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特開2021-121256複合材料ゴルフクラブヘッド及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-121256(P2021-121256A)
(43)【公開日】2021年8月26日
(54)【発明の名称】複合材料ゴルフクラブヘッド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20210730BHJP
   A63B 102/32 20150101ALN20210730BHJP
【FI】
   A63B53/04 B
   A63B53/04 C
   A63B102:32
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-14732(P2020-14732)
(22)【出願日】2020年1月31日
(11)【特許番号】特許第6868718号(P6868718)
(45)【特許公報発行日】2021年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】500066735
【氏名又は名称】大田精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】凌▲ケイ▼文
(72)【発明者】
【氏名】周▲イ▼翔
(72)【発明者】
【氏名】劉芳▲ヨ▼
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA02
2C002CH01
2C002CH06
2C002MM02
2C002MM04
2C002MM07
2C002PP01
2C002PP02
(57)【要約】
【課題】フェース面上のスイートスポットをフェース面の幾何学中心点に接近させながら、同時に大きな慣性モーメントを得るなど、ゴルフクラブヘッドの重心位置や慣性モーメントに対して高い設計自由度を得ることができ、尚且つ、ヘッド本体の剛性においても高い設計自由度が得られる、複合材料ゴルフクラブヘッド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】炭素繊維を含む複合材料製プリプレグを積層して、賦形工程、該炭素繊維を含む複合材料製プリプレグの表裏側にそれぞれ、正圧・負圧の圧力を与える加圧工程、及び加熱作用による工程を施すことにより、前方開口部を有すると共にネック部を備えるシェル構造の複合材料ゴルフクラブヘッド本体を形成し、炭素繊維材料又は金属材料からなるフェース板をゴルフクラブヘッド本体の前方開口部に接着固定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを有する成形型と、熱間プレス成形補助装置と、加熱器とを利用する、複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法であって、
ネック部を一体的に備え、前方開口部を有するシェル構造の炭素繊維複合材料製ゴルフクラブヘッド本体を形成するために、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグを積層させて、前記成形型のキャビティの内壁面に押し付け、前記ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを成形し、
熱間プレス成形補助装置を利用して、前記成形型内のゴルフクラブヘッド本体のプリフォームの表側に真空負圧、裏側に正圧を与え、同時に前記加熱器で該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを加熱する工程において、該熱間プレス成形補助装置の真空引き用袋を利用して、該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームが収容された成形型を真空引き用袋に入れて負圧にして真空密封する一方、該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームの内部側に加圧用空気袋を入れて圧力を与え、同時に前記加熱器で該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを加熱し、該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームがゴルフクラブヘッド本体の原形に硬化成形されるまで加熱加圧した後、該成形型から取り出し、
該ゴルフクラブヘッド本体の原形に、バリ取り及び表面加工処理を施して、ゴルフクラブヘッド本体の中間製品を得て、
炭素繊維複合材料又は金属材料からなるフェース板を用意し、
該フェース板を、該ゴルフクラブヘッド本体の中間製品の前方開口部に接着固定し、複合材料ゴルフクラブヘッドを形成することを特徴とする、
複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記熱間プレス成形補助装置を利用して、前記成形型内のゴルフクラブヘッド本体のプリフォームの表側に真空負圧、裏側に正圧を与え、同時に前記加熱器で該クラブヘッド本体のプリフォームを加熱する工程において、加熱温度は60〜180℃、真空負圧値は−0.1〜−1bar、加圧空気の圧力値は1〜10barの範囲とし、その加熱加圧時間は、5〜60分とすることを特徴とする請求項1に記載の複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記成形型は、相対的に着脱可能な第1賦形型と第2賦形型との組み合わせを含み、前記ネック部を一体的に備え、前方開口部を有するシェル構造の炭素繊維複合材料製ゴルフクラブヘッド本体を形成するために、