【解決手段】スーツケース本体の上部周面に設けられる案内レールに係止部としての複数の凹部が形成され、一方案内レールに案内されてスライド可能な取っ手取付部材の板ばね片122には、押ボタン123と、前記凹部に係止される被係止部として凸部とが設けられ、押ボタン123を押して板ばね片122を下側に撓ませると、凹部に係止された凸部が凹部から出て、取っ手取付部材に固設された取っ手のスライドが可能になる。取っ手が所望位置に来ると、押ボタン123を離すと、板ばね片122が元の状態に戻り、凸部が凹部に入り取っ手が固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスーツケースによる場合には、上述のように取っ手が周面の中央部に固定されているため、ケース収容物の収容状態によってはスーツケースの重心と取っ手が水平方向にずれた位置関係になり、取っ手を把持してスーツケースを持ち上げると、スーツケースが傾いて持ち難くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、収容状態に影響されずに持ち易いスーツケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明のスーツケースは、スーツケース本体と、このスーツケース本体の上部周面または上部周面と隣の側部周面の両方に設けられ、取っ手を有すると共に、前記周面の長手方向に取っ手をスライド移動可能にまたは停止させる取っ手位置変更機構とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明のスーツケースは、請求項1記載のスーツケースにおいて、前記取っ手位置変更機構は、前記スーツケース本体に設けられた案内レールと、この案内レールに案内されてスライド可能な取っ手取付部材と、前記取っ手取付部材を前記案内レールに対してスライド可能または停止させるスライド停止手段とを有し、前記取っ手取付部材に前記取っ手が取り付けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明のスーツケースは、請求項2記載のスーツケースにおいて、前記スライド停止手段は、前記案内レールに設けられ、前記取っ手取付部材のスライド方向に設けられた複数の係止部と、前記取っ手取付部材に設けられ、前記係止部へ係脱可能に設けられた被係止部と、前記取っ手取付部材に設けられ、前記被係止部を前記係止部に対して係脱させる係脱手段とを有することを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明のスーツケースは、請求項3記載のスーツケースにおいて、前記係止部として凹部または穴が形成され、前記被係止部として、前記係止部に係脱する凸部が形成され、前記係脱手段として、凸部を凹部または穴に対して出入させる係脱機構が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明のスーツケースは、スーツケース本体と、このスーツケース本体の上部周面から隣の側部周面まで、または上部周面から隣の側部周面を経由して下部周面までに亘って設けられ、複数の取っ手を有すると共に、各取っ手を前記周面の長手方向にスライド移動可能にし、または停止させる取っ手位置変更機構とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明のスーツケースは、請求項5記載のスーツケースにおいて、前記取っ手位置変更機構は、前記スーツケース本体の上部周面から隣の側部周面まで、または上部周面から隣の側部周面を経由して下部周面までに亘って設けられ、スーツケース本体の隅部に対応した部分が湾曲した案内レールと、この案内レールに案内されてスライド可能であって、前記隅部を通過するように折れ曲がり可能な複数の取っ手取付部材と、各取っ手取付部材を前記案内レールに対してスライド可能にし、または停止させるスライド停止手段とを有し、各取っ手取付部材の夫々に折れ曲がり可能な複数の取っ手が取り付けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明のスーツケースは、請求項6記載のスーツケースにおいて、前記取っ手取付部材は、複数の短尺部材が軸部材を介して連結された構造で、前記隅部を通るとき短尺部材が軸部材に対して揺動することを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明のスーツケースは、請求項7記載のスーツケースにおいて、前記スライド停止手段は、前記案内レールに設けられ、前記取っ手取付部材のスライド方向に設けられた多数の係止部と、各取っ手取付部材に設けられ、前記係止部へ係脱可能に設けられた被係止部と、各取っ手取付部材に設けられ、前記被係止部を前記係止部に対して係脱させる係