特開2021-123069(P2021-123069A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-123069(P2021-123069A)
(43)【公開日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
   B41F 35/04 20060101AFI20210802BHJP
   B41F 31/26 20060101ALI20210802BHJP
【FI】
   B41F35/04
   B41F31/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-19797(P2020-19797)
(22)【出願日】2020年2月7日
(71)【出願人】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】元泉 徹宗
(72)【発明者】
【氏名】▲くわ▼原 浩嘉
【テーマコード(参考)】
2C250
【Fターム(参考)】
2C250DA04
2C250DC11
2C250EA41
2C250EA47
2C250FA13
2C250FB02
(57)【要約】
【課題】効率良く洗浄を行うことにより洗浄液の使用量を削減することのできる印刷機を提供する。
【解決手段】インキローラ群の一部を構成する温調ローラ134と、前記温調ローラ134の外周面の温度を少なくとも下降させる温度調整部と、前記インキローラ群13にインキを除去する洗浄液を供給する洗浄液供給部と、前記温度調整部及び前記洗浄液供給部を制御する制御部と、を備え、前記インキローラ群13を洗浄する際、前記制御部は、前記温調ローラ134の外周面の温度を印刷実施時に比べて下降させるよう前記温度調整部を制御すると共に、前記インキローラ群13に洗浄液を供給するよう前記洗浄液供給部を制御する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インキローラ群の一部を構成する温調ローラと、
前記温調ローラの外周面の温度を少なくとも下降させる温度調整部と、
前記インキローラ群にインキを除去する洗浄液を供給する洗浄液供給部と、
前記温度調整部及び前記洗浄液供給部を制御する制御部と、を備え、
前記インキローラ群を洗浄する際、前記制御部は、前記温調ローラの外周面の温度を印刷実施時に比べて下降させるよう前記温度調整部を制御すると共に、前記インキローラ群に洗浄液を供給するよう前記洗浄液供給部を制御する、印刷機。
【請求項2】
前記制御部は、印刷実施中であって印刷終了の所定時間前の時点で、前記温調ローラの外周面の温度を下降させるよう前記温度調整部の制御を開始する、請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記温度調整部は、前記温調ローラの外周面の温度を下降及び上昇可能であり、
前記インキローラ群の洗浄後、前記制御部は、前記温調ローラの外周面の温度を、前記洗浄実施前の印刷実施時に比べて上昇させるよう前記温度調整部を制御する、請求項1または2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記温調ローラは、外周面の温度につき軸方向で別の設定が可能な複数の領域を備える、請求項1〜3のいずれかに記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液をインキローラ群に供給することにより、当該インキローラ群からインキを除去できる印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷機において、版胴にインキを供給するためにインキローラ群が設けられている。このインキローラ群からインキを除去するため、インキローラ群の一部を構成するローラに洗浄液を噴射により供給する洗浄装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この洗浄装置は、インキローラ群を構成する各ローラを回転させ、その状態で一部のローラに洗浄液を供給しつつ、他のローラの外周面にブレードを接触させてインキを掻き取ることで、インキをインキローラ群から除去できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平4−44905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
洗浄液には、インキを溶解させるために揮発性の有機溶剤(VOC)が使用される。このため、洗浄液の一部が蒸発して印刷機の外部に拡散することにより、印刷機周囲の環境が悪化し、印刷機の作業者の健康に影響を及ぼすことがある。このため、洗浄液の使用量を抑制することが望まれている。
【0006】
