【解決手段】チャンバと、チャンバウインドウと、造形テーブルと、造形テーブル駆動装置と、周壁と、光源と、走査装置と、を含む照射装置と、レーザ光の受光位置における光強度の実測値を取得する第1の受光体を有する第1の測定装置と、レーザ光の受光位置におけるビーム径の値を取得する第2の受光体を有する第2の測定装置とを、含み、造形中に、複数の光強度の設定値に基づいて出力された複数のレーザ光をそれぞれ測定する測定装置と、測定装置と接続され、光強度の実測値と、所定高さにおけるビーム径の値またはビーム径から求めた焦点位置の値との関係から求めた一次関数の傾きが所定の範囲外となったとき、異常が起きていると判定する制御装置と、を備える、積層造形装置が提供される。
前記制御装置は、前記光強度の設定値と、前記光強度の実測値との差の絶対値が、所定の閾値を超えるとき、異常が起きていると判定する、請求項1に記載の積層造形装置。
前記照射装置は、前記レーザ光の前記焦点位置を調整する可動レンズと、前記可動レンズを前記レーザ光の光軸方向に移動させるレンズアクチュエータと、を有する、フォーカス制御ユニットをさらに備え、
前記フォーカス制御ユニットは、前記第2の測定装置によって測定される前記レーザ光の前記焦点位置を、前記第2の受光体の鉛直方向の可動範囲内に調節する、請求項4に記載の積層造形装置。
前記制御装置は、前記測定装置による前記レーザ光の測定を行う際に、前記造形テーブルを鉛直下方に移動させる、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の積層造形装置。
造形中に、複数の光強度の設定値に基づいて出力された複数のレーザ光をそれぞれ測定して、受光位置における光強度の実測値と、受光位置におけるビーム径の値と、を取得し、
前記光強度の実測値と、所定高さにおける前記ビーム径の値または前記ビーム径から求めた焦点位置の値との関係から求めた一次関数の傾きが所定の範囲外となったとき、異常が起きていると判定する、三次元造形物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0015】
1.構成例
図1は、本発明の実施形態に係る積層造形装置1の構成を示した図である。
図1に示すように、積層造形装置1は、チャンバ11と、造形テーブル2と、材料層形成装置4と、照射装置5と、測定装置6と、制御装置8と、を備える。
【0016】
チャンバ11は、所望の三次元造形物が形成される領域である造形領域Rを有する造形室10を覆う。なお、積層造形装置1は造形中または造形後に固化層Sに対して切削加工を行う加工装置を備えてもよい。加工装置は、切削工具を把持する加工ヘッドを備え、加工ヘッドは加工ヘッド駆動装置により造形室10内の任意の位置に移動可能に構成される。このとき、蛇腹等でチャンバ11の内部を造形室10と駆動室に区切り、加工ヘッド駆動装置の大部分を駆動室に収容してもよい。すなわち、チャンバ11により覆われる少なくとも1つの空間のうち、造形領域Rを有する空間を造形室10という。
【0017】
チャンバ11は、実質的に密閉されるように構成される。チャンバ11は所定濃度の不活性ガスが供給されるとともに、材料層Mの固化時、すなわち焼結時または溶融・凝固時に発生するヒュームを含んだ不活性ガスを排出している。好ましくは、チャンバ11から排出された不活性ガスは、ヒュームが除去されチャンバ11に返送される。具体的には、チャンバ11には、不図示の不活性ガス供給装置と、不図示のヒュームコレクタが接続されている。不活性ガス供給装置は、例えば、空気から不活性ガスを生成する不活性ガス生成装置または不活性ガスが貯留されるガスボンベであり、チャンバ11内に所定濃度の不活性ガスを供給する。ヒュームコレクタは、例えば、電気集塵機またはフィルタであり、チャンバ11から排出された不活性ガスからヒュームを除去した上で、チャンバ11内に返送する。なお、本発明において、不活性ガスとは、材料層Mや固化層Sと実質的に反応しないガスをいい、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等から材料の種類に応じて適当なものが選択される。
【0018】
造形領域Rには、材料層Mが形成される造形テーブル2が設けられる。造形テーブル2は、造形テーブル駆動装置3によって鉛直方向に移動することができる。三次元造形物を形成する際には、造形テーブル2上にベースプレート21が載置されてもよい。このとき、ベースプレート21上に1層目の材料層Mが形成される。造形テーブル2の周りには、造形テーブル2の移動範囲において造形テーブル2を囲繞する周壁14が設けられる。
【0019】
