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特開2021-123716ノボラック型フェノール樹脂および樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-123716(P2021-123716A)
(43)【公開日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】ノボラック型フェノール樹脂および樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/04 20060101AFI20210802BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20210802BHJP
【FI】
   C08G8/04
   C08L61/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2021-13096(P2021-13096)
(22)【出願日】2021年1月29日
(31)【優先権主張番号】特願2020-14947(P2020-14947)
(32)【優先日】2020年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(令和2年度「農林水産研究推進事業委託プロジェクト研究」産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願)
(71)【出願人】
【識別番号】501186173
【氏名又は名称】国立研究開発法人森林研究・整備機構
(71)【出願人】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 康典
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 依里
(72)【発明者】
【氏名】山田 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 肇
(72)【発明者】
【氏名】大塚 恵子
(72)【発明者】
【氏名】米川 盛生
【テーマコード(参考)】
4J002
4J033
【Fターム(参考)】
4J002CC031
4J002GL00
4J002GN00
4J002GQ00
4J033CA03
4J033CA11
4J033CA18
4J033CA29
4J033CC09
4J033HB01
(57)【要約】
【課題】耐熱性に優れるとともに、柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)に優れる成形品を得ることができるノボラック型フェノール樹脂および樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ノボラック型フェノール樹脂が、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類とを、酸触媒下で反応させた反応生成物を含む。また、樹脂組成物が、上記のノボラック型フェノール樹脂を含有する。このようなノボラック型フェノール樹脂および樹脂組成物によれば、耐熱性に優れるとともに、柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)に優れる成形品を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、
フェノール類と、
アルデヒド類と
を、酸触媒下で反応させた反応生成物を含む
ことを特徴とする、ノボラック型フェノール樹脂。
【請求項2】
前記リグニンが、針葉樹系リグニンであることを特徴とする、請求項1に記載のノボラック型フェノール樹脂。
【請求項3】
請求項1または2に記載のノボラック型フェノール樹脂を含有する
ことを特徴とする、樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノボラック型フェノール樹脂および樹脂組成物に関し、詳しくは、ノボラック型フェノール樹脂、および、そのノボラック型フェノール樹脂を含有する樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化性樹脂は、例えば、電気部品、自動車部品、建築材料、日用品などの各種産業分野において広く用いられている。とりわけ、ノボラック型フェノール樹脂は、電気絶縁性、耐熱性、機械物性、成形性などに優れるため、成形材料などとして、広く用いられている。
【0003】
ノボラック型フェノール樹脂は、フェノール類およびアルデヒド類を酸触媒下において反応させることにより得られる。一方、近年では、地球環境保護などの観点から、石油資源の使用量を低減することが要求されており、石油資源に代替して、植物由来の原料を用いることが検討されている。
【0004】
そのような植物由来の原料としては、リグニンが注目されており、リグニンを用いて得られるノボラック型フェノール樹脂として、具体的には、例えば、リグニンと、フェノールまたはフェノール誘導体と、アルデヒド類とを、有機酸の存在下において反応させて得られるリグニン変性ノボラック型フェノール系樹脂が、提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−156601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、熱硬化性樹脂としては、その用途によっては、耐熱性のさらなる向上が要求されるとともに、柔軟性の向上が要求される場合がある。
【0007】
本発明は、耐熱性に優れるとともに、柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)にも成形品を得ることができるノボラック型フェノール樹脂および樹脂組成物である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類とを、酸触媒下で反応させた反応生成物を含む、ノボラック型フェノール樹脂を含んでいる。
