【解決手段】紡糸溶融液の製造のために1.4〜1.7dl/gの固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートチップを溶融させる工程と、紡糸パックのノズルを通して前記紡糸溶融液を吐き出す工程と、前記ノズル直下に位置した300〜500℃の熱源で前記ノズルから吐き出される直前の前記紡糸溶融液を加熱する工程と、前記吐出工程によって形成された多数のフィラメントを集束させてマルチフィラメントを形成させる工程と、前記マルチフィラメントを延伸する工程とを含み、前記紡糸パックの温度を280〜305℃に維持するポリエチレンテレフタレート原糸の製造方法。
【背景技術】
【0002】
タイヤコード、エアバッグなどの製造に使用される産業用ポリエチレンテレフタレート(以下、PET)原糸の機械的物性(例えば、強度、伸度など)を向上させようとする研究が持続的に行われている。
一般に、PET原糸の製造方法は、マルチフィラメント形成のための紡糸工程と前記マルチフィラメントを所定延伸比で延伸する工程とを含み、前記紡糸工程は、PETチップを溶融させる工程と、PET溶融液を紡糸パックのノズルを通して吐き出す工程と、前記PET溶融液が前記ノズルを通して吐き出された後、冷却により形成された固化状態のフィラメントを集束させてマルチフィラメントを形成させる工程とを含む。
産業用PET原糸は、一般的に優れた形態安定性(すなわち、低い定荷重伸び率(EASL)および低い乾熱収縮率)を有することが求められるため、例えば、1,500m/min以上の高速紡糸を通してPET原糸を製造する必要がある。すなわち、延伸工程前に繊維の配向度を増加させることによって形態安定性を向上させることができる。
しかし、紡糸速度と延伸比はトレードオフの関係を有するため、紡糸速度を増加させる場合延伸工程で適用できる延伸比を制限しなければならない。すなわち、PET原糸の形態安定性を向上させるため、紡糸速度を1,500m/min以上に増加させると延伸、で適用できる延伸比は2.0以下に低くなる。延伸比が低くなるほどPET原糸の強度も低くなる。
したがって、優れた形態安定性を有し、かつ既存のPET原糸に比べてより高い強度を有するPET原糸を製造するためには、延伸比以外の他の工程因子の調節によりPET原糸の強度を増加させることができる方法が要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記のような関連技術の制限および短所に起因した問題を防止できるPET原糸およびその製造方法を提供する。
一観点において、本発明は、優れた形態安定性を有し、かつ既存のPET原糸に比べて高い強度を有するPET原糸を提供する。
他の一観点において、本発明は、優れた形態安定性を有し、かつ既存のPET原糸に比べて高い強度を有するPET原糸の製造方法を提供する。
上記に言及された本発明の観点以外にも、本発明の他の特徴および利点は、以下に説明されるか、そのような説明から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決する本発明の一観点により、2〜5デニールの纎度をそれぞれ有する100〜500個のフィラメントを含み、1.1dl/g以上の固有粘度および10g/d以上の引張強度を有することを特徴とする、PET原糸が提供される。
前記PET原糸は、1.1〜1.25dl/gの固有粘度および10〜10.6g/dの引張強度を有することができる。
前記PET原糸は、4.5g/d荷重で3〜6%の伸び率(elongation of 3 to 6% or less at 4.5g/d laod)および7〜12%の乾熱収縮率を有することができる。
前記PET原糸は、13〜14%の切断伸度を有することができる。
前記PET原糸は、13.4〜13.9%の切断伸度を有することができる。
発明の他の観点により、紡糸溶融液(spinning melt)製造のために1.4〜1.7dl/gの固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートチップを溶融させる工程と、紡糸パック(spinning pack)のノズルを通して前記紡糸溶融液を吐き出す工程と、前記ノズル直下に位置した300〜500℃の熱源で前記ノズルから吐き出される直前の前記紡糸溶融液を加熱する工程と、前記吐出工程によって形成された多数のフィラメントを集束させてマルチフィラメントを形成させる工程と、前記マルチフィラメントを延伸する工程とを含み、前記紡糸パックの温度は280〜305℃に維持される、PET原糸の製造方法が提供される。
