(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-121257(P2021-121257A)
(43)【公開日】2021年8月26日
(54)【発明の名称】口腔内位置固定手段付き挿管チューブおよびこれを用いた挿管チューブの口腔内位置固定方法
(51)【国際特許分類】
A61M 16/04 20060101AFI20210730BHJP
【FI】
A61M16/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-14737(P2020-14737)
(22)【出願日】2020年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】520038666
【氏名又は名称】小磯 進太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100086449
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 浩明
(72)【発明者】
【氏名】小磯 進太郎
(57)【要約】
【課題】挿管チューブ使用時の位置ずれを阻止できる口腔内位置固定手段付き挿管チューブおよびこれを用いた挿管チューブの口腔内位置固定方法の提供。
【解決手段】患者50の気管51内に挿入される挿管チューブ12と、該挿管チューブ12のチューブ本体13側に装着して位置ずれを阻止する位置固定手段22とで構成され、該位置固定手段22は、チューブ本体13の先端13a側を患者50の気管51内の所定位置へと挿入した際の口腔52内に位置する部位の周面14を覆って大径化させてなる位置決め用弾性体23と、該位置決め用弾性体23を周面14側に付着させて装着する接合層24とで形成され、チューブ本体13の気管51内挿入時に患者50の歯列裏側に位置決め用弾性体23の基端23a側を当接支持させてチューブ本体13の抜け方向での位置ずれの阻止を自在とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の気管内にチューブ本体の先端側が挿入される挿管チューブと、前記チューブ本体に装着して気管内挿入時の位置ずれを阻止する位置固定手段とで構成され、
該位置固定手段は、前記チューブ本体の先端側を前記患者の気管内の所定位置へと挿入した際の口腔内に位置する部位の周面を覆って大径化させてなる位置決め用弾性体と、該位置決め用弾性体を前記周面側に付着させて装着する接合層とで形成され、
前記チューブ本体の気管内挿入時に前記患者の歯列裏側に前記位置決め用弾性体の基端側を当接支持させて前記チューブ本体の抜け方向での位置ずれの阻止を自在としたことを特徴とする口腔内位置固定手段付き挿管チューブ。
【請求項2】
前記位置決め用弾性体は、粘着層を裏面に備える幅が23〜27mmで厚さが1〜1.3mmの伸縮テープ材を長さ75〜85mmに切断してなる伸縮テープ片をその全体の厚さ8〜12mmとなるように複数枚接合した伸縮性積層体であり、該伸縮性積層体をチューブ本体の前記周面に奥行きが23〜27mmとなるように周回配置するとともに、前記伸縮性積層体の最下層に位置する前記粘着層を前記接合層としてチューブ本体の前記周面に装着させた請求項1に記載の口腔内位置固定手段付き挿管チューブ。
【請求項3】
前記位置決め用弾性体は、粘着層を裏面に備える幅が23〜27mmで厚さが1〜1.3mmの伸縮テープ材をその全体の厚さが8〜12mmで奥行きが23〜27mmとなるようにチューブ本体の前記周面に複数回巻き付けるとともに、最下層に位置する前記粘着層を前記接合層として装着させた請求項1に記載の口腔内位置固定手段付き挿管チューブ。
【請求項4】
前記位置決め用弾性体は、チューブ本体の前記周面の長さ方向への各別での配列を自在にエラストマー材を用いて形成された奥行き23〜27mmで厚さが8〜12mmの複数本の角柱状エラストマー片であり、前記チューブ本体の長さ方向に沿わせた角柱状エラストマー片を前記接合層を介して前記周面に各別に装着させた請求項1に記載の口腔内位置固定手段付き挿管チューブ。
【請求項5】
前記位置決め用弾性体は、チューブ本体の前記周面に接する口径の中空部を有する奥行き23〜27mmで厚さが8〜12mmの筒状エラストマー体を二つ割してなる一側エラストマー部と他側エラストマー部とで形成され、前記周面に対面配置したこれら一側エラストマー部と他側エラストマー部とを前記接合層を介して装着させた請求項1に記載の口腔内位置固定手段付き挿管チューブ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の口腔内位置固定手段付き挿管チューブが用いられ、該挿管チューブの前記チューブ本体側の気管内挿入時には、位置決め用弾性体の前記基端側を前記患者の歯列裏側に当接支持させて抜け方向での位置ずれを阻止して位置固定することを特徴とする挿管チューブの口腔内位置固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術等の際に麻酔器や人工呼吸器に接続して人工的に患者の呼吸を確保するためにチューブ本体側を気管内挿入して用いる挿管チューブに好適な口腔内位置固定手段付き挿管チューブおよびこれを用いた挿管チューブの口腔内位置固定方法に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
