(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-122414(P2021-122414A)
(43)【公開日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】傘状構造体
(51)【国際特許分類】
A45B 25/12 20060101AFI20210802BHJP
A45B 25/18 20060101ALI20210802BHJP
【FI】
A45B25/12 Z
A45B25/18 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-16777(P2020-16777)
(22)【出願日】2020年2月4日
(11)【特許番号】特許第6869494号(P6869494)
(45)【特許公報発行日】2021年5月12日
(71)【出願人】
【識別番号】591203831
【氏名又は名称】株式会社マーナ
(74)【代理人】
【識別番号】100149711
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 耕市
(72)【発明者】
【氏名】名児耶 剛
(72)【発明者】
【氏名】谷口 諒太
(57)【要約】 (修正有)
【課題】傘を閉じる際、傘布の親骨間に張られる部分を内側に収容し、傘布の雨で濡れた部分を隠すことができ、使用者の手や衣服等を濡らすのを防止することができる傘状構造体を提供する。
【解決手段】傘布の親骨3間に張られる張り拡げ部分にそれぞれ設けられた芯材4と、下ろくろ11に従動して傘軸5に沿って移動し且つ傘軸5まわりに回転可能な中ろくろ14と、芯材4と中ろくろ14を連結し、下ろくろ11のハンドル15側への移動に伴い親骨3が傘軸5側に引き寄せられて傘布の張りが緩むのに応じて傘布の張り拡げ部分を傘軸5側に引き寄せる引っ張り部材6と、下ろくろ11のハンドル15側への移動に伴い中ろくろ14を傘軸5まわりに回転させて傘布の張り拡げ部分を傘軸5と親骨3との間に巻き込む回転機構と、を備えている。傘布の張り拡げ部分を内側に収容しながら傘状構造体を閉じることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傘布の親骨間に張られる張り拡げ部分にそれぞれ設けられた芯材と、
下ろくろに従動して傘軸に沿って移動し、且つ、前記傘軸まわりに回転可能な中ろくろと、
前記芯材と前記中ろくろを連結し、前記下ろくろのハンドル側への移動に伴い前記親骨が前記傘軸側に引き寄せられて前記傘布の張りが緩むのに応じて前記張り拡げ部分を前記傘軸側に引き寄せる引っ張り部材と、
前記下ろくろのハンドル側への移動に伴い前記中ろくろを前記傘軸まわりに回転させて前記張り拡げ部分を前記傘軸と前記親骨との間に巻き込む回転機構と、
を備えることを特徴とする傘状構造体。
【請求項2】
前記中ろくろの少なくとも一部は前記下ろくろの内側に配置されており、
前記回転機構は、前記下ろくろの内周面と前記中ろくろの外周面とのうち、いずれか一方に設けられた螺旋状ガイドと、いずれか他方に設けられて前記螺旋状ガイドに沿って相対移動可能なスライダと、を有し、前記下ろくろの前記ハンドル側への移動に伴って前記下ろくろと前記中ろくろとの間で移動距離に差が生じると、前記スライダが前記螺旋状ガイドに沿って相対移動して前記中ろくろを前記傘軸まわりに回転させる
ことを特徴とする請求項1記載の傘状構造体。
【請求項3】
前記回転機構は、閉じる動作の最終段階で前記中ろくろを前記傘軸まわりに回転させることを特徴とする請求項1又は2記載の傘状構造体。
【請求項4】
前記引っ張り部材の一端は前記芯材に対してスライド可能に連結されており、前記下ろくろに従動して前記中ろくろが所定位置まで前記ハンドル側に移動すると、ストッパによって前記引っ張り部材の一端の移動が制限されて前記中ろくろの移動が制限されることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の傘状構造体。
