【解決手段】中心軸Cを囲む第1内周面31を有する第1部材30と、第1内周面に対向する外周面411を有し、入力部材90に連結される第2部40と、第1部材を、第2部材に対して径方向にスライド可能としつつ、第2部材とともに回転させるスライダー50と、第1部材の径方向外側、かつ、可撓性外歯歯車13の径方向内側に位置する転がり軸受21と、を有し、第1部材、第2部材、及びスライダーの中から選択される2つの部材のうち、一方は第1対向面を有し、他方は第1対向面に対向する第2対向面を有し、第1対向面は、第2対向面に接触可能な接触面と、接触面よりも第2対向面から離れた位置にある離間面とを有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0010】
以下の説明では、波動歯車装置の中心軸と平行な方向を「軸方向」、波動歯車装置の中心軸に直交する方向を「径方向」、波動歯車装置の中心軸を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。ただし、上記の「平行な方向」は、略平行な方向も含む。また、上記の「直交する方向」は、略直交する方向も含む。
【0011】
<1. 第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る波動歯車装置1の縦断面図である。波動歯車装置1は、剛性内歯歯車11と、可撓性外歯歯車13と、波動発生器20とを備える。
【0012】
波動歯車装置1は、剛性内歯歯車11と可撓性外歯歯車13との差動(相対回転)を利用して、入力された回転動力を変速する装置である。波動歯車装置1は、例えば、小型ロボットの関節に組み込まれる。波動歯車装置1は、モータから得られる動力を減速する減速装置として用いられる。
【0013】
剛性内歯歯車11は、
図1に示す中心軸Cを中心とする円環状の部材である。剛性内歯歯車11の剛性は、後述する、可撓性外歯歯車13の可撓性歯部133の剛性よりも高い。このため、剛性内歯歯車11は、実質的に剛体である。剛性内歯歯車11は、内周面に複数の内歯111を有する。複数の内歯111は、周方向に沿って、一定のピッチで設けられている。剛性内歯歯車11は、例えば、波動歯車装置1が搭載される装置のフレームに固定される。
【0014】
可撓性外歯歯車13は、円筒状の胴体部131と、平板部141とを有するカップ状である。胴体部131は、軸方向一方側の端部の外周面に、可撓性歯部133を有する。可撓性歯部133は、外周面に、外歯135(可撓性外歯)を有する。可撓性歯部133は、剛性内歯歯車11の径方向内側に位置する。胴体部131における、軸方向他方側の端部には平板部141が接続されている。
【0015】
平板部141は、中心軸Cに対して垂直な径方向に広がる部分である。平板部141は、ダイヤフラム部143と、円環板状の円板部145とを有する。ダイヤフラム部143は、円板部145よりも胴体部131に近い位置にあり、円板部145よりも径方向外側に位置する。ダイヤフラム部143の軸方向の肉厚は、円板部145よりも薄い。ダイヤフラム部143は、円環状である。円板部145は、ダイヤフラム部143の径方向内側に位置しており、一定の肉厚を有する。円板部145の中央には、減速後の動力を取り出すための出力軸が固定される。
【0016】
波動発生器20は、ボールベアリング21と、オルダム継手23とを有する。ボールベアリング21は、可撓性外歯歯車13における可撓性歯部133の内側に嵌め込まれる。ボールベアリング21の内輪に、オルダム継手23が取り付けられる。ボールベアリング21は、オルダム継手23(詳細には、後述するカム30)の径方向外側、かつ、可撓性外歯歯車13(詳細には、可撓性歯部133)の径方向内側に位置する転がり軸受の一例である。
【0017】
波動発生器20のオルダム継手23は、入力部材90に接続される。入力部材90は、中心軸Cを中心に回転する。波動発生器20は、中心軸Cを中心として、入力部材90の回転速度で回転する。可撓性外歯歯車13の可撓性歯部133は、中心軸Cを囲む筒状であって、波動発生器20の径方向外側に配置され、回転する波動発生器20によって非真円状に撓められる。剛性内歯歯車11は、可撓性外歯歯車13の径方向外側に配置され、可撓性外歯歯車13の可撓性歯部133と部分的に噛み合う。剛性内歯歯車11と可撓性外歯歯車13とは、歯数の違いによって相対回転する。波動発生器20の回転により、可撓性外歯歯車13の径方向の長さが変化して、可撓性外歯歯車13と剛性内歯歯車11との噛み合い位置が、中心軸Cを中心に、周方向に変化する。