前記PET原糸の製造方法においては4,000〜6,200m/minの延伸後の速度および1.9〜2.5の延伸比を適用することができる。
前記ノズルと前記熱源の間の距離は5〜50mmとすることができる。
前記熱源の温度は、前記紡糸パックの温度より高いこともある。
前記熱源は熱線を含むことができる。
前記熱源は多数の熱線を含むことができ、前記熱線は、前記フィラメントの移動を妨害しないように前記フィラメント間にそれぞれ配列することができる。
前記熱線は等間隔に配列することができる。
前記熱線それぞれは、前記ノズルの下面と平行になるように配列することができる。
前記延伸工程で延伸比を1.9〜2.5とすることができる。
前記吐出工程は2400psi以下の吐出圧力下で行うことができる。
上記のような本発明に関する一般的な叙述は、本発明を例示または説明したものに過ぎず、本発明の権利範囲を限定するものではない。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、相対的に高い固有粘度(Intrinsic Viscosity:IV)のPETチップを使用し、紡糸工程中のポリマーの熱分解およびそれによる固有粘度の低下(IV drop)を最小化することによって、1.1dl/g以上の相対的に高い固有粘度(IV)および10g/d以上の相対的に高い引張強度(tensile strength)を有するPET原糸を製造することができる。
また、相対的に高い固有粘度(IV)のPETチップを使用したにもかかわらず、固有粘度の低下(IV drop)を最小化するために相対的に低い紡糸温度を適用したにもかかわらず、口金直下から高温の熱エネルギーを付与することによって、PET溶融液の流動性の低下による吐出圧力の増加を防止することができる。したがって、吐出圧力の増加による漏出現象(leakage)および紡糸パックの損傷を防止することができる。
また、本発明によれば、ポリエステル原糸を構成する多数のフィラメントの機械的物性の均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の発明者らは、PET原糸の固有粘度(IV)がPET原糸の強度と密接な関係があることが分かった。すなわち、PET原糸の固有粘度(IV)が高いほど、PET原糸の強度が増加する。したがって、既存のPET原糸に比べて高い強度を有するPET原糸を製造するためには、既存のPET原糸に比べて高い固有粘度(IV)を有するPET原糸を製造することが要求される。
既存のPET原糸に比べて高い固有粘度(IV)を有するPET原糸を製造するためには、(i)既存のPET原糸の製造に使用されているPETチップの固有粘度(IV)に比べて高い固有粘度(IV)を有するPETチップを使用して紡糸溶融液を製造しなければならない。(ii)既存のPET原糸の製造に適用されている紡糸温度(すなわち、紡糸パックの温度)よりも低い紡糸温度を適用することによって、ポリマーの熱分解およびそれによる固有粘度の低下(IV drop)を最小化しなければならない。
しかし、PETチップの固有粘度(IV)が高いほど、そして紡糸温度が低いほど紡糸溶融液の流動性が低くなる。紡糸溶融液の低い流動性は吐出圧力を増加させて紡糸パックでの漏出現象および紡糸パックの損傷などの危険を増加させる。
本発明によれば、1.1dl/g以上の相対的に高い固有粘度(IV)および10g/d以上の相対的に高い強度を有するPET原糸を製造するため、1.4〜1.7dl/gの相対的に高い固有粘度(IV)のPETチップを使用し、280〜305℃の相対的に低い紡糸温度を適用したにもかかわらず、口金直下から高温の熱エネルギーを付与することによって、上記のような紡糸パックでの漏出現象および紡糸パックの損傷を防止することができる。
以下、
