水素ガス供給路と、水素ガス供給路における水素ガスの流量を検知する流量検知手段と、水素ガス供給路に設置され、水素ガスの流量の調整が可能な流量調整手段と、水素ガス供給路に設置され、水素ガスの供給の閉止が可能な開閉弁と、流量調整手段による水素ガスの流量の調整、及び、開閉弁の開閉を制御する制御手段とを備えた水素流量制御装置。
水素ガス供給路から水素ガスの供給を受ける水素ガス供給先において水素を用いて発電を行う場合に、制御手段が、発電された電力の使用量に応じて、水素ガスの流量を調整するように流量調整手段を制御する、請求項1または2に記載の水素流量制御装置。
制御手段が、水素ガス供給路から水素ガスの供給を受ける水素ガス供給先からの警告信号を受信した場合に、水素ガスの供給を閉止するように開閉弁を制御する、請求項1〜3のいずれかに記載の水素流量制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明するが、本発明は図面及び実施形態に限定されるものではない。
【0012】
以下、水素流量制御装置について、説明をする。水素流量制御装置は、水素ガス流量計と開閉弁を制御し、燃料電池やエンジンなどの水素ガスの供給先に適切な圧力の水素ガスを供給することができる。
図1は、本発明の実施の形態にかかる水素流量制御装置の一例を表す図である。水素流量制御装置1は、水素ガス供給路2、制御部3、水素ガス流量計4及び開閉弁5から構成される。
【0013】
水素ガスは、複数の水素ガスボンベを有するカードル6a〜6cから、水素ガス供給路2a〜2cに供給される。水素ガス供給路2a〜2cのそれぞれには、水素ガス流量計4a〜4cと、開閉弁5a〜5cが設けられている。水素ガス流量計4は、開閉弁5よりも水素ガスの供給もとであるカードル側に設置され、開閉弁5が水素ガス供給先7側に設置されていることが好ましい。
【0014】
水素ガス流量計4a〜4cと、開閉弁5a〜5cを通過した水素ガスは、それぞれ、水素ガス供給先7a〜7cに供給される。水素ガス供給先7は、水素ガスを使用する設備であれば特に限定されないが、例えば、燃料電池や、エンジンと発電機を備えた発電システムなどがあげられる。また、水素ガス供給先7は、同じ用途ではなく、異なる用途であってもよい。例えば、水素ガス供給先7aが燃料電池であり、水素ガス供給先7b、7cが発電システムであってもよい。
【0015】
また、
図1では、1つの水素ガス供給路2に対して、1つの開閉弁5が対応して設けられていたが、例えば、水素ガス供給路2aと2bが、水素ガス流量計4aと4bの先で連結され、さらにその先に1つの開閉弁5が設置されるような構成としてもよい。
【0016】
制御部3は、CPU、RAM、HDD、通信インターフェイスなどから構成される。制御部3は、格納された所定のプログラムを実行し、水素ガス流量計4及び開閉弁5の制御を実行する。制御部3は、通信インターフェイスを介して、水素ガス流量計4及び開閉弁5と有線又は無線により通信接続されており、相互に情報を送受信しながら、水素ガス流量計4及び開閉弁5の制御を行う。また、制御部3は時間を計時する内部タイマを備えている。RAMは、CPUのワークエリアである。HDDは、プログラムやデータを保存するための記憶領域である。また、制御部3は、コントロールパネルにより手動で操作することも可能である。
【0017】
制御部3は、水素ガス流量計4a〜4cのそれぞれを制御することで、水素ガス供給路2a〜2cの水素ガスの流量を調整することができる。例えば、制御部3は、内部タイマにより計時した時間に応じて、水素ガスの流量を調整する。例えば、深夜など、所定の時間帯は、他の時間帯よりも、水素ガスの流量を低く抑えて、水素ガスの供給量を少なくすることができる。この場合、水素ガスの流量の上限値は、時間帯ごとに、所定の値が定められている。この場合、水素ガス供給路2ごとに、その流量の設定は異なるものとすることができる。例えば、水素ガス流量計4aは、8時00分〜19時59分と、20時00分〜翌7時59分とで、水素ガスの流量を異なるものとして設定し、水素ガス流量計4bは、7時00分〜21時59分と、22時00分〜翌6時59分とで、水素ガスの流量を異なるものとして設定することができる。
