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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-121459(P2021-121459A)
(43)【公開日】2021年8月26日
(54)【発明の名称】加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24C 1/10 20060101AFI20210730BHJP
   B24C 1/04 20060101ALI20210730BHJP
   B24C 1/06 20060101ALI20210730BHJP
   B24C 1/00 20060101ALI20210730BHJP
   B24C 5/02 20060101ALI20210730BHJP
   B24C 9/00 20060101ALN20210730BHJP
【FI】
   B24C1/10 C
   B24C1/04 B
   B24C1/06
   B24C1/00 Z
   B24C1/04 E
   B24C5/02 C
   B24C9/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-15080(P2020-15080)
(22)【出願日】2020年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000154129
【氏名又は名称】株式会社不二製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123881
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100080931
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100134625
【弁理士】
【氏名又は名称】大沼 加寿子
(74)【代理人】
【識別番号】100085280
【弁理士】
【氏名又は名称】高宗 寛暁
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 恵二
(72)【発明者】
【氏名】山下 晃実
(57)【要約】
【課題】被加工物が備える小径の孔の内壁に対して、投射材の投射による加工を効率よく行う。
【解決手段】孔11を有する被加工物10に対し、孔11の深さ方向にほぼ平行な向きでノズル21からメディア50を投射することにより、被加工物10における孔11の内壁11aを加工する。孔11の、ノズル21側の入口近傍において、ノズル21から見て孔11の入口と同じ距離あるいはより近い位置に障害物が無いように被加工物10を配置した状態で、メディア50の投射を行う。また、孔11のノズル21側の入口近傍において、被加工物10を薄肉としたり、孔11のノズル21の入口の周囲において、被加工物10に、ノズル21側から遠ざかる向きのテーパ面を形成したりしてもよい。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔を有する被加工物に対し、前記孔の深さ方向にほぼ平行な向きで粒体を投射することにより、前記被加工物における前記孔の内壁を加工する加工方法であって、
前記孔の、前記粒体を投射する投射部側の入口近傍において、前記投射部から見て前記孔の入口と同じ距離あるいはより近い位置に障害物が無いように前記被加工物を配置した状態で、前記粒体の投射を行うことを特徴とする加工方法。
【請求項2】
孔を有する被加工物に対し、前記孔の深さ方向にほぼ平行な向きで粒体を投射することにより、前記被加工物における前記孔の内壁を加工する加工方法であって、
前記孔の、前記粒体を投射する投射部側の入口近傍において、前記被加工物が薄肉であることを特徴とする加工方法。
【請求項3】
孔を有する被加工物に対し、前記孔の深さ方向にほぼ平行な向きで粒体を投射することにより、前記被加工物における前記孔の内壁を加工する加工方法であって、
前記孔の、前記粒体を投射する投射部側の入口の周囲において、前記被加工物に、前記投射部側から遠ざかる向きのテーパ面が形成されていることを特徴とする加工方法。
【請求項4】
孔を有する被加工物に対し、前記孔の深さ方向にほぼ平行な向きで粒体を投射することにより、前記被加工物における前記孔の内壁を加工する加工方法であって、
前記被加工物の、前記粒体を投射する投射部側に、前記被加工物の孔の入口とほぼ同サイズの孔を有する被覆材を、前記被加工物の孔の位置と前記被覆材の孔の位置とが揃うように、かつ、前記被覆材の孔の、前記粒体を投射する投射部側の入口近傍において、前記投射部から見て該被覆材の孔の入口と同じ距離あるいはより近い位置に障害物が無いように配置した状態で、前記粒体の投射を行うことを特徴とする加工方法。
【請求項5】
孔を有する被加工物に対し、前記孔の深さ方向にほぼ平行な向きで粒体を投射することにより、前記被加工物における前記孔の内壁を加工する加工方法であって、
前記被加工物の、前記粒体を投射する投射部側に、前記被加工物の孔の入口とほぼ同サイズの孔を有し、該孔の前記投射部側の入口近傍が薄肉である被覆材を、前記被加工物の孔の位置と前記被覆材の孔の位置とが揃うように配置した状態で、前記粒体の投射を行うことを特徴とする加工方法。
