【解決手段】モータ2の回転を減速して出力する減速機3は、モータ2の軸方向に並設され、はすば歯車で構成された二段の遊星歯車機構31,32と、二段の遊星歯車機構31,32を内蔵する筒状に形成された樹脂製のケース33と、を備える。一段目の遊星歯車機構31のサンギアS1及びピニオンギアP1の内側噛合い率ε
前記ケースは、軸方向一端に底部が設けられるとともに軸方向他端に蓋部が設けられた有底筒状であり、前記底部が前記モータ側に位置する向きで前記モータに取り付けられる
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の減速機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献1の表1によれば、噛合い率が2.3〜2.8に設定されたものしか例示されておらず、噛合い率を3.0以上に設定した構成が説明されていない。また、特許文献1には、噛合い率の範囲の上限値を3.5に設定した根拠が存在しない。
【0006】
一般的に、ギアの噛合い率を大きくしていくと、ギアの強度は低下していく傾向があり、ギア設計において、相反するこれら二つのパラメータ(噛合い率,強度)をどのように設定するかは重要とされる。上記の特許文献1には、一段の遊星歯車機構を備えた遊星歯車減速機において、上記のようにモジュール,リングギアの歯数及び噛合い率を設定する構成を説明し、複数段の遊星歯車機構を備えた遊星歯車減速機にも同様に適用可能である旨が記載されている。しかしながら、複数段の遊星歯車機構によってモータ出力を減速する減速機では、高速側の遊星歯車機構と低速側の遊星歯車機構とに作用するトルクの大きさが異なるため、これら二つの遊星歯車機構を同様に設計したのではギアの強度が確保されないおそれがある。
【0007】
本件の減速機は、このような課題に鑑み案出されたもので、二段の遊星歯車機構を備えた減速機において、ギアの強度を確保しつつ機械ノイズを低減することを目的の一つとする。また、本件のギアドモータは、本件の減速機を備えることで大型化を招くことなく静粛性を高めることを目的の一つとする。なお、これらの目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)ここで開示する減速機は、モータの回転を減速して出力する減速機であって、前記モータの軸方向に並設され、はすば歯車で構成された二段の遊星歯車機構と、前記二段の遊星歯車機構を内蔵する筒状に形成された樹脂製のケースと、を備え、一段目の前記遊星歯車機構のサンギア及びピニオンギアの内側噛合い率、及び、前記一段目の遊星歯車機構の前記ピニオンギア及びリングギアの外側噛合い率の少なくとも一方が3.0以上であり、且つ、前記内側噛合い率及び前記外側噛合い率がいずれも二段目の前記遊星歯車機構の噛合い率よりも大きい。
【0009】
(2)前記内側噛合い率及び前記外側噛合い率がいずれも3.0以上であることが好ましい。
(3)前記一段目の遊星歯車機構の前記リングギアのねじれ角は、前記二段目の遊星歯車機構のリングギアのねじれ角よりも大きいことが好ましい。
【0010】
(4)前記ケースは、軸方向一端に底部が設けられるとともに軸方向他端に蓋部が設けられた有底筒状であり、前記底部が前記モータ側に位置する向きで前記モータに取り付けられることが好ましい。
(5)前記蓋部は、前記ケースの軸方向他端の開口に圧入嵌合されていることが好ましい。
【0011】
(6)ここで開示するギアドモータは、上記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の減速機と、前記減速機の前記一段目の遊星歯車機構の前記サンギアと一体回転する軸を持つ前記モータと、を備えている。
【発明の効果】
【0012】