【0018】
<オルダム継手の構成>
図2は、軸方向一方側から視たオルダム継手23を示す斜視図(上段)及び分解斜視図(下段)である。
図3は、軸方向他方側から視たオルダム継手23を示す斜視図である。
図4は、軸方向他方側から視たカム30を示す斜視図である。
【0019】
オルダム継手23は、カム30と、ハブ40と、スライダー50とを有する。カム30は、環状である。
図1に示すように、カム30は、ボールベアリング21の内輪に嵌め込まれる。カム30は、中心軸Cを囲む第1内周面31を有する。第1内周面31は、カム30を軸方向に貫通する貫通孔311を形成する。
図1及び
図4に示すように、カム30は、軸方向他方側を向く側面33(第3側面)を有する。
【0020】
図1及び
図2に示すように、ハブ40は、円筒部41と、対向部43とを有する。円筒部41は、中心軸Cを囲む円筒状である。円筒部41の内側には、入力部材90が、挿入される。円筒部41は、キーを介して、入力部材90と連結される。すなわち、波動発生器20は、ハブ40を介して、入力部材90と連結される。入力部材90が回転することにより、ハブ40が中心軸Cを中心として回転する。
【0021】
ハブ40の円筒部41は、径方向外側を向く外周面411を有する。円筒部41は、カム30の貫通孔311に挿入される。これにより、外周面411は、カム30の第1内周面31と対向する。円筒部41の外径は、カム30の貫通孔311の内径よりもわずかに小さい。このため、第1内周面31と外周面411との間には、径方向のわずかな隙間が形成される。
【0022】
ハブ40の対向部43は、円筒部41における軸方向他方側の端部から径方向外側に広がる鍔状の部分である。
図1及び
図2に示すように、ハブ40の対向部43は、軸方向一方側を向く側面45(第4側面)を有する。
【0023】
スライダー50は、カム30をハブ40に対して径方向にスライド可能としつつ、かつ、中心軸Cを中心としてハブ40とともにカム30を回転させるための部材である。スライダー50は、円環状のスライダー本体部51を有する。スライダー本体部51は、軸方向に関して、カム30と、ハブ40の対向部43との間に位置する。スライダー本体部51は、中心軸Cを囲む第2内周面511を有する。第2内周面511は、スライダー本体部51を軸方向に貫通する貫通孔513を形成する。貫通孔513には、ハブ40の円筒部41が挿入される。これにより、第2内周面511は、円筒部41の外周面411と径方向に対向する。
【0024】
ハブ40の円筒部41の外径は、スライダー50の貫通孔513の内径よりもわずかに小さい。このため、外周面411と第2内周面511との間には、径方向のわずかな隙間が形成される。
【0025】
スライダー本体部51は、軸方向一方側を向く側面53(第1側面)を有する。側面53には、軸方向の一方側に突出する一対の第1凸部54,54が設けられる。一対の第1凸部54,54は、中心軸Cよりも径方向外側に位置し、且つ、中心軸Cを挟んで対向する位置に設けられる。
【0026】
スライダー本体部51の側面53(第1側面)は、カム30の側面33(第3側面)と対向する。側面33には、軸方向一方側に凹む一対のスライド溝55、55(第1スライド溝)が設けられる。一対のスライド溝55,55は、中心軸Cを挟んで対向する位置に設けられ、且つ、互いに平行な径方向に延びる。スライド溝55は、第1凸部54と1対1対応の関係で設けられる。周方向における第1凸部54の幅は、対応するスライド溝55の溝幅よりもわずかに小さい。
【0027】
図1に示すように、スライダー本体部51は、軸方向他方側を向く側面57(第2側面)を有する。側面57には、軸方向他方側に突出する一対の第2凸部58,58が設けられる。一対の第2凸部は、中心軸Cよりも径方向外側に位置し、且つ、中心軸Cを挟んで対向する位置に設けられる。
【0028】
スライダー本体部51の側面57(第2側面)は、ハブ40における対向部43の側面45(第4側面)と対向する。側面45には、軸方向他方側に凹む一対のスライド溝59,59(第2スライド溝)が設けられる。
図2に示す例では、スライド溝59は、対向部43を軸方向に貫通する切欠きである。一対のスライド溝59は、中心軸Cを挟んで対向する位置に設けられ、且つ、互いに平行な径方向に延びる。スライド溝59は、第2凸部58と1対1対応の関係で設けられる。周方向における第2凸部58の幅は、対応するスライド溝59の溝幅よりもわずかに小さい。
【0029】