【請求項6】
孔を有する被加工物に対し、前記孔の深さ方向にほぼ平行な向きで粒体を投射することにより、前記被加工物における前記孔の内壁を加工する加工方法であって、
前記被加工物の、前記粒体を投射する投射部側に、前記被加工物の孔の入口とほぼ同サイズの孔を有し、該孔の前記投射部側の入口の周囲において前記投射部側から遠ざかる向きのテーパ面が形成されている被覆材を、前記被加工物の孔の位置と前記被覆材の孔の位置とが揃うように配置した状態で、前記粒体の投射を行うことを特徴とする加工方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の加工方法であって、
前記粒体は、前記被加工物よりも硬度が高いことを特徴とする加工方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の加工方法であって、
前記粒体の投射により、前記被加工物の孔の内壁を研磨する際に該内壁に付着した砥粒を除去することを特徴とする加工方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の加工方法であって、
前記粒体の投射により、前記被加工物の孔の内壁にディンプルを形成することを特徴とする加工方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の加工方法であって、
前記粒体を、前記被加工物から離れた位置から、前記被加工物に向けて投射することを特徴とする加工方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の加工方法であって、
前記被加工物の孔の径が、前記投射部において前記粒体を投射する開口部の径よりも小さいことを特徴とする加工方法。
【請求項12】
請求項10に記載の加工方法であって、
複数の前記被加工物を、前記孔の深さ方向に対して垂直な配列面上に配列し、前記投射部を、前記配列面に平行に前記各被加工物が配置されている領域内で移動させながら、複数の前記被加工物の孔の内壁を順次加工することを特徴とする加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被加工物に対して粒体を投射することにより当該被加工物を加工する加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、無数の投射材(「ショット」あるいは「メディア」と呼ばれる。本明細書では「メディア」と呼ぶ)を、金属等の被加工物の表面に向けて高速かつ連続的に発射して被加工物の表面に衝突させることで、当該表面の改質を図る加工技術が知られており、ショットブラストと呼ばれている。改質の目的は様々であるが、例えば、球状の投射材を用いることにより、金属の表面を圧縮塑性変形させて圧縮残留応力を与える加工法は、特にショットピーニングとして知られている。
【0003】
例えば特許文献1〜7に見られるように、ショットブラストあるいはショットピーニングにおいては、被加工物や加工目的に応じて、投射材の材質、サイズ、投射強度、投射位置等に関して種々の提案がなされている。
特許文献1においては、鉄鋼材料の耐摩耗性及び疲労強度の向上、特許文献2においては、硬脆性材料表面へのディンプル形成、特許文献3においては、被加工物の真円度向上、特許文献4においては、微細孔を有する被加工物におけるバリ取り等を微細孔を目詰まりさせずに行うこと、が目的として掲げられている。また、特許文献5は、穴の内壁面に対する効率的なショットピーニング加工を目的とした装置について記載され、特許文献6及び7は、特定の機械部品に対してショットピーニングにより所望の加工を行う技術について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−199843号公報
【特許文献2】特開2019−25584号公報
【特許文献3】特開2010−116931号公報
【特許文献4】特許第5876690号公報
【特許文献5】特開2000−227119号公報
【特許文献6】特開2000−343429号公報
【特許文献7】特開平2−120506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的なショットブラスト及びショットピーニングは、被加工物の外周面に対してなされることが多い。特許文献4においても、主な加工対象は、微細孔の内部ではなく微細孔の開口縁に生じているバリやドロス等である。
特許文献3及び5では、孔の内部の広範囲な加工が想定されているが、いずれも、投射材の投射口を備えるノズルが進入できる程度のサイズの孔に対する加工である。特許文献6及び7でも、当該ノズルと同程度か、より大きい径の孔に対する加工で、かつ、孔内の特定の領域に対してのみ行う加工が想定されている。
そして、これらの従来の手法では、被加工物における、投射材の投射口を備えるノズルが進入できない程度の小径の孔の内壁に対して、投射材の投射による加工を効率よく行うことは難しかった。
【0006】
