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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-12148(P2021-12148A)
(43)【公開日】2021年2月4日
(54)【発明の名称】振動観測システム
(51)【国際特許分類】
   G01H 1/00 20060101AFI20210108BHJP
【FI】
   G01H1/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-127393(P2019-127393)
(22)【出願日】2019年7月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】599105850
【氏名又は名称】株式会社中電シーティーアイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三輪田 吾郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 治
(72)【発明者】
【氏名】永坂 英明
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA05
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC13
(57)【要約】
【課題】通信困難空間内において無線通信を行う振動センサを外部と通信可能にすることである。
【解決手段】第一構造と、第二構造と、前記第一構造と前記第二構造の間に設けられ、外部と無線通信が困難な通信困難空間と、を有する構造物の振動を観測する振動観測システムであって、前記通信困難空間内であって、前記第一構造に付設される第一振動センサと、前記通信困難空間内であって、前記第二構造に付設される第二振動センサと、前記第一振動センサ及び前記第二振動センサと無線通信し、前記第一構造及び前記第二構造の少なくとも一方の前記外部と無線通信が可能な通信可能空間に接続される通信媒体と、を有することを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一構造と、第二構造と、前記第一構造と前記第二構造の間に設けられ、外部と無線通信が困難な通信困難空間と、を有する構造物の振動を観測する振動観測システムであって、
前記通信困難空間内であって、前記第一構造に付設される第一振動センサと、
前記通信困難空間内であって、前記第二構造に付設される第二振動センサと、
前記第一振動センサ及び前記第二振動センサと無線通信し、前記第一構造及び前記第二構造の少なくとも一方の前記外部と無線通信が可能な通信可能空間に接続される通信媒体と、
を有することを特徴とする振動観測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の振動観測システムであって、
前記通信媒体は、
前記通信困難空間内の前記第一振動センサ及び前記第二振動センサの無線通信の信号を送受信可能であって、前記通信困難空間内と前記通信可能空間内を接続する導体と、
前記通信可能空間内に配置され、前記導体と無線通信の信号を送受信可能であり、前記外部と通信可能な外部通信機と、
を備えることを特徴とする振動観測システム。
【請求項3】
請求項1に記載の振動観測システムであって、
前記通信媒体は、
前記通信困難空間内の前記第一振動センサ及び前記第二振動センサの無線通信の信号を送受信可能であって、前記通信困難空間内に設置される内部通信機と、
前記通信可能空間内に配置され、前記外部と通信可能な外部通信機と、
前記内部通信機と前記外部通信機を通信接続する通信接続部材と、
を備えることを特徴とする振動観測システム。
【請求項4】
請求項3に記載の振動観測システムであって、
前記第一構造は、下部構造であり、
前記第二構造は、上部構造であり、
前記通信困難空間は、前記下部構造と前記上部構造の間に設けられた免震空間であり、
前記内部通信機は、前記免震空間内において前記上部構造に設置され、
前記外部通信機は、前記免震空間外において前記上部構造に設置されていることを特徴とする振動観測システム。
【請求項5】
請求項3に記載の振動観測システムであって、
前記第一構造は、下部構造であり、
前記第二構造は、上部構造であり、
前記通信困難空間は、前記下部構造と前記上部構造の間に設けられた免震空間であり、
前記内部通信機は、前記免震空間内において前記下部構造に設置され、
前記外部通信機は、前記免震空間外において前記上部構造に設置されていることを特徴とする振動観測システム。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか1項に記載の振動観測システムであって、