【0009】
本発明[2]は、前記リグニンが、針葉樹系リグニンである、上記[1]に記載のノボラック型フェノール樹脂を含んでいる。
【0010】
本発明[3]は、上記[1]または[2]に記載のノボラック型フェノール樹脂を含有する、樹脂組成物を含んでいる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のノボラック型フェノール樹脂および樹脂組成物は、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類とを、酸触媒下で反応させた反応生成物を含む。そのため、本発明のノボラック型フェノール樹脂および樹脂組成物によれば、耐熱性に優れるとともに、柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)に優れる成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のノボラック型フェノール樹脂は、ポリエチレングリコール(PEG)により変性されたリグニン(以下、PEG変性リグニンと称する場合がある。)と、フェノール類と、アルデヒド類とを、酸触媒下で反応させることにより得られる。
【0013】
すなわち、本発明のノボラック型フェノール樹脂は、PEG変性リグニンと、フェノール類と、アルデヒド類との反応生成物である。
【0014】
PEG変性リグニンにおいて、ポリエチレングリコール(PEG)は、樹脂組成物に要求される物性などに応じて、適宜選択される。
【0015】
ポリエチレングリコールの数平均分子量は、柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)および耐衝撃性の両立を図る観点から、例えば、100以上、好ましくは、200以上、より好ましくは、300以上、さらに好ましくは、400以上であり、例えば、1000以下、好ましくは、900以下、より好ましくは、800以下、さらに好ましくは、600以下である。
【0016】
なお、数平均分子量は、公知のゲルパーミエーションクロマトグラム法により、ポリエチレングリコール換算分子量として求めることができる。
【0017】
PEG変性リグニンにおいて、リグニンは、グアイアシルリグニン(G型)、シリンギルリグニン(S型)、p−ヒドロキシフェニルリグニン(H型)などの基本骨格からなる高分子フェノール性化合物であって、天然物(天然リグニン)として、植物全般に含まれている。
【0018】
天然リグニンを工業的に取り出したものとしては、例えば、原料としての植物材料(リグノセルロース)からパルプをソーダ法、亜硫酸法、クラフト法などによって製造する際、排出される廃液(黒液)中に含まれるソーダリグニン、サルファイトリグニン、クラフトリグニンなどが知られている。
【0019】
リグニンとして、具体的には、木本系植物由来リグニン、草本系植物由来リグニンが挙げられる。
【0020】
木本系植物由来リグニンとしては、例えば、針葉樹(例えば、スギなど)に含まれる針葉樹系リグニン、例えば、広葉樹に含まれる広葉樹系リグニンなどが挙げられる。
【0021】
木本系植物由来リグニンは、H型の基本骨格を含まない。
【0022】
より具体的には、木本系植物由来リグニンのうち、針葉樹系リグニンは、S型の基本骨格を含まず、G型の基本骨格を有している。また、広葉樹系リグニンは、G型の基本骨格およびS型の基本骨格を有している。
【0023】
草本系植物由来リグニンとしては、例えば、イネ科植物(麦わら、稲わら、とうもろこし、タケなど)に含まれるイネ系リグニンなどが挙げられる。
【0024】
草本系植物由来リグニンは、H型、G型およびS型の全ての基本骨格を有している。
【0025】
これらのリグニンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0026】
リグニンとして、PEG変性リグニンの均質性の観点から、好ましくは、H型の基本骨格を含まない木本系植物由来リグニンが挙げられ、より好ましくは、S型の基本骨格を含まず、G型の基本骨格を有する針葉樹系リグニンが挙げられ、とりわけ好ましくは、スギに由来する針葉樹系リグニンが挙げられる。
【0027】
PEG変性リグニンは、特に制限されないが、例えば、特開2017−197517号公報に記載される方法に準拠して、製造することができる。
【0028】
より具体的には、例えば、リグニンの原料となる植物材料(リグノセルロース)を、ポリエチレングリコールを用いて蒸解することによって、PEG変性リグニンを得ることができる。
【0029】
蒸解方法としては、特に制限されないが、例えば、リグニンの原料となる植物材料と、ポリエチレングリコールと、酸触媒としての無機酸(例えば、塩酸、硫酸など)とを混合し、反応させる。
【0030】
ポリエチレングリコールの配合割合は、リグニンの原料となる植物材料100質量部に対して、ポリエチレングリコールが、例えば、200質量部以上、好ましくは、300質量部以上であり、例えば、1000質量部以下、好ましくは、600質量部以下である。
【0031】
また、無機酸の配合割合は、ポリエチレングリコール100質量部に対して、無機酸(100%換算)が、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上であり、例えば、2質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0032】
また、反応条件としては、常圧下、反応温度が、例えば、120℃以上、好ましくは、130℃以上であり、例えば、180℃以下、好ましくは、150℃以下である。また、反応時間が、例えば、60分以上であり、例えば、240分以下、好ましくは、120分以下である。
【0033】
