(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-121741(P2021-121741A)
(43)【公開日】2021年8月26日
(54)【発明の名称】減速機およびギアドモータ
(51)【国際特許分類】
F16H 57/03 20120101AFI20210730BHJP
F16H 1/46 20060101ALI20210730BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20210730BHJP
【FI】
F16H57/03
F16H1/46
H02K7/116
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-14718(P2020-14718)
(22)【出願日】2020年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 正和
(72)【発明者】
【氏名】三溝 貴夫
【テーマコード(参考)】
3J027
3J063
5H607
【Fターム(参考)】
3J027FA11
3J027FA36
3J027FB01
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC24
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE27
3J063AA01
3J063AB12
3J063AC01
3J063BA09
3J063BB41
3J063CB02
3J063CD41
3J063XB07
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB14
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE33
5H607EE36
(57)【要約】
【課題】樹脂製ケース内のスペースを確保したうえで大型化を回避しながら機械ノイズを低減する。
【解決手段】モータ2の回転を、軸方向に並設された二段の遊星歯車機構31,32で減速して出力する減速機3は、二段の遊星歯車機構31,32を内蔵する筒状に形成され、軸方向両端のそれぞれに蓋部36及び底部35の少なくとも一方が設けられた樹脂製のケース33と、ケース33の材料よりもヤング率の高い材料で形成された補強部品30と、を備える。補強部品30は、ケース33の軸方向中央部においてその内周面34の少なくとも一部に沿って延在する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転を、軸方向に並設された二段の遊星歯車機構で減速して出力する減速機であって、
前記二段の遊星歯車機構を内蔵する筒状に形成され、軸方向両端のそれぞれに蓋部及び底部の少なくとも一方が設けられた樹脂製のケースと、
前記ケースの材料よりもヤング率の高い材料で形成され、前記ケースの軸方向中央部においてその内周面の少なくとも一部に沿って延在する補強部品と、を備えている
ことを特徴とする、減速機。
【請求項2】
前記補強部品は、前記ケースの軸方向中央部において、前記ケースの全周に亘って延在するリング形状である
ことを特徴とする、請求項1に記載の減速機。
【請求項3】
前記補強部品は、前記二段の遊星歯車機構のピニオンギア間に位置する
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の減速機。
【請求項4】
前記ケースの内周面には、軸方向において内径が互いに異なる小径内周面及び大径内周面と、前記小径内周面及び前記大径内周面を繋ぐとともに軸方向に対して傾斜したテーパ面とが含まれ、
前記補強部品は、前記ケースに圧入され、前記大径内周面と前記テーパ面との境界線に接する位置に配置されている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の減速機。
【請求項5】
前記ケースは、軸方向一端に前記底部が設けられるとともに軸方向他端に前記蓋部が設けられた有底筒状であり、前記底部が前記モータ側に位置する向きで前記モータに取り付けられる
ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の減速機。
【請求項6】
前記蓋部は、前記ケースの軸方向他端の開口に圧入嵌合されている
ことを特徴とする、請求項5記載の減速機。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の減速機と、
前記減速機の一段目の前記遊星歯車機構のサンギアと一体回転する軸を持つ前記モータと、を備えている
