(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-122212(P2021-122212A)
(43)【公開日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】くくり罠用の踏み板セットおよびくくり罠セット
(51)【国際特許分類】
A01M 23/34 20060101AFI20210802BHJP
【FI】
A01M23/34
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-16781(P2020-16781)
(22)【出願日】2020年2月4日
(11)【特許番号】特許第6908305号(P6908305)
(45)【特許公報発行日】2021年7月21日
(71)【出願人】
【識別番号】320000517
【氏名又は名称】合資会社やま
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】山田 勉
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121BA32
2B121BA51
2B121EA26
(57)【要約】
【課題】クマなどの錯誤捕獲を抑制でき、イノシシ、シカなどの捕獲効率の低下を抑制できるくくり罠用の踏み板セットを提供する。
【解決手段】くくり罠用の踏み板セットであって、捕獲用のロープがセットされるガイドを含む踏み板と、踏み板が落とし込まれる筒状の保持台と、保持台の上端の開口を分割するように取り付けられる棒状部材とを有する踏み板セットを提供する。開口を分割することにより、肢の大きな動物の錯誤捕獲を防止でき、肢の小さな動物の捕獲効率が低下することを防止できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
くくり罠用の踏み板セットであって、
捕獲用のロープがセットされるガイドを含む踏み板と、
前記踏み板が落とし込まれる筒状の保持台と、
前記保持台の上端の開口を分割するように取り付けられる棒状部材とを有する、踏み板セット。
【請求項2】
請求項1において、
前記棒状部材は、前記保持台の上端の開口をほぼ二分割するように配置される、踏み板セット。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記踏み板は、上下に旋回して前記ロープを跳ね上げるように前記踏み板に取り付けられる一対の跳ね上げ用のガイドを含み、
前記棒状部材は、前記跳ね上げ用のガイドと前記踏み板との間に配置される、踏み板セット。
【請求項4】
請求項3において、
前記踏み板は、前記跳ね上げ用のガイドをそれぞれ上下に旋回するように取り付ける金具であって、前記跳ね上げ用のガイドと前記踏み板との間に前記棒状部材をセットできる距離が確保されるように設けられた金具を含む、踏み板セット。
【請求項5】
請求項3において、
前記踏み板は、前記一対の跳ね上げ用のガイドをそれぞれ上下に旋回するように取り付ける一対の金具であって、前記棒状部材が上方からセットできる間隔を空けて配置された一対の金具を含む、踏み板セット。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、
前記棒状部材は前記保持台の上端に着脱可能に取り付けられる、踏み板セット。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記棒状部材は回転可能に前記保持台の上端に取り付けられる、踏み板セット。
【請求項8】
請求項1ないし7に記載の踏み板セットと、
