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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-12047(P2021-12047A)
(43)【公開日】2021年2月4日
(54)【発明の名称】降灰量計
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/02 20060101AFI20210108BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20210108BHJP
【FI】
   G01N1/02 J
   G01W1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-124941(P2019-124941)
(22)【出願日】2019年7月4日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成30年10月11日 OYOフェア2018において発表 平成31年2月20日 The General Assembly 2019 of the European Geosciences Union(EGU)のアブストラクト(https://meetingorganizer.copernicus.org/EGU2019/EGU2019−2651.pdf)において発表 平成31年4月11日 The General Assembly 2019 of the European Geosciences Union(EGU)にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000121844
【氏名又は名称】応用地質株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】西條 雅博
(72)【発明者】
【氏名】小澤 健志
(72)【発明者】
【氏名】金子 涼麿
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 秀治
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA04
2G052AA19
2G052AC02
2G052AD15
2G052AD55
2G052BA04
2G052BA17
2G052GA08
2G052HA19
2G052JA03
(57)【要約】
【課題】灰の密度を推定する必要がなく、装置全体として軽量であり、さらには設置が容易である降灰量計を提供する。
【解決手段】降灰桝1は、降灰桝1の上部に設けられた開口11と、開口11を通って落下した灰を堆積させる収容部12とを備える。降灰桝1には、収容部12に堆積した灰を、収容部12の側方から視認可能とする透光部13が設けられている。撮像部2は、透光部13を介して灰を撮影することにより灰の画像を取得することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
降灰桝と撮像部とを備えており、
前記降灰桝は、前記降灰桝の上部に設けられた開口と、前記開口を通って落下した灰を堆積させる収容部とを備えており、
前記降灰桝には、前記収容部に堆積した前記灰を、前記収容部の側方から視認可能とする透光部が設けられており、
前記撮像部は、前記透光部を介して前記灰を撮影することにより前記灰の画像を取得可能とされている
降灰量計。
【請求項2】
前記降灰桝の底部近傍は、前記降灰桝の上部近傍よりも横断面積が減少した縮小部とされており、
前記透光部は、少なくとも前記縮小部の側方に設けられている
請求項1に記載の降灰量計。
【請求項3】
透光部には、前記灰の、単位面積当たりでの体積量又は堆積厚に対応する目盛りが表示されており、
前記目盛りは、前記灰と共に前記撮像部によって撮影される構成となっている
請求項1又は2に記載の降灰量計。
【請求項4】
前記撮像部は、カメラと通信部とを備えており、
前記カメラは、前記灰の画像を取得する構成とされており、
前記通信部は、携帯電話回線又はその他の通信路を介して、前記灰の画像を遠隔地に送信する構成となっている
請求項1〜3のいずれか1項に記載の降灰量計。
【請求項5】
前記降灰桝の底部又は側部には、前記降灰桝に浸入した水を排水するための排水口が形成されている
請求項1〜4のいずれか1項に記載の降灰量計。
【請求項6】
前記排水口には、前記排水口からの前記灰の流出を抑止するためのフィルタが設置されている
請求項5に記載の降灰量計。
【請求項7】
さらに本体を備えており、
前記本体は、前記降灰桝と前記撮像部とを支持することにより、前記降灰桝と前記撮像部との間の相対的位置関係を保持する構成となっている
