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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-121511(P2021-121511A)
(43)【公開日】2021年8月26日
(54)【発明の名称】鉄道車両の側天井パネル
(51)【国際特許分類】
   B61D 17/18 20060101AFI20210730BHJP
   B61D 17/00 20060101ALI20210730BHJP
【FI】
   B61D17/18
   B61D17/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-14596(P2020-14596)
(22)【出願日】2020年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸 康敏
(72)【発明者】
【氏名】貴志 崇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】玉川 佑介
(72)【発明者】
【氏名】松方 稜
(72)【発明者】
【氏名】大野 幸奈
(57)【要約】
【課題】側パネルと天井パネルの組付け誤差を吸収しつつ、簡単に装着できる鉄道車両の側天井パネルを提供する。
【解決手段】側構体1の室内側に配置された側パネル11と屋根構体2の室内側に配置された天井パネル21とに連結され、両パネルの各構体への組付け誤差を吸収可能に形成された鉄道車両10の側天井パネル3である。側天井パネルは、側パネルと天井パネルとの間で車両外上方へ円弧状に突設された湾曲部31の曲率が変化可能に形成された軟素材3Wで構成されている。側天井パネルと側パネル又は天井パネルとの連結部4の内、少なくとも、一方の連結部41が差込み連結構造SRである。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側構体の室内側に配置された側パネルと屋根構体の室内側に配置された天井パネルとに連結され、両パネルの各構体への組付け誤差を吸収可能に形成された鉄道車両の側天井パネルであって、
前記側天井パネルは、前記側パネルと前記天井パネルとの間で車両外上方へ円弧状に突設された湾曲部の曲率が変化可能に形成された軟素材で構成されていること、
前記側天井パネルと前記側パネル又は前記天井パネルとの連結部の内、少なくとも、一方の連結部が差込み連結構造であることを特徴とする鉄道車両の側天井パネル。
【請求項2】
請求項1に記載された鉄道車両の側天井パネルにおいて、
前記差込み連結構造は、前記側パネル又は前記天井パネルに形成された被差込み部と、前記側天井パネルに形成され前記被差込み部に挿入可能に形成された差込み部とから構成され、
前記被差込み部は、室外側の外フランジ部と室内側の内フランジ部とがコの字状断面に結合され、前記差込み部に対する前記外フランジ部のラップ代が、前記差込み部に対する前記内フランジ部のラップ代より長く形成されていることを特徴とする鉄道車両の側天井パネル。
【請求項3】
請求項2に記載された鉄道車両の側天井パネルにおいて、
前記被差込み部には、前記外フランジ部と前記内フランジ部との隙間に挿入され前記差込み部の先端部に当接する弾性体を備えていることを特徴とする鉄道車両の側天井パネル。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された鉄道車両の側天井パネルにおいて、
前記側天井パネルは、車両前後方向で複数個連続状に配置されていること、
車両前後方向で隣接する前記側天井パネル同士の境界部は、支持部材によって支持されていることを特徴とする鉄道車両の側天井パネル。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された鉄道車両の側天井パネルにおいて、
前記側天井パネルには、室内側パネル面に沿って設置され、前記湾曲部の曲率の変化に追従可能に形成されたフィルム状の旅客案内表示装置を備えていることを特徴とする鉄道車両の側天井パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の側天井パネルに関し、詳しくは、側パネルと天井パネルとに連結され、両パネルの組付け誤差を吸収して簡単に装着できる鉄道車両の側天井パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両の側天井パネルは、客室内における側パネルと天井パネルとに、それぞれボルト、ナット等を用いてネジ止めする構成であった。そのため、側パネルの側構体に対する組付け誤差と、天井パネルの屋根構体に対する組付け誤差とを、側天井パネルのネジ止め部で吸収する必要があった。
【0003】
