【解決手段】本発明は、それを必要とする対象に治療有効量のEZH2阻害剤を投与することによって対象におけるSWI/SNF関連ガンの症状を治療または軽減する方法であって、対象が脳および中枢神経系ガン、頭頸部ガン、腎臓ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、白血病、肺ガン、リンパ腫、骨髄腫、肉腫、乳がん、ならびに前立腺ガンからなる群から選択されるガンを有する方法を提供する。例えば、SWI/SNF関連ガンは、SWI/SNF複合体またはSWI/SNF複合体の1以上の成分の発現の減少および/または機能の喪失を特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の詳細な説明
本発明は、一つには、EZH2阻害剤があるバイオマーカーまたは遺伝子の変更された発現および/または機能喪失によって特徴づけられるSWI/SNF関連ガンを効果的に治療できるという発見に基づく。特に、選択されたバイオマーカーまたは遺伝子の変更された発現および/または機能喪失を有する腫瘍または腫瘍細胞は、本発明のEZH2阻害剤に対して感受性である。したがって、本発明は、治療有効量のEZH2阻害剤を対象に投与することによって、特にあるバイオマーカーまたは遺伝子の変更された発現および/または機能喪失に関連するガンを治療することによって、対象におけるガンの症状を治療または軽減する方法を提供する。例えば、バイオマーカーは、SWI/SNF複合体の1つの成分である。例えば、遺伝子は、神経分化遺伝子、細胞周期遺伝子、阻害遺伝子、腫瘍抑制遺伝子、ヘッジホッグ経路遺伝子、myc経路遺伝子およびヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子からなる群から選択される。
【0041】
ヒトにおけるSWI/SNF複合体は、少なくとも進化的に保存されたコアサブユニットおよび可変サブユニットを含む。進化的に保存されたコアサブユニットは、SNF5(SMARCB1、INI1またはBAF47とも呼ばれる)、SMARCA4(BRM/SWI2関連遺伝子1、BRG1とも呼ばれる)、BAF155、およびBAF170を含む。可変サブユニットは、BAF53(AまたはB)、BAF60(A、BまたはC)、BAF57、BAF45(A、B、C、またはD)を含む。他のサブユニットは、ARIDI1A(SMARCF1とも呼ばれる)、ARID1B、SMARCA2(ブラーマホモログ、BRMとも呼ばれる)、ATRX、BAF200、BAF180(PBRM1とも呼ばれる)、およびブロモドメイン含有7(BRD7)である。SWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分は、複合体の任意の成分、例えば、本明細書中に記載されているかまたは当該技術分野で公知の成分/サブユニットであり得る。
【0042】
本明細書中で提示される任意の方法において、神経分化遺伝子は、CD133(PROM1とも呼ばれる)、DOCK4、PTPRK、PROM2、LHX1、LHX6、LHX9、PAX6、PAX7、VEFGA、FZD3B、FYN、HIF1A、HTRA2、EVX1、CCDC64、またはGFAPであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本明細書中で提示される任意の方法において、細胞周期阻害遺伝子は、CDKN1A、CDKN2A、MEN1、CHEK1、IRF6、ALOX15B、CYP27B1、DBC1、NME6、GMNN、HEXIM1、LATS1、MYC、HRAS、TGFB1、IFNG、WNT1、TP53、THBS1、INHBA、IL8、IRF1、TPR、BMP2、BMP4、ETS1、HPGD、BMP7、GATA3、NR2F2、APC、PTPN3、CALR、IL12A、IL12B、PML、CDKN2B、CDKN2C、CDKN1B、SOX2、TAF6、DNA2、PLK1、TERF1、GAS1、CDKN2D、MLF1、PTEN、TGFB2、SMAD3、FOXO4、CDK6、TFAP4、MAP2K1、NOTCH2、FOXC1、DLG1、MAD2L1、ATM、NAE1、DGKZ、FHL1、SCRIB、BTG3、PTPRK、RPS6KA2、STK11、CDKN3、TBRG1、CDC73、THAP5、CRLF3、DCUN1D3、MYOCD、PAF1、LILRB1、UHMK1、PNPT1、USP47、HEXIM2、CDK5RAP1、NKX3−1、TIPIN、PCBP4、USP44、RBM38、CDT1、RGCC、RNF167、CLSPN、CHMP1A、WDR6、TCF7L2、LATS2、RASSF1、MLTK、MAD2L2、FBXO5、ING4、またはTRIM35であってよいが、これらに限定されるものではない。
【0044】
本明細書中で提示される任意の方法において、腫瘍抑制遺伝子はBIN1であり得るが、これに限定されるものではない。本明細書中で用いられる場合、「腫瘍抑制遺伝子」という用語は、その当該技術分野で通常理解される意味を有し、すなわち、その発現および正常な機能が、腫瘍表現型を抑制するか、またはアポトーシスを誘導するか、または両方である遺伝子である。いくつかの実施形態では、腫瘍抑制遺伝子は細胞周期阻害遺伝子を包含する。それらの機能に基づく腫瘍抑制因子の例示的カテゴリーとしては、限定されるものではないが以下のものが挙げられる:
(1)細胞周期を阻害する遺伝子;
(2)細胞周期をDNA損傷につなげる遺伝子。細胞中に損傷されたDNAがある場合、細胞は分裂しないはずである。損傷を修復できる場合、細胞周期は継続し得る。損傷を修復できない場合、細胞はアポトーシス(プログラムされた細胞死)を開始するはずである;
(3)腫瘍細胞が分散するのを防止し、接触阻止の損失をブロックし、そして転移を阻害する遺伝子。これらの遺伝子およびそれらのコード化されたタンパク質は転移抑制因子とも呼ばれる;そして
(4)DNA修復タンパク質。これらの遺伝子における突然変異はガンのリスクを増加させる。
【0045】
本明細書中で提示される任意の方法において、ヘッジホッグシグナル伝達経路遺伝子は、GLI1、PTCH1、SUFU、KIF7、GLI2、BMP4、MAP3K10、SHH、TCTN3、DYRK2、PTCHD1、またはSMOであり得るが、これらに限定されるものではない。
【0046】
本明細書中で提示される任意の方法において、myc経路遺伝子は、MYC NMI、NFYC、NFYB、Cyclin T1、RuvB様1、GTF2I、BRCA1、T細胞リンパ腫浸潤および転移誘導タンパク質1、ACTL6A、PCAF、MYCBP2、MAPK8、Bcl−2、転写開始タンパク質SPT3ホモログ、SAP130、DNMT3A、mothers against decapentaplegicホモログ3、MAX、mothers against decapentaplegicホモログ2、MYCBP、HTATIP、ZBTB17、形質転換/転写ドメイン関連タンパク質、TADA2L、PFDN5、MAPK1、TFAP2A、P73、TAF9、YY1、SMARCB1、SMARCA4、MLH1、EP400またはlet−7であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本明細書中で提示される任意の方法において、ヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子はEZH2であり得るが、これに限定されるものではない。
【0048】
本発明の化合物は、EZH2またはその突然変異体のヒストンメチルトランスフェラーゼ活性を阻害し、したがって、本発明の1つの態様において、本明細書中で開示される化合物は、ある状態および疾患を治療または予防するための候補である。本発明は、ガンの症状または前ガン状態を治療、予防または軽減するための方法を提供する。方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体、溶媒和物、もしくは立体異性体を投与することを含む。治療することができるガンの例としては、髄芽腫、乏突起神経膠腫、卵巣透明細胞腺がん、卵巣類子宮内膜腺癌(endomethrioid adenocarcinoma)、卵巣漿液性腺がん、膵管腺がん、膵臓内分泌腫瘍、
悪性ラブドイド腫瘍、星状細胞腫、非定型奇形腫ラブドイド腫瘍、脈絡叢がん、脈絡叢乳頭腫、上衣細胞腫、グリア芽腫、髄膜腫、神経膠腫、乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、松果体芽細胞腫、がん肉腫、脊索腫、性腺外胚細胞腫瘍、腎外に発生するラブライド腫瘍、神経鞘腫、皮膚扁平上皮細胞がん、軟骨肉腫、軟組織の明細胞肉腫、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、類上皮細胞(epitheloid)肉腫、腎髄質がん(renal medullo carcinoma)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫および特定不能(NOS)肉腫が挙げられる。あるいは、本発明の化合物によって治療されるガンは非NHLガンである。
【0049】
本発明は、ガンもしくは前ガンの治療において、またはそのようなガンもしくは前ガンの治療に有用な薬剤の調製のための、本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物の使用をさらに提供する。治療できるガンの例としては、髄芽腫、乏突起神経膠腫、卵巣透明細胞腺がん、卵巣類子宮内膜腺癌(endomethrioid adenocarcinoma)、卵巣漿液性腺がん、膵管腺がん、膵臓内分泌腫瘍、悪性ラブドイド腫瘍、星状細胞腫、非定型奇形腫ラブドイド腫瘍、脈絡叢がん、脈絡叢乳頭腫、上衣細胞腫、グリア芽腫、髄膜腫、神経膠腫、乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、松果体芽細胞腫、がん肉腫、脊索腫、性腺外胚細胞腫瘍、腎外に発生するラブライド腫瘍、神経鞘腫、皮膚扁平上皮細胞がん、軟骨肉腫、軟組織の明細胞肉腫、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、類上皮細胞(epitheloid)肉腫、腎髄質がん(renal medullo carcinoma)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫および特定不能(NOS)肉腫が挙げられる。別法として、本発明の化合物を、非NHLガンの治療のため、または非NHLガンの治療に有用な薬剤の調製のために使用できる。
【0050】
本発明の化合物は、タンパク質(たとえば、ヒストン)メチル化を調節するため、例えば、ヒストンメチルトランスフェラーゼまたはヒストンデメチラーゼ酵素活性を調節するために使用できる。本発明の化合物はタンパク質メチル化を調節するためにインビボまたはインビトロで使用できる。EZH2によるメチル化調節が腫瘍特に、選択されたバイオマーカー/遺伝子の変更された発現および/または機能喪失を有する腫瘍の形成に関与するという驚くべき発見に基づいて、本明細書中で記載される化合物はこれらの疾患の治療、すなわちおおよそ、対応する正常細胞におけるそのレベルまでメチル化を減少させるか、またはメチル化を回復するための好適な候補である。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明の化合物は、SWI/SNF複合体関連腫瘍または腫瘍細胞の増殖を選択的に阻害することができる(
図1〜9で示すとおり)。したがって、本発明は、SWI/SNF複合体関連ガンの症状または前ガン状態を、本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物によって治療、予防または軽減するための方法を提供する。本発明は、SWI/SNF複合体関連ガンもしくは前ガン状態の治療において、またはそのようなガンもしくは前ガンの治療に有用な薬剤の調製のための本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物の使用をさらに提供する。
【0052】
ガンを有する対象のEZH2阻害剤に対する反応性を測定するための方法も本発明で提供される。方法は、対象からサンプル(核酸サンプルまたはタンパク質サンプル)を得るステップ、SWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分の減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を検出するステップ、この成分の発現および/または機能を検出するステップを含み、そのような減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失の存在は、対象がEZH2阻害剤に対して反応性であることを示す。「サンプル」という語は、対象由来の任意の生物学的サンプルを意味し、細胞、組織サンプル、体液(粘液、血液、血漿、血清、尿、唾液、および精液を含むが、これらに限定されるものではない)、腫瘍細胞、および腫瘍組織を包含するが、これらに限定されるものではない。サンプルは治療または試験を受けている対象によって提供され得る。あるいは、サンプルは当該技術分野における慣例的な実施にしたがって医師によって得られる。
【0053】
本発明はまた、対象からサンプルを得、SWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分の減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を検出することにより、ガンまたは前ガン状態に対する対象の素因を測定する方法も提供し、そのような減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失の存在は、対象がSWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分のそのような機能喪失のない対象と比較して、ガンまたは前ガン状態を発症する素因がある(すなわち高いリスクがある)ことを示す。
【0054】
「素因がある」という語は、ガンまたは前ガン状態に関連して本明細書中で用いられる場合、対象間のガンまたは前ガン状態を有することについての他のリスク因子(たとえば、化学物質/環境、食物、喫煙歴など)が同じである状況下で、SWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分の減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を有しない別の対象がガンまたは前ガン状態にかかる可能性と比較して、SWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分の減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を有する対象がガンまたは前ガン状態にかかる可能性が増加すること(たとえば、可能性が少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、150%、200%、またはそれ以上増加)を意味すると理解されるべきである。
【0055】
本発明に関連して「リスク」は、ある事象が特定の期間にわたって起こる可能性に関し、対象の「絶対」リスクまたは「相対」リスクを意味し得る。絶対リスクは、関連時間コホートの測定後の実際の観察に関連して、または関連期間追跡された統計的に妥当な歴史的コホートから得られた指数値に関連して測定できる。相対リスクは、低リスクコホートの絶対リスクまたは平均集団リスクのいずれかと比較した対象の絶対リスクの比を指し、これは、どのように臨床リスク因子を評価するかによって変わり得る。所与の試験結果について陽性事象と陰性事象の割合であるオッズ比も無変換に対して通常用いられる(オッズは、式p/(1−p)(式中、pは事象の起こる確率および(1−p)は事象の起こらない確率である)にしたがう)。
【0056】
したがって、本発明は、対象におけるSWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分の減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失の遺伝子スクリーニングによって対象のための個人化医療、治療および/またはガン管理を提供する。例えば、本発明は、対象のEZH2阻害剤に対する反応性を測定し、そして対象がEZH2阻害剤に対して反応性である場合、対象に治療有効量のEZH2阻害剤、またはその薬剤的に許容される塩、溶媒和物、もしくは立体異性体を投与することによって、ガンの症状または前ガン状態を治療、予防または軽減するための方法を提供する。反応性は、対象からサンプルを得、そしてSWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分(例えば、SNF5、ARID1AまたはATRX)の減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を検出することによって決定され、そのような機能喪失の存在は、対象がEZH2阻害剤に対して反応性であることを示す。
【0057】
他の例では、ガンまたは前ガン状態に対する対象の素因を定期的に測定することによる、対象におけるガン管理の方法を提供する。方法は、対象からサンプルを得るステップ、ならびにSWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分の減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を検出するステップを含み、そのような減少した発現、ハプロ不全、および/または機能の喪失の存在は、対象が、SWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分のそのような減少した発現、ハプロ不全、および/または機能の喪失のない対象と比較して、ガンまたは前ガン状態を発症する素因があることを示す。
【0058】
単なる例示的な実施形態において、本明細書中で提示される治療方法は、(a)対象から得られた生物学的サンプルから核酸サンプルまたはタンパク質サンプルを集め、(b)サンプル中のSWI/SNF複合体の成分の発現レベルまたは機能レベルを測定し、(c)対照サンプル中のSWI/SNFの成分の発現レベルまたは機能レベルを測定し;(d)試験したサンプル中のステップ(b)で測定された成分の発現レベルまたは機能レベルを、対照サンプル中のステップ(c)で測定された成分の発現レベルまたは機能レベル(または基準値)と比較し;(e)ステップ(b)で測定された成分の発現レベルまたは機能レベルが、ステップ(c)で測定された成分の発現レベルまたは機能レベルと比較すると減少または失われる場合(例えば、ハプロ不全または機能喪失)、治療の候補として対象を特定し;そして(f)ステップ(e)で特定された対象に治療有効量のEZH2阻害剤を投与するか、またはステップ(e)で特定された対象のために治療レジメンを選択するステップを含む。対象サンプル中の成分の発現レベルまたは機能レベルは、対照サンプル中の成分の発現レベルまたは機能レベルと比較すると、例えば、10%、25%、50%または1倍、2倍、5倍もしくはそれ以上減少する。当該技術分野で公知の任意の好適な方法を利用して、SWI/SNF複合体の成分の発現レベルまたは機能レベルを測定できる。いくつかの実施形態では、対象は悪性ラブドイド腫瘍、髄芽腫または非定型奇形腫ラブドイド腫瘍を有する。いくつかの実施形態では、成分は、SNF5、ARID1AまたはATRXである。
【0059】
例えば、同定された対象を最新の全米総合ガン情報ネットワーク(NCCN)ガイドラインで記載されるような看護治療の基準で治療することができる。
【0060】
例えば、対照サンプルは、健常な正常対象から得られる。別法として、対照サンプルは、SWI/SNF複合体に関連するガンに苦しんでいない、SWI/SNF複合体に関連するガンと診断されていない、またはSWI/SNF複合体に関連するガンを発症するリスクがない対象から得られる。
【0061】
1つの好ましい態様において、本発明は、EZH2阻害剤に対する対象の反応性を判定し、対象がEZH2阻害剤に対して反応性であり、対象が脳およびCNSガン、腎臓ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、白血病、リンパ腫、骨髄腫、および/または肉腫からなる群から選択されるガンを有する場合、対象に治療有効量のEZH2阻害剤を投与することによって、対象におけるガンを治療またはガンの症状を軽減するための方法を提供する。そのような反応性は、対象からサンプルを得、そしてSNF5、ARID1A、および/またはATRXの減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を検出することによって判定され、減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失の存在は、対象がEZH2阻害剤に対して反応性であることを示す。
【0062】
別の好ましい態様において、本発明は、EZH2阻害剤に対する対象の反応性を判定し、そして対象がEZH2阻害剤に対して反応性である場合、治療有効量のEZH2阻害剤を対象に投与することによって、対象における悪性ラブライド腫瘍の症状を治療または軽減するための方法を提供する。そのような反応性は、対象からサンプルを得、そしてSNF5、ARID1A、および/またはATRXの減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を検出することによって判定され、減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失の存在は、対象がEZH2阻害剤に対して反応性であることを示す。
【0063】
別の好ましい態様において、本発明は、EZH2阻害剤に対する対象の反応性を判定し、対象がEZH2阻害剤に対して反応性である場合、治療有効量のEZH2阻害剤を対象に投与することによって対象における髄芽腫の症状を治療または軽減するための方法を提供する。そのような反応性は、対象からサンプルを得、そしてSNF5、ARID1A、および/またはATRXの減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を検出することによって判定され、減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失の存在は、対象がEZH2阻害剤に対して反応性であることを示す。
【0064】
別の好ましい態様において、本発明は、EZH2阻害剤に対する対象の反応性を判定し、そして対象がEZH2阻害剤に対して反応性である場合、治療有効量のEZH2阻害剤を対象に投与することによって、対象における非定型奇形腫ラブドイド腫瘍の症状を治療または軽減するための方法を提供する。そのような反応性は、対象からサンプルを得、そしてSNF5、ARID1A、および/またはATRXの減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を検出することによって判定され、減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失の存在は、対象がEZH2阻害剤に対して反応性であることを示す。
【0065】
悪性ラブドイド腫瘍(MRT)および非定型奇形腫ラブドイド腫瘍(ATRT)は、非常に悪性であり、局所的に浸潤性であり、頻繁に転移し、そして特に致死的である、脳、腎臓、および軟組織の極度に攻撃的な小児がんである。それらは特徴的には二倍体であり、ゲノム異常はないが、SMARCB1(SNF5、INI1またはBAF47とも呼ばれる)、SWI/SNFクロマチンリモデリング複合体のコア成分の損失のほぼ完全な浸透率によって特徴づけられる。SMARCB1の両アレル不活性化は本質的にMRTおよびATRTにおける唯一の遺伝的事象であり、このことは、この遺伝子異常に関する推進力の役割を示唆する。
【0066】
いかなる理論によっても拘束されるものではないが、本発明の化合物は細胞のH3K27メチル化を特異的に阻害し、SMARCB1突然変異体MRT細胞の選択的アポトーシス死に至る。例えば、化合物AでのSMARCB1欠失MRT細胞系のインビトロ治療は、nM範囲のIC
50値で強力な抗増殖効果を誘導し;一方、対照(野生型)細胞系はごくわずかしか影響を受けなかった(
図10Cおよび表6)。さらに、本発明の化合物は、ヘッジホッグ経路遺伝子、MYCおよびEZH2の発現を抑制しつつ、神経分化、細胞周期阻害および腫瘍抑制の遺伝子を誘導する。例えば、最高7日までのG401SMARCB1欠失細胞の化合物A治療は、CD133、DOCK4およびPTPRKの発現を強力に誘導し、そして細胞周期阻害剤CDKN1AおよびCDKN2Aおよび腫瘍抑制因子BIN1を上方調節し、すべては時間依存的であった(
図14B)。同時に、ヘッジホッグ経路遺伝子、MYCおよびEZH2の発現は減少した。特に、14日間化合物Aに暴露されたG402SMARCB1欠失細胞はニューロン様形態をとった(
図14C)。
【0067】
したがって、本発明は、(a)対象から得られるサンプルにおいて、神経分化遺伝子、細胞周期阻害遺伝子および腫瘍抑制遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定し;(b)ステップ(a)における少なくとも1つの遺伝子の減少した発現レベルを有する対象を選択し;そして(c)ステップ(b)において選択された対象に有効量の本発明の化合物を投与し、かくして対象においてガンの症状を治療または軽減することによって、それを必要とする対象においてガンの症状を治療または軽減する方法をさらに提供する。
【0068】
本発明はさらに、(a)ヘッジホッグ経路遺伝子、myc経路遺伝子およびヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、対象から得られたサンプルにおいて測定し;(b)ステップ(a)において少なくとも1つの遺伝子の増加した発現レベルを有する対象を選択し;そして(c)ステップ(b)において選択された対象に有効量の本発明の化合物を投与し、かくして対象におけるガンの症状を治療または軽減することによって、それを必要とする対象においてガンの症状を治療または軽減するための方法も提供する。
【0069】
(a)対象から得られたサンプルにおいて、神経分化遺伝子、細胞周期阻害遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定し、そして(b)対象が、ステップ(a)において少なくとも1つの遺伝子の減少した発現レベルを有する場合、がん治療を選択することによって、それを必要とする対象についてガン治療を選択する方法も本明細書中で提供され、この場合、がん治療は、有効量の本発明の化合物の対象への投与を含む。
【0070】
本発明は、(a)対象から得られたサンプルにおいて、ヘッジホッグ経路遺伝子、myc経路遺伝子およびヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定し、そして(b)対象がステップ(a)において少なくとも1つの遺伝子の増加した発現レベルを有する場合、がん治療を選択することによって、それを必要とする対象についてガン治療を選択する方法をさらに提供し、この場合、ガン治療は有効量の本発明の化合物を対象に投与することを含む。
【0071】
単なる例示的な実施形態において、本明細書中で提示される方法は、(a)核酸またはタンパク質サンプルを対象から得られた生物学的サンプルから集め、(b)サンプルにおいて、神経分化遺伝子、細胞周期阻害遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定し、(c)対照サンプル中の同じ遺伝子(複数可)の発現レベルを測定し;(d)試験サンプル中のステップ(b)で測定された遺伝子の発現レベルを、対照サンプル中のステップ(c)で測定された遺伝子の発現レベル(または基準値)と比較し;(e)ステップ(b)で測定された成分の発現レベルがステップ(c)で測定された遺伝子の発現レベルと比較して減少している場合に、治療の候補として対象を特定し;そして(f)ステップ(e)において特定された対象に治療有効量のEZH2阻害剤を投与するか、またはステップ(e)において特定された対象の治療レジメンを選択するステップを含み得る。試験対象における遺伝子の発現レベルは、対照サンプル中の遺伝子の発現レベルと比較して、例えば、10%、25%、50%または1倍、2倍、5倍またはそれ以上減少する。
【0072】
単なる例示的な実施形態において、本明細書中で提示される方法は、(a)対象から得られた生物学的サンプルから核酸またはタンパク質サンプルを集め、(b)サンプルにおけるヘッジホッグ経路遺伝子、myc経路遺伝子およびヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を測定し、(c)対照サンプルにおける同じ遺伝子(複数可)の発現レベルを測定し、(d)試験サンプルにおけるステップ(b)で測定された遺伝子の発現レベルを、対照サンプルにおけるステップ(c)で測定された遺伝子の発現レベル(または基準値)と比較し;(e)ステップ(b)において測定された成分の発現レベルがステップ(c)で測定された遺伝子の発現レベルと比較して増加する場合、治療の候補として対象を特定し;そして(f)ステップ(e)において特定された対象に治療有効量のEZH2阻害剤を投与するか、またはステップ(e)において特定された対象の治療レジメンを選択するステップを含み得る。試験対象における遺伝子の発現レベルは、対照サンプルにおける遺伝子の発現レベルと比較して、例えば、10%、25%、50%または1倍、2倍、5倍またはそれ以上増加する。
【0073】
「発現レベル」という語は、関心対象の特定の遺伝子のタンパク質、RNA、またはmRNAレベルを指す。当該技術分野で公知の任意の方法を利用して関心対象の特定の遺伝子の発現レベルを測定することができる。例としては、限定されるものではないが、逆転写および増幅アッセイ(例えば、PCR、ライゲーションRT−PCRもしくは定量的RT−PCT)、ハイブリダイゼーションアッセイ、ノザンブロッティング、ドットブロッティング、インサイチュハイブリダイゼーション、ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、カラムクロマトグラフィー,ウェスタンブロッティング、免疫組織化学、免疫染色、または質量分析が挙げられる。アッセイは、生物学的サンプルまたはサンプルから単離されたタンパク質/核酸に関して直接実施することができる。これらのアッセイを実施するのは関連する分野において慣例的な実施である。例えば、本明細書中で記載される任意の方法における測定ステップは、対象から得られた生物学的サンプル由来の核酸サンプルと、本明細書中で提示される関心対象の遺伝子と特異的にハイブリダイズする1以上のプライマーとを接触させることを含む。別法として、本明細書中で記載される任意の方法の測定ステップは、対象から得られた生物学的サンプル由来のタンパク質サンプルと本明細書中で提示される関心対象のバイオマーカーと結合する1以上の抗体とを接触させることを含む。
【0074】
特定の遺伝子の減少した発現レベルとは、基準値または同じ対象から得られた異なる(もしくは以前の)サンプルにおいて測定されたこの遺伝子の発現レベルと比較して、その発現レベルの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%,1000%、1500%、またはそれ以上の減少を意味する。
【0075】
特定の遺伝子の増加した発現レベルは、基準値または同じ対象から得られた異なる(または以前の)サンプルにおいて測定されたこの遺伝子の発現レベルと比較して、その発現レベルの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%,1000%、1500%、またはそれ以上の増加を意味する。
【0076】
「基準またはベースラインレベル/値」は、本明細書中で用いられる場合、交換可能に使用することができ、類似の年齢範囲、疾患状態(たとえば、病期)、同じかもしくは類似した民族中の対象を含む集団研究から誘導される数値または値に対するもの、あるいはガンの治療を受けている対象の開始サンプルに対するものであることを意味する。そのような基準値は、ガンの数学アルゴリズムおよび計算された指数から得られる集団の統計分析および/またはリスク予測データから誘導できる。基準指数は、統計的および構造的分類のアルゴリズムおよび他の方法を用いて構築し、使用することもできる。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態において、基準またはベースライン値は、1以上の健常対象またはガンと診断されていない対象由来の対照サンプルにおける関心対象の特定の遺伝子の発現レベルである。
【0078】
本発明のいくつかの実施形態において、基準またはベースライン値は、任意のガン治療前の同じ対象から得られたサンプルにおける関心対象の特定の遺伝子の発現レベルである。本発明の他の実施形態において、基準またはベースライン値は、ガン治療中に同じ対象から得られたサンプルにおける関心対象の特定の遺伝子の発現レベルである。あるいは、基準値またはベースライン値は、同じ対象から、または試験される対象と類似した年齢範囲、疾患状態(たとえば、病期)を有する対象から事前に得られたサンプルにおける関心対象の特定の遺伝子の発現レベルの以前の測定値である。
【0079】
いくつかの実施形態では、有効量は、治療前の対象で減少している少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを増加させるために充分な量またはガンの1以上の症状を軽減するために充分な量を意味する。例えば、有効量は、神経分化遺伝子、細胞周期阻害遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、基準値または化合物で治療をしない発現レベルと比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%,1000%、1500%、またはそれ以上増加させるために充分な量である。
【0080】
いくつかの実施形態では、有効量とは、治療前に対象において増加した少なくとも1つの遺伝子の発現を減少させるために充分な量、またはガンの1以上の症状を軽減するために充分な量を意味する。例えば、有効量は、基準値または化合物の治療をしない発現レベルと比較して、ヘッジホッグ経路遺伝子、MYCおよびEZH2からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%,1000%、1500%、またはそれ以上減少させるために充分な量である。
【0081】
対象についての正確な有効量は、対象の体重、サイズ、および健康;状態の性質および程度;ならびに投与について選択された治療薬に左右されるであろう。所定の状況に関する有効量は、臨床医の技術および判断の範囲内である日常的な実験によって決定することができる。
本発明はさらに、(a)対象から得られたサンプルにおいて、神経分化遺伝子、細胞周期阻害遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定すること、(b)ステップ(a)における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを、基準値または以前の測定値と比較すること、および(c)比較ステップに基づいてガン治療の有効性を判定することによって、それを必要とする対象におけるガン治療の有効性を判定する方法を提供する。ガン治療の一例は、試験される対象に本発明の化合物を投与することである。
【0082】
治療は、1)基準値もしくは以前の測定値と比較して;あるいは2)モニタリングされる期間、例えば1、2、3、4、5、6、もしくは7日、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月またはそれ以上にわたって、神経分化遺伝子、細胞周期阻害遺伝子および腫瘍抑制遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の増加した発現を有する場合に有効である。既存の治療が有効でない場合、新規治療または既存の治療の増加した投薬量(例えば、対象に投与される化合物の投薬量を増加させる)が試験される対象のために求められなければならない。
【0083】
本発明はまた、(a)対象から得られたサンプルにおいて、ヘッジホッグ経路遺伝子、myc経路遺伝子およびヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを測定すること、(b)ステップ(a)における少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを基準値または以前の測定値と比較すること、および(c)比較ステップに基づいてガン治療の有効性を判定することによって、それを必要とする対象におけるガン治療の有効性を判定する方法も提供する。ガン治療の一例は、本発明のEZH2阻害剤を試験される対象に投与することである。
【0084】
例えば、治療は、1)基準値もしくは以前の測定値と比較して、または2)モニタリングされる期間、例えば1、2、3、4、5、6、もしくは7日、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10週間、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12か月あるいはそれ以上にわたって、試験した対象が、ヘッジホッグ経路遺伝子、myc経路遺伝子およびヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の減少した発現を有する場合に有効である。既存の治療が有効でない場合、新規治療または既存の治療の投薬量の増加(例えば、対象に投与される化合物の投薬量を増加させる)を試験される対象について求められるべきである。
【0085】
本明細書中で提示される任意の方法において、ガンは、脳および中枢神経系(CNS)ガン、頭頸部ガン、腎臓ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、白血病、肺ガン、リンパ腫、骨髄腫、肉腫、乳がん、および前立腺ガンからなる群から選択される。好ましくは、ガンは、髄芽腫、乏突起神経膠腫、卵巣透明細胞腺がん、卵巣類子宮内膜腺癌(endomethrioid adenocarcinoma)、卵巣漿液性腺がん、膵管腺がん、膵臓内分泌腫瘍、悪性ラブドイド腫瘍
、星状細胞腫、非定型奇形腫ラブドイド腫瘍、脈絡叢がん、脈絡叢乳頭腫、上衣細胞腫、グリア芽腫、髄膜腫、神経膠腫、乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、松果体芽細胞腫、がん肉腫、脊索腫、性腺外胚細胞腫瘍、腎外に発生するラブライド腫瘍、神経鞘腫、皮膚扁平上皮細胞がん、軟骨肉腫、軟組織の明細胞肉腫、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、類上皮細胞(epitheloid)肉腫、腎髄質がん(renal medullo carcinoma)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫および特定不能(NOS)肉腫からなる群から選択される。さらに好ましくは、ガンは髄芽腫、悪性ラブドイド腫瘍、または非定型奇形腫ラブドイド腫瘍からなる群から選択される。
【0086】
本明細書中で用いられる場合、「反応性」という語は、「反応性の」、「感受性の」、および「感受性」という語と交換可能であり、対象がEZH阻害剤を投与された場合に治療反応を示すこと、例えば、対象の腫瘍細胞または腫瘍組織がアポトーシスおよび/または壊死を受ける、および/または減少した成長、分裂、もしくは増殖を示すことを意味する。この語はまた、集団全体に対して、EZH阻害剤を投与された場合に対象が治療反応を示すより高い可能性を将来有するかまたは有していること、例えば、対象の腫瘍細胞または腫瘍組織がアポトーシスおよび/または壊死を受けること、および/または減少した成長、分裂、もしくは増殖を示すことを意味する。
【0087】