ことを特徴とする、ギアドモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二段の遊星歯車機構を用いた減速機と、この減速機を備えたギアドモータとに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の電動式ゲート(例えばパワーリフトゲート)の動力源として、モータの回転を減速して伝達する減速機付きモータ(ギアドモータ)が実用化されている。これらのギアドモータの1つとして、ゲートを支えるダンパーの筒の内部に装着されるものがあり、モータ軸と出力軸とが同軸となる遊星歯車機構を用いた減速機を備える。また、ギアドモータは電動でゲートを開閉させることから、比較的大きなトルクが必要となる。そのため、例えば特許文献1のような多段式の遊星歯車機構からなる減速機をモータに取り付けて、高減速比を実現することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−1056号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動式ゲートは車両のエンジンが停止しているときに開閉されることがあるため、動作音が目立ちやすく、機械ノイズを低く抑えたいという要望がある。しかしながら、機械ノイズを低減するために、例えば減速機のケースを金属製にした場合には、減速機の重量が増大するという別の課題を招くことになる。また、樹脂製のケースの肉厚を増大させることで機械ノイズを低減することも考えられるが、ケースの外径を変えずに肉厚を増やすとケース内に必要なスペースを確保できず、反対に、ケース内に必要なスペースを確保したうえで肉厚を増やすと、減速機が大型化するという課題がある。
【0005】
本件の減速機は、このような課題に鑑み案出されたもので、樹脂製ケース内のスペースを確保したうえで大型化を回避しながら機械ノイズを低減することを目的の一つとする。また、本件のギアドモータは、本件の減速機を備えることで大型化を招くことなく静粛性を高めることを目的の一つとする。なお、これらの目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示する減速機は、モータの回転を、軸方向に並設された二段の遊星歯車機構で減速して出力する減速機であって、前記二段の遊星歯車機構を内蔵する筒状に形成され、軸方向両端のそれぞれに蓋部及び底部の少なくとも一方が設けられた樹脂製のケースと、前記ケースの材料よりもヤング率の高い材料で形成され、前記ケースの軸方向中央部においてその内周面の少なくとも一部に沿って延在する補強部品と、を備える。
【0007】
(2)前記補強部品は、前記ケースの軸方向中央部において、前記ケースの全周に亘って延在するリング形状であることが好ましい。
(3)前記補強部品は、前記二段の遊星歯車機構のピニオンギア間に位置することが好ましい。
【0008】
(4)前記ケースの内周面には、軸方向において内径が互いに異なる小径内周面及び大径内周面と、前記小径内周面及び前記大径内周面を繋ぐとともに軸方向に対して傾斜したテーパ面とが含まれることが好ましい。この場合、前記補強部品は、前記ケースに圧入され、前記大径内周面と前記テーパ面との境界線に接する位置に配置されていることが好ましい。
【0009】
(5)前記ケースは、軸方向一端に前記底部が設けられるとともに軸方向他端に前記蓋部が設けられた有底筒状であり、前記底部が前記モータ側に位置する向きで前記モータに取り付けられることが好ましい。
(6)前記蓋部は、前記ケースの軸方向他端の開口に圧入嵌合されていることが好ましい。
【0010】
(7)ここで開示するギアドモータは、上記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の減速機と、前記減速機の一段目の前記遊星歯車機構のサンギアと一体回転する軸を持つ前記モータと、を備えている。
【発明の効果】
【0011】
開示の減速機によれば、樹脂製ケース内のスペースを確保したうえで大型化を回避しながら機械ノイズを低減することができる。
また、開示の減速機を備えたギアドモータによれば、大型化を招くことなく静粛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る減速機を備えたギアドモータを示す側面図、及び、この減速機に含まれる遊星歯車機構のスケルトン図である。
【
図2】
図1のギアドモータの減速機及びモータの一部を軸方向に切断するとともに斜め方向から見た斜視断面図である。
【
図3】