例えば、特許文献1では、図9図10に示すように、側天井パネル101をネジ止めする天井パネル102側の係止手段(3箇所)と側パネル103側の係止手段(3箇所)の全ての係止手段を、上下左右にネジが可動する可動係止手段104としている。この可動係止手段104によって、側天井パネル101をネジ止めする際に、天井パネル102の組付け誤差と側パネル103の組付け誤差とをそれぞれ吸収する構造にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−55466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された側天井パネル101の係止構造では、以下の問題があった。すなわち、全ての係止手段を、上下左右にネジが可動する可動係止手段104としているので、ネジ固定用部品の部品点数が増加して、部品費が増大すると共に、1つ1つのネジ位置を調整しながら締結するので、作業工数も増大するという問題があった。
【0006】
本発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、側パネルと天井パネルの組付け誤差を吸収しつつ、簡単に装着できる鉄道車両の側天井パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る鉄道車両の側天井パネルは、以下の構成を備えている。
(1)側構体の室内側に配置された側パネルと屋根構体の室内側に配置された天井パネルとに連結され、両パネルの各構体への組付け誤差を吸収可能に形成された鉄道車両の側天井パネルであって、
前記側天井パネルは、前記側パネルと前記天井パネルとの間で車両外上方へ円弧状に突設された湾曲部の曲率が変化可能に形成された軟素材で構成されていること、
前記側天井パネルと前記側パネル又は前記天井パネルとの連結部の内、少なくとも、一方の連結部が差込み連結構造であることを特徴とする。
【0008】
本発明においては、側天井パネルは、側パネルと天井パネルとの間で車両外上方へ円弧状に突設された湾曲部の曲率が変化可能に形成された軟素材で構成されているので、側パネルと天井パネルとの間の湾曲部の曲率が変化することによって、側パネルと天井パネルの組付け誤差を吸収できる。すなわち、側パネルと天井パネルとの相対距離が短くなれば、側天井パネルの湾曲部の曲率が側天井パネル自身の柔軟性に基づいて相対的に大きくなることにより、組付け誤差を吸収し、側パネルと天井パネルとの相対距離が長くなれば、側天井パネルの湾曲部の曲率が側天井パネル自身の柔軟性に基づいて相対的に小さくなることにより、組付け誤差を吸収できる。
【0009】
また、側天井パネルと側パネル又は天井パネルとの連結部の内、少なくとも、一方の連結部が差込み連結構造であるので、少なくとも、一方の連結部におけるネジ締結作業を不要にして、作業の手間を軽減できる。
【0010】
よって、本発明によれば、側パネルと天井パネルの組付け誤差を吸収しつつ、簡単に装着できる鉄道車両の側天井パネルを提供することができる。
【0011】
(2)(1)に記載された鉄道車両の側天井パネルにおいて、
前記差込み連結構造は、前記側パネル又は前記天井パネルに形成された被差込み部と、前記側天井パネルに形成され前記被差込み部に挿入可能に形成された差込み部とから構成され、
前記被差込み部は、室外側の外フランジ部と室内側の内フランジ部とがコの字状断面に結合され、前記差込み部に対する前記外フランジ部のラップ代が、前記差込み部に対する前記内フランジ部のラップ代より長く形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明においては、差込み連結構造は、側パネル又は天井パネルに形成された被差込み部と、側天井パネルに形成され被差込み部に挿入可能に形成された差込み部とから構成され、また、被差込み部は、室外側の外フランジ部と室内側の内フランジ部とがコの字状断面に結合され、差込み部に対する外フランジ部のラップ代が、差込み部に対する内フランジ部のラップ代より長く形成されているので、側天井パネルの差込み部を側パネル又は天井パネルに形成された被差込み部の外フランジ部に当接した状態で、外フランジ部と内フランジ部との隙間に挿入することができる。そのため、被差込み部の外フランジ部が、側天井パネルの差込み部を被差込み部に挿入する際のガイド機能を発揮することができ、より簡単に側天井パネルを装着することができる。
【0013】
(3)(2)に記載された鉄道車両の側天井パネルにおいて、