造形テーブル駆動装置3としては、造形テーブル2を鉛直方向に沿って往復移動させることができる任意のアクチュエータを含むものが採用できる。本実施形態においては、造形テーブル駆動装置3は、造形テーブル2の直下に設けられるスライドベースと、ボールねじと、ボールねじを支持するガイドベースとを備える。ボールねじは、モータによって回転するネジ軸と、ボールを介してネジ軸と螺合するナットと、を含む。ナットはスライドベースの側面に固定される。
【0020】
材料層形成装置4が、造形室10内に設けられる。材料層形成装置4は、造形領域R上、すなわち造形テーブル2上に、所定厚みの材料層Mを形成する。材料層形成装置4は材料層Mを形成する任意の装置であってよいが、本実施形態の材料層形成装置4は、造形領域Rを有するベース台41と、ベース台41上に配置され水平1軸方向に移動可能に構成されたリコータヘッド42と、リコータヘッド42を駆動させる任意のアクチュエータであるリコータヘッド駆動装置43と、を含む。リコータヘッド42の両側面にはそれぞれブレードが設けられる。リコータヘッド42は、不図示の材料供給装置から金属の材料粉体が供給され、内部に収容した材料粉体を底面から排出しながら水平1軸方向に往復移動する。このとき、ブレードは排出された材料粉体を平坦化して材料層Mを形成する。
【0021】
照射装置5は、チャンバ11の上方に設けられ、材料層Mにレーザ光Lを照射して焼結または溶融させ固化層Sを形成する。
図2に示すように、照射装置5は、光源51と、コリメータ52と、フォーカス制御ユニット53と、走査装置54と、を有している。
【0022】
光源51は、レーザ光Lの光強度の設定値に基づきレーザ光Lを出力する。レーザ光Lは、材料層Mを焼結または溶融することが可能であり、例えば、CO
2レーザ、ファイバーレーザ、またはYAGレーザである。光源51から伸びる伝送ケーブルは、先端にクォーツブロックを有するコネクタが設けられ、コリメータ52と接続される。コリメータ52は、コリメータレンズを有し、光源51から出力されたレーザ光Lを平行光に変換する。フォーカス制御ユニット53は、レーザ光Lの焦点位置を調整する可動レンズ531と、可動レンズ531をレーザ光Lの光軸方向に移動させるレンズアクチュエータ532と、可動レンズ531を通過したレーザ光Lを集光する集光レンズ533と、を有し、コリメータ52で平行光に変換されたレーザ光Lを所定のスポット径に調整する。本実施形態においては、可動レンズ531は拡散レンズであるが、集光レンズであってもよい。走査装置54は、レーザ光Lを走査して材料層Mにレーザ光Lを照射して固化層Sを形成する。走査装置54は、具体的には第1のガルバノミラー541と、第1のガルバノミラー541を回転させる第1のミラーアクチュエータ542と、第2のガルバノミラー543と、第2のガルバノミラー543を回転させる第2のミラーアクチュエータ544とを有するガルバノスキャナである。第1のガルバノミラー541の回転角度を制御することでレーザ光Lの照射位置のX軸方向が制御され、第2のガルバノミラー543の回転角度を制御することでレーザ光Lの照射位置のY軸方向が制御される。
【0023】
第1のガルバノミラー541および第2のガルバノミラー543により照射位置が制御されたレーザ光Lは、レーザ光Lの透過窓である照射装置ウインドウ13およびチャンバウインドウ12を通して造形テーブル2上の材料層Mに照射され、固化層Sを形成する。照射装置ウインドウ13は、走査装置54の下方の、コリメータ52、フォーカス制御ユニット53および走査装置54を保持する筐体の下面に設けられる。チャンバウインドウ12は、チャンバ11の上面に設けられる。照射装置ウインドウ13およびチャンバウインドウ12は、レーザ光Lを透過可能な材料で形成される。具体的に、照射装置ウインドウ13およびチャンバウインドウ12の材料は、レーザ光Lの種類に応じて、石英ガラスもしくはホウケイ酸ガラスまたはゲルマニウム、シリコン、ジンクセレンもしくは臭化カリウムの結晶等から選択される。例えば、レーザ光LがファイバーレーザまたはYAGレーザの場合、照射装置ウインドウ13およびチャンバウインドウ12は石英ガラスで構成可能である。
【0024】
チャンバ11の上面には、チャンバウインドウ12を覆うようにヒューム拡散部15が設けられる。
図3に示すように、ヒューム拡散部15は、円筒状の筐体151と、筐体151内に配置された円筒状の拡散部材152を備える。筐体151と拡散部材152の間に不活性ガス供給空間153が設けられる。また、筐体151の底面には、拡散部材152の内側に開口部154が設けられる。拡散部材152には多数の細孔155が設けられており、不活性ガス供給空間153に供給された清浄な不活性ガスは細孔155を通じて清浄室156に充満される。そして、清浄室156に充満された清浄な不活性ガスは、開口部154を通じてヒューム拡散部15の下方に向かって噴出される。ヒューム拡散部15は、チャンバウインドウ12が固化層Sの形成時に発生するヒュームによって汚染されることを防止するとともに、レーザ光Lの照射経路を横断しようとするヒュームを照射経路から排除することを助ける。
