特開2021-122825(P2021-122825A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-122825(P2021-122825A)
(43)【公開日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】被膜形成方法、及び積層体
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/36 20060101AFI20210802BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20210802BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20210802BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20210802BHJP
   C09D 175/04 20060101ALI20210802BHJP
   C08G 18/48 20060101ALI20210802BHJP
【FI】
   B05D1/36 Z
   B05D7/24 303A
   B05D7/24 302T
   B05D3/00 D
   B32B27/40
   C09D175/04
   C08G18/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2021-10244(P2021-10244)
(22)【出願日】2021年1月26日
(31)【優先権主張番号】特願2020-18493(P2020-18493)
(32)【優先日】2020年2月6日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
【テーマコード(参考)】
4D075
4F100
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC57
4D075AE03
4D075BB16X
4D075BB60Z
4D075CA08
4D075CA13
4D075CA18
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4D075CA47
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4D075EB35
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4D075EC02
4D075EC07
4D075EC08
4D075EC11
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4D075EC31
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4F100AA21A
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4F100AK51A
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4F100AK54A
4F100AK54B
4F100BA03
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4F100BA10B
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4F100CA13A
4F100CA13B
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4F100GB07
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4J038DG101
4J038DG131
4J038DG261
4J038KA04
4J038KA08
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】
ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、及び可塑剤を含む第1被覆材に、特定のポリオール成分(A)を含む第2被覆材を塗付して被膜を形成する被膜形成方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、第1被覆材、及び第2被覆材を塗付する被膜形成方法であって、上記第1被覆材は、可塑剤を含み、上記第1被覆材及び第2被覆材は、樹脂成分としてポリオール成分(A)及びポリイソシアネート成分(B)を含み、上記第2被覆材は、上記第1被覆材のポリオール成分(A1)よりも水酸基価の大きいポリオール成分(A2)を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1被覆材、及び第2被覆材を塗付する被膜形成方法であって、
上記第1被覆材は、可塑剤を含み、
上記第1被覆材及び第2被覆材は、樹脂成分としてポリオール成分(A)及びポリイソシアネート成分(B)を含み、
上記第2被覆材は、上記第1被覆材のポリオール成分(A1)よりも水酸基価の大きいポリオール成分(A2)を含むことを特徴とする被膜形成方法。
【請求項2】
上記第1被覆材及び第2被覆材は、上記ポリオール成分(A)としてポリエーテルポリオール(Ax)を含み、
上記第2被覆材は、上記第1被覆材のポリエーテルポリオール(Ax1)よりも水酸基価の大きいポリエーテルポリオール(Ax2)を含むことを特徴とする請求項1に記載の被膜形成方法。
【請求項3】
上記ポリエーテルポリオール(Ax2)は、水酸基価が50mgKOH/g以上のポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に被膜形成方法。
【請求項4】
第1被覆材により形成される第1被膜、第2被覆材により形成される第2被膜を有する積層体であって、
上記第1被覆材及び第2被覆材は、樹脂成分としてポリオール成分(A)及びポリイソシアネート成分(B)を含み、
上記第2被覆材は、上記第1被覆材のポリオール成分(A1)よりも水酸基価の大きいポリオール成分(A2)を含むことを特徴とする積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、土木構造物等の表面には、可塑剤を含むウレタン樹脂被覆材(「可塑剤含有被覆材」)が被覆されることがある。このような可塑剤含有被覆材は、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、及び可塑剤を含むものである。また、この可塑剤含有被覆材の表面には、保護や意匠性等のために被覆材を積層することもある。しかし、可塑剤は、経時的に被覆材に移行する場合があり、被覆材表面への汚染物質の付着等により美観性が低下したり、密着性が低下したりする場合がある。