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグを積層させて、前記成形型のキャビティの内壁面に押し付け、前記ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを成形する工程において、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグをそれぞれ、分離状態下の第1賦形型及び第2賦形型の内壁面に積層するように押し付け、該第1賦形型と第2賦形型が型閉じされると、第1賦形型及び第2賦形型の内壁面に押し付けられるそれぞれの炭素繊維を含む複合材料製プリプレグ積層材を一体化させて、前記シェル構造のゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを形成することを特徴とする請求項2に記載の複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記熱間プレス成形補助装置は、開閉可能な容器をさらに含み、該容器の内部空間は、前記成形型と、該成形型の外部に配置される真空引き用袋と、該成形型の内部に配置される加圧用空気袋とを収納可能であり、また、前記加熱器は該容器内に設置され、前記熱間プレス成形補助装置を利用して、前記成形型内のゴルフクラブヘッド本体のプリフォームの表側に真空負圧、裏側に正圧を与え、同時に前記加熱器で該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを加熱する工程において、ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを収容する成形型、該成形型の外部を覆う真空引き用袋、及び該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム内に配置される加圧用空気袋を一斉に前記容器に入れ、該容器内に設置される加熱器によって、該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを加熱することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記フェース板の金属材料が、チタン合金、又はステンレス鋼であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項6】
炭素繊維複合材料製ゴルフクラブヘッド本体とフェース板を備え、
該ゴルフクラブヘッド本体は、前方開口部及びネック部を有するシェル構造体であって、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグを積層して、賦形、加熱、該炭素繊維を含む複合材料製プリプレグ積層材の裏側及び表裏にそれぞれ、正圧、負圧の圧力を与える工程を経て一体成型され、
前記フェース板は、炭素繊維複合材料又は金属材料からなり、前記ゴルフクラブヘッド本体の前方開口部に固定され、
複合材料ゴルフクラブヘッドの重心点から延伸する直線が該フェース板と直交する交差点がスイートスポットであり、該スイートスポットが、該フェース板の幾何学中心点と隣接する又は重なり合うことを特徴とする、
複合材料ゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記フェース板の裏側に、該フェース板を前記ゴルフクラブヘッド本体の前方開口部に嵌め合わせて接着剤で固定させるための嵌合い部が形成されることを特徴とする請求項6に記載の複合材料ゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記フェース板の金属材料が、チタン合金、又はステンレス鋼であることを特徴とする請求項6に記載の複合材料ゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記ゴルフクラブヘッド本体の後方部又は底部に、少なくとも一つの金属製ウエイト部材が設置されることを特徴とする請求項6又は7に記載の複合材料ゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記ネック部内に、金属製ソケット部材が設置されることを特徴とする請求項6又は7に記載の複合材料ゴルフクラブヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドに関し、特に複合材料を利用して製造するゴルフクラブヘッド及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のゴルフクラブヘッドは、重心位置及び慣性モーメントの設計自由度を向上させるために、部分的に炭素繊維複合材料を用いた構造を採用するか、ヘッド本体の一部を薄肉化する手段で、クラブヘッドの本体を軽量化し、これにより得た余剰重量を再配分することにより重心位置及び慣性モーメントを調整することを可能としている。
【0003】
しかしながら、これまでの技術では、例えばフェース面上のスイートスポットをフェース面の幾何学中心点に一致させる重心位置を得るなど任意の重心設計を行いながら同時に大きな慣性モーメント(MOI)を得るための十分な余剰重量を得ることが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記従来技術の欠点に鑑みてなされたものであり、クラブヘッドの重心位置や慣性モーメントの設計自由度を向上させることができる複合材料ゴルフクラブヘッド及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、キャビティを有する成形型と、熱間プレス成形補助装置と、加熱器とを利用する、複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法であって、ネック部