スライダー50の第1凸部54は、カム30の対応するスライド溝55に挿入される。これにより、カム30が、スライダー50と周方向に係合され、スライダー50とともに回転する。また、第1凸部54は、スライド溝55に案内されつつ、スライド溝55の内側を径方向にわずかにスライドする。このため、スライダー50に対して、カム30が、スライド溝55の延びる方向にわずかにスライド移動可能である。第1凸部54の軸方向の長さは、対応するスライド溝55の軸方向の深さよりも短い。スライダー50の第1凸部54がカム30のスライド溝55に挿入されると、スライダー50の側面53がカム30の側面33に接触する。
【0030】
また、スライダー50の第2凸部58は、対応するスライド溝59に挿入される。すると、ハブ40がスライダー50と周方向に係合される。すなわち、ハブ40が中心軸Cを中心に回転すると、スライダー50も中心軸Cを中心として回転する。また、第2凸部58は、スライド溝59に案内されつつ、スライド溝55の内側を径方向にわずかにスライドする。このため、スライダー50に対して、カム30がスライド溝59に延びる方向にわずかにスライド移動可能である。第2凸部58の軸方向の長さは、対応するスライド溝59の軸方向の深さよりも短い。スライダー50の第2凸部58がハブ40のスライド溝59に挿入されると、スライダー50の側面57がハブ40の側面45に接触する。
【0031】
一対のスライド溝59,59が延びる方向は、一対のスライド溝55,55が延びる方向と直交する。このため、カム30は、スライダー50により、ハブ40に対して、径方向の全方向にわずかにスライド移動可能である。なお、第1凸部54がカム30の側面33に設けられ、スライド溝55がスライダー50の側面53に設けられてもよい。また、第2凸部58がハブ40の側面45に設けられ、スライド溝59がスライダー50の側面57に設けられてもよい。
【0032】
カム30の第1内周面31には、径方向外側に凹む3つの内側溝35が設けられる。内側溝35の数は、3つに限定されるものではなく、1つであってもよいし、2つあるいは4つ以上であってもよい。内側溝35は、周方向に延びる環状である。3つの内側溝35は、軸方向に間隔をあけて設けられる。
【0033】
図4に示すように、一対のスライド溝55は、径方向に沿って側面33を横断するように設けられている。このため、各スライド溝55は、3つの内側溝35のうち最も軸方向他方側に位置する内側溝35と繋がる。
【0034】
カム30、ハブ40、及びスライダー50における、互いに対向する面同士の間には、潤滑剤が介在する。例えば、カム30の第1内周面31と、ハブ40の外周面411との間には、潤滑剤が介在する。したがって、第1内周面31のうち、内側溝35を除く面は、ハブ40の外周面411と、潤滑剤を介して接触する接触面となる。一方で、内側溝35の内面は、上記接触面よりも外周面411から離れた位置にある離間面となる。第1内周面31は、第1対向面の一例であり、外周面411は、第2対向面の一例である。
【0035】
内側溝35が設けられることによって、第1内周面31と外周面411との接触が分断される。このため、潤滑剤による、第1内周面31と外周面411との間の粘性抵抗が軽減される。すると、第1内周面31を外周面411から径方向へ容易に離間させることができるため、カム30に対して、ハブ40を径方向へ円滑にスライドさせることができる。
【0036】
図2に示すように、スライダー50の側面53には、軸方向一方側にわずかに突出する4つの凸部531が設けられる。各凸部531は、軸方向一方側を向く平坦な接触面533を有する。接触面533は、第1凸部54の軸方向一方側の端部よりも軸方向他方側に位置する。4つの接触面533は、軸方向に垂直な同一平面内に位置するとともに、中心軸Cを中心にして周方向に等間隔で配置される。すなわち、4つの接触面533は、周方向に分離されている。
【0037】
スライダー50の側面53は、離間面535を有する。離間面535は、側面53のうち、接触面533の周辺に位置し、接触面533よりもカム30の側面33から軸方向他方側に離れて位置する。このように、互いに分離された接触面533が側面53に設けられることによって、周方向に隣接する接触面533,533間に離間面535が設けられる。側面53は、第1対向面の一例である。また、側面53に対向するカム30の側面33は、第2対向面の一例である。
【0038】