開示の減速機によれば、高速回転する一段目の遊星歯車機構の内側噛合い率及び外側噛合い率の少なくとも一方を3.0以上とすることで、ギアの静音化を実現でき、減速機の機械ノイズを低減できる。また、大きなトルクが入力される二段目の遊星歯車機構の噛合い率を一段目の遊星歯車機構の噛合い率よりも低くすることで、ギアの強度を高められる。したがって、ギアの強度を確保しつつ減速機の機械ノイズを低減することができる。
また、開示の減速機を備えたギアドモータによれば、大型化を招くことなく静粛性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としての減速機及びギアドモータについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
[1.全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係るギアドモータ1は、モータ2及び減速機3を備え、例えば車両の電動式ゲート(パワーリフトゲート)の動力源として用いられる。モータ2は、例えば永久磁石界磁式のブラシ付き直流モータであり、有底筒状のハウジング20に、図示しないステータ及びロータが内蔵される。
図2に示すように、ハウジング20は、その端面に軸方向へ膨出形成された凸部22と、凸部22内に固定された軸受23とを有する。モータ2の回転軸21は、軸受23に回転支持された状態でハウジング20の軸方向一端から外部に突設され、後述するサンギアS1と一体回転する。
【0016】
図1に示すように、減速機3は、軸方向に並設された二段の遊星歯車機構31,32によりモータ2の回転を減速して出力する。すなわち、本実施形態の減速機3は、パワーリフトゲート用の遊星ギア式の二段減速機である。二つの遊星歯車機構31,32は、筒状に形成された樹脂製のケース33に内蔵される。ケース33の軸方向両端のそれぞれには、蓋部及び底部の少なくとも一方が設けられる。
【0017】
図2及び
図3に示すように、本実施形態のケース33はテーパ付きの有底円筒状である。すなわち、ケース33の軸方向一端には底部35が設けられ、軸方向他端の開口には蓋部36が設けられ、軸方向中間部に外径が変化するテーパ状の傾斜部が設けられる。ケース33は、底部35がモータ2側に位置するとともに蓋部36がモータ2と反対側(出力側)に位置する向きでモータ2に取り付けられる。本実施形態では、底部35の中心部に、モータ2の凸部22が嵌合される孔部35aが設けられる。また、蓋部36の中心部に、後述するキャリアC2が挿通される円筒部36aが設けられる。
【0018】
本実施形態の蓋部36は、ケース33の軸方向他端の開口に圧入嵌合される。なお、本実施形態の減速機3では、
図1に示すように、ケース33の軸方向他端側の縁部に扇形の凹部33bが形成されており、蓋部36の外周端部に、この凹部33bに嵌合することで蓋部36をケース33に対し回転不能とする回り止め部36bが設けられる。
【0019】
次に、二つの遊星歯車機構31,32について説明する。
図2に示すように、遊星歯車機構31,32はいずれもはすば歯車で構成されている。以下、一段目(高速側)の遊星歯車機構31と二段目(低速側)の遊星歯車機構32とを区別する場合には、前者を「第一遊星歯車機構31」といい、後者を「第二遊星歯車機構32」という。第二遊星歯車機構32は第一遊星歯車機構31よりも大径に形成されており、耐荷重性が高められている。
【0020】
図1及び
図2に示すように、第一遊星歯車機構31は、サンギアS1がモータ2の回転軸21に固定され、リングギアR1がケース33に固定され、サンギアS1及びリングギアR1の双方に噛み合うピニオンギアP1を連結するキャリアC1が出力要素である。第二遊星歯車機構32は、サンギアS2が第一遊星歯車機構31のキャリアC1と連結されて一体回転するよう設けられ、リングギアR2がケース33に固定され、サンギアS2及びリングギアR2の双方に噛み合うピニオンギアP2を連結するキャリアC2が出力軸37に固定される。
【0021】
これにより、第一遊星歯車機構31のサンギアS1に入力されたモータ出力(回転)が、第二遊星歯車機構32のキャリアC2と一体回転する出力軸37から出力される。なお、