脱手段とを有することを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明のスーツケースは、請求項8記載のスーツケースにおいて、前記係止部として凹部または穴が形成され、前記被係止部として、前記係止部に係脱する凸部が形成され、前記係脱手段として、凸部を凹部または穴に対して出入させる係脱機構が設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項10の発明のスーツケースは、請求項2記載のスーツケースにおいて、前記取っ手取付部材に前記取っ手が水平軸回りに揺動可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項11の発明のスーツケースは、請求項6記載のスーツケースにおいて、前記取っ手取付部材に前記取っ手が水平軸回りに揺動可能に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明による場合には、取っ手位置変更機構により取っ手の位置をスーツケース本体に対し変更させ得る。それにより、取っ手をスーツケースの重心の真上に位置させることで、取っ手を持ち上げてもスーツケースが傾かず、持ち易くできる。また、取っ手の把持部が水平になるため、持っている手や手首に負担がかかるのを防止することができる。
【0018】
請求項2の発明による場合には、取っ手取付部材が案内レールに案内されるので取っ手がスライド移動可能になる。そして、取っ手を持ち上げてスーツケースが傾かない位置で取っ手をスライド停止手段により停止させることで、スーツケース本体に収容物を入れた後でも容易に取っ手の位置をセットすることができる。
【0019】
請求項3の発明による場合には、被係止部を係止部に係止させると取っ手取付部材が停止して、取っ手が所望位置に止まり、被係止部を係止部から脱出させると取っ手をスライド移動させることができる。
【0020】
請求項4の発明による場合には、係脱手段により凸部を凹部または穴に対して出入させることで、取っ手をスライド移動可能状態と停止状態とに素早く切り替えるようにすることが可能になる。
【0021】
請求項5の発明による場合には、複数の取っ手を、スーツケース本体の上部から側部までの範囲、または上部から隣の側部を経由して下部までの範囲の複数の位置にセットできる。例えば、上部に2つ、上部と側部に一つずつ、側部に2つ、上部と下部に一つずつ、などに取っ手をセットすることができる。
【0022】
請求項6の発明による場合には、案内レールがスーツケース本体の隅部を通るので湾曲する部分が存在する。一方、取っ手取付部材が折れ曲がり可能なので、案内レールの湾曲部分を通過する。よって、取っ手も折れ曲がり可能なので、取っ手が上部から側部、更には下部にわたって移動、或いはその逆に移動できる。
【0023】
請求項7の発明による場合には、取っ手取付部材は、複数の短尺部材が軸部材を介して連結された構造で、案内レールの湾曲部分を通るとき短尺部材が軸部材に対して揺動するので、取っ手取付部材が湾曲部分を通過することが可能になる。
【0024】
請求項8の発明による場合には、被係止部を係止部に係止させると取っ手取付部材が停止して、取っ手が所望位置に止まり、被係止部を係止部から脱出させると取っ手をスライド移動させることができる。
【0025】
請求項9の発明による場合には、係脱手段により凸部を凹部または穴に対して出入させることで、取っ手をスライド移動可能状態と停止状態とに素早く切り替えるようにすることが可能になる。
【0026】
請求項10、11の発明による場合には、前記取っ手取付部材に前記取っ手が水平軸回りに揺動可能に取り付けられているので、自動的に取っ手を重心の鉛直線上に位置させることができるとともに、スーツケース本体が傾いたままでも取っ手を水平することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態につき、
図1〜
図5を用いて説明する。
図1は、この実施の形態に係るスーツケースを示す外観斜視図であり、
図2はこのスーツケースに備わった取っ手位置変更機構を示す分解斜視図、
図3は取っ手位置変更機構を示す縦断面図、
図4は係止用部材を示す外観斜視図である。
【0029】
このスーツケース1は、スーツケース本体2と、このスーツケース本体2の上部周面3に取付けられた取っ手位置変更機構10とを備える。
【0030】
スーツケース本体2は、収容部4と、蓋部5と、図示しない鍵部とを有し、蓋部5を開けると収容部4に衣類等の荷物を収容できるようになっている。
【0031】
取っ手位置変更機構10は、スーツケース本体2に取付けられた案内レール11と、この案内レール11に案内されてスライド可能な取っ手取付部材12と、取っ手取付部材12を案内レール11に対してスライド可能または停止させるスライド停止手段13とを有する。取っ手取付部材12には、概略コの字状をした取っ手20の両端21、22が固定されている。