【0025】
以上に説明した照射装置5の構成はあくまで一例であり、本実施形態に限定されるものではない。本実施形態において、熱レンズ効果が発生しうる光学部品は、具体的には、クォーツブロック、コリメータ52のコリメータレンズ、フォーカス制御ユニット53の可動レンズ531および集光レンズ533、照射装置ウインドウ13、チャンバウインドウ12である。また、光学系とはレーザ光Lの照射に係る部材の総称であり、本実施形態においては具体的に、照射装置5の各部と、照射装置ウインドウ13およびチャンバウインドウ12と、照射制御装置86を指す。
【0026】
なお、本実施形態の積層造形装置1は、チャンバウインドウ12の温度を測定する温度センサ63を備えていてもよい。温度センサ63は、例えば、赤外線サーモグラフィである。温度センサ63が赤外線サーモグラフィであるとき、温度センサ63は、チャンバウインドウ12の造形室10側の表面における最高温度を、チャンバウインドウ12の温度として取得する。レーザ光Lにより固化層Sを形成する際、チャンバウインドウ12の温度がレーザ光Lの光強度の設定値等のレーザ条件に応じて定まる所定の閾値を超えているとき、チャンバウインドウ12がヒューム等によって汚染されていると判定される。
【0027】
2.測定装置
測定装置6は、三次元造形物の造形中に、複数の光強度の設定値に基づいて出力された複数のレーザ光Lをそれぞれ測定する。
図4および
図5に示すように、測定装置6は、第1の測定装置61と第2の測定装置62とを含む。なお、
図4は、第1の測定装置61によりレーザ光Lを測定している状態を示し、
図5は、第2の測定装置62によりレーザ光Lを測定している状態を示している。
【0028】
測定装置6は、造形中にリコータヘッド42、加工ヘッドおよびレーザ光L等と干渉することや、材料粉体やヒュームにより汚染されることを防ぐため、測定時のみ造形室10に搬入されることが好ましい。測定装置6を移動させる搬送装置として、第1の測定装置61を移動させる第1の搬送装置71と、第2の測定装置62を移動させる第2の搬送装置74が設けられる。搬送装置としては任意のアクチュエータを含むものが採用できるが、例えば、モータによって回転するネジ軸と、ボールを介してネジ軸と螺合し各測定装置6と接続されるナットと、を有するボールねじである。また、本実施形態では、搬送装置は測定装置6を水平方向にのみ移動させるように構成されるが、鉛直方向にも移動させられるように構成されてもよい。測定装置6の搬送口として、チャンバ11または周壁14の少なくとも一方に形成される開口には、開閉可能なシャッタが設けられる。本実施形態においては、第1のシャッタ72が周壁14に、第2のシャッタ75がチャンバ11の側壁に設けられる。シャッタは、上下方向、左右方向または上下左右方向に摺動するよう構成されてもよいし、回動するよう構成されてもよい。第1のシャッタ72を開閉させる第1のシャッタ駆動装置73および第2のシャッタ75を開閉させる第2のシャッタ駆動装置76は任意のアクチュエータでよいが、例えば流体圧シリンダまたは電動シリンダである。なお、造形中とは、三次元造形物の造形を開始してから終了するまでの期間であり、より具体的には、所定のプロジェクトファイルの実行を開始してから、最後の固化層Sの形成を終了するまでをいう。
【0029】
第1の測定装置61は、レーザ光Lの受光位置における光強度の実測値を取得する第1の受光体611を有する。第1の測定装置61としては、例えばパワーメータ、より具体的にはサーモパイルセンサ式のパワーメータが使用される。レーザ光Lを受光した第1の受光体611は発熱し、発熱量に応じた光強度の実測値を電気信号として出力する。第1の測定装置61は、第1の搬送装置71により造形室10の内外に搬送される。この搬送に際して、第1のシャッタ72が開閉される。
【0030】
第1の受光体611の破損を防ぐため、第1の受光体611におけるレーザ光Lは、十分にデフォーカスした状態であることが望ましい。換言すれば、第1の受光体611は十分に下方に配置されることが望ましい。本実施形態においては、第1の受光体611は、測定時は周壁14に囲繞される空間に配置される。このとき、第1の測定装置61が造形テーブル2や固化層S等と干渉しないよう、造形テーブル2は、造形テーブル駆動装置3により下方に下げられる。
【0031】