この発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、被加工物が備える小径の孔の内壁に対して、投射材の投射による加工を効率よく行う方法を提案するものである。なお、この発明の方法の適用対象は、特定の径の孔に限定されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の加工方法は、孔を有する被加工物に対し、上記孔の深さ方向にほぼ平行な向きで粒体を投射することにより、上記被加工物における上記孔の内壁を加工する加工方法である。
そして、上記孔の、上記粒体を投射する投射部側の入口近傍において、上記投射部から見て上記孔の入口と同じ距離あるいはより近い位置に障害物が無いように上記被加工物を配置した状態で、上記粒体の投射を行う。
【0008】
あるいは、上記孔の、上記粒体を投射する投射部側の入口近傍において、上記被加工物が薄肉である。
あるいは、上記孔の、上記粒体を投射する投射部側の入口の周囲において、上記被加工物に、上記投射部側から遠ざかる向きのテーパ面が形成されている。
あるいは、上記被加工物の、上記粒体を投射する投射部側に、上記被加工物の孔の入口とほぼ同サイズの孔を有する被覆材を、上記被加工物の孔の位置と上記被覆材の孔の位置とが揃うように、かつ、上記被覆材の孔の、上記粒体を投射する投射部側の入口近傍において、上記投射部から見て該被覆材の孔の入口と同じ距離あるいはより近い位置に障害物が無いように配置した状態で、上記粒体の投射を行う。
【0009】
あるいは、上記被加工物の、上記粒体を投射する投射部側に、上記被加工物の孔の入口とほぼ同サイズの孔を有し、該孔の上記投射部側の入口近傍が薄肉である被覆材を、上記被加工物の孔の位置と上記被覆材の孔の位置とが揃うように配置した状態で、上記粒体の投射を行う。
あるいは、上記被加工物の、上記粒体を投射する投射部側に、上記被加工物の孔の入口とほぼ同サイズの孔を有し、該孔の上記投射部側の入口の周囲において上記投射部側から遠ざかる向きのテーパ面が形成されている被覆材を、上記被加工物の孔の位置と上記被覆材の孔の位置とが揃うように配置した状態で、上記粒体の投射を行う。
【0010】
上記の各加工方法において、上記粒体は、上記被加工物よりも硬度が高いとよい。
さらに、上記粒体の投射により、上記被加工物の孔の内壁を研磨する際に該内壁に付着した砥粒を除去するとよい。
さらに、上記粒体の投射により、上記被加工物の孔の内壁にディンプルを形成するとよい。
また、上記粒体を、上記被加工物から離れた位置から 、上記被加工物に向けて投射するとよい。
【0011】
また、上記被加工物の孔の径が、上記投射部において上記粒体を投射する開口部の径よりも小さいとよい。
また、複数の上記被加工物を、上記孔の深さ方向に対して垂直な配列面上に配列し、上記投射部を、上記配列面に平行に上記各被加工物が配置されている領域内で移動させながら、複数の上記被加工物の孔の内壁を順次加工するとよい。
【0012】
また、以上説明した各発明は、その説明した態様のみならず、装置、システム、方法、プログラム、プログラムを記録した記録媒体等、任意の態様で実施することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のような本発明によれば、被加工物が備える小径の孔の内壁に対して、投射材の投射による加工を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】この発明の第1実施形態による加工方法を実施するための装置の一例である、ショットピーニング装置の概略構成を、被加工物の構成及び配置と共に示す図である。
図2】上記加工方法の効果について説明するための、メディアの挙動を模式的に示す図である。
図3】比較例について説明するための、図2と対応する図である。
図4】上記加工方法による砥粒除去について説明するための図である。
図5】加工前後の被加工物の状態を示す、電子顕微鏡写真である。(a)が加工前の状態を、(b)が加工後の状態を示す。
図6】加工前の被加工物の孔の内壁の状態を示す拡大写真である。
図7】加工前の被加工物の孔の内壁の断面曲線の測定結果を示すグラフである。
図8】加工後の被加工物の孔の内壁の状態を示す、図6と対応する拡大写真であり、(a)は薄肉部側からメディアを投射して加工した場合の例、(b)は厚肉部側からメディアを投射して加工した場合の例である。
図9】加工後の被加工物の孔の内壁の断面曲線の測定結果を示す、図7と対応するグラフであり、(a)は薄肉部側からメディアを投射して加工した場合の例、(b)は厚肉部側からメディアを投射して加工した場合の例である。
図10】この発明の第2実施形態の加工方法について説明するための図である。
図11】この発明の第3実施形態の加工方法について説明するための図である。
図12】第3実施形態の効果について説明するための、図2と対応する図である。
図13】被加工物の形状の別の例を示す図である。
図14】被覆材の形状の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、この発明の第1実施形態による加工方法を実施するための装置の一例について、図1を用いて説明する。図1は、そのショットピーニング装置の概略構成を、被加工物の構成及び配置と共に示す図である。