【請求項5】
前記下ろくろの前記傘軸まわりの回転を防止する回転防止機構を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の傘状構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨傘、日傘、和傘、ビーチパラソルやガーデンパラソル等の日よけ傘、等の傘状構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
傘を閉じると、傘布の親骨間に張られる部分がたるんで広がり、邪魔になる。そのため、このたるみ部分を傘軸の外側に巻き付けて束ね、さらに巻き紐で止めることが行われる。この一連の動作は手で行われるため、雨の日の使用によって傘布が濡れていると、手が濡れてしまう。この手が濡れるという煩わしさを解消するための傘として、例えば引用文献1に開示されているものがある。
【0003】
この傘を、
図11及び
図12に示す。傘布101には複数の弾力性のある湾曲部材102が設けられている。傘100を開いた状態では、放射状に配置された親骨103が傘布101を張るため、湾曲部材102は平らな形状に弾性変形している。この状態より、傘100を閉じると、親骨103による傘布101の張りが緩むので、湾曲部材102が湾曲し、傘布101の親骨103と親骨103の間のたるみ部分101aを傘軸104の外側に巻き付ける。そして、たるみ部分101aの外側に湾曲させた巻き紐105を巻き付けることで、たるみ部分101aが広がらないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−312609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の傘100は、傘布101のたるみ部分101aを傘軸104の外側に巻き付けるようにしているため、傘布101の濡れている部分は露出している。そのため、傘100の使用者の手や衣服を濡らす虞がある。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、傘状構造体を閉じることで傘布の親骨間に張られる部分を隠すことができる傘状構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の傘状構造体は、傘布の親骨間に張られる張り拡げ部分にそれぞれ設けられた芯材と、下ろくろに従動して傘軸に沿って移動し、且つ、傘軸まわりに回転可能な中ろくろと、芯材と中ろくろを連結し、下ろくろのハンドル側への移動に伴い親骨が傘軸側に引き寄せられて傘布の張りが緩むのに応じて張り拡げ部分を傘軸側に引き寄せる引っ張り部材と、下ろくろのハンドル側への移動に伴い中ろくろを傘軸まわりに回転させて張り拡げ部分を傘軸と親骨との間に巻き込む回転機構と、を備えている。
したがって、傘状構造体を閉じる際、親骨による傘布の張りが緩むと、傘布の張り拡げ部分が親骨の内側の傘軸まわりに巻き込まれる。そのため、傘布の張り拡げ部分を内側に収容しながら傘状構造体を閉じることができる。
【0007】
また、本発明の傘状構造体は、中ろくろの少なくとも一部は下ろくろの内側に配置されており、回転機構は、下ろくろの内周面と中ろくろの外周面とのうち、いずれか一方に設けられた螺旋状ガイドと、いずれか他方に設けられて螺旋状ガイドに沿って相対移動可能なスライダと、を有し、下ろくろのハンドル側への移動に伴って下ろくろと中ろくろとの間で移動距離に差が生じると、スライダが螺旋状ガイドに沿って相対移動して中ろくろを傘軸まわりに回転させるようにしても良い。
【0008】
また、本発明の傘状構造体は、回転機構が、閉じる動作の最終段階で中ろくろを傘軸まわりに回転させるようにしても良い。