通常、挿管チューブは、手術等の際に麻酔器や人工呼吸器に接続して人工的に患者の呼吸を確保するためにチューブ本体側を気管内挿入して上気道閉塞時や意識障害時などに気道を確保するために使用されている。
【0003】
ところで、このような用途に供される挿管チューブは、これを用いた気管内挿入の最中に事故抜去などで患者の気管内挿入位置にずれが生じないように確実に位置を固定して必要な処置を施す必要があるため、従来は、気管内挿入したチューブ本体のうち患者の口から出ている部位に粘着テープ等の止着テープを巻き付けて左右に引き出されている該止着テープの両開放端部側を顔面表皮等に貼り付けることで位置固定する手法が一般に採用されていた。
【0004】
しかし、患者がアレルギー体質であったり、顔面に熱傷を受けていたりして皮膚が脆弱になっている場合には、皮膚障害防止の観点から上記止着テープによる位置固定を行うことができないという問題があった。
【0005】
一方、患者の体腔内における挿管チューブの位置ずれを抑える手法としては、例えば特許文献1に開示されている「気管挿管チューブ」が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−73678号公報
【0007】
すなわち、特許文献1には、チューブ本体と該チューブ本体が挿通された環状の気管外カフとで構成され、チューブ本体の先端が患者の気管内に挿入された状態で、気管外カフが患者の気管内において患者の気管導入部を覆うように膨張可能とすることで位置ずれを抑えるようにした挿管チューブが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1の挿管チューブによる場合には、気管外カフを患者の気管導入部を覆うように膨張させることで、位置ずれを一応は抑えることができるのの、患者の口から出ている挿管チューブの部位側に不本意な力がかかって抜け方向に力が作用した際の位置ずれを確実には阻止することができないばかりでなく、施術時における処置作業をそれだけ煩雑化するという不都合があった。
【0009】
本発明は、従来手法にみられた上記課題に鑑み、手術等の際に麻酔器や人工呼吸器に接続して人工的に患者の呼吸を確保するために用いる挿管チューブの気管内挿入時における位置ずれを確実、かつ、簡単に阻止できる口腔内位置固定手段付き挿管チューブおよびこれを用いた挿管チューブの口腔内位置固定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成すべくなされたものであり、そのうちの第1の発明(口腔内位置固定手段付き挿管チューブ)は、患者の気管内にチューブ本体の先端側が挿入される挿管チューブと、前記チューブ本体に装着して気管内挿入時の位置ずれを阻止する位置固定手段とで構成され、該位置固定手段は、前記チューブ本体の先端側を前記患者の気管内の所定位置へと挿入した際の口腔内に位置する部位の周面を覆って大径化させてなる位置決め用弾性体と、該位置決め用弾性体を前記周面側に付着させて装着する接合層とで形成され、前記チューブ本体の気管内挿入時に前記患者の歯列裏側に前記位置決め用弾性体の基端側を当接支持させて前記チューブ本体の抜け方向での位置ずれの阻止を自在としたことを最も主要な特徴とする。
【0011】
この場合、前記位置決め用弾性体は、粘着層を裏面に備える幅が23〜27mmで厚さが1〜1.3mmの伸縮テープ材を長さ75〜85mmに切断してなる伸縮テープ片をその全体の厚さ8〜12mmとなるように複数枚接合した伸縮性積層体であり、該伸縮性積層体をチューブ本体の前記周面に奥行きが23〜27mmとなるように周回配置するとともに、前記伸縮性積層体の最下層に位置する前記粘着層を前記接合層としてチューブ本体の前記周面に装着させたり、粘着層を裏面に備える幅が23〜27mmで厚さが1〜1.3mmの伸縮テープ材をその全体の厚さが8〜12mmで奥行きが23〜27mmとなるようにチューブ本体の前記周面に複数回巻き付けるとともに、最下層に位置する前記粘着層を前記接合層として装着させたりすることができる。
【0012】