を一体的に備え、前方開口部を有するシェル構造の炭素繊維複合材料製ゴルフクラブヘッド本体を形成するために、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグ材料を積層させて、前記成形型のキャビティの内壁面に押し付け、前記ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを成形し、熱間プレス成形補助装置を利用して、前記成形型内のゴルフクラブヘッド本体のプリフォームの表側に真空負圧、裏側に正圧を与え、同時に前記加熱器で該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを加熱し、具体的には、該熱間プレス成形補助装置の真空引き用袋を利用して、該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームが収容された成形型を真空引き用袋に入れて負圧にして真空密封する一方、該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームの内部側に加圧用空気袋を入れて圧力を与え、同時に前記加熱器で該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを加熱し、該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームされた炭素繊維を含む複合材料製プリプレグがゴルフクラブヘッド本体の原形に硬化成形されるまで加熱加圧した後に取り出し、該ゴルフクラブヘッド本体の原形に、バリ取り及び表面加工処理を施して、ゴルフクラブヘッド本体の中間製品を得て、炭素繊維複合材料又は金属材料からなるフェース板を用意し、該フェース板を、該ゴルフクラブヘッド本体の中間製品の前方開口部に接着固定し、複合材料ゴルフクラブヘッドを形成することを特徴とする。
【0006】
前記複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法においては、熱間プレス成形補助装置を利用して、前記成形型内のゴルフクラブヘッド本体のプリフォームの表側に真空負圧、裏側に正圧を与え、同時に前記加熱器で該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを加熱する工程では、加熱温度は60〜180℃、真空負圧値は−0.1〜−1bar、加圧空気の圧力値は1〜10barの範囲とし、その加熱加圧時間は、5〜60分とする。
【0007】
複合材料ゴルフクラブヘッドは、ゴルフクラブヘッド本体、フェース板を備え、該ゴルフクラブヘッド本体は、前方開口部及びネック部を有するシェル構造体であって、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグを積層して、賦形、加熱、該炭素繊維を含む複合材料製プリプレグ積層材の裏側及び表裏にそれぞれ、正圧、負圧の圧力を与える工程を経て一体成型され、前記フェース板は、炭素繊維複合材料又は金属材料からなり、前記ゴルフクラブヘッド本体の前方開口部に固定され、前記複合材料ゴルフクラブヘッドの重心点から延伸する直線が該フェース面と直交する交差点がスイートスポットであり、該スイートスポットが、該フェース面の幾何学中心点と隣接する又は重なり合うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記の技術手段によれば、本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッド及びその製造方法は、少なくとも以下に示す優れた点を有する。
1、スイートスポット位置をフェース面の幾何学中心点に接近させることができる。つまり、本発明は、ネック部と一体成型される炭素繊維複合材料製クラブヘッド本体、及びフェース板を別々に成形してから固定する製造方法及び構造を採用することで、スイートスポット位置をフェース面の幾何学中心点に接近させ、又は一致させることを比較的容易に達成できるので、打球時にヘッドのエネルギーをより効率良くボールに伝えることができる。
2、ゴルフクラブヘッド本体を軽量化できる。つまり、本発明は、炭素繊維複合材料製ゴルフクラブヘッド本体とネック部を一体成型できる技術手段を採用し、具体的には、該ゴルフクラブヘッド本体に対し、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグを積層するように形成する手段を利用し、必要な剛性を具備させた上で、該ゴルフクラブヘッド本体のクラウン部とソール部とネック部を一体成型する。この方法によれば、前記クラウン部とソール部とネック部の間に継ぎ目が現れないことから、より高い構造強度を持ち、且つ積層構造体の炭素繊維複合材料製ゴルフクラブヘッド本体は、インパクト時に適度に弾性変形し、応力を緩和することができる。故に、該ゴルフクラブヘッド本体の軽量化を図ることができ、より多くの余剰重量を得ることができる。
3、異なる性能特性(特に重心位置や慣性モーメント)ニーズに応じたゴルフクラブヘッドを容易に製造できる。つまり、上述したように、本発明は、ネック部と一体成型される炭素繊維複合材料製クラブヘッド本体、及びフェース板を別々に成形してから接合する製造方法及び構造を採用し、そのうち、該ゴルフクラブヘッド本体は、インパクト時に適度に弾性変形し、応力を緩和することができる炭素繊維複合材料積層構造であり、必要に応じて、その積層方法重量配分は容易に変更できることから、異なる性能特性(特に重心位置や慣性モーメント)ニーズに応じたゴルフクラブヘッドを容易に製造できる。
