(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-121565(P2021-121565A)
(43)【公開日】2021年8月26日
(54)【発明の名称】ワイヤにねじり力を付与するための装置
(51)【国際特許分類】
B65H 51/10 20060101AFI20210730BHJP
B21C 47/20 20060101ALI20210730BHJP
B65H 49/04 20060101ALI20210730BHJP
B23K 9/133 20060101ALI20210730BHJP
【FI】
B65H51/10
B21C47/20
B65H49/04
B23K9/133 503C
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2021-6280(P2021-6280)
(22)【出願日】2021年1月19日
(31)【優先権主張番号】16/747,046
(32)【優先日】2020年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】16/921,387
(32)【優先日】2020年7月6日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】521028154
【氏名又は名称】エイダブリュディエス・テクノロジーズ・エッセ・エルレ・エルレ
【氏名又は名称原語表記】AWDS TECHNOLOGIES SRL
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】カルロ・ジェルメッティ
(72)【発明者】
【氏名】フィリッポ・コッラディーニ
【テーマコード(参考)】
3F051
3F109
4E026
【Fターム(参考)】
3F051BA05
3F051BB06
3F051DB01
3F051FB01
3F109BA02
3F109CA05
3F109CB11
3F109CB20
4E026CC03
(57)【要約】
【課題】ワイヤにねじり力を付与するための装置を提供する。
【解決手段】
ワイヤにねじり力を付与するための装置は、ベースと、ベースに対して回転軸心を中心に回転可能に取り付けられる支持体とを備える。回転軸心は、ベースおよび支持体を通って延在するワイヤ経路と一致する。更に、ワイヤクラッチ装置が、支持体に取り付けられ、そしてワイヤ経路に沿って案内されるワイヤに係合するように構成され、ベースに対して支持体を回転させるように構成される回転機構が、設けられる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤにねじり力を付与するための装置であって、
ベースと、
前記ベースに対して回転軸心を中心に回転可能に取り付けられる支持体であって、前記回転軸心が前記ベースおよび前記支持体を通って延在するワイヤ経路と一致する支持体と、
前記支持体に取り付けられ、前記ワイヤ経路に沿って案内されるワイヤに係合するように構成されるワイヤクラッチ装置と、
前記ベースに対して前記支持体を回転させるように構成される回転機構と、を備える装置。
【請求項2】
前記ワイヤクラッチ装置が、前記支持体に取り付けられる一対のロールであり、前記ロールが、前記ワイヤ経路の両側に配置され、前記ロールの少なくとも一つが、ワイヤ受容溝を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
付勢装置が、2つのロールを互いに付勢するために設けられる、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記付勢装置が、付勢機構に締め付けトルクを付与するためのハンドホイールを有し、トルクリミッタが、前記ハンドホイールから前記付勢機構へのトルク経路に配置される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
スピンドルナットに前記ハンドホイールを連結するばね負荷式のカム機構が、設けられる、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記トルクリミッタが、調整可能である、請求項4または請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記回転機構が、前記ワイヤ経路に沿った前記ワイヤの動きを前記ベースに対する前記支持体の回転に変換するように構成されるギアを備える、請求項1から6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記ギアが、前記ベースに連結したリングギアと、前記支持体に回転可能に取り付けたピニオンとを有するベベルギアである、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記ピニオン用の2箇所の取り付け位置が、前記支持体に設けられる、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記ギアが、ウォームドライブである、請求項7に記載の装置。
【請求項11】
摺動ガイドに取り付けられる中間ギアホイールが、設けられる、請求項7から10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
トルクリミッタが、前記回転機構に関連付けられる、請求項7から11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
前記トルクリミッタが、前記ギアと、当該ギアが配置されるシャフトとの間に配置される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記トルクリミッタが、調整可能である、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記トルクリミッタが、ベルビルばねを備える、請求項12または請求項13に記載の装置。
【請求項16】
前記回転機構が、前記ベースに取り付けられ、そして前記ベースに対して前記支持体を回転させるように構成される駆動モータを備える、請求項1から15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記モータを前記支持体に連結するための連結装置が、設けられる、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記連結装置が、前記支持体に関連付けられる従動面に対して、前記駆動モータに連結された駆動ホイールを付勢するための当て装置を備える、請求項16または請求項17に記載の装置。