【0003】
これに対して、例えば、特許文献1では、非移行性の高分子可塑剤が提案されており、高分子量であることから表面に移行することがないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−226442号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に、可塑剤含有被覆材では低分子タイプの可塑剤が多く使用されているのが現状であり、このような可塑剤含有被覆材に適用可能な被膜形成方法の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明者らは、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、及び可塑剤を含む第1被覆材の表面に、特定のポリオール成分(A)を含む第2被覆材を塗付して被膜を形成することにより可塑剤の移行防止性に優れるとともに、密着性に優れた被膜を形成することができることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.第1被覆材、及び第2被覆材を塗付する被膜形成方法であって、
上記第1被覆材は、可塑剤を含み、
上記第1被覆材及び第2被覆材は、樹脂成分としてポリオール成分(A)及びポリイソシアネート成分(B)を含み、
上記第2被覆材は、上記第1被覆材のポリオール成分(A1)よりも水酸基価の大きいポリオール成分(A2)を含むことを特徴とする被膜形成方法。
2.上記第1被覆材及び第2被覆材は、上記ポリオール成分(A)としてポリエーテルポリオール(Ax)を含み、
上記第2被覆材は、上記第1被覆材のポリエーテルポリオール(Ax1)よりも水酸基価の大きいポリエーテルポリオール(Ax2)を含むことを特徴とする1.記載の被膜形成方法。
3.上記ポリエーテルポリオール(Ax2)は、水酸基価が50mgKOH/g以上のポリエーテルポリオールを含むことを特徴とする1.または2.に記載の被膜形成方法。
4.第1被覆材により形成される第1被膜、第2被覆材により形成される第2被膜を有する積層体であって、
上記第1被覆材及び第2被覆材は、樹脂成分としてポリオール成分(A)及びポリイソシアネート成分(B)を含み、
上記第2被覆材は、上記第1被覆材のポリオール成分(A1)よりも水酸基価の大きいポリオール成分(A2)を含むことを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、第1被覆材、及び第2被覆材を塗付する被膜形成方法であって、上記第1被覆材は、可塑剤を含み、上記第1被覆材及び第2被覆材は、樹脂成分としてポリオール成分(A)及びポリイソシアネート成分(B)を含み、上記第2被覆材が、上記第1被覆材のポリオール成分(A1)よりも水酸基価の大きいポリオール成分(A2)を含むことにより、可塑剤移行防止性に優れるとともに、密着性に優れた被膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0010】
本発明は、第1被覆材、及び第2被覆材を順に塗付する被膜形成方法に関するものである。本発明における第1被覆材及び第2被覆材は、いずれも、樹脂成分としてポリオール成分(A)及びポリイソシアネート成分(B)を含有する。そして、第2被覆材は、第1被覆材のポリオール成分(A1)よりも水酸基価の大きいポリオール成分(A2)を含むものである。このような第1被覆材及び第2被覆材(以下、両方を総称して単に「被覆材」ともいう。)の共通事項について、まず説明する。
【0011】
本発明の被覆材は、ポリオール成分(A)及びポリイソシアネート成分(B)を含み、これらの反応により被膜を形成するものである。
【0012】
本発明のポリオール成分(A)(以下「(A)成分」ともいう。)は、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ひまし油、ひまし油変性ポリオール、エポキシ変性ポリオール、シリコーン変性ポリオール、フッ素変性ポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリペンタジエンポリオール等が挙げられる。本発明の被覆材は、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオールから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。これらのポリオールは、20℃において液体であることが好ましく、溶剤可溶型、非水ディスパージョン(NAD)型等の形態でも使用が可能である。
【0013】
ポリエーテルポリオール(Ax)(以下、「(Ax)成分」ともいう。)は、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール誘導体、ソルビトール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール類と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加重合により得られるものである。本発明では、上記多価アルコール類と、エチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドとの付加重合により得られる重合体が好適であり、末端にエチレンオキサイド及び/またはプロピレンオキサイドが付加されたものも使用できる。さらに、本発明では、(Ax)成分として、活性水素原子を有する官能基(水酸基)が3つ以上(官能基数3以上)のポリエーテルポリオールを含むことが好ましい。この場合、形成被膜の架橋密度を高めることができ、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0014】
アクリルポリオール(Ay)(以下「(Ay)成分」ともいう。)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、水酸基含有モノマーと、必要に応じその他のモノマーとを構成成分として含み、これらを重合したものが使用できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリロイル基とアルキル基とを有する化合物である。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルとを併せて(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。モノマーとは、重合性不飽和二重結合を有する化合物の総称である。