【0018】
また、季節単位で、水素ガスの流量を調整することも可能である。例えば、電力の使用量が多くなる季節(例えば、夏場など)は、燃料電池やエンジンへの水素ガスの供給量を多くし、電力の使用量が少なくなる季節は、水素ガスの供給量を少なくするなどの制御を行うことができる。
【0019】
このように、時間帯や季節に応じて水素ガスの供給量を調整することで、水素ガスが必要以上に消費されるといったことを防ぐことができる。
【0020】
制御部3は、水素ガス供給路から水素ガスの供給を受ける水素ガス供給先において水素を用いて発電を行う場合に、発電された電力の使用量に応じて、水素ガスの流量を調整することも可能である。例えば、工場や病院などの事業設備に、本発明にかかる、水素流量制御装置を含む発電システムを導入したような場合に、事業設備において使用される単位時間当たりの電力量に応じて、水素ガスの流量を調整することができる。
【0021】
この場合、制御部3は、事業設備と通信により接続されており、該単位時間当たりの電力量に関する情報をリアルタイム或いは所定の時間ごとに受信する。事業設備において使用される単位時間当たりの電力量が少なければ、それにあわせて、水素ガスの供給量が少なくなるように、水素ガス流量計4を制御し、単位時間当たりの電力量が多くなれば、それにあわせて、水素ガスの供給量が多くなるように、水素ガス流量計4を制御する。
【0022】
制御部3は、水素ガス流量計4をそれぞれ別々に制御することができ、例えば、水素ガス供給先7aと水素ガス供給先7bとで、水素ガスの使用量が異なる場合、水素ガス供給路2aと、水素ガス供給路2cの水素ガスの流量も異なるものとなるように、水素ガス流量計4aと4bを制御することができる。
【0023】
このように、水素ガス供給先7における水素ガスの使用量に応じて水素ガスの供給量を調整することで、水素ガスが必要以上に消費されるといったことを防ぐことができる。
【0024】
制御部3は、水素ガス供給先7から警告信号を受信した場合、水素ガスの供給を閉止するように開閉弁5を制御することもできる。例えば、燃料電池などで、何らかの異常が発生したような場合に、警告信号が燃料電池から制御部3へ発信される。制御部3にて警告信号を受信すると、開閉弁5を閉止するよう制御することで、燃料電池への水素ガスの供給を止め、危険を回避することができる。
【0025】
その他、例えば、エンジンを利用した発電機において水素を使用するような場合、エンジンの温度や回転数が所定の範囲外となった場合などに異常が発生したとみなし、エンジン及び発電機を備える発電システムから制御部3へと、警告信号が発信されるような構成とすることもできる。制御部3にて警告信号を受信すると、開閉弁5を閉止するよう制御することで、エンジンへの水素ガスの供給が停止される。
【0026】
制御部3は、開閉弁5a〜5cについて、それぞれ個別に制御することができる。例えば、水素ガス供給先7aから警告信号が発信された場合、水素ガス供給先7aに対応する水素ガス供給路2aに設置された開閉弁5aのみを閉止することができる。
【0027】
また、制御部3は、水素ガス供給先7のメンテナンス時や水素ガスボンベの交換時に、開閉弁5を閉止するよう制御することもできる。この場合、制御部3に接続されたコントロールパネルを操作することにより、開閉弁5を閉止するように制御する。
【0028】
また、カードル6の水素ガスボンベが空になった場合は、水素ガス流量計4で、水素ガスの供給量(圧力)が低くなったことを検知し、制御部3へ通知される。制御部3は、水素ガスの供給量が低くなったことが通知されると、開閉弁5を閉止することで、水素ガス供給先7への水素ガスの供給を停止する。水素ガスボンベが新たなものと交換されれば、開閉弁5を制御して、水素ガスの供給が再開される。
【0029】
なお、