第2の測定装置62は、レーザ光Lの受光位置におけるビーム径の値を取得する第2の受光体621を有する。第2の受光体621は、好ましくはさらに、レーザ光Lの受光位置における強度分布を取得できるように構成される。第2の測定装置62としては、例えばフォーカスモニタである。本実施形態においては、第2の受光体621は、前後(
図5における左右方向)に移動可能なアーム622に保持されている。好ましくは、第2の受光体621が鉛直方向に移動可能に構成される。例えば、第2の測定装置62が第2の受光体621を鉛直方向に移動させるアクチュエータを有していてもよいし、第2の測定装置62全体が第2の搬送装置74によって鉛直方向に移動されてもよい。本実施形態では、アーム622が鉛直方向に移動することで、第2の受光体621が鉛直方向に移動される。第2の受光体621が鉛直方向に移動可能に構成されることで、第2の測定装置62は、造形中に、所定の光強度の設定値に基づいて出力されたレーザ光Lについて、複数の高さにおけるビーム径および強度分布の値を測定することができる。複数の高さにおけるビーム径のデータに基づき、焦点位置が算出される。第2の測定装置62は、第2の搬送装置74により造形室10の内外に搬送される。この搬送に際して、第2のシャッタ75が開閉される。
【0032】
第2の受光体621が鉛直方向に移動可能に構成されるとき、測定時、フォーカス制御ユニット53は、第2の測定装置62によって測定されるレーザ光Lの焦点位置を、第2の受光体621の鉛直方向の可動範囲内に調節することが望ましい。これにより、より正確に焦点位置を取得することができる。換言すれば、正確に焦点位置を取得するにあたり、
図6に矢印Bで示される第2の受光体621の鉛直方向の可動範囲と、矢印Cで示されるレーザ光Lの焦点位置の調節可能範囲は、一部重複していることが望ましい。なお、レーザ光Lの焦点位置は、フォーカスシフトにより設定位置よりも上方に移動している可能性があるので、第2の受光体621はフォーカスシフトしたレーザ光Lの焦点位置を取得できる十分な範囲に可動できるように構成されることが望ましい。
【0033】
より正確に測定を行うために、測定装置6よって測定されるレーザ光Lの入射角度は、水平方向に対して90°であることが望ましい。本実施形態においては、造形テーブル2の中心にレーザ光Lを照射したとき、レーザ光Lの入射角度が90°となる。そのため、本実施形態においては、第1の受光体611および第2の受光体621の受光位置は、造形テーブル2の中心軸上にある。
【0034】
また、第1の測定装置61と第2の測定装置62は、一体として構成することも可能である。すなわち、レーザ光Lの受光位置における光強度の実測値を取得する第1の受光体611と、レーザ光Lの受光位置におけるビーム径の値を取得する第2の受光体621を有する装置が、第1の測定装置61および第2の測定装置62を兼ねる測定装置6として使用されてもよい。
【0035】
3.制御装置
次に、積層造形装置1を制御する制御装置8について説明する。
図7に示すように、制御装置8は、主制御装置81と、表示装置82と、照射制御装置86と、ドライバ83,84,851,852,853,854,861,862,863と、を有している。
【0036】
制御装置8は、積層造形装置1の各部を制御する。また、制御装置8は、測定装置6である第1の測定装置61および第2の測定装置62ならびに温度センサ63とそれぞれ接続され、第1の測定装置61、第2の測定装置62、温度センサ63を動作させるとともに、測定データを取得して解析し、光学系の異常の有無の判定を行う。
【0037】
主制御装置81は、CAM装置9が作成したプロジェクトファイルにしたがって、材料層形成装置4、造形テーブル2、第1の測定装置61、第2の測定装置62、第1の搬送装置71、第2の搬送装置74、第1のシャッタ72、第2のシャッタ75、温度センサ63等を制御する。また、照射制御装置86へと造形プログラムを送信する。主制御装置81は、記憶装置811と演算装置812とメモリ813とを有している。
【0038】
なお、CAM装置9は、所望の三次元造形物を形成するためのメインプログラムと、造形プログラムとを含むプロジェクトファイルを作成する。メインプログラムは、シーケンス番号をふられた複数のプログラム行で構成され、各プログラム行は、所定の層における焼結または溶融の指令や、測定装置6による光学系の判定に係る指令等を含む。また、造形プログラムは、レーザ光Lの照射位置等の指令を含む。
【0039】
記憶装置811は、通信線や可搬記憶媒体を介してCAM装置9から取得したプロジェクトファイルを記憶する。
【0040】
演算装置812は、記憶装置811に記憶したプロジェクトファイルを解析し、材料層形成装置4や造形テーブル2等を制御するための演算処理を実行する。