また、反応終了後、公知のアルカリ(例えば、アンモニア、水酸化ナトリウムなど)を、適宜の割合で添加し、pHを調整して、PEG変性リグニンを溶液に抽出させる。
【0034】
調整後のpHは、例えば、8以上、好ましくは、10以上、より好ましくは、10.5以上であり、例えば、14以下である。
【0035】
このような方法によって、固形成分としてパルプが得られるとともに、溶液成分(パルプ廃液)としてPEG変性リグニンが得られる。
【0036】
次いで、この方法では、濾過、プレス、遠心分離などの公知の分離方法によって、反応生成物から固形成分(パルプ)を分離し、溶液成分(パルプ廃液)を回収する。
【0037】
また、この方法では、必要に応じて、固形成分(パルプ)を洗浄し、固形成分に含浸される溶液(PEG変性リグニン)を、回収することもできる。
【0038】
その後、この方法では、無機酸(例えば、塩酸、硫酸など)などを添加し、pHを、調整して、PEG変性リグニンを析出および沈殿させる。
【0039】
調整後のpHは、例えば、1.5以上であり、例えば、5以下、好ましくは、3以下、より好ましくは、2以下である。
【0040】
これにより、PEG変性リグニンを沈殿させることができる。また、得られた沈殿を、例えば、濾過、プレス、遠心分離などの公知の方法で回収することにより、固形分として、PEG変性リグニンを得ることができる。
【0041】
フェノール類は、フェノールおよびその誘導体(フェノール変性体)であって、例えば、フェノール、さらには、例えば、o−クレゾール、p−クレゾール、p−ter−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、p−クミルフェノール、p−ノニルフェノール、2,4−または2,6−キシレノールなどの2官能性フェノール誘導体、例えば、m−クレゾール、レゾルシノール、3,5−キシレノールなどの3官能性フェノール誘導体、例えば、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニルメタンなどの4官能性フェノール誘導体などが挙げられる。また、フェノール誘導体としては、例えば、塩素、臭素などのハロゲンにより置換されたハロゲン化フェノール類なども挙げられる。これらフェノール類は、単独使用または2種類以上併用することができる。なお、フェノールの誘導体(フェノール変性体)が用いられる場合、フェノールが変性されるタイミングは特に制限されず、PEG変性リグニンとフェノール類とアルデヒド類との反応前、反応後、反応と同時のいずれでもよい。
【0042】
フェノール類として、好ましくは、フェノールが挙げられる。
【0043】
アルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド(n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド)、フルフラール、グリオキサール、ベンズアルデヒド、トリオキサン、テトラオキサンなどが挙げられる。また、アルデヒドの一部が、フルフリルアルコールなどに置換されていてもよい。これらアルデヒド類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0044】
アルデヒド類として、好ましくは、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドが挙げられる。
【0045】
また、アルデヒド類は、例えば、水溶液として用いることができる。そのような場合において、アルデヒド類の濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下である。
【0046】
また、アルデヒド類とともに、ケトン類を配合することもできる。
【0047】
ケトン類としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノン、ジフェニルケトンなどが挙げられる。これらケトン類は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0048】
ケトン類が配合される場合、ケトン類の配合割合は、固形分基準で、アルデヒド類100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、1質量部以上であり、例えば、200質量部以下、好ましくは、100質量部以下である。
【0049】
そして、PEG変性リグニンとフェノール類とアルデヒド類(および必要により配合されるケトン類(以下同様))とを反応させるには、上記の各成分(PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類)を配合し、加熱する。
【0050】
この反応において、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、100質量部以上であり、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、350質量部以下である。
【0051】
換言すると、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、30質量部以上であり、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下、より好ましくは、100質量部以下である。
【0052】
また、耐熱性の向上を図る観点から、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、好ましくは、200質量部以上、より好ましくは、250質量部以上であり、好ましくは、1000質量部以下、より好ましくは、500質量部以下である。換言すると、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上であり、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、40質量部以下である。