前記踏み板にセットされる捕獲用のロープおよび前記ロープを操作するためのスプリングを含むロープセットとを有する、くくり罠セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シカやイノシシなどの野生動物を捕獲するための動物捕獲用のくくり(括り)罠方式の罠に用いられる踏み板セットおよびくくり罠セットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、捕獲対象動物の肢を括るループ状の部分を形成可能なワイヤロープと、ワイヤロープに沿って伸縮するコイルバネと、コイルバネの伸長と連動してループ状の部分の径を縮めるように動く第1のユニットと、コイルバネを圧縮させた状態で第1のユニットを作動させないように第1のユニットに対して着脱可能に連結される第2のユニットと、ループ状の部分をセットする第3のユニットであって、ループ状の部分に捕獲対象動物が肢を踏み入れたときに第1のユニットを作動させる第3のユニットとを有するくくり罠方式の罠装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3183576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
括り罠(くくり罠)用の仕掛け(くくり罠セット)は、仕掛け用穴に収容(埋設)して使用される踏み板セットと、踏み板セットに掛けられるワイヤロープとワイヤロープを操作するスプリングとのセットとを含む。踏み板は、地面に埋設される、底有または底のない円筒状または角筒状の台座(保持台、埋設台、箱)の上部の開口に配置され、捕獲対象の動物が踏み板を踏んで踏み板が保持台の内部に落下すると、踏み板のガイドに取り付けられた(くくり付けられた)ワイヤロープが踏み板から外れて、動物の肢にくくり付けられる。このため、ワイヤロープにて動物を捕獲することができる。
【0005】
狩猟には、錯誤捕獲という問題がある。錯誤捕獲とは、都道府県によって保護管理されている獣類、例えばツキノワグマが、捕獲対象獣であるイノシシやシカを捕獲するための罠にかかってしまうことをいう。罠にかかったツキノワグマを放獣する作業は、非常に危険である。このため、獣医などの専門家により麻酔を施して放獣する必要があり、非常にコストがかかる。罠にかかったまま処分されてしまうと、国内のツキノワグマの個体数の減少の要因となる。
【0006】
くくり罠がくくり付けられる部分の直径を錯誤捕獲の対象であるツキノワグマがかからない程度の大きさにすることにより錯誤捕獲を抑制できる。例えば、踏み板が落下するように設けられる保持台の開口を小さく(狭く)することにより肢の大きなクマなどの動物は罠にかからず、イノシシやシカなどを捕獲することができる。法律、条令などにより、例えば、くくり部の直径が12cmを超えるものは禁止されている。しかしながら、くくり部の直径が小さくなると、捕獲対象の動物が通過する面積も減るため捕獲率が低下する傾向があった。このため、自治体によっては、地域を分けて12cmから15cmにくくり部の直径を広げる緩和措置がとられることもあるが、錯誤捕獲の数は増加する傾向になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、くくり罠用の踏み板セットであって、捕獲用のロープ(ワイヤロープ)がセットされるガイドを含む踏み板と、踏み板が落とし込まれる筒状の保持台と、保持台の上端の開口を分割するように取り付けられる棒状部材とを有する。捕獲対象の動物の肢が入る(落ちる)ように設けられる保持台の上端の開口を分割するように棒状部材を配置することにより、開口に入るサイズの肢であっても、棒状部材により分割された開口には入らないサイズの肢であれば、棒状部材に引っかかり、開口を介して保持台には落ちない。このため、踏み板は落下せず罠は動作しない。棒状部材により分割された開口に入るサイズの肢であれば、棒状部材に引っかからず、開口を介して保持台に落下するので、踏み板が落下し罠が動作する。一方、罠の有効面積である、保持台の開口そのもののサイズ(面積)は実質的に変わらないので、捕獲率が大幅に低下することは抑止できる。したがって、錯誤捕獲が少なく、捕獲対象の動物を効率よく捕獲できるくくり罠用の踏み板セットを提供できる。
【0008】
典型的には、棒状部材は、保持台の上端の開口をほぼ二分割するように配置されてもよい。棒状部材は、保持台の上端の開口を三分割以上に分割するように配置されてもよい。複数の棒状部材、または複数の棒状部材が組み合わされた十字状または格子状などの部材により、開口が縦横に複数に分割されてもよい。
【0009】