本明細書中で用いられる場合、「対象」は「それを必要とする対象」と交換可能であり、そのどちらも、EZH2が介在するタンパク質メチル化が関与する障害にかかっている対象、または集団全体に対してそのような障害を発症するリスクが増大している対象を指す。それを必要とする対象は、SWI/SNF複合体に関連する障害を有する対象であり得る。それを必要とする対象は前ガン状態を有し得る。好ましくは、それを必要とする対象はガンを有する。それを必要とする対象は、SWI/SNF複合体に関連するガンを有し得る。それを必要とする対象は、SWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分において機能喪失に関連するガンを有し得る。好ましい態様において、それを必要とする対象は、脳および中枢神経系(CNS)ガン、頭頸部ガン、腎臓ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、白血病、肺ガン、リンパ腫、骨髄腫、肉腫、乳がん、および前立腺ガンからなる群から選択される1以上のガンを有する。好ましくは、それを必要とする対象は、髄芽腫、乏突起神経膠腫、卵巣透明細胞腺がん、卵巣類子宮内膜腺癌(endomethrioid adenocarcinoma)
、卵巣漿液性腺がん、膵管腺がん、膵臓内分泌腫瘍、悪性ラブドイド腫瘍、星状細胞腫、非定型奇形腫ラブドイド腫瘍、脈絡叢がん、脈絡叢乳頭腫、上衣細胞腫、グリア芽腫、髄膜腫、神経膠腫、乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、松果体芽細胞腫、がん肉腫、脊索腫、性腺外胚細胞腫瘍、腎外に発生するラブライド腫瘍、神経鞘腫、皮膚扁平上皮細胞がん、軟骨肉腫、軟組織の明細胞肉腫、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、類上皮細胞(epitheloid)肉腫、腎髄質がん(renal medullo carcinoma)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫および特定不能(NOS)肉腫を有する。別法として、それを必要とする対象は非NHLガンを有する。
【0088】
本明細書中で用いられる場合、「対象」は哺乳類を包含する。哺乳類は、例えばヒトまたは適切なヒト以外の哺乳類、例えば霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジまたはブタであり得る。対象は、鳥または家禽でもあり得る。1つの実施形態において、哺乳類はヒトである。対象は男性または女性であり得る。
【0089】
それを必要とする対象は、ガンまたは前ガン状態を有していると以前に診断も特定もされていない対象であり得る。それを必要とする対象は、ガンまたは前ガン状態を有すると以前に診断または特定された対象であり得る。それを必要とする対象は、ガンまたは前ガン状態を有する(かかっている)対象でもあり得る。別法として、それを必要とする対象は、集団全体に対してそのような障害を発症するリスクを有する対象(すなわち、集団全体に対してそのような障害を発症する素因がある対象)であり得る。
【0090】
場合によって、それを必要とする対象は、ガンまたは前ガン状態のための少なくとも1つの治療的介入をすでに受けているか、または受けつつあるか、受ける予定である。
【0091】
それを必要とする対象は、最新の治療に関して難治性ガンを有し得る。「難治性ガン」とは、治療に応答しないガンを意味する。ガンは、治療の開始時で耐性である可能性があるか、または治療中に耐性になる可能性がある。難治性ガンは耐性ガンとも呼ばれる。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、最近の治療で寛解後にガンを再発している。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、がん治療のあらゆる公知の有効な治療を受け、失敗した。いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は少なくとも1つの前治療を受けた。
【0092】
それを必要とする対象は、SWI/SNF複合体に関連するガンまたは前ガン状態を有していたか、有しているか、または発症する素因がある対象であり得る。それを必要とする対象は、SWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分の機能喪失と関連するガンまたは前ガン状態を有していたか、有しているか、または発症する素因を有する対象であり得る。好ましい態様において、それを必要とする対象は、脳および中枢神経系(CNS)ガン、頭頸部ガン、腎臓ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、白血病、肺ガン、リンパ腫、骨髄腫、肉腫、乳がん、および前立腺ガンからなる群から選択される1以上のガンを有していたか、有しているか、または発症する素因を有する対象である。好ましくは、それを必要とする対象とは、脳およびCNSガン、腎臓ガン、卵巣ガン、膵臓ガン、白血病、リンパ腫、骨髄腫、ならびに/または肉腫を有していたか、有しているか、または発症する素因がある対象である。例示的脳および中枢CNSガンとしては、髄芽腫、乏突起神経膠腫、非定型奇形腫ラブドイド腫瘍、脈絡叢がん、脈絡叢乳頭腫、上衣細胞腫、グリア芽腫、髄膜腫、神経膠腫、乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、および松果体芽細胞腫が挙げられる。例示的卵巣ガンとしては、卵巣透明細胞腺がん、卵巣類子宮内膜腺癌(endomethrioid adenocarcinoma)、および卵巣漿液性腺がんが挙げられる。例示的膵臓ガンとしては、膵管腺がんおよび膵臓内分泌腫瘍が挙げられる。例示的肉腫としては、軟骨肉腫、軟組織の明細胞肉腫、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、および特定不能(NOS)肉腫が挙げられる。あるいは、本発明の化合物によって治療されるガンは非NHLガンである。
【0093】
あるいは、それを必要とする対象は、髄芽腫、乏突起神経膠腫、卵巣透明細胞腺がん、卵巣類子宮内膜腺癌(endomethrioid adenocarcinoma)、卵巣漿液性腺がん、膵管腺がん、膵臓内分泌腫瘍、悪性ラブドイド腫瘍、星状細胞腫、非定型奇形腫ラブドイド腫瘍、脈絡叢がん、脈絡叢乳頭腫、上衣細胞腫、グリア芽腫、髄膜腫、神経膠腫、乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、松果体芽細胞腫、がん肉腫、脊索腫、性腺外胚細胞腫瘍、腎外に発生するラブライド腫瘍、神経鞘腫、皮膚扁平上皮細胞がん、軟骨肉腫、軟組織の明細胞肉腫、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、および特定不能(NOS)肉腫からなる群から選択される1以上のガンを有していたか、有しているか、または発症する素因がある対象である。好ましくは、対象は、髄芽腫、卵巣透明細胞腺がん、卵巣類子宮内膜腺癌(endomethrioid adenocarcinoma)、膵管腺がん、悪性ラブドイド腫瘍、非定型奇形腫ラブドイド腫瘍、脈絡叢がん、脈絡叢乳頭腫、グリア芽腫、髄膜腫、松果体芽細胞腫、がん肉腫、腎外に発生するラブライド腫瘍、神経鞘腫、皮膚扁平上皮細胞がん、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、類上皮細胞(epitheloid)肉腫、腎髄質がん(renal medullo carcinoma)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫および/またはNOS肉腫を有していたか、有しているか、または発症する素因がある対象である。さらに好ましくは、それを必要とする対象は、悪性ラブドイド腫瘍、髄芽腫および/または非定型奇形腫ラブドイド腫瘍を有していたか、有しているか、または発症する素因がある対象である。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態において、それを必要とする対象は、神経分化遺伝子、細胞周期阻害遺伝子、および腫瘍抑制遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の減少した発現レベルを有する。
【0095】
いくつかの実施形態では、それを必要とする対象は、ヘッジホッグ経路遺伝子、myc経路遺伝子およびヒストンメチルトランスフェラーゼ遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の増加した発現レベルを有する。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態において、それを必要とする対象は、SWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分/サブユニットの機能喪失を有する。別法として、それを必要とする対象は、SWI/SNF複合体の少なくとも1つの成分/サブユニットの減少した発現またはハプロ不全を有する。ある実施形態では、それを必要とする対象は、SNF5サブユニットの機能喪失を有する。
【0097】
本発明の任意の方法において、それを必要とする対象は、SWI/SNF複合体の下流に少なくとも1つのシグナル伝達成分の減少した発現、ハプロ不全または機能喪失を有し得る。そのような下流成分としては、限定されるものではないが、ポリコーム複合体(PcG)およびその標的が挙げられる。
【0098】
本明細書中で用いられる場合、「機能の喪失」という語は、野生型と比較して遺伝子産物/タンパク質の機能が低いまたはないことを指す。SWI/SNF複合体成分の機能喪失は、成分/サブユニットまたは全SWI/SNF複合体がそれぞれ野生型成分/サブユニットまたは全SWI/SNF複合体と比べて生物学的機能が少ないかまたはないことを意味する。機能喪失は、転写、転写後、または翻訳後機序に起因する可能性がある。本発明の1つの態様において、機能喪失は、SWI/SNF複合体成分のポリペプチドまたはSWI/SNF複合体成分のポリペプチドをコード化する核酸配列における点突然変異(たとえば、置換、ミスセンス突然変異、またはナンセンス突然変異)、挿入、および/または欠失に起因する機能喪失突然変異によって起こる。本明細書中で言及される突然変異は体細胞変異である。「体細胞変異」という語は、身体の各細胞において見いだされないが、単離された細胞においてのみ見いだされる少なくとも1つの対立遺伝子における有害な変化を指す。体細胞変異の特徴は、本明細書中で用いられる場合、それらが特定の組織またはさらには組織の部分もしくは組織内の細胞に限定され、組織または細胞を有する全生物中に存在しない。「野生型」という語は、天然に存在する源から単離される場合、自身の特徴を有する遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、集団中で最も頻繁に観察され、したがって任意にデザインされたその遺伝子の「正常」または「野生型」形態であるものである。
【0099】
したがって、機能喪失突然変異または減少した発現は、当該技術分野で利用可能な任意の好適な方法を使用して検出できる。例えば、機能喪失突然変異は、遺伝子産物の生物学的機能、例えばSWI/SNF複合体のATP依存性クロマチン再構成活性を測定することによって検出できる。別法として、機能喪失突然変異は、SWI/SNF複合体の成分をコード化する核酸配列における任意の変更を検出することによって決定できる。例えば、機能喪失突然変異を有するSWI/SNF複合体の成分をコード化する核酸配列は、当該技術分野で周知の方法にしたがって、好適に選択されたDNAおよびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー源を使用して、全ゲノム再配列決定または標的領域再配列決定(後者は標的化再配列決定とも呼ばれる)によって検出できる。方法は、特徴的および一般的には、ゲノムDNA精製、関心対象の領域を増幅するためのPCR増幅、サイクルシーケンス法、シーケンシング反応クリーンアップ(sequencing reaction cleanup)、キャピラリー電気泳動法、および/またはデータ解析のステップを伴う。代替的または付加的に、方法は、マイクロアレイに基づく標的化領域ゲノムDNA捕捉および/またはシーケンシングの使用を含み得る。適切なPCRプライマーの選択および再配列決定の実施のための、キット、試薬、および方法は、例えば、Applied Biosystems、Agilent、およびNimbleGen (Roche Diagnostics GmbH)から商業的に入手可能である。代替的または付加的に、機能喪失突然変異を有するSWI/SNFポリペプチドをコード化する核酸配列は、当該技術分野で周知の方法にしたがってサザンブロットを使用して検出することができる。場合によって、機能喪失突然変異は、成分ポリペプチドの発現が存在しないことを測定することによるか、または変異成分ポリペプチドの発現を測定することによって検出できる。(変異)ポリペプチド発現の検出は、ウェスタンブロット分析などの当該技術分野における任意の好適なイムノアッセイで実施できる。
【0100】
SWI/SNF複合体の成分のヒト核酸およびアミノ酸配列はすでに記載されている。例えば、SNF5についてはGenBank受入番号NP_003064.2、NM_003073.3、NP_001007469.1、およびNM_001007468.1、ATRXについてはGenBank受入番号NM_000489.3、NP_000480.2、NM_138270.2、およびNP_612114.1、ARID1AについてはGenBank受入番号NP_006006.3、NM_006015.4、NP_624361.1、およびNM_139135.2(それぞれはその全体が参照により本明細書中に組み込まれる)を参照のこと。
【0101】
ヒトにおけるhSNF5体細胞変異の領域は、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる、Sevenet et al., Human Molecular Genetics, 8: 2359-2368, 1999でも記載されている。
【0102】
それを必要とする対象は、SNF5の減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を有し得る。例えば、対象は、SNF5ポリペプチドまたはSNF5ポリペプチドをコード化する核酸配列においてSNF5の欠失を含み得る。
【0107】
それを必要とする対象は、ATRXの減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を有し得る。例えば、対象は、配列番号5のアミノ酸位置688の野生型残基リジン(K)のアスパラギン(N)での置換(K688N)、および配列番号5のアミノ酸位置366での野生型残基メチオニン(M)のイソロイシン(I)での置換(M366I)からなる群から選択される突然変異を含み得る。
【0112】
それを必要とする対象は、ARID1Aの減少した発現、ハプロ不全、および/または機能喪失を有し得る。例えば、対象は、配列番号11のアミノ酸位置884での野生型残基システイン(C)のナンセンス突然変異(C884*)、アミノ酸位置966での野生型残基グルタミン酸(E)のリジン(K)での置換(E966K)、配列番号11のアミノ酸位置1411での野生型残基グルタミン(Q)のナンセンス突然変異(Q1411*)、配列番号11のアミノ酸位置1720での野生型残基フェニルアラニン(F)のフレームシフト突然変異(F1720fs)、配列番号11のアミノ酸位置1847での野生型残基グリシン(G)後のフレームシフト突然変異(G1847fs)、配列番号11のアミノ酸位置1874での野生型残基システイン(C)でのフレームシフト突然変異(C1874fs)、アミノ酸位置1957での野生型残基アスパラギン酸(D)のグルタミン酸(E)での置換(D1957E)、配列番号11のアミノ酸位置1430での野生型残基グルタミン(Q)のナンセンス突然変異(Q1430*)、配列番号11のアミノ酸位置1721での野生型残基アルギニン(R)のフレームシフト突然変異(R1721fs)、アミノ酸位置1255での野生型残基グリシン(G)のグルタミン酸(E)での置換(G1255E)、配列番号11のアミノ酸位置284での野生型残基グリシン(G)のフレームシフト突然変異(G284fs)、配列番号11のアミノ酸位置1722での野生型残基アルギニン(R)のナンセンス突然変異(R1722*)、配列番号11のアミノ酸位置274での野生型残基メチオニン(M)でのフレームシフト突然変異(M274fs)、配列番号11のアミノ酸位置1847での野生型残基グリシン(G)でのフレームシフト突然変異(G1847fs)、配列番号11のアミノ酸位置559での野生型残基Pでのフレームシフト突然変異(P559fs)、配列番号11のアミノ酸位置1276での野生型残基アルギニン(R)のナンセンス突然変異(R1276*)、配列番号11のアミノ酸位置2176での野生型残基グルタミン(Q)でのフレームシフト突然変異(Q2176fs)、配列番号11のアミノ酸位置203での野生型残基ヒスチジン(H)でのフレームシフト突然変異(H203fs)、配列番号11のアミノ酸位置591での野生型残基アラニン(a)でのフレームシフト突然変異(A591fs)、配列番号11のアミノ酸位置1322での野生型残基グルタミン(Q)のナンセンス突然変異(Q1322*)、配列番号11のアミノ酸位置2264での野生型残基セリン(S)のナンセンス突然変異(S2264*)、配列番号11のアミノ酸位置586での野生型残基グルタミン(Q)のナンセンス突然変異(Q586*)、配列番号11のアミノ酸位置548での野生型残基グルタミン(Q)でのフレームシフト突然変異(Q548fs)、および配列番号11のアミノ酸位置756での野生型残基アスパラギン(N)でのフレームシフト突然変異(N756fs)からなる群から選択される突然変異を含み得る。本明細書中で用いられる「*」は停止コドンを指す。本明細書中で用いられる「fs」はフレームシフトを指す。
【0117】
本発明はまた、細胞を本発明の化合物(すなわち、EZH2阻害剤)と接触させることによって神経分化を誘発する方法も提供する。好ましくは、化合物は、CD133(PROM1とも呼ばれる)、DOCK4、PTPRK、PROM2、LHX1、LHX6、LHX9、PAX6、PAX7、VEFGA、FZD3B、FYN、HIF1A、HTRA2、EVX1、CCDC64、およびGFAPからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるために充分な量である。
【0118】
「神経分化を誘導する」という語は、本明細書中で用いられる場合、細胞に対する直接的または意図された効果の結果として、細胞を神経細胞系の細胞に発達させることを指す。
【0119】
本発明はさらに、細胞を本発明の化合物と接触させることによって細胞周期阻害を誘導する方法も提供する。好ましくは、化合物は、CDKN1A、CDKN2A、MEN1、CHEK1、IRF6、ALOX15B、CYP27B1、DBC1、NME6、GMNN、HEXIM1、LATS1、MYC、HRAS、TGFB1、IFNG、WNT1、TP53、THBS1、INHBA、IL8、IRF1、TPR、BMP2、BMP4、ETS1、HPGD、BMP7、GATA3、NR2F2、APC、PTPN3、CALR、IL12A、IL12B、PML、CDKN2B、CDKN2C、CDKN1B、SOX2、TAF6、DNA2、PLK1、TERF1、GAS1、CDKN2D、MLF1、PTEN、TGFB2、SMAD3、FOXO4、CDK6、TFAP4、MAP2K1、NOTCH2、FOXC1、DLG1、MAD2L1、ATM、NAE1、DGKZ、FHL1、SCRIB、BTG3、PTPRK、RPS6KA2、STK11、CDKN3、TBRG1、CDC73、THAP5、CRLF3、DCUN1D3、MYOCD、PAF1、LILRB1、UHMK1、PNPT1、USP47、HEXIM2、CDK5RAP1、NKX3−1、TIPIN、PCBP4、USP44、RBM38、CDT1、RGCC、RNF167、CLSPN、CHMP1A、WDR6、TCF7L2、LATS2、RASSF1、MLTK、MAD2L2、FBXO5、ING4、およびTRIM35からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を増加させるために充分な量である。
【0120】
「細胞周期阻害を誘導する」という語は、本明細書中で用いられる場合、細胞分裂および/または複製の間の任意の相で蓄積または停止を引き起こすことを指す。
【0121】
本発明はさらに、細胞を本発明の化合物と接触させることによって腫瘍抑制を誘導する方法も提供する。好ましくは、化合物は、BIN1または任意の腫瘍抑制因子の発現を増加させるために充分な量である。
【0122】
「腫瘍抑制を誘導する」という語は、限定されるものではないが、腫瘍のサイズの減少、腫瘍体積の減少、腫瘍の数の減少、および原発腫瘍部位から離れた他の組織または器官における転移性病変の数の減少、担体単独を受容した集団と比較した治療対象の集団の平均生存時間の増加、未治療対象の集団と比較した治療対象の集団の平均生存時間の増加、本発明の化合物ではない薬物での単剤治療を受ける集団と比較した治療対象の集団の平均製造時間の増加、担体単独を受容する集団と比較した治療対象の集団の死亡率の減少、腫瘍成長速度の減少、または腫瘍再成長速度の減少を包含し得る。
【0123】
本発明はさらに、細胞を本発明の化合物と接触させることによってヘッジホッグシグナル伝達を阻害する方法も提供する。好ましくは、化合物は、GLI1、PTCH1、SUFU、KIF7、GLI2、BMP4、MAP3K10、SHH、TCTN3、DYRK2、PTCHD1、およびSMOからなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を減少させるために十分な量である。
【0124】
「ヘッジホッグシグナル伝達を阻害する」という言い回しは、化合物治療でのヘッジホッグシグナル伝達強度(strength/intensity)が、化合物治療をしないヘッジホッグシグナル伝達強度(strength/intensity)と比較して少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%,1000%、1500%、またはそれ以上減少することを意味する。
【0125】
本発明はさらに、細胞を本発明の化合物と接触させることによって遺伝子発現を誘導する方法も提供する。好ましくは、化合物は、神経分化、細胞周期阻害および/または腫瘍抑制を誘発するために充分な量である。そのような遺伝子は、CD133(PROM1とも呼ばれる)、DOCK4、PTPRK、PROM2、LHX1、LHX6、LHX9、PAX6、PAX7、VEFGA、FZD3B、FYN、HIF1A、HTRA2、EVX1、CCDC64、GFAP、CDKN1A、CDKN2A、MEN1、CHEK1、IRF6、ALOX15B、CYP27B1、DBC1、NME6、GMNN、HEXIM1、LATS1、MYC、HRAS、TGFB1、IFNG、WNT1、TP53、THBS1、INHBA、IL8、IRF1、TPR、BMP2、BMP4、ETS1、HPGD、BMP7、GATA3、NR2F2、APC、PTPN3、CALR、IL12A、IL12B、PML、CDKN2B、CDKN2C、CDKN1B、SOX2、TAF6、DNA2、PLK1、TERF1、GAS1、CDKN2D、MLF1、PTEN、TGFB2、SMAD3、FOXO4、CDK6、TFAP4、MAP2K1、NOTCH2、FOXC1、DLG1、MAD2L1、ATM、NAE1、DGKZ、FHL1、SCRIB、BTG3、PTPRK、RPS6KA2、STK11、CDKN3、TBRG1、CDC73、THAP5、CRLF3、DCUN1D3、MYOCD、PAF1、LILRB1、UHMK1、PNPT1、USP47、HEXIM2、CDK5RAP1、NKX3−1、TIPIN、PCBP4、USP44、RBM38、CDT1、RGCC、RNF167、CLSPN、CHMP1A、WDR6、TCF7L2、LATS2、RASSF1、MLTK、MAD2L2、FBXO5、ING4、TRIM35、BIN1および任意の腫瘍抑制因子からなる群から選択される。
【0126】
「遺伝子発現を誘導する」という言い回しは、関心対象の特定の遺伝子の発現レベルを、化合物治療のないこの遺伝子の発現レベルと比較して、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%,1000%、1500%、またはそれ以上増加させることを意味する。
【0127】
本発明はさらに、細胞を本発明の化合物と接触させることを含む、遺伝子発現を阻害する方法も提供する。好ましくは、化合物はヘッジホッグシグナル伝達を阻害するために充分な量である。そのような遺伝子は、GLI1、PTCH1、SUFU、KIF7、GLI2、BMP4、MAP3K10、SHH、TCTN3、DYRK2、PTCHD1、またはSMOである。
【0128】
「遺伝子発現を阻害する」という言い回しは、化合物治療をしないこの遺伝子の発現レベルと比較して、関心対象の特定の遺伝子の発現レベルを少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%,1000%、1500%、またはそれ以上減少させることを意味する。
【0129】
神経分化、細胞周期阻害、腫瘍抑制およびヘッジホッグシグナル伝達阻害は、当該技術分野で公知の任意の方法によって決定することができる。
【0130】
本明細書中で用いられる場合、細胞とは、本明細書中で記載される方法によって得ることができ、使用できる細胞を指す。例えば、細胞は細胞培養から得ることができる。別法として、細胞は対象から単離することができる。細胞とは、対象の細胞を指す場合もある。
【0131】
細胞は、SNF5、ARID1A、ATRX、および/またはSWI/SNF複合体の成分の機能喪失を含み得る。好ましくは、細胞はSNF5の欠失を含み得る。
【0132】
細胞はガン細胞であってよく、この場合、ガンは、髄芽腫、乏突起神経膠腫、卵巣透明細胞腺がん、卵巣類子宮内膜腺癌(endomethrioid adenocarcinoma)、卵巣漿液性腺がん、膵管腺がん、膵臓内分泌腫瘍、悪性ラブドイド腫瘍、星状細胞腫、非定型奇形腫ラブドイド腫瘍、脈絡叢がん、脈絡叢乳頭腫、上衣細胞腫、グリア芽腫、髄膜腫、神経膠腫、乏突起星細胞腫、乏突起神経膠腫、松果体芽細胞腫、がん肉腫、脊索腫、性腺外胚細胞腫瘍、腎外に発生するラブライド腫瘍、神経鞘腫、皮膚扁平上皮細胞がん、軟骨肉腫、軟組織の明細胞肉腫、ユーイング肉腫、消化管間質腫瘍、骨肉腫、横紋筋肉腫、類上皮細胞(epitheloid)肉腫、腎髄質がん(renal medullo carcinoma)、びまん性大細胞型B細
胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫および特定不能(NOS)肉腫からなる群から選択される。さらに好ましくは、細胞は髄芽腫、悪性ラブドイド腫瘍、または非定型奇形腫ラブドイド腫瘍のガン細胞である。
【0133】
治療されるガンは、対がん米国合同委員会(AJCC)TNM分類体系にしたがって病期分類することができ、この場合、腫瘍(T)は、TX、T1、T1mic、T1a、T1b、T1c、T2、T3、T4、T4a、T4b、T4c、またはT4dの段階に割り当てられ、局所リンパ節(N)はNX、N0、N1、N2、N2a、N2b、N3、N3a、N3b、またはN3cの段階に割り当てられ、遠隔転移(M)はMX、M0、またはM1の段階に割り当てることができる。治療されるガンは、対がん米国合同委員会(AJCC)分類にしたがってステージI、ステージIIA、ステージIIB、ステージIIIA、ステージIIIB、ステージIIIC、またはステージIVとして病期分類することができる。治療されるガンは、グレードGX(たとえば、グレードは評価できない)、グレード1、グレード2、グレード3またはグレード4としてAJCC分類によるグレードに割り当てることができる。治療されるガンは、pNX、pN0、PN0(I−)、PN0(I+)、PN0(mol−)、PN0(mol+)、PN1、PN1(mi)、PN1a、PN1b、PN1c、pN2、pN2a、pN2b、pN3、pN3a、pN3b、またはpN3cのAJCC病理学的分類(pN)にしたがって病期分類することができる。
【0134】
治療されるガンは、DNAサイトメトリー、フローサイトメトリー、またはイメージサイトメトリーによって評価できる。治療されるガンは、細胞分裂の合成ステージ(たとえば、細胞分裂のS期)における細胞の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を有するとして分類できる。治療されるガンは、低S期フラクションまたは高S期フラクションを有するとして分類できる。
【0135】
本明細書中で用いられる場合、「正常細胞」は、「細胞増殖性障害」の一部として分類できない細胞である。正常細胞は、望ましくない状態または疾患の発症に至る可能性がある、無秩序もしくは異常な成長、または両者がない。好ましくは、正常細胞は正常に機能する細胞周期チェックポイント制御機序を有する。
【0136】
本明細書中で用いられる場合、「細胞を接触させる」とは、化合物または他の組成物が細胞と直接接触している状態、または細胞において所望の生物学的効果を誘導するために充分近い状態を指す。
【0137】
本明細書中で用いられる場合、「単剤治療」とは、単一の活性または治療化合物を、それを必要とする対象に投与することを指す。好ましくは、単剤治療は、治療有効量の活性化合物の投与を含む。例えば、ガンの治療を必要とする対象に対する本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体、溶媒和物、アナログもしくは誘導体のうちの1つでのガン単剤治療。単剤治療は、複数の活性化合物を、好ましくは治療有効量で存在する組み合わせの各成分とともに組み合わせで投与する併用療法と対比される。1つの態様において、本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物での単剤治療は、所望の生物学的効果を誘導するのに併用療法よりも有効である。
【0138】
本明細書中で用いられる場合、「治療する(treatingまたはtreat)」は、疾患、状態、または障害と闘う目的で患者の管理および看護を説明し、本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物を、疾患、状態もしくは障害の1以上の症状もしくは合併症を軽減するため、または疾患、状態もしくは障害を除去するために投与することを包含する。「治療する」という語はまた、インビトロの細胞または動物モデルの処置も包含し得る。
【0139】
本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物はさらに、疾患、状態もしくは障害を予防するためにも使用できる、またはそのような目的に好適な候補を特定するためにも使用できる。本明細書中で用いられる場合、「予防する(preventingまたはprevent)」は、疾患、状態または障害の症状または合併症の開始を減少ま
たは除去することを記載する。
【0140】
本明細書中で用いられる場合、「軽減する」という語は、それによって障害の兆候または症状の重篤度を減少させるプロセスを記載することが意図される。重要なことに、兆候または症状は、除去されることなく軽減され得る。好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物の投与は、兆候または症状の除去に至るが、除去は必要ではない。有効投薬量は、兆候または症状の重篤度を減少させることが期待される。例えば、複数の場所で起こり得る、ガンなどの障害の兆候または症状は、ガンの重篤度が複数の場所のうちの少なくとも1つで減少する場合、軽減される。
【0141】
本明細書中で用いられる場合、「重篤度」という語は、ガンが、前ガン状態、または良性状態から悪性状態へ変換する可能性を説明することが意図される。代替的または付加的に、重篤度は例えば、TNMシステム(国際対ガン連合(UICC)および対がん米国合同委員会(AJCC)によって承認)または他の当該技術分野で承認されている方法にしたがってガンの病期を記載することを意図する。ガンの病期は原発腫瘍の位置、腫瘍サイズ、腫瘍の数、およびリンパ節関与(リンパ節中へのガンの拡散)などの因子に基づくガンの程度または重篤度を指す。代替的または付加的に、重篤度は、当該技術分野で承認されている方法によって腫瘍グレードを記載することを意図する(国立ガン研究所、www.cancer.govを参照のこと)。腫瘍グレードは、顕微鏡下でそれらがどれほど異常に見えるか、そして腫瘍がどれほど急速に増殖し拡散しやすいかの点で、ガン細胞を分類するために使用されるシステムである。細胞の構造および成長パターンを含む多くの因子が、腫瘍グレードを決定する場合に考慮される。腫瘍グレードを決定する為に使用される特定の因子は、ガンの各型で変わる。重篤度はまた、分化とも呼ばれる組織学的グレードも記載し、これは、どれほど多くの腫瘍細胞が、同じ組織型の正常細胞と類似しているかを指す(国立ガン研究所、www.cancer.govを参照のこと)。さらに、重篤度は、腫瘍細胞中の核のサイズおよび形状、ならびに分裂する腫瘍細胞のパーセンテージを指す、核グレードを記載する(国立ガン研究所、www.cancer.govを参照のこと)。
【0142】
本発明の別の態様では、重篤度は、腫瘍が成長因子を分泌した程度、細胞外マトリックスを分解した程度、血管が新生されるようになった程度、隣接組織への接着性を喪失した程度、または転移した程度を記載する。さらに、重篤度は、原発腫瘍が転移した場所の数を記載する。最後に、重篤度は、様々な種類および場所の腫瘍を治療する困難さを包含する。例えば、手術不可能な腫瘍、複数の身体系へのアクセスが多いガン(血液学的および免疫学的腫瘍)、ならびに伝統的な治療に対して最も耐性であるものが最も重篤とみなされる。これらの状況で、対象の平均余命の延長および/または痛みの軽減、ガン性細胞の割合の減少または細胞の1つのシステムへの限定、およびガンの病期/腫瘍グレード/組織学的グレード/核グレードの改善は、ガンの兆候または症状を軽減するとみなされる。
【0143】
本明細書中で用いられる場合、「症状」という語は、疾患、病気、損傷、または身体において正常でないものの適応症として定義される。症状は、その症状を経験している個体が感じるかまたは気づくが、他者からは容易に気づかれない可能性がある。他者は、非医療専門家と定義される。
【0144】
本明細書中で用いられる場合、「兆候」という語も、身体において正常でないものの適応症として定義される。しかし、兆候は、医師、看護師、または他の医療専門家がわかるものとして定義される。
【0145】
ガンは、ほとんどすべての兆候または症状も引き起こし得る疾患の群である。兆候および症状は、ガンがある場所、ガンのサイズ、および付近の臓器または構造にどれほど影響を及ぼすかによって左右される。ガンが拡散(転移)する場合、症状が身体の異なる部分で出現する可能性がある。
【0146】
ガンの治療は、結果として腫瘍のサイズを減少させることができる。腫瘍のサイズの減少は、「腫瘍退縮」とも呼ばれる。好ましくは、治療後、腫瘍サイズは治療前のサイズに対して5%以上減少し;さらに好ましくは腫瘍サイズは10%以上減少し;さらに好ましくは20%以上減少し;さらに好ましくは30%以上減少し;さらに好ましくは40%以上減少し;なお一層好ましくは50%以上減少し;そして最も好ましくは75%以上減少する。腫瘍のサイズは、任意の再現可能な測定手段によって測定することができる。腫瘍のサイズは腫瘍の直径として測定することができる。
【0147】
ガンの治療は、結果として腫瘍体積を減少させることができる。好ましくは、治療後、腫瘍体積は治療前のそのサイズに対して5%以上減少し;さらに好ましくは、腫瘍体積は10%以上減少し;さらに好ましくは20%以上減少し;さらに好ましくは30%以上減少し;さらに好ましくは、40%以上減少し;なお一層好ましくは50%以上減少し;そして最も好ましくは75%以上減少する。腫瘍体積は、任意の再現可能な測定手段によって測定することができる。
【0148】
ガンの治療は、結果として腫瘍の数を減少させる。好ましくは、治療後、腫瘍数は治療前の数に対して5%以上減少し;さらに好ましくは、腫瘍数は10%以上減少し;さらに好ましくは20%以上減少し;さらに好ましくは30%以上減少し;さらに好ましくは40%以上減少し;なお一層好ましくは、50%以上減少し;そして最も好ましくは75%以上減少する。腫瘍の数は、任意の再現可能な測定手段によって測定することができる。腫瘍の数は、肉眼または特定の倍率でみることができる腫瘍をカウントすることによって測定することができる。好ましくは、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または50倍である。
【0149】
ガンの治療は、結果として原発腫瘍部位から離れた他の組織または器官における転移性病変の数を減少させることができる。好ましくは、治療後、転移性病変の数は、治療前の数に対して5%以上減少し;さらに好ましくは、転移性病変の数は10%以上減少し;さらに好ましくは20%以上減少し;さらに好ましくは30%以上減少し;さらに好ましくは40%以上減少し;なお一層好ましくは50%以上減少し;そして最も好ましくは75%以上減少する。転移性病変の数は、任意の再現可能な測定手段によって測定することができる。転移性病変の数は、肉眼または特定の倍率でみることができる転移性病変をカウントすることによって測定することができる。好ましくは、特定の倍率は、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、または50倍である。
【0150】
ガンの治療は、結果として担体単独を受容した集団と比較した治療対象の集団の平均生存時間を増加させることができる。好ましくは、平均生存時間は、30日超増加し;さらに好ましくは60日超増加し;さらに好ましくは90日超増加し;そして最も好ましくは120超増加する。集団の平均生存時間の増加は、任意の再現可能な手段によって測定することができる。集団の平均生存時間の増加は、例えば、集団について、活性化合物での治療開始後の生存の平均長さを算出することによって測定することができる。集団の平均生存時間の増加は、例えば、活性化合物での治療の第1ラウンドの完了後の生存の平均長さを集団について算出することによって測定することもできる。
【0151】
ガンの治療の結果、未治療対象の集団と比較した治療対象の集団の平均生存時間を増加させることができる。好ましくは、平均生存時間は、30日以上;さらに好ましくは60日以上;さらに好ましくは90日以上;そして最も好ましくは120日以上増加する。集団の平均生存時間の増加は、任意の再現可能な手段によって測定することができる。集団の平均生存時間の増加は、例えば、集団について活性化合物での治療開始後の生存の平均長さを計算することによって測定することができる。集団の平均生存時間の増加はまた、例えば活性化合物での治療の第1ラウンドの完了後の生存の平均長さを計算することによっても測定することができる。
【0152】
ガンの治療の結果、本発明の化合物ではない薬物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体、溶媒和物、アナログもしくは誘導体での単剤治療を受ける集団と比較して治療対象の集団の平均生存時間を増加させることができる。好ましくは、平均生存時間は、30日以上増加し;さらに好ましくは60日以上増加し;さらに好ましくは90日以上増加しそして最も好ましくは120日以上増加する。集団の平均生存時間の増加は、任意の再現可能な手段によって測定することができる。集団の平均生存時間の増加は、集団について活性化合物での治療完了後の生存の平均長さを計算することによって測定することができる。集団の平均生存時間の増加は、例えば、集団について活性化合物での治療の第1ラウンド完了後の生存の平均長さを計算することによっても測定することができる。
【0153】
ガンの治療の結果、担体単独を受容する集団と比較して治療対象の集団の死亡率を減少させることができる。ガンの治療の結果、非治療集団と比較して、治療対象の集団の死亡率を減少させることができる。ガンの治療の結果、本発明の化合物でない薬物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体、アナログもしくは誘導体での単剤治療を受けている集団と比較して、治療対象の集団の死亡率を減少させることができる。好ましくは、死亡率は2%以上減少させることができ;さらに好ましくは5%以上;さらに好ましくは10%以上;そして最も好ましくは25%以上減少させることができる。治療対象の集団の死亡率の減少は、任意の再現可能な手段によって測定することができる。集団の死亡率の減少は、例えば、活性化合物での治療開始後の単位時間当たりの疾患に関連する死亡の平均数を集団について計算することによって測定することができる。集団の死亡率の減少は、例えば、活性化合物での治療の第1ラウンド完了後の単位時間当たりの疾患に関連する死亡の平均数を集団について計算することによっても測定することができる。