また、本発明の傘状構造体は、引っ張り部材の一端が芯材に対してスライド可能に連結されており、下ろくろに従動して中ろくろが所定位置までハンドル側に移動すると、ストッパによって引っ張り部材の一端の移動が制限されて中ろくろの移動が制限されるようにしても良い。
さらに、本発明の傘状構造体は、下ろくろの傘軸まわりの回転を防止する回転防止機構を備えるようにしても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、傘状構造体を閉じる際、傘布の張り拡げ部分を傘軸側に引き込み傘軸に巻き付けるようにして収容することができる。そのため、傘布の雨で濡れた部分を隠すことができ、使用者の手や衣服等を濡らすのを防止することができる。
また、本発明によれば、傘状構造体を閉じる際、傘布の張り拡げ部分を親骨の内側に収容することができるので、傘状構造体を閉じた後で傘布を巻き紐で止める必要がなくなり、巻き紐を不要にすることが可能になる。
【0010】
また、本発明によれば、傘状構造体を閉じる際、傘布の張り拡げ部分を親骨の内側に収容して隠すことができるので、見た目をスッキリとさせることができ、今までにない新しいデザインの傘状構造体を提供することができる。この場合、巻き紐を不要にすれば、さらに見た目をスッキリとさせることができ、より斬新なデザインの傘状構造体を提供することができる。
【0011】
さらに、本発明によれば、傘状構造体を閉じる際、傘布の張り拡げ部分を傘軸まわりに巻き付けるようにして収容するので、傘布の張り拡げ部分がくしゃくしゃにならず、細く纏めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】雨傘の芯材と引っ張り部材との位置関係を示し、(A)は雨傘を開いた状態における図、(B)は雨傘の閉じ始めの段階の図、(C)は雨傘をある程度まで閉じて傘布からの反力が消滅した状態における図、(D)は雨傘を閉じた状態における図である。
【
図4】芯材と引っ張り部材との連結部分を示す図である。
【
図5】下ろくろおよび中ろくろを示し、下ろくろに中ろくろが収容されている状態の断面図である。
【
図6】下ろくろおよび中ろくろを示し、下ろくろから中ろくろが突出している状態の断面図である。
【
図10】傘布の張り拡げ部分を親骨の内側の傘軸まわりのスペースに収容する様子を説明するための斜視図である。
【
図11】従来の傘を示し、開いた状態の斜視図である。
【
図12】従来の傘を示し、閉じる途中の状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係る傘状構造体の実施形態の一例について、図面を参照しながら説明する。傘状構造体としては、雨傘、日傘、和傘、ビーチパラソルやガーデンパラソルなどの日よけ傘、等があるが、本実施形態では雨傘を例に説明する。ただし、雨傘に限るものではない。
【0014】
図1〜
図10に、本発明に係る雨傘1を示す。雨傘1は、複数の親骨3と複数の受け骨8と下ろくろ11を備えている。
図1(D)の雨傘1を閉じた状態から、使用者が下ろくろ11を傘軸5に沿って石突9側に移動させると、受け骨8が親骨3を押し上げる。これにより、親骨3が放射状に広がる(
図2)。すなわち、雨傘1が開く(
図1(A))。そして、雨傘1を開いた状態から、使用者が下ろくろ11を傘軸5に沿ってハンドル15側に移動させると、受け骨8が親骨3を傘軸5側に引き寄せる。すなわち、雨傘1が閉じる。
【0015】
また、雨傘1は、傘布2の親骨3間に張られる張り拡げ部分2aにそれぞれ設けられた芯材4と、下ろくろ11に従動して傘軸5に沿って移動し且つ傘軸5まわりに回転可能な中ろくろ14と、芯材4と中ろくろ14を連結し、下ろくろ4のハンドル15側への移動に伴い親骨3が傘軸5側に引き寄せられて傘布2の張りが緩むのに応じて傘布2の親骨3間に張られる張り拡げ部分2aを傘軸5側に引き寄せる引っ張り部材6と、下ろくろ11のハンドル15側への移動に伴い中ろくろ14を傘軸5まわりに回転させて傘布2の親骨3間に張られる張り拡げ部分2aを傘軸5と親骨3との間に巻き込む回転機構16と、を備えている。