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態に係るPET原糸の製造方法について具体的に説明する。
【0008】
本発明の一実施形態に係る装置は、押出機(extruder)110、紡糸パック(spinning pack)120、熱源130、冷却部140、集束部150、延伸部160、およびワインダー170を含む。
前記紡糸パック120は、フィルター、分配板、ノズル121などのメイン部品および前記メイン部品を取り囲むパックボディー122を含む。前記熱源130は、ボルト131を通じて前記ノズル121に固定される。代案として、前記熱源130は、前記紡糸パック120を取り囲むスピンブロック(図示せず)に固定することもできる。
まず、PETチップが押出機110に投入された後、溶融して紡糸溶融液(すなわち、PET溶融液)が作られ、該紡糸溶融液が紡糸パック120で押出される。
前述したように、本発明で使用されるPETチップは、既存に使用されていたPETチップの固有粘度(IV、1.4dl/g未満)に比べて高い1.4〜1.7dl/gの固有粘度(IV)を有する。
PET原糸の配向性を高める高速紡糸を行うことが要求されるため、PETチップの固有粘度(IV)が1.4dl/g未満であれば、1.1dl/g以上の固有粘度(IV)を有するPET原糸の製造が不能になり、したがって、10g/d以上の引張強度を有するPET原糸の製造も不能になる。
一方、PETチップの固有粘度(IV)が1.7dl/gを超えると、許容範囲(2400psi以下)を外れる高い吐出圧力を要求する程度に紡糸溶融液の流動性が過度に低くなる(しかも、本発明の方法を適用する場合でも)。
前記押出機110から前記紡糸パック120に伝達された紡糸溶融液は、前記ノズル121のホール(holes)を通じて吐き出される。前記ノズル121は、100〜500個のホールを有することができ、各ホールの長さ(L)と直径(D)の比率であるL/Dは2〜5とすることができる。
【0009】
本発明によれば、紡糸工程が行われるときの紡糸温度、すなわち、前記紡糸パック120の温度(より具体的には、前記パックボディー122の温度)は280〜305℃に維持される。一般に、前記紡糸パック120の温度は、前記紡糸パック120を取り囲んでいる紡糸ブロック(spinning block)に設けられた温度センサーを通して測定できる。
紡糸温度が280℃未満の場合、紡糸溶融液の均一性が低下するだけでなく、許容範囲を外れる高い吐出圧力を要求する程度に紡糸溶融液の流動性が過度に低くなる。
一方、紡糸温度が305℃を超過すると、ポリマーの急激な熱分解が起きて深刻な固有粘度の低下(IV drop)が発生し、結果的に、10g/d以上の高い引張強度を有するPET原糸の製造が不能になる。
すなわち、本発明によれば、既存のPET原糸の製造方法に適用される310〜320℃の紡糸温度に比べてずっと低い280〜305℃の紡糸温度を適用することによって、紡糸工程中のポリマーの熱分解およびそれによる固有粘度の低下(IV drop)を最小化することができる。
【0010】
前述したように、PETチップの固有粘度(IV)が高いほど、そして紡糸温度が低いほど紡糸溶融液の流動性が低くなり、紡糸溶融液の低い流動性は吐出圧力を増加させて、紡糸パック120での漏出現象および紡糸パック120の損傷などの危険を増加させる。
上記のような問題点を解決するために、本発明によれば、前記ノズル121から吐き出される直前の前記紡糸溶融液が前記ノズル121直下(immediately below)に位置した熱源130で加熱される。
吐出圧力を決定する最も重要な因子は、前記ノズル121から吐き出される直前の紡糸溶融液の流動性である。したがって、紡糸溶融液がノズル121から吐き出される直前の瞬間だけに加熱されると、ポリマーの深刻な熱分解も起こさず、吐出直前に該流動性が瞬間的に増加する。その結果、吐出圧力の増加を最小化することができる。したがって、本発明によれば、2400psi以下、好ましくは2350psi以下、より好ましくは2320psi以下の吐出圧力で紡糸工程が行われる。
【0011】
結果的に、本発明によれば、1.4〜1.7dl/gの相対的に高い固有粘度(IV)のPETチップを使用し、280〜305℃の相対的に低い紡糸温度を適用したにもかかわらず、吐出圧力の増加による紡糸パックでの漏出現象および紡糸パックの損傷を防止することができる。