前記被差込み部には、前記外フランジ部と前記内フランジ部との隙間に挿入され前記差込み部の先端部に当接する弾性体を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、被差込み部には、外フランジ部と内フランジ部との隙間に挿入され差込み部の先端部に当接する弾性体を備えているので、被差込み部に挿入される差込み部の挿入量に応じて弾性体が伸縮することができる。そのため、側パネルと天井パネルの組付け誤差の大きさにバラツキが生じても、弾性体が伸縮することによって、そのバラツキを吸収することができる。その結果、側天井パネルにおける湾曲部の曲率の変化を低減しつつ、連結部の差込み連結構造を維持することができる。なお、弾性体が伸縮することによって、側天井パネルの振動やビビリ音等を抑制することもできる。
【0015】
(4)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載された鉄道車両の側天井パネルにおいて、
前記側天井パネルは、車両前後方向で複数個連続状に配置されていること、
車両前後方向で隣接する前記側天井パネル同士の境界部は、支持部材によって支持されていることを特徴とする。
【0016】
本発明においては、側天井パネルは、車両前後方向で複数個連続状に配置され、また、車両前後方向で隣接する側天井パネル同士の境界部は、支持部材によって支持されているので、側パネルと天井パネルとの相対的組付け誤差の大きさが車両前後方向で相違しても、支持部材が、側天井パネル同士の境界部を支持することによって、側天井パネル同士の境界部で隙間や段差等が生じるのを効果的に回避できる。
【0017】
(5)(1)乃至(4)のいずれか1つに記載された鉄道車両の側天井パネルにおいて、
前記側天井パネルには、室内側パネル面に沿って設置され、前記湾曲部の曲率の変化に追従可能に形成されたフィルム状の旅客案内表示装置を備えていることを特徴とする。
【0018】
本発明においては、側天井パネルには、室内側パネル面に沿って設置され、湾曲部の曲率の変化に追従可能に形成されたフィルム状の旅客案内表示装置を備えているので、乗客が見やすい位置にて旅客案内表示を行うことができると共に、側パネルと天井パネルの組付け誤差に応じて側天井パネルの湾曲部の曲率が変化しても、側天井パネルに設置した旅客案内表示装置の組付けを調節する必要が無い。そのため、利便性の高い旅客案内表示装置が設置された側天井パネルを、側パネルと天井パネルの組付け誤差を吸収しつつ、簡単に装着できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、側パネルと天井パネルの組付け誤差を吸収しつつ、簡単に装着できる鉄道車両の側天井パネルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る側天井パネルを装着した鉄道車両の部分断面図である。
図2図1に示すA視斜視図である。
図3図2に示すB−B断面図である。
図4図3に示すC部の連結部における変形例を表す詳細断面図である。
図5図3に示すD部の連結部における変形例を表す詳細断面図である。
図6図3に示すE−E断面図である。
図7図6に示す支持部材の変形例を表す断面図である。
図8図3に示す側天井パネルに旅客案内表示装置を装着した例の断面図である。
図9】特許文献1に開示された側天井パネルの分解斜視図である。
図10図9に示す側天井パネルの可動係止手段を表す詳細斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本実施形態に係る鉄道車両の側天井パネルについて、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的には、本実施形態に係る鉄道車両の側天井パネルの構造を詳細に説明する。また、側天井パネルが車両前後方向に連続状に配置されている場合、側天井パネル同士の境界部を支持する支持部材の構造を詳細に説明する。さらに、側天井パネルの室内側パネル面に旅客案内表示装置を装着した例を説明する。
【0022】
<本側天井パネルの構造>
まず、本実施形態に係る鉄道車両の側天井パネルの構造について、図1図5を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態に係る側天井パネルを装着した鉄道車両の部分断面図を示す。図2に、図1に示すA視斜視図を示す。図3に、図2に示すB−B断面図を示す。図4に、図3に示すC部の連結部における変形例を表す詳細断面図を示す。図5に、図3に示すD部の連結部における変形例を表す詳細断面図を示す。
【0023】
図1図5に示すように、本実施形態に係る鉄道車両10の側天井パネル3は、側構体1の室内側に配置された側パネル11と屋根構体2の室内側に配置された天井パネル21とに連結され、両パネル11、21の各構体1、2への組付け誤差を吸収可能に形成された鉄道車両10の側天井パネル3である。側天井パネル3は、予め側構体1に装着された側パネル11と、屋根構体2に装着された天井パネル21とに対して、室内側から装着される。側天井パネル3は、側構体1又は屋根構体2の外面に装着された車側表示灯や行先表示灯等のメンテナンス用ハッチを兼用してもよい。