【0032】
前記案内レール11は、高さh1の低い断面矩形状の長いもので、上面111には全長に亘ってスリット112が形成されており、下面113がスーツケース本体2の上部周面3に取付けられている。案内レール11の内部には取っ手取付部材12が挿入され、案内レール11の両端には抜け防止部材114、115が取付けられ、取っ手取付部材12が抜け落ちないようになっている。案内レール11の全長Lは上部周面3の全長よりも短く形成されている(
図1参照)。
【0033】
取っ手取付部材12は、矩形状の取っ手取付片121と、同じく矩形状の板ばね片122とを有する。取っ手取付片121の厚みt1は、案内レール11の内部空洞の高さh2よりも小さく(
図3参照)、また取っ手取付片121の幅w1は、案内レール11の内部空洞の幅w2よりも小さく形成されている(
図2参照)。
【0034】
板ばね片122の幅w3は取っ手取付片121の幅w1よりも小さく、板ばね片122の厚みt2は取っ手取付片121の厚みt1よりも小さく形成されている(
図3参照)。この板ばね片122は取っ手取付片121のスライド方向の片側側面に突出するように設けられていて、取っ手取付片121からはみ出さない幅方向位置で、厚み方向の途中位置に配されている。よって、取っ手取付部材12は案内レール11の内部をスライドできる。
【0035】
板ばね片122の上面には、押ボタン123と凸部124が設けられている。押ボタン123は、取っ手20と共に前記スリット112を通ってスライドする位置に設けられている(
図1参照)。押ボタン123を
図3に示すように白抜矢符A方向に押すと板ばね片122が二点鎖線で示すように撓み、押ボタン123から手を離すと板ばね片122が弾性力で元の水平状態に戻る。取っ手20は、スーツケース本体2の上部周面3の幅方向中央部を通るように構成され、つまり取っ手20、押ボタン123およびスリット112は、前記スーツケース本体2の幅方向中央部に配置されている。
【0036】
前記凸部124は、押ボタン123に対して板ばね片122の幅方向に偏心した位置に設けられている(
図2参照)。一方、案内レール11の上部内面には、取っ手20のスライドに伴って前記凸部124が移動する領域に、
図4に示す係止用部材116が設けられている。この係止用部材116には、複数の係止部、例えば凹部117が形成されていて、この凹部117には前記凸部124が出入する。この出入により、係止用部材116の凹部117に対する凸部124の係脱が行われる。
【0037】
具体的には、押ボタン123を押し、板ばね片122を撓ませて凸部124を凹部117から出し、その状態のままで取っ手20をスライドさせて所望位置に到達すると、押ボタン123を離して凸部124を上昇させ、凸部124を凹部117に入れる。この凸部124は、係止部としての凹部117に係脱可能な被係止部として機能する。また、押ボタン123と板ばね片122とは、係止部としての凹部117に被係止部としての凸部124を係脱させる係脱手段として機能する。
【0038】
ここで係脱とは、係止させることと、係止を解除することをいう。前記係脱手段(押ボタン123と板ばね片122)と凹部117と凸部124とにより前記スライド停止手段13が構成されている。
【0039】
このように構成された本実施形態に係るスーツケース1による場合には、取っ手20の位置をスーツケース本体2に対し変更させ得るので、取っ手20をスーツケースの重心の真上に位置させることができる。これは、取っ手20のスライドと取っ手20の持ち上げとを繰り返すことで可能になる。これにより、取っ手20を持ち上げてもスーツケース1が傾かず、持ち易くできる。また、取っ手20の把持部23が水平になるため、持っている手や手首に負担がかかるのを防止することができる。更に、スーツケース本体2に収容物を入れた後でも容易に取っ手20の位置をセットすることができる。また、押ボタン123により凸部124を凹部117に対して出入させることで、取っ手20をスライド移動可能状態と停止状態とに素早く切り替えるようにすることが可能になる。
【0040】
尚、上述した実施形態では係止部として凹部117を形成しているが、本発明にあっては係止部として貫通する穴を形成してもよい。また、被係止部として凸部124を形成しているが、本発明にあっては被係止部として凹部または穴を形成し、係止部として凸部を形成してもよい。
また、上述した実施形態ではスーツケース本体2の上部周面3のみに取っ手位置変更機構10を取付けているが、本発明はこれに限らず、
図5に示すように上部周面3と側部周面6の夫々に取っ手位置変更機構10を備える構成にすることもできる。
【0041】
