、
前記第1フラップ部に貫通して設けられるフラップ開口部に開閉自在に取り付けられる第2フラップ部とを備え、
前記第1フラップ部は、前記区画壁の前記第1空間側における前記開口部の周縁部に回動自在に一方端が軸支され、圧力を受けると前記第1空間側への流動体の流入する許容するように他方端が開放される構成とされ、
前記第2フラップ部は、前記フラップ開口部を通じて常時流動体の流入出を許容する構成とされていることを特徴とする圧力差抑制装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1フラップ部の前記他方端は、圧力を受けると開放されることを特徴とする圧力差抑制装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記第1フラップ部は、前記開口部の前記周縁部を塞ぐように前記第2空間方向にばね付勢されていることを特徴とする圧力差抑制装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項において、
前記区画壁は開き扉もしくは車両のボディであること特徴とする圧力差抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間を隔てる区画壁を挟んだ内外の圧力差によって扉が開けられなくなることを防止できる圧力差抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
豪雨や台風などにより道路が冠水し、車両が浸水した際、車両内外の圧力差によって、水圧がかかり、扉が開けられず、閉じ込められてしまう事故が多発している。また車両に限らず、建物に設けられた扉であっても、床上浸水が起こり、例えば扉を挟んで一方の領域が水深30cmを超えてくると、内外の圧力差によって、水圧がかかり容易に扉を開けられなくなるという問題がある。さらにはこのように浸水時に起こる水圧による圧力差だけでなく、気密性の高い車両、建物に設けられる扉は、気圧による圧力差で扉の開け閉めがし難くなる場合がある。
そこで扉を挟んだ内外の圧力差を緩和する策として、下記特許文献1及び下記特許文献2に記載の装置が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、車体の一部に水を車内に導入するための導水路を形成し、この導水路に開閉弁を取り付け、開閉弁に一定以上の水圧がかかったと水圧センサが検出すると開閉弁を開とし、車内に水を導入する構成としたものが開示されている。
また特許文献2には、通常は車両の内外を連通する開口部を塞ぎ部材で塞いでおき、車両が浸水したときには塞ぎ部材を外す構成としたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−20581号公報
【特許文献2】特開平11−301384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のものは、水圧センサの検出結果に基づいて開閉弁が自動制御される構成であるので、コストがかかる上、浸水により電気系統が作動しなくなるおそれがある。また上記特許文献2に記載のもののように、車両が浸水したときに塞ぎ部材を取り外す構成のものは、塞ぎ部材の機能を知らなければ、非常時に役に立たないものとなる。たとえ塞ぎ部材の機能を知っていても、非常時にはパニックになり機転をきかせて塞ぎ部材を外せない可能性もある。
また上記特許文献1及び上記特許文献2は、車両が水没した際のみが想定されており、通常時の気圧差についての策が講じられているものではない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するため、簡易な構造でありながら、通常時も浸水時も扉を開閉し易い圧力差抑制装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の圧力差抑制装置は、第1空間と第2空間とを区画する区画壁に貫通して設けられる開口部に開閉自在に取り付けられる第1フラップ部と、前記第1フラップ部に貫通して設けられるフラップ開口部に開閉自在に取り付けられる第2フラップ部とを備え、前記第1フラップ部は、前記区画壁の前