【請求項19】
モータ電流センサが、設けられる、請求項16から18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記回転機構が、前記支持体の前記回転軸心に対して偏心して配置されたワイヤ受容開口部を有するアームである、請求項1から19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
ワイヤ矯正機が、前記支持体に配置される、請求項1から20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
いくらかの量のワイヤがワイヤの複数のループからなるコイルの形態で収容される容器と、
ワイヤにねじり力を付与するための装置であって、前記装置が前記ワイヤの上方に取り付けられて、ベースを有する装置と、
前記ベースに対して回転軸心を中心に回転可能に取り付けられる支持体であって、前記回転軸心が前記ベースおよび前記支持体を通って延在するワイヤ経路と一致する支持体と、
前記支持体に取り付けられる一対のロールであって、前記ロールは前記ワイヤ経路の両側に配置され、前記ロールの少なくとも1つがワイヤ受容溝を有するロールと、
前記支持体を前記ベースに対して回転させるように構成される回転機構と、を備えるシステムであって、
前記ワイヤにねじり力を付与するための前記装置の下流側に配置される少なくとも1つのワイヤフィーダを更に備える、システム。
【請求項23】
リテーナが、ワイヤの前記コイルに配置される、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記ワイヤに回転を付与するための前記装置の下流側に配置される前記ワイヤフィーダが、補助ワイヤフィーダであり、メインワイヤフィーダが、前記補助ワイヤフィーダの下流側に設けられる、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
いくらかの量のワイヤがワイヤの複数のループからなるコイルの形態で収容される容器と、
ワイヤにねじり力を付与するための装置であって、前記装置が前記ワイヤの上方に取り付けられて、ベースを有する装置と、
前記ベースに対して回転軸心を中心に回転可能に取り付けられる支持体であって、前記回転軸心が前記ベースおよび前記支持体を通って延在するワイヤ経路と一致する支持体と、
前記支持体に取り付けられる一対のロールであって、前記ロールは前記ワイヤ経路の両側に配置され、前記ロールの少なくとも1つがワイヤ受容溝を有するロールと、
前記支持体を前記ベースに対して回転させるように構成される回転機構であって、前記支持体を前記ベースに対して回転させるための駆動モータを有する回転機構と、を備えるシステムであって、
前記ワイヤにねじり力を付与するための前記装置の下流側に配置される少なくとも1つのワイヤフィーダと、
前記回転機構の前記駆動モータの回転速度を制御するための制御部であって、前記ワイヤに付与される前記ねじり力を制限するためのトルク検出部を有する制御部と、を更に備える、システム。
【請求項26】
前記ワイヤが、マグネシウムを含むアルミニウム合金からの溶接ワイヤである、請求項25に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ワイヤであり得るワイヤにねじり力を付与するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ワイヤ消耗品は、メタライゼーションなどの表面処理から溶接における金属部品の接合まで、多くの産業用途で使用される。今後数年の間に、ワイヤは、非常に重要かつ継続的に改善されていく3Dプリンターの分野で、ますます利用されるであろう。
【0003】
最近では自動化やロボットシステムへの重要な投資が行われている多くの産業用用途では、生産性を最大化することが不可欠であり、大量の消耗品を有するバルクコンテナは、中断を減らしスプール交換のダウンタイムを最小限に抑えることができるため、小さいスプールよりも好まれている。交換ダウンタイムを測定するために溶接業界で一般的に受け入れられているパラメータでは、空の15kgのスプールを満載の新しいスプールに交換するのに通常平均15分かかることが教示され、従って、スプール交換ダウンタイムは、1kgのワイヤの交換に費やされた1分間で数値化することができる。この計算に基づいて、1200kgの製品が入った大きなパックまたはドラムは、20時間の交換ダウンタイムの節約に相当することが明らかである。この20時間は、スプール交換のために生産を継続的に中断しなくてはならないことに代わって、積極的に生産するためにより良く利用される可能性がある。この利点は、生産コストの大幅な削減につながり、製造工程の効率を向上させる。
【0004】
燃料タンクの生産、またはトレーラもしくは鉄道車両の長い溶接などの特定の溶接工程では、溶接ビードの途中で停止することは一般的に受け入れられないので、望まない生産停止はすべて、品質の一貫性の点で更なる複雑さと不利益をもたらす可能性があり、それよりむしろ溶接工程の最初から最後まで溶接ビードが中断されないことが好ましいことを付け加えなければならない。特定のメタライゼーションまたは溶接アプリケーションでは、途中での望まない中断により、部品の完全な廃棄およびスクラップ化が引き起こされる可能性がある。
【0005】
溶接アークから発生する危険な火花から安全な距離にあり、フォークリフトによる取り扱いが促進される特定の集中エリア(「ワイヤファーム(wire farms)」と呼ばれる)に、大量のワイヤ消耗品を含むパックを集中的に配置することは、市場で入手可能なワイヤフィードシステムによって今や可能になっている。そのシステムにより、パックの位置から、前記ワイヤ消耗品が実際に溶融や融着される溶接トーチやメタライジングトーチまで100メートルに達し得る距離にわたって、ロールを備える導管を介して、ワイヤを摩擦なくスムーズに搬送することが可能になる。大型パックを安全な集中エリアに配置できることにより、パックの取り扱いや輸送に関するおよび溶接火花による火災の危険に関するリスクが低減されるだけでなく、生産セルの周辺に入る必要のないおよび最終的には生産サイクルに悪影響を及ぼすことのない点検が、容易になる。
【0006】
中断することなく生産を継続できる、大量のワイヤを含むバルクパックは、生産性の高いワイヤファームのセットアップに不可欠な要件である。