図1では、水素流量制御装置1に、複数の水素ガス供給路2を設け、水素ガス供給路2のそれぞれに水素ガス流量計4及び開閉弁5を設ける構成としたが、水素流量制御装置1に設ける水素ガス供給路2の数は、特に限定されない。したがって、制御部3は、1つの水素ガス供給路2に設置された、1つの水素ガス流量計4及び開閉弁5を制御するような構成とすることもできる。
【0030】
水素ガス流量計4は、水素ガス供給路における水素ガスの流量を検知する機能と、水素ガスの流量を調整する機能を有している。水素ガス流量計4は、10.0MPa以上の圧力で水素ガスボンベに充填された水素ガスを、燃料電池やエンジンなどの水素ガス供給先7で使用するのに最適な圧力に減圧するとともに、水素ガス供給先7に供給する水素ガスの流量を、適切な流量に調整する。水素ガス流量計4と制御部3は通信接続されており、検知した水素ガスの流量などの情報を制御部3に送信するとともに、制御部3から流量を制御するための信号を受信する。
【0031】
開閉弁5は、水素ガスの供給と停止(遮断)を行う部品で、内蔵された電磁弁にて制御を行う。水素ガス供給先7にて何らかの異常が発生した場合に、制御部3が水素ガス供給先7から警告信号を受信すると、開閉弁5が閉止される。また、水素流量制御装置1や水素ガス供給先7のメンテナンス時、水素ガスボンベの交換時などに、開閉弁5を閉じることにより、外部に水素ガスが流出するのを防ぐことができる。
【0032】
図2は、本発明にかかる水素流量制御装置の側面方向から視た断面図の一例を表す図である。水素流量制御装置1は、制御部3を内蔵したケースの上面に、水素ガス流量計4と開閉弁5、水素流量制御装置1内へ水素ガスを供給するためのバルブ8、水素ガス供給先7へ水素を供給するためのバルブ9を搭載したユニットが設計されている。水素ガスボンベから供給された水素ガスは、バルブ8を介して水素ガス供給路内2へ供給され、水素ガス流量計4を通過する。水素ガス流量計4を通過した水素ガスは、開閉弁5を通過して、バルブ9から水素ガス供給先7へ供給される。燃料電池やエンジンなど水素ガス供給先7への供給量に応じて水素ガス流量が変動するため、水素流量制御装置1の筐体のサイズは、水素ガスの供給量に応じて、その都度、設計することが好ましい。
【0033】
水素の供給元としては、複数の水素ガスボンベを搭載したカードル式を採用することができる。カードル6は、複数の水素ガスボンベを連結管で接続したものである。カードル6を用いることで、フォークリフトなどで輸送することができ、また、より多くの水素ガスを一度に運ぶことができる。カードル6内の水素ガスボンベは、連結管により結合されており、一つの配管として外部と接続できる構造を有している。
【0034】
次に、上で述べた、時間に応じて水素ガスの流量を調整する場合における、水素ガスの流量制御処理について説明する。
図3は、制御部における水素ガスの流量制御処理についてのフローチャートの一例を表す図である。
【0035】
まず、水素ガスの流量変更の開始時間となったか否かが判定される(ステップS1)。水素ガスの流量変更の開始時間になったと判定された場合は(ステップS1においてYES)、制御部3から水素ガス流量計4へ水素ガスの流量の調整を要求する信号が発信される(ステップS2)。水素ガス流量計4にて信号を受信すると、水素ガスの流量が所定の値となるように調整される。水素ガスの流量が調整されると、ステップS1へ戻り、一連の処理が繰り返される。
【0036】
一方、水素ガスの流量変更の開始時間になっていないと判定された場合は(ステップS1においてNO)、水素ガスの流量変更の終了時間となったか否かが判定される(ステップS3)。水素ガスの流量変更の終了時間になったと判定された場合は(ステップS3においてYES)、制御部3から水素ガス流量計4へ水素ガスの流量を変更前に戻すように要求する信号が発信される(ステップS4)。水素ガスの流量が変更前に戻されると、ステップS1へ戻り、一連の処理が繰り返される。水素ガスの流量変更の終了時間になったと判定された場合は(ステップS3においてNO)、ステップS1へ戻り、一連の処理が繰り返される。
【0037】