【0015】
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸t−ペンチル、(メタ)アクリル酸1−エチルプロピル、(メタ)アクリル酸2−メチルブチル、(メタ)アクリル酸3−メチルブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルブチル、(メタ)アクリル酸2−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4−メチルペンチル、(メタ)アクリル酸n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸n−デシル、(メタ)アクリル酸n−ウンデシル、(メタ)アクリル酸n−ラウリル等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0016】
上記水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0017】
上記その他のモノマーとしては、例えば、芳香族モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、ピリジン系モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、含フッ素モノマー、紫外線吸収性基含有モノマー、光安定性基含有モノマー等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。
【0018】
さらに、本発明では、(Ay)成分として、アクリルポリオールとポリエステルを含むポリエステル含有アクリルポリオールを使用することもできる。ポリエステル含有アクリルポリオールは、例えば、重合性不飽和基を有するポリエステル樹脂と、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、水酸基含有モノマーと、必要に応じその他の重合性モノマーを反応させて得ることができる。
【0019】
重合性不飽和基を有するポリエステル樹脂は、多塩基酸と多価アルコールを縮合反応させてポリエステル樹脂を得る際に、多塩基酸及び/または多価アルコールとして、重合性不飽和基を有するものを一部使用することによって得ることができる。また、重合性不飽和基を有するポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂中の水酸基またはカルボキシル基と反応可能なモノマー、具体的にはマレイン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸グリシジル等を、ポリエステル樹脂と反応させることによって得ることもできる。
【0020】
上記(A)成分の水酸基価は好ましくは1〜1000 mgKOH/g (より好ましくは3〜900mgKOH/g)である。このような(A)成分を含有することによって、本発明の効果を十分に発揮することができる。なお、ここに言う水酸基価とは、固形分1gに含まれる水酸基と等モルの水酸化カリウムのmg数によって表される値(KOHmg/g)である。また、本発明において「α〜β」は「α以上β以下」と同義である。
【0021】
本発明被覆材におけるポリイソシアネート成分(B)(以下「(B)成分」ともいう。)は、上記(A)成分との硬化反応を生じる成分である。本発明では、このような硬化反応により、密着性、可塑剤移行防止性等において十分な効果が発現される。
【0022】
(B)成分としては、例えば、トルエンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(pure−MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添XDI、水添MDI等、あるいはこれらをアロファネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン化)、3量化(イソシアヌレート化)、アダクト化、カルボジイミド化した誘導体;及び、これらをアルコール類、フェノール類、ε−カプロラクタム、オキシム類、活性メチレン化合物類等でブロックした、ブロックイソシアネート等が挙げられ、これから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0023】
本発明では、(B)成分として、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)及び/またはその誘導体(以下「HMDI類」ともいう。)を含むことが好ましい。上記HMDI類の含有量は、(B)成分としての全量(固形分)に対して、90重量%以上(より好ましくは95重量%以上)であることが好ましい。また(B)成分としてが、HMDI類のみからなる態様も好適である。また、誘導体としては、ビウレット体が好適である。このような場合、形成被膜の硬化性に優れ、密着性、可塑剤移行防止性等を高めることができる。
【0024】
(B)成分のNCO含有量は、好ましくは10〜35重量%(より好ましくは13〜32重量%、さらに好ましくは15〜30重量%)である。このような場合、密着性を高めることができる。なお、NCO含有量とは、(B)成分中に含まれるNCOの重量%をいう。
【0025】
上記(A)成分と、(B)成分の混合は、(A)成分と(B)成分のNCO/OH当量比で好ましくは0.6〜3.5(より好ましくは1〜3.0、さらに好ましくは1.1〜2.5)となるような比率で行う。このような場合、硬化性に優れ、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0026】
本発明では、(A)成分と(B)成分の反応を促進する硬化触媒を併用することができる。硬化触媒とはイソシアネート基が反応して硬化するのを促進させる作用を有する物質である。硬化触媒としては、アミン系触媒、有機金属系触媒、及び無機系触媒等各種が挙げられる。例えば、アミン系触媒としては、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、及び、ヘキサメチレンジアミンもしくはこれらの誘導体または溶剤との混合物等が挙げられる。有機金属系触媒としては、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート等の有機金属化合物;酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛、ステアリン酸アルミニウム、オクチル酸錫等の有機金属塩等が挙げられる。無機系触媒としては、塩化スズ等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用でき、溶剤と混合して使用することもできる。本発明では、特に、有機金属系触媒を含むことが好適である。この場合、硬化を促進するとともに、密着性、可塑剤移行防止性等において被膜形成初期段階から十分な効果が発現される。