【0154】
ガンの治療の結果、腫瘍成長速度を減少させることができる。好ましくは、治療後、腫瘍成長速度は、治療前の数に対して少なくとも5%減少し;さらに好ましくは、腫瘍成長速度は少なくとも10%減少し;さらに好ましくは少なくとも20%減少し;さらに好ましくは少なくとも30%減少し;さらに好ましくは少なくとも40%減少し;さらに好ましくは少なくとも50%減少し;なお一層好ましくは少なくとも50%減少し;そして最も好ましくは少なくとも75%減少する。腫瘍成長速度は、任意の再現可能な測定手段によって測定することができる。腫瘍成長速度は単位時間当たりの腫瘍直径の変化によって測定することができる。
【0155】
ガンの治療の結果として腫瘍再成長を減少させることができる。好ましくは、治療後、腫瘍再成長は5%未満であり;さらに好ましくは、腫瘍再成長は、10%未満;さらに好ましくは20%未満;さらに好ましくは30%未満;さらに好ましくは40%未満;さらに好ましくは50%未満;なお一層好ましくは50%未満;そしてもっとも好ましくは75%未満である。腫瘍再成長は、任意の再現可能な測定手段によって測定することができる。腫瘍再成長は、例えば、治療後に起こる以前の腫瘍収縮後の腫瘍の直径の増加を測定することによって測定される。腫瘍再成長の減少は、治療を停止した後に腫瘍が再発しないことによって示される。
【0156】
ガンの治療の結果、細胞増殖速度を減少させることができる。好ましくは、治療後、細胞増殖速度は少なくとも5%減少し;さらに好ましくは少なくとも10%減少し;さらに好ましくは少なくとも20%減少し;さらに好ましくは少なくとも30%減少し;さらに好ましくは少なくとも40%減少し;さらに好ましくは少なくとも50%減少し;なお一層好ましくは、少なくとも50%減少し;そして最も好ましくは少なくとも75%減少する。細胞増殖速度は、任意の再現可能な測定手段によって測定することができる。細胞増殖速度は、例えば、単位時間当たりの組織サンプル中の分裂細胞数を測定することによって測定される。
【0157】
ガンの治療の結果、増殖する細胞の割合を減少させることができる。好ましくは、治療後、増殖する細胞の割合は少なくとも5%減少し;さらに好ましくは少なくとも10%減少し;さらに好ましくは少なくとも20%減少し;さらに好ましくは少なくとも30%減少し;さらに好ましくは少なくとも40%減少し;さらに好ましくは少なくとも50%減少し;なお一層好ましくは少なくとも50%減少し;そして最も好ましくは少なくとも75%減少する。増殖する細胞の割合は、任意の再現可能な測定手段によって測定することができる。好ましくは、増殖する細胞の割合は、例えば、組織サンプル中の非分裂細胞の数に対する分裂細胞の数を定量することによって測定される。増殖する細胞の割合は分裂指数に等しい可能性がある。
【0158】
ガンの治療の結果、細胞増殖の部分または区域のサイズを減少させることができる。好ましくは、治療後、細胞増殖の部分または区域のサイズは、治療前のそのサイズに対して少なくとも5%減少し;さらに好ましくは少なくとも10%減少し;さらに好ましくは少なくとも20%減少し;さらに好ましくは少なくとも30%減少し;さらに好ましくは少なくとも40%減少し;さらに好ましくは少なくとも50%減少し;なお一層好ましくは少なくとも50%減少し;そして最も好ましくは少なくとも75%減少する。細胞増殖の部分または区域のサイズは、任意の再現可能な測定手段によって測定することができる。細胞増殖の部分または区域のサイズは、細胞増殖の部分または区域の直径または幅として測定することができる。
【0159】
ガンの治療の結果、異常な外観または形態を有する細胞の数または割合を減少させることができる。好ましくは、治療後、異常な形態を有する細胞の数は、治療前のサイズに対して少なくとも5%減少し;さらに好ましくは少なくとも10%減少し;さらに好ましくは少なくとも20%減少し;さらに好ましくは少なくとも30%減少し;さらに好ましくは少なくとも40%減少し;さらに好ましくは少なくとも50%減少し;なお一層好ましくは少なくとも50%減少し;そして最も好ましくは少なくとも75%減少する。異常な細胞の外観または形態は、任意の再現可能な測定手段によって測定することができる。異常な細胞の形態は、顕微鏡法、例えば、倒立組織培養顕微鏡を用いて測定することができる。異常な細胞の形態は、核多形性(nuclear pleiomorphism)の形態をとり得る。
【0160】
ガンの治療は細胞死をもたらす可能性があり、好ましくは、細胞死は、集団中の細胞の数を少なくとも10%減少させる。さらに好ましくは、細胞死は、少なくとも20%の減少;さらに好ましくは少なくとも30%の減少;さらに好ましくは少なくとも40%の減少;さらに好ましくは少なくとも50%の減少;最も好ましくは少なくとも75%の減少を意味する。集団中の細胞の数は、任意の再現可能な手段によって測定することができる。集団中の細胞の数は、蛍光活性化細胞分類(FACS)、免疫蛍光顕微鏡法および光学顕微鏡法によって測定できる。細胞死を測定する方法は、Li et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 100(5): 2674-8, 2003.で示されているとおりである。1つの態様では、細胞死はアポトーシスによって起こる。
【0161】
本明細書中で用いられる場合、「選択的に」という語は、1つの集団で別の集団よりも高い頻度で起こる傾向を意味する。比較される集団は細胞集団であり得る。好ましくは、本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物は、正常細胞に対してではなくガン細胞または前ガン細胞に対して選択的に作用する。好ましくは、本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物は、1つの分子標的(たとえば、標的タンパク質メチルトランスフェラーゼ)を調節するために選択的に作用するが、別の分子標的(たとえば、非標的タンパク質メチルトランスフェラーゼ)を有意に調節しない。本発明はまた、タンパク質メチルトランスフェラーゼなどの酵素の活性を選択的に阻害するための方法も提供する。好ましくは、ある事象が集団Bと比較して集団Aで2倍を超えて頻繁に起こる場合、それは集団Bに対して集団Aにおいて選択的に起こる。ある事象は集団Aにおいて5倍を超えて頻繁に起こる場合、それは選択的に起こる。ある事象が、集団Aにおいて10倍を超えて頻繁に起こる場合、;さらに好ましくは集団Bに比べて集団Aにおいて50倍を超えて;なお一層好ましくは100倍を超えて;そして最も好ましくは1000倍を超えて頻繁に起こる場合、それは選択的に起こる。例えば、細胞死は、正常細胞と比較して、ガン細胞で2倍を超えて頻繁に起こる場合、ガン細胞で選択的に起こるといわれる。
【0162】
本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物は、分子標的(たとえば、標的タンパク質メチルトランスフェラーゼ)を調節できる。調節は、分子標的の活性を刺激または阻害することを指す。好ましくは、本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物は、前記化合物の存在のみがないこと以外は同じ条件下での分子標的の活性と比べて少なくとも2倍分子標的の活性を刺激または阻害する場合、分子標的の活性を調節する。さらに好ましくは、本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物は、前記化合物の存在のみがないことを除いて同じ条件下での分子標的の活性と比べて、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍分子標的の活性を刺激または阻害する場合、分子標的の活性を調節する。分子標的の活性は、任意の再現可能な手段によって測定することができる。分子標的の活性は、インビトロまたはインビボで測定できる。例えば、分子標的の活性は、酵素活性アッセイもしくはDNA結合アッセイによってインビトロで測定してもよいし、または分子標的の活性は、レポーター遺伝子の発現についてのアッセイによってインビボで測定してもよい。
【0163】
本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物は、その化合物の添加が前記化合物の存在のみがないことを除いて同じ条件下での分子標的の活性と比べて10%を越えて分子標的の活性を刺激または阻害しない場合、分子標的の活性を有意に調節しない。
【0164】
本明細書中で用いられる場合、「アイソザイム選択的」という用語は、酵素の第2のイソ型と比較した酵素の第1のイソ型の刺激の優先的阻害または刺激(たとえば、タンパク質メチルトランスフェラーゼアイソザイムベータと比較したタンパク質メチルトランスフェラーゼアイソザイムアルファの優先的阻害または刺激)を意味する。好ましくは、本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物は、生物学的効果を達成するために必要な投薬量で、最低4倍差、好ましくは10倍差、さらに好ましくは50倍差を示す。好ましくは、本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物は、阻害の範囲にわたってこの差を示し、この差は、関心対象の分子標的のIC
50、すなわち50%阻害で例示される。
【0165】
本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物を細胞またはそれを必要とする対象に投与すると、関心対象のタンパク質メチルトランスフェラーゼの活性の調節(すなわち、刺激または阻害)が起こり得る。
【0166】
H3−K27のメチル化、トリメチル化H3−K27の形成、モノメチル化H3−K27のジメチル化H3−K27への変換、またはジメチル化H3−K27のトリメチル化H3−K27への変換の検出は、任意の好適な方法を使用して達成することができる。例示的方法は、米国特許第US20120071418号で見出すことができ、その内容は参照により本明細書中に組み込まれる。
【0167】
本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物を細胞またはそれを必要とする対象に投与すると、細胞内標的(たとえば、基質)の活性の調節(すなわち、刺激または阻害)が起こる。限定されるものではないが、タンパク質メチルトランスフェラーゼをはじめとするいくつかの細胞内標的を本発明の化合物で調節できる。
【0168】
好ましくは、有効量の本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物は、正常な細胞に対して著しく細胞毒性ではない。治療有効量の化合物は、この化合物の治療有効量での投与が、正常細胞の10%超において細胞死を誘導しない場合は、正常細胞に対して著しく細胞毒性ではない。治療有効量の化合物は、治療有効量でのこの化合物の投与が正常細胞の10%超において細胞死を誘発しない場合は、正常細胞の生存能力に著しい影響を及ぼさない。1つの態様では、細胞死はアポトーシスによって起こる。
【0169】
細胞を本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物と接触させることによって、ガン細胞において選択的に細胞死を誘発または活性化することができる。それを必要とする対象に本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物を投与することによって、細胞死を選択的にガン細胞において誘発または活性化することができる。細胞を本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物と接触させることによって、細胞死を選択的に細胞増殖性障害に冒された1以上の細胞において誘発することができる。好ましくは、それを必要とする対象に本発明の化合物、またはその薬剤的に許容される塩、多形体もしくは溶媒和物を投与することによって、細胞死を選択的に細胞増殖性障害に冒された1以上の細胞において誘発する。
【0170】
当業者は、本明細書中で検討する公知技術または同等の技術の詳細な説明について一般的参考文献を参照することができる。これらの文書としては以下の物が挙げられる。Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley and Sons, Inc. (2005); Sambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (3
rd edition), Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, New York (2000); Coligan et al., Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, N.Y.; Enna et al., Current Protocols in Pharmacology, John Wiley & Sons, N.Y.; Fingl et al., The Pharmacological Basis of Therapeutics (1975), Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 18
th edition (1990)。これらの文書も、もちろん本発明の態様の作製または使用において参照することができる。
【0171】
本明細書中で記載する任意の方法で使用できる化合物(すなわち、EZH2阻害剤)は次式I:
【0172】
【化6】
を有し得るか、またはその薬剤的に許容される塩であり;式中、
R
701は、H、F、OR
707、NHR
707、−(C≡C)−(CH
2)
n7−R
708、フェニル、5もしくは6員ヘテロアリール、C
3〜8シクロアルキル、または1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロシクロアルキルであり、ここで、フェニル、5もしくは6員ヘテロアリール、C
3〜8シクロアルキルまたは4〜7員ヘテロシクロアルキルは、各々独立して、ハロ、C
1〜3アルキル、OH、O−C
1〜6アルキル、NH−C
1〜6アルキル、および、C
3〜8シクロアルキルまたは1〜3個のヘテロ原子を含有する4〜7員ヘテロシクロアルキルで置換されたC
1〜3アルキルから選択される1以上の基で場合によって置換されていてもよく、ここで、O−C
1〜6アルキルおよびNH−C
1〜6アルキルの各々は、ヒドロキシル、O−C
1〜3アルキルまたはNH−C
1〜3アルキルで場合によって置換されていてもよく、O−C
1〜3アルキルおよびNH−C
1〜3アルキルの各々は、O−C
1〜3アルキルまたはNH−C
1〜3アルキルで場合によってさらに置換されていてもよい;
R
702およびR
703のそれぞれは独立して、H、ハロ、C
1〜4アルキル、C
1〜6アルコキシルまたはC
6〜C
10アリールオキシであり、それぞれは場合によって1以上のハロで置換されていてもよい;
R
704およびR
705のそれぞれは独立してC
1〜4アルキルである;
R
706はN(C
1〜4アルキル)
2で置換されたシクロヘキシルであり、C
1〜4アルキルの一方もしくは両方はC
1〜6アルコキシで置換されている;またはR
706はテトラヒドロピラニルである;
R
707は、ヒドロキシル、C
1〜4アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−C
1〜4アルキルアミノ、C
3〜8シクロアルキル、および1〜3個のヘテロ原子を含有する4〜7員ヘテロシクロアルキルから選択される1以上の基で場合によって置換されていてもよいC
1〜4アルキルであり、ここで、C
3〜8シクロアルキルまたは4〜7員ヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、C
1〜3アルキルで場合によってさらに置換されていてもよい;
R
708は、OH、ハロ、およびC
1〜4アルコキシから選択される1以上の基で場合によって置換されていてもよいC
1〜4アルキル、1〜3個のヘテロ原子を含む4〜7員ヘテロシクロアルキル、またはO−C
1〜6アルキルであり、ここで、4〜7員ヘテロシクロアルキルは、OHまたはC
1〜6アルキルで場合によってさらに置換されている可能性がある;そして
n
7は0、1または2である。
【0173】
例えば、R
706は、N(C
1〜4アルキル)
2で置換されたシクロヘキシルであり、ここで、C
1〜4アルキルの1つは非置換であり、他のものはメトキシで置換されている。
【0178】
例えば、R
702がメチルまたはイソプロピルであり、R
703はメチルまたはメトキシルである。
【0180】
例えば、R
701はOR
707であり、R
707は、OCH
3またはモルホリンで場合によって置換されていてもよいC
1〜3アルキルである。
【0181】
例えば、R
701がHまたはFである。
【0182】
例えば、R
701がテトラヒドロピラニル、フェニル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、またはピラゾリルであり、そのそれぞれが、メチル、メトキシ、モルホリンで置換されたエチル、または−OCH
2CH
2OCH
3で場合によって置換されていてもよい。
【0183】
例えば、R
708は、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ジアゼパン、またはアゼチジンであり、そのそれぞれは、OHまたはC
1〜6アルキルで場合によって置換されていてもよい。
【0184】
例えば、R
708はモルホリンである。
【0185】
例えば、R
708は、C
1〜6アルキルで置換されたピペラジンである。
【0186】
例えば、R
708は、メチル、t−ブチルまたはC(CH
3)
2OHである。
【0187】
本明細書中で記載する任意の方法で使用できる化合物(すなわち、EZH2阻害剤)は次式III:
【0188】
【化9】
を有し得るかまたはその薬剤的に許容される塩である。
【0189】
この式中:
R
801は、C
1〜6アルキル、C
2〜6アルケニル、C
2〜6アルキニル、C
3〜8シクロアルキル、1〜3個のヘテロ原子を含有する4〜7員ヘテロシクロアルキル、フェニルまたは5もしくは6員ヘテロアリールであり、そのそれぞれはO−C
1〜6アルキル−R
xまたはNH−C
1〜6アルキル−R
xで置換され、ここで、R
xはヒドロキシル、O−C
1〜3アルキルまたはNH−C
1〜3アルキルであり、そしてR
xがヒドロキシルである場合を除いて、R
xはO−C
1〜3アルキルまたはNH−C
1〜3アルキルで場合によってさらに置換されていてもよい;あるいはR
801は−Q
2−T
2で置換されたフェニルであり、ここで、Q
2は結合、またはハロ、シアノ、ヒドロキシルもしくはC
1〜C
6アルコキシで場合によって置換されていてもよいC
1〜C
3アルキルリンカーであり、T
2は場合によって置換されていてもよい4〜12員ヘテロシクロアルキルである;そしてR
801は場合によってさらに置換されていてもよい;
R
802およびR
803のそれぞれは独立して、H、ハロ、C
1〜4アルキル、C
1〜6アルコキシルまたはC
6〜C
10アリールオキシであり、そのそれぞれは、場合によって1以上のハロで置換されていてもよい;
R
804およびR
805のそれぞれは独立してC
1〜4アルキルである;そして R
806は、−Q
x−T
xであり、ここで、Q
xは結合またはC
1〜4アルキルリンカーであり、T
xは、H、場合によって置換されていてもよいC
1〜4アルキル、場合によって置換されていてもよいC
3〜C
8シクロアルキルまたは場合によって置換されていてもよい4〜14員ヘテロシクロアルキルである。
【0190】
例えば、Q
xおよびQ
2の各々は独立して結合またはメチルリンカーであり、そしてT
xおよびT
2の各々は独立してテトラヒドロピラニル、1、2、もしくは3個のC
1〜4アルキル基で置換されたピペリジニル、またはN(C
1〜4アルキル)
2で置換されたシクロヘキシルであり、ここでC
1〜4アルキルの一方または両方はC
1〜6アルコキシで場合によって置換されていてもよい;
【0191】
例えば、R
806はN(C
1〜4アルキル)
2で置換されたシクロヘキシルであるか、またはR
806はテトラヒドロピラニルである。
【0194】
例えば、R
801はO−C
1〜6アルキル−R
xで置換されたフェニルまたは5もしくは6員ヘテロアリールであるか、あるいはR
801はCH
2−テトラヒドロピラニルで置換されたフェニルである。
【0195】
例えば、本発明の化合物は、式IVaまたはIVbの化合物:
【0197】
【化12】
(式中、Z’はCHまたはNであり、そしてR
807はC
2〜3アルキル−R
xである)である。
【0198】
例えば、R
807は、−CH
2CH
2OH、−CH
2CH
2OCH
3、または−CH
2CH
2OCH
2CH
2OCH
3である。
【0199】
例えば、R
802はメチルまたはイソプロピルであり、R
803はメチルまたはメトキシルである。
【0202】
【化13】
を有し得るか、またはその薬剤的に許容される塩もしくはエステルである。
【0203】
この式中:
R
2、R
4およびR
12は、それぞれ独立してC
1〜6アルキルである;
R
6は、C
6〜C
10アリールまたは5もしくは6員ヘテロアリールであり、各々は1以上の−Q
2−T
2で場合によって置換されていてもよく、ここで、Q
2は、結合またはハロ、シアノ、ヒドロキシルもしくはC
1〜C
6アルコキシで場合によって置換されていてもよいC
1〜C
3アルキルリンカーであり、そしてT
2は、H、ハロ、シアノ、−OR
a、−NR
aR
b、−(NR
aR
bR
c)
+A
−、−C(O)R
a、−C(O)OR
a、−C(O)NR
aR
b、−NR
bC(O)R
a、−NR
bC(O)OR
a、−S(O)
2R
a、−S(O)
2NR
aR
b、またはR
S2であり、ここで、R
a、R
b、およびR
cの各々は独立してHまたはR
S3であり、A
−は薬剤的に許容されるアニオンであり、R
S2およびR
S3の各々は独立して、C
1〜C
6アルキル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、または5もしくは6員ヘテロアリールであるか、あるいはR
aおよびR
bは、それらが結合しているN原子と一緒になって、0または1個のさらなるヘテロ原子を有する4〜12員ヘテロシクロアルキル環を形成し、そしてR
S2、R
S3、ならびにR
aおよびR
bによって形成される4〜12員ヘテロシクロアルキル環のそれぞれは1以上の−Q
3−T
3で場合によって置換されていてもよく、この場合、Q
3は結合またはC
1〜C
3アルキルリンカーであり、それぞれはハロ、シアノ、ヒドロキシルもしくはC
1〜C
6アルコキシで場合によって置換されていてもよく、そしてT
3は、ハロ、シアノ、C
1〜C
6アルキル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、5もしくは6員ヘテロアリール、OR
d、COOR
d、−S(O)
2R
d、−NR
dR
e、および−C(O)NR
dR
eからなる群から選択され、R
dおよびR
eの各々は独立してHもしくはC
1〜C
6アルキルであるか、または−Q
3−T
3はオキソである;または任意の2つの隣接する−Q
2−T
2は、それらが結合している原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を場合によって含み、そしてハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O)O−C
1〜C
6アルキル、シアノ、C
1〜C
6アルコキシル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、ジ−C
1〜C
6アルキルアミノ、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、および5もしくは6員ヘテロアリールからなる群から選択される1以上の置換基で場合によって置換されていてもよい5または6員環を形成する;
R
7は−Q
4−T
4であり、ここで、Q
4は、結合、C
1〜C
4アルキルリンカー、またはC
2〜C
4アルケニルリンカーであり、各リンカーは、ハロ、シアノ、ヒドロキシルまたはC
1〜C
6アルコキシで場合によって置換されていてもよく、そしてT
4は、H、ハロ、シアノ、NR
fR
g、−OR
f、−C(O)R
f、−C(O)OR
f、−C(O)NR
fR
g、−C(O)NR
fOR
g、−NR
fC(O)R
g、−S(O)
2R
f、またはR
S4であり、ここで、R
fおよびR
gの各々は独立してHまたはR
S5であり、R
S4およびR
S5の各々は独立して、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、または5もしくは6員ヘテロアリールであり、そしてR
S4およびR
S5の各々は1以上の−Q
5−T
5で場合によって置換されていてもよく、ここで、Q
5は結合、C(O)、C(O)NR
k、NR
kC(O)、S(O)
2、またはC
1〜C
3アルキルリンカーであり、R
kはHまたはC
1〜C
6アルキルであり、そしてT
5は、H、ハロ、C
1〜C
6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C
1〜C
6アルコキシル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、ジ−C
1〜C
6アルキルアミノ、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、5もしくは6員ヘテロアリール、またはS(O)
qR
qであり、ここで、qは0、1、または2であり、R
qはC
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、または5もしくは6員ヘテロアリールであり、そしてT
5は、T
5がH、ハロ、ヒドロキシル、またはシアノである場合を除いて、ハロ、C
1〜C
6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C
1〜C
6アルコキシル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、ジ−C
1〜C
6アルキルアミノ、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、および5もしくは6員ヘテロアリールからなる群から選択される1以上の置換基で場合によって置換されていてもよい;あるいは−Q
5−T
5はオキソである;そして
R
8は、H、ハロ、ヒドロキシル、COOH、シアノ、R
S6、OR
S6、またはCOOR
S6であり、ここで、R
S6は、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
3〜C
8シクロアルキル、4〜12員ヘテロシクロアルキル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、またはジ−C
1〜C
6アルキルアミノであり、そしてR
S6は、ハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O)O−C
1〜C
6アルキル、シアノ、C
1〜C
6アルコキシル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、およびジ−C
1〜C
6アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で場合によって置換されていてもよい;またはR
7およびR
8は、それらが結合しているN原子と一緒になって、0〜2個のさらなるヘテロ原子を有する4〜11員ヘテロシクロアルキル環を形成する、そしてR
7およびR
8によって形成される4〜11員ヘテロシクロアルキル環は、1以上の−Q
6−T
6で場合によって置換されていてもよく、ここで、Q
6は、結合、C(O)、C(O)NR
m、NR
mC(O)、S(O)
2、またはC
1〜C
3アルキルリンカーであり、R
mは、HまたはC
1〜C
6アルキルであり、そしてT
6は、H、ハロ、C
1〜C
6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C
1〜C
6アルコキシル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、ジ−C
1〜C
6アルキルアミノ、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、5もしくは6員ヘテロアリール、またはS(O)
pR
pであり、ここで、pは、0、1、または2であり、R
pはC
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、または5もしくは6員ヘテロアリールであり、そしてT
6がH、ハロ、ヒドロキシル、またはシアノである場合を除いて、T
6は、ハロ、C
1〜C
6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C
1〜C
6アルコキシル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、ジ−C
1〜C
6アルキルアミノ、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、および5もしくは6員ヘテロアリールからなる群から選択される1以上の置換基で場合によって置換されていてもよい;あるいは−Q
6−T
6はオキソである。
【0204】
例えば、R
6はC
6〜C
10アリールまたは5もしくは6員ヘテロアリールであり、その各々は場合によって独立して1以上の−Q
2−T
2で置換されていてもよく、ここで、Q
2は結合またはC
1〜C
3アルキルリンカーであり、そしてT
2は、H、ハロ、シアノ、−OR
a、−NR
aR
b、−(NR
aR
bR
c)
+A
−、−C(O)NR
aR
b、−NR
bC(O)R
a、−S(O)
2R
a、またはR
S2であり、ここで、R
aおよびR
bの各々は独立してHまたはR
S3であり、R
S2およびR
S3の各々は独立してC
1〜C
6アルキルである、またはR
aおよびR
bはそれらが結合しているN原子と一緒になって、0もしくは1個のさらなるヘテロ原子を有する4〜7員ヘテロシクロアルキル環を形成し、そしてR
S2、R
S3、ならびにR
aおよびR
bによって形成される4〜7員ヘテロシクロアルキル環の各々は場合によって独立して1以上の−Q
3−T
3で置換されていてもよく、ここで、Q
3は結合またはC
1〜C
3アルキルリンカーであり、T
3は、ハロ、C
1〜C
6アルキル、4〜7員ヘテロシクロアルキル、OR
d、−S(O)
2R
d、および−NR
dR
eからなる群から選択され、R
dおよびR
eの各々は独立してHもしくはC
1〜C
6アルキルである、または−Q
3−T
3はオキソである;あるいは任意の2つの隣接する−Q
2−T
2は、それらが結合している原子と一緒になって、N、OおよびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を場合によって含んでもよい5または6員環を形成する。
【0205】
例えば、本発明の化合物は、式(VI):
【0206】
【化14】
を有するもの、またはその薬剤的に許容される塩であり、式中、Q
2は結合またはメチルリンカーであり、T
2は、H、ハロ、−OR
a、−NR
aR
b、−(NR
aR
bR
c)
+A
−、または−S(O)
2NR
aR
bであり、R
7は、ピペリジニル、テトラヒドロピラン、シクロペンチル、またはシクロヘキシルであり、それぞれは1つの−Q
5−T
5で場合によって置換されていてもよく、そしてR
8はエチルである。
【0208】
【化15】
を有し得、式中、
R
aおよびR
bの各々は独立してHまたはR
S3であり、R
S3はC
1〜C
6アルキル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、または5もしくは6員ヘテロアリールであるか、あるいはR
aおよびR
bは、それらが結合しているN原子と一緒になって、0または1個のさらなるヘテロ原子を有する4〜12員ヘテロシクロアルキル環を形成し、そしてR
S3ならびにR
aおよびR
bによって形成される4〜12員ヘテロシクロアルキル環の各々は1以上の−Q
3−T
3で場合によって置換されていてもよく、この場合、Q
3は結合またはC
1〜C
3アルキルリンカーであり、それぞれはハロ、シアノ、ヒドロキシルもしくはC
1〜C
6アルコキシで場合によって置換されていてもよく、そしてT
3は、ハロ、シアノ、C
1〜C
6アルキル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜12員ヘテロシクロアルキル、5もしくは6員ヘテロアリール、OR
d、COOR
d、−S(O)
2R
d、−NR
dR
e、および−C(O)NR
dR
eからなる群から選択され、R
dおよびR
eの各々は独立してHもしくはC
1〜C
6アルキルであるか、または−Q
3−T
3はオキソである;
R
7は−Q
4−T
4であり、ここで、Q
4は、結合、C
1〜C
4アルキルリンカー、またはC
2〜C
4アルケニルリンカーであり、各リンカーは、ハロ、シアノ、ヒドロキシルまたはC
1〜C
6アルコキシで場合によって置換されていてもよく、そしてT
4は、H、ハロ、シアノ、NR
fR
g、−OR
f、−C(O)R
f、−C(O)OR
f、−C(O)NR
fR
g、−C(O)NR
fOR
g、−NR
fC(O)R
g、−S(O)
2R
f、またはR
S4であり、ここで、R
fおよびR
gの各々は独立してHまたはR
S5であり、R
S4およびR
S5の各々は独立して、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜7員ヘテロシクロアルキル、または5もしくは6員ヘテロアリールであり、そしてR
S4およびR
S5の各々は1以上の−Q
5−T
5で場合によって置換されていてもよく、ここで、Q
5は結合、C(O)、C(O)NR
k、NR
kC(O)、S(O)
2、またはC
1〜C
3アルキルリンカーであり、R
kはHまたはC
1〜C
6アルキルであり、そしてT
5は、H、ハロ、C
1〜C
6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C
1〜C
6アルコキシル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、ジ−C
1〜C
6アルキルアミノ、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜7員ヘテロシクロアルキル、5もしくは6員ヘテロアリール、またはS(O)
qR
qであり、ここで、qは0、1、または2であり、R
qはC
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜7員ヘテロシクロアルキル、または5もしくは6員ヘテロアリールであり、そしてT
5がH、ハロ、ヒドロキシル、またはシアノである場合を除いて、T
5は、ハロ、C
1〜C
6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C
1〜C
6アルコキシル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、ジ−C
1〜C
6アルキルアミノ、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜7員ヘテロシクロアルキル、および5もしくは6員ヘテロアリールからなる群から選択される1以上の置換基で場合によって置換されていてもよい;あるいは−Q
5−T
5はオキソである;ただし、R
7はHでないとする;そして
R
8は、H、ハロ、ヒドロキシル、COOH、シアノ、R
S6、OR
S6、またはCOOR
S6であり、ここで、R
S6はC
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、またはジ−C
1〜C
6アルキルアミノであり、そしてR
S6は、ハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O)O−C
1〜C
6アルキル、シアノ、C
1〜C
6アルコキシル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、およびジ−C
1〜C
6アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で場合によって置換されていてもよい;またはR
7およびR
8は、それらが結合しているN原子と一緒になって、4〜11員ヘテロシクロアルキル環を形成し、これは0〜2個のさらなるヘテロ原子を有し、1以上の−Q
6−T
6で場合によって置換されていてもよく、ここで、Q
6は、結合、C(O)、C(O)NR
m、NR
mC(O)、S(O)
2、またはC
1〜C
3アルキルリンカーであり、R
mはHまたはC
1〜C
6アルキルであり、そしてT
6はH、ハロ、C
1〜C
6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C
1〜C
6アルコキシル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、ジ−C
1〜C
6アルキルアミノ、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜7員ヘテロシクロアルキル、5もしくは6員ヘテロアリール、またはS(O)
pR
pであり、ここで、pは0、1、または2であり、R
pはC
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、C
2〜C
6アルキニル、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜7員ヘテロシクロアルキル、または5もしくは6員ヘテロアリールであり、そしてT
6がH、ハロ、ヒドロキシル、またはシアノである場合を除いて、T
6は、ハロ、C
1〜C
6アルキル、ヒドロキシル、シアノ、C
1〜C
6アルコキシル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、ジ−C
1〜C
6アルキルアミノ、C
3〜C
8シクロアルキル、C
6〜C
10アリール、4〜7員ヘテロシクロアルキル、および5もしくは6員ヘテロアリールからなる群から選択される1以上の置換基で場合によって置換されていてもよい;または−Q
6−T
6はオキソである。
【0209】
例えば、R
aおよびR
bはそれらが結合しているN原子と一緒になって、そのN原子に対して0または1個のさらなるヘテロ原子を有する4〜7員ヘテロシクロアルキル環を形成し、この環は、1以上の−Q
3−T
3で場合によって置換されていてもよく、ここで、ヘテロシクロアルキルは、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、トリアゾリジニル、ピペリジニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、ピペラジニル、またはモルホリニルである。
【0210】
例えば、R
7は、C
3〜C
8シクロアルキルまたは4〜7員ヘテロシクロアルキルであり、それぞれ1以上の−Q
5−T
5で場合によって置換されていてもよい。
【0211】
例えば、R
7は、ピペリジニル、テトラヒドロピラン、テトラヒドロ−2H−チオピラニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ピロリジニル、またはシクロヘプチルであり、それぞれ場合によって1以上の−Q
5−T