図1に示すショットピーニング装置は、メディア投射機20、メディア回収機30及び分離再生装置40を備える。
【0016】
これらのうちメディア投射機20は、ノズル21及びストッカー22を備え、ストッカーに格納されたメディア(投射材)50を、ノズル21から投射する装置である。投射の方式は、例えば圧縮気体(空気、アルゴン、窒素等)と共にメディア50の噴射を行う既知の方式でよい。その他の方式も、適宜に採用可能である。
【0017】
メディア50としては、例えばメディアン粒径(d50)が1〜20μm程度の略球状の金属粒体を用いることが考えられる。しかし、サイズ、形状、材質とも、これに限られない。サイズは、被加工物10のうち、加工したい内壁11aを含む孔11の径よりも十分小さければよい。材質は、セラミクス、ガラス、プラスチック等でもよい。形状も、回転楕円体や、角のある形状、ランダム形状等、任意で構わない。いずれの観点でも、加工の目的に適したものを任意に選べばよい。
【0018】
使用するメディアによっては、加工の名称として「ショットピーニング」ではなく「ショットブラスト」等、他の名称が用いられることもある。しかし、実施形態の説明においては、使用するメディアの種類によらず、被加工物に対して粒体を投射することにより当該被加工物を加工する加工方法を、「ショットピーニング」と呼ぶことにする。加工方法がどのような名称で呼ばれるものであるかは、本発明において本質的な点ではない。
【0019】
次に、メディア回収機30は、メディア投射機20により投射されたメディア50を、被加工物10に当たったものも、そうでないものも含めて、回収する装置である。回収の方式は、例えば、吸気により開口部からメディア50を吸い込む既知の方式でよい。その他の方式も、適宜に採用可能である。
【0020】
分離再生装置40は、メディア回収機30が回収したメディア50を、再利用できるように再生してストッカー22に供給する装置である。再利用のための処理としては、例えばサイクロン方式によりメディア50と破片や塵等とを分離することが考えられる。
なお、メディア50の再利用は必須ではない。使用するメディアの種類によっては、再利用が難しい場合もあり、その際には、分離再生装置40を設けず、新しいメディア50を随時ストッカー22へ補充すればよい。
【0021】
以上説明したショットピーニング装置は、ハードウェアとしては、従来知られているものと同じで構わない。この実施形態の加工方法は、被加工物10の構造及び/又は配置に一つの特徴を有する。
【0022】
この実施形態では、ショットピーニングにより、孔11を有する被加工物10における、孔11の内壁11aを加工する。
図1に示す被加工物10は、径の異なる円柱を中心軸を揃えて2つ重ね合わせた形状であり、孔11は、当該2つの円柱を、その中心軸に沿って貫通している。径の小さい方の円柱は、孔11とほぼ同じ径であり、孔11の周囲に薄肉部12を形成している。径の大きい方の円柱は、孔11に比べて十分に大きい径であり、孔11の周囲に厚肉部13を形成している。図1では、被加工物10の、中心軸を含む面での断面を示している。このような形状は、鋳造やプレスなど、任意の方法で加工することができる。また、被加工物10の材質も、金属、セラミクス、樹脂など、任意である。
【0023】
この実施形態の一つの特徴は、被加工物10に対するメディアの投射を、被加工物10に対し、孔11の深さ方向(図で横方向)に略平行な向きで、薄肉部12側から行う点である。このことにより、ノズル21から投射されるメディア50が、孔11の内壁11aに、内壁11aに略平行な角度から衝突し、その衝突により、内壁11aを加工することができる。
【0024】
メディア50は、投射の方式にもよるが、ノズル21の開口部21aから投射される際に、急激に進行可能方向が広がることから投射の中心軸に対してやや拡散された範囲に投射される。従って、投射の中心軸と孔11の内壁11aとが完全に平行であっても、一定程度のメディア50は、孔11を通過する前に内壁11aに衝突する。ノズル21を孔11の入口から若干離れた位置に置けば、メディア50は孔11の入口に達するまでには十分拡散し、孔11の入口付近の内壁11aにも、問題なく衝突させることができる。
【0025】
なお、孔11の径が小さい場合、ノズル21の、メディア50を投射する開口部21aよりも孔11の方が径が小さい場合もあるが、この点は問題とならない。孔11は、投射に用いる気体の乱流や、投射後に受ける空気抵抗等も考慮して、メディア50が孔11を通り抜けられる程度のサイズを有していればよい。
【0026】
また、開口部21aのサイズによらず、メディア50の一部(場合によっては大半)は、孔11に入らず、被加工物10の外表面に衝突するが、内壁11aの加工という点では、図3を用いて説明する点を除き、この点も問題とならない。被加工物10の外表面がメディア50の衝突により加工されてしまうことが望ましくない場合には、適宜な被覆材を設けて、加工せずに残したい個所を覆えばよい。ただし、図2及び図3を用いて説明する点を踏まえ、孔11に入るメディア50の進行を妨害しないようにする点を、留意する必要がある。
【0027】