請求項1〜6のいずれか1項に記載の降灰量計。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の降灰量計を用いた降灰量測定方法であって、
前記降灰量計を、降灰が予想される野外に設置するステップと、
前記撮像部により、前記降灰桝の前記透光部を撮影することにより、前記灰の画像を取得するステップと、
前記灰の画像を用いて、降灰量を推定するステップと
を有する降灰量測定方法。
【請求項9】
前記灰は、火山灰、粉塵、黄砂のいずれか又はそれらの混合物を含んでいる
請求項8に記載の降灰量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、降灰量を計測するための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火山噴火の際に発生する火山灰が傾斜地に所定厚(例えば1cm)以上堆積すると、降雨による土石流の危険性が増す。そのため、灰の堆積厚を効率的に精度よく計測する必要がある。
【0003】
従来の降灰量計測手法としては、作業者が現地において灰の堆積厚さを直接計測する方法や、計量容器に堆積した灰の重さから降灰量を推定する手法がある。しかし、いずれにおいても、作業者が現地に出向く必要があり、広範囲での計測が難しいばかりか、降灰が継続している状況では危険でもある。
【0004】
下記特許文献1には、上部が開口した筒の内部に予め水を溜めておき、筒内に落下した灰(降灰)と水との合計の重量をロードセルで測定し、得られた合計重量を用いて降灰量を推定する技術が記載されている。この技術では、降灰と水の密度差に基づいて、合計重量から降灰量を自動的に推定している。
【0005】
しかしながら、降灰の密度は、種々の環境により、あるいは灰の種類により変動しうる。したがって、実際の降灰の密度をリアルタイムで正確に把握することは難しい。堆積した灰を採取して室内土質試験をすれば正確な密度を把握できるが、これでは迅速な降灰量測定は困難となってしまう。
【0006】
さらに、下記特許文献1の技術では、灰を収集するための筒内に水を蓄えて使用するため、装置全体の重量が大きい。すると、コンクリートを用いた基礎工事が必要になるなど、設置作業が大変であるという問題もある。
【0007】
また、ロードセルで測定した合計重量が温度により変動するため、測定精度に改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−236741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記した状況に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、降灰の密度を推定する必要がなく、装置全体として軽量であり、さらには設置が容易である降灰量計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の項目に記載の発明として表現することができる。
【0011】
(項目1)
降灰桝と撮像部とを備えており、
前記降灰桝は、前記降灰桝の上部に設けられた開口と、前記開口を通って落下した灰を堆積させる収容部とを備えており、
前記降灰桝には、前記収容部に堆積した前記灰を、前記収容部の側方から視認可能とする透光部が設けられており、
前記撮像部は、前記透光部を介して前記灰を撮影することにより前記灰の画像を取得可能とされている
降灰量計。
【0012】
(項目2)
前記降灰桝の底部近傍は、前記降灰桝の上部近傍よりも横断面積が減少した縮小部とされており、
前記透光部は、少なくとも前記縮小部の側方に設けられている
項目1に記載の降灰量計。
【0013】
(項目3)
透光部には、前記灰の、単位面積当たりでの体積量又は堆積厚に対応する目盛りが表示されており、
前記目盛りは、前記灰と共に前記撮像部によって撮影される構成となっている
項目1又は2に記載の降灰量計。
【0014】
(項目4)
前記撮像部は、カメラと通信部とを備えており、
前記カメラは、前記灰の画像を取得する構成とされており、
前記通信部は、携帯電話回線又はその他の通信路を介して、前記灰の画像を遠隔地に送信する構成となっている
項目1〜3のいずれか1項に記載の降灰量計。
【0015】
(項目5)
前記降灰桝の底部又は側部には、前記降灰桝に浸入した水を排水するための排水口が形成されている
項目1〜4のいずれか1項に記載の降灰量計。
【0016】
(項目6)
前記排水口には、前記排水口からの前記灰の流出を抑止するためのフィルタが設置されている
項目5に記載の降灰量計。
【0017】
(項目7)
さらに本体を備えており、
前記本体は、前記降灰桝と前記撮像部とを支持することにより、前記降灰桝と前記撮像部との間の相対的位置関係を保持する構成となっている