また、前記位置決め用弾性体は、チューブ本体の前記周面の長さ方向への各別での配列を自在にエラストマー素材を用いて形成された奥行き23〜27mmで厚さが8〜12mmの複数本の角柱状エラストマー片であり、前記チューブ本体の長さ方向に沿わせた角柱状エラストマー片を前記接合層を介して前記周面に各別に装着させたり、チューブ本体の前記周面に接する口径の中空部を有する奥行き23〜27mmで厚さが8〜12mmの筒状エラストマー体を二つ割してなる一側エラストマー部と他側エラストマー部とで形成され、前記周面に対面配置したこれら一側エラストマー部と他側エラストマー部とを前記接合層を介して装着させたりするものであってもよい。
【0013】
一方、第2の発明(挿管チューブの口腔内位置固定方法)は、請求項1ないし5のいずれかに記載の口腔内位置固定手段付き挿管チューブが用いられ、該挿管チューブの前記チューブ本体側の気管内挿入時には、位置決め用弾性体の前記基端側を前記患者の歯列裏側に当接支持させて抜け方向での位置ずれを阻止して位置固定することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、位置固定手段は、挿管チューブにおけるチューブ本体の先端側を患者の気管内の所定位置へと挿入した際の口腔内に位置する部位の周面を覆って大径化させる位置決め用弾性体と、該位置決め用弾性体を前記周面側に付着させる接合層とで形成されているので、該接合層を介してチューブ本体の最適位置に位置決め用弾性体を簡単に装着したり、その後の位置変更の必要にも容易に対応させることができるほか、チューブ本体の気管内挿入時に位置決め用弾性体の基端側を患者の歯列裏側に簡単に当接支持させるという簡単な処置で挿管チューブの抜け方向での不本意な位置ずれを阻止してチューブ本体側を確実に位置固定することができる。
【0015】
このため、患者がアレルギー体質であったり、顔面に熱傷を受けていたりして皮膚が脆弱になっている場合であっても、従来手法のような気管内挿入したチューブ本体のうち患者の口から出ている部位に粘着テープ等の止着テープを巻き付けて左右に引き出されている該止着テープの両開放端部側を顔面表皮等に貼り付けるという煩雑で細心の注意を要する固定作業をなくすことができるので、皮膚障害を与えるおそれをなくして安心、かつ、容易に位置固定することができる。また、チューブ本体は、患者の歯列裏側に位置決め用弾性体の基端側を当接支持させた状態のもとで口腔内に位置固定することができるため、頬部や上顎部・下顎部の体表面側に対する手術への影響をそれだけ低減して医療的な処置をより弾力的に行うことができる。
【0016】
しかも、請求項2に記載の伸縮性積層体を位置決め用弾性体として用いる場合には、市販品である伸縮テープ材を単に切断して重ね合わせることで位置決め用弾性体を形成することができるので、製品コストの低減化に寄与させることができるほか、最下層に位置する粘着層を接合層として用いることで簡単に挿管チューブに装着することもできる。
【0017】
また、請求項3に記載のように伸縮テープ材をチューブ本体の周面に複数回巻き付けて位置決め用弾性体を形成する場合は、市販品である伸縮テープ材をそのまま利用することができるので、製品コストの低減化により効果的に寄与させることができるほか、最下層に位置する粘着層を接合層として用いることでその装着作業の効率化を図ることができる。
【0018】
さらに、請求項4に記載のようにチューブ本体の周面の長さ方向に各別に配列される角柱状エラストマー片を位置決め用弾性体として用いる場合には、一体成形品を用いることなく、個々の角柱状エラストマー片を構成素材として用いることでコスト低減に有効に寄与させることができる。
【0019】
さらにまた、請求項5に記載のようにチューブ本体の周面に接する内径の中空部を有する筒状エラストマー体を二つ割りしてなる一側エラストマー部と他側エラストマー部とを位置決め用弾性体として用いる場合には、チューブ本体の周面に両方向から単に挟むようにして簡単に挟着させることができるほか、装着後の位置変更もより簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による患者への挿管チューブの位置固定状態を模式的に 示す説明図。
【
図2】第1の発明の一例を要部を示す説明図であり、そのうちの(a)は、例1の位置固定手段を挿管チューブに装着した状態を、(b)は、例1の位置固定手段の装着前の状態をそれぞれ示す。
【
図3】例2の位置固定手段を挿管チューブに装着した状態を示す要部説明図。
【
図4】例3としての位置固定手段をチューブ本体に装着した状態を示す要部拡大斜視図
【
図5】例4の位置固定手段についての説明図であり、そのうちの(a)は、例3の位置固定手段を挿管チューブに装着した状態を、(b)は、例3の位置固定手段の装着前の状態をそれぞれ示す。
【
図6】本発明を構成する挿管チューブの一例を示す全体斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明を適用して患者に対し挿管チューブを気管内挿入した際の状況を模式的に示す説明図であり、
図2〜