図1の減速機のケースを示す軸方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としての減速機及びギアドモータについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0014】
[1.全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係るギアドモータ1は、モータ2及び減速機3を備え、例えば車両の電動式ゲート(パワーリフトゲート)の動力源として用いられる。モータ2は、例えば永久磁石界磁式のブラシ付き直流モータであり、有底筒状のハウジング20に、図示しないステータ及びロータが内蔵される。
図2に示すように、ハウジング20は、その端面に軸方向へ膨出形成された凸部22と、凸部22内に固定された軸受23とを有する。モータ2の回転軸21は、軸受23に回転支持された状態でハウジング20の軸方向一端から外部に突設され、後述するサンギアS1と一体回転する。
【0015】
図1に示すように、減速機3は、軸方向に並設された二段の遊星歯車機構31,32によりモータ2の回転を減速して出力する。すなわち、本実施形態の減速機3は、パワーリフトゲート用の遊星ギア式の二段減速機である。二つの遊星歯車機構31,32は、筒状に形成された樹脂製のケース33に内蔵される。ケース33の軸方向両端のそれぞれには、蓋部及び底部の少なくとも一方が設けられる。
【0016】
図2及び
図3に示すように、本実施形態のケース33はテーパ付きの有底円筒状である。すなわち、ケース33の軸方向一端には底部35が設けられ、軸方向他端の開口には蓋部36が設けられ、軸方向中間部に外径が変化するテーパ状の傾斜部が設けられる。ケース33は、底部35がモータ2側に位置するとともに蓋部36がモータ2と反対側(出力側)に位置する向きでモータ2に取り付けられる。本実施形態では、底部35の中心部に、モータ2の凸部22が嵌合される孔部35aが設けられる。また、蓋部36の中心部に、後述するキャリアC2が挿通される円筒部36aが設けられる。
【0017】
本実施形態の蓋部36は、ケース33の軸方向他端の開口に圧入嵌合される。なお、本実施形態の減速機3では、
図1に示すように、ケース33の軸方向他端側の縁部に扇形の凹部33bが形成されており、蓋部36の外周端部に、この凹部33bに嵌合することで蓋部36をケース33に対し回転不能とする回り止め部36bが設けられる。
【0018】
次に、二つの遊星歯車機構31,32について説明する。本実施形態の減速機3では、
図2に示すように、遊星歯車機構31,32はいずれもはすば歯車で構成されている。以下、一段目(高速側)の遊星歯車機構31と二段目(低速側)の遊星歯車機構32とを区別する場合には、前者を「第一遊星歯車機構31」といい、後者を「第二遊星歯車機構32」という。第二遊星歯車機構32は第一遊星歯車機構31よりも大径に形成されており、耐荷重性が高められている。
【0019】
図1及び
図2に示すように、第一遊星歯車機構31は、サンギアS1がモータ2の回転軸21に固定され、リングギアR1がケース33に固定され、サンギアS1及びリングギアR1の双方に噛み合うピニオンギアP1を連結するキャリアC1が出力要素である。第二遊星歯車機構32は、サンギアS2が第一遊星歯車機構31のキャリアC1と連結されて一体回転するよう設けられ、リングギアR2がケース33に固定され、サンギアS2及びリングギアR2の双方に噛み合うピニオンギアP2を連結するキャリアC2が出力軸37に固定される。
【0020】
これにより、第一遊星歯車機構31のサンギアS1に入力されたモータ出力(回転)が、第二遊星歯車機構32のキャリアC2と一体回転する出力軸37から出力される。なお、
図2に示すように、二つのリングギアR1,R2はケース33の内周面34に形成されており、ケース33と一体で設けられる。また、キャリアC1,C2の各キャリアピンは片持ち支持となっており、ケース33の軸方向寸法の小型化が図られている。
【0021】
本実施形態のケース33の内周面34には、軸方向において内径が互いに異なる小径内周面34a及び大径内周面34bと、これらを繋ぐとともに軸方向に対し傾斜したテーパ面34cとが含まれる。小径内周面34aはモータ2側に位置し、大径内周面34bは出力側に位置する。小径内周面34a及び大径内周面34bはそれぞれ一様な内径で形成された円筒面であり、前者の内径が後者の内径よりも小さい。本実施形態では、小径内周面34aに第一遊星歯車機構31のリングギアR1が形成され、大径内周面34bに第二遊星歯車機構32のリングギアR2が形成される。なお、
図3のケース33では、内周面34に形成されるリングギアR1,R2を省略している。
【0022】