5で置換されていてもよい。
【0212】
例えば、R
8は、HまたはC
1〜C
6アルキルであり、これは、ハロ、ヒドロキシル、COOH、C(O)O−C
1〜C
6アルキル、シアノ、C
1〜C
6アルコキシル、アミノ、モノ−C
1〜C
6アルキルアミノ、およびジ−C
1〜C
6アルキルアミノからなる群から選択される1以上の置換基で場合によって置換されていてもよい。
【0213】
いくつかの実施形態では、本明細書中で提示される任意の方法で使用され得る化合物は:
【0214】
【化16】
その立体異性体またはその薬剤的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0215】
いくつかの実施形態では、本明細書中で提示される任意の方法で使用され得る化合物は:
【0219】
【化20】
その立体異性体またはその薬剤的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0220】
いくつかの実施形態では、本明細書中で提示される任意の方法で使用され得る化合物は:
【0222】
【化22】
その立体異性体またはその薬剤的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0223】
いくつかの実施形態では、本発明の方法で使用するために好適な化合物としては式(VII):
【0224】
【化23】
(式中、
V
1はNまたはCR
7であり、
V
2はNまたはCR
2であり、ただし、V
1がNである場合、V
2はNであるとし、
XおよびZは、水素、(C
1〜C
8)アルキル、(C
2〜C
8)アルケニル、(C
2〜C
8)アルキニル、非置換もしくは置換(C
3〜C
8)シクロアルキル、非置換もしくは置換(C
3〜C
8)シクロアルキル−(C
1〜C
8)アルキルまたは−(C
2〜C
8)アルケニル、非置換もしくは置換(C
5〜C
8)シクロアルケニル、非置換もしくは置換(C
5〜C
8)シクロアルケニル−(C
1〜C
8)アルキルまたは−(C
2〜C
8)アルケニル、(C
6〜C
10)ビシクロアルキル、非置換もしくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換もしくは置換ヘテロシクロアルキル−(C
1〜C
8)アルキルまたは−(C
2〜C
8)アルケニル、非置換もしくは置換アリール、非置換もしくは置換アリール−(C
1〜C
8)アルキルまたは−(C
2〜C
8)アルケニル、非置換もしくは置換ヘテロアリール、非置換もしくは置換ヘテロアリール−(C
1〜C
8)アルキルまたは−(C
2〜C
8)アルケニル、ハロ、シアノ、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−CONR
aNR
aR
b、−SR
a、−SOR
a、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、ニトロ、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b、−NR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aC(O)OR
a、−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−NR
aNR
aR
b、−NR
aNR
aC(O)R
b、−NR
aNR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aNR
aC(O)ORa、−OR
a、−OC(O)R
a、および−OC(O)NR
aR
bからなる群から独立して選択される;
Yは、Hまたはハロである;
R
1は、(C
1〜C
8)アルキル、(C
2〜C
8)アルケニル、(C
2〜C
8)アルキニル、非置換もしくは置換(C
3〜C
8)シクロアルキル、非置換もしくは置換(C
3〜C
8)シクロアルキル−(C
1〜C
8)アルキルまたは−(C
2〜C
8)アルケニル、非置換もしくは置換(C
5〜C
8)シクロアルケニル、非置換もしくは置換(C
5〜C
8)シクロアルケニル−(C
1〜C
8)アルキルまたは−(C
2〜C
8)アルケニル、非置換もしくは置換(C
6〜C
10)ビシクロアルキル、非置換もしくは置換ヘテロシクロアルキルまたは−(C
2〜C
8)アルケニル、非置換もしくは置換ヘテロシクロアルキル−(C
1〜C
8)アルキル、非置換もしくは置換アリール、非置換もしくは置換アリール−(C
1〜C
8)アルキルまたは−(C
2〜C
8)アルケニル、非置換もしくは置換ヘテロアリール、非置換もしくは置換ヘテロアリール−(C
1〜C
8)アルキルまたは−(C
2〜C
8)アルケニル、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−CONR
aNR
aR
bである;
R
2は、水素、(C
1〜C
8)アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、またはハロであり、ここで、前記(C
1〜C
8)アルキルは、アミノおよび(C
1〜C
3)アルキルアミノから選択される1〜2個の基で場合によって置換されていてもよい;
R
7は、水素、(C
1〜C
3)アルキル、またはアルコキシである;
R
3は、水素、(C
1〜C
8)アルキル、シアノ、トリフルオロメチル、−NR
aR
b、またはハロである;
R
6は、水素、ハロ、(C
1〜C
8)アルキル、(C
2〜C
8)アルケニル、(C
2〜C
8)アルキニル、非置換もしくは置換(C
3〜C
8)シクロアルキル、非置換もしくは置換(C
3〜C
8)シクロアルキル−(C
1〜C
8)アルキル、非置換もしくは置換(C
5〜C
8)シクロアルケニル、非置換もしくは置換(C
5〜C
8)シクロアルケニル−(C
1〜C
8)アルキル、(C
6〜C
10)ビシクロアルキル、非置換もしくは置換ヘテロシクロアルキル、非置換もしくは置換ヘテロシクロアルキル−(C
1〜C
8)アルキル、非置換もしくは置換アリール、非置換もしくは置換アリール−(C
1〜C
8)アルキル、非置換もしくは置換ヘテロアリール、非置換もしくは置換ヘテロアリール−(C
1〜C
8)アルキル、シアノ、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−CONR
aNR
aR
b、−SR
a、−SOR
a、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、ニトロ、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b、−NR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aC(O)OR
a、−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−NR
aNR
aR
b、−NR
aNR
aC(O)R
b、−NR
aNR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aNR
aC(O)OR
a、−OR
a、−OC(O)R
a、−OC(O)NR
aR
bからなる群から選択される;
ここで、任意の(C
1〜C
8)アルキル、(C
2〜C
8)アルケニル、(C
2〜C
8)アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール基は、−O(C
1〜C
6)アルキル(R
c)
1〜2、−S(C
1〜C
6)アルキル(R
c)
1−2、−(C
1〜C
6)アルキル(R
c)
1〜2、−(C
1〜C
8)アルキル−ヘテロシクロアルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル−ヘテロシクロアルキル、ハロ、(C
1〜C
6)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
1〜C
6)ハロアルキル、シアノ、−COR
a、−CO
2R
a,−CONR
aR
b、−SR
a、−SOR
a、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、ニトロ、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b、−NR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aC(O)OR
a、−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−OR
a、−OC(O)R
a、OC(O)NR
aR
b、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C
1〜C
4)アルキル、およびヘテロアリール(C
1〜C
4)アルキルからなる群から独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよい;
ここで、前記アリール、ヘテロアリール、アリール(C
1〜C
4)アルキル、またはヘテロアリール(C
1〜C
4)アルキルの任意のアリールまたはヘテロアリール部分は、ハロ、(C
1〜C
6)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
1〜C
6)ハロアルキル、シアノ、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b,−SR
a、−SOR
a、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、ニトロ、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b、−NR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aC(O)OR
a、−NR
aSO2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−OR
a、−OC(O)R
a、および−OC(O)NR
aR
bからなる群から独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよい;
R
aおよびR
bはそれぞれ独立して、水素、(C
1〜C
8)アルキル、(C
2〜C
8)アルケニル、(C
2〜C
8)アルキニル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
6〜C
10)ビシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記(C
1〜C
8)アルキル、(C
2〜C
8)アルケニル、(C
2〜C
8)アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基は、ハロ、ヒドロキシル、(C
1〜C
4)アルコキシ、アミノ、(C
1〜C
4)アルキルアミノ、((C
1〜C
4)アルキル)((C
1〜C
4)アルキル)アミノ、−CO
2H、−CO
2(C
1〜C
4)アルキル、−CONH
2,−CONH(C
1〜C
4)アルキル、−CON((C
1〜C
4)アルキル)((C
1〜C
4)アルキル)、−SO
2(C
1〜C
4)アルキル、−SO
2NH
2,−SO
2NH(C
1〜C
4)アルキル、およびSO
2N((C
1〜C
4)アルキル)((C
1〜C
4)アルキル)から独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよい;
またはR
aおよびR
bはそれらが結合している窒素と一緒になって、酸素、窒素、およびイオウから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によって含んでいてもよい5〜8員飽和または不飽和環を表し、ここで前記環は、(C
1〜C
4)アルキル、(C
1〜C
4)ハロアルキル、アミノ、(C
1〜C
4)アルキルアミノ、((C
1〜C
4)アルキル)((C
1〜C
4)アルキル)アミノ、ヒドロキシル、オキソ、(C
1〜C
4)アルコキシ、および(C
1〜C
4)アルコキシ(C
1〜C
4)アルキルから独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよく、ここで前記環は、(C
3〜C
8)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール環と場合によって縮合していてもよい;
あるいはR
aおよびR
bは、それらが結合している窒素と一緒になって、(C
3〜C
8)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール環を場合によって縮合していてもよい6〜10員架橋2環式環系を表す;
各R
cは独立して、(C
1〜C
4)アルキルアミノ、−NR
aSO2R
b、−SOR
a、−SO
2R
a、−NR
aC(O)OR
a、−NR
aR
b、または−CO
2R
aである)の化合物またはその塩が挙げられる。
【0225】
式(I)の一般構造に含まれる化合物のサブグループは次のように表される:
式(VII)のサブグループA
XおよびZは、(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、−NR
aR
b、および−OR
aからなる群から選択される;
YはHまたはFである;
R
1は、(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、およびヘテロアリールからなる群から選択される;
R
2は、水素、(C
1〜C
8)アルキル、トリフルオロメチル、アルコキシ、またはハロであり、ここで、前記(C
1〜C
8)アルキルは、アミノおよび(C
1〜C
3)アルキルアミノから選択される1〜2個の基で場合によって置換されていてもよい;
R
7は、水素、(C
1〜C
3)アルキル、またはアルコキシである;
R
3は、水素、(C
1〜C
8)アルキル、シアノ、トリフルオロメチル、−NR
aR
b、およびハロからなる群から選択される;
R
6は、水素、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、アミノ、(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル;,アリール、ヘテロアリール、アシルアミノ;(C
2〜C
8)アルキニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキニル;−SO
2R
a;−SO
2NR
aR
bおよび−NR
aSO
2R
bからなる群から選択される;
ここで、任意の(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
2〜C
8)アルキニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキニル基は、−O(C
1〜C
6)アルキル(R
c)
1〜2、−S(C
1〜C
6)アルキル(R
c)
1〜2、−(C
1〜C
6)アルキル(R
c)
1〜2、−(C
1〜C
8)アルキル−ヘテロシクロアルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル−ヘテロシクロアルキル、ハロ、(C
1〜C
6)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
1〜C
6)ハロアルキル、シアノ、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−SR
a、−SOR
a、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、ニトロ、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b、−NR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aC(O)OR
a、−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−OR
a、−OC(O)R
a、−OC(O)NR
aR
b、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C
1〜C
4)アルキル、およびヘテロアリール(C
1〜C
4)アルキルから独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよい;
R
aおよびR
bはそれぞれ独立して、水素、(C
1〜C
8)アルキル、(C
2〜C
8)アルケニル、(C
2〜C
8)アルキニル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
6〜C
10)ビシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、前記(C
1〜C
8)アルキル、(C
2〜C
8)アルケニル、(C
2〜C
8)アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基は、ハロ、ヒドロキシル、(C
1〜C
4)アルコキシ、アミノ、(C
1〜C
4)アルキルアミノ、((C
1〜C
4)アルキル)((C
1〜C
4)アルキル)アミノ、−CO
2H、−CO
2(C
1〜C
4)アルキル、−CONH
2、−CONH(C
1〜C
4)アルキル、−CON((C
1〜C
4)アルキル)((C
1〜C
4)アルキル)、−SO
2(C
1〜C
4)アルキル、−SO
2NH
2,−SO
2NH(C
1〜C
4)アルキル、および−SO
2N((C
1〜C
4)アルキル)((C
1〜C
4)アルキル)から独立して選択される1,2または3個の基によって場合によって置換されていてもよい;
またはR
aおよびR
bはそれらが結合している窒素と一緒になって、酸素、窒素、およびイオウから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によって含んでいてもよい5〜8員飽和または不飽和環を表し、ここで前記環は、(C
1〜C
4)アルキル、(C
1〜C
4)ハロアルキル、アミノ、(C
1〜C
4)アルキルアミノ、((C
1〜C
4)アルキル)((C
1〜C
4)アルキル)アミノ、ヒドロキシル、オキソ、(C
1〜C
4)アルコキシ、および(C
1〜C
4)アルコキシ(C
1〜C
4)アルキルから独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよく、ここで前記環は、(C
3〜C
8)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール環と場合によって縮合していてもよい;
あるいはR
aおよびR
bは、それらが結合している窒素と一緒になって、(C
3〜C
8)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール環と場合によって縮合していてもよい6〜10員架橋2環式環系を表す。この特定のサブグループAにおけるアリールまたはヘテロアリール基は、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、フェニル、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、キノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、および ナフチリジンまたは次のような別のアリールもしくはヘテロアリール基:からなる群から独立して選択される。
【0226】
【化24】
((1)において、
AはO、NH、もしくはSであり;BはCHもしくはNであり、Cは水素もしくはC
1〜C
8アルキルである);または
【0227】
【化25】
((2)において、
DはN、または水素もしくはC
1〜C
8アルキルで場合によって置換されていてもよいCである);あるいは
【0228】
【化26】
((3)において、
EはNHまたはCH
2であり;FはOまたはCOであり;そしてGはNHまたはCH
2である);あるいは
【0229】
【化27】
((4)において、
JはO、SまたはCOである);あるいは
【0230】
【化28】
((5)において、
QはCHまたはNである;
MはCHまたはNである;そして
L/(5)は、水素、ハロ、アミノ、シアノ、(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−CONR
aNR
aR
b、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b,−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−NR
aNR
aR
b、−NR
aNR
aC(O)R
b、−NR
aNR
aC(O)NR
aR
b、または−OR
aであり、
ここで、任意の(C
1〜C
8)アルキルまたは(C
3〜C
8)シクロアルキル基は、(C
1〜C
6)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
1〜C
6)ハロアルキル、シアノ、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−SR
a、−SOR
a、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、ニトロ、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b、−NR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aC(O)OR
a、−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−OR
a、−OC(O)R
a、および−OC(O)NR
aR
bから独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよく;ここで、R
aおよびR
bは前記定義のとおりである);または
【0231】
【化29】
((6)において、
L/(6)はNHもしくはCH
2である);または
【0232】
【化30】
(7において、
M/(7)は、水素、ハロ、アミノ、シアノ、(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−CONR
aNR
aR
b、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b,−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−NR
aNR
aR
b、−NR
aNR
aC(O)R
b、−NR
aNR
aC(O)NR
aR
b、または−OR
aであり、
ここで任意の(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキル基は、(C
1〜C
6)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
1〜C
6)ハロアルキル、シアノ、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−SR
a、−SOR
a、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、ニトロ、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b、−NR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aC(O)OR
a、−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−OR
a、−OC(O)R
a、および−OC(O)NR
aR
bから独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよい;、ここで、R
aおよびR
bは前記定義のとおりである);または
【0233】
【化31】
((8)において、
Pは、CH
2、NH、O、もしくはSであり;Q/(8)はCHもしくはNであり;nは0〜2である);または
【0234】
【化32】
((9)において、
S/(9)およびT/(9)はCであるか、またはS/(9)はCであり、T/(9)はNであるか、またはS/(9)はNであり、T/(9)はCである;
Rは、水素、アミノ、メチル、トリフルオロメチル、またはハロである;
Uは、水素、ハロ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b,−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−NR
aNR
aR
b、−NR
aNR
aC(O)R
b、−OR
a、または4−(1H−ピラゾール−4−イル)であり、
ここで、任意の(C
1〜C
8)アルキルまたは(C
3〜C
8)シクロアルキル基は、(C
1〜C
6)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
1〜C
6)ハロアルキル、シアノ、−COR
a、−CO
2R
a,−CONR
aR
b、−SR
a、SOR
a、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、ニトロ、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b、−NR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aC(O)OR
a、−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−OR
a、−OC(O)R
a、および−OC(O)NR
aR
bから独立して選択される1、2もしくは3個の基で場合によって置換されていてもよい;ここで、R
aおよびR
bは前記定義のとおりである)。
【0235】
式(VII)のサブグループB
XおよびZは、(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、−NR
aR
b、および−OR
aからなる群から独立して選択される;
YはHである;
R
1は、(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、またはヘテロシクロアルキルである;
R
2は、水素、(C
1〜C
3)アルキル、またはハロであり、ここで、前記(C
1〜C
3)アルキルは、アミノおよび(C
1〜C
3)アルキルアミノから選択される1〜2個の基で場合によって置換されていてもよい;
R
7は、水素、(C
1〜C
3)アルキル、またはアルコキシである;
R
3は、水素、(C
1〜C
8)アルキルまたはハロである;
R
6は、水素、ハロ、シアノ、トリフルオロメチル、アミノ、(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アシルアミノ;(C
2〜C
8)アルキニル、アリールアルキニル、ヘテロアリールアルキニル、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、または−NR
aSO
2R
bである;
ここで、任意の(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
2〜C
8)アルキニル、アリールアルキニル、またはヘテロアリールアルキニル基は、ハロ、(C
1〜C
6)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
1〜C
6)ハロアルキル、シアノ、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−SR
a、−SOR
a、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、ニトロ、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b、−NR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aC(O)OR
a、−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−OR
a、−OC(O)R
a、−OC(O)NR
aR
b、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール(C
1〜C
4)アルキル、およびヘテロアリール(C
1〜C
4)アルキルから独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよい;
R
aおよびR
bはそれぞれ独立して、水素、(C
1〜C
8)アルキル、(C
2〜C
8)アルケニル、(C
2〜C
8)アルキニル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
6〜C
10)ビシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリールであり、ここで、前記(C
1〜C
8)アルキル、(C
2〜C
8)アルケニル、(C
2〜C
8)アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、ビシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール基は、ハロ、ヒドロキシル、(C
1〜C
4)アルコキシ、アミノ、(C
1〜C
4)アルキルアミノ、((C
1〜C
4)アルキル)((C
1〜C
4)アルキル)アミノ、−CO
2H、−CO
2(C
1〜C
4)アルキル、−CONH
2,−CONH(C
1〜C
4)アルキル、−CON((C
1〜C
4)アルキル)((C
1〜C
4)アルキル)、−SO
2(C
1〜C
4)アルキル、−SO
2NH
2、−SO
2NH(C
1〜C
4)アルキル、および−SO
2N((C
1〜C
4)アルキル)((C
1〜C
4)アルキル)から独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよい;
またはR
aおよびR
bはそれらが結合している窒素と一緒になって、酸素、窒素、およびイオウから選択されるさらなるヘテロ原子を場合によって含んでいてもよい5〜8員飽和または不飽和環を表し、ここで前記環は、(C
1〜C
4)アルキル、(C
1〜C
4)ハロアルキル、アミノ、(C
1〜C
4)アルキルアミノ、((C
1〜C
4)アルキル)((C
1〜C
4)アルキル)アミノ、ヒドロキシル、オキソ、(C
1〜C
4)アルコキシ、および(C
1〜C
4)アルコキシ(C
1〜C
4)アルキルから独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよく、ここで前記環は、(C
3〜C
8)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール環と場合によって縮合していてもよい;
あるいはR
aおよびR
bは、それらが結合している窒素と一緒になって、(C
3〜C
8)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール環と場合によって縮合していてもよい6〜10員架橋2環式環系を表す。この定義におけるアリールおよびヘテロアリールは、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、フェニル、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、テトラジン、キノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、およびナフチリジンまたは次のような別のアリールもしくはヘテロアリール基の化合物からなる群から選択される:
【0236】
【化33】
((1)において、
Aは、O、NH、またはSであり;BはCHまたはNであり、Cは水素またはC
1〜C
8アルキルである);あるいは
【0237】
【化34】
((2)において、
DはNまたは水素もしくはC
1〜C
8アルキルで場合によって置換されていてもよいCである);あるいは
【0238】
【化35】
((3)において、
EはNHまたはCH
2であり;FはOまたはCOであり;そしてGはNHまたはCH
2である);あるいは
【0239】
【化36】
((4)において、
JはO、SまたはCOである);あるいは
【0240】
【化37】
((5)において、
QはCHまたはNである;
MはCHまたはNである;そして
L/(5)は、水素、ハロ、アミノ、シアノ、(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−CONR
aNR
aR
b、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b,−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−NR
aNR
aR
b、−NR
aNR
aC(O)R
b、−NR
aNR
aC(O)NR
aR
b、または−OR
aであり、
ここで、任意の(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、基は、(C
1〜C
6)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
1〜C
6)ハロアルキル、シアノ、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−SR
a、−SOR
a、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、ニトロ、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b、−NR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aC(O)OR
a、NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−OR
a、−OC(O)R
a、および−OC(O)NR
aR
bから独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよく、
ここで、R
aおよびR
bは前記定義のとおりである);または
【0241】
【化38】
((6)において、
L/(6)はNHもしくはCH
2である);または
【0242】
【化39】
((7)において、
M/(7)は、水素、ハロ、アミノ、シアノ、(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−CONR
aNR
aR
b、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b,−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−NR
aNR
aR
b、−NR
aNR
aC(O)R
b、−NR
aNR
aC(O)NR
aR
b、または−OR
aであり、
ここで、任意の(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル基は、(C
1〜C
6)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
1〜C
6)ハロアルキル、シアノ、−COR
a、−CO
2R
a、− CONR
aR
b、−SR
a、−SOR
a、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、ニトロ、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b、NR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aC(O)OR
a、−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−OR
a、−OC(O)R
a、−OC(O)NR
aR
bから独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよい;ここで、R
aおよびR
bは前記定義のとおりである);または
【0243】
【化40】
((8)において、 Pは、CH
2、NH、O、もしくはSであり;Q/(8)はCHもしくはNであり;nは0〜2である);または
【0244】
【化41】
((9)において、
S/(9)およびT/(9)はCであるか、またはS/(9)はCであり、T/(9)はNであるか、またはS/(9)はNであり、T/(9)はCである;
Rは、水素、アミノ、メチル、トリフルオロメチル、ハロである;
Uは、水素、ハロ、アミノ、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、(C
1〜C
8)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、−COR
a、−CO
2R
a、−CONR
aR
b、−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b,−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO
2NR
aR
b、−NR
aNR
aR
b、−NR
aNR
aC(O)R
b、−OR
a、または4−(1H−ピラゾール−4−イル)であり、
ここで、任意の(C
1〜C
8)アルキル、または(C
3〜C
8)シクロアルキル基は、(C
1〜C
6)アルキル、(C
3〜C
8)シクロアルキル、(C
5〜C
8)シクロアルケニル、(C
1〜C
6)ハロアルキル、シアノ、−COR
a、−CO
2R
a,−CONR
aR
b,−SOR
a,−SO
2R
a、−SO
2NR
aR
b、ニトロ、−NR
aR
b、−NR
aC(O)R
b、−NR
aC(O)NR
aR
b、−NR
aC(O)OR
a、−NR
aSO
2R
b、−NR
aSO2NR
aR
b、−OR
a、−OC(O)R
a、および−OC(O)NR
aR
bから独立して選択される1、2または3個の基で場合によって置換されていてもよく、ここで、R
aおよびR
bは前記定義のとおりである)。
【0245】
いくつかの実施形態では、EZH2阻害剤は:
【0246】
【化42】
その立体異性体またはその薬剤的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0247】
いくつかの実施形態では、EZH2阻害剤は
【0248】
【化43】
その立体異性体またはその薬剤的に許容される塩もしくは溶媒和物である。
【0249】
本明細書中で記載される化合物は、当該技術分野で公知の任意の方法にしたがって合成できる。例えば、式(VII)を有する化合物は、そのそれぞれが参照により全体として組み込まれる、国際公開第2011/140325号;同第2011/140324号;および同第2012/005805号で記載される方法にしたがって合成できる。
【0250】
本明細書中で用いられる場合、「アルキル」、「C
1、C
2、C
3、C
4、C
5もしくはC
6アルキル」または「C
1〜C
6アルキル」は、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5もしくはC
6直鎖(線状)飽和脂肪族炭化水素基およびC
3、C
4、C
5もしくはC
6分枝飽和脂肪族炭化水素基を包含することが意図される。例えば、C
1〜C
6アルキルは、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5およびC
6アルキル基を包含することが意図される。アルキルの例としては、1〜6個の炭素原子を有する部分、例えば限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、s−ペンチルまたはn−ヘキシルが挙げられる。
【0251】
ある実施形態において、直鎖または分枝アルキルは、6個以下の炭素原子(たとえば、直鎖についてはC