本発明はこのような問題に鑑み、効率良く洗浄を行うことにより洗浄液の使用量を削減することのできる印刷機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る印刷機は、インキローラ群の一部を構成する温調ローラと、前記温調ローラの外周面の温度を少なくとも下降させる温度調整部と、前記インキローラ群にインキを除去する洗浄液を供給する洗浄液供給部と、前記温度調整部及び前記洗浄液供給部を制御する制御部と、を備え、前記インキローラ群を洗浄する際、前記制御部は、前記温調ローラの外周面の温度を印刷実施時に比べて下降させるよう前記温度調整部を制御すると共に、前記インキローラ群に洗浄液を供給するよう前記洗浄液供給部を制御する。
【0008】
上記構成によれば、印刷実施時と同じ温度で洗浄を行う場合に比べ、温調ローラの外周面の温度を下降させることで洗浄液の温度を下降させることにより、効率良くインキローラ群の洗浄を行える。
【0009】
また、前記制御部は、印刷実施中であって印刷終了の所定時間前の時点で、前記温調ローラの外周面の温度を下降させるよう前記温度調整部の制御を開始するものであってもよい。
【0010】
上記構成によれば、印刷終了後、速やかにインキローラ群の洗浄を行うことができる。
【0011】
また、前記温度調整部は、前記温調ローラの外周面の温度を下降及び上昇可能であり、前記インキローラ群の洗浄後、前記制御部は、前記温調ローラの外周面の温度を、前記洗浄実施前の印刷実施時に比べて上昇させるよう前記温度調整部を制御するものであってもよい。
【0012】
上記構成によれば、インキローラ群の洗浄後、温調ローラの温度を短時間で印刷に適する温度に戻すことができ、新たな印刷を開始した直後の低温による印刷不良を抑制できる。
【0013】
また、前記温調ローラは、外周面の温度につき軸方向で別の設定が可能な複数の領域を備えるものであってもよい。
【0014】
上記構成によれば、温調ローラの外周面の温度を軸方向で変えることにより、軸方向で洗浄効率を調整できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、効率良くインキローラ群の洗浄を行える。よって、効率が良くなった分だけ、洗浄液の使用量を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る印刷機の内部構造を示す概要図である。
図2】前記印刷機につき、洗浄系統に関し示した概要図である。
図3】前記印刷機のうち各印刷ユニットの内部構造を示す概要図である。
図4】温調ローラを単独で示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る印刷機について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
本実施形態の印刷機は、例えば、供給された枚葉状の印刷用紙に印刷を行うための印刷部を備えている。印刷部は、異なる複数の色(本実施形態では4色)の印刷を行うため、図1及び図2に示すように、複数台(本実施形態では4台)の印刷ユニット1…1を備えている。印刷用紙は、印刷部の図示左方に設けられた紙積み台に複数が積まれており、この紙積み台から給紙部2(図2参照)により一枚ずつ印刷部に供給される。そして、印刷部により各色の印刷が行われた印刷用紙は、印刷部の図示右方に設けられた排紙部3(図2参照)に取り出される。
【0019】
各印刷ユニット1は、図1または図3に示すように、主に、版胴11、ゴム胴12、ローラ群13、圧胴14、渡し胴15を備えている。ローラ群13は、版胴11の外周面に水(湿し水)及びインキを乗せるために設けられ、複数のローラ131…131(他の符号を付して特記したローラも含む)から構成されている。各印刷ユニット1は、各色のインキを保持するインキツボ16と、インキツボ16からインキを取り出すための、ローラ群13のうちインキローラ群を構成するインキツボローラ132を備える。尚、本実施形態のインキツボローラ132は、下記の第1温調ローラ1341が兼ねている。インキとしては、例えば紫外線が照射されることで硬化するUVインキを用いることができる(他のインキを用いてもよい)。また、各印刷ユニット1は、水を貯めておく水舟17と、水舟17から水を取り出すための、ローラ群13のうち水ローラ群を構成する水元ローラ133を備える。
【0020】
本実施形態のローラ群13におけるローラ131…131(他の符号を付して特記したローラも含む)の構成は、インキ系統であるインキローラ群が18本、水系統である水ローラ群が4本、そして、インキ系統と水系統との間に位置するブリッジローラ135が1本、合計して23本である。なお、下記の温調ローラ134もローラ群13を構成している。
【0021】
本実施形態の印刷機は、効率良くローラ群13(そのうちインキローラ群)の洗浄を行うための構成として、温調ローラ134、温度調整部4、洗浄液供給部5、インキ掻取部6、制御部7を備える。