前記外部通信機がEPS室に設置されていることを特徴とする振動観測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動観測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物(例えば建築物)の振動を観測するための振動観測システムとして、複数の振動センサ(例えば加速度計)と、各振動センサと接続された外部通信機と、外部通信機と送受信可能な外部サーバとを備えたものは、既に良く知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−254239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
構造物の層(階)の中には、例えば、免震装置が設けられた免震層のように、コンクリートで周囲が囲まれた通信困難空間が含まれていることがある。
【0005】
そして、この通信困難空間に無線通信を行う振動センサを設けた場合、振動センサの検出結果を外部において確実に取得することができないので、通信困難空間における振動を正確に観測することができなかった。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、通信困難空間内において無線通信を行う振動センサを外部と通信可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、第一構造と、第二構造と、前記第一構造と前記第二構造の間に設けられ、外部と無線通信が困難な通信困難空間と、を有する構造物の振動を観測する振動観測システムであって、前記通信困難空間内の前記第一構造に設けられた第一振動センサと、前記通信困難空間内の前記第二構造に設けられた第二振動センサと、前記第一振動センサ及び前記第二振動センサと無線通信し、前記第一構造及び前記第二構造の少なくとも一方の前記外部と無線通信が可能な通信可能空間に接続される通信媒体と、を有することを特徴とする振動観測システムである。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通信困難空間内において無線通信を行う振動センサが外部と通信可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】建築物1の振動観測システムの概略図である。
図2】第1実施形態の免震層15における振動観測システムの通信経路を示す図である。
図3】第2実施形態の免震層15における振動観測システムの通信経路を示す図である。
図4】第2実施形態の変形例の免震層15における振動観測システムの通信経路を示す図である。
図5】建築物100の振動観測システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0012】
第一構造と、第二構造と、前記第一構造と前記第二構造の間に設けられ、外部と無線通信が困難な通信困難空間と、を有する構造物の振動を観測する振動観測システムであって、前記通信困難空間内であって、前記第一構造に付設される第一振動センサと、前記通信困難空間内であって、前記第二構造に付設される第二振動センサと、前記第一振動センサ及び前記第二振動センサと無線通信し、前記第一構造及び前記第二構造の少なくとも一方の前記外部と無線通信が可能な通信可能空間に接続される通信媒体と、を有することを特徴とする振動観測システム。
【0013】
このような振動観測システムによれば、通信困難空間内において無線通信を行う振動センサが外部と通信可能となる。
【0014】
かかる振動観測システムであって、前記通信媒体は、前記通信困難空間内の前記第一振動センサ及び前記第二振動センサの無線通信の信号を送受信可能であって、前記通信困難空間内と前記通信可能空間内を接続する導体と、前記通信可能空間内に配置され、前記導体と無線通信の信号を送受信可能であり、前記外部と通信可能な外部通信機と、を備えることが望ましい。
【0015】
このような振動観測システムによれば、設備配管や電源ケーブル等の導体を用いることにより、通信困難空間内において無線通信を行う振動センサが外部と通信可能となる。
【0016】
かかる振動観測システムであって、前記通信媒体は、前記通信困難空間内の前記第一振動センサ及び前記第二振動センサの無線通信の信号を送受信可能であって、前記通信困難空間内に設置される内部通信機と、前記通信可能空間内に配置され、前記外部と通信可能な外部通信機と、前記内部通信機と前記外部通信機を通信接続する通信接続部材と、を備えることが望ましい。
【0017】
このような振動観測システムによれば、通信困難空間の内部通信機と通信可能空間の外部通信機を有線ケーブルで接続することにより、通信困難空間内において無線通信を行う振動センサが外部と通信可能となる。
【0018】
かかる振動観測システムであって、前記第一構造は、下部構造であり、前記第二構造は、上部構造であり、前記通信困難空間は、前記下部構造と前記上部構造の間に設けられた免震空間であり、前記内部通信機は、前記免震空間内において前記上部構造に設置され、前記外部通信機は、前記免震空間外において前記上部構造に設置されていることが望ましい。
【0019】
このような振動システムによれば、有線ケーブルの敷設長さを短くすることが可能であり、有線ケーブルが引っ張られたり、断線したりする危険性を低減することができる。
【0020】