[2.要部構成]
次に、モータ2の作動時の機械ノイズを低減する構成について説明する。減速機3の機械ノイズに関する解析の結果、モータ2の作動時に、ケース33の軸方向中央部が両端部に比べて振動していることが判明した。これは、
図3に示すように、ケース33の軸方向両端には底部35及び蓋部36がそれぞれ設けられていて高強度であるのに対し、軸方向中央部は両端部に比べて強度が低く、振動しやすいことが原因であると考えられる。
【0023】
このような解析結果に基づき、本減速機3には、ケース33の材料よりもヤング率の高い材料で形成された補強部品30が設けられる。この補強部品30は、
図1及び
図2に示すように、ケース33の軸方向中央部において、内周面34の少なくとも一部に沿って延在する。このように、ケース33の軸方向中央部を支持する高強度な補強部品30を配置することで、軸方向中央部の強度が高まり振動が抑制され、機械ノイズの低減が図られる。
【0024】
補強部品30の材質は、ケース33よりも高強度(高ヤング率)であればよく、例えば、鉄やアルミや銅といった金属であってもよいし、高強度の樹脂であってもよい。補強部品30は、例えば、ケース33の軸方向中央部においてケース33の全周に亘って延在するリング形状(例えばワッシャー)であってもよいし、円周の一部が欠けたC形状であってもよい。また、補強部品30は一つに限られず、複数の円弧形状の補強部品30が、同一の軸方向位置において周方向に隙間をあけて延在していてもよい。本実施形態では、リング形状の補強部品30を例示する。
【0025】
図2に示すように、本実施形態の補強部品30は、二つの遊星歯車機構31,32のピニオンギアP1,P2間に位置する。これらのピニオンギアP1,P2間は、ケース33の内部空間のなかで、径方向において比較的広い空間が形成される。リング状の補強部品30は、径方向寸法(外径から内径を減じた差の半分)が大きいほどケース33の強度を高められることから、ピニオンギアP1,P2間に補強部品30を配置することで、ケース33の強度がより高められる。なお、本実施形態の補強部品30は、第一遊星歯車機構31のキャリアC1の径方向外側に僅かな隙間をあけて配置される。
【0026】
また、本実施形態の補強部品30は、ケース33の他端側の開口から圧入され、
図3に示すように、大径内周面34bとテーパ面34cとの境界線に接する位置に配置される。すなわち、補強部品30は、内周面34の内径が変化する位置まで圧入され、この位置で固定される。なお、ケース33は、底部35の内側を向く面と蓋部36のケース内側を向く端面とから等距離の位置(軸方向の中心位置)が最も振動しやすいことから、この位置に補強部品30が配置されることが好ましい。
【0027】
[3.効果]
(1)上述した減速機3では、ケース33の材料よりもヤング率の高い材料で形成された補強部品30が、ケース33の軸方向中央部において内周面34の少なくとも一部に沿って延在している。これにより、ケース33のなかで最も振動しやすい軸方向中央部の強度を高めることができるため、ケース33の振動を抑制できる。
【0028】
また、補強部品30を設けたときに得られるケース33の強度と同等の強度を、補強部品30を設けずに樹脂製のケースの構造を工夫することで得ようとする場合には、ケースの肉厚を増やしたりリブを追加したりすることが考えられる。しかしながら、ケースのヤング率は補強部品30のヤング率よりも低いため、ケースの構造のみで強度を確保するためには、ケースの大型化や形状の複雑化を回避できない。
【0029】
このような課題に対し、上述した減速機3は、補強部品30を設けるというシンプルな構成で高強度化を実現できるため、ケース33の肉厚を増やして大型化したり、形状を複雑にしたりする必要がない。したがって、上述した減速機3によれば、ケース33内のスペースを確保したうえで大型化を回避しながら、機械ノイズを低減することができる。
【0030】
(2)補強部品30がケース33の全周に亘って延在するリング形状である場合には、ケース33の軸方向中央部を全周に亘って均等に高強度化できるため、機械ノイズをより低減することができる。
【0031】
(3)また、上述した補強部品30は、二段の遊星歯車機構31,32のピニオンギアP1,P2間という、ケース33内の比較的広い空間に配置されているため、補強部品30の径方向寸法を大きくすることができる。これにより、ケース33の軸方向中央部の強度をより高めることができ、機械ノイズをより低減することができる。
【0032】