【0027】
上述の成分の他、本発明被覆材には、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内において、各種成分を配合することも可能である。このような成分としては、例えば、着色顔料、体質顔料、難燃剤、発泡剤、炭化剤、増粘剤、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、皮張り防止剤、ドライヤー、艶消し剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、低汚染化剤、触媒等が挙げられる。
【0028】
本発明では、基材に対し、このような被覆材(第1被覆材及び第2被覆材)を塗付(塗装)することにより、被膜を形成する。本発明では、基材に対し、第1被覆材を塗付し、その被膜(第1被膜)を乾燥させた後に、第2被覆材を塗付することが望ましい。基材は、建築物、土木構造物等の表面を構成するものである。具体的には、壁、柱、床、梁、屋根、階段、天井、戸等の各種基材に施工することができる。適用可能な基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、煉瓦、プラスチック、木材、金属、鉄骨(鋼材)、ガラス、磁器タイル等が挙げられる。これら基材は、その表面に、既に被膜が形成されたもの、何らかの下地処理(防錆処理、難燃処理等)が施されたもの、壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
【0029】
また、第2被覆材は、第1被膜に直接塗付、あるいは何らかの層(例えば、下塗材層、中塗材層等)を介して塗付することができる。本発明では、第1被膜に直接塗付することが好ましい。これにより、可塑剤移行防止性、及び密着性において十分な効果を得ることができる。このような第2被覆材は、可塑剤移行防止用被覆材として効果を発揮するものである。
【0030】
次に、第1被覆材と第2被覆材の特徴について説明する。
第1被覆材及び第2被覆材は、樹脂成分として上記ポリオール成分(A)を含む。さらに、本発明では、第2被覆材が、第1被覆材のポリオール成分(A1)よりも水酸基価の大きいポリオール(A2)を含むことを特徴とする。すなわち、第1被覆材としては、相対的に水酸基価の小さいポリオール成分(A1)を含み、第2被覆材としては、相対的に水酸基価の大きいポリオール成分(A2)を含むものである。本発明では、このような態様の第1被覆材及び第2被覆材を用いることにより、可塑剤移行防止性に優れるとともに、十分な密着性を得ることができる。
【0031】
本発明において、上記ポリオール成分(A1)と上記ポリオール成分(A2)の水酸基価の差は、好ましくは5mgKOH/g以上(より好ましくは10mgKOH/g以上、さらに好ましくは50mgKOH/g以上、特に好ましくは100mgKOH/g以上、最も好ましくは150mgKOH/g以上)である。このような場合、優れた可塑剤移行防止性を発揮することができる。具体的に上記ポリオール成分(A1)の水酸基価は、好ましくは1〜200mgKOH/g(より好ましくは3〜150mgKOH/g)である。また、上記ポリオール成分(A2)の水酸基価は、好ましくは30〜1000mgKOH/g(より好ましくは35〜900mgKOH/g)である。なお、第1被覆材、第2被覆材のいずれか、または両方が複数のポリオール成分を含む場合は、第1被覆材の少なくとも1種のポリオール成分(A1)と、第2被覆材の少なくとも1種のポリオール成分(A2)とが、上記条件を満たせばよい。
【0032】
また、第1及び第2被覆材は、ポリオール成分(A)として、ポリエーテルポリオール(Ax)を含むことが好ましく、第2被覆材が、第1被覆材のポリエーテルポリオール(Ax1)よりも水酸基価の大きいポリエーテルポリオール(Ax2)を含むことが好ましい。具体的に、第1被覆材に含まれるポリエーテルポリオール成分(Ax1)の水酸基価は、好ましくは1〜200mgKOH/g(より好ましくは3〜180mgKOH/g、さらに好ましくは5〜150mgKOH/g、特に好ましくは8〜100mgKOH/g、最も好ましくは10〜35mgKOH/g)である。第2被覆材に含まれるポリエーテルポリオール(Ax2)の水酸基価は、好ましくは50mgKOH/g以上(より好ましくは100mgKOH/g以上、さらに好ましくは150mgKOH/g以上、特に好ましくは200mgKOH/g以上、最も好ましくは250mgKOH/g以上)である。なお、その上限は特に限定されないが、好ましくは1000mgKOH/g以下(より好ましくは800mgKOH/g以下)である。このような場合、本発明の効果をいっそう高めることができる。
【0033】
さらに、第2被覆材が、第1被覆材のポリエーテルポリオール(Ax1)よりも分子量の小さいポリエーテルポリオール(Ax2)を含むことが好ましい。すなわち、第1被覆材としては、相対的に分子量の大きいポリエーテルポリオール(Ax1)を含み、第2被覆材としては、相対的に分子量の小さいポリエーテルポリオール(Ax2)を含むものが好ましい。これにより、可塑剤移行防止性、密着性をいっそう高めることができる。
【0034】
上記ポリエーテルポリオール(Ax1)と上記ポリエーテルポリオール(Ax2)の分子量の差は、好ましくは2000以上(より好ましくは3000以上、さらに好ましくは4000以上、特に好ましくは6000以上、最も好ましくは6500以上)である。このような場合、優れた可塑剤移行防止性を発揮することができる。具体的にポリエーテルポリオール(Ax1)は、その分子量が好ましくは1000以上(より好ましくは3000以上、さらに好ましくは5000以上、特に好ましくは6000以上、最も好ましくは6500以上)であり、その上限は、好ましくは18000以下(より好ましくは15000以下、さらに好ましくは12000以下)である。ポリエーテルポリオール(Ax2)は、その分子量が好ましくは4000以下(より好ましくは2000以下、さらに好ましくは1000以下、特に好ましくは900以下、最も好ましくは600以下)であり、その下限は、好ましくは50以上(より好ましくは100以上、さらに好ましくは150以上)である。このような(Ax2)成分を使用することにより、可塑剤移行防止性を高めることができる。なお、本発明においてポリオール成分の分子量は、数平均分子量(Mn)であり、ポリスチレン重合体をリファレンスとして用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求めた、いわゆるポリスチレン換算分子量である。