1〜C
6、分枝鎖についてはC
3〜C
6)を有し,別の実施形態では、直鎖または分枝アルキルは4個以下の炭素原子を有する。
【0252】
本明細書中で用いられる場合、「シクロアルキル」という語は、3〜30個の炭素原子を有する(たとえば、C
3〜C
10)飽和または不飽和非芳香族炭化水素単環または多環(たとえば、縮合、架橋、またはスピロ環)系を指す。シクロアルキルの例としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、およびアダマンチルが挙げられる。「ヘテロシクロアルキル」という語は、特別の定めのない限り、1以上のヘテロ原子(例えばO、N、S、またはSe)を有する飽和または不飽和非芳香族3〜8員単環、7〜12員2環(縮合、架橋、もしくはスピロ環)、または11〜14員3環系(縮合、架橋、もしくはスピロ環)を指す。ヘテロシクロアルキル基の例としては、限定されるものではないが、ピペリジニル、ピペラジニル、ピロリジニル、ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、イソインドリニル、インドリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、トリアゾリジニル、テトラヒドロフラニル、オキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、ピラニル、モルホリニル、1,4−ジアゼパニル、1,4−オキサゼパニル、2−オキサ−5−アザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、2,5−ジアザビシクロ[2.2.1]ヘプタニル、2−オキサ−6−アザスピロ[3.3]ヘプタニル、2,6−ジアザスピロ[3.3]ヘプタニル、1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカニルなどが挙げられる。
【0253】
「場合によって置換されていてもよいアルキル」という語は、非置換アルキルまたは炭化水素骨格の1以上の炭素上の1以上の水素原子を置換する指定の置換基を有するアルキルを指す。そのような置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル,アルキルチオ,アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。
【0254】
「アリールアルキル」または「アラルキル」部分は、アリールで置換されたアルキル(例えば、フェニルメチル(ベンジル))である。「アルキルアリール」部分は、アルキルで置換されたアリール(たとえば、メチルフェニル)である。
【0255】
本明細書中で用いられる場合、「アルキルリンカー」は、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5またはC
6直鎖(線状)飽和二価脂肪族炭化水素基およびC
3、C
4、C
5またはC
6分枝飽和脂肪族炭化水素基を包含することが意図される。例えば、C
1〜C
6アルキルリンカーは、C
1、C
2、C
3、C
4、C
5およびC
6アルキルリンカー基を包含することが意図される。アルキルリンカーの例としては、1〜6個の炭素原子を有する部分、例えば限定されるものではないが、メチル(−CH
2−)、エチル(−CH
2CH
2−)、n−プロピル(−CH
2CH
2CH
2−)、i−プロピル(−CHCH
3CH
2−)、n−ブチル(−CH
2CH
2CH
2CH
2−)、s−ブチル(−CHCH
3CH
2CH
2−)、i−ブチル(−C(CH
3)
2CH
2−)、n−ペンチル(−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−)、s−ペンチル(−CHCH
3CH
2CH
2CH
2−)またはn−ヘキシル(−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2−)が挙げられる。
【0256】
「アルケニル」は、少なくとも1つの二重結合を含む以外は上述のアルキルと長さおよび可能な置換が類似している不飽和脂肪族基を包含する。例えば、「アルケニル」という語は、直鎖アルケニル基(たとえば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル)、および分枝アルケニル基を包含する。ある実施形態では、直鎖または分枝アルケニル基はその骨格中に6個以下の炭素原子を有する(たとえば、直鎖についてはC
2〜C
6、分枝鎖についてはC
3〜C
6)。「C
2〜C
6」という語は、2〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を包含する。「C
3〜C
6」という語は、3〜6個の炭素原子を含むアルケニル基を包含する。
【0257】
「場合によって置換されていてもよいアルケニル」という語は、非置換アルケニルまたは指定の置換基が1以上の炭化水素主鎖炭素原子上の1以上の水素原子と置換している置換アルケニルを指す。そのような置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル,アルキルチオ,アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。
【0258】
「アルキニル」は、少なくとも1つの三重結合を含む以外は上述のアルキルと長さおよび可能な置換が類似している不飽和脂肪族基を包含する。例えば、「アルキニル」は、直鎖アルキニル基(たとえば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、へプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル)、および分枝アルキニル基を包含する。ある実施形態では、直鎖または分枝アルキニル基はその骨格中に6個以下の炭素原子を有する(たとえば、直鎖についてはC
2〜C
6、分枝鎖についてはC
3〜C
6)。「C
2〜C
6」という語は、2〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を包含する。「C
3〜C
6」という語は、3〜6個の炭素原子を含むアルキニル基を包含する。
【0259】
「場合によって置換されていてもよいアルキニル」という語は、非置換アルキニルまたは1以上の炭化水素主鎖炭素原子上の1以上の水素原子を置換する指定の置換基を有するアルキニルを指す。そのような置換基としては、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル,アルキルチオ,アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を挙げることができる。
【0260】
他の場合によって置換されていてもよい部分(例えば場合によって置換されていてもよいシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール)には、非置換部分および1以上の指定の置換基を有する部分の両方が含まれる。例えば、置換ヘテロシクロアルキルには、1以上のアルキル基で置換されたもの、例えば2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジニルおよび2,2,6,6−テトラメチル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジニルが含まれる。
【0261】
「アリール」は、少なくとも1つの芳香環を有する「共役」すなわち多環系を含む芳香族性を有する基を包含し、その環構造中にヘテロ原子を含まない。例としては、フェニル、ベンジル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレニルなどが挙げられる。
【0262】
「ヘテロアリール」基は、1〜4個のヘテロ原子を環構造中に有する以外は前記定義のとおりのアリール基であり、「アリールヘテロ環」または「ヘテロ芳香族」と呼ばれる場合もある。本明細書中で用いられる場合、「ヘテロアリール」との用語は、炭素原子と1以上のヘテロ原子、例えば窒素、酸素およびイオウからなる群から独立して選択される1もしくは1〜2もしくは1〜3もしくは1〜4もしくは1〜5もしくは1〜6個のヘテロ原子、または例えば1、2、3、4、5、もしくは6個のヘテロ原子とからなる、安定な5、6、もしくは7員単環、または7、8、9、10、11、もしくは12員2環式芳香族ヘテロ環を包含することが意図される。窒素原子は置換または非置換であってよい(すなわち、NまたはNR、ここで、RはHまたは定義されるような他の置換基である)。窒素およびイオウヘテロ原子は場合によって酸化されていてもよい(すなわち、N→OおよびS(O)
p、ここで、p=1または2)。芳香族ヘテロ環中のSおよびO原子の総数は1以下であることに留意すべきである。
【0263】
ヘテロアリール基の例としては、ピロール、フラン、チオフェン、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、ピラゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジンなどが挙げられる。
【0264】
さらに、「アリール」および「ヘテロアリール」という語は、多環式アリールおよびヘテロアリール基、例えば、3環式、2環式、例えば、ナフタレン、ベンゾオキサゾール、ベンゾジオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール、ベンゾチオフェン、メチレンジオキシフェニル、キノリン、イソキノリン、ナフチリジン、インドール、ベンゾフラン、プリン、ベンゾフラン、デアザプリン、インドリジンを包含する。
【0265】
多環式芳香環の場合、環のうちの1つだけが芳香族である必要がある(たとえば、2,3−ジヒドロインドール)が、環のすべてが芳香族であってもよい(例えば、キノリン)。第2の環がさらに縮合または架橋していてもよい。
【0266】
シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール環は、1以上の環の位置(たとえば、環を形成する炭素またはNなどのヘテロ原子)にて、上述のような置換基、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルコキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アラルキルアミノカルボニル、アルケニルアミノカルボニル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルケニルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル,アルキルチオ,アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分で置換されている可能性がある。アリールおよびヘテロアリール基はまた、脂環式またはヘテロ環式環と縮合または架橋され得、これらは多環系(たとえば、テトラリン、メチレンジオキシフェニル)を形成するような芳香族でない。
【0267】
本明細書中で用いられる場合、「炭素環」または「炭素環」は、指定された数の炭素を有する任意の安定な単環、2環式または3環式環を包含することが意図され、それらのいずれも飽和、不飽和、または芳香族であり得る。炭素環はシクロアルキルおよびアリールを包含する。例えば、C
3〜C
14炭素環は、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13または14個の炭素原子を有する単環、2環式または3環式環を包含することが意図される。炭素環の例としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘプテニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、アダマンチル、シクロオクチル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、フルオレニル、フェニル、ナフチル、インダニル、アダマンチル およびテトラヒドロナフチルが挙げられる。架橋環も、例えば、[3.3.0]ビシクロオクタン、[4.3.0]ビシクロノナン、[4.4.0]ビシクロデカンおよび[2.2.2]ビシクロオクタンをはじめとする炭素環の定義に含まれる。架橋環は、1個以上の炭素原子が2個の隣接しない炭素原子を連結する場合に生じる。1つの実施形態において、架橋環は1または2個の炭素原子である。ブリッジは常に単環を3環式環に変えることに注意する。環が架橋されている場合、環について言及される置換基はブリッジ上にも存在し得る。縮合(たとえば、ナフチル、テトラヒドロナフチル)およびスピロ環も含まれる。
【0268】
本明細書中で用いられる場合、「ヘテロ環」または「ヘテロ環式基」は、少なくとも1つの環ヘテロ原子(たとえば、N、OまたはS)を含む任意の環構造(飽和、不飽和、または芳香族)を含む。ヘテロ環には、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールが含まれる。ヘテロ環の例としては、モルホリン、ピロリジン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、ピペラジン、オキセタン、ピラン、テトラヒドロピラン、アゼチジン、およびテトラヒドロフランが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0269】
ヘテロ環式基の例としては、限定されるものではないが、アクリジニル、アゾシニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフラニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾテトラゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾイミダゾリニル、カルバゾリル、4aH−カルバゾリル、カルボリニル、クロマニル、クロメニル、シンノリニル、デカヒドロキノリニル、2H,6H−1,5,2−ジチアジニル、ジヒドロフロ[2,3−b]テトラヒドロフラン、フラニル、フラザニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、1H−インダゾリル、インドレニル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、3H−インドリル、イサチノイル、イソベンゾフラニル、イソクロマニル、イソインダゾリル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、メチレンジオキシフェニル、モルホリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロイソキノリニル、オキサジアゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾ−ル5(4H)−オン、オキサゾリジニル、オキサゾリル、オキシインドリル、ピリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサチニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、ピペリドニル、4−ピペリドニル、ピペロニル、プテリジニル、プリニル、ピラニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリドオキサゾール、ピリドイミダゾール、ピリドチアゾール、ピリジニル、ピリジル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、2H−ピロリル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、4H−キノリジニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾリル、6H−1,2,5−チアジアジニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、チアントレニル、チアゾリル、チエニル、チエノチアゾリル、チエノオキサゾリル、チエノイミダゾリル、チオフェニル、トリアジニル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、1,2,5−トリアゾリル、1,3,4−トリアゾリルおよびキサンテニルが挙げられる。
【0270】
「置換された」という語は、本明細書中で用いられる場合、指定の原子上のいずれか1個以上の水素原子が表示された基から選択されたもので置換されていることを意味し、ただし、指定の原子の通常の価数を超えないものとし、置換の結果、安定な化合物が得られるものとする。置換基がオキソまたはケト(すなわち=O)である場合、原子上の2個の水素原子は置換される。ケト置換基は芳香族部分上に存在しない。環二重結合は、本明細書中で用いられる場合、2つの隣接する環原子間で形成される二重結合(たとえば、C=C、C=NまたはN=N)である。「安定な化合物」および「安定な構造」は、反応混合物から有用な程度の純度まで単離し、そして有効な治療薬に処方するのに耐えるために十分強固な化合物を指すことを意図する。
【0271】
置換基に対する結合が、環中の2個の原子を連結する結合を横断するように示されている場合、そのような置換基は環中の任意の原子と結合することができる。ある置換基が、そのような置換基が所与の式の化合物の残部と結合するのに介する原子を表示せずに記載されている場合、そのような置換基はかかる式中のどの原子を介しても結合することができる。置換基および/または変数の組み合わせは、そのような組み合わせの結果、安定な化合物が得られる場合に限り、許容される。
【0272】
任意の変数(たとえば、R
1)がある化合物の任意の構成成分または式中に複数個ある場合、各場合でのその定義は他のすべてでのその定義とは独立している。したがって、例えば、ある基が0〜2個のR
1部分で置換されていることが示されている場合、その基は2個までのR
1部分で場合によって置換されていてもよく、各場合でのR
1はR
1の定義から独立して選択される。また、置換基および/または変数の組み合わせは、そのような組み合わせの結果、安定な化合物が得られる場合に限り、許容される。
【0273】
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」という語は、−OHまたは−O
−を有する基を包含する。
【0274】
本明細書中で用いられる場合、「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードを指す。「過ハロゲン化」という語は、概して、全ての水素がハロゲン原子で置換されている部分を指す。「ハロアルキル」または「ハロアルコキシル」という語は、1以上のハロゲン原子で置換されたアルキルまたはアルコキシルを指す。
【0275】
「カルボニル」という語は、二重結合で酸素原子に結合した炭素を含む化合物および部分を包含する。カルボニルを含む部分の例としては、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、アミド、エステル、無水物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0276】
「カルボキシル」という語は、−COOHまたはそのC
1〜C
6アルキルエステルを指す。
【0277】
「アシル」は、アシルラジカル(R−C(O)−)またはカルボニル基を含む部分を包含する。「置換アシル」は、1以上の水素原子が、例えば、アルキル基、アルキニル基、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル,アルキルチオ,アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分で置換されているアシル基を包含する。
【0278】
「アロイル」は、カルボニル基に結合したアリールまたはヘテロ芳香族部分を有する部分を包含する。アロイル基の例としては、フェニルカルボキシ、ナフチルカルボキシなどが挙げられる。
【0279】
「アルコキシアルキル」、「アルキルアミノアルキル」、および「チオアルコキシアルキル」は、前述のようなアルキル基であって、酸素、窒素、またはイオウ原子が1以上の炭化水素主鎖炭素原子と置換しているものを包含する。
【0280】
「アルコキシ」または「アルコキシル」という語は、酸素原子と共有結合した置換および非置換アルキル、アルケニルおよびアルキニル基を包含する。アルコキシ基またはアルコキシルラジカルの例としては、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、プロポキシ、ブトキシおよびペントキシ基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。置換アルコキシ基の例としては、ハロゲン化アルコキシ基が挙げられる。アルコキシ基は、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスフェート、ホスホナート、ホスフィナート、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、およびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル,アルキルチオ,アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分などの基で置換され得る。ハロゲン置換アルコキシ基の例には、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシおよびトリクロロメトキシが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0281】
「エーテル」または「アルコキシ」という語は、2個の炭素原子またはヘテロ原子に結合した酸素を含む化合物または部分を包含する。例えば、この語は、「アルコキシアルキル」を包含し、これはアルキル基と共有結合する酸素原子に共有結合したアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を指す。
【0282】
「エステル」という語は、カルボニル基の炭素に結合した酸素原子に結合した炭素またはヘテロ原子を含む化合物または部分を包含する。「エステル」という語は、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニルなどのアルコキシカルボキシ基を包含する。
【0283】
「チオアルキル」という語は、イオウ原子と結合したアルキル基を含む化合物または部分を包含する。チオアルキル基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、カルボキシ酸(carboxyacid),アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカ
ルボニル、アルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、アミノ(アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノおよびアルキルアリールアミノを含む)、アシルアミノ(アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイドを含む)、アミジノ、イミノ、スルフヒドリル,アルキルチオ,アリールチオ、チオカルボキシレート、スルフェート、アルキルスルフィニル、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、トリフルオロメチル、シアノ、アジド、ヘテロシクリル、アルキルアリール、または芳香族もしくはヘテロ芳香族部分などの基で置換され得る。
【0284】
「チオカルボニル」または「チオカルボキシ」という語は、イオウ原子と二重結合で結合した炭素を含む化合物および部分を包含する。
【0285】
「チオエーテル」という語は、2個の炭素原子またはヘテロ原子と結合したイオウ原子を含む部分を包含する。チオエーテルの例としては、限定されるものではないが、アルクチオアルキル(alkthioalkyl)、アルクチオアルケニル(alkthioalkenyl)、およびアルクチオアルキニル(alkthioalkynyl)が挙げられる。「アルクチオアルキル(alkthioalkyl)」という語は、アルキル基と結合したイオウ原子に結合したアルキル、アルケニル、またはアルキニル基を有する部分を包含する。同様に、「アルクチオアルケニル(alkthioalkenyl)」という語は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基がイオウ原子に結合し、このイオウ原子がアルケニル基と共有結合している部分を指し;そして「アルクチオアルキニル(alkthioalkynyl)」は、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基がイオウ原子に結合し、このイオウ原子がアルキニル基に共有結合している部分を指す。
【0286】
本明細書中で用いられる場合、「アミン」または「アミノ」は、非置換または置換−NH
2を指す。「アルキルアミノ」は、−NH
2の窒素が少なくとも1つのアルキル基に結合している基を包含する。アルキルアミノ基の例としては、ベンジルアミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、フェネチルアミノなどが挙げられる。「ジアルキルアミノ」は、−NH
2の窒素が少なくとも2個のさらなるアルキル基に結合している基を包含する。ジアルキルアミノ基の例としては、限定されるものではないが、ジメチルアミノおよびジエチルアミノを挙げられる。「アリールアミノ」および「ジアリールアミノ」は、窒素が少なくとも1または2個のアリール基にそれぞれ結合している基を包含する。「アミノアリール」および「アミノアリールオキシ」は、アミノで置換されたアリールおよびアリールオキシを指す。「アルキルアリールアミノ」、「アルキルアミノアリール」または「アリールアミノアルキル」は、少なくとも1つのアルキル基および少なくとも1つのアリール基と結合しているアミノ基を指す。「アルクアミノアルキル(alkaminoalkyl)」は、窒素原子に結合しているアルキル、アルケニル、またはアルキニル基であって、この窒素がまたアルキル基にも結合しているものを指す。「アシルアミノ」は、窒素がアシル基に結合している基を包含する。アシルアミノの例としては、限定されるものではないが、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、カルバモイルおよびウレイド基を包含する。
【0287】
「アミド」または「アミノカルボキシ」という語は、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素に結合している窒素原子を含む化合物または部分を包含する。この語は、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合しているアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を包含する「アルクアミノカルボキシ(alkaminoicarboxy)」基を包含する。それは、カルボニルまたはチオカルボニル基の炭素に結合しているアミノ基に結合しているアリールまたはヘテロアリール部分を包含する「アリールアミノカルボキシ」基も包含する。「アルキルアミノカルボキシ」、「アルケニルアミノカルボキシ」、「アルキニルアミノカルボキシ」および「アリールアミノカルボキシ」という語は、それぞれアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリール部分が窒素原子に結合し、この窒素が次にカルボニル基の炭素に結合している部分を包含する。アミドは、直鎖アルキル、分枝アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロ環などの置換基で置換することができる。アミド基上の置換基はさらに置換されていてもよい。
【0288】
本明細書において、化合物の構造式は、ある場合では便宜上ある異性体を表すが、本発明は、幾何異性体、不斉炭素に基づく光学異性体、立体異性体、互変異性体などのあらゆる異性体を包含し、全ての異性体が同じレベルの活性を有し得るわけではないと理解される。加えて、結晶多形が式によって表される化合物について存在し得る。任意の結晶形態、結晶形態の混合物、またはその無水物もしくは水和物が本発明の範囲内に含まれることに注意する。さらに、本発明の化合物のインビボでの分解によって生じる、いわゆる代謝産物は本発明の範囲内に含まれる。
【0289】
「異性」とは、同じ分子式を有するが、それらの原子の結合の配列または空間におけるそれらの原子の配置が異なる化合物を意味する。空間におけるそれらの原子の配置が異なる異性体を「立体異性体」と称する。互いに鏡像でない立体異性体を「ジアステレオマー」と称し、互いに重ねあわすことができない鏡像である立体異性体を「エナンチオマー」または場合によっては光学異性体と称する。反対のキラリティーを有する個々のエナンチオマー形態の等量の混合物を「ラセミ混合物」と称する。
【0290】
4個の同一でない置換基に結合した炭素原子は、「キラル中心」と称される。
【0291】
「キラル異性体」は、少なくとも1つのキラル中心を有する化合物を意味する。複数のキラル中心を有する化合物は、個々にジアステレオマーとして、または「ジアステレオマー混合物」と称されるジアステレオマーの混合物としてのいずれかで存在し得る。1つのキラル中心が存在する場合、立体異性体はキラル中心の絶対配置(RまたはS)によって特徴づけることができる。絶対配置は、キラル中心に結合した置換基の空間における配置を指す。検討中のキラル中心に結合した置換基は、カーン・インゴルド・プレローグ順位則にしたがって整列される。(Cahn et al., Angew. Chem. Inter. Edit. 1966, 5, 385; errata 511; Cahn et al., Angew. Chem. 1966, 78, 413; Cahn and Ingold, J. Chem. Soc. 1951 (London), 612; Cahn et al., Experientia 1956, 12, 81; Cahn, J. Chem. Educ.1964, 41, 116)
【0292】
「幾何異性体」は、それらの存在が二重結合またはシクロアルキルリンカー(例えば、1,3−シクロブチル)の周りの束縛回転のおかげであるジアステレオマーを意味する。これらの立体配置は、カーン・インゴルド・プレローグ順位則にしたがって、その基が分子中の二重結合の同じ側または反対側にあることを示す、接頭語シスおよびトランス、またはZおよびEによってその名前で区別される。
【0293】
本発明の化合物は、異なるキラル異性体または幾何異性体として示することができると理解されるべきである。化合物がキラル異性体または幾何異性体を有する場合、全ての異性体が本発明の範囲内に含まれることが意図されることも理解されるべきであり、化合物の命名はいかなる異性体も排除せず、すべての異性体が同じレベルの活性を有し得るとは限らないと理解される。
【0294】
さらに、本明細書中で検討する構造および他の化合物はそのすべてのアトロピック異性体を包含し、全てのアトロピック異性体が同じレベルの活性を有し得るとは限らないと理解される。「アトロピック異性体」は、2つの異性体の原子が空間において異なって配置されている立体異性体の一種である。アトロピック異性体の存在は、中心の結合の周りの大きな基の回転の妨害に起因する制限された回転のおかげである。そのようなアトロピック異性体は特徴的には混合物として存在するが、クロマトグラフィー技術の近年の進歩の結果、限定された場合で2つのアトロピック異性体の混合物を分離することが可能になった。
【0295】
「互変異性体」は、平衡状態で存在し、1つの異性体から別の異性体へ容易に変換される2以上の構造異性体の1つである。この変換の結果、隣接する共役二重結合のスイッチに付随する水素原子の形式的な移動が起こる。互変異性体は、溶液中互変異性体のセットの混合物として存在する。互変異性化が可能な溶液中で、互変異性体の化学平衡が達成される。互変異性体の正確な比は、温度、溶媒およびpHをはじめとするいくつかの要因に左右される。互変異性化によって相互転換可能である互変異性体の概念は互変異性と呼ばれる。
【0296】
可能な互変異性の様々な種類のうち、2つが通常観察される。ケト−エノール互変異性では、電子と水素原子の同時シフトが起こる。環−鎖互変異性は、糖鎖分子中のアルデヒド基(−CHO)が同じ分子中のヒドロキシ基(−OH)の1つと反応する結果として起こり、それをグルコースによって示されるような環状(環の形状)形態にする。
【0297】
一般的な互変異性体対は:ケトン−エノール、アミド−ニトリル、ラクタム−ラクチム、ヘテロ環中のアミド−イミド酸互変異性(例えば、グアニン、チミンおよびシトシンなどの核酸塩基中)、イミン−エナミンおよびエナミン−エナミンである。ケト−エノール平衡の一例は、以下で示すようなピリジン−2(1H)−オンと対応するピリジン−2−オール間である。
【0299】
本発明の化合物は異なる互変異性体として示すことができると理解されるべきである。化合物が互変異性体を有する場合、全ての互変異性体は本発明の範囲内に含まれることが意図されることも理解すべきであり、化合物の命名はいかなる互変異性体も排除しない。ある互変異性体は他よりも高いレベルの活性を有し得ると理解される。
【0300】
「結晶多形」、「多形体」または「結晶形態」という語は、化合物(またはその塩もしくは溶媒和物)が異なる結晶充填配置(packing arrangement)で結晶化することができ、そのすべてが同じ元素組成を有する結晶構造を意味する。異なる結晶形態は、通常、異なるX線回折パターン、赤外スペクトル、融点、密度硬度(density hardness)、結晶形、光学および電気特性、安定性および溶解度を有する。再結晶溶媒、晶析速度、貯蔵温度および他の因子は、1つの結晶形態が優勢になる原因となり得る。化合物の結晶多形は、異なる条件下での結晶化によって調製できる。
【0301】
本明細書中で開示される式のいずれかの化合物としては、妥当な場合、化合物自体、ならびにそれらの塩またはそれらの溶媒和物が挙げられる。例えば、アニオンと、アリール−またはヘテロアリール−置換ベンゼン化合物上の正電荷を持つ基(たとえば、アミノ)との間に塩が形成され得る。好適なアニオンとしては、クロリド、ブロミド、ヨージド、スルフェート、ビスルフェート、スルファメート、ニトレート、ホスフェート、シトレート、メタンスルホネート、トリフルオロアセテート、グルタメート、グルクロネート、グルタレート、マレート、マレエート、スクシネート、フマレート、タータレート(tartrate)、トシレート、サリチレート、ラクテート、ナフタレンスルホネート、およびアセテート(たとえば、トリフルオロアセテート)が挙げられる。「薬剤的に許容されるアニオン」という語は、薬剤的に許容される塩を形成するために好適なアニオンを指す。同様に、塩は、カチオンとアリール−またはヘテロアリール−置換ベンゼン化合物上の負電荷を有する基(たとえば、カルボキシレート)との間にも形成され得る。好適なカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、およびアンモニウムカチオン、例えばテトラメチルアンモニウムイオンが挙げられる。アリールまたはヘテロアリール置換ベンゼン化合物は、四級窒素原子を含む塩も包含する。
【0302】
さらに、本発明の化合物、たとえば化合物の塩は、水和もしくは非水和(無水)形態で、または他の溶媒分子との溶媒和物として存在し得る。水和物の非限定的例としては、一水和物、二水和物などが挙げられる。溶媒和物の非限定的例としては、エタノール溶媒和物、アセトン溶媒和物などが挙げられる。
【0303】
「溶媒和物」とは、化学量論量または非化学量論量のいずれかの溶媒を含む溶媒付加形態を意味する。一部の化合物は結晶性固体状態で一定のモル比の溶媒分子をトラップする傾向があり、かくして溶媒和物を形成する。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物であり;溶媒がアルコールである場合、形成される溶媒和物はアルコラートである。水和物は、1以上の水分子と、水がH
2Oとしてその分子状態を保持する物質1分子との組み合わせによって形成される。
【0304】
本明細書中で用いられる場合、「アナログ」という語は、構造的に互いに類似しているが、組成が若干異なる(1つの原子が異なる元素の原子によって置換されていることにおいて、もしくは特定の官能基の存在において、または1つの官能基が別の官能基によって置換されていることにおいて)化合物を指す。したがって、アナログは、参考化合物に対して、機能および外観が類似または匹敵しているが、構造または起源が異なる化合物である。
【0305】
本明細書中で定義されるように、「誘導体」という語は、共通のコア構造を有し、本明細書中で記載される様々な基で置換されている化合物を指す。例えば、式(I)によって表される化合物はすべてアリールまたはヘテロアリール置換ベンゼン化合物であり、共通のコアとして式(I)を有する。
【0306】
「生物学的等価体(bioisostere)」という語は、ある原子または原子団と、別の大まかに類似している原子または原子団との交換から得られる化合物を指す。生物学的等価体置換の目的は、親化合物に類似した生物学的特性を有する新規化合物を作製することである。生物学的等価体置換は、物理化学的またはトポロジー的ベースであり得る。カルボン酸生物学的等価体の例としては、限定されるものではないが、アシルスルホンイミド、テトラゾール、スルホネートおよびホスホネートが挙げられる。例えば、Patani and LaVoie, Chem. Rev. 96, 3147-3176, 1996を参照のこと。
【0307】
本発明は、本発明の化合物中に存在する原子のすべての同位体を包含することが意図される。同位体は、同じ原子番号を有するが、異なる質量数を有する原子を包含する。一般的な例として、限定されるものではないが、水素の同位体は、三重水素および重水素を包含し、炭素の同位体はC−13およびC−14を包含する。
【0308】
本発明は、本明細書中で開示される任意の式の化合物の合成法を提供する。本発明はまた、実施例で示すような以下のスキームにしたがって、本発明の様々な開示された化合物を合成するための詳細な方法も提供する。
【0309】
記載全体にわたって、組成物が特定の成分を有する、包含する、または含むと記載されている場合、組成物はまた、記載された成分から本質的になる、または記載された成分からなることが想定される。同様に、方法またはプロセスが特定のプロセスステップを有する、包含する、または含むと記載されている場合、そのプロセスはまた、記載された加工ステップから本質的になるか、または記載された加工ステップからなる。さらに、本発明が操作可能なままである限り、ステップの順序またはある動作を実施する順序は重要ではない。さらに、2以上のステップまたは動作を同時に実施することができる。
【0310】
本発明の合成法は、様々な官能基を許容でき、したがって、様々な置換された出発物質を使用できる。方法は、概して方法全体の最後または最後付近で所望の最終化合物を提供するが、場合によっては、化合物をその薬剤的に許容される塩、多形体または溶媒和物にさらに変換することが望ましいい場合もある。
【0311】
本発明の化合物は、市販の出発物質、文献で公知の化合物を使用して、または容易に調製される中間体から、当業者に公知であるか、または本明細書中の教示を照らして当業者には明らかである標準的合成法および手順を使用することにより、様々な方法で調製することができる。有機分子調製および官能基変換および操作のための標準的合成法および手順は、関連する科学文献または当該技術分野の標準的な教科書から得ることができる。いずれか1つまたはいくつかの出典に限定されないが、古典的教科書、例えば、Smith, M. B., March, J., March’s Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5