スライダー50の側面53は、4つの接触面533において、カム30の側面33と接触する。また、4つの接触面533が側面33と接触した状態において、離間面535は側面33と離間する。したがって、側面53と側面33との間に潤滑剤が介在する場合、離間面535によって、側面53と側面33との間の潤滑剤を介した接触が分断される。すると、潤滑剤による、側面53と側面33との間の粘性抵抗が軽減されるため、カム30に対して、スライダー50を径方向へ円滑にスライドさせることができる。したがって、オルダム継手23は、入力部材90の偏心を良好に吸収することができる。
【0039】
スライダー50の側面53は、分離された4つの接触面533でカム30の側面33と接触する。これにより、側面53が側面33に接触した状態で、軸方向に傾くことが抑制される。
【0040】
なお、図示を省略するが、スライダー50の軸方向他方側の側面57にも、側面53と同様に、複数の凸部531が設けられてもよい。側面57に複数の凸部531を設けることによって、側面57にハブ40の側面45から離間する離間面を設けることができる。すると、潤滑剤による、側面57と側面45との間の粘性抵抗が軽減される。これにより、スライダー50に対して、ハブ40を径方向へ円滑にスライドさせることができる。
【0041】
<2. 第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以降の説明において、既に説明した要素と同様の機能を有する要素については、同じ符号又はアルファベット文字を追加した符号を付して、詳細な説明を省略する場合がある。
【0042】
図5は、第2実施形態に係るカム30aを示す斜視図である。第2実施形態に係るカム30aの側面33に設けられたスライド溝55aは、径方向内側に壁部551を有する点で、
図4に示すカム30と相違する。カム30aは、カム30と同様に、3つの内側溝35を有する。3つの内側溝35のうち、軸方向の最も他方側に位置する内側溝35は、他の内側溝35と同様に、円環状となっており、スライド溝55aと接続されていない。
【0043】
カム30aをオルダム継手23に適用した場合、カム30を適用したときと同様に、内側溝35が、潤滑剤による、第1内周面31とハブ40の外周面411との間の粘性抵抗を軽減させる。このため、カム30に対して、ハブ40を径方向に円滑にスライドさせることができる。
【0044】
<3. 第3実施形態>
図6は、第3実施形態に係るカム30bを示す斜視図(上段)及び分解図(下段)である。
図7は、第3実施形態に係るカム30bの内側部分を拡大して示す縦断面図である。
図6に示すように、カム30bは、リング部材37と、カム本体部39とを有する。リング部材37は、円環状であり、中心軸Cを囲む第3内周面371を有する。カム本体部39は、円環状であり、軸方向他方側の中央部に、軸方向一方側に凹む環状凹部391を有する。環状凹部391は、リング部材37が装着される部分である。
【0045】
カム本体部39は、軸方向他方側を向く側面392を有する。側面392は、カム30bにおいて、スライダー50の側面53と対向する側面33を構成する。リング部材37の外径は、例えば、環状凹部391の内径よりもわずかに大きい。リング部材37は、例えば環状凹部391に圧入されることによって、カム本体部39に保持される。なお、リング部材37は、他の部材を用いて、カム本体部39に固定されてもよい。
【0046】
リング部材37の内径は、カム本体部39における環状凹部391よりも軸方向一方側の内径と、ほぼ同じである。
図6及び
図7に示すように、リング部材37の第3内周面371及びカム本体部39の内周面393は、ともに、カム30bにおける第1内周面31を構成する。
【0047】
図6に示すように、カム30bは、1つの内側溝35を有する。内側溝35は、周方向に延びる円環状である。
図7に示すように、内側溝35の、軸方向と直交する平面で切断した場合の形状(以下、「断面形状」と称する。)は、径方向外側に向けて幅が次第に狭くなる三角形状である。具体的には、内側溝35は、リング部材37の傾斜面373と、カム本体部39の傾斜面395とで構成される。傾斜面373は、リング部材37における第3内周面371の軸方向一方側の端部に設けられ、軸方向一方側に向かって、径方向外側に傾斜する。カム本体部39の傾斜面395は、内周面393の軸方向他方側の端部に設けられ、軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜する。
【0048】