踏み板が、上下に旋回してロープを跳ね上げるように踏み板に取り付けられる一対の跳ね上げ用のガイドを含む、跳ね上げ式のくくり罠用の踏み板セットにおいては、棒状部材は、跳ね上げ用のガイドと踏み板との間に配置される。すなわち、棒状部材は、跳ね上げ用のガイドが上に、踏み板が下になるように配置され、ロープ(ワイヤロープ)は棒状部材の上になる跳ね上げ用のガイドに取り付けられる。跳ね上げ用のガイドは、踏み板と連動し、棒状部材とは干渉せずに動作できる。踏み板は、跳ね上げ用のガイドをそれぞれ上下に旋回するように取り付ける金具であって、跳ね上げ用のガイドと踏み板との間に棒状部材がセットできる距離が確保されるように設けられた金具を含んでもよい。
【0010】
踏み板は、一対の跳ね上げ用のガイドをそれぞれ上下に旋回するように取り付ける一対の金具であって、棒状部材が上方からセットできる間隔を空けて配置された一対の金具を含んでもよい。棒状部材を踏み板の上側から設定(配置)できるので、効率よく組み立てできる踏み板セットを提供できる。
【0011】
棒状部材は保持台の上端に着脱可能に取り付けられてもよい。踏み板を保持台に設置した後に、保持台の開口を分断する棒状部材を配置できる。棒状部材は回転可能に保持台の上端に取り付けられてもよい。棒状部材により分断された開口に落ちるサイズの肢の動物であれば、肢の一部が棒状部材に載ったときに棒状部材が回転することにより保持台に落下し、踏み板を作動させることにより罠に掛けることができる。
【0012】
本願の他の態様の1つは、上記の踏み板にセットされる捕獲用のロープおよびロープを操作するためのスプリングを含むロープセットとを有するくくり罠セットである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】くくり罠が動作した状態を模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、動物の肢(手足)をロープ(ワイヤロープ)で括る(縛る、締める)ことにより捕獲するくくり罠用のセット(くくり罠セット)1の概要を、主要な部品を展開して示している。くくり罠セット1は、踏み板11を含む踏み板セット10と、捕獲用のロープ(ワイヤロープ)51を含むロープセット(ワイヤロープセット)50とを含む。踏み板セット10は、捕獲用のロープ51がセットされるガイド20を含む踏み板11と、踏み板11が落とし込まれる筒状の保持台30と、保持台30の上端31の開口32を分割するように取り付けられる棒状部材40とを含む。
【0015】
ロープセット50は、踏み板11のガイド20にセットされる捕獲用のロープ51と、ロープ51を操作するためのスプリング55を含む。ロープ51は、ガイド20に、先端52がループ状になるようにセットされる。踏み板11に捕獲対象の動物の肢が乗り、踏み板11が中空の保持台(保持ユニット、支持台、ホルダー)30の内部33に落下すると、ロープの先端52がガイド20から外れ、スプリング55によりループ状の先端52が小さくなり、動物の肢にくくり付けられる。ロープ51の他の端53は杭、近傍の樹木などを用いて動物が逃げないように固定されており、ロープセット50により捕獲対象の動物を捕獲できる。
【0016】
図2に、くくり罠セット1が組み立てられた状態を平面で示し、
図3に、くくり罠セット1により組み立てられたくくり罠2が地表に設定された状態を示している。くくり罠2は、捕獲対象の動物が行き来する場所などの地面(地表)5に配置され、表面を落ち葉や砂などにより覆い、捕獲対象の動物がくくり罠2を通過するのを待つ。くくり罠2は、地表5に埋設された保持台(保持ユニット、埋設台、ホルダー)30の踏み板11に捕獲対象の動物の肢7が落ちると動作する。
【0017】
保持台30は、内部33が中空の筒状の台であり、底が設けられた箱状であってもよく、底がない筒状であってもよい。保持台30は、円筒状であってもよく、角筒状であってもよく、断面が楕円などであってもよい。保持台30は、内部33に、踏み板11が落下するスペースが確保されていればよい。保持台30は、上端31に踏み板11の少なくとも一部または踏み板11のガイド20に装着されたロープ51が引っかかり、踏み板11に荷重が加わると、踏み板11が内部33に落下するようになっていればよい。保持台30は、木製であってもよく、樹脂製または金属製であってもよい。
【0018】