次に、図2及び図3を用いて、第1実施形態の加工方法の効果について説明する。
図2は、図1に示したように薄肉部12側から被加工物10に対してメディア50を投射した場合のメディアの挙動を模式的に示す図である。図3は、比較例として、厚肉部13側から投射した場合のメディアの挙動を模式的に示す図である。図2及び図3でも、被加工物10は、中心軸を含む面での断面を示している。
【0028】
被加工物10に向けて投射されるメディア50のうち、孔11の内壁11aの加工に寄与するメディア50は、孔11の位置に向かって進み、孔11の内部に進入する粒子のみである(より正確には、それらのうち内壁11aに衝突するメディアである)。一方、上述のように、メディア50は、孔11の周囲(外部)の表面にも、多数衝突する。
【0029】
このとき、メディア50が容易に塑性変形したり破砕されたりしない材質(例えば実質的な剛体や、弾性体)であれば、衝突した粒子は、衝突した表面にて反射される。この反射は、傾向としては、入射角と同じ反射角を持つ正反射に近い形で行われる。しかし、メディア50が球形でない場合にはもちろん、基本的には球形である場合でも、粒子の表面形状は完全に一様ではないし、投射時に各粒子に回転がかかっている場合もあり、一部の粒子は、正反射の反射角とかなり異なる向きにも反射する。
【0030】
そうすると、図3に示すように、メディア50を厚肉部13側から投射すると、符号Fで示すように孔11の入口の周囲の表面で反射された粒子の一部が、孔11の位置に向かって進む粒子の軌道に向かって反射される。そうすると、粒子同士が衝突することにより、孔11の位置に向かって進む粒子の進路が妨害され、メディア50が孔11の内部に進入しづらくなってしまう。このため、ショットピーニングによる内壁11aの加工は、全くできないわけではないが、非常に効率の悪いものになってしまう。
【0031】
一方、図2に示すように、メディア50を薄肉部12側から投射すると、孔11の入口の周囲には、メディア50の粒子を反射する表面がほとんどない。このため、メディア50のうち孔11の位置に向かって進む粒子は、その進路を妨害されることなく、孔11に進入し、内壁11aの加工に寄与することができる。従って、ショットピーニングによる内壁11aの加工を、効率よく行うことができる。
メディア50の粒子は、薄肉部12と厚肉部13との境界の、肩の部分では、符号Eで示すように反射されるが、中心軸側に反射された粒子も、薄肉部12の外壁に当たって外側へはじき出され、孔11の位置に向かって進む粒子や、既に孔11に入った粒子の進路を妨げることはない。
【0032】
薄肉部12の、孔11の深さ方向のサイズは、薄肉部12の外壁により、孔11の位置に向かって進む粒子の進行を妨げる角度で反射された粒子を有意に排除できる程度であればよい。完全に排除できなかったとしても、排除の度合いに応じて加工の効率化を実現できる。
【0033】
次に、第1実施形態のショットピーニングの用途例と共に、実際の加工例について、図4乃至図9を用いて説明する。
図4は、第1実施形態のショットピーニングの用途の一例である、砥粒除去について説明するための図である。
被加工物10のように孔11を有する部材において、孔11の内壁11aに形成されたバリ等を除去し、内壁11aを概ね平坦化しようとする場合、ワイヤ研磨を行うことが考えられる。
【0034】
例えば、孔11に、孔11とほぼ同じ径のワイヤ70を通し、ダイヤモンド等による砥粒80を含むスラリーを介して、ワイヤ70を内壁11aに対して摺動させることにより、図4(a)に示すように、内壁11aを、圧力Pを加えつつ砥粒80により研磨することができ、内壁11aから大きな凹凸を除去することができる。
しかし、ダイヤモンドのように脆性を有する砥粒80を用いると、研磨時に砥粒80が砕け、図4(b)に示すように、その破片81が内壁11aにめり込んだ状態で残ってしまうことがある。
【0035】
第1実施形態のショットピーニングは、この破片81を除去する用途の加工に用いることができる。なお、この用途では、被加工物10(のうち加工対象の内壁11a)よりも硬度が高く、砥粒80(の破片81)よりも硬度が低いメディア50を用いることが好ましい。また、被加工物10は、金属など弾性変形又は塑性変形が可能な材質であることが好ましい。
【0036】
図4(c)に示すように、このようなメディア50を内壁11aとほぼ平行な角度から(孔11の深さ方向にほぼ平行な向きから)内壁11aに衝突させると、メディア50は内壁11aに反射された後孔11の外へ飛び出すが、その際、衝突した位置の内壁11aをわずかに変形させる。このとき、破片81のある位置に衝突したメディア50は、内壁11aから破片81を掻き出すと共に、破片81に対し、メディア50の進行方向へ向かう運動エネルギーを与える働きをする。また、内壁11aよりもメディア50の方が硬度が高ければ、内壁11aへの衝突時にメディア50はほぼ変形しない。
【0037】
このため、図4(d)に示すように、メディア50の衝突により内壁11aから破片81を取り除くことができる。同時に、被加工物10が塑性変形可能な材質であれば、内壁11aには塑性変形により多数のディンプル(穴状の凹凸)が形成される。このディンプルは、例えば、凹凸内部に潤滑剤や離型剤等を保持させることにより摺動部の摩擦抵抗の低減や離型性の向上を図るために利用することができる。すなわち、ディンプルを形成することにより、被加工物10の孔11に、このような機能を持たせることができる。