項目1〜6のいずれか1項に記載の降灰量計。
【0018】
(項目8)
項目1〜7のいずれか1項に記載の降灰量計を用いた降灰量測定方法であって、
前記降灰量計を、降灰が予想される野外に設置するステップと、
前記撮像部により、前記降灰桝の前記透光部を撮影することにより、前記灰の画像を取得するステップと、
前記灰の画像を用いて、降灰量を推定するステップと
を有する降灰量測定方法。
【0019】
(項目9)
前記灰は、火山灰、粉塵、黄砂のいずれか又はそれらの混合物を含んでいる
項目8に記載の降灰量測定方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の降灰量計によれば、降灰の密度を推定することなく、灰の画像を用いて降灰量を測定することが可能になる。また、装置全体として構成が簡易であるため、軽量化を図ることができるだけでなく、設置作業を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る降灰量計の一部を破断した正面図である。
図2図1の斜視図である。
図3図1の平面図である。
図4図1の左側面図である。
図5図1の降灰桝にも散られる降灰桝の、フレーム部を除いた斜視図である。ただし、図1とは配置方向が逆になっている。
図6図5のA方向矢視図である。
図7図6のB方向矢視図である。
図8図6のC方向矢視図である。
図9】撮像部の概略的な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る降灰量計を、添付の図面を参照しながら説明する。本実施形態の降灰量計は、降灰桝1と撮像部2とを基本的な要素として備えている(図1図4参照)。さらに、この降灰量計は、本体3とバッテリ4とを追加的に備えている。
【0023】
(降灰桝)
降灰桝1は、降灰桝1の上部に設けられた開口11と、開口11を通って落下した灰(図示せず)を堆積させる収容部12とを備えている。
【0024】
開口11には、上方に突出したフレーム部111が取り付けられている。このフレーム部111は、細い棒状部材により構成されており、フレーム部111を通過して灰が自由に落下できるようになっている。ここで、フレーム部111を構成する棒状部材は、灰の落下の障害にならないほど細いことが好ましい。
【0025】
また、降灰桝1には、収容部12に堆積した灰を、収容部12の側方(図1において右方)から視認可能とする透光部13が設けられている。より具体的には、本実施形態の降灰桝1は、全体が透明材質(例えば透明な樹脂)で構成されており、撮像部2から灰の積層状態を視認可能とされているので、降灰桝1の側面全体が、本実施形態における透光部13に対応している。
【0026】
降灰桝1の底部近傍は、降灰桝の上部近傍よりも横断面積が減少した縮小部14とされている(図1及び図5参照)。また、降灰桝1における、縮小部14よりも上の部分は、横断面積が徐々に拡大する拡大部15とされている。ここで、前記した透光部13は、縮小部14及び拡大部15の側方に設けられたものとなっている(図5参照)。
【0027】
透光部13には、灰の、単位面積当たりでの体積量又は堆積厚に対応する目盛りが表示されている。具体的には、図6に示したように、降灰桝1内での堆積厚を単位面積(例えば1m)あたりでの堆積厚(つまり降灰厚)に換算した値を目盛りに表示している。すなわち、本実施形態における目盛り16に示される数字は、開口11の開口面積と縮小部14での横断面積の比を考慮して降灰厚に換算されたものであり、降灰桝1での堆積厚そのものではない。
【0028】
本実施形態では、降灰桝1の開口11の開口面積よりも、縮小部14での横断面積を狭くしているので(図5参照)、縮小部14での目盛りを細かく記載することが容易となる。特に、火山灰の場合は、単位面積当たりでの堆積厚(降灰厚)が1cm前後までの降灰量を精度よく観察する必要がある。本実施形態では、この範囲での降灰量を精度よく測定できるという利点がある。図示例では、縮小部14での目盛り16は、0.1cm刻みとなっている。
【0029】
また、本実施形態の拡大部15は、図5に示されるように、下方ほど横断面積が狭くなるように構成されているので、降灰厚が小さいほど、目盛りを細かくしておくことができ、したがって、精度のよい測定を行うことができるという利点もある。図示例では、拡大部15の下部は0.5cm刻み、上部は1.0cm刻みとなっている。
【0030】
目盛り16は、撮像部2に対向する位置に形成されており、灰と共に撮像部2によって撮影される構成となっている。
【0031】