吐出直前の紡糸溶融液を適切に加熱するために、前記ノズル121と前記熱源130の間の距離を5〜50mmとすることができる。
本発明の一実施形態によると、前記熱源130の温度は前記紡糸パック120の温度よりも高い。例えば、前記熱源130の温度は300〜500℃、好ましくは320〜490℃、より好ましくは350〜480℃である。
前記熱源130は熱線を含むことができる。例えば、前記熱源130は、多数の熱線を含むことができ、前記熱線は、紡糸溶融液が前記ノズル121のホールから吐き出し形成される多数の半固形状態のフィラメント10の移動を妨害しないように前記フィラメント10の間に配列される。
吐出直前の紡糸溶融液を均一に加熱するために、前記熱線は等間隔に配列され、前記熱線それぞれは、前記ノズル121の下面と平行になるように配列される。
また、それぞれの前記フィラメント10は、前記熱線から一定の距離(例えば、3〜10mm)をもって均一に離隔されているため、フィラメント10間の物性の均一性が担保される。
【0012】
本発明によれば、ノズル121から吐き出される紡糸溶融液の冷却を遅延させるための従来の円筒形ヒーティングフードとは異なり、熱源130を構成する多数の熱線が前記ノズル121直下に等間隔に配置されて前記ノズル121から吐き出される直前の紡糸溶融液を瞬間的に加熱するため、1.4〜1.7dl/gの相対的に高い固有粘度(IV)のPETチップを使用し、280〜305℃の相対的に低い紡糸温度を適用したにもかかわらず、吐出圧力の増加による紡糸パックでの漏出現象および紡糸パックの損傷を防止することができる。
紡糸溶融液が前記ノズル121のホールから吐き出し形成される多数の半固形状態のフィラメント10は、冷却部140を通過しながら完全に固化される。前記冷却工程の制御のため、適当な温度および速度の冷却風を前記フィラメント10に吹き出す。フィラメント10の冷却挙動は繊維の最終物性に大きな影響を与える。
【0013】
次に、完全固化されたフィラメント10が集束部150によって集束されることによって、マルチフィラメント20を形成する。前記集束部150から乳剤が前記マルチフィラメント20に与えられる。すなわち、マルチフィラメント20形成工程と乳剤付与工程が同時に行われる。前記乳剤付与は、MO(Metered Oiling)またはRO(Roller Oiling)方式を通して行われる。
集束工程を通して形成された前記マルチフィラメント20は延伸部160で延伸される。前記延伸部160は、第1〜第5ゴデットローラ161、162、163、164、165を含むことができる。
第1ゴデットローラ161は、紡糸速度および紡糸ドラフト比(draft ratio)を決定する。
前記マルチフィラメント20の延伸は、第1ゴデットローラ161と第4ゴデットローラ164の間で行われる。すなわち、前記第1ゴデットローラ161の速度に対する第4ゴデットローラ164の速度比率で延伸比(draw ratio)が決定される。
前記第4ゴデットローラ164と前記第5ゴデットローラ165の間はリラクゼーション(relaxation)区間であって、第1〜第4ゴデットローラ161、162、163、164によって延伸されたマルチフィラメント20に若干のリラックスを付与することにより、ストレッチング直後の収縮力により惹起される(i)マルチフィラメント20の過度な収縮、(ii)ワインダー170の歪み、および(iii)巻戻し(unwinding)の不安定性を防止することができる。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、紡糸速度(すなわち、前記第1ゴデットローラ161の速度)は1,500〜3,300m/minであり、延伸後の速度(すなわち、前記第4ゴデットローラ164の速度)は4,000〜6,200m/minであり、延伸比は1.9〜2.5である。1,500〜3,300m/minの紡糸速度および4,000〜6,200m/minの延伸後の速度で製造される本発明の高い形態安定性のPET原糸は、4.5g/dの荷重で3〜6%の伸び率(elongation of 3 to 6% at 4.5g/d laod)および7〜12%の乾熱収縮率を有する。