【0022】
温調ローラ134は、図3に示すように、ローラ群13(インキローラ群)の一部を構成する。温調ローラ134には、液体を内部に通す温調流路(図示しない)が設けられている。この温調流路に、冷却水等である熱交換媒体(冷媒、熱媒)が通される。これにより、温調ローラ134における外周面の温度を変化させることができる。
【0023】
本実施形態のローラ群13には、4本の温調ローラ134が設けられている。インキツボ16からインキが供給される順に、第1温調ローラ1341、第2温調ローラ1342、第3温調ローラ1343、第4温調ローラ1344である。第1温調ローラ1341はインキツボローラ132を兼ねている。また、第4温調ローラ1344はインキ掻取部6に面している。
【0024】
温度調整部4は、温調ローラ134の外周面の温度を少なくとも下降させるよう、温調ローラ134を操作する。温度調整部4は、チラー等のローラ温調装置41、温調配管42を備える。本実施形態のローラ温調装置41は、熱交換媒体(冷却水)の冷却及び加温が可能であることで、温調ローラ134の外周面の温度を下降及び上昇可能である。温調配管42は、往路配管421、復路配管422、ローラ間配管423を備える。本実施形態のローラ間配管423は、第1温調ローラ1341と第3温調ローラ1343とを結ぶと共に、第2温調ローラ1342と第4温調ローラ1344とを結ぶ。このため、熱交換媒体(冷却水)の系統は、往路配管421から第3温調ローラ1343、第1温調ローラ1341を通って復路配管422に流れる系統と、往路配管421から第4温調ローラ1344、第2温調ローラ1342を通って復路配管422に流れる系統とが設けられている。
【0025】
洗浄液供給部5は、ローラ群13にインキを除去する有機溶剤からなる洗浄液Fと水とを供給する。尚、水は、洗浄液Fと同時にではなく、洗浄液Fの供給終了後に供給される。洗浄液F及び水の供給は、一定の時間間隔をおいて間欠的になされる。
【0026】
洗浄液供給部5は、洗浄液Fと水とをそれぞれ貯留する洗浄液等タンク51、洗浄液Fと水とをそれぞれ洗浄液等タンク51から取り出し、ローラ群13に対して噴射によって供給するためのポンプ52、洗浄液等配管53、開閉弁54、ノズル55が設けられている。尚、前記各部は、洗浄液用と水用の2系統が別個に設けられている。
【0027】
インキ掻取部6は、従来から公知の構成と同一であるので詳細には説明しないが、板状のブレードをローラ(本実施形態では第4温調ローラ1344)に沿わせることで、洗浄液Fが掛けられたことに伴い、ローラ群13を移動してきたインキを第4温調ローラ1344から掻き取って、ローラ群13から除去する。インキ掻取部6のブレードは、第4温調ローラ1344に当接させたり、離反することができる。
【0028】
制御部7は、温度調整部4、洗浄液供給部5、インキ掻取部6を制御する。ローラ群13を洗浄する際、制御部7は、温調ローラ134の外周面の温度を印刷実施時に比べて下降させるよう温度調整部4を制御すると共に、ローラ群13に洗浄液Fと水とを供給するよう洗浄液供給部5を制御する。
【0029】
制御部7による前記制御により、印刷実施時と同じ温度で洗浄を行う場合に比べ、温調ローラ134の外周面の温度を下降させることで洗浄液Fの温度を下降させることにより、効率良くローラ群13の洗浄を行える。よって、効率が良くなった分だけ、洗浄液Fの使用量を削減できる。また、ローラ群13の温度が低い方が、洗浄液Fの揮発量が小さくなるので、揮発による洗浄液Fの減少を抑制できる。これによっても、洗浄液Fの使用量を削減できる。
【0030】
本実施形態の印刷機は、温調ローラ134の外周面の温度を直接的に検出する構成を備えていない。このため、代替的に、温調ローラ134に接続された温調配管42における復路配管422の熱交換媒体(冷却水)の温度を検出している。この温度検出は既存のローラ温調装置41で備えられていたセンサによってなされる。このように本実施形態では、既存の印刷機の機器構成自体は変更せず、制御部7の制御内容を変更するだけとなっている。よって、低コストで洗浄液Fの使用量を削減できる印刷機を実現できる。
【0031】
ただし、温調ローラ134の外周面の温度を直接的に検出する、センサ(例えば非接触センサ)等からなる温度検出部を印刷機に備えることもできる。この場合、制御部7は、温度検出部により検出された、温調ローラ134の外周面の現実の温度が所定値に達することを基準として、洗浄液供給部5の制御を開始することができる。尚、前記「温度検出部により検出された温度が所定値に達することを基準として」とは、現実の所定値到達を制御開始のトリガーとすることはもちろん、所定値到達を予測し、先立って制御開始することも含む。このように、温度検出部を備えた場合には、詳細な温度管理のもとでローラ群13の洗浄を行うことができる。温度検出のためのセンサはこの他、例えば、ローラ群13の下方において、温調ローラ134の外周面に接触することで冷却された状態の洗浄液Fに触れるように設けられ、この冷却された状態の洗浄液Fの温度を検出するようにしてもよい。