かかる振動観測システムであって、前記第一構造は、下部構造であり、前記第二構造は、上部構造であり、前記通信困難空間は、前記下部構造と前記上部構造の間に設けられた免震空間であり、前記内部通信機は、前記免震空間内において前記下部構造に設置され、前記外部通信機は、前記免震空間外において前記上部構造に設置されていることが望ましい。
【0021】
このような振動システムによれば、内部通信機と有線ケーブルの配置、配線の自由度を高めることができる。
【0022】
かかる振動観測システムであって、前記外部通信機がEPS室に設置されていることが望ましい。
【0023】
このような振動観測システムによれば、外部通信機を建物内の適した場所に設置することが可能となる。
【0024】
===第1実施形態===
図1は、建築物1(構造物に相当)の振動観測システムの概略図であり、図2は、第1実施形態の免震層15(免震空間に相当)における振動観測システムの通信経路を示す図である。
【0025】
なお、本発明に係る図面においては、本発明を分かり易く説明するために、幾つかの部材、装置(例えば、建物10内に設けられた振動センサ20)について記載を省略した図としている。そして、以降では、省略した部材、装置の説明についても省略している。また、通信経路を示す図(図2図4)においては、それぞれの通信経路を両矢印で示している。
【0026】
振動観測システムは、構造物(建築物1)の振動を観測するためのシステムであって、第1実施形態においては、振動センサ20と、外部通信機30と、導体40を備えている。そして、振動センサ20、外部通信機30、及び導体40は、建築物1の内部に設けられている。
【0027】
建築物1は、地上部分の建物10と地下部分の免震層15を有している。建物10は、複数の層で構成されており、複数の層を貫通するEPS室12を備えている。免震層15には、建物10の揺れを抑制するための免震装置10aが設けられている。
【0028】
EPS室12は、建物10において電気設備の幹線等(ケーブル、配管配線等)を上下方向(層の重なり方向)に通すために他の室と区画された小空間の部位である。なお、EPS室12は、通信可能空間である。ここで、通信可能空間とは、建築物1の外部(具体的には、当該外部に配置された外部サーバ50)とLTE、Wifi等により無線通信が可能な空間である。EPS室12は、電気設備の幹線等が通った他の室と区画された小空間であり、かつ、通信可能空間なので、建物10において、外部通信機30を設置する場所として適している。
【0029】
免震層15は、周囲がほぼコンクリートに囲まれた空間である。具体的には、免震層15の地面3側は、ほぼ一面コンクリートにより形成された第一構造15a(床)であり、免震層15の建物10側(上側)は、ほぼ一面コンクリートにより形成された第二構造15b(天井)である。
【0030】
そして、免震層15には、建物10が揺れた際(例えば地震の際)に地面3と接触しないように設けられた隙間Gや免震層15への出入口等を除くと、開口部がほとんど存在しない。そのため、免震層15は、無線通信が困難な通信困難空間となっている。
【0031】
ここで、通信困難空間とは、建築物1の外部(具体的には、当該外部に配置された外部サーバ50)とLTE、Wifi等により無線通信ができない空間、及び、外部との無線通信ができなくはないが、通信エラー率が高い等で無線通信に問題が生じる空間である。なお、後に詳述するが、本実施の形態においては、導体40の設置という対策を講じることにより、通信困難空間における通信を可能としている。すなわち、通信困難空間とは、当該対策を講じる前の状態において通信が困難であることを意味する。
【0032】
つまり、建築物1は、第一構造15aと、第二構造15bと、第一構造15aと第二構造の間に設けられて外部と無線通信が困難な通信困難空間と、を有する。また、第一構造15aは、下部構造であり、第二構造15bは、上部構造であり、通信困難空間は、下部構造と上部構造の間に設けられた免震空間(免震層15)である。
【0033】
振動センサ20としては、免震層15の内部において、第一構造15aに設けられた第一振動センサ20aと、第二構造15bに設けられた第二振動センサ20bと、を有している。つまり、振動センサ20としては、通信困難空間内であって、第一構造15aに付設された第一振動センサ20aと、通信困難空間内であって、第二構造15bに付設された第二振動センサ20bと、を有している。
【0034】
第一振動センサ20a(第二振動センサ20b)は、無線通信を行う加速度センサであって、設置された第一構造15a(第二構造15b)の振動の加速度を検出して、その検出結果を送信する。
【0035】
外部通信機30は、建物10のEPS室12の通信可能空間に設置され(建物10の適切な場所に設置され)、無線通信を通じて外部サーバ50と送受信可能に接続されており、振動センサ20の検出結果を受信して、当該検出結果を外部サーバ50へ送信する。
【0036】