なお、比較的滑らかな面によるディンプルを形成するためには、メディア50がほぼ球状等の滑らかな表面を持つ形状であるとよいが、破片81の除去ができればよいのであれば、メディア50の形状がこれに限られることはない。
【0038】
このような砥粒除去のためのショットピーニング加工は、例えば、内径0.1〜6mmの孔11を有し、長さが内径の0.1倍以上である被加工物10に対し、メディアン粒径(d50)が1〜20μmの略球状の粒子によるメディア50を、孔11の入口から5〜100mmの距離から、0.05〜0.6MPa(メガパスカル)の噴射圧力により投射して行うことができる。このときに形成されるディンプルのサイズは、サブミクロンオーダーである。ここに示した数値は一例に過ぎず、本発明はこれらの数値範囲に限定されるものではない。
【0039】
図5に、砥粒除去のためのショットピーニング加工の前後の、被加工物10の内壁の電子顕微鏡写真を示す。ここに示すサンプルは、内径略3mmの孔11を有し、薄肉部12の外径が略5mm、高さが略4mmであり、厚肉部13の外径が略10mm、高さが略4mmである被加工物10である。
この被加工物10の孔11の内壁11aに対し、ダイヤモンドの砥粒を用いてワイヤ研磨を施した後の、ショットピーニング加工前の状態を(a)、ショットピーニング加工後の状態を(b)に示す。
各サンプルは、中心軸を含む面で切断し、孔11の内壁11aの状態を、電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製の、走査電子顕微鏡S−4800)にて、倍率1000倍で撮影した。
【0040】
図5(a)からわかるように、ワイヤ研磨後の状態では、砥粒80による研磨の跡が、直線状の細かな溝として形成されている。また、白矢印で示すように、砥粒80の破片81も、内壁11aにめり込んだ状態で存在している。
一方、ショットピーニング加工を行うことにより、(b)に示すように、破片81は内壁11aから除去される。また、内壁11aには概ね一様なディンプルが形成され、研磨跡の溝も消失している。
すなわち、ショットピーニングにより、内壁11aに対する破片81の除去とディンプルの形成の加工を同時に行うことができる。
【0041】
次に、図6に、図5と同条件のサンプルの、ショットピーニング加工前の状態の内壁11aの状態を、より低い倍率の写真で示す。図6程度の倍率では砥粒80の破片81は識別できないが、図6からわかるように、ワイヤ研磨を行った内壁11aには、30倍の倍率でも識別可能な程度の、図5(a)で見られたものより粗い研磨跡も形成されている。
【0042】
また、図7に、図5と同じサンプルについて、孔11の軸に平行な向きに測定した断面曲線を示す。中心軸を含む面で切断した被加工物10を、東京精密社製のサーフコム1400Dを用いて測定した結果である。測定条件は、測定規格:JIS-2001、測定長さ:4.0mm、測定倍率:x 20k、カットオフ波長:0.8mm、測定速度:0.3mm/s、である。横軸は、薄肉部12側の端部からの距離である。図7の断面曲線からも、内壁11aには、図5(a)の写真に表れていたような微細な溝と、図6の写真に表れていたような粗い溝とが形成されていることがわかる。
【0043】
次に、図8及び図9にそれぞれ、ショットピーニング加工後のサンプルを、図6と同条件で撮影した写真及び、図7と同条件で測定した断面曲線を示す。図8及び図9のいずれも、(a)が、薄肉部12側からメディア50を投射して加工したサンプルで、(b)が、厚肉部13側からメディア50を投射して加工したサンプルである。図8においては、メディア50の投射方向を白矢印で示している。両サンプルにおいて、メディア50を投射する方向(被加工物10の薄肉部12と厚肉部13のどちらをノズル21に対向させて加工を行ったか)以外の加工条件は、同一である。
【0044】
図8(a)からわかるように、薄肉部12側からメディア50を投射した場合、孔11の概ね全長に亘って、内壁11aにディンプルが形成され、研磨跡は消失していることがわかる。この状態では、砥粒80の破片81も十分に除去できていると考えられる。
一方、図8(b)からわかるように、厚肉部13側からメディア50を投射した場合、孔11の入口付近にはディンプルが形成され、研磨跡が消失しているものの、半分弱の深さまでしか加工ができておらず、薄肉部12側の出口付近では、研磨跡が加工前と概ね同じ状態で残っている。すなわち、ショットピーニング加工は、(a)の場合と比べ、ごく限られた範囲でしかできていない。
【0045】
厚肉部13側からメディア50を投射した場合でも、より時間をかけることにより、ある程度はディンプル形成の度合いを増すことができるが、薄肉部12側からメディア50を投射した場合に比べ、加工の効率は悪いと言える。
【0046】
この点は、図9の断面曲線からも裏付けられる。図9(a)では、ショットピーニングにより形成されたディンプルに起因して、内壁11aが全域で粗くなっている。一方、図9(b)では、厚肉部13側の端部(グラフの右側)では、図9(a)と同様に粗くなっているが、薄肉部12側の、符号Mで示す範囲は、図7に示した未加工の状態と同様な波形であり、適切に加工できていないことがわかる。