【0035】
なお、第1被覆材、第2被覆材のいずれか、または両方が複数のポリエーテルポリオール(Ax)を含む場合は、第1被覆材の少なくとも1種のポリエーテルポリオール成分(Ax1)と、第2被覆材の少なくとも1種のポリエーテルポリオール成分(Ax2)とが、上記条件を満たせばよく、第1被覆材の全てのポリエーテルポリオール(Ax1)に対し、第2被覆材の全てのポリエーテルポリオール(Ax2)が上記条件を満たすことがより好ましい。
【0036】
第1被覆材では、(A1)成分の固形分中に、上記ポリエーテルポリオール(Ax1)の固形分含有量が、好ましくは50重量%以上(より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上)である。その上限は特に限定されず、(A1)成分が上記ポリエーテルポリオール(Ax1)のみの態様であってもよい。このような場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0037】
一方、第2被覆材は、ポリオール成分(A2)として、さらにアクリルポリオール(Ay2)を含むことが好ましい。この場合、アクリルポリオール(Ay2)の水酸基価は、好ましくは1〜200KOHmg/gであり(より好ましくは3〜100KOHmg/g、さらに好ましくは5〜80KOHmg/g)である。アクリルポリオール(Ay2)の水酸基価がこのような範囲内であれば、優れた可塑剤移行防止性を有するとともに、密着性向上の点でも有利である。また、ポリエーテルポリオール(Ax2)とアクリルポリオール(Ay2)の重量比(固形分)は、好ましくは90:10〜10:90(より好ましくは80:20〜20:80、さらに好ましくは70:30〜50:50)である。このような場合、優れた可塑剤移行防止性を有するとともに、密着性向上の点でも有利である。
【0038】
また、本発明では(A2)成分の固形分中に、上記ポリエーテルポリオール(Ax2)と上記アクリルポリオール(Ay2)の固形分含有量(合計)が、好ましくは50重量%以上(より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上)である。その上限は特に限定されず、(A2)成分が上記ポリエーテルポリオール(Ax2)と上記アクリルポリオール(Ay2)のみの態様であってもよい。このような場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。
【0039】
本発明の第1被覆材は、上記樹脂成分に加えて、可塑剤を必須成分として含むものである。このような第1被覆材は、上記樹脂成分に可塑剤を含む材料であれば特に限定されないが、例えば、コーティング材、シート、シーリング材、プラスチゾル等が挙げられ、これらは各種機能性(例えば、防水性、難燃性、耐熱性等)を有するものであってもよい。
【0040】
可塑剤としては、特に限定されないが、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘプチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル化合物;アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ビス(ブチルジグリコール)、セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジブチル、セバシン酸ジヘキシル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル等の脂肪族二塩基酸エステル化合物;アジピン酸−1,3ブチレングリコール系ポリエステル、アジピン酸−1,2プロピレングリコール系ポリエステル等のアジピン酸系ポリエステル化合物;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジヘキシル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジイソノニル、マレイン酸ジイソデシル等のマレイン酸エステル化合物;
【0041】
リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル、リン酸クレジルジフェニル、リン酸−2エチルヘキシルジフェニル等のリン酸エステル化合物;トリス−2−エチルヘキシルトリメリテート等のトリメット酸エステル化合物;メチルアセチルリジノレート等のリシノール酸エステル化合物;エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ2-エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジエポキシステアリル、エポキシ化脂肪酸ブチル、エポキシ化脂肪酸2-エチルヘキシル、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ系エステル化合物;安息香酸グリコールエステル等の安息香酸系エステル化合物;塩素化パラフィン;1−フェニル−1−キシリルエタン、1−フェニル−1−エチルフェニルエタン等の芳香族炭化水素化合物、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、石油樹脂(炭素原子数が8〜10である芳香族炭化水素留分重合物)とスチリルキシレン等の混合物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上含むこともできる。
【0042】
本発明では、第1被覆材がフタル酸エステル化合物、脂肪族二塩基酸エステル化合物、リン酸エステル化合物、塩素化パラフィンから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。この場合、本発明の効果を十分に発揮することができる。また、本発明では、分子量が1000以下(好ましくは100以上800以下)の比較的低分子タイプの可塑剤を含む場合であっても、本発明の効果を十分に発揮することができる。なお、可塑剤の分子量は分子式から算出した値である。
【0043】