【0053】
また、耐水性の向上を図る観点から、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、50質量部を超過し、好ましくは、1000質量部以下、より好ましくは、500質量部以下、さらに好ましくは、250質量部未満である。換言すると、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上、さらに好ましくは、40質量部を超過し、好ましくは、300質量部以下、より好ましくは、200質量部以下である。
【0054】
また、アルデヒド類の配合割合が、フェノール類100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、35質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。また、アルデヒド類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、1.5質量部以上、好ましくは、3質量部以上であり、例えば、350質量部以下、好ましくは、300質量部以下である。
【0055】
各成分の配合割合が上記範囲であれば、機械特性などの各種物性の向上を図ることができる。
【0056】
また、この反応では、酸触媒が添加される。すなわち、上記の各成分は、酸触媒下において反応する。
【0057】
酸触媒としては、例えば、有機酸、無機酸などが挙げられる。
【0058】
有機酸としては、例えば、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、キュメンスルホン酸、ジノニルナフタレンモノスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などのスルホン酸化合物、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチルなどの炭素数1〜18のアルキル基を有するリン酸エステル類、例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸などが挙げられる。
【0059】
無機酸としては、例えば、リン酸、塩酸、硫酸、硝酸などが挙げられる。
【0060】
これら酸触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0061】
酸触媒として、好ましくは、有機酸、より好ましくは、シュウ酸が挙げられる。
【0062】
酸触媒の配合割合は、フェノール類100質量部に対して、酸触媒が、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0063】
なお、酸触媒の添加のタイミングは、特に制限されず、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の少なくともいずれかに予め添加されていてもよく、また、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の配合時に同時に添加されてもよく、さらに、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の配合後に添加されてもよい。
【0064】
反応条件としては、大気圧下、反応温度が、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、15時間以下である。
【0065】
これにより、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の反応生成物として、ノボラック型フェノール樹脂が得られる。より具体的には、酸触媒下におけるフェノール類とアルデヒド類との反応によって、ノボラック型フェノール樹脂が得られ、また、そのノボラック型フェノール樹脂が、PEG変性リグニンにより変性される。
【0066】
すなわち、PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(以下、PEGリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂と称する場合がある。)が得られる。
【0067】
また、PEG変性リグニンとフェノール類とアルデヒド類との反応では、上記のように、上記各成分を一括配合して反応させることもできるが、上記各成分を順次配合して反応させることもできる。
【0068】
より具体的には、例えば、まず、PEG変性リグニンとフェノール類とを反応させ、次いで、得られた反応生成物と、フェノール類と、アルデヒド類とを反応させることができる。
【0069】
機械物性、耐熱性および耐水性の向上を図る観点から、好ましくは、上記各成分を順次配合して反応させる。
【0070】
より具体的には、この方法では、まず、PEG変性リグニンとフェノール類とを反応させ、次いで、得られた反応生成物と、アルデヒド類とを反応させる。
【0071】
PEG変性リグニンとフェノール類との反応において、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、100質量部以上であり、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、350質量部以下である。
【0072】
換言すると、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、30質量部以上であり、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下、より好ましくは、100質量部以下である。
【0073】