【0007】
ワイヤを担持する支持体は、わずか0.5kgを担持する小さなスプールから、最大2トンの製品を担持するバルクコンテナまで、さまざまな形態で利用可能である。
【0008】
大量のワイヤ消耗品をバルクコンテナに保管するには、回転式の巻き戻し(de−reeling)装置を必要とする大型のスプールから、ターンテーブル上に置いて中身を空にしなければならないリールキャプスタンまで、いくつかの方法がある。しかし、どちらの場合もワイヤが汚染にさらされる可能性があり、それにより錆や溶接部の穴につながる可能性があり、大型のワイヤスプールをまたはリールをほどくのに回転式の装置を使用しなければならないため、貴重な、時には大いに必要とされるフロアスペースが必要になる。
【0009】
第3の、明確により効果的なシステムが、数年前に開発された。それは、ワイヤを矯正(straightening)し、伸ばし、回転させることで塑性変形させて反ねじり(counter−torsion)を付与し、その後ワイヤを水平コイルの形状で容器に入れる巻線機である。前記ワイヤが消費のために繰り出されるとき、ターンテーブルまたは巻き戻し装置を必要とせずに、供給に大きな困難なく固定容器から簡単かつスムーズに引き出され、巻き取り工程が正しく行われていれば、パックから出る前に絡まることはない。この工程は「ツイストフリー(twist−free)」巻き取りと呼ばれているが、簡単ではなく、硬さ、柱状強度、グレード、および化学物質によっては、ワイヤが張力をなお保持し得ることがある。この張力は、容器から一度に1本のより線のみが引き出されるように、通常はワイヤコイルに配置される重さや形状の異なるリテーナプレートを介して、引き出し中に制御する必要がある。引き出し工程中に誤って更に多くのループが繰り出されると、すぐに絡まりが生じ、生産が中断される。
【0010】
先行技術には、繰り出し中に前記ワイヤを保持しかつ制動するためのあらゆる種類のシステムの開発または改良に焦点を当てた多くの発明が教示されており、例としては、前記ワイヤ上に自由落下させる、様々な形状のプレートから球状のマーブルまで、または1本のより線のみが引き出され同時にそれ以上のループが引き出されないようにするために、回転するワイヤガイドアームと前記プレートの下にあるリブとを備える保持装置が、挙げられる。問題は、パックから繰り出されるワイヤに過度の張力がかかると、使用されるリテーナの種類にかかわらず、必然的にいくらかのワイヤループが中央のプレートの開口部に向かって引きずられ、ワイヤが、搬送中に移動した場合に落下して絡まってしまう可能性があることである。第1の対応は、ワイヤを制御するために常に保持重量を増加させることであるが、リテーナプレートが重すぎると必然的にワイヤが変形し、変形したワイヤはアークのふらつきの問題を引き起こし、結果として溶接品質の問題を引き起こす可能性があり、非常に重いリテーナでもワイヤを常に制御することはできない。
【0011】
多くの先行技術特許の中で、アルミニウム用およびあらゆる鋼線ワイヤ用の、様々なワイヤ保持システムが一般的に説明されている。
【0012】
米国特許第5,746,380号明細書では、ワイヤの繰り出しを制御するためのワイヤコイル上の球状要素の層が記載されている。
【0013】
国際公開第2016/022389号では、リブを備える保持プレートとワイヤ案内回転アームとの組み合わせが提案され、前記回転アームは、前記ワイヤを外側に向けて案内しながら、前記ワイヤを制約し、その移動範囲を制限するスコープを備える。
【0014】
米国特許第7,410,111号明細書には、軽量化のためとアルミニウムワイヤの変形を防ぐための開口部を有するリテーナプレートが教示されている。
【0015】
米国特許第7,950,523号明細書には、輸送や取り扱い中に位置ずれが起きたワイヤストランドを制御するために相互作用する2枚のプレートの組み合わせが、記載されている。
【0016】
以前に提案された解決策はすべて、過度に張力がかかったワイヤが存在すると効果がなくなる可能性がある。なぜなら、ワイヤが前記リテーナプレートの下部から制御されずに滑り落ちてパックの中心に落ち、そこで最終的に絡まる可能性があるためである。
【0017】
オペレータのスキルと信頼性の高いワイヤリテーナプレートとを組み合わせた装置の効率性により、ツイストフリーの巻線によってワイヤに残る残留張力を最小化し、スムーズなワイヤ供給を確保する上で真に違いを生みだすことができる。しかし、ワイヤを引き出す際に、他の不確定要素が介入し、前記ワイヤの性能に悪影響を及ぼす可能性がある。その要素の例として、前記ワイヤフィーダ圧力ロールの調整不良、摩耗した圧力ロールのガイド溝や、「V」字型のガイド溝とは対照的な「U」字型のガイド溝やその逆、更に悪いことには、使用中のワイヤの直径に合わない不適切なサイズの溝などが挙げられる。上記のすべてが、ツイストフリーの巻線に張力を加える要因になる可能性があり、ワイヤが容器から引き出されている間、張力の蓄積がリテーナプレートによって発揮される制動効果を超えるとすぐに、ワイヤは抑制が効かずに飛び出し、単一の結び目または制御されていない乱雑なループの束の形態にて前記パック内で最終的に絡まったり詰まったりして、大規模なバルクパックがそもそも避けるように設計されていた生産の中断が引き起こされる。
【0018】
ツイストフリーの巻線工程後のワイヤに依然と存在する残留張力の問題は、5000グレードのアルミ線で悪化するようであるが、全てのアルミワイヤに、およびより変形しにくい硬いスチールワイヤにも影響を及ぼす可能性がある。5000グレードのアルミワイヤの挙動は非常に予測不可能であり、製造時に受ける焼鈍工程によって変化し得るワイヤ自体の化学的性質や硬さにおそらく関係している。5000グレードのアルミ溶接ワイヤは、バルクパック内に一定期間保管すると、部分的にねじれ前状態に戻る傾向があり、容器径が小さくなるほど、悪化してこの種の「静的」変形が起こるようであることが指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第5,746,380号明細書
【特許文献2】国際公開第2016/022389号
【特許文献3】米国特許第7,410,111号明細書
【特許文献4】米国特許第7,950,523号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