選択的事項として、延伸されたマルチフィラメント20の熱処理/熱固定を行うために、前記第2〜第4ゴデットローラ162、163、164のうち少なくとも一つに加熱手段を提供することができる。例えば、第4ゴデットローラ164に巻かれる回数を調節することにより、マルチフィラメント20が第4ゴデットローラ164に滞留する時間を調節することができ、これによって延伸糸に対する適切な熱処理/熱固定を行うことができる。
延伸および熱処理されたマルチフィラメント20がワインダー170によって巻き取られることによってPET原糸が完成される。
【0015】
本発明のPET原糸は、2〜5デニールの纎度をそれぞれ有する100〜500個のフィラメントを含み、前述したように、1.1dl/g以上の相対的に高い固有粘度(IV)および10g/d以上の相対的に高い引張強度を有する。本発明の一実施形態によれば、前記PET原糸は13〜14%の切断伸度を有する。
本発明の高強度PET原糸はタイヤコード、エアバッグなどの多様な産業応用に適用される。
以下、本発明を下記実施例および比較例に基づいてより詳細に説明する。ただし、下記実施例は本発明の理解を助けるためのものであり、本発明の権利範囲はこれに限定されない。
【0016】
実施例1
1.7dl/gの固有粘度(IV)を有するPETチップの溶融を通して得られた紡糸溶融液が紡糸パックのノズルの250個ホール(L/D=2.1/0.7)を通じて吐き出された。この時、紡糸パックの温度、すなわち紡糸温度は約295℃であった。また、ノズルのホールから吐き出される直前の紡糸溶融液が前記ノズル直下に前記ノズルから10mm離隔して位置した450℃の熱線で加熱された。紡糸溶融液が前記ノズルのホールから吐き出し形成された多数の半固形状態のフィラメントが冷却部を通過しながら完全に高化され、前記フィラメントが集束形成されたマルチフィラメントに対して延伸工程、熱処理工程および巻取り工程が順次に行われることによって、4デニールの纎度をそれぞれ有する250個のフィラメントを含むPET原糸(総纎度:1,000デニール)が得られた。2101psiの吐出圧力が適用され、延伸後の速度は5,800m/minであり、延伸比は2.0であった。
【0017】
実施例2
紡糸温度および熱線温度はそれぞれ299℃および420℃であり、2181psiの吐出圧力下で紡糸工程が行われたことを除いては実施例1と同様の方法で、PET原糸が得られた。
実施例3
紡糸温度および熱線温度はそれぞれ304℃および380℃であり、2312psiの吐出圧力下で紡糸工程が行われたことを除いては実施例1と同様の方法で、PET原糸が得られた。
実施例4
紡糸溶融液の製造のために1.4dl/gの固有粘度(IV)を有するPETチップを使用し、紡糸温度および熱線温度はそれぞれ298℃および380℃であり、2160psiの吐出圧力下で紡糸工程が行われたことを除いては実施例1と同様の方法で、PET原糸が得られた。
【0018】
比較例1
紡糸温度は310℃であり、熱線による加熱が省略され、2930psiの吐出圧力が適用されたことを除いては、実施例1と同様の方法を適用した。しかし、過度に高い吐出圧力により紡糸パックでの紡糸溶融液の漏出が引き起こされ、巻取りが不能であった。
比較例2
紡糸溶融液の製造のために1.4dl/gの固有粘度(IV)を有するPETチップを使用し、紡糸温度は306℃であり、熱線による加熱が省略され、2370psiの吐出圧力が適用されたことを除いては実施例1と同様の方法で、PET原糸が得られた。
比較例3
紡糸溶融液の製造のために1.21dl/gの固有粘度(IV)を有するPETチップを使用し、紡糸温度は299℃であり、熱線による加熱が省略され、1910psiの吐出圧力が適用されたことを除いては実施例1と同様の方法で、PET原糸が得られた。
比較例4
紡糸溶融液の製造のために1.21dl/gの固有粘度(IV)を有するPETチップを使用し、紡糸温度および熱線温度はそれぞれ292℃および380℃であり、1850psiの吐出圧力下で紡糸工程が行われたことを除いては実施例1と同様の方法で、PET原糸が得られた。
【0019】