踏み板11は、踏み板11が保持台30に落下するとロープ51が外れる機構を備えていればよい。本例に示す踏み板11は、ロープ51が外れると跳ね上がる、跳ね上げタイプであり、対象動物の肢7を検知する踏み板本体(本体、センサー部分)12と、本体12に対し、上下に旋回してロープ51を跳ね上げるように取り付けられる一対の跳ね上げ用のガイド21aおよび21bと、ガイド21aよび21bをそれぞれ上下に旋回するように取り付ける一対の金具25aおよび25bとを含む。踏み板本体12は、保持台30の開口32より一回り小さい形状であってもよく、例えば、長方形、正方形、円形、楕円形などであってもよい。踏み板本体12は、対象動物の肢7が上に載ると、速やかに、基本的には抵抗なく保持台30の内部33に落下する形状であって、保持台30の開口32の上の肢7により効率よく踏まれる形状であってもよい。踏み板本体12の一例は、木製、樹脂製または金属製の板状の部材であるが、網状の部材などの肢7が載る、または引っかかる部材であってもよい。
【0019】
跳ね上げ用のガイド21aおよび21bは、U字型、V字型またはC字型(コ字型)などの内部に肢7が通過する空間が形成でき、その外側にループ状のロープ52を保持できる形状を備えていればよい。ガイド21aおよび21bは、開いた状態では、踏み板本体12とともに保持台30の上端31にセットしたときに、ガイド21aおよび21bの外側の一部22が上端31に引っかかってガイド21aおよび21bを含めた踏み板11を、内部33の上端31に近い開口32内に保持し、閉じた状態では、踏み板本体12とともに保持台30の内部33に落下する形状であればよい。
【0020】
跳ね上げ用のガイド21aおよび21bの一例は、踏み板本体12の縁12aに沿って延びたU字状の金属製のガイドであって、U字状の底の部分が踏み板本体12の外側まで延びた(突き出た)部分22となっており、保持台30の上端31に引っかかるようになっている。ガイド21aおよび21bの外周面23は、ロープ51を固定あるいは支持しやすいようにV字型またU字型に凹んでいてもよい。ガイド21aおよび21bは、開いた状態で保持台30に設置したり、ロープ51をセットしやすいように、開いた状態を維持するストッパ29を設置できるようになっていてもよい。ストッパ29の一例はU字型あるいはコ字型の棒であり、先端をガイド21aおよび21bにそれぞれ設けられた孔に差し込むことにより、ガイド21aおよび21bの上下方向の動き(回転)を阻害できる。
【0021】
保持台30の上端31の開口32を分割するように取り付けられる棒状部材40は、直径が2〜20mm程度の金属製のシャフト41と、その両端に設けられた鍔42とを含む。シャフト41の直径は、錯誤捕獲の可能性がある動物の体重に耐えられる強度が得られるものであればよく、例えば、5〜15mm程度であってもよい。保持台30の内側の、開口32を二分割する位置に、シャフト41が回転可能に取り付けられる受け金具35が取り付けられており、棒状部材40の一端側を受け金具35に装着し、他端側を保持台30の縁36に乗せることにより、
図1に破線で示すように、開口32を所定の位置で分割できる。
【0022】
受け金具35の一例は、上端にU字型のシャフト受け入れようの凹みまたは溝が形成された金属片である。保持台30の一方の側壁38の中央に、ロープ51をガイド21aおよび21bに装着するためのU字型の凹み37が設けられており、受け金具35は凹み37に対し、縁36と同じ高さに棒状部材40を保持できるように設けられている。棒状部材40は保持台30に対し、着脱可能に、また、回転可能に取り付けられるため、罠が働いたときなどに紛失しないように紐49などにより保持台30に接続されていてもよい。
【0023】
棒状部材40は、対象動物の肢7が踏み板11、具体的には踏み板本体12に載ったときに踏み板11が保持台30の内部33に落下する(落とし込まれる)ことを阻害しないように、保持台30の開口32内に踏み板本体12が設定された後に、踏み板本体12の上側から、開口32を分割するように設定される。踏み板本体12には、跳ね上げ用のガイド21aおよび21bをそれぞれ上下に旋回するように取り付ける一対の金具25aおよび25bが取り付けられており、それらの金具25aおよび25bの間に棒状部材40が上方からセットできる隙間(間隔)26が設けられていてもよい。
【0024】
また、棒状部材40は、対象動物の肢7が踏み板本体12に載ったときにガイド21aおよび21bにより跳ね上げられるロープ51の動きを阻害しないように、ガイド21aおよび21bと踏み板本体12との間に配置される。すなわち、