図2に示すように、二つのリングギアR1,R2はケース33の内周面34に形成されており、ケース33と一体で設けられる。また、キャリアC1,C2の各キャリアピンは片持ち支持となっており、ケース33の軸方向寸法の小型化が図られている。
【0022】
本実施形態のケース33の内周面34には、軸方向において内径が互いに異なる小径内周面34a及び大径内周面34bと、これらを繋ぐとともに軸方向に対し傾斜したテーパ面34cとが含まれる。小径内周面34aはモータ2側に位置し、大径内周面34bは出力側に位置する。小径内周面34a及び大径内周面34bはそれぞれ一様な内径で形成された円筒面であり、前者の内径が後者の内径よりも小さい。
【0023】
本実施形態では、小径内周面34aに第一遊星歯車機構31のリングギアR1が形成され、大径内周面34bに第二遊星歯車機構32のリングギアR2が形成される。なお、
図3のケース33には、内周面34に形成されるリングギアR1,R2の一部を模式的に示す。
図3に示すように、本実施形態の減速機3では、第一遊星歯車機構31のリングギアR1のねじれ角が第二遊星歯車機構32のリングギアR2のねじれ角よりも大きい。
【0024】
[2.要部構成]
次に、モータ2の作動時の機械ノイズを低減する構成について説明する。本実施形態の減速機3には、ノイズ低減のための構成が二種類設けられる。一つ目は、ギアの噛合い率により静音化を図る構成であり、二つ目はケース33の強度を高めることで振動を抑制する構成である。以下、順番に説明する。
【0025】
第一遊星歯車機構31はモータ2側に位置することから、高速で低負荷の機能が必要である。つまり、第一遊星歯車機構31には強度よりもノイズ対策が求められる。一方、第二遊星歯車機構32は出力側に位置することから、低速で高負荷の機能が必要である。つまり、第二遊星歯車機構32にはノイズよりも強度対策が求められる。これらの観点から、第一遊星歯車機構31のギアの噛合い率ε
1を高めることで機械ノイズの低減を図り、第二遊星歯車機構32の有効歯たけを小さくすることで噛合い率ε
2を小さくしつつ強度を高める。
【0026】
第一遊星歯車機構31では、サンギアS1及びピニオンギアP1の内側噛合い率ε
1in、及び、ピニオンギアP1及びリングギアR1の外側噛合い率ε
1outの少なくとも一方が3.0以上に設定されるとともに、内側噛合い率ε
1in及び外側噛合い率ε
1outがいずれも第二遊星歯車機構32の噛合い率ε
2(以下「第二噛合い率ε
2」という)よりも大きく設定される。なお、二つの噛合い率ε
1in,ε
1outを特に区別しない場合には「第一噛合い率ε
1」という。
【0027】
内側噛合い率ε
1in及び外側噛合い率ε
1outは互いに同一でなくてもよいが、両方の噛合い率が3.0以上であることが好ましい。本実施形態では、内側噛合い率ε
1in及び外側噛合い率ε
1outがいずれも3.0以上である場合を例示する。すなわち、
図1にも示すように、本実施形態の減速機3では以下の式が成り立つ。
第一噛合い率ε
1≧3.0、かつ、第一噛合い率ε
1>第二噛合い率ε
2
【0028】
噛合い率が大きいほど1歯に作用する荷重が小さくなり、ギアの作動音が低減される。ここで、「第一噛合い率ε
1が3.0以上」とは、減速機3を任意のタイミングで停止させた場合に、二つのギア(例えばサンギアS1及びピニオンギアP1)が常に3歯又は4歯で噛合うことを意味する。言い換えると、第一遊星歯車機構31の各ギアS1,P1,R1が常に3歯又は4歯で噛み合うことになる。このため、第一噛合い率ε
1が3.0以上であることは、第一遊星歯車機構31の静音化にとって非常に重要である。
【0029】
一方で、第二遊星歯車機構32の回転は低速であり、機械ノイズへの影響は小さいことから、有効歯たけを小さくするなどして歯の強度を高める歯形とすることができる(噛合い率は低くなる)。このように、第一遊星歯車機構31と第二遊星歯車機構32とで異なる噛合い率ε