【0041】
メモリ813は、演算装置812による演算処理の過程で一時的に記憶する必要のある数値やデータを一時的に記憶する。
【0042】
また、メモリ813は、第1の測定装置61、第2の測定装置62および温度センサ63が取得したデータを記憶し、演算装置812は当該データを解析して光学系の異常の有無の判定を行う。換言すれば、本実施形態においては、光学系の判定に係る判定部は具体的には主制御装置81の演算装置812およびメモリ813である。但し、制御装置8は、判定部として主制御装置81と別体に設けられた演算装置およびメモリを有していてもよい。
【0043】
表示装置82は、主制御装置81に接続され、主制御装置81が通知するデータやエラーメッセージ等を表示する。光学系の異常が検出されたときは、当該異常に係るエラーメッセージが表示装置82に表示されてもよい。
【0044】
ドライバ83は、主制御装置81からの指令に基づいて、リコータヘッド駆動装置43に所要の駆動電流を供給する。また、主制御装置81は、ドライバ83を介してリコータヘッド駆動装置43から入力される動作信号に基づいてフィードバック制御を行う。
【0045】
ドライバ84は、主制御装置81からの指令に基づいて、造形テーブル駆動装置3に所要の駆動電流を供給する。これにより、造形テーブル駆動装置3のモータが回転し、造形テーブル2が上方向または下方向に移動する。また、主制御装置81は、ドライバ84を介して造形テーブル駆動装置3から入力される動作信号に基づいてフィードバック制御を行う。なお、制御装置8は、測定装置6によるレーザ光Lの測定を行う際に、造形テーブル2を鉛直下方に移動させる。
【0046】
ドライバ851,852,853,854は、主制御装置81からの指令に基づいて、それぞれ第1の搬送装置71と、第2の搬送装置74と、第1のシャッタ駆動装置73と、第2のシャッタ駆動装置76に所要の駆動電流を供給する。また、主制御装置81は、ドライバ851,852を介して第1の搬送装置71および第2の搬送装置74から入力される動作信号に基づいてそれぞれフィードバック制御を行う。第1のシャッタ駆動装置73および第2のシャッタ駆動装置76は、駆動源が電気であるときはフィードバック制御されることが望ましく、駆動源が流体圧であるときはオープン制御されることが望ましい。すなわち、主制御装置81は、ドライバ853,854を介して第1のシャッタ駆動装置73および第2のシャッタ駆動装置76から入力される動作信号に基づいてそれぞれフィードバック制御を行ってもよいし、オープン制御を行ってもよい。また、第1のシャッタ72および第2のシャッタ75の開閉をそれぞれ検出するためのリミットスイッチが設けられていてもよい。主制御装置81からの指令に基づき、第1の測定装置61および第2の測定装置62によるレーザ光Lの測定を行う際に、第1のシャッタ72および第2のシャッタ75が開かれ、第1の搬送装置71および第2の搬送装置74が造形室10の外部から造形室10の内部に移動される。また、第1の測定装置61および第2の測定装置62によるレーザ光Lの測定後、第1の搬送装置71および第2の搬送装置74が造形室10の内部から造形室10の外部に移動され、第1のシャッタ72および第2のシャッタ75が閉じられる。
【0047】
照射制御装置86は、主制御装置81から造形プログラムを受信し、この造形プログラムに基づいてドライバ861、ドライバ862およびドライバ863に指令を送出する。さらに、照射制御装置86は、光源51に指令を送出し、レーザ光Lの強度やオン/オフの切り替えを制御する。
【0048】
ドライバ861は、照射制御装置86からの指令に基づいて照射装置5の走査装置54に所要の駆動電流を供給する。走査装置54では、ドライバ861からの駆動電流に応じて第1のミラーアクチュエータ542が動作し、第1のガルバノミラー541が回転する。
【0049】
ドライバ862は、照射制御装置86からの指令に基づいて照射装置5の走査装置54に所要の駆動電流を供給する。走査装置54では、ドライバ862からの駆動電流に応じて第2のミラーアクチュエータ544が動作し、第2のガルバノミラー543が回転する。
【0050】
ドライバ863は、照射制御装置86からの指令に基づいて照射装置5のフォーカス制御ユニット53に所要の駆動電流を供給する。フォーカス制御ユニット53では、ドライバ863からの駆動電流に応じてレンズアクチュエータ532が動作し、可動レンズ531が移動する。
【0051】
ここで、光学系の判定方法について説明する。本実施形態においては、具体的に、光強度の実測値と所定高さにおけるビーム径の値または焦点位置の値とに基づく判定、光強度の設定値および実測値に基づく判定、強度分布に基づく判定、およびチャンバウインドウ12の温度に基づく判定を実施する。