【0016】
芯材4は、
図2に示すように、各親骨3の間に1本ずつ設けられている。芯材4は線状又は棒状を成しており、例えばプラスチック、樹脂、金属等によって形成されている。本実施形態では、芯材4をガラス繊維強化プラスチックによって形成しているが、これに限るものではない。芯材4は、隣り合う2本の親骨3から等距離の位置に設けられている。芯材4の内側端は上ろくろ10に回動自在に連結されている。
【0017】
芯材4の長さは、雨傘1を閉じる際、中ろくろ14が傘軸5まわりに回転すると、傘布2の親骨3間に張られる張り拡げ部分2aを傘軸5と親骨3との間に確実に引き込むことができる長さになっている。本実施形態では、
図3に示すように、芯材4の長さをその外側端が傘布2の外周縁2cの近傍に届く長さにしているが、必ずしもここまで長くしなくても良い。芯材4の外側端は傘布2の内側面2dに取り付けられている。芯材4には後述する連結スライダ18が取り付けられている。
【0018】
引っ張り部材6は線状又は棒状を成しており、例えばプラスチック、樹脂、金属等によって形成されている。本実施形態では、引っ張り部材6をガラス繊維強化プラスチックによって形成している。引っ張り部材6の一端6aは、芯材4に対してスライド可能に連結されており、下ろくろ11に従動して中ろくろ14が所定位置までハンドル15側に移動すると、芯材4に固定されたストッパ23によって引っ張り部材6の一端6aの移動が制限される。本実施形態では、引っ張り部材6の一端6aは芯材4に沿って移動可能な連結スライダ18に回動可能に連結されており、これにより引っ張り部材6の一端6aは芯材4に対してスライド可能に、且つ、連結スライダ18に対して回動可能になっている(
図4)。雨傘1を開閉する際、芯材4に対して連結スライダ18がスライドすることで芯材4と引っ張り部材6との連結位置が変化し、雨傘1の開閉が可能になる。また、引っ張り部材6の他端6bは中ろくろ14に対して回動可能に連結されている。
図5および
図6に示すように、引っ張り部材6の他端6bは受け骨8の他端8bよりも内側(傘軸5側)に配置されている。
【0019】
引っ張り部材6は、
図1(A)に示すように、雨傘1を開いた状態で受け骨8よりも石突9側の内側空間12に納められている。このようにすることで、雨傘1を使用する際、引っ張り部材6が使用者の邪魔になるのを防止することができる。
【0020】
図5および
図6に、下ろくろ11及び中ろくろ14を示す。
図5は、雨傘1の
図1(A)〜(c)に示す状態に対応し、
図6は、雨傘1の
図1(D)に示す状態に対応している。下ろくろ11及び中ろくろ14は円筒形状を成しており、下ろくろ11内に中ろくろ14の少なくとも一部が収容可能となっている。
図5に示す下ろくろ11内に中ろくろ14を収容した状態において、下ろくろ11から露出している中ろくろ14の頭部14aには引っ張り部材6の他端6bが回動可能に連結されている。後述のように下ろくろ11は傘軸5まわりに回転することができないのに対し、中ろくろ14は傘軸5まわりに回転可能になっている。すなわち、中ろくろ14と傘軸5との間および中ろくろ14と下ろくろ11との間には隙間が設けられており、中ろくろ14は傘軸5および下ろくろ11に対して回転可能になっている。
【0021】
回転機構16は、下ろくろ11の内周面11aと中ろくろ14の外周面14bとのうち、いずれか一方に設けられた螺旋状ガイド19と、いずれか他方に設けられて螺旋状ガイド19に沿って相対移動可能なスライダ20とを有しており、下ろくろ11のハンドル15側への移動に伴って下ろくろ11と中ろくろ14との間で移動距離に差が生じると、スライダ20が螺旋状ガイド19に沿って相対移動して中ろくろ14を傘軸5まわりに回転させる。本実施形態では、下ろくろ11の内周面11aにスライダ20を設け、中ろくろ14の外周面14bに螺旋状ガイド19を設けている。ただし、下ろくろ11の内周面11aに螺旋状ガイド19を設け、中ろくろ14の外周面14bにスライダ20を設けても良い。