降灰桝1の底部には、降灰桝1に浸入した水を底部から排水するための排水口17が形成されている(図7及び図8参照)。また、降灰桝1の側部には、この側部から排水を行うための排水口18が形成されている(図5図7参照)。各排水口17及び18には、各排水口17及び18からの灰の流出を抑止するためのフィルタ(図示せず)が設置されている。
【0032】
降灰桝1の拡大部15の側面(図7における左側面)は、角度αで傾斜している。この角度αとしては、例えば20°〜45°程度とすることが好ましい。
【0033】
(撮像部)
撮像部2は、透光部13を介して灰を撮影することにより灰の画像を取得可能とされている。具体的には、本実施形態の撮像部2は、カメラ21と通信部22とアンテナ23とを備えている。
【0034】
カメラ21は、灰の画像を取得する構成とされている。通信部22は、携帯電話回線又はその他の通信路を介して、灰の画像を遠隔地に送信する構成となっている。通信部22としては、例えば、携帯電話回線を利用するためのSIMカードを例示することができるが、これには限らない。アンテナ23は、通信部22が外部と通信するための電波の送受信を行うようになっている。
【0035】
カメラ21の撮影タイミングは、通信部22を介して外部から指示されたタイミングであってもよいし、あるいは、撮像部2自体に設定された自発的なタイミングであってもよい。
【0036】
(本体)
本体3は、降灰桝1と撮像部2とを支持することにより、降灰桝1と撮像部2との間の相対的位置関係を保持する構成となっている。より具体的には、本実施形態の本体3は、ケース31と、脚部32とから構成されている。
【0037】
ケース31は、その内部に降灰桝1の下側部分と撮像部2の全体とを収納しており、降灰桝1と撮像部2とが対向した状態でこれらを保持するようになっている(図1参照)。ケース31の底部には、ケース31の内部に浸入した水、あるいは、降灰桝1の排水口17及び18からケース31の内部に流出した水を排水するための水抜き穴33が形成されている(図3参照)。また、ケース31は、降灰桝1を、ケース31に対して着脱自在となるように保持している。
【0038】
脚部32は、ケース31を所定の高さに支持するものである。
【0039】
(バッテリ)
バッテリ4は、撮像部2に必要な電力を供給できるように接続されている。なお、添付の図面においては、バッテリ4と撮像部2とを接続する配線は省略されている。バッテリ4は、商用電源あるいはソーラーパネルを用いて充電できるものであることが好ましい。
【0040】
(本実施形態における降灰量測定方法)
以下、前記した本実施形態の降灰量計を用いた降灰量測定方法について説明する。
【0041】
(設置)
実際の測定の前に、降灰量計を、降灰が予想される野外に設置する。例えば、火山灰の測定の場合、噴火の直後のような適切なタイミングで、必要な位置に降灰量計を設置する。降灰量計を設置するタイミングとしては、噴火の前であることが安全上好ましいが、予測が難しい状況では、噴火の後に設置せざるを得ないこともある。また、降灰量計を設置する位置としては、等層厚線(同じ降灰量である位置を結ぶ線)を引くことができる位置、あるいは、土石流の発生が予想される位置であることが好ましい。
【0042】
本実施形態の降灰量計では、前記した特許文献1の降灰量計に比較して構成を簡易としているので、軽量化を図ることができる。したがって、設置作業における負担を軽減することができるという利点がある。特に、火山灰の場合、噴火後短時間のうちに広範囲で降灰を生じることが予想されるので、多数の降灰量計を必要な範囲に迅速に設置する必要がある。本実施形態の降灰量計によれば、このような設置作業を効率的に行うことができる。また、装置自体を軽量化することにより、時間のかかる基礎工事を省略できるので、時機に応じた迅速な設置が可能になるという利点もある。
【0043】
(降灰)
降灰量計の設置後に、設置位置において降灰があれば、灰が降灰桝1の開口11を通って収容部12に落下して堆積する。
【0044】
ここで、降雨があったときは、収容部12に水が浸入する。しかしながら、本実施形態では、排水口17及び18により、水を収容部12の外に排出することができる。
【0045】
降灰と降雨が同時に生じたとき、あるいは、降灰の後に降雨が生じたときは、底部の排水口17が灰により目詰まりすることもある。しかし、水と灰は比重が異なるので、通常は、水の存在にかかわらず、灰は底部に堆積する。つまり、排水口17が詰まってしまっても、灰の堆積厚さへの影響は少ない。
【0046】
降雨が多く、水が側部の排水口18に達したときは、排水口18から水が排出される。ここで、降灰中に、仮に水が開口11を乗り越えて外部にあふれ出す(つまりオーバーフローする)と、灰が沈殿する前に水と共に外部に流出してしまい、堆積厚さの測定精度が劣化するおそれがある。これに対して、本実施形態によれば、側部の排水口18から水を外部に排水できるので、このような問題の発生を抑制することができる。特に、灰は底部方向に沈殿するため、側部の排水口18が灰により目詰まりする可能性は低い。したがって、排水口18から確実に排水することができ、オーバーフローによる測定精度の劣化を防止できる。