また、耐熱性の向上を図る観点から、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、好ましくは、200質量部以上、より好ましくは、250質量部以上であり、好ましくは、1000質量部以下、より好ましくは、500質量部以下である。換言すると、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上であり、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、40質量部以下である。
【0074】
また、耐水性の向上を図る観点から、フェノール類の配合割合は、PEG変性リグニン100質量部に対して、好ましくは、30質量部以上、より好ましくは、50質量部を超過し、好ましくは、1000質量部以下、より好ましくは、500質量部以下、さらに好ましくは、250質量部未満である。換言すると、PEG変性リグニンの配合割合は、フェノール類100質量部に対して、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上、さらに好ましくは、40質量部を超過し、好ましくは、300質量部以下、より好ましくは、200質量部以下である。
【0075】
また、この反応では、上記の酸触媒が添加される。
【0076】
酸触媒の配合割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.3質量部以上であり、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0077】
なお、酸触媒の添加のタイミングは、特に制限されず、PEG変性リグニンおよびフェノール類の少なくともいずれかに予め添加されていてもよく、また、PEG変性リグニンおよびフェノール類の配合時に同時に添加されてもよく、さらに、PEG変性リグニンおよびフェノール類の配合後に添加されてもよい。
【0078】
反応条件としては、大気圧下、反応温度が、例えば、60℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、反応時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上であり、例えば、10時間以下、好ましくは、5時間以下である。
【0079】
これにより、フェノール類がPEG変性リグニンにより変性される。
【0080】
換言すれば、PEG変性リグニンがフェノール類により変性される。
【0081】
次いで、この方法では、上記により得られる反応生成物(すなわち、PEG変性リグニンにより変性されたフェノール類)と、アルデヒド類とを反応させる。
【0082】
この反応において、アルデヒド類の配合割合は、フェノール類(上記反応において原料として用いられたフェノール類)100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、例えば、35質量部以下、好ましくは、30質量部以下である。
【0083】
また、この反応では、必要に応じて、上記の酸触媒を適宜の割合で添加することもできる。
【0084】
反応条件としては、大気圧下、反応温度が、例えば、50℃以上、好ましくは、80℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下である。また、反応時間が、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上であり、例えば、20時間以下、好ましくは、15時間以下である。
【0085】
これにより、PEG変性リグニンにより変性されたフェノール類と、アルデヒド類とが反応し、PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(PEGリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂)が得られる。
【0086】
ノボラック型フェノール樹脂において、PEG変性リグニンの含有割合は、フェノール類100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、30質量部以上であり、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下、より好ましくは、100質量部以下である。
【0087】
また、耐熱性の向上を図る観点から、PEG変性リグニンの含有割合は、フェノール類100質量部に対して、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上であり、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、40質量部以下である。
【0088】
また、耐水性の向上を図る観点から、PEG変性リグニンの含有割合は、フェノール類100質量部に対して、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、20質量部以上、さらに好ましくは、40質量部を超過し、好ましくは、300質量部以下、より好ましくは、200質量部以下である。
【0089】
なお、PEGリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂の製造では、必要により、蒸留などの公知の方法によって、未反応原料(未反応のフェノール類など)や酸触媒を除去することができる。
【0090】
そして、このようなノボラック型フェノール樹脂は、ポリエチレングリコールにより変性されたリグニンと、フェノール類と、アルデヒド類とを、酸触媒下で反応させた反応生成物を含む。そのため、上記のノボラック型フェノール樹脂によれば、耐熱性および柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)に優れる成形品を得ることができる。
【0091】