【0052】
まず、光強度の実測値と所定高さにおけるビーム径の値または焦点位置の値とに基づく判定方法について説明する。光強度が強くなるほど、光学部品の吸熱量が上昇するため、熱レンズ効果によるフォーカスシフトが発生しやすくなる。また、光学部品が汚染されているほど、光学部品の吸熱量が上昇するため、熱レンズ効果によるフォーカスシフトが発生しやすくなる。すなわち、{(焦点位置の増加量)/(光強度の実測値の増加量)}および{(ビーム径の増加量)/(光強度の実測値の増加量)}と、光学部品の汚染度合とは、相関関係がある。
【0053】
照射装置5は、少なくとも2種以上の光強度の設定値に基づき、第1の測定装置61および第2の測定装置62にそれぞれレーザ光Lを照射する。光強度は、固化層Sの形成時よりも低い値に設定されてもよく、第1の受光体611および第2の受光体621の測定可能範囲を上回らない範囲で設定される。例えば、レーザ光Lの光強度は、200W以下の範囲で設定される。第1の測定装置61は、レーザ光Lの光強度の実測値を取得してメモリ813にデータを出力する。第2の測定装置62は、レーザ光Lの所定高さにおけるビーム径の値または焦点位置の値を取得してメモリ813にデータを出力する。第2の測定装置62が所定高さにおけるビーム径を取得する場合、第2の受光体621は鉛直方向に固定されているか、所定高さに位置決めされる。第2の測定装置62が焦点位置の値を取得する場合、第2の受光体621は複数高さにおいてレーザ光Lを受光し、ビーム径が一番小さくなる高さを焦点位置とする。
【0054】
演算装置812は、第1の測定装置61が測定した光強度の実測値と、第2の測定装置62が測定した所定高さにおけるビーム径の値またはビーム径から求めた焦点位置の値とから、一次関数を算出する。一次関数は、例えば、最小二乗法による線形近似によって求められる。この一次関数の傾きが所定の範囲外となったとき、例えば、光強度の実測値をx軸、焦点位置の値またはビーム径の値をy軸としたときの傾きが所定の閾値を超えたとき、光学系に異常が起きている、より具体的には許容範囲を超えたフォーカスシフトが発生していると判定される。フォーカスシフトが発生する原因としては、チャンバウインドウ12またはチャンバウインドウ12以外の光学部品が汚染されていることが考えられる。
【0055】
図8に示した例では、第1の測定装置61および第2の測定装置62は、15W、70W、126W、182Wのそれぞれに設定したレーザ光Lのビーム径の値または焦点位置の値を取得した。なお、焦点位置近辺では光強度の実測値とビーム径との比例関係に多少ずれが生じることがある。そのため、所定高さにおけるビーム径を取得するにあたっては、焦点位置から多少ずらした位置で測定することが望ましい。例えば本実施形態においては、焦点位置におけるビーム径は約100μmであるが、ビーム径が約130μm以上となる位置でビーム径を測定することが望ましい。
【0056】
次いで、光強度の設定値および実測値に基づく判定方法を説明する。照射装置5は、少なくとも1種以上の光強度の設定値に基づき、第1の測定装置61にレーザ光Lを照射する。光強度は、固化層Sの形成時よりも低い値に設定されてもよく、第1の受光体611の測定可能範囲を上回らない範囲で設定される。例えば、レーザ光Lの光強度は、200W以下の範囲で設定される。第1の測定装置61は、レーザ光Lの光強度の実測値を取得してメモリ813にデータを出力する。演算装置812は、任意に設定されたレーザ光Lの光強度の設定値と、レーザ光Lの光強度の実測値とを比較し、光強度の設定値と、光強度の実測値との差の絶対値が、所定の閾値を超えるとき、光学系に異常が起きていると判定する。所望の光強度が得られない原因としては、光学部品の汚染によるレーザ光Lの減衰、光源51の故障、照射制御装置86と光源51間の指令の出力または入力の異常等が考えられる。
【0057】
なお、上述の光強度の実測値と所定高さにおけるビーム径の値または焦点位置の値とに基づく判定と、光強度の設定値および実測値に基づく判定は、並行して行われてもよい。
【0058】