【0047】
また、本実施形態では、降灰桝1の開口11にフレーム部111を設けたので、開口11への葉の落下や鳥の飛来を防ぐことができる。これにより、本実施形態では、灰の画像が葉や鳥糞により隠されるおそれを抑制することができる。
【0048】
(撮影)
設置された降灰量計においては、撮像部2のカメラ21により、降灰桝1の透光部13を撮影する。降灰があったときは、この撮影により、透光部13を介して灰の画像を取得することができる。ここで、本実施形態では、透光部13に付された目盛り16を灰と共に撮影することができる。つまり、灰の画像には、目盛り16も一緒に写り込んでいる。なお、降灰がなければ、当然のことながら、灰の無い画像が取得される。
【0049】
ついで、本実施形態では、カメラ21により撮影した灰の画像を、通信部22及びアンテナ23を介して遠隔地に送る。本実施形態の装置によれば、降灰がある地域に作業者が出向くことなく、安全な遠隔地に画像を送ることができる。
【0050】
(降灰厚の推定)
ついで、遠隔地において画像を受領した後、作業者は、灰の画像を用いて降灰量を推定する。具体的には、灰の画像に写り込んだ目盛り16を参照して、降灰厚(つまり降灰量)を推定することができる。ここで、推定される降灰量としては、厚さであっても体積であってもよい。要するに、目的に応じた降灰量を推定対象とすればよい。
【0051】
本実施形態では、降灰桝1に縮小部14を設けているので、小さい降灰厚さ(例えば1cm)において細かい目盛り16を表示することができる。このため、本実施形態によれば、例えば1cm程度の降灰厚さを精度良く推定することができる。土砂災害防止法によれば、火山噴火の場合、1cmの降灰が堆積すると、緊急調査が必要になる場合がある。本実施形態によれば、基準値である1cmの降灰厚さに達したかどうかを精度よく把握することができる。
【0052】
また、前記したように、仮に降灰桝1に雨が浸入しても、比重の差により灰は水と分離して下方に堆積する。したがって、得られた画像を用いて、降灰厚を精度よく取得できる。
【0053】
さらに、本実施形態では、降灰桝1と本体3とを着脱可能としたので、必要なときに(例えば設置してから相当の期間が経過し、かつ安全な時期に)降灰桝1を本体3から取り外し、清掃や交換を行うことができる。降灰桝1自体は非常に軽量とすることができるので、この作業は作業者が容易に行うことができる。
【0054】
なお、前記実施形態の記載は単なる一例に過ぎず、本発明に必須の構成を示したものではない。各部の構成は、本発明の趣旨を達成できるものであれば、上記に限らない。
【0055】
例えば、前記した実施形態では、主に火山灰を前提として説明したが、粉塵や黄砂、あるいはそれらの混合物の堆積厚さを測定することもできる。つまり、この明細書における灰は、粉塵や黄砂、あるいはそれらの混合物を含む概念として用いている。もちろん、灰は、火山灰と他の浮遊物との混合物であってもよい。また、本明細書において降灰とは、降り積もった灰、又は、灰が降り積もることをいう。
【0056】
前記した実施形態では、降灰桝1に目盛り16を設けたが、画像を用いて降灰量を推定できるのであれば、目盛りを省略することは可能である。たとえば、降灰桝1とカメラ21との位置関係が固定(又は既知)であれば、予め画像上の位置と空間上の位置との対応を取得しておくことにより、目盛りを省略することができる。
【0057】
さらに、前記した実施形態では、降灰桝1として、縮小部14と拡大部15とを有するものを用いたが、降灰桝1の横断面積が一定の形状であってもよい。また、拡大部15の形状が漏斗状であってもよい。
【0058】
また、前記した実施形態では、フレーム部111の構成を、開口11から上方に突出するものとしたが、これに限らず、例えば、開口11を横切るように水平方向に延長された構成としてもよい。
【0059】
さらに、前記した実施形態では、画像を基に作業者が降灰量を推定するものとしたが、例えば何らかの特徴量あるいは学習を用いて、画像に基づき降灰量を自動的に推定することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 降灰桝
11 開口
111 フレーム部
12 収容部
13 透光部
14 縮小部
15 拡大部
16 目盛り
17 底部の排水口
18 側部の排水口
2 撮像部
21 カメラ
22 通信部
23 アンテナ
3 本体
31 ケース
32 脚部
33 水抜き穴
4 バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9