【0032】
ここで、本実施形態の印刷機は、温調ローラ134の外周面の温度を下降させることで洗浄液Fの温度を低下させた方が、インキの洗浄性が良好になるとの、本願の発明者が得た知見によって構成されている。
【0033】
この知見を得るに至った発明者の実験内容について、以下に説明する。実験で使用した洗浄液Fは、株式会社T&K TOKA製の「UV ローラー洗浄液 F」である。洗浄液Fの成分は、アルキルベンゼン、脂肪族系溶剤、3-メチル- 3-メトキシブタノールである。また、除去対象のインキは、黒色のUVインキである。実験で使用したインクは、株式会社T&K TOKA製の「UV CORE TYPE−A 墨 M−W」である。
【0034】
実験は、枚葉オフセット印刷機(A1サイズ)において印刷を実施した後、インキツボ16からローラ群13へのインキの供給を断ち、その状態で制御部7が、温度調整部4、洗浄液供給部5、インキ掻取部6を制御することで、ローラ群13からインキを除去した。
【0035】
詳しくは、実験開始時の印刷ユニット1の回転数を3000枚/時とし、ノズル55から洗浄液Fを3回噴射(各回の噴射時間は0.2秒(噴射量は約20ml)で、噴射間隔は20秒)した後、インキ掻取部6のブレードを第4温調ローラ1344に沿わせる(当接させる)と共に、印刷ユニット1の回転数を8000枚/時に上げる。その後、ノズル55から洗浄液Fを4回噴射(各回の噴射時間は0.2秒で、噴射間隔は20秒)し、その後、水用のノズルから水を2回噴射(各回の噴射時間は0.2秒)し、最後の噴射から20秒経過したら、インキ掻取部6のブレードを第4温調ローラ1344から離して印刷ユニット1の回転数を3000枚/時に下げ、ローラ群13の洗浄を終了する。
【0036】
一方、温度調整部4の制御は、復路配管422における冷却水の実測温度にて、32.5℃、29.5℃、24.2℃、22.2℃の4パターンで実験した。
【0037】
インキ除去の判断は、第3温調ローラ1343の図3において左上に隣接するローラ131に、白紙である印刷用紙を押し当て、この印刷用紙に付着したインキの濃さを目視で確認すると共に、印刷用紙の地部分(白色の部分)とインキ付着部分との明度差(ΔL)を測定することにより行った。
【0038】
この結果、測定された明度差(ΔL)は、32.5℃設定では−35.8であり、29.5℃設定では−31.9であり、24.2℃設定では−20.7であり、22.2℃設定では−12.7であった。従って、22.2℃(4パターン中の最低温度)と設定した場合が、明度差(ΔL)の絶対値が最も小さく、目視での確認結果とも合致していて、印刷用紙に付着したインキが最も薄いとの結果が得られた。
【0039】
この実験により、温調ローラ134の外周面の温度を、印刷に適した温度に対して相対的に低温に設定した方が洗浄性を向上できるとの事項が、知見として得られた。
【0040】
次に、制御部7による温度調整部4の制御は、種々に設定が可能である。温度設定に関し、温調ローラ134の外周面の温度を印刷実施時に第1温度とし、洗浄実施時に第2温度とする。ただし、本実施形態の印刷機は、温調ローラ134の外周面の温度を直接的に検出する温度検出部を備えないため、代替的に、前記温度を、復路配管422における熱交換媒体(冷却水)の温度にて設定している。このような代替的な温度設定であっても、温調ローラ134の外周面の温度と復路配管422における熱交換媒体の温度とは相関関係があるため、特に支障は生じない。例えば、第1温度は28℃とされ、第2温度は23℃とされている。
【0041】
尚、第2温度は、温調ローラ134の外面に結露が生じる温度よりも高く設定することが好ましい。このように第2温度を設定することで、結露による錆が発生することを避けつつ、ローラ群13の洗浄を行うことができる。
【0042】
また、温度調整部4の制御をいつ開始するかに関し、例えば印刷終了後に洗浄を行う場合、制御部7が、印刷実施中(具体的には本刷りの実施中)であって印刷終了の所定時間前の時点で、温調ローラ134の外周面の温度を第1温度から第2温度へ下降させるよう温度調整部4の制御を開始するように設定できる。前記所定時間は、時間基準で設定してもよいし、印刷枚数基準で設定してもよい。このように設定することにより、印刷終了後、温調ローラ134の外周面の温度がより短時間で第2温度まで下降することから、速やかにローラ群13の洗浄を行うことができる。特に、熱交換媒体(冷却水)が通されるタイプの温調ローラ134においては好適に制御できる。
【0043】