実施例および比較例のPET原糸を固有粘度(IV)、引張強度、切断伸度、4.5g/d荷重での伸び率(EASL@4.5g/d)、および乾熱収縮率を下記の方法によりそれぞれ測定し(巻取り不能の比較例1の場合、落下した固化物サンプルのIVを測定し、原糸の引張強度、切断伸度、EASL@4.5g/d、および乾熱収縮率は測定不能である)、その結果を表1に示す。
*PET原糸の固有粘度(IV)
各PET原糸の固有粘度(IV)(dl/g)をASTM D4603−96方法により毛細管粘度計(Capillary Viscometer)を用いて測定した。使用された溶媒は、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン(60/40重量%)混合液であった。
*PET原糸の引張強度、EASL@4.5g/d、および切断伸度
ASTM D885方法により、インストロンエンジニアリング社(Instron Engineering Corp、Canton、Mass)の万能引張試験機を用いて、PET原糸の引張強度(g/d)および切断伸度(%)をそれぞれ測定し(初期荷重:0.05gf/d、試料長さ:250mm、引張速度:300mm/min)、PET原糸のEASL@4.5g/dを測定した。
*PET原糸の乾熱収縮率
ASTM D885方法により、試片の最初長さ(L1)および177℃のオーブンで2分経過後、前記試片の長さ(L2)をそれぞれ測定した後、下記の式によってPET原糸の乾熱収縮率(%)を算出した。
式:乾熱収縮率(%)=[(L1−L2)/L1]x100
【表1】
【0020】
実施例1〜4では、1.4〜1.7dl/gの相対的に高い固有粘度(IV)を有するPETチップを使用し、ポリマーの熱分解を最小化するために295〜304℃の相対的に低い紡糸温度を適用することによって、1.11〜1.25dl/gの高い固有粘度(IV)、10.0〜10.6g/dの高い引張強度、および13.4〜13.9%の切断伸度を有するPET原糸を得ることができた。
一方、比較例3および比較例4でのように、1.4dl/g未満の固有粘度(IV)を有するPETチップを使用した場合には、299℃または292℃の低い紡糸温度が適用されてポリマーの熱分解が実施例1〜4に比べて小さかったにもかかわらず、PET原糸の固有粘度(IV)および引張強度がそれぞれ1.1dl/gおよび10g/dに及ばなかった。
また、比較例2でのように、1.4dl/gの相対的に高い固有粘度(IV)を有するPETチップを使用したが、306℃の高い紡糸温度が適用されて深刻なポリマーの熱分解が引き起こされた場合にも、PET原糸の固有粘度(IV)および引張強度がそれぞれ1.1dl/gおよび10g/dに及ばなかった。
実施例1〜4では、1.4〜1.7dl/gの相対的に高い固有粘度(IV)を有するPETチップを使用し、295〜304℃の相対的に低い紡糸温度が適用されたにもかかわらず、380〜450℃の熱線で吐出直前の紡糸溶融液を加熱することによって2101〜2312psiの吐出圧力、すなわち許容可能な吐出圧力(2400psi以下)で紡糸工程および延伸工程(延伸後の速度:5,800mm/min)を行うことができた。
一方、実施例1〜3でのように1.7dl/gの固有粘度(IV)のPETチップを使用した比較例1の場合、実施例1〜3での紡糸温度よりも高い310℃の紡糸温度が適用されたにもかかわらず、熱線による加熱が省略されたので許容可能な範囲を外れた高い吐出圧力(すなわち、2930psi)が要求され、その結果、紡糸パックでの紡糸溶融液の漏出が引き起こされて、原糸の巻取りが不能であった。したがって、熱線による加熱せずに1.7dl/gの固有粘度(IV)のPETチップで紡糸工程を行うためには、310℃よりもずっと高い紡糸温度を適用して吐出圧力を減少させることが要求されると考えられる。しかし、310℃の紡糸温度を適用する場合にも相当なポリマーの熱分解が発生して約0.58dl/gのIV低下(PETチップのIV−落下した固形物サンプルのIV)が引き起こされたことを考慮すると、310℃よりもずっと高い紡糸温度を適用する場合、0.6dl/gを超えるIVの低下が引き起こされて、PET原糸の固有粘度(IV)および引張強度がそれぞれ1.1dl/gおよび10g/dに及ばないことは自明である。