リング部材37は、傾斜面375を有する。傾斜面375は、第3内周面371の軸方向他方側の端部に設けられ、軸方向他方側に向かって、径方向外側に傾斜する。傾斜面373,375は、リング部材37の軸方向中心を通るとともに中心軸Cに直交する平面について、対称的な形状を有する。このため、リング部材37をカム本体部39に装着する際、傾斜面373,375のどちら側がカム本体部39に向けられてもよい。
【0049】
カム30bをオルダム継手23に適用した場合であっても、カム30を適用したとき同様に、内側溝35が、潤滑剤による、第1内周面31とハブ40の外周面411との間の粘性抵抗を軽減させる。このため、カム30bに対して、ハブ40を径方向へ円滑にスライドさせることができる。
【0050】
図7に示すように、軸方向におけるリング部材37の幅は、カム本体部39の環状凹部391の幅よりも小さい。このため、リング部材37が環状凹部391に装着されると、リング部材37の軸方向他方側の端面が、カム本体部39の側面392よりも径方向一方側に位置する。したがって、オルダム継手23において、リング部材37の端面は、スライダー50の側面53から離間される。このように、リング部材37の端面をスライダー50離間させることによって、カム30bとスライダー50の接触面積が減る。すると、カム30bとスライダー50との間に介在する潤滑剤の粘性抵抗が軽減される。このため、カム30bに対して、ハブ40を径方向へ円滑にスライド移動させることができる。
【0051】
<4. 第4実施形態>
図8は、第4実施形態に係るカム30cの内側部分を拡大して示す縦断面図である。
第4実施形態のカム30cは、第3実施形態のカム30bと同様に、リング部材37とカム本体部39とを有する。ただし、リング部材37は、第3内周面371に内側溝35を有する。また、カム本体部39は、内周面393に内側溝35を有する。このため、
図8に示すように、カム30cは、3つの内側溝35を有する。カム30cの場合、複数の内側溝35を有するため、カム30bと比べて、カム30とハブ40との間の潤滑剤の粘性抵抗が、より一層軽減される。
【0052】
<5. 第5実施形態>
図9は、第5実施形態に係るカム30dを示す斜視図である。カム30dは、
図4に示すカム30と同様の構成を有する。ただし、カム30dは、第1内周面31に、軸方向に延びる4つの内側溝35aを有する点で、カム30と相違する。4つの内側溝35aは、周方向に等間隔で配置される。内側溝35aの幅は、スライド溝55の幅と同じである。また、内側溝35aの断面形状は、底部両側が角丸とされた略四角形である。
【0053】
オルダム継手23にカム30dを適用した場合、カム30を適用したときと同様に、複数の内側溝35aによって、カム30dとハブ40との間に介在する潤滑剤の粘性抵抗が軽減される。このため、カム30dに対して、ハブ40を径方向に円滑にスライド移動させることができる。
【0054】
<6. 第6実施形態>
図10は、第6実施形態に係るカム30eを示す斜視図である。カム30eは、第1内周面31に、軸方向に延びる内側溝35bを有する点で、
図9に示すカム30dと類似する。ただし、カム30eは、周方向において等間隔に配置された8つの内側溝35bを有する。また、内側溝35bの断面形状は、四角形状である。
【0055】
オルダム継手23にカム30eを適用した場合、カム30dを適用したときと同様に、複数の内側溝35bによって、カム30eとハブ40との間に介在する潤滑剤の粘性抵抗が軽減される。このため、カム30eに対して、ハブ40を径方向に円滑にスライド移動させることができる。
【0056】
<7. 第7実施形態>
図11は、第7実施形態に係るカム30fを示す斜視図である。カム30fは、第1内周面31に、軸方向に延びる内側溝35cを有する点で、
図9に示すカム30dと類似する。ただし、カム30fは、周方向に等間隔に配置された16個の内側溝35cを有する。また、内側溝35cの断面形状は、三角形である。内側溝35cは、
図9に示す内側溝35aまたは
図10に示す内側溝35bよりも浅い。
【0057】
オルダム継手23にカム30fを適用した場合、カム30dを適用したときと同様に、複数の内側溝35bが、潤滑剤による、カム30fとハブ40との間の粘性抵抗が軽減される。このため、カム30fに対して、ハブ40を径方向に円滑にスライド移動させることができる。
【0058】
<8. 第8実施形態>
図12は、第8実施形態に係るカム30gを示す斜視図である。カム30gは、第1内周面31に、断面形状が三角形である複数の内側溝35dを有する点で、
図11に示すカム30fと類似する。ただし、カム30gの内側溝35dの延びる方向は、周方向と、軸方向との両方の成分を有する。すなわち、内側溝35dは、周方向と軸方向との両方向に延びる。