要約すると、ツイストフリー巻線機が、前記パック内にねじれの少ないワイヤを正確に敷設するという作業を行った後であっても、前記巻線機を調整する際にオペレータが発揮するスキルと特別な注意にもかかわらず、他のネガティブな不確定要素(装置の欠陥、不適切な調整、容器形状に対する調整など)がワイヤの性能になお悪影響を及ぼす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の範囲は、繰り出し制御リテーナプレートさえ必要ないかもしれないかまたは少なくとも非常に軽量で柔軟性のあるリテーナプレートが代わりに使用され得る程度に、ワイヤの残留張力を相殺して無力化することによって、前記コイルと前記ワイヤフィーダとの間のある箇所で前記ワイヤに介入することである。
【0022】
本発明は、バルクパックからのワイヤの繰り出しを円滑かつトラブルのないものとするために設計され、特にアルミニウム溶接ワイヤを対象としているが、ツイストフリー巻線工程を用いてバルクパックに入れた後のワイヤ全般に適用可能である。
【0023】
一般的には、それは、前記ワイヤコイルと前記ワイヤフィーダとの間のどこにでも配置することができる反張力(counter−tension)回転装置で構成される。好ましい実施形態では、その効果を最大化するために、前記装置は、前記ワイヤが前記パックから出る箇所にて、ドームの上部に取り付けられる。
【0024】
この装置は、少なくとも1つ、好ましくは2つ(またはそれ以上)のホイールを備えており、そのホイールのガイド溝が前記ワイヤにロックされ、その軸心を中心に前記ワイヤを、好ましくは前記ワイヤ自体を解く方向である所定の方向(時計回りまたは反時計回り)に回転させることにより、反ねじれ運動をワイヤに付与する。この反ねじれにより、ツイストフリー巻線工程が不完全である結果であるか、ホイール圧の調整不良やフィーダのロール溝の不良/摩耗によって前記ワイヤ上に蓄積された過剰な張力の結果であるかにかかわらず、前記ワイヤ上に依然と存在する張力が無力化される。
【0025】
更に、前記ワイヤに付与される前記反ねじり力により、前記ワイヤコイルの外縁に向かって前記ワイヤが押された状態が通常維持されるので、取り扱いや輸送中に不注意でずれてしまった後でも、ワイヤループがバルクパックの中心にある開放空きスペースに制御不能に落下するのを防止することができる。
【0026】
張力緩和装置の回転は、2つの方法で作動させることができる。
(1)回転するワッシャベースに連結され、ベベルギアを介してそれと相互作用する2つ以上のホイールの機械的な複合作用による方法である。この実施形態では、1つまたは複数(好ましくは2つ)の溝付きホイールのグループが、フィーダに引っ張られているワイヤに対して押し当てられ、そのベベルギアにより、丸歯車のワッシャベースに係合して回転させ、回転しながらそれらはワイヤを「クラッチ」したり掴んだりして、前記ベベルギアの形状や向きに回転速度や回転方向を依存させて、所定の所望の方向に反撚り(counter twisting)力を付与する。
(2)前記ワイヤが繰り出されている間に、ワイヤ軸に沿ったねじれの方向を自動的に決定する電気モータによる方法である。この場合、前記モータの速度および前記ワイヤの回転は、前記ワイヤフィーダに組み込まれ得るか(好ましい実施形態のように)、または前記ワイヤフィーダの外側に配置され得る外部のPLCによって制御される。
【0027】
機械式実施形態では、張力解放回転速度は後で調整または一時停止することができないが、モータ(DC、AC、ブラシレスまたはステッパのような任意の既知のタイプのものであってもよい)によって操作される張力解放装置は、いくつかの重要な機能を自動的に実行するようにPLCを介してプログラムすることができるので、明確により好ましく、より柔軟である。前記ワイヤに付与される回転方向を前記ワイヤの巻線方向に適応させることが可能である。更に、前記制御により、前記ワイヤに過度の反張力が蓄積したときが判断され、必要に応じて前記モータを係合または係合解除する電磁石を介して、前記ワッシャおよび溝付ホイールの回転を作動または一時停止させることができる。
【0028】
前記モータの係合は、送給ワイヤに反ねじり効果を付与することに寄与する、溝付きホイールのグループを担持する回転ワッシャに対して、モータを搭載する装置の可動部を押す空気圧ピストンまたは磁気ピストンによっても、作動させることができる。この場合、前記モータは回転し続け、前記ワイヤに蓄積された張力を相殺するために反捻りを付与する必要がある場合にのみ前記回転ワッシャと係合するが、モータはベルトまたはベベルギアを介して回転ワッシャと連続的に係合することもでき、この場合、その機能は、外部PLCを介して制御されプログラムされる必要がある。
【0029】
一般的に言えば、必要に応じて時計回り方向または反時計回り方向での軸心に沿うワイヤの反捻りによって生じる張力を無力化させることは、リテーナプレートを使用しなくても、ワイヤの円滑な繰り出しに能動的に寄与し得、または、リテーナプレートの使用を優先する場合は、それは少なくとも非常に軽くて柔軟なものである可能性があり、このことは、より軟らかいアルミニウムワイヤの起こり得る変形を防止するのに明確に有益である可能性がある。
【0030】
好ましい実施形態では、前記リテーナプレートは、前記ワイヤコイルに配置され、取り扱いおよび輸送中に前記ワイヤに係合されたままにされ得るが、ワイヤが既に案内導管内に挿入されている状態であっても容易に取り外されることを目的として、2つ以上のセクションに容易に分割され得る。
【0031】
本発明は、ベースと、回転軸心を中心に前記ベースに対して回転可能に取り付けられる支持体であって、回転軸心が前記ベースおよび前記支持体を通って延在するワイヤ経路と一致する支持体と、前記支持体に取り付けられ、前記ワイヤ経路に沿って案内されるワイヤに係合するように適合されるワイヤクラッチ装置と、前記ベースに対して前記支持体を回転させるように構成される回転機構と、を備える、ワイヤにねじり力を付与するための装置を提供する。前記ワイヤクラッチ装置は、所望の範囲で前記ワイヤにねじり力を付与することができるように、前記ワイヤに機械的に係合する。
【0032】
前記ワイヤクラッチ装置は、ワイヤの繰り出し(つまり、前記ワイヤ経路に沿った前記ワイヤの並進運動)を可能にすると同時に、前記ワイヤに回転運動を付与する任意の形態で備えられ得る。好ましくは、前記ワイヤクラッチ装置は、前記支持体に取り付けられる一対のロールであり、前記ロールは、前記ワイヤ経路の両側に配置され、ロールの少なくとも一つは、ワイヤ受容溝を有する。一対のロールは、前記ワイヤに機械的に係合してワイヤをその軸心を中心に回転させると同時にワイヤの繰り出しを可能にする、非常に単純でありながらも効果的な手段である。