1,ε
2に設定することで、それぞれに要求される機能を確保可能となる。
【0030】
本実施形態では、第二遊星歯車機構32の各ギアS2,P2,R2の有効歯たけを小さくすることで第二噛合い率ε
2を小さくし、強度を高めているが、第二噛合い率ε
2を小さくする方法はこれに限られない。同様に、第一噛合い率ε
1を3.0以上に設定する方法としては、噛合い圧力角を小さくする、歯数を大きくする、有効歯たけを大きくするなどが挙げられる。なお、第一噛合い率ε
1が3.0以上である第一遊星歯車機構31では、各ギアS1,P1,R1の強度が第二遊星歯車機構32の各ギアS2,P2,R2よりも低くなるが、第一遊星歯車機構31に作用するトルクは第二遊星歯車機構32に比して小さいことから、強度不足となることはない。
【0031】
次に、ケース33の強度を高めることで振動を抑制する構成について説明する。減速機3の機械ノイズに関する解析の結果、モータ2の作動時に、ケース33の軸方向中央部が両端部に比べて振動していることが判明した。これは、
図3に示すように、ケース33の軸方向両端には底部35及び蓋部36がそれぞれ設けられていて高強度であるのに対し、軸方向中央部は両端部に比べて強度が低く、振動しやすいことが原因であると考えられる。
【0032】
このような解析結果に基づき、本減速機3には、ケース33の材料よりもヤング率の高い材料で形成された補強部品30が設けられる。この補強部品30は、
図1及び
図2に示すように、ケース33の軸方向中央部において、内周面34の少なくとも一部に沿って延在する。このように、ケース33の軸方向中央部を支持する高強度な補強部品30を配置することで、軸方向中央部の強度が高まり振動が抑制され、機械ノイズの低減が図られる。
【0033】
補強部品30の材質は、ケース33よりも高強度(高ヤング率)であればよく、例えば、鉄やアルミや銅といった金属であってもよいし、高強度の樹脂であってもよい。補強部品30は、例えば、ケース33の軸方向中央部においてケース33の全周に亘って延在するリング形状(例えばワッシャー)であってもよいし、円周の一部が欠けたC形状であってもよい。また、補強部品30は一つに限られず、複数の円弧形状の補強部品30が、同一の軸方向位置において周方向に隙間をあけて延在していてもよい。本実施形態では、リング形状の補強部品30を例示する。
【0034】
図2に示すように、本実施形態の補強部品30は、二つの遊星歯車機構31,32のピニオンギアP1,P2間に位置する。これらのピニオンギアP1,P2間は、ケース33の内部空間のなかで、径方向において比較的広い空間が形成される。リング状の補強部品30は、径方向寸法(外径から内径を減じた差の半分)が大きいほどケース33の強度を高められることから、ピニオンギアP1,P2間に補強部品30を配置することで、ケース33の強度がより高められる。なお、本実施形態の補強部品30は、第一遊星歯車機構31のキャリアC1の径方向外側に僅かな隙間をあけて配置される。
【0035】
また、本実施形態の補強部品30は、ケース33の他端側の開口から圧入され、
図3に示すように、大径内周面34bとテーパ面34cとの境界線に接する位置に配置される。すなわち、補強部品30は、内周面34の内径が変化する位置まで圧入され、この位置で固定される。なお、ケース33は、底部35の内側を向く面と蓋部36のケース内側を向く端面とから等距離の位置(軸方向の中心位置)が最も振動しやすいことから、この位置に補強部品30が配置されることが好ましい。
【0036】
[3.効果]
(1)上述した減速機3では、高速回転する第一遊星歯車機構31の内側噛合い率ε
1in及び外側噛合い率ε
1outの少なくとも一方が3.0以上に設定されるため、ギアの静音化を実現でき、減速機3の機械ノイズを低減できる。また、大きなトルクが入力される第二遊星歯車機構32の噛合い率ε
2が第一噛合い率ε