導体40は、EPS室12に設けられた電気設備の幹線(ケーブル、配管配線等)であり、建物10のEPS室12と免震層15を上下に貫通して設けられている。より具体的には、第二構造15bには上下方向(鉛直方向)に貫通する貫通孔15hが形成されており、当該貫通孔15hを導体40が貫通し、導体40は、通信可能空間と通信困難空間に跨って設けられている。そして、このように導体40が設けられることにより、導体40は、振動センサ20が発した検出結果を外部通信機30に到達させる(受信させる)機能を有する。
【0037】
導体40は、導電性を有するケーブル(電線)や配管であればよく、ケーブルの例を挙げると、電源ケーブルや通信用のケーブル(LANケーブルなど)が挙げられる。また、かかるケーブルは、被覆されていてもよいし、被覆されていなくてもよい。また、配管の例を挙げると、給排水管やガス配管が挙げられる(図2は配管の例を示している)。
【0038】
外部サーバ50は、外部通信機30と送受信可能に接続されており、外部通信機30からの検出結果を受信する。そして、外部サーバ50は、例えば、第二振動センサ20bの検出結果から(建物10の揺れ具合から)建物10の損傷等を推定し、第一振動センサ20aと第二振動センサ20bの検出結果から(地面3と建物10の揺れ具合から)免震装置10aの効果等を算出する。
【0039】
第1実施の形態に係る通信経路は、図2に示すように、第一振動センサ20a及び第二振動センサ20bから発せられた検出結果が、導体40を介して外部通信機30で受信されている。すなわち、通信困難空間内において無線通信を行う第一振動センサ20a及び第二振動センサ20bが、導体40を介して外部サーバ50と通信可能となっている。
【0040】
具体的には、第一振動センサ20a及び第二振動センサ20bから発せられた無線通信の電磁波によって、当該電磁波に応じた電圧変動が導体40内に発生する。そして、この電圧変動によって導体40の周りに発生する磁界及び電界の変動が外部通信機30で受信されて、外部サーバ50へと送信される。したがって、導体40は、振動センサ20及び外部通信機30とケーブル等で直接接続されない。
【0041】
つまり、第1実施形態の振動観測システムは、第一振動センサ20a及び第二振動センサ20bと無線通信し、第二構造15bの(第二構造15b側に設けられた)外部サーバ50と無線通信が可能な通信可能空間に接続される外部通信機30及び導体40(共に通信媒体に相当)と、を有している。
【0042】
換言すれば、第1実施形態の通信媒体は、通信困難空間内の第一振動センサ20a及び第二振動センサ20bの無線通信の信号を送受信可能であって、通信困難空間内と通信可能空間内を接続する導体40と、通信可能空間内に配置され、導体40と無線通信の信号を送受信可能であり、外部サーバ50と通信可能な外部通信機30と、を備える。
【0043】
第1実施の形態においては、設備配管や電源ケーブル等の導体40を用いることにより、通信困難空間内において無線通信を行う振動センサ20が外部と通信可能となり、通信困難空間における振動を正確に観測することが可能となる。
【0044】
===第2実施形態===
次に、第2実施形態について図3を用いて説明する。図3は、第2実施形態の免震層15における振動観測システムの通信経路を示す図である。第1実施形態(図2)と同一構成の部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0045】
第2実施形態と第1実施形態の相違点は、第2実施形態が第1実施形態の導体40に代えて、内部通信機32と有線ケーブル42(通信接続部材に相当)を備える点である。すなわち、第2実施形態に係る振動観測システムは、振動センサ20と、外部通信機30と、内部通信機32と、有線ケーブル42と、を備えている。なお、後に詳述するが、本実施の形態においては、内部通信機32と有線ケーブル42の設置という対策を講じることにより、通信困難空間における通信を可能としている。すなわち、通信困難空間とは、当該対策を講じる前の状態において通信が困難であることを意味する。
【0046】
内部通信機32は、免震層15内に設けられ、無線通信を通じて第一振動センサ20a及び第二振動センサ20bと送受信可能に接続されており、第一振動センサ20a及び第二振動センサ20bの検出結果を受信する。
【0047】
有線ケーブル42は、貫通孔15hを通って、建物10のEPS室12と免震層15に跨って設けられており、一方側で内部通信機32と接続し、他方側で外部通信機30と接続している。すなわち、有線ケーブル42は、通信困難空間の内部通信機32と通信可能空間の外部通信機30を有線接続する。
【0048】
そして、このように内部通信機32と外部通信機30を有線接続すると、各々の振動センサ20と外部通信機30を有線ケーブル42で接続する場合に比べて、有線ケーブル42の本数を少なくし(1本でよい)、長さを短くすることができる。
【0049】
第2実施形態に係る通信経路は、図3に示すように、第一振動センサ20a及び第二振動センサ20bと同じ免震層15内部に設けられた内部通信機32が、第一振動センサ20a及び第二振動センサ20bから発せられた無線通信の電波を受信し、かかる電波信号を信号劣化の少ない通信専用の有線ケーブル42を通じて外部通信機30に送信する。
【0050】