さらに、このようなノボラック型フェノール樹脂によれば、柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)以外の機械物性(曲げ物性など)、耐熱性、電気絶縁性および耐水性などの種々の物性に優れる成形品を得ることができる。
【0092】
そして、本発明の樹脂組成物は、上記のノボラック型フェノール樹脂を、必須成分として含有している。
【0093】
また、樹脂組成物は、必要により、フェノール樹脂硬化剤を含有することができる。
【0094】
フェノール樹脂硬化剤としては、特に制限されず、公知の硬化剤を用いることができる。具体的には、例えば、ヘキサメチレンテトラミン、メチロールメラミン、メチロール尿素などが挙げられる。
【0095】
これらフェノール樹脂硬化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0096】
フェノール樹脂硬化剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0097】
また、樹脂組成物は、さらに、添加剤を含有することができる。
【0098】
添加剤としては、樹脂組成物に添加される公知の添加剤、公知の添加剤、例えば、充填剤(木粉、パルプ、ガラス繊維など)、着色剤、可塑剤、安定剤、離型剤(ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸など)などが挙げられる。
【0099】
これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。添加剤の含有量は、本発明の優れた効果を阻害しない範囲において、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0100】
例えば、充填剤が添加される場合には、その配合割合は、樹脂組成物100質量部に対して、充填剤が、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上であり、例えば、300質量部以下、好ましくは、200質量部以下である。
【0101】
また、添加剤は、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の少なくともいずれかに予め添加されていてもよく、また、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の配合時に同時に添加されてもよく、また、PEG変性リグニン、フェノール類およびアルデヒド類の配合後に添加されてもよく、さらには、それらの反応生成物に直接添加されていてもよい。
【0102】
樹脂組成物が添加剤を含有する場合、例えば、ノボラック型フェノール樹脂と添加剤とが、公知の方法で混合(混練)される。
【0103】
混練方法としては、特に制限されず、例えば、単軸押出機、多軸押出機、ロール混練機、ニーダー、ヘンシエルミキサー、バンバリーミキサーなどの公知の混練機を用いることができる。
【0104】
混練条件としては、混練温度が、80℃以上、好ましくは、90℃以上、より好ましくは、100℃以上であり、180℃以下、好ましくは、170℃以下、より好ましくは、160℃以下である。また、混練時間が、例えば、3分以上、好ましくは、5分以上であり、例えば、30分以下、好ましくは、20分以下である。
【0105】
これにより、ノボラック型フェノール樹脂と添加剤とを含む樹脂組成物が得られる。
【0106】
このようにして得られる樹脂組成物は、上記のノボラック型フェノール樹脂(すなわち、PEGリグニン変性ノボラック型フェノール樹脂)を含有している。そのため、上記の樹脂組成物によれば、耐熱性および柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)に優れる成形品を得ることができる。
【0107】
さらに、このような樹脂組成物によれば、耐熱性および柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)以外の機械物性(曲げ物性など)、電気絶縁性および耐水性などの種々の物性に優れる成形品を得ることができる。
【0108】
そのため、このような樹脂組成物は、成形品の製造に好適に用いられる。
【0109】
より具体的には、上記の樹脂組成物を、例えば、トランスファ成形、圧縮成形などの公知の熱硬化性樹脂の成形方法により成形する。
【0110】
成形条件としては、成形温度が、例えば、120℃以上、好ましくは、150℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、成形時間が、例えば、1分以上、好ましくは、5分以上であり、例えば、30分以下、好ましくは、15分以下である。
【0111】
また、この方法では、得られた成形物を、必要により、養生することができる。
【0112】
養生条件としては、養生温度が、例えば、120℃以上、好ましくは、150℃以上であり、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、養生時間が、例えば、30分以上、好ましくは、60分以上であり、例えば、300分以下、好ましくは、150分以下である。
【0113】
これにより、耐熱性および柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)に優れる成形品を得ることができる。そのため、得られる成形品は、電気部品、自動車部品、建築材料、日用品などの各種産業分野において、広範に用いることができる。
【実施例】
【0114】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。また、以下の説明において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。なお、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
<リグニン類>
【0115】