【0024】
なお、本鉄道車両10は、例えば、通勤車両等に用いる箱型車両であり、側構体1には、適宜大きさの窓部13が形成されている。また、窓部13の上方には、荷棚12が形成され、荷棚12の上方に側天井パネル3が装着されている。天井パネル21には、側天井パネル3より車両内方寄りに、つり革23を垂下支持する支持棒22が締結されている。さらに、天井パネル21には、空調ダクト24に連結された空調用開口部25が形成されている。
【0025】
また、側天井パネル3は、側パネル11と天井パネル21との間で車両外上方へ円弧状に突設された湾曲部31の曲率が変化可能に形成された軟素材3Wで構成されている。ここで、軟素材3Wは、湾曲部31の曲率が変化可能である素材であれば良く、例えば、プラスチック板、アルミ合金板、合板、アルミ樹脂複合板、又はそれらの積層板等が該当する。
【0026】
また、側天井パネル3と側パネル11又は天井パネル21との連結部4の内、一方の連結部41、41Bが差込み連結構造SRであり、他方の連結部42、42Bがネジ連結構造NR又はヒンジ連結構造HRである。ここでは、図2図3に示すように、側天井パネル3と天井パネル21との連結部41が、差込み連結構造SRに形成され、側天井パネル3と側パネル11との連結部42が、ネジ連結構造NRに形成されている。ネジ連結構造NRは、例えば、側パネル11の裏面に固定したナット422と、側天井パネル3の表面から挿通するボルト421とを締結して連結する。
【0027】
なお、図3に示すように、締結した側天井パネル3の表面と側パネル11の表面とを面一状に連結するため、側パネル11の上端部111を段差形状に形成してもよい。また、図5に示すように、側天井パネル3と側パネル11との連結部42Bは、ヒンジ連結構造HRに形成してもよい。ヒンジ連結構造HRは、側天井パネル3と側パネル11とを蝶番42Hを介して連結する。
【0028】
また、差込み連結構造SRは、側パネル11又は天井パネル21に形成された被差込み部411と、側天井パネル3に形成され被差込み部411に挿入可能に形成された差込み部412とから構成されている。ここでは、図2図3に示すように、天井パネル21に被差込み部411が形成されている。被差込み部411は、天井パネル21に一体成形(例えば、押出成形など)で形成してもよいが、別に形成した被差込み部411を天井パネル21にネジ固定してもよい。
【0029】
また、被差込み部411は、室外側の外フランジ部411aと室内側の内フランジ部411bとがコの字状断面に結合されている。また、差込み部412に対する外フランジ部411aのラップ代d1が、差込み部412に対する内フランジ部411bのラップ代d2より長く形成されていることが好ましい。外フランジ部411aと内フランジ部411bとの隙間は、側天井パネル3の差込み部412の厚さより僅かに大きい程度が好ましい。
【0030】
差込み部412に対する、外フランジ部411aのラップ代d1を内フランジ部411bのラップ代d2より長く形成することによって、差込み部412を外フランジ部411aに当接した状態で、外フランジ部411aと内フランジ部411bとの隙間に簡単に挿入することができる。そのため、被差込み部411の外フランジ部411aが、側天井パネル3の差込み部412を被差込み部411に挿入する際のガイド機能を発揮することができ、より簡単に側天井パネル3を装着することができる。
【0031】
また、図4に示すように、被差込み部411Bには、外フランジ部411aと内フランジ部411bとの隙間に挿入され差込み部412の先端部に当接する弾性体413を備えていることが好ましい。弾性体413は、例えば、帯板状に形成されたゴム系部材又は発泡部材等が該当する。この差込み連結構造SRの連結部41Bでは、被差込み部411Bに挿入される差込み部412の挿入量に応じて弾性体413が伸縮することができる。そのため、側パネル11と天井パネル21の組付け誤差の大きさにバラツキが生じても、弾性体413が伸縮することによって、そのバラツキを簡単に吸収することができる。その結果、側天井パネル3における湾曲部31の曲率を略一定に保持しつつ、連結部41Bの差込み連結構造SRを維持することができる。
【0032】
<側天井パネル同士の境界部を支持する支持部材の構造>
次に、本側天井パネルが車両前後方向に連続状に配置され、当該側天井パネル同士の境界部を支持する支持部材の構造を、図2図3図6図7を用いて詳細に説明する。図6に、図3に示すE−E断面図を示す。図7に、図6に示す支持部材の変形例を表す断面図を示す。
【0033】