記第1空間側における前記開口部の周縁部に回動自在に一方端が軸支され、圧力を受けると前記第1空間側への流動体の流入する許容するように他方端が開放される構成とされ、前記第2フラップ部は、前記フラップ開口部を通じて常時流動体の流入出を許容する構成とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の圧力差抑制装置は、上述した構成とされているため、簡易な構造でありながら、通常時も浸水時も扉を開閉し易く、扉が圧力差によって開けられなくなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は本発明の一実施形態に係る圧力差抑制装置を模式的に示す斜視図、(b)は圧力差抑制装置の構成部材を模式的に示す分解斜視図である。
【
図2】(a)は同実施形態に係る圧力差抑制装置の適用例として扉装置に設けられた状態を示す正面図、(b)はその背面図の部分拡大図である。
【
図3】同実施形態に係る圧力差抑制装置を説明するための図であり、(a)は通常時の状態を示す模式的断面図、(b)は浸水時の状態を示す模式的断面図である。
【
図4】同実施形態に係る圧力差抑制装置の変形例を説明するための図であり、(a)は固定部材の取り付け位置が異なる例を示す模式的分解平面図、(b)は圧力差抑制装置が車両に適用される例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態における圧力差抑制装置1は、第1空間10と第2空間20とを区画する区画壁14に貫通して設けられる開口部2に開閉自在に取り付けられる第1フラップ部3と、第1フラップ部3に貫通して設けられるフラップ開口部4に開閉自在に取り付けられる第2フラップ部5とを備えている。
第1フラップ部3は、区画壁14の第1空間10側における開口部2の周縁部に回動自在に一方端3aが軸支され、圧力を受けると第1空間10側への流動体の流入する許容するように他方端3bが開放する構成とされている。
第2フラップ部5は、フラップ開口部4を通じて常時流動体の流入出を許容する構成とされている。
以下、詳述する。
【0011】
まずは
図1〜
図3を参照しながら、圧力差抑制装置1が扉装置100に設けられた例について説明する。よってこの実施形態では、第1空間10と第2空間20とを区画する区画壁14が扉パネル14となる。
図3に示すとおり、扉装置100は、建物内を区画し部屋を構成するために設けられる壁体11に貫通して設けられた出入口12に設けられ、開閉自在に構成されている。扉装置100は、戸枠13と、扉パネル14と、取手15とを備えている。戸枠13は、出入口12の上下両側及び開口幅方向両側の四周を囲むように構成され、上枠13a、戸先側縦枠13b及び吊元側縦枠13cを有している。戸枠13の構成は特に限定されないが、例えば木質系材料や金属製材料等からなり、出入口8の下側を区画する下枠(沓摺)を設けた構成としてもよい。吊元側縦枠13cには、扉パネル14を回転自在に連結するための回転連結部材16が固定され、扉パネル14は、吊元側縦枠13cの上端側部位及び下端側部位のそれぞれに回転連結部材16,16を固定した構成としている。
【0012】
扉パネル14は、上下方向に長尺な略矩形平板状とされている。扉パネル14の戸高寸法は、開閉される出入口12の開口高に応じた寸法とされる。扉パネル14は、木質系材料や金属製材料等からなり、後記する開口部2が設けられるものであれば、その材質は問わない。
扉パネル14の床17上、30cm前後のあたりに開口部2が貫通して設けられており、この開口部2を塞ぐように第1フラップ部3と第2フラップ部5とを備えた圧力差抑制装置1が設けられている。扉パネル14に設けられる開口部2の形状は
図1に示すように方形状に限定されず、円形状や三角形状等、いずれでもよく、要は、圧力差抑制装置1によって開口部2が覆われ塞がれればよい。開口部2は扉パネル14の表裏を貫通し、扉パネル14の厚み分の流動体の流出入する流路6が形成される(
図3(a)及び(b)参照)。また開口部2の形成位置は、