th edition, John Wiley & Sons: New York, 2001; Greene, T.W., Wuts, P.G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, 3
rd edition, John Wiley & Sons: New York, 1999; R. Larock, Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser’s Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994); and L. Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1995)(参照により本明細書中に組み込まれる)は、当業者に公知の有機合成の有用で認識された参考教科書である。合成法の以下の説明は、説明のために設計され、本発明の化合物の調製のための一般的手順を限定するものではない。
【0312】
本発明の化合物は、当業者に周知の様々な方法によって都合よく調製することができる。本明細書中で開示される任意の式を有する本発明の化合物は、下記スキーム1〜10で示される手順に従って、市販の出発物質または文献の手順を用いて調製できる出発物質から調製することができる。スキーム1〜10中のZおよびR基(例えば、R
2、R
3、R
4、R
6、R
7、R
8、およびR
12)は、特別の定めのない限り、本明細書中で開示された式のいずれかで定義されるとおりである。
【0313】
本明細書中で記載される反応シーケンスおよび合成スキームの間、あるステップの順序、例えば保護基の導入および除去は変更できることに当業者は気づくであろう。
【0314】
当業者は、ある基が保護基の使用により反応条件からの保護を必要とする場合があることを認めるであろう。保護基は、分子中の類似した官能基を区別するために使用することもできる。保護基のリストおよびこれらの基を導入し、除去する方法は、Greene, T.W.,
Wuts, P.G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd edition, John Wiley & Sons: New York, 1999で見いだすことができる。
【0315】
好ましい保護基としては、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる:
【0316】
ヒドロキシル部分については:TBS、ベンジル、THP、Ac
【0317】
カルボン酸については:ベンジルエステル、メチルエステル、エチルエステル、アリルエステル
【0318】
アミンについては:Cbz、BOC、DMB
【0319】
ジオールについては:Ac(×2)TBS(×2)、または一緒になった場合アセトニド
【0321】
ベンゾイミダゾールについては:SEM、ベンジル、PMB、DMB
【0322】
アルデヒドについては:ジメトキシアセタールまたはジエチルアセチルなどのジ−アルキルアセタール。
【0323】
明細書中で記載する反応スキームで、複数の立体異性体が生じる可能性がある。特定の立体異性体が表示されていない場合、反応から生じ得るすべての可能な立体異性体を意味すると理解される。当業者は、1つの異性体が優先的に得られるように反応を最適化することができる、または単一の異性体を製造するための新規スキームを考案できることを当業者は認めるであろう。混合物が生じる場合、分取薄層クロマトグラフィー、分取HPLC、分取キラルHPLC、または分取SFCなどの技術を使用して異性体を分離することができる。
【0324】
以下の略語を明細書全体にわたって使用し、以下のように定義される:
【0328】
BIDまたはb.i.d. bis in die(1日2回)
【0329】
BOC tert−ブトキシカルボニル
【0335】
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
【0338】
EDCまたはEDCI N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド
【0339】
ESI− エレクトロスプレー 陰イオンモード
【0340】
ESI+ エレクトロスプレー 陽イオンモード
【0344】
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
【0346】
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
【0348】
LC/MSまたはLC−MS 液体クロマトグラフィー質量スペクトル
【0355】
NaHMDs ナトリウムヘキサメチルジシラジド
【0362】
p.o. per os (経口投与)
【0364】
prep HPLC 分取高性能液体クロマトグラフィー
【0365】
PYBOP(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
【0367】
TBME tert−ブチルメチルエーテル
【0371】
本発明は、少なくとも1つの薬剤的に許容される賦形剤または担体と組み合わされた本明細書中で開示される任意の式の化合物を含む医薬組成物も提供する。
【0372】
「医薬組成物」は、対象への投与に適した形態の本発明の化合物を含む配合物である。1つの実施形態において、医薬組成物はバルクで、または単位投与形態である。単位投与形態は、例えば、カプセル、IVバッグ、錠剤、エアロゾル吸入器上の単一ポンプ(single pump)またはバイアルをはじめとする様々な形態のいずれかである。単位用量の組成物中の活性成分(たとえば、開示された化合物またはその塩、水和物、溶媒和物もしくは異性体の処方)の量は有効量であり、関連する特定の治療によって変わる。患者の年齢および状態に応じて投薬量に慣例的な変動を加える必要がある場合があることを当業者は理解するであろう。投薬量は投与経路に左右される。経口、肺、直腸、非経口、経皮、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、口腔、舌下、胸膜内、くも膜下腔内、鼻腔内などをはじめとする様々な経路が想定される。本発明の化合物の局所または経皮投与用の投与形態としては、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、貼付剤および吸入剤が挙げられる。1つの実施形態では、活性化合物を無菌条件下で薬剤的に許容される担体、必要とされる任意の防腐剤、緩衝液、またはプロペラントと混合する。
【0373】
本明細書中で用いられる場合、「薬剤的に許容される」という表現は、健全な医学的判断の範囲内であり、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症がなくヒトよび動物の組織と接触した使用に好適であり、妥当な損益比で釣り合う化合物、アニオン、カチオン、材料、組成物、担体、および/または投与形態を指す。
【0374】
「薬剤的に許容される賦形剤」とは、一般的に安全、非毒性で、生物学的にも、またその他でも望ましくないものではない、医薬組成物の調製に有用な賦形剤を意味し、獣医学的用途ならびにヒト製薬学的用途について許容される賦形剤を包含する。明細書および特許請求の範囲で使用される「薬剤的に許容される賦形剤」は、1以上のそのような賦形剤を包含する。
【0375】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように処方される。投与経路の例としては、非経口、例えば静脈内、皮内、皮下、経口(例えば吸入)、経皮(局所)、および経粘膜投与が挙げられる。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液は、以下の成分を含み得る:滅菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸または亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸;緩衝液、例えばアセテート、シトレートまたはホスフェート、ならびに塩化ナトリウムまたはデキストロースなどの張度を調節するための作用物質。pHは酸または塩基、例えば塩酸または水酸化ナトリウムで調節することができる。非経口製剤は、ガラスまたはプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器または複数回投与用バイアル中に封入することができる。
【0376】
本発明の化合物または医薬組成物を、化学療法のために現在使用される周知の方法の多くで対象に投与することができる。例えば、ガンの治療に関しては、本発明の化合物を腫瘍に直接注入、血流もしくは体腔中に注入または経口摂取または貼付剤で皮膚を通して適用することができる。選択される用量は、有効な治療を構成するために充分でなければならないが、許容されない副作用を引き起こすほど高くてはならない。疾患状態(例えば、ガン、前ガン、およびその他)ならびに患者の健康は、治療中または治療後妥当な期間、注意深くモニタリングしなければならない。
【0377】
「治療有効量」という語は、本明細書中で用いられる場合、特定された疾患もしくは状態を治療、改善、または予防する、あるいは検出可能な治療効果または阻害効果を示す医薬品の量を指す。効果は、当該技術分野で公知の任意のアッセイ法によって検出できる。対象に関する正確な有効量は、対象の体重、サイズ、および健康;状態の性質および程度;ならびに投与のために選択された治療薬または治療薬の組み合わせに左右される。所与の状況に関する治療有効量は、臨床医の技術および判断の範囲内である日常的な実験によって決定することができる。好ましい態様において、治療される疾患または状態はガンである。別の態様では、治療される疾患または状態は細胞増殖性障害である。
【0378】
任意の化合物について、治療有効量は、例えば新生細胞の細胞培養アッセイにおいて、または動物モデル、通常はラット、ウサギ、イヌ、もしくはブタにおいてのいずれかでまず推定することができる。動物モデルは、適切な濃度範囲および投与経路を決定するためにも使用できる。そのような情報は次いでヒトにおける投与のために有用な用量および経路を決定するために使用できる。治療/予防効果および毒性、例えばED
50(集団の50%で治療上有効な用量)およびLD
50(集団の50%に対して致死的な用量)は、細胞培養または実験動物における標準的な調剤手順によって決定することができる。毒性効果と治療効果との用量比は治療指数であり、これは比LD
50/ED
50として表すことができる。大きな治療指数を示す医薬組成物が好ましい。投薬量は、用いられる投与形態、患者の感受性、および投与経路に応じてこの範囲内で変動し得る。
【0379】
充分なレベルの活性剤(複数可)を提供するため、または所望の効果を維持するために、投薬量および投与を調節する。考慮され得る因子としては、疾患状態の重篤度、対象の全体的健康状態、対象の年齢、体重、および性別、食事、投与時間および頻度、薬物の組み合わせ、反応感受性、ならびに治療に対する寛容性/応答が挙げられる。長時間作用型医薬組成物は、特定の処方の半減期およびクリアランス率に応じて、3〜4日ごと、毎週、または2週間ごとに1回投与することができる。
【0380】
本発明の活性化合物を含む医薬組成物は、一般的に公知の方法で、例えば通常の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、ゲル化(levigating)、乳化、カプセル化、捕捉、または凍結乾燥法によって製造することができる。医薬組成物は、活性化合物を薬剤的に使用できる製剤に加工するのを促進する賦形剤および/または補助薬を含む1以上の薬剤的に許容される担体を使用する通常の方法で処方することができる。もちろん、適切な処方は、選択された投与経路に左右される。
【0381】
注射用途に好適な医薬組成物は、無菌注射溶液もしくは分散液の即時調製のための無菌水溶液(水溶性の場合)または分散液および無菌粉末を含む。静脈内投与に関して、好適な担体としては、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF、ニュージャージー州パーシッパニー)またはリン酸塩緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。全ての場合において、組成物は無菌でなければならず、容易に注射針に通過する程度まで流動性でなければならない。それは、製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、ならびにそれらの好適な混合物を含む溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は必要とされる粒子サイズの維持、そして界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の予防は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤および抗真菌剤によって達成できる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖、マンニトールおよびソルビトールなどのポリアルコール、ならびに塩化ナトリウムを含むのが好ましい。注射可能な組成物の持続的吸収は、組成物中に、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによってもたらすことができる。
【0382】
無菌注射溶液は、活性化合物を必要とされる量で適切な溶媒中、必要とされる上述の成分の1つまたは組み合わせとともに組み入れ、続いて濾過滅菌することによって調製できる。概して、分散液は、基本分散媒および上述のものからの必要とされる他の成分を含む無菌ビヒクル中に活性化合物を組み入れることによって調製される。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、これによって、あらかじめ滅菌ろ過されたその溶液から活性成分と任意のさらなる所望の成分の粉末を得る。
【0383】
経口組成物は概して不活性希釈剤または可食性の薬剤的に許容される担体を含む。それらはゼラチンカプセル中に封入することができるか、または圧縮して錠剤にすることができる。経口治療投与のために、活性化合物を賦形剤とともに組み入れることができ、錠剤、トローチ、またはカプセルの形態で使用することができる。経口組成物は、洗口剤として使用される流体担体を使用して調製することもでき、この場合、流体担体中の化合物を経口適用し、くちゅくちゅし、吐き出すかまたは飲み込む。薬剤的に適合性の結合剤、および/またはアジュバント材料を組成物の一部として含めることができる。錠剤、ピル、カプセル、トローチなどは、以下の成分のいずれか、または類似の性質の化合物を含み得る:バインダー、例えば微結晶セルロース、トラガカントガムもしくはゼラチン;賦形剤、例えばデンプンもしくはラクトース、崩壊剤、例えばアルギン酸、Primogel、もしくはコーンスターチ;潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムまたはSterotes;流動促進剤、例えばコロイド状二酸化珪素;甘味剤、例えばスクロースもしくはサッカリン;または香味剤、例えばペパーミント、サリチル酸メチル、もしくはオレンジフレーバー。
【0384】
吸入による投与のために、化合物は、好適なプロペラント、例えば二酸化炭素などのガスを含む加圧容器もしくはディスペンサー、またはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0385】
全身投与は、経粘膜または経皮手段によるものでもあり得る。経粘膜または経皮投与に関しては、透過されるバリヤに適切な浸透剤を処方で使用する。そのような浸透剤は、概して当該技術分野で公知であり、例えば経粘膜投与については、洗剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体が挙げられる。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐剤の使用により達成することができる。経皮投与のために、活性化合物は、当該技術分野で一般的に公知の軟膏(ointment)、軟膏(salve)、ゲル、またはクリームに処方される。
【0386】
インプラントおよびマイクロカプセル化送達システムをはじめとする制御放出処方などの、身体からの迅速排除から化合物を保護する薬剤的に許容される担体を用いて、活性化合物を調製できる。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸を使用できる。そのような処方の調製のための方法は、当業者には明らかである。材料は、Alza CorporationおよびNova Pharmaceuticals, Inc.から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体で感染した細胞を標的とするリポソームを含む)は、薬剤的に許容される担体として使用することもできる。これらは、当業者に公知の方法、例えば、米国特許第4,522,811号で記載されているようにして調製することができる。
【0387】
投与の容易性および投薬量の均一性のために、単位投与形態の経口または非経口組成物に処方することが特に有利である。本明細書中で用いられる場合、単位投与形態は、治療される対象に単位投薬量として適した物理的に独立した単位を指す;各単位は、必要とされる医薬担体と組み合わせて所望の治療効果をもたらすように計算されたあらかじめ決められた量の活性化合物を含む。本発明の単位投与形態についての明細は、活性化合物の独自の特性および達成される特定の治療効果によるか、または直接依存して決定される。
【0388】
治療適用において、本発明にしたがって使用される医薬組成物の投薬量は、選択された投薬量に影響を及ぼす他の因子の中でも、薬剤、受容患者の年齢、体重、および臨床状態、ならびに治療を施す臨床医または開業医の経験および判断によって変わる。概して、用量は、腫瘍成長の遅延、およびこのましくは退縮をもたらし、そしてまた好ましくはガンの完全退縮を引き起こすのに充分でなければならない。投薬量は、1日あたり約0.01mg/kgから1日あたり約5000mg/kgの範囲であり得る。好ましい態様において、投薬量は1日当たり約1mg/kgから1日あたり約1000mg/kgの範囲であり得る。1つの態様では、用量は、単回、分割、または持続用量で、約0.1mg/日〜約50g/日;約0.1mg/日〜約25g/日;約0.1mg/日〜約10g/日;約0.1mg〜約3g/日;または約0.1mg〜約1g/日の範囲内である(この用量は、患者の体重(kg)、体表面積(m
2)、および年齢(歳)について調節することができる)。医薬品の有効量は、臨床医または他の資格のある観察者によって指摘される客観的に確認可能な改善を提供するものである。例えば、患者における腫瘍の退縮は、腫瘍の直径に関連して測定することができる。腫瘍の直径の減少は退縮を意味する。退縮は、治療をやめた後に腫瘍が再発しないことによっても示される。本明細書中で用いられる場合、「効果的な投薬量(dosage effective manner)」とは、対象または細胞において所
望の生物学的効果をもたらす活性化合物の量を指す。
【0389】
医薬組成物を容器、パック、またはディスペンサー中に投与のための使用説明書とともに含めることができる。
【0390】
本発明の化合物はさらに塩を形成する可能性がある。これらの形態のいずれも請求される発明の範囲内に含まれることが想定される。
【0391】
本明細書中で用いられる場合、「薬剤的に許容される塩」は、親化合物がその酸または塩基塩を作製することによって修飾される本発明の化合物の誘導体を指す。薬剤的に許容される塩の例としては、限定されるものではないが、アミン、アルカリなどの塩基性残基の鉱酸もしくは有機酸塩またはカルボン酸などの酸性残基の有機塩などが挙げられる。薬剤的に許容される塩としては、例えば非毒性無機または有機酸から形成される親化合物の通常の非毒性塩または四級アンモニウム塩が挙げられる。例えば、そのような通常の非毒性塩としては、限定されるものではないが、2−アセトキシ安息香酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、酢酸、アスコルビン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、重炭酸、炭酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、1,2−エタンスルホン酸、フマル酸、グルコへプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、グリコール酸、グリコリルアルサニル酸(glycollyarsanilic)、ヘキシルレゾルシン酸、ヒドラバミン酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフトエ酸、イソチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリルスルホン酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ナプシル酸、硝酸、シュウ酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、リン酸、ポリガラクツロン酸、プロピオン酸、サリチル(salicyclic)酸、ステアリン酸、スバセチン酸、コハク酸、スルファミン酸、スルファニリン酸、硫酸、タンニン酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、および一般的に存在するアミン酸、例えばグリシン、アラニン、フェニルアラニン、アルギニンなどから選択される無機および有機酸由来のものが挙げられる。
【0392】
薬剤的に許容される塩の他の例としては、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、ピルビン酸、マロン酸、3−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、4−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4−メチルビシクロ−[2.2.2]−オクト−2−エン−1−カルボン酸、3−フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第3ブチル酢酸、ムコ酸などが挙げられる。本発明はまた、親化合物中に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属、またはアルミニウムイオンによって置換されている場合に形成される塩;またはエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N−メチルグルカミンなどの有機塩基との配位体を包含する。塩形態において、化合物と塩のカチオンまたはアニオンとの比は、1:1、または1:1以外の任意の他の比、例えば3:1、2:1、1:2、または1:3であり得ると理解される。
【0393】
薬剤的に許容される塩に関するすべての言及は、同じ塩の本明細書中で定義されるような溶媒付加形態(溶媒和物)または結晶形態(多形体)を包含すると理解されるべきである。
【0394】
本発明の化合物は、エステル、例えば薬剤的に許容されるエステルとして調製することもできる。例えば、化合物中のカルボン酸官能基は、その対応するエステル、例えばメチル、エチルまたは他のエステルに変えることができる。また、化合物中のアルコール基は、その対応するエステル、例えば酢酸エステル、プロピオン酸エステルまたは他のエステルに変えることができる。
【0395】
化合物、またはその薬剤的に許容される塩もしくは溶媒和物を経口、経鼻、経皮、肺、吸入、口腔、舌下、腹腔内、皮下、筋肉内、静脈内、直腸、胸膜内、くも膜下腔内および非経口投与する。1つの実施形態では、化合物を経口投与する。当業者はある投与経路の利点を認めるであろう。
【0396】
化合物を利用する投薬計画は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および医学的状態;治療される状態の重篤度;投与経路;患者の腎機能および肝機能;および用いられる特定の化合物またはその塩をはじめとする様々な因子にしたがって選択される。通常の技術を有する医師または獣医師は状態を予防、対抗または状態の進行を阻止するために必要な薬物の有効量を容易に決定し、処方することができる。
【0397】
開示された本発明の化合物の処方および投与のための技術は、Remington: the Science and Practice of Pharmacy, 19
th edition, Mack Publishing Co., Easton, PA (1995)で見出すことができる。1つの実施形態において、本明細書中で記載され
る化合物、およびその薬剤的に許容される塩を、薬剤的に許容される担体または希釈剤と組み合わせた製剤で使用する。好適な薬剤的に許容される担体には、不活性固体フィラーまたは希釈剤および滅菌水溶液または有機溶液が含まれる。化合物は、そのような医薬組成物中、本明細書中で記載される範囲内の所望の投薬量を提供するために充分な量で存在する。
【0398】
本明細書中で用いられるすべてのパーセンテージおよび比は、別段の指示がない限り、重量基準である。本発明の他の特徴および利点は、様々な実施例から明らかである。提供した実施例は、本発明の実施に有用な様々な成分および方法を示す。実施例は請求される発明を限定しない。本開示に基づいて、当業者は、本発明の実施に有用な他の成分および方法を特定でき、利用できる。
【0399】
本明細書中で記載される合成スキームにおいて、化合物は、簡単にするために1つの特定の立体配置で描くことができる。そのような特定の立体配置は、本発明を1つまたは別の異性体、互変異性体、位置異性体または立体異性体に限定すると解釈されるべきではなく、また異性体、互変異性体、位置異性体または立体異性体を排除するものでもない;しかしながら、所与の異性体、互変異性体、位置異性体または立体異性体は、別の異性体、互変異性体、位置異性体、または立体異性体よりも高い活性レベルを有し得ると理解される。
【0400】
上述の方法によって設計、選択および/または最適化された化合物は、一旦製造されると、化合物が生物学的活性を有するかどうかを判定する当業者に公知の様々なアッセイを使用して特徴づけることができる。例えば、分子は、限定されるものではないが、それらが予想される活性、結合活性、および/または結合特異性を有するかどうかを判定するための後述するアッセイをはじめとする通常のアッセイによって特徴づけることができる。
【0401】
さらに、ハイスループットスクリーニングを使用して、そのようなアッセイを用いる分析を迅速化することができる。 その結果、本明細書中に記載される分子を活性について、当該技術分野で公知の技術を用いて迅速にスクリーニングすることが可能であり得る。ハイスループットスクリーニングを実施するための一般的方法は、例えば、Devlin (1998) High Throughput Screening, Marcel Dekker;および米国特許第5,763,263号で記載されている。 ハイスループットアッセイは、限定されるものではないが、後述するものをはじめとする1以上の異なるアッセイ技術を使用できる。
【0402】
本発明のEZH2阻害剤を、所望により、EZH2阻害剤を含む1以上の単位投与形態を含んでもよいキット(たとえば、パックまたはディスペンサーデバイス)で提供してもよい。パックは、例えば金属またはプラスチックホイルを含んでもよく、例えばブリスターパックなどである。パックまたはディスペンサーデバイスは、投与のための説明書を添付してもよい。適合性の医薬担体中に処方された本発明のEZH2阻害剤を含む組成物も、調製し、適切な容器中に入れ、そして必要を示す状態の治療のためにラベルを貼ることができる。使用説明書も提供され得る。
【0403】
また、本明細書では、メチル化H3−K27を検出する複数のメチル化検出試薬を含むキットも提供される。例えば、キットは、モノ−メチル化H3−K27、ジ−メチル化H3−K27およびトリメチル化H3−K27検出試薬を含む。検出試薬は、例えば抗体もしくはそのフラグメント、ポリペプチドまたはアプタマーである。
【0404】
キットはまた、SWI/SNF複合体のうちの少なくとも1つの成分の機能喪失を検出する試薬、例えば、キットの形態で一緒にパッケージされた、突然変異体成分核酸配列の一部に対して相補性である、オリゴヌクレオチド配列などの相同性核酸配列を有することによって突然変異体成分核酸配列を特異的に同定する核酸あるいは野生型および/または突然変異体成分核酸によってコード化されるタンパク質に対する抗体も含んでもよい。オリゴヌクレオチドは、成分遺伝子のフラグメントであり得る。たとえば、オリゴヌクレオチドは、200、150、100、50、25、10またはそれ以下のヌクレオチド長であり得る。キットは、別個の容器中に、とりわけ、アプタマーまたは抗体、対照処方(陽性および/もしくは陰性)/または検出可能な標識、例えばフルオレセイン、緑色蛍光タンパク質、ローダミン、シアニン染料、アレクサ染料、ルシフェラーゼ、放射性標識を含んでもよい。加えて、SWI/SNF複合体の生物学的活性(例えばそのクロマチンリモデリング活性)を検出するための試薬もキット中に含めることができる。
【0405】
アッセイを実施するための説明書(たとえば、書面、テープ、VCR、CD−ROMなど)をキットに含めてもよい。アッセイは、例えば当該技術分野で公知のウェスタンブロット分析、免疫組織化学(IHC)、免疫蛍光(IF)、シーケンシングおよび質量分析(MS)の形態であってよい。
【0406】
実施例1:EZH2の阻害による遺伝子学的に変更されたリンパ腫および悪性ラブドイド腫瘍における耐久性腫瘍退縮
【0407】
化合物AはEZH2の強力かつ選択的な阻害剤である:放射性標識されたSAMおよびH3K27に対応するニワトリ赤血球オリゴヌクレオソームまたはペプチドのいずれかを基質として含む無細胞生化学アッセイは、化合物Aが、2.5±0.5nmol/Lの阻害定数(Ki)値および11±5nM(ヌクレオソームアッセイ)または16±12nM(ペプチドアッセイ)のIC
50値で、野生型EZH2を含むヒトPRC2の活性を選択的に阻害したことを示した。IC
50値は、ヒトおよびラットEZH2酵素について、すべての公知リンパ腫機能転換突然変異を有するEZH2タンパク質についてと同様に類似していた。化合物AのIC
50値はSAMの濃度が増加するにつれ増加したが、オリゴヌクレオソームの量の増加によってごくわずかしか影響を受けず、このことはSAM競合的およびヌクレオソーム非競合的阻害様式と一致する。HMT選択性を示すために、リジンおよびアルギニンHMTの両方を含むEZH2以外のHMTのパネルに対して化合物Aによる阻害を評価した。化合物Aは、EZH1に対して35倍の選択性を示し、試験した他の14のHMTに対して4500倍高い選択性を示した。
【0408】
化合物Aは細胞における細胞性H3K27メチル化を特異的に阻害する:WSU−DLCL2 EZH2 Y641F突然変異体リンパ腫細胞を化合物Aとともに4日間インキュベートする場合、0.26μMの平均IC
50値(ELISAによって測定したH3K27Me3レベル)で、全体的H3K27Me3レベルにおいて濃度に依存した減少が観察された。メチル化阻害の動力学を調査する場合、90%阻害が3〜4日のインキュベーション後にのみ達成されるので、H3K27Me3の半減期は約1日であった。OCI−LY19 EZH2野生型リンパ腫細胞を2.7μMの化合物Aとともに4日間インキュベートした場合、影響を受けた唯一のメチルマークは、PRC2触媒作用の3つの公知生成物であるH3K27Me1、H3K27Me2およびH3K27Me3であった。化合物Aとともにインキュベーションすることによって、H3K27アセチル化も増加した。化合物Aが全体的H3K27トリメチル化レベルを減少させる能力を、野生型または変異EZH2のいずれかを発現する系を含むいくつかの他のヒトリンパ腫細胞系でさらに試験した。化合物Aは、EZH2状態と関係なくすべての細胞系において類似の有効性でH3K27Me3を減少させた(表1)。
【0409】
化合物Aは、EZH2点突然変異を有するリンパ腫細胞系の選択的死滅に至る:化合物AとともにWSU−DLCL2 EZH2 Y641F突然変異体細胞をインキュベーションすると、6日増殖アッセイにおいて0.28±0.14μMの平均IC
50値で抗増殖効果に至る。生存細胞数に対する化合物Aの効果の動力学を11日の延長期間にわたってさらに試験した。化合物Aの抗増殖効果は、化合物Aが介在する細胞性H3K27メチル化阻害の動力学と一致して、WSU−DLCL2細胞を4日を超える期間化合物に暴露した後に明らかであった。11日アッセイにおけるWSU−DLCL2細胞の増殖の化合物A阻害のIC
50値(0.0086μM、表1)は、6日増殖アッセイで得られた結果と比較した場合、低く、このことは、インキュベーション期間が長くなると感受性が増大したことを示唆する。WSU−DLCL2細胞と対照的に、11日にわたるOCI−LY19ヒトリンパ腫細胞(残基Y641に関してEZH2野生型)の成長は、両細胞系に関するH3K27Me3阻害の匹敵するIC
50値にもかかわらず、有意に影響を受けなかった(表1)。11日の全インキュベーション期間を考慮して細胞が増殖を停止する濃度を特定するために、特定の細胞系の最小細胞毒性濃度(LCC)を計算した。WSU−DLCL2 EZH2 Y641F突然変異体ヒトリンパ腫細胞のLCC値は、EZH2の野生型であるOCI−LY19細胞と比較した場合に有意に低かった(表1)。この状況に特異的な細胞死滅は、拡張されたリンパ腫細胞系パネルでの11日増殖アッセイから得られる結果によってさらに裏付けられた。RL細胞系(EZH2 Y641N)を除く、EZH2突然変異を有するすべての細胞系は、野生型EZH2を有する細胞系と比較した場合、化合物Aの抗増殖効果に対してより感受性であった(表1)。ファイファー細胞系(EZH2 A677G)は、化合物Aに対する感受性においてY641突然変異体細胞系よりも、それぞれIC
50値およびLCCによって測定されるように、20〜300倍の増加を示した。次に、細胞死滅を持続するために必要な化合物暴露の最低時間を洗い流し実験によって調査した。化合物Aとともに7日間(続いて7日の化合物洗い流し)、または14日間連続してインキュベートしたWSU−DLCL2細胞の第11日または第14日でのLCC値は類似していた(表2)。しかしながら、4日間だけの薬物暴露は、連続インキュベーションと類似したLCC値を誘導するには十分ではなかった。
【0410】
化合物AはEZH2突然変異体リンパ腫細胞においてG
1期停止およびアポトーシスを誘導する:次に、WSU−DLCL2細胞における細胞周期の進行およびアポトーシスに対する化合物A(1μM)との7日間インキュベーションの効果を評価した。G
1期における細胞のパーセンテージの増加、ならびにS期およびG
2/M期における細胞のパーセンテージの減少は、化合物Aインキュベーションの2日後に明らかであった。最大の効果は4日後に達成された。サブG
1フラクションにおいて明らかな増加はなく、このことは、アポトーシスが7日間の化合物Aインキュベーションによって誘導されなかったことを示唆する。これは、7日のインキュベーション後にのみ細胞毒性効果が観察されたことを示唆する、化合物Aの存在下でのWSU−DLCL2細胞の成長曲線と一致する。WSU−DLCL2細胞を化合物Aとともに最高14日までインキュベーションした後、TUNELアッセイによって決定されたアポトーシスを起こした細胞の割合は、ビヒクルと比べて第14日で有意に増加し、このことは、化合物Aが介在する細胞死がアポトーシスの誘導によって起こったことを示す。
【0411】
化合物Aの経口投与は、マウスにおいてEZH2突然変異体異種移植片モデルでのEZH2標的阻害に至る:EZH2突然変異体リンパ腫異種移植片を有するマウスにおける化合物の全身暴露およびインビボ標的阻害に対する化合物Aの経口投薬の効果を調査した。まず、WSU−DLCL2異種移植片を皮下移植したSCIDマウスに化合物Aを4または7日間経口投薬した。最終用量の5分前または3時間後のいずれかに化合物A血漿レベルを測定することによって、暴露において明らかに用量に依存した増加が明らかになった。160mg/kgTIDまたは213mg/kgBIDで投薬された動物だけが、投薬サイクル中WSU−DLCL2細胞のLCCを上回る血漿中平均化合物レベルを維持した(1652ng/mL、マウス血漿タンパク質の結合を考慮して)。最終用量の3時間後に集められた腫瘍からのホモジネートにおける化合物測定によって、最高用量群についてのみ、2コンパートメント中の化合物レベルが類似していたことが明らかになった。腫瘍中のH3K27Me3レベルを分析した場合、用量に依存したEZH2標的阻害が観察された。213mg/kg QDで投薬されたマウス由来の腫瘍でH3K27Me3阻害は低く、このことは、投薬サイクル全体にわたってLCCよりも高く血漿濃度を維持することが最適標的阻害のために必要であることを示唆する。4日間160mg/kg TIDで投薬すると、同じ用量およびスケジュールで7日間投薬するよりも若干低い標的阻害が得られ、このことは、投薬を延長するとWSU−DLCL2腫瘍における標的阻害度が増加することを意味する。BIDおよびQDスケジュールの両方を評価するKARAPS−422異種移植片を皮下移植したヌードマウスにおける同様の7日実験を実施した。化合物Aは両レジメンで、腫瘍H3K27Me3レベルの用量に依存した減少を誘導した。
【0412】
化合物Aは、いくつかのEZH2突然変異体リンパ腫異種移植片において有意な抗腫瘍効果を誘導する:WSU−DLCL2 EZH2 Y641F突然変異体異種移植腫瘍を有するSCIDマウスを化合物Aで28日間治療した場合、150mg/kg TIDの最高用量で58%の、用量に依存した腫瘍成長阻害が観察された。最高用量を投与された動物だけが投薬サイクル中WSU−DLCL2細胞のLCCより高い平均化合物A血漿レベルを維持した。化合物Aを28日間投薬すると、7日投薬で観察されるものと対照的に、血漿と比べて腫瘍組織において相対的な化合物の蓄積に至った。第28日に集められた腫瘍からのヒストンのELISA分析は、用量に依存した標的阻害を示した。WSU−DLCL2異種移植片におけるH3K27Me3レベルは、7日間投薬されたマウスと比べて28日間投薬されたマウスで低く、このことは、化合物Aの投与の延長が標的阻害の程度を増加させたことを示す。KARPAS−422 EZH2 Y461N突然変異体異種移植片において、BIDスケジュールで化合物Aを28日投薬すると、はるかに劇的な効果があった。80.5mg/kg BID程度の低い用量で腫瘍成長阻害が観察されたが、さらに高い用量は異種移植片を根絶させ、投薬停止後、最高90日間再成長が観察されなかった。2サイクルの7日オン/7日オフおよび21日オン/7日オフのスケジュールで、間欠投薬スケジュールを、KARPAS−422異種移植片を有するマウスにおいて調査した場合、化合物Aはここでも有意な用量依存性抗腫瘍効果を示した。すべての投薬スケジュールについて、腫瘍成長阻害および完全退縮がそれぞれ90および361mg/kg BIDで観察された。ファイファーEZH2 A677G突然変異体異種移植片モデルは、インビトロでこの細胞系に対する化合物Aの強力な抗増殖効果によって示唆されるように、最も感受性の高い腫瘍モデルであった。最低のもの(30mg/kg QD)を除くすべての化合物A用量群(QDスケジュール)はすべての動物において完全な腫瘍退縮を示した。ここでも、腫瘍再成長は実験の最後(化合物A投与の停止後36日)まで観察されなかった。腫瘍再成長は30mg/kg QDで観察されたが、この非常に低い用量は投与期間中に腫瘍うっ滞を誘導した。耐容性の問題のために、1140mg/kg QDを投与したマウスについて第12日で投薬を停止した;それでも、化合物Aに12日間暴露しただけのこの群で耐久性の完全退縮が観察された。
【0413】
化合物AはインビトロおよびインビボでSMARCB1突然変異体MRT細胞を選択的に殺す:EZH2阻害がSMARCB1欠失MRT細胞の成長または生存に対して影響を及ぼしたかどうかを試験した。SMARCB1欠失MRT細胞系G401およびA204を化合物Aとともに14日増殖アッセイにおいてインビトロでインキュベートすると、nM範囲のIC