図2図3図6に示すように、本側天井パネル3は、車両前後方向で複数個連続状に配置されている場合がある。この場合、車両前後方向で隣接する側天井パネル3同士の境界部32は、支持部材5によって支持されていることが好ましい。例えば、側パネル11又は天井パネル21には、車両前後方向で隣接する側天井パネル3同士の境界部32を支持する支持部材5が装着されていることが好ましい。
【0034】
ここでは、支持部材5は、側パネル11に固定され上下方向に起立した基端部52と、基端部52の先端側で室内側へ倒伏状に形成された先端部51とから構成されている。先端部51には、側天井パネル3の湾曲部31の裏面側で境界部32に当接する弾性部材53が装着されている。図3に示すように、弾性部材53は、湾曲部31の頂点に当接するよう平板状に形成されているが、仮想線で示すように、弾性部材53Bを湾曲部31の面沿いに形成してもよい。
【0035】
この場合、側パネル11と天井パネル21との相対的組付け誤差の大きさが車両前後方向で相違しても、支持部材5が側天井パネル3同士の境界部32を支持することによって、側天井パネル3同士の境界部32で隙間や段差等が生じるのを効果的に回避できる。
【0036】
なお、支持部材5は、天井パネル21に装着してもよく、その場合も同様の効果を奏することができる。また、支持部材5Bは、図7に示すように、側天井パネル3の境界部32を両側から挿入する溝部511BがH型断面に形成された支持枠51Bでもよい。上記支持枠51Bは、側パネル11との連結部42から天井パネル21との連結部41まで側天井パネル3に沿って形成されていることが好ましい。また、上記支持部材5は、側天井パネル3の境界部32以外の箇所(例えば、側天井パネル3の前後方向中間部)を支持するように設けてもよい。
【0037】
<側天井パネルの室内側パネル面に旅客案内表示装置を装着した例>
次に、本側天井パネルの室内側パネル面に旅客案内表示装置を装着した例を、図8を用いて詳細に説明する。図8に、図3に示す側天井パネルに旅客案内表示装置を装着した例の断面図を示す。
【0038】
図8に示すように、側天井パネル3には、室内側パネル面3Pに沿って設置され、湾曲部31の曲率の変化に追従可能に形成されたフィルム状の旅客案内表示装置6を備えている。旅客案内表示装置6には、例えば、停車駅名や停車駅付近の地図・観光案内・広告宣伝等を表示することができる。
【0039】
また、旅客案内表示装置6は、例えば電子ペーパー等の案内表示部61と、案内表示部61に旅客案内情報を表示するための制御部62と、制御部62に接続するコネクタ631を有し案内表示部61に電気信号を伝達する電気ケーブル63とを備えている。案内表示部61は、側天井パネル3の室内側パネル面3Pに固定されている。電気ケーブル63は、案内表示部61から側天井パネル3の室外側へ延設されている。制御部62は、側パネル11の室外側に固定されている。
【0040】
この場合、以下の手順で、側天井パネル3を天井パネル21と側パネル11に装着すればよい。すなわち、側天井パネル3の差込み部412を天井パネル21の被差込み部411の外フランジ部411aと内フランジ部411bとの隙間に挿入する。次に、電気ケーブル63のコネクタ631を制御部62に接続する。その後、側パネル11の連結部42に側天井パネル3をネジ締結する。
【0041】
上記のように、側天井パネル3の室内側パネル面3Pに沿って設置され、湾曲部31の曲率の変化に追従可能に形成されたフィルム状の旅客案内表示装置6を備えることによって、鉄道車両10の乗客は、見やすい位置にて旅客案内情報を知ることができる。そのため、側パネル11と天井パネル21の組付け誤差を吸収しつつ、乗客の利便性をより一層高めることができる。
【0042】
<作用効果>
以上、詳細に説明した本実施形態に係る鉄道車両の側天井パネル3によれば、側天井パネル3は、側パネル11と天井パネル21との間で車両外上方へ円弧状に突設された湾曲部31の曲率が変化可能に形成された軟素材3Wで構成されているので、側パネル11と天井パネル21との間の湾曲部31の曲率が変化することによって、側パネル11と天井パネル21の組付け誤差を吸収できる。すなわち、側パネル11と天井パネル21との相対距離が短くなれば、側天井パネル3の湾曲部31の曲率が側天井パネル自身の柔軟性に基づいて相対的に大きくなることにより、組付け誤差を吸収し、側パネル11と天井パネル21との相対距離が長くなれば、側天井パネル3の湾曲部31の曲率が側天井パネル自身の柔軟性に基づいて相対的に小さくなることにより、組付け誤差を吸収できる。
【0043】
また、側天井パネル3と側パネル11又は天井パネル21との連結部4の内、一方の連結部41が差込み連結構造SRであり、他方の連結部42がネジ連結構造NR又はヒンジ連結構造HRであるので、少なくとも、一方の連結部41におけるネジ締結作業を不要にして、作業の手間を軽減できる。
【0044】