また、制御部7は、印刷終了した以降に、前記温調ローラ134の外周面の温度を第1温度から第2温度へ下降させるよう前記温度調整部4の制御を開始するように設定できる。このように設定することにより、印刷終了以降、ローラ群13の洗浄を行うまでに、温調ローラ134の外周面の温度を下降させながら、ジョブチェンジに関する作業等の他の作業を行うことができる。印刷以外の作業であれば、温度が下降しても支障がないからである。
【0044】
さらに、ローラ群13の洗浄途中であって洗浄終了の所定時間前の時点で、制御部7が、温調ローラ134の外周面の第2温度での維持を停止させるよう前記温度調整部4の制御を開始するように設定できる。具体的には、ローラ温調装置41(チラー)における冷却を停止するように設定できる。前記所定時間は、時間基準で設定してもよいし、ノズル55からの洗浄液Fの噴射タイミングを基準として設定してもよい。このように設定することにより、第2温度の維持(すなわち冷却することの維持)にかかる温度調整部4の消費電力を低減できる。尚、冷却を停止しても、温度上昇は緩やかであるから、洗浄性が悪化することはない。
【0045】
尚、ローラ群13の洗浄後に新たな印刷を行う場合、制御部7は、洗浄が終了した後、前記温調ローラ134の外周面の温度を第2温度から第1温度へ上昇させるよう前記温度調整部4の制御を開始することになる。
【0046】
更に、本実施形態では、前述の第1温度、第2温度に加え、第1温度よりも高温の第3温度を設定することができる。第3温度は例えば30℃とする。
【0047】
例えば、ローラ群13の洗浄後に新たな印刷を行う場合は、温調ローラ134の外周面の温度を第1温度へ上昇させることになるが、この温度上昇に係る期間を、制御部7が、第3温度で温度調整部4を制御するように設定できる。このように設定することにより、ローラ群13の洗浄後、温調ローラ134の温度を短時間で印刷に適する温度(第1温度)に戻すことができ、新たな印刷を開始した直後の低温による印刷不良を抑制できる。
【0048】
尚、この第3温度の設定は、冬の印刷機立ち上げ時や長時間の停止後などで印刷機の内部温度が低下している場合等に、印刷に適した温度まで温める必要があるときにも有効である。高温の設定により、目標温度への昇温時間が短縮できることで、刷り始め(具体的には試し刷りの初期)の色調不良の防止が期待できる。
【0049】
以上、本発明の一実施形態に係る印刷機について説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0050】
例えば、前記実施形態の温度調整部4におけるローラ温調装置41は、冷却及び加温が可能であったが、冷却専用であってもよい。
【0051】
また、温調ローラ134は、前記実施形態では、内部に熱交換媒体(冷却水)の通る温調流路を設けていた。しかしこれに限定されず、例えばペルチェ素子等、通電により加熱または冷却の温度変化をなすことのできる素子を設けることもできる。
【0052】
また、温調ローラ134は、外周面の温度につき軸方向で別の設定が可能な複数の領域を備えることができる。例えば図4に示すように、軸方向に第1領域134A、第2領域134B、第3領域134Cを設け、各領域を別個に温度設定したり、端部である第1領域134A及び第3領域134Cの組み合わせと、中央部である第2領域134Bとを別個に温度設定したりできる。このように温調ローラ134を構成することで、温調ローラ134の外周面の温度につき軸方向で変えることにより、軸方向で洗浄効率の高低を調整できる。従って、ローラ群13において軸方向でのインキの付着具合が異なる等の場合、適切に対応してインキを除去できる。
【0053】
また前述のように、温調ローラ134の各領域(例えば第1領域134A、第2領域134B、第3領域134C)を別個に温度設定する構成においては、当該各領域にそれぞれ、ペルチェ素子等、通電により温度変化をなすことのできる素子を設け、各素子の通電度合を変化させることにより、温調ローラ134の外周面の温度につき軸方向で変えることが容易にできる。
【符号の説明】
【0054】
1…印刷ユニット、2…給紙部、3…排紙部、4…温度調整部、5…洗浄液供給部、6…インキ掻取部、7…制御部、11…版胴、12…ゴム胴、13…ローラ群(インキローラ群、水ローラ群)、14…圧胴、15…渡し胴、16…インキツボ、17…水舟、41…ローラ温調装置(チラー)、42…温調配管、51…洗浄液等タンク、52…ポンプ、53…洗浄液等配管、54…開閉弁、55…ノズル、131…ローラ、132…インキツボローラ、133…水元ローラ、134…温調ローラ、135…ブリッジローラ、421…往路配管、422…復路配管、1341…第1温調ローラ、1342…第2温調ローラ、1343…第3温調ローラ、1344…第4温調ローラ、134A…温調ローラの第1領域、134B…温調ローラの第2領域、134C…温調ローラの第3領域、F…洗浄液
図1
図2
図3
図4