図3に示すように、棒状部材40の軸41に対し、踏み板本体12が下、ガイド21aおよび21bが上となり、ガイド21aおよび21bに装着されたロープ51が棒状部材40の上になるように、棒状部材40は保持台30の上端31に設置される。このため、跳ね上げ用のガイド21aおよび21bと踏み板本体12とを接続する金具25aおよび25bは、ガイド21aおよび21bと、踏み板本体12との間に棒状部材40、具体的には軸41をセットできる距離が確保されるように延びた部分27を備えていてもよい。
【0025】
踏み板本体12とガイド21aおよび21bとの間に、棒状部材40の軸41が入る距離が確保される場合は、ガイド21aおよび21bと重なる場所に棒状部材40をセットすることが可能である。ただし、棒状部材40をガイド21aおよび21bの上側からセットすることは難しくなる。例えば、2本の棒状部材40を、開口32を三分割するように配置してもよい。棒状部材40をガイド21aおよび21bと交差する方向、すなわち、図示している棒状部材40と直交する方向に配置することも可能である。また、棒状部材40の位置を決めるために受け金具35とともに、あるいは別に、保持台30の縁にU字型あるいはV字型の溝を設けてもよい。
【0026】
図2および
図3に、棒状部材40を含む踏み板セット10に、ロープセット50のロープ51を組み合わせて、くくり罠セット1によりくくり罠2を設置した例を示している。
図2はストッパ29が取り付けられた状態を示し、
図3はストッパが外されて罠として機能する状態を示している。棒状部材40により、保持台30の開口32が分割され(本例においては二分割され)、分割された開口32aに入るサイズの肢7を持った動物のみが捕獲され、分割された開口32aに入らないサイズの肢8を持った動物は捕獲されない。
【0027】
例えば、開口32の内寸の一例は、幅12cm、長さ20cmであり、棒状部材40により二分割されている場合、分割された開口32aのサイズは幅12cm、長さ10cm程度となる。したがって、クマのように、肢8のサイズが、例えば12cm以上の大きな動物は、分割された開口32aには入らず、踏み板本体12に載る可能性はほとんどないので、このくくり罠2では捕獲されない。一方、イノシシ、シカのように肢7のサイズが、例えば、10cm以下の動物は、分割された開口32aに入る。
【0028】
このため、
図4に示すように、肢7が踏み板本体12に載り、踏み板本体12が落ち、ガイド21aおよび21bによりロープ51が跳ね上げられることにより、肢7にロープ51がくくり付けられて捕獲される。また、分割された開口32aに入る肢7の動物に対しては、棒状部材40で分割された開口32aのいずれでもくくり罠2は動作する。したがって、サイズの小さな肢7を持った動物に対しては、分割された開口32aではなく、開口32の全体が罠として有効な面積となり、捕獲効率が低下することを抑止できる。
【0029】
さらに、棒状部材40は回転するように保持台30に取り付けられている。このため、肢7が棒状部材40の上に載った場合でも、棒状部材40が回転することにより肢7が前後または左右に移動し、いずれかの分割された開口32aに導かれる。このため、サイズの小さな肢7の動物の捕獲効率が棒状部材40により低下することを抑制できる。棒状部材40はそれ自体が回転するものであってもよく、さらに、軸41の周りに回転をスムーズにするためのパイプが装着されたものであってもよい。
【0030】
このように、開口32を分割する棒状部材40を備えた踏み板セット10を用いることにより、肢のサイズの小さな動物に対しては罠として機能する複数の小区画が連続(隣接)して配置されたくくり罠2であって、肢のサイズの大きな動物に対しては罠として機能しないくくり罠2を提供できる。したがって、クマのような肢サイズの大きな動物の錯誤捕獲を防止でき、イノシシ、シカのような肢サイズの小さな動物に対しては捕獲効率の高い罠として機能するくくり罠2を提供できる。
【0031】