そして、強度分布に基づく判定方法を説明する。照射装置5は、所定の光強度の設定値に基づき、レーザ光Lを照射する。光強度は、強度分布をより正確に測定するため、測定が可能な範囲でフォーカスシフトが起こりにくい小さい値に設定されることが好ましい。例えば、レーザ光Lの光強度は、10Wから20W程度に設定される。第2の測定装置62の第2の受光体621は、少なくとも1つの高さにおいて、レーザ光Lの受光位置におけるビーム径の値と、強度分布を取得する。好ましくは、第2の受光体621は所定のピッチで鉛直方向に移動され、複数の高さにおいて都度、ビーム径の値と、強度分布を取得する。また、1つの高さにおいて強度分布を取得する場合は、第2の受光体621の受光位置におけるビーム径が、固化層Sの形成時の造形面におけるビーム径と略一致するよう、測定にあたりレーザ光Lの焦点位置が調節されることが望ましい。なお、造形面とは、固化層S形成時の材料層Mの上面位置である。このようにすれば、固化層Sの形成時の造形面におけるレーザ光Lにより近い強度分布のデータが取得できる。第2の測定装置62は、レーザ光Lのビーム径の値および強度分布のデータを、メモリ813に出力する。強度分布は、例えば、XY方向の光強度の分布である。ここで、記憶装置811には、レーザ光Lの各ビーム径における強度分布の基準範囲が予め保存されている。すなわち、光学系が正常な状態で、測定に使用する光強度と同一の設定のレーザ光Lについて、各ビーム径の強度分布を計測し、当該強度分布を基に基準範囲を算出しておく。演算装置812は、測定した各ビーム径における強度分布と基準範囲とを比較し、基準範囲内に収まっていないとき、異常が起きていると判定する。強度分布が異常となる原因としては、光源51または走査装置54の故障が考えられる。
【0059】
光強度の実測値と所定高さにおけるビーム径の値または焦点位置の値とに基づく判定、光強度の設定値および実測値に基づく判定、および強度分布に基づく判定は、造形中の任意のタイミングで行われる。例えば、造形を開始してから所定時間が経過する毎に判定を行うよう構成されてもよいし、所定数の固化層Sを形成する毎に判定を行うよう構成されてもよいし、固化層Sの累計面積が所定の値に達する毎に判定を行うよう構成されてもよい。また、造形開始直後にも判定を行うよう構成されるのが望ましい。
【0060】
なお、固化層Sの形成と並行して、チャンバウインドウ12の温度に基づく判定が行われる。温度センサ63は、固化層Sの形成時、チャンバウインドウ12の温度を取得してメモリ813にデータを出力する。演算装置812は、チャンバウインドウ12の温度と、レーザ光Lの光強度等のレーザ条件の設定値に応じて定まる所定の閾値とを比較する。チャンバウインドウ12の温度が閾値を超えているとき、チャンバウインドウ12が汚染されていると判定される。
【0061】
以上の判定方法を組み合わせることで、より正確に光学系の異常の原因を特定できる。例えば、フォーカスシフトが発生しているがチャンバウインドウ12の温度が正常であるとき、チャンバウインドウ12以外の光学部品が汚染されていると推定できる。
【0062】
光学系の異常が検出されたとき、制御装置8は、造形を中止し、表示装置82にエラーメッセージを表示するようにしてもよい。また、ある程度異常の兆候が検出された段階で、表示装置82に警告を表示する等してオペレータに確認を促すようにしてもよい。
【0063】
4.動作説明
続いて、
図9から
図11を参照して積層造形装置1の動作について説明する。
【0064】
積層造形装置1は、三次元造形物の造形を開始すると、まず、造形テーブル駆動装置3を動作させて、造形テーブル2を所定厚みの材料層Mの高さが形成できる位置まで下降させる(A101)。以降は材料層Mの形成にあたり、造形テーブル2は材料層Mの1層の厚み分下降される。続いて、積層造形装置1は、材料層形成装置4を動作させて、造形領域R上に、材料層Mを形成する(A102)。積層造形装置1は、照射装置5を動作させて材料層Mの所定位置にレーザ光Lを照射し、造形領域R上に固化層Sを形成する(A103)。固化層Sの形成と並行して、積層造形装置1は、温度センサ63によりチャンバウインドウ12の温度を測定し(A104)、チャンバウインドウ12の汚染度合を判定する(A105)。材料層Mの形成と固化層Sの形成は、所定数だけ繰り返される。
【0065】
造形中の任意のタイミングで、レーザ光Lについて、光強度の実測値と所定高さにおけるビーム径の値または焦点位置の値とに基づく判定、光強度の設定値および実測値に基づく判定、および強度分布に基づく判定が実施される。
【0066】
積層造形装置1は、造形テーブル駆動装置3を動作させて、造形テーブル2を第1の測定装置61の搬送の支障とならない位置まで下降させる(A106)。
【0067】
続いて、積層造形装置1は、照射装置5が照射するレーザ光Lの入射角度が水平方向に対して90°となるように設定する(A107)。また、第2の受光体621が鉛直方向に移動可能であってレーザ光Lの焦点位置における計測を行う場合は、積層造形装置1はレーザ光Lの焦点が第2の受光体621の可動範囲内に位置するように焦点位置の調整を行う(A108)。
【0068】