50値で強力な抗増殖効果が誘導され、一方、SMARCB1を発現した対照細胞系RDおよびSJCRH30はごくわずかしか影響を受けなかった(表3)。皮下G401異種移植片を有するSCIDのマウスに化合物Aを266または532mg/kg BIDで28日間投薬すると、非常に急速に成長する腫瘍が除去された。KARPAS−422およびファイファーEZH2突然変異体NHL異種移植片モデルと同様に、再成長は、実験の最後、投薬停止後32日で観察されなかった。133mg/kgで投薬された化合物Aは、投与期間中にうっ滞を誘導し、投薬停止後にビヒクルに比べて有意な腫瘍成長遅延をもたらした。第21日に各群からのマウスのサブセットから収集した腫瘍は、全ての用量で強力なEZH2標的阻害を示した。
【0414】
化合物Aは用量に依存して非腫瘍組織におけるH3K27メチル化を阻害する:上記データは、化合物AがSWI/SNFによって推進されるガンおよびMRTの新規治療様式の代表であることを示す。投薬後の薬力学的バイオマーカー調節の測定を、多くの場合、初期臨床試験で実施して、前臨床モデルからのデータに基づいて応答を生じることが予測される標的阻害の程度を評価する。投薬後腫瘍バイオプシーの収集は多くの場合不可能であるので、末梢血単核細胞(PBMC)、皮膚または骨髄などのより容易に利用可能な代用組織を多くの場合は代わりに集める。代用組織におけるEZH2標的阻害を試験するために、オスおよびメススプラグ・ドーリーラットに100、300、または1000mg/kgの化合物Aを28日間経口投与し、そしてPBMC、骨髄および皮膚サンプルを実験の最後で集めた。化合物Aの血漿レベルはオスおよびメスラット両方で用量に依存して増加し、血漿レベルはオスにおいてと比較するとメスにおいての方が概して高かった。耐容性問題のために、1000mg/kg群のメスは第23日で安楽死させなければならなかった。ELISAによって測定される、用量依存性標的阻害が、化合物Aを投薬したラット由来のPBMCおよび骨髄で観察された。標的阻害の程度は、28日間投薬されたオス(1000mg/kgの同じ用量)と比較して、22日間投薬されたメス由来のPBMCについてはあまり顕著ではなかった。IHCアッセイによって評価されるH3K27Me3陽性細胞における用量依存性減少が、化合物A投薬ラットの皮膚の表皮で観察された。最大の効果は、最高の用量で観察され、化合物A投与の22日後ですでに明白であった。
【0415】
化合物Aは、インビトロで他のEZH2阻害剤と類似の特性を示し、例えば他のHMTと比較した場合、生化学アッセイにおいてEZH2について非常に高い特異性、およびEZH2変異NHL細胞系の状況特異的な殺滅に至る細胞性H3K27メチル化の特異的阻害を示した。しかしながら、この化合物は有効性において約10倍の増加を達成し、これは生化学的および細胞機能アッセイで決定される減少したK
iおよびIC
50値によって反映される。加えて、化合物Aはげっ歯類に投与された場合に優れた経口バイオアベイラビリティーを示し、これは異種移植腫瘍および非腫瘍組織での用量依存性EZH2標的阻害に至る。重要なことに、化合物Aの投薬は、EZH2突然変異体リンパ腫異種移植片を有するマウスにおいて有意な抗腫瘍効果を誘導した。応答は、腫瘍根絶(投薬停止後に再成長しない)から用量依存性腫瘍成長阻害まで及ぶ。抗腫瘍活性の遅延した発生(4〜7日後)は、細胞を化合物Aとともにインビトロでインキュベーションすることによって誘導されるメチル化阻害および抗増殖性活性の動力学と一致していた。化合物A血漿レベルを投薬サイクル中LCCより高く保つことが、WSU−DLCL2異種移植片モデルにとって最大標的阻害および抗腫瘍応答を誘導するために必要であった。しかしながら、他の2つのリンパ腫異種移植片モデル(KARPAS−422およびファイファー)は化合物A投与に対して極度に感受性であり、血漿レベルをLCCより高く保つことは必要ではなかった。ファイファーEZH2 A677G突然変異体異種移植腫瘍は、非常に低い用量または短い投薬期間で恒久的に消滅し、このことは、このタイプの遺伝的に定義されたNHLを有する患者が化合物Aで有意な治療効果を有することを示唆した。
【0416】
MRTは、非常に悪性で、局所的に侵襲性であり、頻繁に転移し、そして特に致死的である脳、腎臓、および軟組織の極度に攻撃的な小児がんであるが、それらは特徴的には二倍体であり、ゲノム異常がない。しかしながら、それらはSWI/SNFクロマチンリモデリング複合体のコア成分であるSMARCB1の発現の損失のほぼ完全な浸透率によって特徴づけられる。例えば突然変異によって誘導されるSMARCB1の両アレル不活性化は、本質的にMRTにおける唯一の遺伝的事象であり、このことは、この遺伝子異常の推進力の役割を示唆する。遺伝学的研究により、PRC2およびSWI/SNFはRB、Cyclin D1およびMYC経路付近の遺伝子発現を拮抗的に調節することが示唆される。ここで、薬理学的EZH2阻害はSMARCB1欠失MRT細胞系において抗増殖効果を誘導し、マウスにおいてMRT異種移植片を恒久的に根絶させたことが示された。このことは、EZH2自体は遺伝子学的に変更されていないガンのPRC2活性に対する依存性を裏付ける。
【0417】
化合物Aは、NHLの遺伝的に定義されたサブセットおよびMRTに関する新規治療様式の代表である。皮膚、PBMCおよび骨髄におけるH3K27Me3レベルの用量に依存した変化を測定する能力は、ヒト臨床試験における非侵襲性薬力学バイオマーカーとしてのこれらの代用組織からのシグナルの使用の前兆となる。
【0421】
実施例2:EZH2の阻害による遺伝的に改変された悪性ラブドイド腫瘍における耐久性腫瘍退縮
【0422】
化合物AはEZH2の強力かつ選択的阻害剤である:化合物Aを反復医薬化学反応によって開発した(
図10A)。化合物Aは、野生型EZH2を含むヒトPRC2の活性を2.5±0.5nMの阻害定数(Ki)値で阻害し、同様の効性が、すべての公知リンパ腫機能転換突然変異を有するEZH2タンパク質について観察された(表5)。化合物は定常状態速度論研究によってSAM競合的かつヌクレオソーム非競合的であることが見いだされた(
図11)。リジンおよびアルギニンHMTの両方を含むEZH2以外のHMTのパネルに対する化合物Aによる阻害も評価した。化合物Aは、EZH1に対して35倍の選択性を示し、試験した他の14のHMTに対して4500倍を超える選択性を示した(表5)。
【0424】
化合物Aは、細胞H3K27メチル化を特異的に阻害し、SMARCB1突然変異体MRT細胞の選択的アポトーシス死に至る:SMARCB1欠損MRT細胞およびSMARCB1野生型対照細胞のパネル(イムノブロットによって確認、
図12A)を化合物Aで4日間処理し、その結果、全体的H3K27Me3レベルが濃度に依存して減少した(
図10Bおよび表6)。野生型または突然変異体細胞のいずれかの処理の結果、H3K27上のメチルマークだけが縮小し、他のヒストンメチルマークは影響を受けなかった(
図12B)。SMARCB1欠失MRT細胞系の化合物Aでのインビトロ処理は、nM範囲のIC
50値で強力な抗増殖効果を誘導し;一方、対照(野生型)細胞系はごくわずかしか影響を受けなかった(
図10Cおよび表6)。抗増殖効果は化合物暴露の7日後のSMARCB1欠失MRT細胞で明らかであったが、最大活性には14日の暴露が必要であった。化合物A(1μM)とともに14日間インキュベーションすることの、G401およびRD細胞における細胞周期の進行およびアポトーシスに対する影響も評価した。RD SMARCB1野生型細胞の化合物Aインキュベーションは、DMSO対照と比較して細胞周期またはアポトーシスにおいて変化を示さなかった(
図13A)。対照的に、G401 SMARCB1欠失細胞は、G
1期における細胞のパーセンテージの増加と、付随して、7日後のS期およびG
2/M期で減少を示した(
図13B)。第7日中でサブG
1フラクションにおいて明らかな増加はなく、このことは、アポトーシスがその時までにはまだ誘導されていないことを示唆した。これは、インキュベーションの7日後にのみ細胞毒性を示す化合物Aの存在下でのG401細胞の成長曲線と一致する(
図10C)。G401細胞を最高14日まで化合物Aで処理した後、サブG
1における細胞のフラクションならびにTUNELアッセイによって測定されたアポトーシス細胞は、11〜14日で時間に依存して増加し、このことは、化合物Aが介在する細胞死がアポトーシスの誘導によって起こったことを示す(
図13B)。
【0426】
化合物Aは、ヘッジホッグ経路遺伝子、MYCおよびEZH2の発現を抑制しつつ神経分化および細胞周期阻害の遺伝子を誘導する:SMARCB1損失は、重要なガン経路の同時エピジェネティック摂動によりガン形成を誘導することを示唆する。このデータは、すでに記載された、神経分化に重要な遺伝子(CD133、DOCK4、PTPRK)、細胞周期阻害に重要な遺伝子(CDKN2A)および腫瘍抑制に重要な遺伝子(BIN1)の減少した発現、ならびに対照細胞と比較したSMARCB1欠失G401細胞におけるヘッジホッグ経路遺伝子GLI1の増加した発現(
図14A)を裏付けた。7日までのG401細胞の化合物A処理はCD133、DOCK4およびPTPRKの発現を強力に誘導し、細胞周期阻害剤CDKN1AおよびCDKN2Aならびに腫瘍抑制因子BIN1を上方調節し、全て時間依存性であった(
図14B)。同時に、ヘッジホッグ経路遺伝子、MYCおよびEZH2の発現は減少した。特に、化合物Aに14日間暴露されたG402SMARCB1欠失細胞はニューロン様形態をとった(
図14C)。対照的に、RD対照細胞の化合物Aインキュベーションは、上記遺伝子の発現に対する影響が最小の影響であった。
【0427】
化合物AはSMARCB1突然変異体MRT異種移植片を除去する:化合物Aの経口投与は、SMARCB1欠失MRT異種移植片を有するマウスにおいて化合物の全身暴露、インビボ標的阻害および抗腫瘍活性に至った。皮下G401異種移植片を有するSCIDマウスにおける実験を実施し、この場合、動物に21日間化合物を投与した。1群につきマウスの半分を第21日に安楽死させて、血液および組織を集め、一方、残りの動物はさらなる7日間は治療し、別の32日間は投薬せずに放置した。化合物Aはすべての用量で充分耐容性であり、体重に対する効果は最小であった(
図15A)。250または500mg/kgで1日2回(BID)、21〜28日間の投薬は、迅速に成長するG401腫瘍を実際に除去した(
図15B、14Cおよび16A)。投薬停止後32日間再成長は観察されなかった。125mg/kgで投与された化合物Aは、投与期間中、腫瘍うっ滞を誘導し、投薬期間後のビヒクルと比較して有意な腫瘍成長遅延を生じた。第21日の投薬の5分前または3時間後のいずれかの化合物A血漿レベルを測定することによって、全身暴露において明らかな用量に依存した増加が明らかになった(
図15D)。第21日に各群からのマウスのサブセットから収集した腫瘍は、H3K27me3の強力な阻害を示し、抗腫瘍活性と相関した(最大効果は250mg/kgで達成された、
図16B)。加えて、CD133、PTPRK、DOCK4およびGLI1の発現における用量に依存した変化がG401異種移植腫瘍で検出された(
図16C)。
【0428】
このデータは、EZH2の薬理学的阻害が抗増殖性効果を特にSMARCB1欠失MRT細胞系において誘導し、そしてマウスにおいてMRT異種移植片を永久的に除去したことを示す。このことは、EZH2自体はこれに関連して遺伝的に改変されていないという事実にかかわらず、そのようなガンのPRC2活性に対する依存性を裏付ける。本明細書中で提示されるデータは、SMARCB1欠失MRTの関連で、EZH2の阻害が、GLI1、PTCH1、MYCおよびEZH2を減少させつつ、SMARCB1代理として機能し、神経分化遺伝子、細胞周期阻害剤および腫瘍抑制因子を活性化することを示す。複数のガン経路に対する化合物A介在性EZH2阻害の効果の合計は、MRTモデルにおいてみられる劇的かつ永久的な抗腫瘍活性の原因である。したがって、化合物Aは、致死的小児腫瘍のためのこれらの新規治療手順の代表である。
【0429】
さらに、SWI/SNF複合体のいくつかのメンバーはMRT以外の他のガン型では遺伝的に改変されるので、EZH2はまた、様々なガン型において腫瘍維持および生存に関与すると考えられる。EZH2突然変異体を有する非ホジキンリンパ腫の選択的殺滅におけるEZH2阻害剤の有効性を示す最近の報告と組み合わせて、このデータは、EZH2の小分子に基づく阻害が、標的に直接的または間接的のいずれかの遺伝子変化がEZH2酵素活性に対して増殖性依存状態を付与する様々な血液系および固体腫瘍における治療的介入の有効な機構であることを示す。
【0430】
実施例3:材料および方法
細胞培養:細胞系293T、RD、SJCRH30、A204、G401、G402、およびKYM−1。293T(CRL−11268)、RD(CRL−136)、SJCRH30(CRL−2061)、A204(HTB−82)、G401(CRL−1441)、およびG402(CRL−1440)をATCCから入手した。KYM−1(JCRB0627)をJCRBから入手した。293TおよびRD細胞をDMEM+10%FBS中で培養した。SJCRH30細胞をRPMI+10%FBS中で培養した。A204、G401、およびG402細胞をMcCoys 5a+10%FBS中で培養した。KYM−1細胞をDMEM/ハムのF12+10%FBS中で培養した。
【0431】
ウェスタンブロット分析:ヒストンをすでに記載されたようにして酸抽出した(Daigle et al., Blood. 2013 Aug 8;122(6):1017-25)。酸で抽出されたヒストンについてのウェスタンブロットをすでに記載されているようにして実施した(Knutson et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 2013 May 7;110(19):7922-7)。全細胞溶解物(WCL)を、修飾RIPA緩衝液(10xRIPA Lysis緩衝液(Millipore #20−188)、0.1%SDS(Invitrogen AM9823)、プロテアーゼミニ錠剤(Roche #1836153))を用いて実施した。細胞をペレット化し、氷冷PBSで洗浄し、氷冷RIPA緩衝液中に再懸濁させた。5分間氷上でインキュベートする。溶解物を3回10秒間、50%出力で音波処理し、次いで氷上で10分間インキュベートした。溶解物を次いで最大速度にて15分間、4度にて卓上遠心分離機中で遠心分離した。清澄化された溶解物を新しい管に等分し、そしてWCLのタンパク質濃度をBCAアッセイ(Pierce)によって測定した。10マイクログラムの各溶解物を10〜20%トリス−グリシンゲル(Biorad)上で分画し、iBlot(プログラム3で7分、ニトロセルロース転送スタックを使用)を用いて移し、そしてOdysseyブロッキング緩衝液中で以下の抗体でプローブした:SNF5(CST #8745),EZH2(CST #5246)、およびベータ−アクチン(CST #3700)。
【0432】
インビトロ細胞アッセイ:接着細胞系増殖アッセイ(懸濁細胞系についてすでに記載されているようにして分析したKYM−1を除くすべての細胞系((Daigle et al., Blood. 2013 Aug 8;122(6):1017-25)、各細胞系の播種密度を成長曲線(ATP生存率によって測定)および7日間の時間経過にわたる密度に基づいて決定した。化合物処理の前日に、細胞を96ウェルプレート中に3連で(第0日〜第7日の時間経過)または6ウェルプレート(残りの時間経過のために第7日に再播種するため)のいずれかで播種した。第0日に、細胞を、非処理、DMSO処理、または10uMで始めて、3倍もしくは4倍希釈で減少する化合物Aで処理のいずれかであった。プレートを第0日、第4日、および第7日にCellTiter−Glo(登録商標)(Promega)を使用して読み取り、化合物/培地を第4日に補充した。第7日に、6ウェルプレートをトリプシン処理し、遠心分離し、そしてVi−Cellによってカウントするために新鮮な培地中に再懸濁させた。各処理からの細胞を96ウェルプレート中に3連で元の密度にて再播種した。細胞をプレートに一晩付着させ、そして細胞を第0日と同様に処理した。第7日、第11日および第14日に、CellTiter−Glo(登録商標)を使用してプレートを読み取り、化合物/培地を第11日に補充した。3連の平均を用いて、増殖を経時的にプロットし、IC50値を算出した。細胞周期およびアポトーシスについて、G401およびRD細胞を15cmの皿中に2連で1×10
6細胞/プレートの密度にて播種した。細胞を1uMの化合物Aとともに、合計25mL中で14日にわたってインキュベートし、細胞を分割して第4日、第7日、および第11日に元の播種密度に戻した。細胞周期分析およびTUNELアッセイを、Guava(登録商標)フローサイトメーターを使用し、製造業者のプロトコルにしたがって実施した。
【0433】
遺伝子発現分析:G401およびRD細胞をT−75フラスコ中にそれぞれ175,000細胞/フラスコおよび117,000細胞/フラスコで播種し、一晩付着させた。第0日に、細胞をDMSOまたは1uMの化合物Aで2連で処理した。細胞を第2日、第4日、および第7日に収集し、ペレット化し、培地および化合物を第4日に補充した。21日間投薬した(ビヒクル、125mg/kg、および250mg/kg(それぞれ6匹の動物)ならびに500mg/kg(4匹の動物)化合物A投与群)G401異種移植片動物の腫瘍組織を遺伝子発現分析のために使用した。全mRNAを細胞ペレットおよび腫瘍組織から、RNeasy Miniキット(Qiagen #74106)を使用して抽出し、High Capacity cDNA逆転写キット(Applied Biosystems (AB)#4368813)によって逆転写した。RT−PCRを、TaqMan Fast Advanced Master Mix(AB #4444964)および以下の表中のTaqManプライマー/プローブセットを使用するViiA(商標)7 Real−Time PCR Systems(AB)によって実施した。遺伝子発現を18S(AB #Hs99999901_s1)に対して正規化し、ΔΔCt法を用いて変化(倍)を算出した。インビボサンプルについて、平均Ct値+/−SDを各用量群について決定し、ビヒクル用量群と比較した変化(倍)を、ΔΔCt法を用いて算出した。
【0435】
ELISA:ヒストンを前述のように腫瘍から単離し(Daigle et al)そしてコーティング緩衝液(0.05%BSAを含むPBS)中、等濃度(H3について0.5ng/ulおよびH3K27Me3について4ng/ul)で調製した。サンプルまたは標準(100μL)を2つの96ウェルELISAプレート(Thermo Labsystems, Immulon 4HBX #3885)に2連で添加した。DMSOまたは10μmol/L化合物Aで4日間処理したG401細胞から単離されたヒストンを対照ウェルに腫瘍ヒストンサンプルと同じヒストン濃度で添加した。プレートを密封し、一晩4℃でインキュベートした。翌日、プレートをBio Tekプレートウォッシャーで、300μL/ウェルのPBST(0.05%Tween 20を有するPBS;10xPBST、KPL #51−14−02)で3回洗浄した。プレートを300μL/ウェルの希釈剤(PBS+2%BSA+0.05%Tween20)でブロックし、室温で2時間インキュベートし、そしてPBSTで3回洗浄した。すべての抗体を希釈剤中で希釈した。100uL/ウェルの抗H3K27Me3(CST#9733、50%グリセロールストック1:1000)または抗全H3(Abcam #ab1791、50% グリセロールストック1:10,000)を各プレートに添加した。プレートを90分間室温でインキュベートし、そしてPBSTで3回洗浄した。100μL/ウェルの抗Rb−IgG−HRP(Cell Signaling Technology, 7074)を1:2000でH3K27Me3プレートに添加し、1:6000でH3プレートに添加し、そして90分間室温でインキュベートした。プレートをPBSTで4回洗浄した。検出のために、100μL/ウェルのTMB基質(BioFx Laboratories, #TMBS)を添加し、そしてプレートを暗所で室温にて5分間インキュベートした。100μL/ウェルの1N H
2SO
4で反応を停止させた。450nmでの吸光度をSpectraMax M5マイクロプレートリーダーで読み取った。
【0436】
異種移植片研究:この実験での動物取り扱い、世話および治療に関するすべての手順は、実験動物ケア評価認証協会(AAALAC)のガイドラインにしたがったShanghai Chemparnerの動物ケアおよび使用委員会(IACUC)により承認されたガイドラインにしたがって実施した。インビボ実験に関して、腫瘍発生のために、マウスの右脇腹に0.2mlの基本培地とMatrigelとの混合物(McCoy’s 5A: Matrigel=1:1)中G−401腫瘍細胞(5x10
6/マウス)を皮下接種した。腫瘍有効性研究について、腫瘍サイズが約157mm3に達したら、治療を開始した(1群あたりn=16)。化合物Aまたはビヒクル(水中0.5%のNaCMC+0.1%のTween−80)を10μL/gの投薬体積でBIDにて21または28日間経口投与した。動物の体重を最初の1週間毎日測定し、その後、実験の残りは1週間に2回測定した。腫瘍サイズを1週間に2回、カリパーを用いて2つの寸法で測定し、体積をmm
3で表した。PK/PD分析のために、最大の腫瘍負荷を有する8匹のマウスを、21日の投薬後に腫瘍および血液収集のために安楽死させた。残りのマウスはさらに1週間投薬を続け、第29日から、治療を停止し、マウスを腫瘍成長遅延試験に登録した。マウスを腫瘍重量終点(2000mm
3)に達するまで、または第60日まで(どちらか早いほう)、個別に観察した。
【0437】
薬物動態分析:デキサメタゾンを内部標準として使用した。30μL血漿サンプルのアリコートを30μLのIS(デキサメタゾン、1000ng/mL)および150μLのACNとともに添加した。混合物を5分間ボルテックスし、14000rpmで5分間遠心分離した。2μLの上清のアリコートをLC−MS/MS分析のために注入した(Q−trap 3200)。10倍希釈血漿サンプルについて、3μL血漿サンプルのアリコートに27μLのブランク血漿を添加し、希釈係数は10であり、次いで30μLのIS(デキサメタゾン、1000ng/mL)および150μLのACNを添加した。混合物を5分間ボルテックスし、14000rpmで5分間遠心分離した。2μL上清のアリコートをLC−MS/MS分析のために注入した。腫瘍サンプルをBeadbeater(登録商標)で30秒間3xPBS(w/v)で均質化して、腫瘍ホモジネートを得た。30μL腫瘍ホモジネートサンプルのアリコートに30μLのIS(デキサメタゾン、1000ng/mL)および150μLのACNを添加した。混合物を5分間ボルテックスし、14000rpmで5分間遠心分離した。2μL上清のアリコートをLC−MS/MS分析のために注入した。
【0438】
実施例4:一般的実験手順
NMR
特に指定のない限り、CDCl
3を使用して
1H−NMRスペクトルを取得し、そしてVarianまたはOxford instruments magnet(500MHz)装置を使用して400MHzまたは500MHzで記録した。表示された多重度は、s=一重線、d=二重線、t=三重線、q=四重線、quint=五重線、sxt=六重線、m=多重線、dd=二重線の二重線、dt=三重線の二重線である;brはブロードなシグナルを示す。
【0439】
LCMSおよびHPLC
Shimadzu LC−Q、Shimadzu LCMS−2010EVまたはWaters Acquity Ultra Performance LC。HPLC:生成物を、150×4.5mm YMC ODS−M80カラムまたは150×4.6mm
YMC−パック Pro C18カラムを有するShimadzu SPD−20Aにより1.0ml/分で分析した。
【0440】
移動相はMeCN:H2O=3:2(0.3%SDSおよび0.05%H
3PO
4を含む)、0.05% 水中TFA、0.05%アセトニトリル中TFA(勾配 初期20%、次いで0.05%TFA/MeCNから3分で濃度〜95%、0.5分間保持、3.51〜4.50分で、次いで0.05%TFA/MeCN濃度20%)。
【0441】
あるいは、LCMS、2つの異なる方法を使用した;我々が最も使用するものは、高pH(METCR1600)であり、もう1つはより標準的な化合物についてである(METCR1416)。
【0442】
0.1%水中ギ酸−移動相「A」 0.1%アセトニトリル中ギ酸−移動相「B」、Waters Atlantis dC18、2.1mm×100mm、3μmカラムを、流量=0.6ml/min カラム温度=40℃;時間(分)%B 0.00分 5%B. 5.0分 100% B、5.4分 100% Bおよび0.42分 5%Bで使用。
【0443】
3.5分法とは、Atlantis dC18、2.1mm×50mm、3μmカラム、40℃で1ml/分の流量を指す。移動相A ギ酸(水溶液)0.1% 移動相B ギ酸(MeCN) 0.1%、注入3μL、勾配 0分(5%有機)、2.5分(100%有機)、2.7分(100%有機)、2.71分(5%有機)、3.5分(5%有機)
【0444】
7.0分法は、Atlantis dC18、2.1mm×100mm、3μmカラム、40℃で流量6ml/min 移動相A ギ酸(水溶液)0.1% 移動相B ギ酸(MeCN) 0.1%、注入 3μL、勾配 0分(5%有機)、5分(100%有機)、5.4分(100%有機)、5.42分(5%有機)、7分(5%有機)を指す。
【0445】
3.5および7分法の両方を、LC−20ABポンプおよびSPD−M20A PDA検出器を利用するMS18 Shimadzu LCMS−2010EVまたはMS19 Shimadzu LCMS−2010EVシステムで実施した。
【0446】
3100 Mass Detectorを有するWaters AutoPurification Systemを使用するHPLC/MSによって生成物を精製した。
【0447】
HPLC分析はまた、Shimdazu LC−2010CHTでYMC ODS−A、C18、(150×4.6×5μm)カラムを周囲温度にて1.4ml/分の流量で使用して実施してもよい。10μlの注入体積を使用し、検出はUV/PDAによって行う。移動相Aは水中5%TFAであり、移動相Bはアセトニトリル中0.05%TFAであり、勾配プログラムは最初5%Bから8分で95%B、1.5分間保持、9.51〜12分B。濃度0.5%。希釈剤は移動相である。
【0448】
その他
自動フラッシュクロマトグラフィーを、12ml/分で流す10g SNAPカートリッジまたは25ml/分で流す25g SNAPカートリッジならびに254nmおよび280nmで検出するBiotage Isolera version 4で実施した。
【0449】
選択的なニトリル還元は、実験手順で記載した条件にしたがってThalesNano H−Cube(登録商標)で実施することができる。
【0450】
他の関連する一般的手順は、PCT公開番号WO12/118812、PCT出願番号PCT/US2012/033648およびPCT出願番号PCT/US2012/033662でも見出すことができ、そのそれぞれは全体として参照により本明細書中に組み込まれる。
【0451】
実施例5:N−((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)−5−(エチル(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)アミノ)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミドの合成
【0453】
ステップ1:5−ブロモ−2−メチル−3−ニトロ安息香酸の合成
【0455】
2−メチル−3−ニトロ安息香酸(100g、552ミリモル)の濃H
2SO
4(400mL)中撹拌溶液に、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチル−2,4−イミダゾリジンジオン(88g、308ミリモル)を室温で少しずつ添加し、反応混合物を次いで室温で5時間撹拌した。反応混合物を氷冷水上に注ぎ、析出した固体を濾過で除去し、水で洗浄し、真空下で乾燥して、所望の化合物を固体として得た(140g、98%)。単離された化合物を次のステップに直接使用した。
1H NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 8.31 (s, 1H), 8.17 (s, 1H), 2.43 (s, 3H).
【0456】
ステップ2:5−ブロモ−2−メチル−3−ニトロ安息香酸メチルの合成
【0458】
室温の5−ブロモ−2−メチル−3−ニトロ安息香酸(285g、1105ミリモル)のDMF(2.8L)中撹拌溶液に、炭酸ナトリウム(468g、4415ミリモル)を添加し、続いてヨウ化メチル(626.6g、4415ミリモル)を添加した。結果として得られた反応混合物を60℃で8時間加熱した。完了(TLCによってモニタリング)後、反応混合物を濾過(炭酸ナトリウムを除去)し、酢酸エチル(1L×3)で洗浄した。合したろ液を水で洗浄し(3L×5)、水相を酢酸エチルで逆抽出した(1L×3)。合した有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、表題化合物を固体として得た(290g、97%収率)。単離された化合物を次のステップに直接使用した。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 8.17 (s, 1H), 7.91 (s, 1H), 3.96
(s, 3H), 2.59 (s, 3H).
【0459】
ステップ3:3−アミノ−5−ブロモ−2−メチル安息香酸メチルの合成
【0461】
5−ブロモ−2−メチル−3−ニトロ安息香酸メチル(290g、1058ミリモル)のエタノール(1.5L)中撹拌溶液に、塩化アンモニウム水溶液(283g、5290ミリモル、1.5Lの水中に溶解)を添加した。結果として得られた混合物を80℃で撹拌し、これに鉄粉(472g、8451ミリモル)を少しずつ添加した。結果として得られた反応混合物を80℃で12時間加熱した。TLCによって確認して反応が完了したら、反応混合物をセライト(登録商標)上で熱時濾過し、セライト床をメタノール(5L)で洗浄し、続いて30%のDCM中MeOH(5L)で洗浄した。合したろ液を真空中で濃縮し、得られた残留物を重炭酸ナトリウム水溶液(2L)で希釈し、酢酸エチル(5L×3)で抽出した。合した有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、表題化合物を固体として得た(220g、85%)。化合物を次のステップに直接使用した。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 7.37 (s, 1H), 6.92 (s, 1H), 3.94 (s, 3H), 3.80 (bs, 2H), 2.31 (s, 3H).
【0462】
ステップ4:5−ブロモ−2−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)アミノ)安息香酸メチルの合成
【0464】
3−アミノ−5−ブロモ−2−メチル安息香酸メチル(15g、61.5ミリモル)およびジヒドロ−2H−ピラン−4(3)−オン(9.2g、92ミリモル)のジクロロエタン(300mL)中撹拌溶液に、酢酸(22g、369ミリモル)を添加し、反応混合物を室温で15分間撹拌し、次いで反応混合物を0℃まで冷却し、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(39g、184ミリモル)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。TLCによって確認して反応が完了したら、pH7〜8が得られるまで、重炭酸ナトリウム水溶液を反応混合物に添加した。有機相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出した。合した有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗化合物をカラムクロマトグラフィー(100〜200メッシュシリカゲル)によって精製し、酢酸エチル:ヘキサンで溶出させて、所望の化合物を固体として得た(14g、69%)。
1H NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 7.01 (s, 1H), 6.98 (s, 1H), 5.00 (d, 1H, J=7.6 Hz), 3.84-3.87 (m, 2H), 3.79 (s, 3H), 3.54-3.56 (m, 1H), 3.43 (t, 2H, J=12 Hz), 2.14 (s, 3H), 1.81-1.84 (m, 2H), 1.47-1.55 (m, 2H).
【0465】
ステップ5:5−ブロモ−3−(エチル(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)アミノ)−2−メチル安息香酸メチルの合成
【0467】
5−ブロモ−2−メチル−3−((テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)アミノ)安息香酸メチル(14g、42.7ミリモル)のジクロロエタン(150mL)中撹拌溶液に、アセトアルデヒド(3.75g、85.2ミリモル)および酢酸(15.3g、256ミリモル)を添加した。結果として得られた反応混合物を室温で15分間撹拌した。混合物を0℃まで冷却し、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(27g、128ミリモル)を添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。TLCによって確認して反応が完了したら、pH7〜8が得られるまで重炭酸ナトリウム水溶液を反応混合物に添加し、有機相を分離し、水相を酢酸エチルで抽出した。合した有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗化合物をカラムクロマトグラフィー(100〜200メッシュシリカゲル)により精製し、酢酸エチル:ヘキサンで溶出させて、所望の化合物を粘稠性液体として得た(14g、93%)。
1H NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 7.62 (s, 1H), 7.52 (s, 1H), 3.80 (bs, 5H), 3.31 (t, 2H), 2.97-3.05 (m, 2H), 2.87-2.96 (m, 1H), 2.38 (s, 3H), 1.52-1.61 (m, 2H), 1.37-1.50 (m, 2H), 0.87 (t, 3H, J=6.8 Hz).
【0468】
ステップ6:5−ブロモ−N−((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)−3−(エチル(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)アミノ)−2−メチルベンズアミドの合成
【0470】
5−ブロモ−3−(エチル(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)アミノ)−2−メチルベンゾエート(14g、39.4ミリモル)のエタノール(100mL)中撹拌溶液に、NaOH水溶液(2.36g、25mLの水中59.2ミリモル)を添加し、結果として得られた混合物を60℃で1時間撹拌した。TLCによって確認して反応が完了したら、溶媒を減圧下で除去し、pH7が得られるまで、得られた残留物を1N HClで酸性化し、次いでpH5〜6が得られるまでクエン酸水溶液を添加した。水層を10%DCM中MeOHで抽出し(200mL×3)、合した有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、各酸を得た(14g、100%)。
【0471】
上記酸(14g、40.9ミリモル)を次いでDMSO(70mL)中に溶解させ、3−(アミノメチル)−4,6−ジメチルピリジン−2(1H)−オン(12.4g、81.9ミリモル)をそれに添加した。反応混合物を室温で15分間撹拌し、次いでPYBOP(31.9g、61.4ミリモル)を添加し、撹拌を室温で一晩続けた。TLCによって確認して反応が完了したら、反応混合物を氷冷水(700mL)中に注ぎ、30分間撹拌し、析出した固体を濾過によって集め、水(500mL)で洗浄し、風乾した。得られた固体をアセトニトリル(75mL×2)とともに撹拌し、ろ過し、風乾した。得られた固体を再度5%DCM中MeOH(100mL)とともに撹拌し、ろ過し、真空下で完全に乾燥して、表題化合物を固体として得た(14g、74%)。
1H NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 11.47 (s, 1H), 8.23 (t, 1H), 7.30 (s, 1H), 7.08 (s, 1H), 5.85 (s, 1H), 4.23 (d, 2H, J=4.4 Hz), 3.81 (d, 2H, J=10.4 Hz), 3.20-3.26 (m, 2H), 3.00-3.07 (m, 1H), 2.91-2.96 (m, 2H), 2.18 (s, 3H), 2.14 (s, 3H), 2.10 (s, 3H), 1.58-1.60 (m, 2H), 1.45-1.50 (m, 2H), 0.78 (t, 3H, J=6.8 Hz).
【0472】
ステップ7:N−((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)−5−(エチル(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)アミノ)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミドの合成
【0474】
5−ブロモ−N−((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)−3−(エチル(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)アミノ)−2−メチルベンズアミド(14g、29.5ミリモル)のジオキサン/水混合物(70mL/14mL)中撹拌溶液に、4−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)モルホリン(13.4g、44.2ミリモル)を添加し、続いてNa
2CO
3(11.2g、106.1ミリモル)を添加した。溶液をアルゴンで15分間パージし、次いでPd(PPh
3)
4(3.40g、2.94ミリモル)を添加し、そして溶液を再度アルゴンでさらに10分間パージした。反応混合物を100℃で4時間加熱した。完了(TLCによってモニタリング)後、反応混合物を水で希釈し10%MeOH/DCMで抽出した。合した有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮した。粗化合物をカラムクロマトグラフィー(100〜200メッシュシリカゲル)により精製し、メタノール:DCMで溶出させて、固体としての表記化合物を得た(12g、71%)。分析データ:LCMS:573.35(M+1)
+;HPLC:99.5%(@254nm)(R
t;3.999;方法:カラム:YMC ODS−A 150mm×4.6mm×5μ;移動相:A;0.05%水中TFA/B;0.05%アセトニトリル中TFA;注入体積:10μL、カラム温度:30℃;流量:1.4mL/分;勾配:8分で5%Bから95%B、1.5分間保持、9.51〜12分5%B);
1H NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 11.46 (s, 1H), 8.19 (t, 1H), 7.57 (d, 2H, J=7.2 Hz), 7.36-7.39 (m, 3H), 7.21 (s, 1H), 5.85 (s, 1H), 4.28 (d, 2H, J=2.8 Hz), 3.82 (d, 2H, J=9.6 Hz), 3.57 (bs, 4H), 3.48 (s, 2H), 3.24 (t, 2H, J=10.8Hz), 3.07-3.09 (m, 2H), 3.01 (m, 1H), 2.36 (m, 4H), 2.24 (s, 3H), 2.20 (s, 3H), 2.10 (s, 3H), 1.64-1.67 (m, 2H), 1.51-1.53 (m, 2H), 0.83 (t, 3H, J=6.4 Hz).