(4)上述したケース33は、小径内周面34a及び大径内周面34bとこれらを繋ぐテーパ面34cとを有しており、補強部品30はケース33の開口から圧入されて大径内周面34bとテーパ面34cとの境界線に接する位置に配置される。このため、減速機3の使用によって補強部品30の位置がずれることを防止でき、機械ノイズの低減を継続して実現できる。なお、ケース33の内径が異なる部分をテーパ形状(傾斜面)とすることで、ケース33を成型しやすくすることができる。
【0033】
(5)上述した減速機3では、有底筒状のケース33の底部35がモータ2側に位置する向きでモータ2に取り付けられ、出力側には蓋部36が配置される。このため、蓋部36の形状を変更するだけで、減速機3の出力側に接続される要素(接続対象物)の仕様に対応できる。言い換えると、形状が比較的簡素な蓋部36を接続対象物ごとに変更し、形状が比較的複雑なケース33を様々な種類の接続対象物に対して共通化することができるため、コスト削減を図ることができる。
【0034】
また、第二遊星歯車機構32(低速側)の方が第一遊星歯車機構31(高速側)よりも大径であるため、ケース33の内径に差を設ける場合には、低速側の内径が高速側の内径よりも大きくなくてはならない。これに対し、上述した減速機3では、底部35がモータ2側に位置する向きでケース33がモータ2に取り付けられるため、ケース33の開口側の内径を底部35側の内径よりも大きくでき、樹脂成型時に型を抜くことができる。このため、ケース33を段付き形状に形成することができ、ケース33の小型化を図ることができる。
【0035】
さらに、底部35をモータ2側に向けてケース33をモータ2に取り付けることで、ケース33と蓋部36との嵌合箇所をモータ2や第一遊星歯車機構31から離すことができる。モータ2や第一遊星歯車機構31が減速機3を振動させる加振源であるため、嵌合箇所を加振源から離すことで、仮にケース33と蓋部36との嵌合にわずかな隙間が存在しても、嵌合箇所における機械ノイズを低減することができる。
【0036】
(6)上述した減速機3では、上記の蓋部36がケース33の開口に圧入嵌合されることから、ケース33の開口の振動を抑制できる。
(7)上述した減速機3を備えたギアドモータ1によれば、大型化を招くことなく静粛性を高めることができる。
【0037】
[4.その他]
上述したギアドモータ1及び減速機3は一例であって、上述したものに限られない。例えば、補強部品30がケース33に圧入される代わりにインサート成形されてもよい。すなわち、補強部品30は、ケース内側に露出して設けられてもよいしケースに埋設されてもよいし、ケース外側に設けてもよい。また、補強部品30の位置は遊星歯車機構31,32のピニオンギアP1,P2間に限られず、いずれか一方の遊星歯車機構31,32と重なる位置(例えばリングギアR1又はR2と重なる位置)であってもよい。少なくとも、ケースの軸方向中央部に補強部品が配置されることで、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0038】
ケース33の形状は上述したテーパ付きの有底円筒状に限られない。例えば、テーパの代わりに段付きの筒状であってもよいし、ケースの外径が軸方向において一定の筒状であってもよい。段付き筒状のケースの場合には、補強部品を段差部分に配置(例えば圧入)することで、補強部品の位置を安定させることができる。なお、ケースの厚み(肉厚)は軸方向において一定でなくてもよい。すなわち、内周面にはテーパや段差を設け、外周面は外径一定としてもよい。また、ケースの軸方向両端に開口が設けられ、これら開口に蓋部が取り付けられる構成であってもよい。なお、モータ2に対するケースの取り付け向きは、上記と逆であってもよい。
【0039】
二段の遊星歯車機構31,32の構成は上記のものに限られない。例えば、はすば歯車に代えて平歯車であってもよいし、リングギアR1,R2がケース33の内周面34に形成された一体ものではなく、ケースに後付けされるものであってもよい。入力要素(サンギア),出力要素(キャリア),固定要素(リングギア)の種類も上記のものに限られない。
なお、上述したギアドモータ1の用途は車両の電動式ゲートの駆動源に限られず、様々な電動機器の駆動源に適用してよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ギアドモータ
2 モータ
3 減速機
20 ハウジング
21 回転軸
22 凸部
23 軸受
30 補強部品
31 第一遊星歯車機構
32 第二遊星歯車機構
33 ケース
33b 凹部
34 内周面
34a 小径内周面
34b 大径内周面
34c テーパ面
35 底部
35a 孔部
36 蓋部
36a 円筒部
36b 回り止め部
37 出力軸
C1,C2 キャリア
P1,P2 ピニオギア
R1,R2 リングギア
S1,S2 サンギア