【0022】
本実施形態では、螺旋状ガイド19を螺旋状の溝によって構成し、スライダ20を螺旋状ガイド19に嵌まり込んで摺動する凸部によって構成している。ただし、これらには限るものではなく、例えば螺旋状ガイド19を螺旋状の凸部で構成し、スライダ20を螺旋状ガイド19に嵌まり込んで摺動する凹部を有する部材で構成しても良い。
【0023】
螺旋状ガイド19およびスライダ20の組み合わせは、周方向に等間隔で例えば2組設けられている。この組み合わせ数が少なすぎると、下ろくろ11に対して中ろくろ14ががたつく虞があり雨傘1の使い心地が悪くなる。一方、螺旋状ガイド19およびスライダ20の組み合わせ数が多すぎると、中ろくろ14の回転時に生じる摩擦力が大きくなって操作性が悪化し雨傘1の使い勝手が悪くなる虞がある。したがって、これらのバランスを考慮して螺旋状ガイド19およびスライダ20の組み合わせ数を決定することが望ましい。本実施形態では、螺旋状ガイド19およびスライダ20の組み合わせ数を2組にしているが、必ずしも2組に限るものではない。
【0024】
雨傘1は、下ろくろ11の傘軸5まわりの回転を防止する回転防止機構21を備えている。本実施形態では、傘軸5に設けられた凹部5aと、下ろくろ11に設けられた凸部11bによって回転防止機構21を構成している。凹部5aは傘軸5の外周面5bにその軸方向に沿って設けられている。本実施形態では、円筒状の傘軸5を凹ますことで凹部5aを設けているが、これに限るものではない。凹部5aは少なくとも下ろくろ11が移動する範囲にわたって設けられている。また、凸部11bは、下ろくろ11の内周面11aに設けられた仕切り壁11cの内側を一部突出させることで形成されているが、これに限るものではない。凸部11bが凹部5aに嵌まり込むことで、下ろくろ11の傘軸5に沿う移動を可能にしつつ、傘軸5まわりの回転を防止することができる。
【0025】
凹部5aと凸部11bの組合せは、周方向に等間隔で例えば2組設けられている。この組み合わせ数が少なすぎると、傘軸5に対して下ろくろ11ががたつく虞があり雨傘1の使い心地が悪くなる。一方、凹部5aと凸部11bの組み合わせ数が多すぎると、下ろくろ11の移動時に生じる摩擦力が大きくなって操作性が悪化し雨傘1の使い勝手が悪くなる虞がある。したがって、これらのバランスを考慮して凹部5aと凸部11bの組み合わせ数を決定することが望ましい。本実施形態では、凹部5aと凸部11bの組み合わせ数を2組にしているが、必ずしも2組に限るものではない。
【0026】
次に、使用者が雨傘1を閉じるだけで、傘布2の張り拡げ部分2aが傘軸5と親骨3の間に自動的に巻き取られることについて説明する。
図1(A)の雨傘1を開いている状態では、中ろくろ14は下ろくろ11内に収容されており、その先端は下ろくろ11の仕切り壁11cに度当たりしている(
図5)。この状態から、使用者が雨傘1を閉じるために下ろくろ11をハンドル15側に移動させると、受け骨8が親骨3を傘軸5側に引き寄せ、親骨3によって張られていた傘布2が緩み始める。また、中ろくろ14は下ろくろ11と一体になってハンドル15側に移動し、下ろくろ11と中ろくろ14との間には移動距離の差は生じない。したがって、この段階では中ろくろ14は回転しない。
【0027】
下ろくろ11および中ろくろ14がハンドル15側に移動するのに伴い、親骨3および芯材4が傘軸5側に引き寄せられる。そして、芯材4が傘軸5側に引き寄せられるのに伴い、引っ張り部材6の一端6aを芯材4に連結させる連結スライダ18が芯材4に対してスライドする。
【0028】
そして、