【0033】
異なるワイヤをその軸心を中心に確実に回転させることができるようにするために、2つのロールを互いに付勢するための付勢装置が提供され、これにより、クラッチ力を特定の要件に適応させることができる。
【0034】
前記付勢装置は、付勢機構に締め付けトルクを付与するためのハンドホイールを備えてもよく、前記ハンドホイールから前記付勢機構へのトルク経路にはトルクリミッタが配置される。前記トルクリミッタは、前記付勢装置により前記ワイヤに過度の力が加えられるのを防止する。
【0035】
1つの実施形態によれば、スピンドルナットに前記ハンドホイールを連結するばね負荷式のカム機構が設けられる。前記カム機構により、技術的に単純でありながら効果的な方法でトルク制限機能を実現することができる。
【0036】
好ましくは、前記トルクリミッタは、異なるワイヤに前記機構を適応させることができるように調節可能である。更に、摩耗の影響は、随時補正され得る。
【0037】
前記回転機構は、前記ワイヤ経路に沿った前記ワイヤの動きを前記ベースに対する前記支持体の回転に変換するように構成されるギアを備えてもよく、それにより、前記ワイヤクラッチ機構を回転させるための別個の駆動部が必要なくなる。
【0038】
前記ギアは、前記ベースに連結したリングギアと、前記支持体に回転可能に取り付けたピニオンとを有するベベルギアであってもよく、結果としてコンパクトな回転機構を実現することができる。
【0039】
ベベルギアの代替として、非常にコンパクトなウォームドライブが、使用され得る。
【0040】
前記ワイヤクラッチ装置の前記ホイールを介してワイヤが引っ張られているときに前記ワイヤクラッチ装置が回転させられている方向を変更できるように、前記支持体には、前記ピニオン用の取り付け位置が2箇所設けられる。
【0041】
前記回転機構に関連付けられるトルクリミッタにより、ねじり力の最大量を、非常に簡単に所望のしきい値に制限できる。
【0042】
また、前記トルクリミッタは、前記ギアと、前記ギアが配置されるシャフトとの間に配置され得る。このようにして、コンパクトな設計を実現することができる。
【0043】
好ましくは、前記トルクリミッタは、前記ワイヤの異なる特性に前記機構を調整するように調整可能である。
【0044】
1つの実施形態によれば、前記トルクリミッタは、前記ばねの広い圧縮範囲にわたってわずかにだけ変化するばね力を提供するという点で有益な、ベルビルばねを備える。
【0045】
別の構成では、前記ベースに取り付けられ、そして前記ベースに対して前記支持体を回転させるように構成される駆動モータを、前記回転機構は備え得る。前記駆動モータは、前記ワイヤが前記ワイヤクラッチ装置を介して引き出される速度とは関係なく作動させることができ、それにより、ワイヤの引き出し速度とは無関係に前記ワイヤに加えられるねじり力を制御することができる。
【0046】
前記モータを前記支持体に連結するための連結装置が設けられ得、適切なときに前記モータを係脱および係合させることができる。
【0047】
技術的にシンプルでありながら信頼性の高い設計では、前記連結装置は、前記支持体に関連付けられる従動面に対して、前記駆動モータに連結された駆動ホイールを付勢するための当て装置(application device)を、備える。
【0048】
前記ワイヤにねじり力を付与するための前記装置は、前記ワイヤに過度のねじり力が付与されるときにそれを検出するためのモータ電流センサを備えてもよい。すなわち、前記モータ電流は、付与されたねじり力の良好な指標である。
【0049】
前記回転機構は、前記支持体の前記回転軸心に対して偏心して配置されたワイヤ受容開口部を有するアームであってもよく、それにより、前記ワイヤの引張力を利用して前記ベースを回転させる。
【0050】
本発明はまた、いくらかの量のワイヤがワイヤの複数のループからなるコイルの形態で収容される容器と、ワイヤにねじり力を付与するための装置であって、前記装置が前記ワイヤの上方に取り付けられて、ベースを有する装置と、前記ベースに対して回転軸心を中心に回転可能に取り付けられる支持体であって、前記回転軸心が前記ベースおよび前記支持体を通って延在するワイヤ経路と一致する支持体と、前記支持体に取り付けられる一対のロールであって、前記ロールは前記ワイヤ経路の両側に配置され、前記ロールの少なくとも1つがワイヤ受容溝を有するロールと、前記支持体を前記ベースに対して回転させるように構成される回転機構と、を備えるシステムを提供し、前記システムは、前記ワイヤにねじり力を付与するための前記装置の下流側に配置される少なくとも1つのワイヤフィーダを更に備える。前記ワイヤにねじり力を付与するための前記装置は、前記ワイヤフィーダの制御部から直接制御するのに都合がよい。
【0051】
好ましくは、2つのワイヤフィーダ、すなわち、前記ワイヤに回転を付与するための前記装置の下流側に配置される補助ワイヤフィーダ、および前記補助ワイヤフィーダの下流側でそれからかなりの距離を置いて設けられるメインワイヤフィーダが、使用されている。2つのワイヤフィーダを使用することにより、前記ワイヤを消費する場所からかなり離れた位置に前記ワイヤ容器を配置することができる。
【0052】
好ましい実施形態では、前記ワイヤは、マグネシウムを含むアルミニウム合金から作られた溶接ワイヤである。フィールドテストでは、このタイプの溶接ワイヤは、しばらく保管すると内部応力が発生する傾向があることが示されている。したがって、前記溶接ワイヤにねじり力を付与するための前記装置の効果は、非常に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】ワイヤコイルを収納した容器の断面図を示す。
【
図5】本発明によるワイヤにねじり力を付与するための装置を備えた容器を示す。
【
図6】分解図で、ワイヤにねじり力を付与するための前記装置の第1実施形態を示す。
【
図9】分解図で、ワイヤにねじり力を付与するための前記装置の第2実施形態を示す。
【
図14】分解図で、ワイヤにねじり力を付与するための前記装置の第3実施形態を示す。
【
図18】分解図で、ワイヤにねじり力を付与するための前記装置の第4実施形態を示す。
【
図22】ワイヤにねじり力を付与するための前記装置の第5実施形態の第1側面図を示す。
【
図26】カバーが追加された第5実施形態の斜視図を示す。
【
図27】第5実施形態の機構の一部の分解図を示す。
【
図31】ワイヤにねじり力を付与するための前記装置に使用されるトルクリミッタの断面を示す。