なお、上記では跳ね上げ式のくくり罠2を設置するための踏み板セットを例に本発明を説明しているが、ロープを跳ね上げない方式のくくり罠においても本発明を適用できる。ロープを跳ね上げない方式のくくり罠用の踏み板セットにおいては、ロープを保持するガイドの上に棒状部材を配置して、踏み板がセットされる開口を分割してもよい。また、棒状部材に掛かるように、体重の軽い小動物に限定して支持できるような小枝、布などを配置することも可能であり、小動物による誤動作により罠の捕獲率が低下してしまうことを抑制できる。したがって、捕獲対象のイノシシ、シカなどに限定して捕獲でき、その捕獲効率を高くできる罠を提供できる。
【符号の説明】
【0032】
1 くくり罠セット、 2 くくり罠
10 踏み板セット、 11 踏み板、 12 踏み板本体、 20 ガイド
30 保持台、 31 上端、 32 開口
50 ロープセット、 51 ロープ
【手続補正書】
【提出日】2021年4月6日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の一態様は、くくり罠用の踏み板セットであって、捕獲用のロープ(ワイヤロープ)がセットされるガイド
と対象動物の肢を検知するための踏み板本体とを含む踏み板と、踏み板が落とし込まれる筒状の保持台と、
踏み板本体の上側で保持台の上端の開口を分割するように
保持台に対し取り付けられる棒状部材とを有する。捕獲対象の動物の肢が入る(落ちる)ように設けられる保持台の上端の開口を分割するように棒状部材を配置することにより、開口に入るサイズの肢であっても、棒状部材により分割された開口には入らないサイズの肢であれば、棒状部材に引っかかり、開口を介して保持台には落ちない。このため、踏み板は落下せず罠は動作しない。棒状部材により分割された開口に入るサイズの肢であれば、棒状部材に引っかからず、開口を介して保持台に落下するので、踏み板が落下し罠が動作する。一方、罠の有効面積である、保持台の開口そのもののサイズ(面積)は実質的に変わらないので、捕獲率が大幅に低下することは抑止できる。したがって、錯誤捕獲が少なく、捕獲対象の動物を効率よく捕獲できるくくり罠用の踏み板セットを提供できる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
くくり罠用の踏み板セットであって、
捕獲用のロープがセットされるガイドと対象動物の肢を検知するための踏み板本体とを含む踏み板と、
前記踏み板が落とし込まれる筒状の保持台と、
前記踏み板本体の上側で前記保持台の上端の開口を分割するように前記保持台に対し取り付けられる棒状部材とを有する、踏み板セット。
【請求項2】
請求項1記載の踏み板セットにおいて、
前記棒状部材は、前記保持台の上端の開口をほぼ二分割するように配置される、踏み板セット。
【請求項3】
請求項1または2記載の踏み板セットにおいて、
前記ガイドは、上下に旋回して前記ロープを跳ね上げるように前記踏み板本体に取り付けられる一対の跳ね上げ用のガイドを含み、
前記棒状部材は、前記跳ね上げ用のガイドと前記踏み板本体との間に配置される、踏み板セット。
【請求項4】
請求項3記載の踏み板セットにおいて、
前記踏み板は、前記跳ね上げ用のガイドをそれぞれ上下に旋回するように取り付ける金具であって、前記跳ね上げ用のガイドと前記踏み板本体との間に前記跳ね上げ用のガイドが上、前記踏み板本体が下となるように前記棒状部材をセットできる距離が確保されるように設けられた金具を含む、踏み板セット。
【請求項5】
請求項3記載の踏み板セットにおいて、
前記踏み板は、前記一対の跳ね上げ用のガイドをそれぞれ上下に旋回するように取り付ける一対の金具であって、前記棒状部材が上方からセットできる間隔を空けて配置された一対の金具を含む、踏み板セット。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の踏み板セットにおいて、
前記棒状部材は前記保持台の上端に着脱可能に取り付けられる、踏み板セット。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の踏み板セットにおいて、
前記棒状部材は回転可能に前記保持台の上端に取り付けられる、踏み板セット。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の踏み板セットと、
前記踏み板にセットされる捕獲用のロープおよび前記ロープを操作するためのスプリングを含むロープセットとを有する、くくり罠セット。