図5は、本発明のうち、第1の発明(口腔内位置固定手段付き挿管チューブ)における位置固定手段の具体例を例1~例4として示す説明図である。
【0022】
これらの図によれば、口腔内位置固定手段付き挿管チューブ11は、
図1に例示するように患者50の気管51内にチューブ本体13の先端13a側が挿入される挿管チューブ12と、該挿管チューブ12に装着して気管内挿入時の位置ずれを阻止する位置固定手段22とで構成されている。
【0023】
これらのうち、挿管チューブ12は、そのチューブ本体13部分が例えば大人用であればその内径が8mm程度の通気路14を備え、基端13a側から先端13b側へと至る所要長さが付与されてた例えば
図6に一例として示す構造を備えて一般に市販されている適宜の製品が用いられる。
【0024】
また、位置固定手段22は、チューブ本体13の先端13b側を患者50の気管51内の所定位置へと挿入した際の口腔52内に位置する部位の周面15を覆って大径化させてなる位置決め用弾性体23と、該位置決め用弾性体23を周面15側に付着させて装着する接合層24とで形成されれている。
【0025】
図2は、第1の発明(口腔内位置固定手段付き挿管チューブ)の一例についての要部を示す説明図であり、そのうちの(a)は、例1としての位置固定手段をチューブ本体に装着した状態を、(b)は、同位置固定手段の装着前の状態をそれぞれ示す。
【0026】
同図によれば、位置固定手段22を構成する位置決め用弾性体23は、粘着層27を裏面に備える幅が23〜27mmで厚さが1〜1.3mmの弾力性繊維素材からなる伸縮テープ材26を長さ75〜85mmに切断してなる伸縮テープ片26aをその全体の厚さ8〜12mmとなるように複数枚接合した伸縮性積層体25として形成されている。なお、伸縮性積層体25は、例えばアルケア株式会社のテープ状となった商品名「シルキーテックス(ベージュ)」などを切断してなる伸縮テープ片26aを複数枚接合することで形成することができる。
【0027】
このため、チューブ本体13側への伸縮性積層体25の装着は、チューブ本体13の周面15に奥行きが23〜27mmとなるように周回配置するとともに、伸縮性積層体25が最下層に備える粘着層27を接合層24とすることで行うことができることになる。この場合における伸縮性積層体25は、その一側端面25aと他側端面25bとが相互に密接するように周回させて装着したり、一側端面25a側または他側端面25b側が他側端面25b側または一側端面25a側にやや乗り上げるようにして周回させて装着したりすることができる。
【0028】
図3は、例2としての位置固定手段をチューブ本体に装着した状態を示すものである。同図によれば、位置固定手段22を構成する位置決め用弾性体23は、粘着層27を裏面に備える幅が23〜27mmで厚さが1〜1.3mmの弾力性繊維素材からなる伸縮テープ材26をその全体の厚さが8〜12mmで奥行きが23〜27mmとなるようにチューブ本体13の周面15に複数回巻き付けることで形成され、チューブ本体13の周面15への装着は、最下層に位置する粘着層27を接合層24とすることで行うことができることになる。
【0029】
図4は、例3としての位置固定手段をチューブ本体に装着した状態を示す要部拡大斜視図である。同図によれば、位置固定手段22を構成する位置決め用弾性体23は、チューブ本体13の周面15の長さ方向への各別での配列を自在にエラストマー素材(例えばメデイカルリーダース社の商品名「バイトブロック」に使用されているエラストマー素材等)を用いて形成された奥行き23〜27mmで厚さが8〜12mmの複数本の角柱状エラストマー片35により形成されている。
【0030】
このため、角柱状エラストマー片35のそれぞれは、チューブ本体13の長さ方向に沿わせて配列させながら接合層24を介して周面15側に例えば
図4に示すように各別に装着することで位置固定手段22として配置することができることになる。
【0031】
図5は、例4としての位置固定手段についての説明図であり、そのうちの(a)は、挿管チューブに装着した状態を、(b)は、装着前の状態をそれぞれ示す。同図によれば、位置固定手段22を構成する位置決め用弾性体23は、チューブ本体13の周面に接する口径の中空部37aを有する奥行き23〜27mmで厚さが8〜12mmの筒状エラストマー体37を二つ割してなる一側エラストマー部38と他側エラストマー部39とで形成されている。なお、筒状エラストマー体37は、例3と同様に例えばメデイカルリーダース社の商品名「バイトブロック」に使用されているエラストマー素材等を用いて形成することができる。
【0032】
このため、チューブ本体13側への位置決め用弾性体23の装着は、チューブ本体13の周面15に対面配置させた一側エラストマー部38と他側エラストマー部39とを接合層24を介して行うことができることになる。
【0033】
チューブ本体13の気管51内挿入時における挿管チューブ12は、例1〜例4として例示した位置固定手段22を用いることにより、