更に、上述した実施形態では上部周面3と側部周面6の各周面がその長手方向で真直ぐなスーツケース本体2に対応しているが、本発明はこれに限らず、前記各周面がその長手方向で湾曲しているスーツケース本体にも対応することができる。但し、この場合には、取っ手取付片121の厚みt1を、案内レール11の内部空洞の高さh2よりも幾分小さくして、つまり高さ方向の隙間を大きくして取っ手取付部材12がスライドできるように構成する必要がある。
【0042】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るスーツケースにつき説明する。
図6は第2実施形態に係るスーツケースを示す外観斜視図、
図7は取っ手取付部材を構成する短尺部材を示す外観斜視図、
図8は取っ手取付部材を示す平面図、
図9は取っ手取付部材が案内レールの湾曲部を通るときの説明図、
図10は係脱手段を示す斜視図である。
【0043】
この第2実施形態のスーツケース1Aでは、
図6に示すように、取っ手位置変更機構10Aがスーツケース本体2Aの上部周面3から側部周面6までの範囲に亘り設けられている。
【0044】
前記取っ手位置変更機構10Aは、上部周面3と側部周面6の間の角部7に対応する必要があり、L字状の湾曲部11Bを有する案内レール11Aと、案内レール11Aの内部をスライドできる折れ曲がり可能な取っ手取付部材12Aとが用いられる。案内レール11Aの両端には、抜け防止部材114A、115Aが取付けられている。なお、取っ手取付部材12Aは、本実施形態では2つ備わっていて、同様の構成である。
【0045】
前記案内レール11Aは、長手方向の中間部に湾曲部11Bが設けられていることを除いて、第1実施形態の案内レール11と同様に構成されていて、両端には抜け防止部材114A、115Aが取付けられている。
【0046】
取っ手取付部材12Aは、
図7、
図8に示すように、両側に連結爪31,32が設けられた短尺部材30が複数、図示例えば3つ連結された構成である。
【0047】
具体的には、連結爪31は3つ、連結爪32は4つ形成され、連結爪31を連結爪32の間に入れ、連結爪31に形成された丸穴33と連結爪32に形成された丸穴34とを位置あわせして両丸穴33、34に、断面が円形をした軸部材35(一点鎖線で示す)を通すことにより、3つの短尺部材30が連結されている。連結爪31は、3つに限らず、1若しくは2、または4以上でもよく、もう片側の連結爪32は連結爪31よりも1つ多く形成されていればよい。
【0048】
このように構成された取っ手取付部材12Aは、
図9に示すように案内レール11Aの湾曲部11Bを通るとき、以下のように動作する。例えば上部周面3から側部周面6へ向けた方向(スライド方向B)にスライドする例を挙げて説明する。
【0049】
左端の短尺部材30(30A)が湾曲部11Bに到達すると、まだ上部周面3に位置する水平な中央の短尺部材30(30B)に対して短尺部材30Aが、両短尺部材30A、30Bを連結する軸部材35(35D)の回りに揺動して下向きに折れ曲がっていき、側部周面6へ向かう。
【0050】
続いて、中央の短尺部材30Bが湾曲部11Bに到達すると(
図9はこの状態を示す)、まだ上部周面3に位置する水平な右端の短尺部材30(30C)に対して短尺部材30Bが、両短尺部材30B、30Cを連結する軸部材35(35E)の回りに揺動して下向きに折れ曲がっていく。これに伴って、短尺部材30Aおよび短尺部材30Bが側部周面6を降下していく。
【0051】
続いて、短尺部材30Bの降下に伴って右端の短尺部材30Cが湾曲部11Bに到達すると、短尺部材30Bが前記軸部材35Eの回りに揺動してより下向きに折れ曲がっていくと共に、短尺部材30Cが側部周面6を降下していく。
【0052】
このように短尺部材30A、短尺部材30Bおよび短尺部材30Cが順次折れ曲がることで、取っ手取付部材12Aは湾曲部11Bを通過でき、案内レール11Aを支障なくスライドできる。
【0053】
なお、各短尺部材30は、スライド方向中央の厚みt5(
図9参照)が他の部分よりも厚く、案内レール11Aの内部高さh5に略等しく形成され、案内レール11Aの内部をガタツクことなくスライドできるようになっている。
【0054】
また、連結された3つの短尺部材30のうち、図示例では中央の短尺部材30Bと右端の短尺部材30Cには、各上面に取っ手40の両端部41、42が固定具43、44を介して取付けられている。取っ手40は、折り曲がり可能な軟質材質で形成され、取っ手取付部材12Aの湾曲部11Bにおける通過が支障なく行えるようになっている。なお、
図8においては、前記固定具43、44は二点鎖線で示し、取っ手40は省略している。
【0055】
更に、前記中央の短尺部材30Bと案内レール11Aの内部には、スライド停止手段50が設けられている。このスライド停止手段50は、
図8および