4、多様なゴルフクラブヘッドの剛性(flexible)設計が可能である。つまり、上述したように、本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッドは、異なる炭素繊維を含む複合材料製プリプレグ、例えば、金属糸や金属メッシュが設けられる複合材料製プリプレグを選択することができると共に、異なる炭素繊維を含む複合材料製プリプレグの積層方法を採用することができ、ゴルフクラブヘッド本体を、炭素繊維材料又は金属材料からなるフェース板と結合することによって、同一材料又は異なる材料の構造体を得られることから、多様な組み合わせを達成できる。故に、ゴルフクラブヘッドの剛性を多様に設計でき、打撃時の飛距離性能やボールの捉えやすさ、打球感、打球音などを容易に調整することができる。
5、ゴルフクラブヘッドの質量配分の設計自由度が高い。つまり、上述したように、本発明のヘッド本体は、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグを積層して加熱加圧成形されており、そのうち、異なる炭素繊維を含む複合材料製プリプレグを選択することができることに加え、異なる炭素繊維を含む複合材料製プリプレグの積層方法を採用できることから、ゴルフクラブヘッドの本体部を軽量化しつつ、その軽量化によって得られた余剰重量を容易に任意の位置に再配分することができるので、ゴルフヘッドの質量配分を自由に設計することができる。
6、より高い構造強度を持つ。つまり、本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッドは、炭素繊維を含む複合材料製複合材料プリプレグを積層して、賦形工程、該炭素繊維を含む複合材料製プリプレグの表裏側それぞれに正圧・負圧の圧力を与える加圧工程、及び加熱作用による工程を施すことにより、前方開口部を有すると共にネック部を備えるシェル構造のゴルフクラブヘッド本体を形成し、具体的には、成形型内に積層される炭素繊維を含む複合材料製プリプレグは、空気圧の等方的な圧力により、表裏側から均等に加圧作用を与えつつ、且つ加熱作用を受けることで、十分に架橋硬化されて、強度に優れた構造体を得ることができる。
【0009】
上述した複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法において、熱間プレス成形補助装置を利用して、前記成形型内のゴルフクラブヘッド本体のプリフォームの表側に真空負圧、裏側に正圧を与え、同時に前記加熱器で該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを加熱する工程において、加熱温度は60〜180℃、真空負圧値は−0.1〜−1bar、加圧空気の圧力値は1〜10barの範囲とし、その加熱加圧時間は、5〜60分とすることから、硬化成形された炭素繊維複合材料製ゴルフクラブヘッド本体は、より良好な硬化成形の効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法のフローチャートである。
図2】本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法において、熱間プレス成形補助装置の真空引き用袋が、ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームを収容する成形型の外部を覆うように密封すると共に、該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォームの内部に加圧用空気袋を入れた状態を示す模式図である。
図3】本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッドのウッドタイプの態様を示す斜視図である。
図4図3に示したウッドタイプの態様における、ゴルフクラブヘッド本体とフェース板を示す分解斜視図である。
図5図3に示したウッドタイプの態様における、複合材料ゴルフクラブヘッドの正面図である。
図6図3に示したウッドタイプの態様における、複合材料ゴルフクラブヘッドの側面視断面図である。
図7】本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッドのアイアンタイプの態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上述したように、本発明は、複合材料ゴルフクラブヘッド及びその製造方法を含む。以下、複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法、及び複合材料ゴルフクラブヘッドの構造について、それぞれをさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法は、内部が中空状に形成される、ウッドクラブヘッドやアイアンクラブヘッドの製造に用いられる方法であって、成形型と、熱間プレス成形補助装置と、加熱器とを利用して実行する。
本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法は、図2に示すように、該成形型10は、前端から後端へ向かって延伸するキャビティ100を有し、該キャビティ100の形状が、所定されたゴルフクラブヘッド本体の外形によって形成され、該熱間プレス成形補助装置は、該成形型10を収納することができ、且つ該成形型10を介して、対象物に負圧や正圧の圧力を与えることにより、該加熱器が加熱作用を提供するものである。
【0013】
上述した成形型10は、単一の部品であってもよく、又は相対的に着脱可能な複数の型からなってもよい。また、図2に示すように、本発明の好適な実施例においては、該成形型10が、第1賦形型11と第2賦形型12との組み合わせからなるものである。
【0014】