1よりも低く設定されるため、第二遊星歯車機構32の強度を高められる。したがって、ギアの強度を確保しつつ減速機3の機械ノイズを低減することができる。なお、上述した減速機3では、噛合い率の設定によって機械ノイズを低減させることから、部品点数の増大を回避でき、材料の変化や金型コストの変化もほとんどない。そのため、これらの観点からも上述した減速機3は優れている。
【0037】
(2)上述した減速機3では、内側噛合い率ε
1in及び外側噛合い率ε
1outがいずれも3.0以上であることから、機械ノイズをより低減することができる。
【0038】
(3)また、第一遊星歯車機構31のリングギアR1のねじれ角は、第二遊星歯車機構32のリングギアR2のねじれ角よりも大きいことから、第一遊星歯車機構31の噛合い率ε
1を大きくすることができる。また、ねじれ角が大きいほど噛合い率は大きくなるが、スラスト力も大きくなるという特性がある。これに対し、上述した減速機3によれば、大きなトルクが作用する第二遊星歯車機構32のリングギアR2のねじれ角が、第一遊星歯車機構31のリングギアR1のねじれ角よりも小さいため、スラスト力の増大を抑制できる。
【0039】
(4)上述した減速機3では、有底筒状のケース33の底部35がモータ2側に位置する向きでモータ2に取り付けられ、出力側には蓋部36が配置される。このため、蓋部36の形状を変更するだけで、減速機3の出力側に接続される要素(接続対象物)の仕様に対応できる。言い換えると、形状が比較的簡素な蓋部36を接続対象物ごとに変更し、形状が比較的複雑なケース33を様々な種類の接続対象物に対して共通化することができるため、コスト削減を図ることができる。
【0040】
また、第二遊星歯車機構32(低速側)の方が第一遊星歯車機構31(高速側)よりも大径であるため、ケース33の内径に差を設ける場合には、低速側の内径が高速側の内径よりも大きくなくてはならない。これに対し、上述した減速機3では、底部35がモータ2側に位置する向きでケース33がモータ2に取り付けられるため、ケース33の開口側の内径を底部35側の内径よりも大きくでき、樹脂成型時に型を抜くことができる。このため、ケース33を段付き形状に形成することができ、ケース33の小型化を図ることができる。
【0041】
さらに、底部35をモータ2側に向けてケース33をモータ2に取り付けることで、ケース33と蓋部36との嵌合箇所をモータ2や第一遊星歯車機構31から離すことができる。モータ2や第一遊星歯車機構31が減速機3を振動させる加振源であるため、嵌合箇所を加振源から離すことで、仮にケース33と蓋部36との嵌合にわずかな隙間が存在しても、嵌合箇所における機械ノイズを低減することができる。
【0042】
(5)上述した減速機3では、上記の蓋部36がケース33の開口に圧入嵌合されることから、ケース33の開口の振動を抑制できる。
【0043】
(6)また、本実施形態の減速機3では、ケース33の材料よりもヤング率の高い材料で形成された補強部品30が、ケース33の軸方向中央部において内周面34の少なくとも一部に沿って延在している。これにより、ケース33のなかで最も振動しやすい軸方向中央部の強度を高めることができるため、ケース33の振動を抑制できる。
【0044】
また、補強部品30を設けたときに得られるケース33の強度と同等の強度を、補強部品30を設けずに樹脂製のケースの構造を工夫することで得ようとする場合には、ケースの肉厚を増やしたりリブを追加したりすることが考えられる。しかしながら、ケースのヤング率は補強部品30のヤング率よりも低いため、ケースの構造のみで強度を確保するためには、ケースの大型化や形状の複雑化を回避できない。
【0045】
このような課題に対し、本実施形態の減速機3は、補強部品30を設けるというシンプルな構成で高強度化を実現できるため、ケース33の肉厚を増やして大型化したり、形状を複雑にしたりする必要がない。したがって、本実施形態の減速機3によれば、噛合い率の設定によって機械ノイズを低減できるとともに、ケース33内のスペースを確保したうえで大型化を回避しながら機械ノイズを低減することもできる。