【0475】
ステップ8:N−((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)−5−(エチル(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)アミノ)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド三塩酸塩の合成
【0477】
N−((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)−5−(エチル(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イル)アミノ)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド(12g、21.0ミリモル)をメタノール性HCl(200mL)中に溶解させ、室温で3時間撹拌した。3時間撹拌後、反応混合物を減圧下で濃縮した。得られた固体をエーテル(100mL×2)とともに撹拌して、所望の塩を固体として得た(11g、77%)。3HCl塩の分析データ:LCMS:573.40(M+1)
+;HPLC:99.1%(@254nm)(R
t;3.961;方法:カラム:YMC ODS−A 150mm×4.6mm×5μ;移動相:A;0.05%水中TFA/B;0.05%アセトニトリル中TFA;注入体積:10μL、カラム温度:30℃;流量:1.4mL/分;勾配:8分で5%Bから95%B、1.5分間保持、9.51〜12分5%B);
1H NMR (D
2O 400 MHz) δ 7.92 (bs, 1H,) 7.80 (s, 1H), 7.77 (d, 2H, J=8 Hz), 7.63 (s, 1H), 7.61 (s, 1H), 6.30 (s, 1H), 4.48 (s, 2H), 4.42 (s, 2H), 4.09-4.11 (m, 4H), 3.95-3.97 (m, 2H), 3.77 (t, 3H, J=10.4 Hz), 3.44-3.47 (m, 3H), 3.24-3.32 (m, 3H), 2.42 (s, 3H), 2.35 (s, 3H), 2.26 (s, 3H), 2.01 (m, 2H), 1.76 (m, 2H), 1.04 (t, 3H, J=6.8 Hz).
【0478】
実施例6:N−((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)−5−(((1r,4r)−4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシル)(エチル)アミノ)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド
【0480】
ステップ1:5−ブロモ−2−メチル−3−ニトロ安息香酸
【0481】
2−メチル−3−ニトロ安息香酸(100g、552.48ミリモル)の濃H
2SO
4(400mL)中撹拌溶液に、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチル−2,4−イミダゾリジンジオン(87.98g、307.70ミリモル)を室温で少しずつ添加した。反応混合物を次いで室温で5時間撹拌した。反応混合物を氷冷水中に注ぎ、析出した固体を濾過によって集め、水で洗浄し、真空下で乾燥させて、所望の5−ブロモ−2−メチル−3−ニトロ安息香酸を灰白色固体として得た(140g、97.90%収率)。
1H NMR (DMSO-d
6, 400 MHz) δ 8.31 (s, 1H), 8.17 (s, 1H), 2.43 (s, 3H).
【0482】
ステップ2:5−ブロモ−2−メチル−3−ニトロ安息香酸メチル
【0483】
5−ブロモ−2−メチル−3−ニトロ安息香酸(285g、1104.65ミリモル)のDMF(2.8L)中撹拌溶液に、炭酸ナトリウム(468g、4415.09ミリモル)を添加し、続いてヨウ化メチル(626.63g、4415ミリモル)を室温で添加した。結果として得られた反応混合物を60℃で8時間撹拌した。反応混合物を次いで濾過して懸濁された固体を除去し、これを酢酸エチルでよく洗浄した(3×1L)。合したろ液を水でよく洗浄し(5×3L)、水相を酢酸エチルで逆抽出した(3×1L)。合した有機抽出物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、5−ブロモ−2−メチル−3−ニトロ安息香酸メチルを灰白色固体として得た(290g、97%収率)。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 8.17 (s, 1H), 7.91 (s, 1H), 3.96 (s, 3H), 2.59 (s, 3H).
【0484】
ステップ3:3−アミノ−5−ブロモ−2−メチル安息香酸メチル
【0485】
5−ブロモ−2−メチル−3−ニトロ安息香酸メチル(290g、1058.39ミリモル)のエタノール(1.5L)中撹拌溶液に、塩化アンモニウム水溶液(283g、5290ミリモルを1.5Lの水中に溶解させた)を添加した。結果として得られる混合物を攪拌し80℃で加熱し、続いて鉄粉(472g、8451ミリモル)を数回に分けて80℃にて添加した。結果として得られた反応混合物を80℃で12時間加熱した。反応混合物を次いでセライト(登録商標)を通して熱時濾過し、セライト(登録商標)床をメタノール(5L)、次いで30%DCM中MeOH(5L)でよく洗浄した。合したろ液を真空中で濃縮し、得られた残留物を重炭酸塩水溶液(2L)で希釈し、酢酸エチルで抽出した(3×5L)。合した有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、3−アミノ−5−ブロモ−2−メチル安息香酸メチルを褐色固体として得た(220g、89.41%収率)。
【0486】
生成物の一部(5g)を熱エタノール(20mL)中に溶解させ、不溶性残留物を濾過して除去し、母液を濃縮して3−アミノ−5−ブロモ−2−メチル安息香酸メチル(3.5g、70%収率)をHPLC純度93.81%で明褐色固体として得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 7.37 (s, 1H), 6.92 (s, 1H), 3.94 (s, 3H), 3.80 (bs, 2H), 2.31 (s, 3H).
【0487】
ステップ4:5−ブロモ−3−(((1r,4r)−4−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)シクロヘキシル)アミノ)−2−メチル安息香酸メチル
【0488】
3−アミノ−5−ブロモ−2−メチル安息香酸メチル(5g、20.5ミリモル)および(4−オキソシクロヘキシル)カルバミン酸tert−ブチル(5.69g、26.7ミリモル)のジクロロエタン(50mL)中撹拌溶液に、酢酸(7.4g、123ミリモル)を添加し、反応を室温で10分間撹拌した。ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(13.1g、61.7ミリモル)を次いで0℃で添加し、反応を室温で16時間撹拌した。反応を重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチし、有機相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出した。合した有機層を無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(100〜200メッシュサイズ)によって精製し、10%ヘキサン中酢酸エチルで溶出させて、3.5gのより極性の(トランス)異性体、5−ブロモ−3−(((1r,4r)−4−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)シクロヘキシル)アミノ)−2−メチル安息香酸メチルを固体として得た(38.46%)。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 7.21 (s, 1H), 6.80 (s, 1H), 4.41 (bs, 1H), 3.85 (s, 3H), 3.60 (m, 1H), 3.45 (m, 1H), 3.20 (m, 1H), 2.22 (s, 3H), 2.15 (bs, 2H), 2.05 (bs, 2H), 1.45 (s, 9H), 1.30 (m, 4H).
【0489】
ステップ5:5−ブロモ−3−(((1r,4r)−4−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)シクロヘキシル)−(エチル)アミノ)−2−メチル安息香酸メチル
【0490】
5−ブロモ−3−(((1r,4r)−4−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)−シクロヘキシル)(エチル)アミノ)−2−メチル安息香酸メチル(55g、0.124モル)およびアセトアルデヒド(11g、0.25モル)のジクロロエタン(550mL)中撹拌溶液に、酢酸(44.64g、0.744モル)を添加し、反応混合物を室温で10分間撹拌した。ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(79g、0.372モル)を次いで0℃で添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応を重炭酸ナトリウム水溶液でクエンチし、有機相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出した。合した抽出物を無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、真空中で濃縮した。粗化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(100〜200メッシュサイズ)により精製し、10%のヘキサン中酢酸エチルで溶出して、44gの5−ブロモ−3−(((1r,4r)−4−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)シクロヘキシル)−(エチル)アミノ)−2−メチル安息香酸メチル(75.2%)を固体として得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ 7.55 (s, 1H), 7.45 (s, 1H), 6.65 (d, 1H), 3.80 (s, 3H), 3.15 (bs, 1H), 3.05 (q, 2H), 2.60 (m, 1H), 2.30 (s, 3H), 1.75 (m, 4H), 1.40 (m, 2H), 1.35 (s, 9H), 1.10 (m, 2H), 0.80 (t, 3H).
【0491】
ステップ6:((1r,4r)−4−((5−ブロモ−3−(((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)カルバモイル)−2−メチルフェニル)(エチル)アミノ)シクロヘキシル)カルバミン酸tert−ブチル
【0492】
NaOH水溶液(10mLのH
2O中3.5g、0.08モル)を5−ブロモ−3−(((1r,4r)−4−((tert−ブトキシカルボニル)アミノ)シクロヘキシル)−(エチル)アミノ)−2−メチル安息香酸メチル(25g、0.053モル)のEtOH(100mL)中溶液に添加し、そして60℃で1時間撹拌した。エタノールを次いで減圧下で除去し、希HClでpH8に、そしてクエン酸でpH6に酸性化した。混合物を10%DCM中メタノールで抽出した(3×200mL)。合した有機層を乾燥し、濃縮して、各酸を得た(24.2g、99.0%)。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ 13.13 (s, 1H), 7.54 (s, 1H), 7.43 (s, 1H), 6.68 (d, 1H), 3.14 (bs, 1H), 3.03 (q, 2H), 2.56 (m, 1H), 2.33 (s, 3H), 1.80-1.65 (m, 4H), 1.40 (m, 2H), 1.35 (s, 9H), 1.10 (m, 2H), 0.77 (t, 3H).
【0493】
酸(24g、0.053モル)をDMSO(100mL)中に溶解させ、そして3−(アミノメチル)−4,6−ジメチルピリジン−2(1H)−オン(16g、0.106モル)およびトリエチルアミン(5.3g、0.053モル)を添加した。反応混合物を室温で15分間撹拌した後、PyBop(41g、0.079ミリモル)を添加し、撹拌を一晩室温で続けた。反応混合物を氷水(1L)中に注いだ。結果として得られた沈殿を濾過によって集め、水(2×1L)でよく洗浄し、乾燥した。得られた生成物をアセトニトリル(3×200mL)およびDCM(100mL)で洗浄することによってさらに精製して、((1r,4r)−4−((5−ブロモ−3−(((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)カルバモイル)−2−メチルフェニル)(エチル)アミノ)シクロヘキシル)−カルバミン酸tert−ブチルを得た(24g、77%)。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ 11.47 (s, 1H), 8.24 (t, 1H), 7.25 (s, 1H), 7.04 (s, 1H), 6.67 (d, 1H), 5.85 (s, 1H), 4.24 (d, 2H), 3.13 (bs, 1H), 3.01 (q, 2H), 2.53 (m, 1H), 2.18 (s, 3H), 2.10 (s, 6H), 1.80-1.65 (m, 4H), 1.40 (m, 2H), 1.35 (s, 9H), 1.10 (m, 2H), 0.77 (t, 3H).
【0494】
ステップ7:((1r,4r)−4−((5−(((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)カルバモイル)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−イル)(エチル)アミノ)シクロヘキシル)カルバミン酸tert−ブチル
【0495】
((1r,4r)−4−((5−ブロモ−3−(((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)カルバモイル)−2−メチルフェニル)(エチル)アミノ)シクロヘキシル)−カルバミン酸tert−ブチル(24g、0.041モル)および4−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ベンジル)モルホリン(18g、0.061モル)のジオキサン/水混合物(160mL+40mL)中撹拌溶液に、Na
2CO
3(15g、0.15モル)を添加し、溶液をアルゴンで15分間パージした。Pd(PPh
3)
4(4.7g、0.041モル)を次いで添加し、反応混合物を再度アルゴンで10分間パージした。反応混合物を100℃で4時間加熱した。反応混合物を次いで10%MeOH/DCM(500mL)で希釈し、濾過した。ろ液を濃縮し、水(500mL)で希釈し、そして10%のDCM中MeOH(3×500mL)で抽出した。合した有機層をNa
2SO
4上で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(100〜200メッシュ)により精製し、7%のDCM中MeOHで溶出させて、((1r,4r)−4−((5−(((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)カルバモイル)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−イル)(エチル)アミノ)シクロヘキシル)カルバミン酸tert−ブチル(20g、71.43%)を得た。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ 11.46 (s, 1H), 8.20 (t, 1H), 7.56 (d, 2H), 7.36 (m, 3H), 7.17 (s, 1H), 6.66 (d, 1H), 5.85 (s, 1H), 4.28 (d, 2H), 3.57 (bs, 4H), 3.48 (s, 2H), 3.20-3.05 (m, 3H), 2.62 (m, 1H), 2.36 (bs, 4H), 2.20 (s, 6H), 2.10 (s, 3H), 1.75 (m, 4H), 1.42 (m, 2H), 1.35 (s, 9H), 1.10 (m, 2H), 0.82 (t, 3H).
【0496】
ステップ8:5−(((1r,4r)−4−アミノシクロヘキシル)(エチル)アミノ)−N−((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド
【0497】
0℃で((1r,4r)−4−((5−(((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)カルバモイル)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−イル)(エチル)アミノ)シクロヘキシル)カルバミン酸tert−ブチル(20g、0.03モル)のDCM(200mL)中撹拌溶液に、TFA(75mL)を添加し、反応を室温で2時間撹拌した。反応混合物を次いで濃縮乾固し、残留物を飽和重炭酸塩水溶液(300mL)でpH8に塩基性化した。混合物を20%DCM中メタノール(4×200μm)で抽出した。合した抽出物をNa
2SO
4上で乾燥し、溶媒を減圧下で除去して、5−(((1r,4r)−4−アミノシクロヘキシル)(エチル)アミノ)−N−((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド(15.5g、91%)を得、これをそのまま次の反応で使用した。
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ 8.18 (bs, 1H), 7.57 (d, 2H), 7.38 (m, 3H), 7.20 (s, 1H), 5.85 (s, 1H), 4.29 (d, 2H), 3.57 (bs, 4H), 3.48 (s, 2H), 3.31 (bs, 2H), 3.10 (m, 2H), 2.91 (m, 1H), 2.67 (m, 1H), 2.36 (bs, 4H), 2.21 (s, 3H), 2.20 (s, 3H), 2.10 (s, 3H), 1.90 (m, 2H), 1.83 (m, 2H), 1.45 (m, 2H), 1.23 (m, 2H), 0.83 (t, 3H).
【0498】
ステップ9:N−((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)−5−(((1r,4r)−4−(ジメチルアミノ)シクロヘキシル)(エチル)アミノ)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド
【0499】
5−(((1r,4r)−4−アミノシクロヘキシル)(エチル)アミノ)−N−((4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−イル)メチル)−4−メチル−4’−(モルホリノメチル)−[1,1’−ビフェニル]−3−カルボキサミド(14g、0.023モル)のジクロロメタン(150mL)中撹拌溶液に35%ホルムアルデヒド水溶液(2.4g、0.080モル)を0℃で添加した。20分間撹拌した後、Na(OAc)
3BH(12.2g、0.057モル)を添加し、撹拌を2時間0℃で続けた。水(100mL)を次いで反応混合物に添加し、そして混合物を20%DCM中メタノール(3×200mL)で抽出した。合した抽出物をNa
2SO
4上で乾燥し、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を塩基性アルミナカラムクロマトグラフィーにより精製し、6〜7%DCM中MeOHで溶出させて、表題化合物を得た(10g、63.6%)。LCMS:614.65(M+1)
+;HPLC:98.88%(@210〜370nm)(R
t;3.724;方法:カラム:YMC ODS−A 150mm×4.6mm×5μ;移動相:A;0.05%水中TFA/B;0.05%アセトニトリル中TFA;注入体積:10μL、カラム温度:30℃;流量:1.4mL/分;勾配:8分で5%Bから95%B、1.5分間保持、9.51〜12分5%B);
1H NMR (DMSO-d6, 400 MHz) δ 11.45 (s, 1H), 8.17 (t, 1H), 7.56 (d, 2H, J=8 Hz), 7.36 (m, 3H), 7.17 (s, 1H), 5.85 (s, 1H), 4.29 (d, 2H, J=4.4 Hz), 3.57 (bs, 4H), 3.48 (s, 2H), 3.09 (q, 2H), 2.66 (m, 1H), 2.36 (bs, 4H), 2.21 (s, 3H), 2.20 (s, 3H), 2.11 (s, 9H), 1.79 (m, 4H), 1.36 (m, 2H), 1.11 (m, 2H), 0.82 (t, 3H, J=6.4&6.8 Hz).
【0500】
実施例7:バイオアッセイプロトコルおよび一般的方法
野生型および突然変異体PRC2酵素アッセイのプロトコル
一般的材料。S−アデノシルメチオニン(SAM)、S−アデノシルホモシステイン(SAH)、ビシン、KCl、Tween20、ジメチルスルホキシド(DMSO)および牛皮ゼラチン(BSG)をSigma−Aldrichから可能な最高レベルの純度で購入した。ジチオトレイトール(DTT)をEMDから購入した。
3H−SAMを80Ci/mmolの比活性でAmerican Radiolabeled Chemicalsから購入した。384ウェルストレプトアビジンFlashプレートをPerkinElmerから購入した。
【0501】
基質。非修飾リジン27(H3K27me0)またはジメチル化リジン27(H3K27me2)のいずれかを含むヒトヒストンH3残基21〜44の代表的なペプチドを、21
st Century BiochemicalsによりC末端G(K−ビオチン)リンカー−親和性タグモチーフおよびC末端アミドキャップを用いて合成した。ペプチドを高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)で、95%を超える純度まで精製し、液体クロマトグラフィー質量分析(LC−MS)により確認した。配列を以下に記載する。
H3K27me0:ATKAARKSAPATGGVKKPHRYRPGGK(ビオチン)−アミド(配列番号13)
H3K27me2:ATKAARK(me2)SAPATGGVKKPHRYRPGGK(ビオチン)−アミド(配列番号14)
【0502】
ニワトリ赤血球オリゴヌクレオソームをニワトリ血液から確立された手順にしたがって精製した。
【0503】
組換えPRC2複合体。ヒトPRC2複合体を、バキュロウイルス発現系を用いてSpodoptera frugiperda(sf9)細胞において同時発現された4−成分酵素複合体として精製した。発現されたサブユニットは、野生型EZH2構築物、EED(NM_003797)、Suz12(NM_015355)およびRbAp48(NM_005610)から生成された野生型EZH2(NM_004456)またはEZH2 Y641F、N、H、SもしくはC突然変異体であった。EEDサブユニットは、全4−成分複合体をsf9細胞溶解物から精製するために使用したN末端FLAGタグを含んでいた。複合体の純度は、SDS−PAGEおよびAgilent Bioanalyzer分析によって測定して95%を満たすかまたは超過する。酵素ストック濃度の濃度(概して0.3〜1.0mg/mL)は、ウシ血清アルブミン(BSA)標準に対するBradfordアッセイを使用して測定した。
【0504】
ペプチド基質に対するPRC2酵素アッセイの一般的手順。アッセイはすべて、20mMビシン(pH=7.6)、0.5mM DTT、0.005%BSGおよび0.002% Tween20からなり、使用当日に調製された緩衝液中で実施した。100%DMSO(1μL)中化合物をポリプロピレン製384ウェルV底プレート(Greiner)中に、384チャンネルピペットヘッド(Thermo)を装備したPlatemate2X3を使用してスポットした。DMSO(1μL)を最大シグナル対照について、11、12、23、24列、A〜H行に添加し、公知製品であり、PRC2の阻害剤であるSAH(1μL)を最小シグナル対照について、11、12、23、24列、I〜P行に添加した。野生型PRC2酵素およびH3K27me0ペプチドまたはY641突然変異体酵素およびH3K27me2ペプチドのいずれかを含むカクテル(40μL)を、Multidrop Combi(Thermo)によって添加した。化合物をPRC2と30分間25℃でインキュベートし、次いで非放射性および
3H−SAMの混合物を含むカクテル(10μL)を添加して、反応を開始した(最終体積=51μL)。全ての場合において、最終濃度は次のとおりであった:野生型または突然変異体PRC2酵素は4nMであり、最小シグナル対照ウェル中のSAHは1mMであり、DMSO濃度は1%であった。残りの成分の最終濃度を以下の表7に示す。非放射性SAM(10μL)を600μMの最終濃度まで添加し、それにより
3H−SAMを、ペプチド基質中へのその取り込みがもはや検出可能でなくなるレベルまで希釈することによって、アッセイを停止した。384ウェルポリプロピレンプレート中の50μLの反応を次いで384ウェルFlashプレートに移し、ビオチニル化ペプチドをストレプトアビジン表面に少なくとも1時間結合させた後、Biotek ELx405プレートウォッシャー中0.1%Tween20で3回洗浄した。プレートを次いでPerkinElmer TopCountプレートリーダーで読み取って、1分あたりの崩壊(dpm)として測定されるかあるいは1分あたりのカウント(cpm)と称される、Flashプレート表面に結合した
3H標識されたペプチドの量を測定した。
【0506】
オリゴヌクレオソーム基質に関する野生型PRC2酵素アッセイの一般的手順。アッセイは、20mM ビシン(pH=7.6)、0.5mM DTT、0.005% BSG、100mM KClおよび0.002% Tween20からなり、使用当日に調製された緩衝液中で実施した。100%DMSO(1μL)中化合物をポリプロピレン製384ウェルV底プレート(Greiner)中に、384チャンネルピペットヘッド(Thermo)を装備したPlatemate2X3を使用してスポットした。DMSO(1μL)を最大シグナル対照について、11、12、23、24列、A〜H行に添加し、公知製品であり、PRC2の阻害剤であるSAH(1μL)を最小シグナル対照について、11、12、23、24列、I〜P行に添加した。野生型PRC2酵素およびニワトリ赤血球オリゴヌクレオソームを含むカクテル(40μL)をMultidrop Combi(Thermo)で添加した。化合物をPRC2と30分間25℃でインキュベートし、次いで非放射性および
3H−SAMの混合物を含むカクテル(10μL)を添加して、反応を開始した(最終体積=51μL)。最終濃度は次のとおりであった:野生型PRC2酵素は4nMであり、非放射性SAMは430nMであり、
3H−SAMは120nMであり、ニワトリ赤血球オリグノヌクレオソーム(olignonucleosome)は120nMであり、最小シグナル対照ウェル中のSAHは1mMであり、そしてDMSO濃度は1%であった。非放射性SAM(10μL)を600μMの最終濃度まで添加し、これによって
3H−SAMを、ニワトリ赤血球オリグノヌクレオソーム(olignonucleosome)基質中へのその取り込みがもはや検出可能でないレベルまで希釈することによって、アッセイを停止した。384ウェルポリプロピレンプレート中の50μLの反応を384ウェルFlashプレートに移し、ニワトリ赤血球ヌクレオソームをプレートの表面に固定し、これをBiotek ELx405プレートウォッシャー中0.1%Tween20で3回洗浄した。プレートを次いでPerkinElmer TopCountプレートリーダーで読み取って、1分あたりの崩壊(dpm)として測定されるか、または1分あたりのカウントと称される、Flashプレート表面に結合した
3H標識ニワトリ赤血球オリゴヌクレオソームの量を測定した。
【0509】
式中、dpm=1分あたりの崩壊、cmpd=アッセイウェル中のシグナル、minおよびmaxはそれぞれ最小および最大シグナル対照である。
【0512】
式中、topおよびbottomは通常は変動していてもよいが、3パラメータ適合ではそれぞれ100または0に固定され得る。ヒル係数は通常変動してもよいが、これもまた3パラメータ適合では1に適合され得る。Yは%阻害であり、Xは化合物濃度である。
【0513】
ペプチド基質(たとえば、EZH2野生型およびY641F)に関するPRC2酵素アッセイのIC
50値を以下の表8に提示する。
【0515】
WSU−DLCL2懸濁細胞をDSMZ(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures(独国ブラウンシュヴァイク))から購入した。RPMI/Glutamax培地、ペニシリン−ストレプトマイシン、熱不活性化ウシ胎仔血清、およびD−PBSはLife Technologies(米国ニューヨーク州グランドアイランド)から購入した。抽出緩衝液および中和緩衝液(5X)はActive Motif(米国カリフォルニア州カールスバッド)から購入した。ウサギ抗ヒストンH3抗体はAbcam(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)から購入した。ウサギ抗H3K27me3およびHRP結合型抗ウサギIgGは、Cell Signaling Technology(米国マサチューセッツ州ダンバーズ)から購入した。TMB「超感受性の」基質はBioFX Laboratories(米国メリーランド州オウイングズミルズ)から調達した。IgGを含まないウシ血清アルブミンはJackson ImmunoResearch(米国ペンシルベニア州ウェストグローブ)から購入した。Tweenを含むPBS(10XPBST)はKPL(米国メリーランド州ゲイサーズバーグ)から購入した。硫酸はRicca Chemical(米国テキサス州アーリントン)から購入した。Immulon ELISAプレートはThermo(米国ニューヨーク州ロチェスター)から購入した。V底細胞培養プレートは、Corning Inc.(米国ニューヨーク州コーニング)から購入した。V底ポリプロピレンプレートは、Greiner Bio−ONE(米国ノースカロライナ州モンロー)から購入した。
【0516】
WSU−DLCL2懸濁細胞を成長培地(10%v/v熱不活性化ウシ胎仔血清および100単位/mLのペニシリン−ストレプトマイシンを添加したRPMI1640)中で維持し、そして37℃にて5%CO
2下で培養した。アッセイ条件下で、細胞をアッセイ培地(20%熱不活性化ウシ胎仔血清および100単位/mLペニシリン−ストレプトマイシンを添加したRPMI1640)中、37℃にて5%CO
2下、プレートシェーカー上でインキュベートした。
【0517】
WSU−DLCL2細胞を、1ウェルあたり200μLの96ウェルV底細胞培養プレートに50,000細胞/mLの濃度でアッセイ培地中に蒔いた。96ウェルソースプレートからの化合物(1μL)をV底細胞プレートに直接添加した。プレートをタイタープレートシェーカーで37℃、5%CO2にて96時間インキュベートした。4日のインキュベーション後、プレートを241×gで5分間スピンさせ、細胞ペレットを乱すことなく細胞プレートの各ウェルから培地を穏やかに吸引した。ペレットを200μLのDPBS中に再懸濁させ、プレートを241×gで5分間再度スピンさせた。上清を吸引し、冷(4℃)抽出緩衝液(100μL)をウェルごとに添加した。プレートを4℃にてオービタルシェーカーで2時間インキュベートした。プレートを3427×g×10分間でスピンさせた。上清(80μL/ウェル)を96ウェルV底ポリプロピレンプレート中のそれぞれのウェルに移した。中和緩衝液5X(20μL/ウェル)を、上清を含むV底ポリプロピレンプレートに添加した。粗ヒストン調製物(CHP)を含むV底ポリプロピレンプレートをオービタルシェーカーで5分間インキュベートした。粗ビストン調製物を、100μLのCoating緩衝液(1XPBS+BSA0.05%w/v)を含む2連の96ウェルELISAプレート中の各ウェルに添加した(2μL/ウェル)。プレートを密封し、一晩4℃でインキュベートした。翌日、プレートを300μL/ウェルの1X PBSTで3回洗浄した。ウェルを2時間、300μL/ウェルのELISA希釈剤((PBS(1X)BSA(2%w/v)およびTween20(0.05%v/v))でブロックした。プレートを1X PBSTで3回洗浄した。ヒストンH3検出プレートについて、ELISA希釈剤中で1:10,000に希釈した抗ヒストン−H3抗体(Abcam、ab1791)を1ウェルあたり100μL添加した。H3K27トリメチル化検出プレートについて、ELISA希釈剤中で1:2000に希釈した抗H3K27me3を1ウェルあたり100μL添加した。プレートを室温で90分間インキュベートした。プレートを1ウェルあたり300μLの1XPBSTで3回洗浄した。ヒストンH3検出に関して、ELISA希釈剤中1:6000に希釈したHRP結合型抗ウサギIgG抗体を1ウェルあたり100μL添加した。H3K27me3検出に関して、ELISA希釈剤中で1:4000に希釈されたHRP結合型抗ウサギIgG抗体を1ウェルあたり100μL添加した。プレートを室温で90分間インキュベートした。プレートを1ウェルあたり1XPBST 300μLで4回洗浄した。1ウェルあたりTMB基質100μLを添加した。ヒストンH3プレートを5分間室温でインキュベートした。H3K27me3プレートを室温で10分間インキュベートした。硫酸1N(100μL/ウェル)で反応を停止させた。各プレートの吸光度を450nmで読み取った。
【0520】
各プレートは、DMSOのみの処理(最小阻害)の8つの対照ウェルならびに最大阻害(バックグラウンドウェル)の8つの対照ウェルを含んでいた。
【0521】
各対照タイプの比の値の平均を算出し、使用して、プレート中の各試験ウェルについての阻害パーセントを決定した。試験化合物を、25μMから始めて、合計10の試験濃度についてDMSO中で連続して3倍希釈した。化合物の濃度ごとに2連のウェルを使用して、パーセント阻害を決定し、IC
50曲線を作製した。アッセイのIC
50値を以下の表8に提示する。
【0524】
WSU−DLCL2懸濁細胞をDSMZ(German Collection of Microorganisms and Cell Cultures(独国ブラウンシュヴァイク))から購入した。RPMI/Glutamax培地、ペニシリン−ストレプトマイシン、熱不活化ウシ胎仔血清はLife Technologies(米国ニューヨーク州グランドアイランド)から購入した。V底ポリプロピレン 384ウェルプレートはGreiner Bio−One(米国ノースカロライナ州モンロー)から購入した。細胞培養384ウェル乳白色プレートは、Perkin Elmer(米国マサチューセッツ州ウォルサム)から購入した。Cell−Titer Glo(登録商標)は、Promega Corporation(米国ウィスコンシン州マディソン)から購入した。SpectraMax M5プレートリーダーは、Molecular Devices LLC(米国カリフォルニア州サニーベール)から購入した。
【0525】
WSU−DLCL2懸濁細胞を成長培地(10%v/v熱不活性化ウシ胎仔血清を添加したRPMI1640中で維持し、そして37℃にて5%CO
2下で培養した。アッセイ条件下で、細胞をアッセイ培地(20%熱不活性化ウシ胎仔血清および100単位/mLペニシリン−ストレプトマイシンを添加したRPMI1640)中、37℃にて5%CO
2下でインキュベートした。
【0526】
WSU−DLCL2細胞系の増殖に関する化合物の効果の評価のために、対数増殖期細胞を50μlのアッセイ培地の最終体積中1250細胞/mlの密度で384ウェル乳白色プレート中に蒔いた。10mMから開始して、DMSO中で3連の9点3倍連続希釈を実施することによって化合物ソースプレートを調製した(アッセイ中の化合物の最終最高濃度は20μMであり、DMSOは0.2%であった)。細胞プレート中の各ウェルに化合物ストックプレートからの100nLアリコートを添加した。100%阻害対照は、200nMの最終濃度のスタウロスポリンで処理された細胞から構成され、0%阻害対照はDMSO処理された細胞から構成されていた。化合物の添加後、アッセイプレートを6日間37℃、5%CO
2、相対湿度90%超でインキュベートした。細胞の生存度を細胞培養物中に存在するATPの定量により、35μlのCellTiter−Glo(登録商標)試薬を細胞プレートに添加することによって測定した。SpectraMax M5で発光を読み取った。正規化用量応答曲線の4パラメータ適合を用いて細胞の生存度を50%阻害する濃度を決定した。
【0527】
参考文献の組み入れ
本明細書中で言及される特許文書および科学論文のそれぞれの全開示はあらゆる目的のために参照により本明細書中に組み込まれる。
【0528】
本明細書中で言及されるすべての刊行物および特許文書は、そのような刊行物または文書のそれぞれが、参照により本明細書中に組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのように、参照により本明細書中に組み込まれる。 刊行物および特許文書の言及は、いずれも関連のある先行技術であることを認めることを意図せず、またその内容または日付に関する承認を構成するものでもない。明細書によって本発明を説明してきたが、本発明は様々な実施形態で実施することができ、前記説明および前記実施例は例示のためであり、以下の特許請求の範囲を限定するものではないことは当業者には理解されるであろう。
【0529】
等価物
本発明は、その主旨または本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化することができる。前記実施形態は、したがって、本明細書中で記載する本発明に関して限定的であるよりもむしろあらゆる点で例示的であると見なされるべきである。発明の範囲は、したがって前述の説明によってではなく、むしろ添付の特許請求の範囲によって示され、請求項の同等の意味および範囲内に含まれるすべての変更も含まれることが意図される。