また、この点は、加工前後の内壁11aの表面粗さの測定結果からも裏付けられる。薄肉部12側からメディア50を投射した場合には、厚肉部13側からメディア50を投射した場合よりも、加工後の表面粗さRzの値が有意に大きく、前者の方が効率よくディンプルを形成できると言える。
【0047】
なお、図8(a)の写真において、厚肉部13側の出口付近では研磨跡がわずかに残っている。これは、孔の深い位置においては、浅い位置に比べ、より小さな角度でメディア50が内壁11aに衝突するため、単位面積あたりに衝突するメディア50の粒子が少なく、効率のよい加工ができないためである。従って、孔11の内径に比べて全長が長い場合、孔11の両側から順次メディア50を投射して加工することが好ましい。
両側から加工する場合、厚肉部13側からも投射せざるを得ない場合もあるが、この場合でも、第3実施形態で説明するような被覆材を用いれば、効率のよい加工が可能である。
【0048】
次に、図10を用いて、この発明の第2実施形態による加工方法について説明する。
上述した第1実施形態の加工方法では、ノズル21の開口部21aと被加工物10の孔11とを精密に位置合わせしなくても、孔11が概ねメディア50の投射範囲に入っていれば、内壁11aの加工が可能である。第2実施形態は、この点を利用して複数の被加工物10を効率よく加工する方法である。ショットピーニング装置及び被加工物10の構造は、ノズル21が移動可能である点を除けば第1実施形態の場合と同様であり、第1実施形態と共通の又は対応する箇所には、同じ符号を用いる。
【0049】
第2実施形態では、図10に示すように、複数の被加工物10を、プレート100上に配列した状態で加工を行う。プレート100には、各被加工物10の配置位置に、被加工物10の位置決めをし、メディア50が当たった際にも移動しないように保持する保持部101と、孔11を通過したメディア50を逃がすための透孔102とを設けるとよい。
この状態で、ノズル21から連続的にメディア50を投射させながら、プレート100上の被加工物10を配列した領域内に、矢印Gで示すようにノズル21を移動させる。このとき、ノズル21は、開口部21aからのメディア50の投射方向が、孔11の深さ方向と一致するように向きを固定し、プレート100上の、被加工物10の配列面と平行に移動させるとよい。
【0050】
このことにより、各被加工物10に対して順次、メディア50を、孔11の深さ方向にほぼ平行な向きで薄肉部12側から投射して、第1実施形態の場合と同様な効率のよいショットピーニング加工を行うことができる。そして、ノズル21と各被加工物10との精密な位置合わせが不要であるので、メディア投射機20の駆動機構及び制御を単純化することができる。
なお、図10では、被加工物10を一次元的に配列した状態を示しているが、二次元的に配列してもよいことはもちろんである。また、上記のようなノズル21の移動は、適当な駆動部を、電子回路により、あるいはソフトウェアを実行するプロセッサにより制御することにより、実現できる。また、メディア50の投射は、ノズル21が概ね孔11と対向する位置に来る期間のみ行い、その他の期間には投射を停止するようにしてもよい。
【0051】
次に、図11及び図12を用いて、この発明の第3実施形態による加工方法について説明する。図11は、第3実施形態における加工時の被加工物10及び被覆材210の配置を示す図である。図12は、第3実施形態の効果について説明するための、図2と対応する図である。
【0052】
第3実施形態は、孔11の入口付近において、被加工物10自体を薄肉にするのが難しい場合に、被覆材210を用いることにより、第1実施形態の場合と同様な、効率のよい加工を実現するものである。第3実施形態においても、ショットピーニング装置及び被加工物10の構造は、第1実施形態の場合と同様であり、第1実施形態と共通の又は対応する箇所には、同じ符号を用いる。
【0053】
図11に示すように、被覆材210は、被加工物10の孔11と同じ径の孔211を有し、孔211の一方の端部は薄肉部212に、他方の端部は厚肉部213になっている。そして、ショットピーニング加工を行う際に、被覆材210の厚肉部213を、被加工物10の厚肉部13の底面15と対向させて孔211と孔11との位置を揃え、それらがあたかも連続した孔となるようにする。そして、メディア50を、薄肉部212側から、孔211の深さ方向に略平行な向きで投射する。
【0054】
このことにより、図12に示すように、孔211の入口の周囲に、メディア50の粒子を反射する表面がほとんどない状態とすることができるので、第1実施形態で図2を用いて説明した場合と同様、ショットピーニングによる内壁11aの加工を、効率よく行うことができる。被覆材210を用いれば、被加工物10の形状によらず、この効果を得ることができる。
【0055】
ただし、被覆材210の、孔211の深さ方向の長さ分だけ、加工が必要な内壁11aが、孔211の入口から遠ざかってしまう。このため、被覆材210の、孔211の深さ方向のサイズは、薄肉部212の外壁により、孔211の位置に向かって進む粒子の進行を妨げる角度で反射された粒子を十分排除できる限りにおいて、なるべく薄いことが好ましい。