第1被覆材における可塑剤の含有量は、上記ポリオール成分(A1)及び上記ポリイソシアネート成分(B1)の総固形分(以下「樹脂成分(固形分)」ともいう)100重量部に対して、好ましくは5〜200重量部(より好ましくは10〜150重量部)である。このように、可塑剤を比較的多く含む場合であっても、本発明の被膜形成方法において、可塑剤移行防止性、密着性において十分な効果を得ることができる。
【0044】
さらに、第1被覆材には、各種機能性を付与するための機能性粉体を含むことができる。 機能性粉体としては、例えば、断熱性付与粉体、耐熱性付与粉体、紫外線遮蔽性付与粉体、赤外線遮蔽性粉体等の所望の機能を発揮するものが使用できる。このような機能性粉体を含むことにより、被膜に所望の性能を付与できる。このような機能性粉体としては、例えば、断熱性付与粉体、耐熱性付与粉体、紫外線遮蔽性粉体等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
【0045】
本発明の第1被覆材は、機能性付与粉体として、耐熱性付与粉体を含むことが好ましい。このような第1被覆材は、建築物・土木構築物等の構造物の表面被覆に適用する発泡性耐火被覆材として好適なものである。耐熱性付与粉体としては、高温時に脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、結合剤炭化促進効果、炭化断熱層形成効果等の少なくとも1つの効果を発揮し、燃焼を抑制する作用を有するものであればよく、例えば、発泡剤、炭化剤、難燃剤等が挙げられる。
【0046】
具体的には、発泡剤としては、例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾビステトラゾーム及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。発泡剤の含有量は、上記樹脂成分(固形分)00重量部に対して、好ましくは10〜200重量部(より好ましくは20〜150重量部)である。なお、本発明の発泡剤は、火災時等の温度上昇によって被膜に発泡作用を付与するものであり、具体的には、被膜表面の温度が好ましくは200℃以上となった場合に発泡作用を付与するものである。
【0047】
炭化剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、デンプン、カゼイン等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、特にペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用に優れている点で好ましい。炭化剤の含有量は、上記樹脂成分(固形分)100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部(より好ましくは20〜120重量部)である。なお、本発明の炭化剤は、火災時等の温度上昇によって、上記樹脂成分の炭化とともに脱水炭化することにより、炭化断熱層を形成する作用を付与するものである。
【0048】
難燃剤としては、例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、塩素化パラフィン、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、リン酸ホウ素、ポリリン酸ホウ素、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等の無機質化合物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。難燃剤の含有量は、上記樹脂成分(固形分)100重量部に対して、好ましくは100〜1000重量部(より好ましくは200〜800重量部)である。
【0049】
さらに、第1被覆材には、充填剤、繊維等を含むことができる。充填剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、粘土、クレー、シラス、マイカ、珪砂、珪石粉、石英粉、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。繊維としては、例えば、アクリル繊維、アセテート繊維、アラミド繊維、銅アンモニア繊維(キュプラ)、ナイロン繊維、ノボロイド繊維、パルプ繊維、ビスコースレーヨン、ビニリデン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリクラール繊維、ボリノジック繊維、ポリプロピレン繊維、セルロース繊維等の有機質繊維、炭素繊維、ロックウール繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ−アルミナ繊維、スラグウール繊維、セラミックファイバー、カーボン繊維、炭化珪素繊維等の無機繊維等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
【0050】
本発明の第2被覆材は、上記樹脂成分に加えて、着色顔料、体質顔料等の粉体成分を含むこと好ましい。これにより、被膜形成時の凝集力が高まり、密着性等においてより優れた効果を得ることができる。このような効果を得るためには、上記ポリオール成分(A2)及び上記ポリイソシアネート成分(B2)の総固形分100重量部に対し、粉体成分を1〜200重量部(好ましくは5〜150重量部)含む態様が望ましい。着色顔料としては、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、黒鉛、黒色酸化鉄、鉄‐マンガン複合酸化物、鉄‐銅‐マンガン複合酸化物、鉄‐クロム複合酸化物、鉄‐クロム‐コバルト複合酸化物、銅‐クロム複合酸化物、銅‐マンガン‐クロム複合酸化物、銅−マグネシウム複合酸化物、ビスマス−マンガン複合酸化物、弁柄、モリブデートオレンジ、パーマネントレッド、パーマネントカーミン、アントラキノンレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、黄色酸化鉄、チタンイエロー、ファーストイエロー、ベンツイミダゾロンイエロー、クロムグリーン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、キナクリドンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、アルミニウム顔料、パール顔料等が挙げられる。これらは、1種または2種以上で使用できる。体質顔料としては、例えば重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等が挙げられる。