図2に示すように、前記熱間プレス成形補助装置は、真空引き用袋30と加圧用空気袋40を含む。該真空引き用袋30は、前記成形型10を覆うことができると共に、該成形型10のキャビティ100に負圧の圧力を与えるため、外部の真空引き装置に接続することができる。該加圧用空気袋40は、外部の空気圧供給装置に接続することができ、該成形型10のキャビティ100内に入れて、圧力を与える作用を提供する。尚、前記加熱器は、安定した制御可能な加熱温度を該成形型に提供するために、電気式加熱器であることが好ましい。
【0015】
前記空気圧供給装置と真空引き装置はそれぞれ独立した装置であってもよく、或は真空引き及び空圧供給の両方を兼ね備えた単一の装置であってもよい。尚、前記真空引き用袋30と加圧用空気袋40は、耐熱性及び耐圧性に優れた強度をもつ材料からなる袋体である。
【0016】
前記熱間プレス成形補助装置は、開閉可能な容器をさらに含み、該容器の内部空間は、前記成形型10、該成形型10の外部に配置される真空引き用袋30、及びその内部に配置される加圧用空気袋40を収納可能である。また、前記加熱器は該容器内に設置される。
【0017】
本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッドの製造方法に関する具体的な生産工程は、図1及び図2に示すように、まず、ネック部を一体的に備え、前方開口部を有するシェル構造の炭素繊維複合材料製ゴルフクラブヘッド本体を形成するために、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグ積層材を、前記成形型10のキャビティ100の内壁面に押し付け、ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を成形し、熱間プレス成形補助装置を利用して、該成形型10内のゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20の表側に真空負圧、裏側に正圧を与え、同時に前記加熱器で該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を加熱する。
具体的には、該熱間プレス成形補助装置の真空引き用袋30を利用して、該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を収容する成形型10の外部を負圧にして真空密封する一方、該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20の内部に加圧用空気袋40を入れ、圧力を与え、同時に前記加熱器で該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を加熱する。該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を、ゴルフクラブヘッド本体の原形に硬化成形されるまで加熱加圧した後取り出し、該ゴルフクラブヘッド本体の原形に、バリ取り及び表面加工処理を施して、ゴルフクラブヘッド本体の中間製品を形成し、炭素繊維複合材料又は金属材料からなるフェース板を用意する。尚、ここでの金属材料は、チタン合金、又はステンレス鋼などであってもよい。続いて、該フェース板を、該ゴルフクラブヘッド本体の中間製品の前方開口部に接着固定し、複合材料ゴルフクラブヘッドを形成する。
【0018】
上述したように、ネック部を一体的に備え、前方開口部を有するシェル構造の炭素繊維複合材料製ゴルフクラブヘッド本体を形成するために、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグを積層させて、前記成形型10のキャビティ100の内壁面に押し付け、前記ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を成形する工程における炭素繊維を含む複合材料製プリプレグは、周知の材料からなる。一般的なプリプレグとは、炭素繊維を含む複合材料を樹脂に含浸してシート状に形成したものを指すが、ここでの樹脂は、熱硬化性樹脂であることが好ましい。
この工程では、クラブヘッドの異なる性能に応じて、異なる種類の炭素繊維を含む複合材料プリプレグ、例えば、金属糸や金属メッシュが設けられる複合材料製プリプレグを選択でき、また、該炭素繊維を含む複合材料製プリプレグの積層方法によって、設計を多様化できることから、所望の積層構造を持つゴルフクラブヘッド本体部を製造できる。
【0019】
ネック部を一体的に備え、前方開口部を有するシェル構造の炭素繊維複合材料製クラブヘッド本体を形成するために、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグを積層させて、前記成形型10のキャビティ100の内壁面に押し付け、前記ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を成形する工程においては、該成形型10が単一部品である場合、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグを、前記キャビティ100の内壁面に直接に押し付ける。該成形型10が、相対的に着脱可能な第1賦形型11と第2賦形型12の組み合わせである場合、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグをそれぞれ、分離状態下での第1賦形型11及び第2賦形型12の内壁面に押し付け、その後、該第1賦形型11及び第2賦形型12が型閉じされると、該第1賦形型11及び第2賦形型12の内壁面に押し付けられるそれぞれの炭素繊維を含む複合材料製プリプレグが一体化され、前方開口部を有するシェル構造のゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を形成する。尚、型閉じされた状態下での第1賦形型11及び第2賦形型12の内壁面に、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグをそれぞれ押し付けて、前方開口部を有するシェル構造のゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を形成することも可能である。