【0056】
なお、図11の例では、薄肉部212及び厚肉部213の外径は、被加工物10の薄肉部12及び厚肉部13の外径とほぼ等しくしている。しかし、このようにすることは必須ではない。孔211の周囲からメディア50の粒子が反射されないようにするという観点からは、薄肉部212の厚さは、必要な強度を保てる範囲であれば薄いほどよい。また、厚肉部213は、被加工物10よりも大径でも小径でもよいし、設けなくてもよい。すなわち、被覆材210が、薄肉部212のみの筒状であってもよい。
【0057】
また、被覆材210と被加工物10とは、密着していても、間に若干の間隙があってもよい。孔211の径と孔11の径は、若干異なっていても、同様な効果が得られる。しかし、孔211の方が径が小さい場合、孔211の内部に進入するメディア50が減ってしまうし、進入角度も限られる。また、孔211の方が径が大きい場合、孔11の入口の周囲に、メディア50を反射する面が若干残ってしまう。従って、孔211の径と孔11の径は、同サイズであるか、差があっても小さいことが好ましい。
【0058】
次に、図13及び図14を用いて、以上説明してきた実施形態の変形例について説明する。
図13は、第1実施形態の場合と同様に効率の良い加工が可能な被加工物の他の例を示す図である。図14は、図13の構成と対応する被覆材の例を示す図である。
第1実施形態では、メディア50の投射側(ノズル21側)の孔11の入口付近において被加工物10を薄肉とすることにより、メディア50の粒子が孔11に進入する粒子の進路を妨害するような向きへ反射されることを防止した。
【0059】
これと同様な効果は、図13に示すように、ノズル21側の孔311の入口の周囲において、被加工物310に、ノズル21側から遠ざかる向きのテーパ面314を形成することによっても実現できる。テーパ面314に当たった粒子は、符号Hで示すように概ね外側に向かって反射されるので、孔11に進入する粒子の進路を妨害するような方向へはほとんど反射されないためである。
【0060】
テーパ面の角度が急であるほど(面の向きがノズル21側から遠ざかる向きに近いほど)、この効果は顕著である。
同様な効果は、図14に示すように、第3実施形態の被覆材210に代えて、孔321の周囲に被加工物310のテーパ面314と同様なテーパ面324を有する被覆材320を用いても、得ることができる。
【0061】
なお、上述した実施形態及び変形例において、薄肉部12やテーパ面314は、メディア50の粒子が、孔11付近の被加工物10の表面により、孔11に進入する粒子の進路を妨害するような向きへ反射されることを防止するための構造の一例に過ぎない。
これらと異なる構造であっても、孔11のノズル21側の入口近傍において、ノズル21から見て孔11の入口と同じ距離あるいはより近い位置に障害物が無いように被加工物10を形成し及び/又は配置した状態で、メディア50の投射を行えば、同様な効果を得ることができる。被覆材を用いる場合には、「被覆材の孔の入口と同じ距離あるいはより近い位置に障害物が無いように」である。
【0062】
孔11のノズル21側の入口近傍において、ノズル21から見て孔11の入口と同じ距離あるいはより近い位置に、メディア50の粒子を反射するような障害物があると、その障害物により、孔11に進入する粒子の進路を妨害するような向きへ反射されるのであり、このような障害物がない状態でメディア50の投射を行うことが有用である。
図3に示した厚肉部13のノズル21側の面は、ノズル21から見て孔11の入口と同じ距離にある障害物の一例である。また、図13の場合と逆に、ノズル21側に近づく向きのテーパ面が形成されていたとすると、当該テーパ面は、孔11の入口より近い位置にある障害物の一例である。なお、図2に示した薄肉部12のノズル21側の面は、メディア50の粒子を反射する面積が小さいため、実質的には障害物ではないとみなすことができる。
【0063】
以上で実施形態及び変形例の説明を終了するが、この発明において、装置の具体的な構成、具体的な動作の手順、各部の具体的な形状、材質、サイズ等は、実施形態で説明したものに限るものではない。ショットピーニングによる加工の用途も、砥粒の除去やディンプルの形成に限られない。
また、以上の説明してきた各実施形態及び変形例の特徴は、矛盾しない範囲で組み合わせて用いることが可能である。また、一部の特徴のみ取り出して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0064】
10,310…被加工物、11,311…孔、11a…内壁、12…薄肉部、13…厚肉部、20…メディア投射機、21…ノズル、21a…開口部、22…ストッカー、30…メディア回収機、40…分離再生装置、50…メディア、70…ワイヤ、80…砥粒、81…破片、210,320…被覆材、211,321…孔、314,324…テーパ面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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