よって、本実施形態によれば、側パネル11と天井パネル21の組付け誤差を吸収しつつ、簡単に装着できる鉄道車両10の側天井パネル3を提供することができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、差込み連結構造SRは、側パネル11又は天井パネル21に形成された被差込み部411と、側天井パネル3に形成され被差込み部411に挿入可能に形成された差込み部412とから構成され、また、被差込み部411は、室外側の外フランジ部411aと室内側の内フランジ部411bとがコの字状断面に結合形成され、差込み部412に対する外フランジ部411aのラップ代d1が、差込み部412に対する内フランジ部411bのラップ代d2より長く形成されているので、側天井パネル3の差込み部412を側パネル11又は天井パネル21に形成された被差込み部411の外フランジ部411aに当接した状態で、外フランジ部411aと内フランジ部411bとの隙間に挿入することができる。そのため、被差込み部411の外フランジ部411aが、側天井パネル3の差込み部412を被差込み部411に挿入する際のガイド機能を発揮することができ、より簡単に側天井パネル3を装着することができる。
【0046】
また、本実施形態によれば、被差込み部411には、外フランジ部411aと内フランジ部411bとの隙間に挿入され差込み部412の先端部に当接する弾性体413を備えているので、被差込み部411に挿入される差込み部412の挿入量に応じて弾性体413が伸縮することができる。そのため、側パネル11と天井パネル21の組付け誤差の大きさにバラツキが生じても、弾性体413が伸縮することによって、そのバラツキを吸収することができる。その結果、側天井パネル3における湾曲部31の曲率を略一定に保持しつつ、連結部41の差込み連結構造SRを維持することができる。なお、弾性体413が伸縮することによって、側天井パネル3の振動やビビリ音等を抑制することもできる。
【0047】
また、本実施形態によれば、側天井パネル3は、車両前後方向で複数個連続状に配置され、また、車両前後方向で隣接する側天井パネル3同士の境界部32は、支持部材5によって支持されているので、側パネル11と天井パネル21との相対的組付け誤差の大きさが車両前後方向で相違しても、支持部材5が、側天井パネル3同士の境界部32を支持することによって、側天井パネル3同士の境界部32で隙間や段差等が生じるのを効果的に回避できる。
【0048】
また、本実施形態によれば、側天井パネル3には、室内側パネル面3Pに沿って設置され、湾曲部31の曲率の変化に追従可能に形成されたフィルム状の旅客案内表示装置6を備えているので、乗客が見やすい位置にて旅客案内表示を行うことができると共に、側パネル11と天井パネル21の組付け誤差に応じて側天井パネル3の湾曲部31の曲率が変化しても、側天井パネル3に設置した旅客案内表示装置6の組付けを調節する必要が無い。そのため、利便性の高い旅客案内表示装置6を、側パネル11と天井パネル21の組付け誤差を吸収しつつ、簡単に装着できる。
【0049】
<変形例>
以上、本実施形態に係る鉄道車両の側天井パネル3を詳細に説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では、側天井パネル3と側パネル11又は天井パネル21との連結部4の内、一方の連結部41、41Bが差込み連結構造SRであり、他方の連結部42、42Bがネジ連結構造NR又はヒンジ連結構造HRである。しかし、必ずしも、これに限る必要はなく、例えば、側天井パネル3と側パネル11又は天井パネル21との連結部4の内、それぞれの連結部41、42が差込み連結構造SRであっても良い。この場合、車両走行時における側天井パネル3の振動等を防止するため、図4に示すように、被差込み部411には、外フランジ部411aと内フランジ部411bとの隙間に挿入され差込み部412の先端部に当接する弾性体413を備えていることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、側パネルと天井パネルとに連結され、両パネルの組付け誤差を吸収して簡単に装着できる鉄道車両の側天井パネルとして利用できる。
【符号の説明】
【0051】
1 側構体
2 屋根構体
3 側天井パネル
3P 室内側パネル面
3W 軟素材
4 連結部
5 支持部材
6 旅客案内表示装置
10 鉄道車両
11 側パネル
21 天井パネル
31 湾曲部
32 境界部
41、41B、42、42B 連結部
SR 差込み連結構造
411、411B 被差込み部
412 差込み部
411a 外フランジ部
411b 内フランジ部
d1、d2 ラップ代
413 弾性体
図1
図2
図3
図4
図5
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図10