【0051】
本発明被覆材は、ポリオール成分(A)を含む主剤と、ポリイソシアネート成分(B)を含む硬化剤とを塗装直前に混合して、塗装を行えばよい。溶剤は主剤、硬化剤のいずれか、または両方に含むことができる。また本発明では、主剤、硬化剤とは別に、希釈剤として塗装時に溶剤を混合することもできる。特に、第2被覆材の溶剤は、(A)成分及び(B)成分の総固形分100重量部に対し、5〜500重量部(好ましくは10〜400重量部、より好ましくは20〜300重量部)含まれることが望ましい。溶剤の含有量がこのような範囲内であれば、可塑剤移行防止性、上塗材の仕上り性等の点で好適である。特に、本発明被覆材の希釈後における固形分が、25〜90重量%(より好ましくは30〜85重量%)であることが望ましい。このような範囲内であれば上記効果をよりいっそう高めることができる。
【0052】
本発明被覆材は、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を用いて塗装することができる。第1被覆材の塗装時の塗付け量、塗回数等は、各種被覆材の機能性に応じて設定すればよい。第1被覆材の塗装時の塗付け量は、好ましくは0.5〜5.0Kg/m(より好ましくは0.8〜3.0Kg/m)である。第1被覆材の塗回数は、好ましくは1〜2回である。
一方、第2被覆材の塗装時の塗付け量は、好ましくは30〜500g/m(より好ましくは50〜300g/m)である。第2被覆材の塗回数は、第1被覆材により形成された被膜の表面状態等によって適宜設定すればよいが、好ましくは1〜2回である。なお、本発明の被覆材は、1回塗りにおいても十分に可塑剤移行防止性を発揮することができる。
【0053】
本発明では、上記被覆材(第1被覆材及び第2被覆材)により形成される被膜を保護するために、必要に応じてさらに上塗材を塗付することもできる。このような上塗材としては、公知の上塗材を塗付することによって形成することができる。上塗材としては、例えば、クリヤータイプ又は着色タイプ、艶有りタイプ又は艶消しタイプ、硬質タイプ又は弾性タイプ、薄膜タイプ又は厚膜タイプ等のいずれのものも使用することができる。また、水系・溶剤系のいずれであっても良く、所望の目的に応じて適宜選択できる。
【0054】
本発明の上塗材としては、樹脂成分を含むことが好ましい。このような樹脂の形態としては、例えば、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、無溶剤型樹脂、水分散型樹脂、水溶性樹脂等が挙げられる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。本発明では特に、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0055】
さらに、上記樹脂成分は架橋反応性を有するものであってもよい。樹脂成分が架橋反応型樹脂である場合は、形成被膜の耐水性、耐久性、密着性が高まり、降雨、結露等による被膜の膨れ・剥れの発生等を抑制することができる。また、第1被覆材が機能性粉体を含む場合には、各種機能性(例えば耐熱性能等)を安定して保持することができる。このような架橋反応型樹脂は、それ自体で架橋反応を生じるもの、あるいは別途混合する架橋剤によって架橋反応を生じるもののいずれであってもよい。このような架橋反応性は、例えば、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルド基とセミカルバジド基、ケト基とセミカルバジド基、アルコキシル基どうし、カルボキシル基と金属イオン、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基等の反応性官能基を組み合わせることによって付与することができる。この中でも水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基から選ばれる1種以上の架橋反応を生じる架橋反応型樹脂を含むことが好適である。
【0056】
上記上塗材の樹脂成分以外の成分として、例えば、着色顔料、体質顔料、骨材等を混合することができる。このような成分を適宜配合することにより、所望の色彩やテクスチャーを表出することができる。着色顔料、体質顔料、骨材等の混合量は、上記被覆材の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは樹脂成分の固形分100重量部に対して、好ましくは1〜2000重量部(より好ましくは5〜1000重量部)である。
【0057】
本発明では特に、上記着色顔料、体質顔料として、赤外線反射性及び/又は赤外線透過性を有する顔料を使用することが好適である。これにより、形成被膜の耐久性をよりいっそう高めることができる。
【0058】
赤外線反射性を有する顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄−クロム複合酸化物、マンガン−ビスマス複合酸化物、マンガン−イットリウム複合酸化物、黒色酸化鉄、鉄−マンガン複合酸化物、鉄−銅−マンガン複合酸化物、鉄−クロム−コバルト複合酸化物、銅−クロム複合酸化物、銅−マンガン−クロム複合酸化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0059】
赤外線透過性を有する顔料としては、例えばペリレン顔料、アゾ顔料、黄鉛、チタニウムレッド、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0060】
さらに、上塗材には、その他、通常塗料に使用可能な各種添加剤を配合することもできる。このような添加剤としては、例えば増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、繊維類、低汚染化剤、親水化剤、撥水剤、カップリング剤、触媒等が挙げられる。
【0061】
上塗材の塗付は、公知の塗付方法によれば良く、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を用いて塗付することができる。塗付け量は、好ましくは30〜5000g/m(より好ましくは50〜3000g/m)である。上塗材の塗回数は、適宜設定すればよいが、好ましくは1〜2回である。また、乾燥は好ましくは、常温で行えばよい。
【0062】
本発明によれば、上記第1被覆材により形成される第1被膜、上記第2被覆材により形成される第2被膜を有する積層体が得られる。本発明の積層体は、可塑剤の移行防止性に優れるとともに、密着性に優れた性能を発揮することができる。さらに、本発明の積層体は、第2被膜の上に上塗り材により形成される上塗層を有することにより、可塑剤の移行防止性に優れるとともに、密着性に優れ、さらには美観性、耐候性を向上させることができる。