図1(C)に示すように雨傘1がある程度まで閉じられると、連結スライダ18が芯材4に固定されているストッパ23に度当たりする。即ち、下ろくろ11に従動して中ろくろ14が所定位置まで移動すると、ストッパ23によって引っ張り部材6の一端6aの移動(連結スライダ18のスライド)が制限される。そのため、下ろくろ11に従動していた中ろくろ14はハンドル15側に移動できなくなり、以降、下ろくろ11だけで移動する。そのため、下ろくろ11と中ろくろ14との間で移動距離に差が生じ、中ろくろ14が回転しながら下ろくろ11から引き出される。
【0029】
このように、中ろくろ14は、
図1(A)から同(C)までの状態では回転しないが、
図1(C)から同(D)の状態では回転する。即ち、回転機構16は、雨傘1を閉じる動作の最終段階で中ろくろ14を傘軸5まわりに回転させる。
【0030】
中ろくろ14の回転によって引っ張り部材6の他端6bが傘軸5まわりに回転され、引っ張り部材6全体が傘軸5まわりに巻き付けられるように動かされて芯材4を傘軸5と親骨3との間のスペースに引き込む。これにより、芯材4が取り付けられている傘布2の張り拡げ部分2aが傘軸5と親骨3との間に引き込まれて収容される。即ち、
図10に示すように、傘布2の張り拡げ部分2aを親骨3の内側の傘軸5まわりに巻き付けながら雨傘1を閉じることができる。
【0031】
回転機構16は、傘布2の張り拡げ部分2aを巻き取るのに十分な量だけ中ろくろ14を回転させる。
そして、下ろくろ11を下はじき22に止めることで、下ろくろ11および中ろくろ14の石突9側への戻りを防止して傘布2の広がりを防ぐことができる。
【0032】
この状態では、
図6に示すように、下ろくろ11内に中ろくろ14の一部が残っており、中ろくろ14が下ろくろ11から完全に抜け出てしまうことはない。
【0033】
一方、閉じた雨傘1を開く場合には、下ろくろ11を下はじき22から外して石突9側に移動させればよい。
開き初めの段階では、下ろくろ11のみが石突9側に移動し、その移動に伴い中ろくろ14が戻り方向に回転して下ろくろ11内に収容される。また、中ろくろ14の回転に応じて引っ張り部材6および芯材4が元の形状に戻り、傘布2の張り拡げ部分2aを傘軸5と親骨3との間のスペースから引き出す。中ろくろ14は下ろくろ11の仕切り壁11cに度当たりするまで回転し、度当たり後は下ろくろ11と一緒に移動して雨傘1が開かれる。
【0034】
このように、雨傘1を閉じると、傘布2の張り拡げ部分2aが自動的に傘軸5まわりに巻き取られるので、使用者がわざわざ手で傘布2の張り拡げ部分2aを処理する必要がない。そのため、使用者の手を濡らすことがない。
また、雨傘1を閉じる際、傘布2の張り拡げ部分2aを内側に隠すことができる。そのため、雨によって濡れた部分を隠すことができ、使用者の手や衣服等を濡らすのを防止することができる。
【0035】
雨傘1を閉じた状態では、傘布2の張り拡げ部分2aを傘軸5に巻き付けるようにして収容することができる。そのため、閉じた雨傘1を細く纏めることできる。
【0036】
また、雨傘1を閉じた状態で、傘布2の張り拡げ部分2aを隠すことができるので、見た目をスッキリとさせることができ、今までにない新しいデザインの雨傘1を提供することができる。
さらに、雨傘1を閉じる際、傘布2の張り拡げ部分2aを内側に巻き込むことができるので、雨傘1を閉じた後で傘布2を巻き紐で止める必要がなくなり、巻き紐を不要にすることができる。そして、巻き紐を不要にできることからも見た目をスッキリとさせることができ、この点からも今までにない新しいデザインの雨傘1を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、雨傘、日傘、和傘、ビーチパラソルやガーデンパラソル等の日よけ傘、等の傘状構造体に利用できる。
【符号の説明】
【0038】
1 雨傘(傘状構造体)
2 傘布
2a 傘布の親骨間に張られる張り拡げ部分
3 親骨
4 芯材
5 傘軸
6 引っ張り部材
11 下ろくろ
14 中ろくろ
15 ハンドル
16 回転機構
19 螺旋状ガイド
20 スライダ
21 回転防止機構
23 ストッパ