【
図35】
図31のトルクリミッタの第2部分切断側面図を示す。
【
図39】
図5と同様の方法で、本発明の第6実施形態による装置を示す。
【
図44】
図39に類似した図で、前記装置の第7実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1では、大量のワイヤ2がコイル3の形態で収容された容器1が示されている。コイル3は、前記ワイヤ2から形成される複数のループから構成されている。
【0055】
ワイヤ2は、溶接ワイヤであってもよい。また、3Dプリント用、メタライゼーション用などに使用される任意の消耗ワイヤであってもよい。
【0056】
ワイヤ2は、前記容器の上部開口部を通って容器1から引き出される。前記容器1の上部にはカバーまたはドーム4が設けられ得、ドーム4の主な目的は、前記ワイヤが消費されている間、容器1の内部が汚染されないようにすることである。
【0057】
コイル3の内部へのワイヤのループの落下を防止するために、コイル3の上面には、リテーナ5が配置される。リテーナ5の主な目的は、前記ワイヤに制動力を与えること、およびワイヤの自重で摩擦を生じさせることである。
【0058】
図3に示すように、前記リテーナが存在するにもかかわらず、前記ワイヤの一部のループがコイル3の内部に落下する可能性がある。万が一、ループが絡み合うと、前記ワイヤを容器1から引き出すことができなくなる。
【0059】
図4では、コイル3の内部にループが落下して絡まることを防止する、本発明によるシステムが示される。
【0060】
本発明の重要な要素は、ワイヤ2にねじり力を付与するための装置10である。一般的に、装置10は、ワイヤをそれ自体の軸心を中心に回転させ、それによって前記ワイヤの残留応力の一部を相殺し、また、ワイヤのループが容器1内のその位置に留まることを確実にする。
【0061】
装置10の下流側には、前記ワイヤをワイヤガイド7に進入させ、ワイヤが消費される場所、例えば溶接ロボットに向かって前進させるワイヤフィーダ6が、配置され得る。ワイヤフィーダ6が補助ワイヤフィーダとなるように、前記溶接ロボットの近くでメインワイヤフィーダが、使用され得る。
【0062】
装置10は、容器1の近くに配置される。示されている実施形態では、装置10は、ドーム4上に配置される(特に
図5を参照のこと)。
【0063】
図6から
図8では、前記ワイヤにねじり力を付与するための装置10の第1実施形態が、示される。
【0064】
装置10は、ベース12と、支持体14とを備える。支持体14は、ワイヤ2が装置10を通って案内されるワイヤ経路と一致する軸心16を中心に、ベース12に対して回転可能に取り付けられる。支持体14には、ワイヤ入口ガイド15が取り付けられる。
【0065】
支持体14をベース12に取り付けるために、ローラーベアリング18が使用される。
【0066】
ワイヤクラッチ装置20は、支持体14に取り付けられる。このワイヤクラッチ装置20は、ここでは、ワイヤ経路16の両側に配置された2つのロール22を備え、両方のロール22は、それぞれ、ワイヤ受容溝24を有する。
【0067】
ワイヤ受容溝24は、前記ワイヤをしっかりと係合するように、特定のワイヤの寸法に適合した幅および深さを有する。ワイヤフィーダ6が前記容器から前記ワイヤを引き出すとき、前記ワイヤは、2つの隣接するロール22の間の前記ワイヤ経路16を通過し、ロール22は、前記ワイヤによって連動させられるか(entrained)または回転させられる。
【0068】
装置10は、前記ベースに対して前記支持体を回転させるために構成される回転機構26を、更に備える。回転機構26は、ここでは、ベース12に固定して設けられたリングギア30と、支持体14に取り付けられたピニオン32とを備えるギア、特にベベルギア28から形成されている。
【0069】
ピニオン32は、ギアドライブ34を介してロール22のうちの一つに連結される。したがって、前記ロール22が前記ワイヤによって連動させられると、前記ロールの回転は、前記ギアを介してピニオン32に伝達され、ピニオン32は、リングギア30に係合する。したがって、前記ワイヤが装置10を通って引き出されるとき、支持体14はベース12に対して回転される。
【0070】
ロール22が前記ワイヤにしっかりと係合すると、支持体14の回転とそれに伴うワイヤクラッチ装置22の回転により、前記ワイヤにねじり力が付与される。
【0071】
前記ワイヤにかかるねじり力の大きさは、前記ワイヤの特性に大きく依存する。ワイヤによっては、引き出されるワイヤの各ループに対してワイヤクラッチ装置20を1.5回転させることで、良好な結果が得られることがわかっている。引き出したワイヤの長さあたりの回転数の比率は、ロール22の大きさおよび回転機構26の伝達比を選択することにより適合され得る。
【0072】
ワイヤクラッチ装置20は、引き出されるワイヤが容器1内で回転するのと同じ方向に回転する必要があることが明らかである。一例として、容器1を上方から見て、前記ワイヤが時計回りの方向に引き出される場合、ワイヤクラッチ装置20も時計回りの方向に回転する必要がある。
【0073】
容器1内の前記コイルの両方の可能な巻線方向に装置10を適合させることができるように、ピニオン32の2つの取り付け位置が可能である。
図8に見られるように、ピニオン32を反対側に取り付けるための取り付け位置36が設けられており、それによって回転方向を変える。
【0074】
前記ワイヤに過剰なねじり力が加わるのを防ぐために、回転機構20のどこかにトルクリミッタが設けられ得る。前記トルクリミッタは、ばね負荷式の摩擦ディスクまたは同様の機構によって形成され得る。
【0075】
装置10の第2実施形態が、
図9から
図12に示されている。第1実施形態から既知の構成要素については、同じ参照数字が使用されており、上記の記載が参照される。
【0076】
第1実施形態と第2実施形態との一般的な違いは、第2実施形態では、前記回転機構26が、ベース12に固定的に設けられたウォームギア31と、支持体14に取り付けられたスクリューギア33とから形成されたウォームドライブ29を備えることである。
【0077】
スクリューギア33は、ギアドライブ34を介してロール22のうちの1つに連結されている。したがって、前記ロール22が前記ワイヤによって連動させられると、前記ロールの回転は、前記ギアを介して、ウォームギア31に係合し回転させられると支持体14をベース12に対して回転させるスクリューギア33に、伝達される。
【0078】