【0020】
熱間プレス成形補助装置を利用して、前記成形型10内のゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20の表側に真空負圧、裏側に正圧を与え、同時に前記加熱器で該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を加熱する工程においては、その加熱温度が60〜180℃であり、その真空負圧値が−0.1〜−1barであり、その加圧空気の圧力値が1〜10barであり、その加熱・加圧時間が5〜60分である。これにより、該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20内の炭素繊維を含む複合材料製プリプレグに対して、空気圧の等方的な圧力により、表裏側に均等に加圧作用を与えると同時に、加熱作用によって架橋反応を生じさせて、硬化成形する。
【0021】
熱間プレス成形補助装置を利用して、前記成形型10内のゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20の表側に真空負圧、裏側に正圧を与え、同時に前記加熱器で該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を加熱する工程においては、該熱間プレス成形補助装置が開閉可能な容器をさらに備える場合、ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を収容する成形型10、該成形型10の外部を覆う真空引き用袋30、及び該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20内に配置される加圧用空気袋40を一斉に、該容器に入れ、また、該容器内に設置される加熱器を利用して、該ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム20を加熱する。
【0022】
本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッドの具体的な構造については、内部が中空状に形成される、ウッドクラブヘッド(図3を参照)やアイアンクラブヘッド(図7を参照)などであってもよい。また、図3図7に示すように、複合材料ゴルフクラブヘッドは、ゴルフクラブヘッド本体50A、50B及び、フェース板60A、60Bを備える。
【0023】
前記ゴルフクラブヘッド本体50A、50Bが、賦形工程、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグの表裏側それぞれに正圧・負圧の圧力を与える加圧工程、及び加熱作用による工程を施すことにより、前方開口部を有すると共にネック部51A、51Bを備えるシェル構造を一体形成する。
【0024】
前記フェース板60A、60Bは、炭素繊維材料又は金属材料からなり、該金属材料は、チタン合金又はステンレス鋼であり、該フェース板60A、60Bは、前記ゴルフクラブヘッド本体50A、50Bの前方開口部に接着固定される。尚、本発明の好適な実施例においては、前記フェース板60A、60Bの裏側に、嵌合い部61A、61Bが形成され、該嵌合い部61A、61Bを介して、該フェース板60A、60Bを前記ゴルフクラブヘッド本体50A、50Bに嵌め合わせて接着剤で固定させる。
【0025】
本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッドの重心点CGから延伸する直線が、該フェース板60Aと直交する交差点は、スイートスポット601であり、該スイートスポット601は、該フェース板60Aの幾何学中心点600と重なり合うことが好ましい。
【0026】
前記ゴルフクラブヘッド本体50Aの後方部或は底部に、少なくとも一つの金属製ウエイト部材52が設置され、前記ネック部51Aの内に、金属製ソケット部材が設置される。
【0027】
上記の説明のように、本発明に係る複合材料ゴルフクラブヘッド及びその製造方法は主に、炭素繊維を含む複合材料製プリプレグを積層して、賦形工程、該炭素繊維を含む複合材料製プリプレグの表裏側にそれぞれ、正圧・負圧の圧力を与える加圧工程、及び加熱作用による工程を施すことにより、前方開口部を有すると共にネック部を備えるシェル構造のゴルフクラブヘッド本体を形成する。そして、炭素繊維材料又は金属材料からなるフェース板を該ゴルフクラブヘッド本体の前方開口部に接着固定することにより、該複合材料ゴルフクラブヘッドは、ヘッド本体部を軽量化して重心設計やMOIの拡大に必要な余剰重量を生み出すと共に、様々な異なるクラブヘッドの飛距離性能や打球感に対するニーズに応じて構造や該炭素繊維を含む複合材料製プリプレグ積層構成を調整することができる。このため、ゴルフクラブヘッドの剛性(flexible)設計を多様化できると共に、フェース面のスイートスポットの位置を制御しやすく、本発明のゴルフクラブヘッドは極めて優れた打球性能を発揮することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
10 成形型
100 キャビティ
11 第1賦形型
12 第2賦形型
20 ゴルフクラブヘッド本体のプリフォーム
30 真空引き用袋
40 加圧用空気袋
50A、50B ゴルフクラブヘッド本体
51A、51B ネック部
52 ウエイト部材
60A、60B フェース板
600 幾何学中心点
601 スイートスポット
61A、61B 嵌合い部
CG 重心点

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7