図10に示すように、案内レール11Aの幅方向W側の内壁に設けられた多数の係止部、例えば凹部51と、短尺部材30Bに設けられ、前記凹部51に対して幅方向Wにスライド可能に設けられた丸棒部材52と、各取っ手取付部材12Aに設けられ、前記丸棒部材52の幅方向Wの先端部52Aを凹部51に出入させて係脱させる係脱手段53とを有する。なお、前記凹部51は、案内レール11Aの全長に亘って設けられている。
【0056】
前記係脱手段53は、丸棒部材52の後端に向けたバネ取付部54と、このバネ取付部54に取付けられるコイルバネ55と、丸棒部材52の後端に側方(上方)に向けて突出したレバー56と、レバー56をコイルバネ55の押圧力に抗して幅方向Wとは反対側へ引張り、かつ二点鎖線にて示すように軸心回りに傾けると、その状態を保持させるストッパー部57とで構成される。
【0057】
中央の短尺部材30Bには、丸棒部材52およびコイルバネ55が収納される空洞部58と、レバー56を突出させる開口部59とが形成されており、この開口部59に繋がるように前記ストッパー部57が切欠いて形成されている。
【0058】
このように構成された取っ手取付部材12Aは、
図6に示すように1つの取っ手位置変更機構10Aにおいて2つ設けられていて、2つの取っ手40をスーツケース1Aの任意の2か所に配置することができる。
【0059】
具体的には、一方の取っ手取付部材12Aにおいて、レバー56をコイルバネ55の押圧力に抗して引張り、かつ傾けてストッパー部57に保持させると、丸棒部材52の先端部52Aが凹部51から抜出て、それまでの係止状態から離脱した状態になる。その離脱状態で、取っ手40を把持して取っ手取付部材12Aをスライドさせる。その後、取っ手40が希望する任意の位置に到達すると、傾いていたレバー56を戻してストッパー部57から解除する。すると、コイルバネ55の押圧力により丸棒部材52が幅方向Wにスライドし、先端部52Aが凹部51に入り取っ手取付部材12A及び取っ手40が停止した状態になる。
【0060】
このような操作を、もう一方の取っ手取付部材12Aにおいても同様に行うことで、2つの取っ手40を最適な2位置に配置することが可能になる。例えば、
図11に示すように、側部周面6よりも短い上部周面3の適当位置に取っ手40を2つ配置したり、側部周面6の適当位置に取っ手40を2つ配置(図示省略)したりすることができる。このように取っ手40を配置した場合には、両手でスーツケース1Aを持ち上げるとき、持ち上げ易くすることができる。また、取っ手40を上部周面3と側部周面6の夫々の適当位置に配置したりすることもできる。
【0061】
なお、上述した第2実施形態では丸棒部材52の先端部52Aが出入するよう案内レール11Aに凹部51を形成しているが、本発明はこれに限らず、凹部51に代えて案内レール11Aに貫通する穴を形成してもよい。
また、係脱手段53は、上記とは異なる構成を採用することも可能である。
【0062】
更には、
図12に示すように、スーツケース1Aの一方の側部周面6から上部周面3を経て他方の側部周面6Aまでに亘って取っ手位置変更機構10Aを設け、その取っ手位置変更機構10Aに2つの取っ手取付部材12Aを配設してもよい。この場合には、図示したように、互いに反対の側部周面6と側部周面6Aとに取っ手40を配置することができる。この取っ手40の配置にあっては、二人でスーツケース1Aを持ち上げるとき、持ち上げ易くできるという利点がある。
【0063】
なお、上述した第2実施形態のスーツケース1Aでは、1つの案内レール11Aに対して2つの取っ手取付部材12Aを設ける構成としているが、本発明はこれに限らず、1つの案内レール11Aに対して3つ以上の取っ手取付部材12Aを設ける構成としてもよい。また、案内レール11Aは、スーツケース1Aの上部周面3、両側部周面6、6Aに加えて下部周面にも、つまり全周面に亘って形成してもよい。
【0064】
また、上述した第1実施形態および第2実施形態では言及していないが、スライド停止手段13,50により取っ手取付部材12、12Aをスライド可能な状態にして取っ手20、40を把持して持ち上げていくと、取っ手20、40と重心とが鉛直線上にないとき、重心側を地面に着けてスーツケース本体2、2Aが傾いていくとともに、取っ手20、40が自動的にスライドして重心と鉛直線上に位置するように止まる。その後、スライド停止手段13,50により取っ手取付部材12、12Aを停止状態にする。
【0065】
なお、取っ手20、40は、取っ手取付部材12、12Aに対して水平軸回りに揺動可能に取り付けた構成としてもよい。この構成にした場合には、スーツケース本体2、2Aが傾いていても、取っ手20、40を水平することができる。また、取っ手取付部材12、12Aのスライドを容易にさせる場合には、取っ手取付部材と案内レールとの間にボールベアリングなどを介在させることが好ましい。