図2(a)に寸法dとして示すように開口部2の上端部の位置が床17上、20cm〜40cmの位置であることが望ましい。開口部2の形成位置が20cm以下の場合は、床上浸水により圧力差が生じても一般的な体型の大人であれば自力で扉パネル14を開けることが可能といわれているため、圧力差抑制装置1の必要性に乏しい傾向となる。一方、開口部2の形成位置が40cm以上になると、圧力差抑制装置1を備えていても、圧力差の抑制効果が弱まってしまう傾向となり、扉パネル14を自力で開けることが困難になると予想される。
【0013】
圧力差抑制装置1は、
図1(a)及び
図1(b)等に示すように第1フラップ部3と、第2フラップ部5と、ヒンジ部30とを備えている。図例の第1フラップ部3は、略長方形状の枠状体からなり、略方形の開口部2にあわせて開口部2を塞ぐように開口部2より若干大きく形成されている。具体的には第1フラップ部3は、開口部2より5mm〜20mm程度大きく形成されている(
図2(b)参照)。第1フラップ部3は、木質系材料、金属製材料、樹脂製材料等からなり、開口部2を塞ぐことができれば、防水・防汚加工等がされた段ボール材など紙製材料であってもよい。第1フラップ部3の一方端3a(図例は上端部)は、開口部2の上方に設けられたヒンジ部30によって開閉自在とされ、これにより第1フラップ部3の他方端3b(図例は下端部)はフリーな開放端とされる。第1フラップ部3は、流動体による圧力を受けると開放されるように構成されていることを要する。よって、第1フラップ部3は、固定部材として通常時は開口部2の周縁部を塞ぐように第2空間20方向にばね付勢するバネ式のいわゆるスプリング蝶番としてもよい。この場合、第1フラップ部3は通常時は納まりよく開口部2を塞いだ状態にできる。
【0014】
第1フラップ部3は、その中央部位に貫通して設けられたフラップ開口部4を備えている。フラップ開口部4は、床上浸水が生じた際には、第1空間10と第2空間20との圧力差を抑制・緩和するため、水・空気の流出入を受け入れる流出入口として機能する。その形状は図例のように方形状でもよいし円形状でもよいし、多角形状でもよい。
【0015】
第2フラップ部5は、フラップ開口部4を塞ぐように設けられ、常時、空気の流出入を許容する構成とする。図例の第2フラップ部5は、略方形状からなり、第1フラップ部3より小さく且つフラップ開口部4の形状・大きさにあわせてフラップ開口部4を塞ぐようにフラップ開口部4より若干大きく形成されている。具体的には第2フラップ部5は、フラップ開口部4より5mm〜20mm程度大きく形成されている(
図2(b)参照)。第2フラップ部5は、木質系材料、金属製材料、樹脂製材料等からなり、フラップ開口部4を塞ぐことができれば、段ボール材など紙製材料であってもよいし、薄いフィルム状のものであってもよい。また第2フラップ部5は、第1フラップ部3と同様に一方端50(
図2(b)、
図3(a)参照・図例では上端部)が固定され、他方端51がフリーな開放端とされる。第2フラップ部5は、第1フラップ部3に一方端50が固定され、固定方法は特に限定されず、接着剤で接着するようにしてもよいし、第1フラップ部3のようにヒンジで固定してもよい。
【0016】
次に
図3(a)及び
図3(b)を参照しながら、圧力差抑制装置1についてさらに説明する。
図3(a)は、通常時の取り付け状態を示している。ここに示すように第1フラップ部3は扉パネル14の開口部2を塞ぎ、第2フラップ部5は他方端51側が開放状態とされているため、常時空気が流出入可能な状態となっている。
これによれば、気密性の高い室内において、室内の換気機器などにより強制的に室外に空気が排気される場合、室内が負圧状態になっても、フラップ開口部4から空気が流入するため、扉パネル14を開け易いものとすることができる。
【0017】
図3(b)は、床上浸水した非常時の状態を示している。ここに示すように圧力差抑制装置1は、第2空間20側から床上浸水が始まった場合、開口部2の開口位置を超える水量に達すると、水圧によって第2フラップ部5と第1フラップ部3とが押され、第2フラップ部5及び第1フラップ部3の他方端51,3bが開放されるように構成されている。よって、第2空間20側から第1空間10側への水の流入を許容できるので、第1空間10側と第2空間20側の圧力差がなくなり、床上浸水が生じても扉パネル14を開けることができる。また本実施形態に係る圧力差抑制装置1は、電気的接続されるセンサで駆動したり、ユーザ側でなんらかの操作を行う必要がある構成ではないため、電気的な故障の懸念や操作要領を把握しておく必要がない。さらに本実施形態に係る圧力差抑制装置1は、一方向の空気抜き機能を有するものではなく、簡易な構造でありながら、双方向に空気・水等の流動体を流通させることができる。