つまり、第2実施形態の振動観測システムは、第一振動センサ20a及び第二振動センサ20bと無線通信し、第二構造15bの(第二構造15b側に設けられた)外部サーバ50と無線通信が可能な通信可能空間に接続される外部通信機30、内部通信機32、及び有線ケーブル42(いずれも通信媒体に相当)と、を有している。
【0051】
換言すれば、第2実施形態の通信媒体は、通信困難空間内の第一振動センサ20a及び第二振動センサ20bの無線通信の信号を送受信可能であって、通信困難空間内に設置される内部通信機32と、通信可能空間内に配置され、外部サーバ50と通信可能な外部通信機30と、内部通信機32と外部通信機30を通信接続する有線ケーブル42と、を備える。
【0052】
第2実施形態においては、通信困難空間の内部通信機32と通信可能空間の外部通信機30を有線ケーブル42で接続することにより、通信困難空間内において無線通信を行う振動センサ20が外部と通信可能となり、通信困難空間における振動を正確に観測することが可能となる。
【0053】
また、第2実施形態の外部通信機30及び内部通信機32は、免震層15の第二構造15b側(建物10側)に設けられている。すなわち、内部通信機32は、免震空間内(免震層15内)において上部構造に設置され、外部通信機30は、免震空間外(免震層15外)において上部構造に設置されている。
【0054】
このように外部通信機30と内部通信機32を設置すると、有線ケーブル42の敷設長さが、内部通信機32を第一構造15a側(地面3側)に設ける場合に比べて短くてよい。更に、内部通信機32を第一構造15a側(地面3側)に設けると、建物10が揺れて第二構造15b(建物10)と第一構造15a(地面3)との間に相対変位が生じた際に、有線ケーブル42が引っ張られたり、断線したりする危険性があるが、このような問題が生じない。
【0055】
次に、第2実施形態の変形例について図4を用いて説明する。図4は、第2実施形態の変形例の免震層15における振動観測システムの通信経路を示す図である。変形例においては、内部通信機32が地面3側の第一構造15aに設けられている。すなわち、内部通信機32は、免震空間内(免震層15内)において下部構造に設置され、外部通信機30は、免震空間外(免震層15外)において上部構造に設置されている。
【0056】
かかる変形例においては、建物10が揺れた際に生じる建物10と地面3と間の相対変位に対応するため、有線ケーブル42の長さに余裕を持たせている。この変形例の場合、免震層15の第二構造15b(天井)以外にも内部通信機32と有線ケーブル42を配置、配線できるので、配置、配線の自由度を高めることができる。
【0057】
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【0058】
上記実施形態では、振動センサ20は、振動の加速度を検出する加速度計であったが、これに限るものではない。例えば、振動センサ20が振動の速度を検出する速度計であってもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、通信困難空間が免震層15であったが、これに限るものではない。例えば、通信困難な建物10の層や部屋等が通信困難空間であってもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、外部通信機30をEPS室12に設置していたが、これに限るものではない。例えば、電話回線を収容するMDF室、MDF室から分岐された配線を収容するIDF室、および、変圧器、配電盤を収容する電気室等の通信可能空間に、外部通信機30を設置してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、免震層15が建築物1の地下部分に設けられていたが、これに限るものではない。例えば、図5に示すように、地上部分に免震層15が設けられていてもよい。
【0062】
図5は、建築物100の振動観測システムの概略図である。建築物100(構造物に相当)は、地上部分に建物10と免震層15を有しており、上側から順番に上側建物10u、免震層15、下側建物10dの構成をしている。この場合、振動観測システムは、建物10と地面3の振動を観測するのではなく、上側建物10uと下側建物10dの振動を観測する。
【0063】
また、建築物100においては、外部通信機30が第一構造15aの側に設けられている。つまり、図5の振動観測システムは、第一振動センサ20a及び第二振動センサ20bと無線通信し、第一構造15aの(第一構造15a側に設けられた)外部サーバ50と無線通信が可能な通信可能空間に接続される通信媒体を有している。
【符号の説明】
【0064】
1 建築物(構造物)
3 地面
10 建物
10a 免震装置
10u 上側建物
10d 下側建物
12 EPS室(通信可能空間)
15 免震層(免震空間。通信困難空間)
15a 第一構造
15b 第二構造
15h 貫通孔
20 振動センサ
20a 第一振動センサ
20b 第二振動センサ
30 外部通信機(通信媒体)
32 内部通信機(通信媒体)
40 導体(通信媒体)
42 有線ケーブル(通信接続部材。通信媒体)
50 外部サーバ(外部)
100 建築物(構造物)
G 隙間
図1
図2
図3
図4
図5