【実施例】
【0063】
以下に実施例を示して、本発明の特徴をより明確にする。但し、本発明はこの範囲には限定されない。
【0064】
<被覆材>
(主剤1〜15)
表1に示す配合に従い、(A)成分、着色顔料、硬化触媒、及び添加剤を常法により混合し主剤を調製した。
なお、原料としては以下のものを使用した。
【0065】
・ポリオール(A)
・ポリエーテルポリオール(Ax)
(Ax−1)ポリエーテルポリオール(水酸基価17mgKOH/g、官能基数3、数平均分子量10000、固形分100重量%)
(Ax−2)ポリエーテルポリオール(水酸基価24mgKOH/g、官能基数3、数平均分子量7000、固形分100重量%)
(Ax−3)ポリエーテルポリオール(水酸基価55mgKOH/g、官能基数3、数平均分子量3000、固形分100重量%)
(Ax−4)ポリエーテルポリオール(水酸基価160mgKOH/g、官能基数3、数平均分子量1000、固形分100重量%)
(Ax−5)ポリエーテルポリオール(水酸基価230mgKOH/g、官能基数3、数平均分子量700、固形分100重量%)
(Ax−6)ポリエーテルポリオール(水酸基価400mgKOH/g、官能基数3、数平均分子量400、固形分100重量%)
・アクリルポリオール(Ay)
(Ay−1)アクリルポリオール(水酸基価40KOHmg/g、固形分50重量%、媒体:芳香族炭化水素化合物、エステル化合物)
(Ay−2)ポリエステル含有アクリルポリオール(水酸基価40KOHmg/g、ポリエステル比率10重量%、固形分50重量%、媒体:芳香族炭化水素化合物、エステル化合物)
なお、上記(A)成分は、20℃において液体である。
【0066】
・可塑剤1:フタル酸ジイソノニル(分子量419)
・可塑剤2:アジピン酸ジイソノニル(分子量399)
・機能性粉体:難燃剤、発泡剤、炭化剤等
・着色顔料:酸化チタン、平均粒子径0.3μm
・硬化触媒:有機金属系触媒
・添加剤1:分散剤、消泡剤等
・添加剤2:希釈溶剤(芳香族炭化水素)
【0067】
(硬化剤1)
ポリイソシアネート(B)(ビウレット型ヘキサメチレンジイソシアネート、NCO含有量23.5%)80重量部、希釈溶剤(芳香族炭化水素)20重量部を混合し硬化剤を調製した。
【0068】
(被覆材の調製)
表1に示す主剤1〜15と、硬化剤を、それぞれポリオール成分とポリイソシアネート成分のNCO/OH当量比が1.2となるように混合し、被覆材1〜15を得た。
【0069】
【表1】
【0070】
<上塗材>
アクリルポリオール(水酸基価20KOHmg/g、固形分50重量%、媒体:脂肪族炭化水素化合物)100重量部、二酸化チタン40重量部、添加剤(増粘剤、消泡剤)10重量部を常法にて均一に混合、攪拌して主剤を調製した。次いで、ポリイソシアネート(アダクト型ヘキサメチレンジイソシアネート、NCO含有量12%)50重量部、希釈溶剤(脂肪族炭化水素)50重量部を混合し硬化剤を調製した。主剤と、硬化剤を、それぞれポリオール成分とポリイソシアネート成分のNCO/OH当量比が1.0となるように混合したものを上塗材とした。
【0071】
(実施例1〜12、比較例1〜3)
各被覆材について、以下の評価を実施した。結果は、表2に示す。
【0072】
・試験体[I]の作製
150mm×70mmの鋼板に、第1被覆材を1.5Kg/mでスプレー塗付し7日間養生した。次いで、第2被覆材を塗付け量100g/mで刷毛塗りし、24時間養生し試験体[I]を作製した。なお、第1被覆材と第2被覆材の組み合わせは、表2に示した。また、塗装、養生等はすべて標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で行った。
<可塑剤移行防止性評価>
作製した試験体[I]を50℃、または80℃恒温器内にて1週間放置した。試験体を恒温器から取り出し、水平に置いて黒色珪砂を散布した後、直ちに試験体を垂直に立て、黒色珪砂を自然落下させた。このとき、付着した黒色珪砂の程度を目視にて確認することで可塑剤移行防止性を評価した。
評価は、黒色珪砂がほとんど付着しなかったものを「A」、黒色珪砂が著しく付着したものを「D」とする4段階(A>B>C>D)で行った。
【0073】
<密着性評価1>
作製した試験体[I]について、JIS K 5600−5−6に準じた碁盤目テープ法にて可塑剤含有材料の表面との密着性を評価した。評価基準は、以下の通りである。
A:欠損部面積が10%未満
B:欠損部面積が10%以上25%未満
C:欠損部面積が25%以上50%未満
D:欠損部面積が50%以上
【0074】
【表2】
【0075】
実施例1〜12においては、良好な可塑剤移行防止性が得られるとともに、良好な密着性を有する被膜を形成することができた。特に、実施例6〜11においては、優れた可塑剤移行防止性を発揮することができ、さらには実施例5〜11においては、優れた密着性を有する被膜を形成することができた。
【0076】
次いで、実施例6〜11において、以下の評価を実施した。結果は、表2に示す。
・試験体[II]の作製
150mm×70mmの鋼板に、第1被覆材を1.5Kg/mでスプレー塗付し7日間養生した。次いで、第2被覆材を塗付け量100g/mで刷毛塗りし、24時間養生した。なお、第1被覆材と第2被覆材の組み合わせは、表2に示した。
次に、上塗材を塗付量0.3kg/mでスプレー塗装し72時間養生し試験体を作製した。なお、塗装、養生等はすべて標準状態(温度23℃・相対湿度50%)で行った。
【0077】
<密着性評価2>
作製した試験体[II]について、JIS K 5600−5−6に準じた碁盤目テープ法にて被覆材及び上塗材との密着性を評価した。評価基準は、上記密着性評価1と同様である。
【0078】
<耐熱保護性評価>
作製した試験体[II]を80℃恒温器内にて1週間放置した後、得られた試験体を、ISO 5660−1 コーンカロリーメーター法に基づき、電気ヒーター(CONEIII、株式会社東洋精機製)を用いて、試験体表面に50kW/m2の輻射熱を15分間放射したときの発泡倍率、及び鋼板裏面温度を測定した。各評価基準は以下の通りである。また、結果は表2に示す。
(発泡倍率)
AA:発泡倍率35倍超
A:発泡倍率25倍超35倍以下
B:発泡倍率20倍超25倍以下
C:発泡倍率15倍超20倍以下
D:発泡倍率15倍以下
(裏面温度)
AA:430℃未満
A:430℃以上470℃未満
B:470℃以上500℃未満
C:500℃以上550℃未満
D:550℃以上
【0079】
実施例6〜11においては、優れた発泡性を有し炭化断熱層を形成して、基材の耐熱保護性を得ることができた。