その一方で、積層造形装置1は、第1のシャッタ72と第2のシャッタ75を開き(A109)、第1の搬送装置71と第2の搬送装置74を動作させて、第1の測定装置61と第2の測定装置62を造形室10内の予め定めた位置まで搬送する(A110)。第1の測定装置61は、第1の受光体611がレーザ光Lの経路に入る位置に位置決めされる(
図4参照)。第2の測定装置62は、アーム622の前進時に第2の受光体621がレーザ光Lの経路に入り(
図5参照)、アーム622が後退時に第2の受光体621を含む第2の測定装置62がレーザ光Lの経路から外れる位置に位置決めされる(
図4参照)。
【0069】
続いて、積層造形装置1は、レーザ光Lの測定を行う(A111)。まず、光強度の実測値と所定高さにおけるビーム径の値または焦点位置の値とに基づく判定と、光強度の設定値および実測値に基づく判定が行われる。先に光強度を測定する場合、第2の測定装置62のアーム622は、最初は後退位置に位置決めされている。積層造形装置1は、照射装置5が照射するレーザ光Lの光強度を所定の値に設定し(A201)、レーザ光Lを照射する(A202)。このとき、出力されたレーザ光Lは第1の受光体611に照射される。こうして、第1の測定装置61はレーザ光Lの光強度の実測値を取得する(A203)。続いて、第2の測定装置62のアーム622が前進位置に位置決めされ(A204)、レーザ光Lは第2の受光体621に照射される。これにより、第2の測定装置62は、レーザ光Lのビーム径の実測値を取得する(A205)。このとき、レーザ光Lが照射されている状態で、レーザ光Lの照射経路に第2の受光体621が進入するようにしてもよい。
【0070】
焦点位置を取得する場合は、アーム622を後退位置に位置決めした後(A206)、第2の受光体621の高さを変更し(A207)、再度アーム622を前進位置に移動させ、第2の受光体621にレーザ光Lを照射させることを繰り返す。こうして、第2の測定装置62はレーザ光Lの所定高さにおけるビーム径の値または焦点位置の値を取得する。レーザ光Lの光強度が異なる値に設定され(A201)、以上の手順が繰り返される。積層造形装置1は、光強度の実測値と、所定高さにおけるビーム径の値または焦点位置の値との関係から求めた一次関数の傾きが所定の範囲外となるとき、光学系の異常があると判定する。また、積層造形装置1は、光強度の設定値と、光強度の実測値との差の絶対値が、所定の閾値を超えるとき、光学系の異常があると判定する(A208)。
【0071】
なお、光強度の実測値と所定高さにおけるビーム径の値または焦点位置の値とに基づく判定を行うにあたり、フォーカスシフト量が飽和している必要がある。そのため、第2の測定装置62によるレーザ光Lの測定を行う前に、熱レンズ効果が発生しうる光学部品に十分な時間レーザ光Lを透過させることが望ましい。本実施形態においては、第2の測定装置62によるレーザ光Lの測定を行う前に、1、2分程度レーザ光Lが照射され続ける。第1の測定装置61によるレーザ光Lの光強度の測定は、このときになされてもよい。
【0072】
次いで、強度分布に基づく判定が行われる。積層造形装置1は、照射装置5が照射するレーザ光Lの光強度を所定の値に設定し(A209)、レーザ光Lを照射する(A210)。一方で、第2の測定装置62のアーム622が所定の高さに位置決めされ(A211)、アーム622が前進位置に移動される(A211)。これにより出力されたレーザ光Lは第2の受光体621に照射されることになる。こうして、第2の測定装置62は第2の受光体621の現在の位置におけるビーム径の値および強度分布を取得する(A213)。複数高さにおける強度分布を取得する場合、アーム622を後退位置に位置決めした後(A214)、アーム622、ひいては第2の受光体621が異なる高さに設定され(A211)、以上の手順が繰り返される。積層造形装置1は、強度分布がビーム径の値に対応する所定の基準範囲内に収まっていないとき、光学系の異常があると判定する(A215)。
【0073】
積層造形装置1が光学系の異常があると判定した場合には、造形が中断される。光学系の異常があると判定されなければ、造形が続けられる。積層造形装置1は、第1の搬送装置71と第2の搬送装置74を動作させて、第1の測定装置61と第2の測定装置62を造形室10外に搬送する(A112)。
【0074】
その後、積層造形装置1は、第1のシャッタ72と第2のシャッタ75を閉じる(A113)。そして、積層造形装置1は、造形テーブル駆動装置3を動作させて、造形テーブル2をレーザ光Lの測定前の位置まで上昇させる(A114)。
【0075】
そして、積層造形装置1は、これらの動作を、三次元造形物の造形が終了するまで繰り返す。なお、以上に示した工程は、発明の趣旨を損なわない範囲で、前後してもよいし並行して行われてもよい。