第1実施形態と同様に、ギアドライブ34を支持体14の反対側に取り付けることにより、回転方向(sense of rotation)を逆転させることができる。
【0079】
また、前記支持体の回転に対するワイヤの繰り出しの固定伝達比とは無関係に、ベース12に対して支持体14を回転させることができるように、ギアドライブ34を電気モータと交換することも可能である。
【0080】
第2実施形態では、
図13を参照して以下で説明されるように、ロール22からスクリューギア33への伝達比を好都合に変更することができる。
【0081】
図13aでは、小径コイル3を有する小径容器1が示されている。ロール22の回転をスクリューギア33の適切な回転に変換するために、ロール22が取り付けられる軸心に大きなギアホイール34a(
図13b参照)が取り付けられており、ギアホイール34aは、中間ギア34bを介して、スクリューギア33に駆動連結された小さなギアホイール34cを駆動する。
【0082】
図13cでは、中径コイル3を有する中径容器1が示されている。ロール22の回転をスクリューギア33のより小さな回転(引き出したワイヤの長さ単位あたり)に変換するために、ロール22が取り付けられる軸心に中位のギアホイール34a(
図13d参照)が取り付けられており、ギアホイール34aは、中間ギア34bを介して、スクリューギア33に駆動連結された中位のギアホイール34cを駆動する。
【0083】
図13eでは、大径コイル3を有する大径容器1が示されている。ロール22の回転をスクリューギア33の更に小さな回転に変換するために、ロール22が取り付けられる軸心に小さなギアホイール34a(
図13f参照)が取り付けられており、ギアホイール34aは、中間ギア34bを介して、スクリューギア33に駆動連結された大きなギアホイール34cを駆動する。
【0084】
中間ギア34bは、摺動ガイド35に取り付けられており、これにより、異なるパック寸法(および前記パック内の対応するループ直径)にギア比を迅速に適合させることができる。
【0085】
ダストカバー17は、装置10および容器1に埃および塵が入るのを防止するために、装置10を閉じる。
【0086】
装置10の第3実施形態が、
図14から
図16に示されている。第1および第2の実施形態から既知の構成要素については、同じ参照数字が使用されており、上記の記載が参照される。
【0087】
第1および第2実施形態と第3実施形態との一般的な違いは、第1および第2実施形態が、前記ワイヤに付与されるねじり力がワイヤ自体の動きによって生成される「受動的」な装置であるのに対し、第2実施形態では、ねじり力がモータによって能動的に生成されるという点である。
【0088】
また、第3実施形態では、ウォームギア31とスクリューギア33とから形成されるウォームドライブ29が使用される。ここでは、ウォームギア31は、支持体14に固定的に連結され、スクリューギア33はベース12に取り付けられる。
【0089】
モータ40は、スクリューギア33を(適切な減速ギアを介して)駆動するために設けられる。
【0090】
ロール22は、回転可能に支持体14に取り付けられる。これらのロールは、互いに対して、調整可能な力で付勢される。
【0091】
第3実施形態では、装置10は、ワイヤフィーダ6に組み込むことができる制御部によって制御される。また、前記制御部を別に備えることも可能である。
【0092】
ワイヤが容器1から引き出されると、電動モータ40が作動してワイヤクラッチ装置20を正しい方向に回転させ、それにより前記ワイヤにねじり力を付与する。
【0093】
引き出されたワイヤの長さ単位あたりのワイヤクラッチ装置20の回転量は、前記制御部を介して非常に好都合に制御され得る。前記ワイヤに過剰なねじり力が付与されるのを防止するために、モータ40のモータ電流は、制御され得る。前記ワイヤに万が一過剰なねじり力が蓄積されると、前記ワイヤを回転させるのにより大きな力が必要になるため、前記モータ電流が増加する。このような場合には、モータ40の作動速度を低下もしくは停止させるか、または付勢装置46を停止させて支持体14が自由に回転できるようにし、それによって前記ワイヤのねじれ張力を解放することができる。続いて、付勢装置46を再起動させて、モータ40の作動を再開させることができる。
【0094】
第3実施形態の利点は、その構成要素の多くが、第2実施形態による受動装置と、第3実施形態による能動装置との両方に使用できることである。
【0095】
装置10の第4実施形態が、
図17から
図20に示されている。これまでの実施形態から既知の構成要素については、同じ参照数字が使用されており、上記の記載が参照される。
【0096】
第3実施形態と第4実施形態の一般的な違いは、第4実施形態では、モータと支持体との間に噛み合い式のギアの連結(したがってポジティブな連結)がなく、摩擦による連結があることである。
【0097】
回転機構26は、ここでは駆動ホイール42を駆動する駆動モータ40(電動モータ)を備える。電動モータ40は、駆動ホイール42とともに、ベース12に揺動可能に連結されるキャリア44に取り付けられる。
【0098】
ここではソレノイドの形をしている当て装置46は、ベース12に取り付けられており、キャリア44を、モータ40および駆動ホイール42とともに、支持体14に向かう方向に付勢するように構成されている。より具体的には、当て装置46は、駆動ホイール42を支持体14の円筒状の従動面48に対して押し付ける。
【0099】
駆動ホイール42は、支持体14がモータ40によって回転できることを確実にするために、Оリング50またはいくつかの他の摩擦増強要素を備えてもよい。
【0100】
第4実施形態のワイヤクラッチ装置20は、基本的には第1実施形態に対応しており、互いに対して、および前記ロール間を通過する前記ワイヤに対して付勢される2つのロール22を備える。ここでは、2つのロールが互いに押し付けられる力を変えることができる付勢装置52が設けられる。
【0101】
ワイヤが容器1から引き出されると、電気モータ40が作動してワイヤクラッチ装置20を正しい方向に回転させ、それによって前記ワイヤに所望のねじり力を付与する。同時に、付勢装置46が作動して、モータ40の動力が支持体14に確実に伝達されるようにする。
【0102】
図21では、
図17から
図20の実施形態の代替が示されている。ここでは、駆動ホイール42が、ベルトまたはゴムリング60を介して支持体14に連結されており、それにより、付勢装置が必要なくなる。
【0103】
図22から