【0018】
なお、第1フラップ部3の設置位置まで完全に浸水した後では、圧力差抑制作用が働かないので、第1フラップ部3の設置位置まで完全に浸水する前に扉パネル14を開ける必要がある。その意味でも、圧力差抑制装置1のどの位置まで浸水したら、閉じ込められてしまう可能性があるか、第1フラップ部3の設置位置を危険水位の目安にすることができる。また上述では第2空間20側から浸水が始まった場合を説明したが、第1空間10側から浸水した場合でも、水圧によって第2フラップ部5の他方端51が開放され、フラップ開口部4を通じて水を第1空間10側から第2空間20へ流入させることができる。よって第1空間10側と第2空間20側の圧力差がなくなり、第1空間10側から床上浸水が生じても扉パネル14を開けることができる。このときの扉パネル14の開き方向は内開き、外開き問わず、対応可能である。
【0019】
次いで
図4(a)及び
図4(b)を参照しながら、圧力差抑制装置の変形例について説明する。
図4(a)は、第1フラップ部3を固定するヒンジ部30が側方端部に設けられる例を示している。
図1〜
図3では、長方形の第1フラップ部3の短手側を上方端部とし、固定部材となるヒンジ部30を上端部に取り付けた例を示したがこれに限定されず、第1フラップ部3の短手側を側方端部とし、固定部材となるヒンジ部30を左側端部に取り付けてもよい。このとき、第2フラップ部5は、第1フラップ部3と同様に左側端部を第1フラップ部3に固定してもよい。すなわち、第2フラップ部5は、フラップ開口部4に被さるように固定され、フラップ開口部4を通じて常時流動体の流入出を許容する構成とされていれば、どの部位を固定してもよい。
【0020】
図4(b)は、圧力差抑制装置1を車両40のボディに適用した例を示している。
急な豪雨や台風等により道路が冠水し、車両が浸水してしまうと、やはり水圧が扉にかかり、扉が開けられず閉じ込められてしまう事故が多発している。そこで、
図4(b)に示すように、車両40のダッシュボード付近や車両40に乗車した際の足元付近等に圧力差抑制装置1を設ければ、車両40が浸水してから扉を自力で開けられる時間を圧力差抑制装置1が設置されていない場合に比べて長く確保できる。また車両40が浸水し始めると早期の段階で車外に脱出すべきであるが、実際に浸水を経験すると、車内という閉鎖空間にいる安心感があるため、車外へ脱出をしようとするタイミングが遅れることが指摘されている。圧力差抑制装置1を
図4(b)に示すような位置に設ければ、車両40の浸水が始まった比較的早い段階で車両40内に水が浸入するので、脱出タイミングを早めようという心理が働きやすい効果もある。
【0021】
以上、圧力差抑制装置1の構成は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、圧力差抑制装置1は、室内に設ける場合、扉装置100近傍の壁面に取り付けもよく、玄関扉に設けてもよい。また圧力差抑制装置1の取り付け位置は、
図2(a)や
図4(b)に示す位置に限定されず、また通常時は、犬・猫等の出入り口となるように構成してもよいが、盗難・不法侵入の突破口にならないように配慮が必要である。さらにここでは流動体として、空気・水を想定して説明したが、例えば第2空間20側から流れ込む土砂も含む。
そしてまた第1フラップ部3の周縁にゴムパッキン等を配し第1フラップ部3の開閉時の扉パネル14(区画壁14)への当たりを緩和させる構成としてもよい。
さらに車両40に適用する場合、ドアを閉めた際の圧抜き弁がついている車両は、その弁に替えて圧力差抑制装置1を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1 圧力差抑制装置
2 開口部
3 第1フラップ部
30 ヒンジ部
4 フラップ開口部
5 第2フラップ部
10 第1空間
20 第2空間
14 区画壁、扉パネル