【0046】
(7)補強部品30がケース33の全周に亘って延在するリング形状である場合には、ケース33の軸方向中央部を全周に亘って均等に高強度化できるため、機械ノイズをより低減することができる。
【0047】
(8)また、上述した補強部品30は、二段の遊星歯車機構31,32のピニオンギアP1,P2間という、ケース33内の比較的広い空間に配置されているため、補強部品30の径方向寸法を大きくすることができる。これにより、ケース33の軸方向中央部の強度をより高めることができ、機械ノイズをより低減することができる。
【0048】
(9)上述したケース33は、小径内周面34a及び大径内周面34bとこれらを繋ぐテーパ面34cとを有しており、補強部品30はケース33の開口から圧入されて大径内周面34bとテーパ面34cとの境界線に接する位置に配置される。このため、減速機3の使用によって補強部品30の位置がずれることを防止でき、機械ノイズの低減を継続して実現できる。なお、ケース33の内径が異なる部分をテーパ形状(傾斜面)とすることで、ケース33を成型しやすくすることができる。
【0049】
(10)上述した減速機3を備えたギアドモータ1によれば、大型化を招くことなく静粛性を高めることができる。
【0050】
[4.その他]
上述したギアドモータ1及び減速機3は一例であって、上述したものに限られない。上記実施形態では、内側噛合い率ε
1in及び外側噛合い率ε
1outがともに3.0以上である場合を例示したが、内側噛合い率ε
1in及び外側噛合い率ε
1outの一方が3.0以上であり、他方が3.0未満であってもよい。この場合であっても、内側噛合い率ε
1in及び外側噛合い率ε
1outはいずれも第二噛合い率ε
2よりも大きくされる。なお、噛合い率を所定の値に設定する方法は特に限られず、ギア設計に用いる複数のパラメータをチューニングすればよい。
【0051】
二段の遊星歯車機構31,32の構成は上記のものに限られない。例えば、二つのリングギアR1,R2のねじれ角が互いに同一であってもよい。この場合、ケースを成形しやすくなる。また、リングギアR1,R2がケース33の内周面34に形成された一体ものではなく、ケースに後付けされるものであってもよい。なお、入力要素(サンギア),出力要素(キャリア),固定要素(リングギア)の種類も上記のものに限られない。
【0052】
上述した補強部品30の構成も一例であり、例えば、補強部品30がケース33に圧入される代わりにインサート成形されてもよい。すなわち、補強部品30は、ケース内側に露出して設けられてもよいしケースに埋設されてもよいし、ケース外側に設けてもよい。また、補強部品30の位置は遊星歯車機構31,32のピニオンギアP1,P2間に限られず、いずれか一方の遊星歯車機構31,32と重なる位置(例えばリングギアR1又はR2と重なる位置)であってもよい。少なくとも、ケースの軸方向中央部に補強部品が配置されることで、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0053】
ケース33の形状は上述したテーパ付きの有底円筒状に限られない。例えば、テーパの代わりに段付きの筒状であってもよいし、ケースの外径が軸方向において一定の筒状であってもよい。段付き筒状のケースの場合には、補強部品を段差部分に配置(例えば圧入)することで、補強部品の位置を安定させることができる。なお、ケースの厚み(肉厚)は軸方向において一定でなくてもよい。すなわち、内周面にはテーパや段差を設け、外周面は外径一定としてもよい。また、ケースの軸方向両端に開口が設けられ、これら開口に蓋部が取り付けられる構成であってもよい。なお、モータ2に対するケースの取り付け向きは、上記と逆であってもよい。
【0054】
なお、上述したギアドモータ1の用途は車両の電動式ゲートの駆動源に限られず、様々な電動機器の駆動源に適用してよい。