次に、上で述べた、発電された電力の使用量に応じて、水素ガスの流量を調整する場合における、水素ガスの流量制御処理について説明する。
図4は、制御部における水素ガスの流量制御処理についてのフローチャートの一例を表す図である。
【0038】
まず、対象となる事業設備における単位時間当たりの電力量に関する情報を、盛業部3において事業設備から受信する(ステップS11)。次に、受信した電力量に応じた水素ガスの流量を算定する(ステップS12)。算定した流量に応じて、制御部3から水素ガス流量計4へ水素ガスの流量の調整を要求する信号が発信される(ステップS13)。ステップS11〜S13の一連の処理が、繰り返し実行される。
【0039】
次に、本発明の水素流量制御装置を適用した発電システムについて説明をする。
図5は、本発明にかかる発電システムの構成の一例を示すブロック図である。発電システムは、水素流量制御装置1、カードル6、発電機ユニット10及び電力合成器16を備える。カードル6には、発電機ユニット10の燃料として水素流量制御装置1に供給される水素ガスが封入されている。
【0040】
水素流量制御装置1内の制御部3、カードル6の交換時に、開閉弁5を閉止するよう制御することができる。水素流量制御装置1は、複数のカードル6と接続しているため、カードル6aを交換している間も、カードル6b〜6dによって水素ガスを水素流量制御装置1に供給できる。そのため、カードル6の交換中も、電力を継続的に供給することができる。水素流量制御装置1は、発電機ユニット10に対して、適切なタイミングで適切な量の水素ガスを供給する。
【0041】
発電機ユニット10は、エンジン11、発電機12、整流器13、バッテリー14、又はインバータ15によって構成される。発電機ユニット10は発電システム内に複数設けられているため、発電機ユニット10aをメンテナンスしているときでも、発電機ユニット10b及び10cを稼働して、電力供給を継続的に行うことができる。また、発電機ユニット10aをメンテナンスしているときに、商用電源を補助的に活用して電力供給を行ってもよい。この場合、水素流量制御装置1内の制御部3は、稼動している発電機ユニットの数に応じて、水素ガスの流量を調整することができる。
【0042】
エンジン11では、水素流量制御装置1から供給された水素ガスが燃焼され、ピストンが運動する。エンジン11の温度や回転数が所定の範囲外となった場合、発電機ユニット10から水素流量制御装置1内の制御部へ警告信号が発信され、開閉弁が制御されることにより、発電機ユニット10への水素ガスの供給が停止される。
【0043】
発電機12では、エンジン11におけるピストンによって得られた運動エネルギーが電気エネルギーに変換される。発電機12においても、アース線を設けたり、火花が散らないようにしたりするなど、防爆処理を施しておくことが望ましい。
【0044】
整流器13は、発電機12から出力された交流電力を直流電力に整流し、整流した直流電力をバッテリー14又はインバータ15に出力する。バッテリー14は、整流器13から出力された直流電力を蓄電する。蓄電された電力は、発電機12における発電量が低下した場合などに、必要に応じてインバータ15に出力される。
【0045】
インバータ15は、整流器13又はバッテリー14から出力された直流電力を交流電力に変換する。インバータ15は発電機ユニット10のそれぞれに設けられており、それぞれのインバータ15が1つの電力合成器16に連結されている。電力合成器16は、複数のインバータ15から出力される交流電力を1つの電力に合成する。
【0046】
電力合成を行うためには、複数のインバータ15のうちの1つをマスターインバータ15a、それ以外をスレーブインバータ15b及び15cとして予め任意に選別し、スレーブインバータ15b及び15cから出力される交流電力の位相を、マスターインバータ15aから出力される交流電力の位相と一致させるように制御する。このように電力合成が行われることにより、複数の発電機ユニット10でそれぞれ発電された交流電力が、互いに打ち消しあうことなく合成され、発電した電力の損失を抑えることができるようになる。