図1に示すように患者50の歯列裏側に位置決め用弾性体23の基端23a側を当接支持させることで、チューブ本体13の抜け方向での位置ずれを阻止できることになる。
【0034】
次に、第2の発明(挿管チューブの口腔内位置固定方法)について、上述した第1の発明の作用・効果とともに以下に説明すれば、第2の発明は、上述したいずれかの口腔内位置固定手段付き挿管チューブ11を用いて行われる。
【0035】
すなわち、挿管チューブ12としては、
図2〜
図5として例示するような口腔内位置固定手段付き挿管チューブ11が用いられ、
図1に示す患者50への気管内挿入時には、位置決め用弾性体23の基端23a側を患者50の図示しない歯列裏側に当接支持させることで、抜け方向での位置ずれを阻止して位置固定することができることになる。
【0036】
つまり、本発明によれば、位置固定手段22は、挿管チューブ12におけるチューブ本体13の先端13b側を患者50の気管51内の所定位置へと挿入した際の口腔52内に位置する部位の周面15を覆って大径化させる位置決め用弾性体23と、該位置決め用弾性体23をチューブ本体13の周面15側に付着させる接合層24とで形成されているので、該接合層24を介してチューブ本体13の最適位置に位置決め用弾性体23を簡単に装着したり、その後の位置変更も容易に行うことができるほか、チューブ本体13の気管内挿入時に位置決め用弾性体23の基端23a側を患者50の歯列裏側に簡単に当接支持させるという簡単な処置でチューブ本体13の抜け方向での不本意な位置ずれを確実に阻止して挿管チューブ12側を位置固定することができることになる。
【0037】
このため、患者50がアレルギー体質であったり、顔面に熱傷を受けていたりして皮膚が脆弱になっている場合であっても、従来手法のような気管内挿入したチューブ本体のうち患者の口から出ている部位に粘着テープ等の止着テープを巻き付けて左右に引き出されている該止着テープの両開放端部側を顔面表皮等に貼り付けるという煩雑で細心の注意を要する固定作業をなくすことができるので、皮膚障害を与えるおそれをなくして安心、かつ、容易に位置固定することができることになる。また、チューブ本体13は、頬部や上顎部・下顎部の体表面側に固定する従来手法による場合は 同部位への手術操作は行い難かったが、従来手法とは異なり患者50の歯列裏側に位置決め用弾性体23の基端23a側を当接支持させた状態のもとで口腔52内で位置固定することができることから、頬部や上顎部・下顎部の体表面側に対する手術への影響をそれだけ低減して医療的な処置をより弾力的に行うことができることになる。
【0038】
本発明において
図2に示す伸縮性積層体25を例1としての位置決め用弾性体23として用いる場合には、市販品である伸縮テープ材26から切断した伸縮テープ片26aを単に重ね合わせることで例1の位置決め用弾性体23を形成することができるので、製品コストの低減化に寄与させることができるほか、最下層に位置する粘着層27を接合層24として用いることで簡単に挿管チューブ12側に装着することができる。
【0039】
また、本発明において
図3に示すように伸縮テープ材26をチューブ本体13の周面15に複数回巻き付けて例2としての位置決め用弾性体23を形成する場合は、市販品である伸縮テープ材26をそのまま利用することができるので、製品コストの低減化により効果的に寄与させることができるほか、最下層に位置する粘着層27を接合層24として用いることでその装着作業の効率化を図ることもできる。
【0040】
さらに、本発明において
図4に示すようにチューブ本体13の周面15の長さ方向に各別に配列される角柱状エラストマー片35を例3としての位置決め用弾性体23として用いる場合には、一体成形品を用いることなく、個々の角柱状エラストマー片35を構成素材として用いることでコスト低減に有効に寄与させることができる。
【0041】
さらにまた、本発明において
図5に示すようにチューブ本体13の周面15に接する内径の中空部37aを有する筒状エラストマー体を二つ割りしてなる一側エラストマー部と他側エラストマー部とを位置決め用弾性体として用いる場合には、チューブ本体の周面に両方向から単に挟むようにして簡単に挟着させることができるほか、装着後の位置変更もより簡単に行うことができる。
【符号の説明】
【0042】
11 口腔内位置固定手段付き挿管チューブ
12 挿管チューブ
13 チューブ本体
13a 基端
13b 先端
14 通気路
15 周面
22 位置固定手段
23 位置決め用弾性体
23a 基端
24 接合層
25 伸縮性積層体
25a 一側端面
25b 他側端面
26 伸縮テープ材
26a 伸縮テープ片
27 粘着層
35 角柱状エラストマー片
37 筒状エラストマー体
37a 中空部
38 一側エラストマー部
39 他側エラストマー部
50 患者
51 気管
52 口腔