【0059】
オルダム継手23にカム30gを適用した場合、カム30fを適用したときと同様に、複数の内側溝35cが、潤滑剤による、カム30gとハブ40との間の粘性抵抗を軽減させる。このため、カム30gに対して、ハブ40を径方向に円滑にスライド移動させることができる。
【0060】
<9. 第9実施形態>
図13は、第9実施形態に係るカム30hを示す図である。カム30hは、
図6に示すカム30bと類似する。具体的には、カム30hは、2つのリング部材37,37と、カム本体部39aとを有する。リング部材37は、
図6及び
図7に示すリング部材37と同じものである。カム本体部39aは、円環状の部材である。カム本体部39aの内側に、2つのリング部材37,37が装着される。カム30hは、第1内周面31に、周方向に延びる環状の内側溝35を有する。内側溝35は、2つのリング部材37,37が軸方向に隣接することによって形成される部分であって、リング部材37,37の境界に位置する。具体的には、内側溝35は、軸方向一方側のリング部材37の傾斜面375と、軸方向他方側のリング部材37の傾斜面373とで構成される。
【0061】
オルダム継手23にカム30hを適用した場合、カム30bを適用したときと同様に、内側溝35が、潤滑剤による、カム30hとハブ40との間の粘性抵抗を軽減させる。このため、カム30hに対して、ハブ40を径方向に円滑にスライド移動させることができる。
【0062】
<10. 第10実施形態>
図14は、第10実施形態に係るハブ40aを示す側面図である。
ハブ40aは、外周面411に3つの外側溝47を有する。3つの外側溝47は、軸方向に間隔をあけて設けられている。外側溝47は、周方向に延びる環状の周溝である。
【0063】
オルダム継手23において、3つの外側溝47のうち、軸方向一方側の2つの外側溝47は、カム30の第1内周面31と対向する位置にある。すなわち、2つの外側溝47の内面は、オルダム継手23において、第1内周面31から離間する離間面である。したがって、軸方向一方側の2つの外側溝47は、内側溝35と同様に、潤滑剤による、外周面411と第1内周面31との間の粘性抵抗を軽減させる。
【0064】
また、オルダム継手23において、3つの外側溝47のうち、軸方向の最も他方側にある外側溝47は、スライダー50の第2内周面511と対向する。すなわち、軸方向の最も他方側の外側溝47の内面は、オルダム継手23において、第2内周面511から離間する離間面である。したがって、軸方向の最も他方側の外側溝47は、潤滑剤による、外周面411と第2内周面511との間の粘性抵抗を軽減させる。
【0065】
<11. 変形例>
図15は、スライダー50の複数の変形例を示す斜視図である。
図15に示す5つのスライダー50a〜50eが有する凸部の形状が、スライダー50が有する凸部531のとは異なる。
【0066】
具体的には、スライダー50aは、4つの凸部531aを有する。各凸部531aは、周方向の幅が一定となる形状の接触面533aを有する。スライダー50bは、周方向に等間隔に配置された4つの凸部531bを有する。凸部531bは、略円形の接触面533bを有する。スライダー50cは、6つの凸部531cを有する。凸部531cは、長方形状の接触面533cを有する。接触面533b,533cは、接触面533よりも遙かに小さく、第1凸部54の軸方向他方側を向く面よりも小さい。このように接触面533の大きさを小さくすることによって、側面53とカム30の側面33との接触面積を小さくできる。このため、潤滑剤による、側面53と側面33と間の粘性抵抗を軽減できる。
【0067】
スライダー50dは、6つの凸部531dを有する。凸部531dの接触面533dは、周方向に延びる細長の形状を有する。スライダー50eは、1つの凸部531eと、2つの凸部531fとを有する。凸部531eの接触面533eは、凸部531fの接触面533fよりも、周方向に長く、かつ、面積が大きい。
【0068】
スライダー50a〜50eのいずれの場合も、側面53に凸部531a〜531fが設けられるとによって、離間面535が形成される。このため、スライダー50a〜50eのいずれをオルダム継手23に適用したとしても、スライダー50を適用したときと同様に、離間面535が、潤滑剤による、側面53と側面33との間の粘性抵抗を軽減させる。
【0069】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。