図30では、ワイヤにねじり力を付与する前記装置の別の実施形態が示される。これまでの実施形態から既知の要素については、同じ参照番号が使用されており、上記の記載が参照される。
【0104】
図22から
図30の実施形態は、ワイヤ経路16を通る前記ワイヤの動きがロール22の回転をもたらし、ロール22の回転が、ベース12に対する支持体14の回転に変換されるという点で、
図6から
図13の実施形態と同等である。
【0105】
ここでのギアドライブ34は、ロール22のうちの1つと、2つの前記ロール22の回転を同期させる2つのギアホイール72のうちの1つとが取り付けられたシャフト70を備える。更に、シャフト70にはギアホイール74が取り付けられており、このギアホイールは、ウォームギア31に係合するスクリューギア32と最終的に連動する追加のギアホイールと噛み合う。
【0106】
トルクリミッタ76が、シャフト70とギアホイール34との間のトルク伝達経路に配置される。
【0107】
一般的には、トルクリミッタ76は、シャフト70からギアホイール74に過剰なトルクが伝達されることを防止する。
【0108】
トルクリミッタ76は、押えリング78と、ここではベルビルばねであるばね80と、調整ねじ82と、ロック機構84とを備える。
【0109】
ギアホイール74は、シャフト70のショルダー84に隣接して配置される。調整ねじ82をシャフト70にねじ込むことにより、ばね80は、調整ねじ82によって押えリング78に付勢され、その結果、ギアホイール74をショルダー84に押し付けることができる。したがって、摩擦力が生じ、これによりシャフト70からギアホイール74への所定の閾値までのトルクの伝達が可能になる。
【0110】
シャフト70における調整ねじ82を調整することにより、許容トルク伝達のレベルを調整することができる。ロック機構86は、所望のレベルのトルク伝達が達成されると、調整ねじ82をその位置にロックすることができる。
【0111】
前記トルクリミッタは、前記ワイヤに付与されるであろう過剰なねじり力が生じないことを確実にする。
【0112】
図31から
図38は、ロール22が互いに対して押される力を変化させるために使用される付勢装置52の詳細を示す。
【0113】
付勢装置52は、レバー53に力を及ぼす機能を果たし、その結果、ロール22を互いに向かって付勢する力が生じる。
【0114】
付勢装置52は、レバー53に連結され、付勢装置52によって牽引力を加えることができる牽引ロッド90を備え、付勢装置52は当接部92において支持されている。
【0115】
当接部92は、くさび形の押え部94が係合するフックの形状を有する(特に
図31から37を参照)。
【0116】
押え部94には、牽引ロッド90にねじ込まれるナット96が、支持されている。ナット96は、カム機構100によりナット96に連結されるハンドホイール98によって、回転させることができる。カム機構100は、ナット96に設けられたカム面102と、ハンドホイール98の回転軸心と平行な方向に変位可能に、ハンドホイール98において支持される押えピン104と、を備える。カム面102から反対に面している側で、押えピン104は、押えワッシャ106により係合されており、押えワッシャ106は、ばね108のスタックによって押えピン104側に付勢されている。ここでは、ベルビルばねが使用される。
【0117】
ばね108は、調整ホイール110によって予荷重(preloaded)状態でキャップされ、その軸方向の位置は、セットスクリュー112によって調整可能である。セットスクリュー112は、キャップ114の取り外し後にアクセス可能になる。
【0118】
セットスクリュー112を回転させることにより、ばね108の予荷重を調整することができる。前記予荷重を調整することにより、押えピン104の回転によってナット96のカム面102に伝達され得る最大トルクを調整することができる。
図38を見ると、必要な力により押圧ピン104がばね108の力に抗してカム102上を上方にスライドし最終的に前記カム面から離れることにならない限り、ハンドホイール98の時計回り方向の回転は、ナット96の回転を伴う。逆方向では、圧力ピン104は、カム面102上を下向きにスライドし、エンドストップで係合して、確実にナット96と連動する。
【0119】
ハンドホイール98からナット96への所望のレベルのトルク伝達がセットスクリュー112により調整されると、ロックスクリュー116が締め付けられる。
【0120】
図39から
図43では、ワイヤにねじり力を付与する装置の更に別の実施形態が示されている。これまでの実施形態から既知の要素については、同じ参照番号が使用されており、上記のコメントが参照される。
【0121】
図39から
図43の実施形態とこれまでの実施形態との一般的な違いは、
図39から
図43の実施形態では、ロール22を有する支持体14が、ワイヤ2の影響下でのみ回転されることである。前記支持体を回転させるためのモータは存在せず、ロール22の回転を前記支持体の回転に変換するギアも存在しない。
【0122】
ここで、支持体14は、支持体14の回転軸心に対して偏心して配置されたワイヤ受容開口部122を有するアーム120によって回転される。ワイヤ2がコイルの形態で容器1に保持されているので、ロール22の間に入るワイヤの部分と、コイルの形態で受け取られたワイヤの部分との間に作用する牽引力は、ワイヤ受容開口部122で、周辺方向に向けられた力の成分を有する力を生み出す。
【0123】
図39から43の実施形態の代替が
図44および45に示されている。代替の実施形態とこれまでの実施形態との違いは、代替では柔軟なワイヤガイド130が使用されることであり、このワイヤガイド130は、ワイヤ2がワイヤガイド130から出る端部が、支持体14の回転軸心に対して偏心して配置されるように、チューブ132に保持されている。
【0124】
図46から
図49では、ワイヤにねじり力を付与する装置の更に別の実施形態が示されている。これまでの実施形態から既知の構成要素については、同じ参照番号が使用されており、上記の記載が参照される。
【0125】
図46から
図49の実施形態では、装置10は、ロール22を能動的に回転させるために使用される電気モータ140を有する。ローラ22の下流には、前記ワイヤを矯正(straightening)するための2組の矯正ロール142が設けられる。モータ140によって駆動されるロール22は、矯正ロール142のセットを通してワイヤを押す機能を果たす。
【0126】
モータ140は、装置10の回転軸心に対して同心円状に配置された摺動接点144によって電力が供給される。
【外国語明細書】