製造例1(Mn200−PEG変性リグニン)
以下の方法で、数平均分子量200のポリエチレングリコールにより変性されたリグニン(以下、Mn200−PEG変性リグニン)を製造した。
【0116】
すなわち、市販の数平均分子量200のポリエチレングリコール(PEG200)230質量部と、酸触媒としての硫酸0.69質量部(PEG200 100質量部に対して、0.3質量部)を、反応容器に入れて撹拌した。
【0117】
次いで、絶乾スギ木粉46質量部を、反応容器に投入し、常圧下140℃に昇温して、撹拌しながら90分反応させた。
【0118】
次いで、反応容器を冷却し、温度が40℃以下になったことを確認した後、水酸化ナトリウム(0.2mol/L)を280質量部投入して、30分間撹拌した。
【0119】
次いで、得られた固形成分(パルプ)を、フィルタープレスにより除去し、溶液成分を回収した。
【0120】
次いで、得られた溶液成分に、硫酸を添加し、pHを2.0に調整した。これにより、Mn200−PEG変性リグニンの懸濁液を得た。
【0121】
その後、Mn200−PEG変性リグニンを、遠心分離により回収した。
【0122】
製造例2(Mn400−PEG変性リグニン)
数平均分子量200のポリエチレングリコールに代えて、数平均分子量400のポリエチレングリコール(以下、Mn400−PEG)を用いた以外は、製造例1と同じ方法で、Mn400−PEG変性リグニンを得た。
【0123】
製造例3(Mn600−PEG変性リグニン)
数平均分子量200のポリエチレングリコールに代えて、数平均分子量600のポリエチレングリコール(以下、Mn600−PEG)を用いた以外は、製造例1と同じ方法で、Mn600−PEG変性リグニンを得た。
【0124】
製造例4(無変性リグニン)
麦わらのアルカリ蒸解パルプ廃液(黒液)を中和した後、濾過することにより、固形分として、無変性リグニンを得た。
【0125】
製造例5(酢酸変性リグニン)
コーンストーバー100質量部を、95質量%の酢酸1000質量部および硫酸3質量部と混合し、還流下において4時間反応させた。反応後、濾過してパルプを除去し、パルプ廃液を回収した。次いで、ロータリーエバポレーターを用いてパルプ廃液中の酢酸を除去し、体積が1/10になるまで濃縮した後、その濃縮液の10倍量(質量基準)の水を添加し、濾過することにより、固形分として酢酸変性リグニンを得た。
【0126】
実施例1
<ノボラック型フェノール樹脂の合成>
フェノール493.5gをフラスコに入れ、50℃程度まで加熱してフェノールを液化させ、その後、製造例1で得られたMn200−PEG変性リグニン150gを添加した。
【0127】
次いで、シュウ酸(酸触媒)7.62gと、パラホルムアルデヒド117.3gを添加し、95℃で2.5時間反応させた。次いで、0.5℃/minで110℃まで昇温し、110℃で1.5時間反応させた。次いで、0.5℃/minで120℃まで昇温し、120℃で2時間反応させた。
【0128】
反応後、2300gの水を添加し、強く撹拌した後に静置し、デカンテーションで水を除去することによって、シュウ酸およびフェノールを除去した。さらに、適宜、水を加えつつ120℃、0.08MPaの条件で減圧蒸留し、残留フェノールを除去した。なお、減圧蒸留はフェノール残存率が1%以下になるまで繰り返した。
【0129】
これにより、Mn200−PEG変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(PEG200リグニン−ノボラック樹脂)を得た。
【0130】
また、仕込んだフェノールの量から、残留フェノールの量を除くことにより、リグニン類と反応したフェノール量を算出した。これにより、ノボラック型フェノール樹脂中におけるフェノールとリグニン類との質量比を求めた。その結果、フェノール(Ph)100質量部に対して、リグニン類(L)が、25質量部であった(Ph:L=100:25)。
【0131】
<樹脂組成物の製造>
上記ノボラック型フェノール樹脂(PEG200リグニン−ノボラック樹脂)690gと、充填剤としての木粉(旭有機材工業社製)230gと、フェノール樹脂硬化剤としてのヘキサメチレンテトラミン(リグナイト社製)82.8gと、離型剤としてのステアリン酸亜鉛(和光純薬工業社製)6.9gとを順次配合し、2本の熱ロールにて100℃で5分間混練して、樹脂組成物を得た。
【0132】
実施例2〜8
表1に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同じ方法で、ノボラック型フェノール樹脂および樹脂組成物を得た。また、実施例1と同じ方法で、ノボラック型フェノール樹脂中におけるフェノールとリグニン類との質量比を求めた。
【0133】
比較例1
フェノール846g、シュウ酸(酸触媒)13.02gおよびパラホルムアルデヒド172.5gをフラスコに入れ、95℃で2.5時間反応させた。次いで、0.5℃/minで110℃まで昇温し、110℃で1.5時間反応させた。次いで、0.5℃/minで120℃まで昇温し、120℃で2時間反応させた。
【0134】
反応後、3030gの水を添加し、強く撹拌した後に静置し、デカンテーションで水を除去することによって、シュウ酸およびフェノールを除去した。さらに、適宜、水を加えつつ120℃、0.08MPaの条件で減圧蒸留し、残留フェノールを除去した。なお、減圧蒸留はフェノール残存率が1%以下になるまで繰り返した。
【0135】
これにより、PEGにより変性されていないノボラック型フェノール樹脂(無変性ノボラック樹脂)を得た。
【0136】
また、得られたノボラック型フェノール樹脂690gと、充填剤としての木粉(旭有機材工業社製)230gと、フェノール樹脂硬化剤としてのヘキサメチレンテトラミン(リグナイト社製)82.8gと、離型剤としてのステアリン酸亜鉛(和光純薬工業社製)6.9gとを順次配合し、2本の熱ロールにて100℃で5分間混練して、樹脂組成物を得た。
【0137】
比較例2〜3
表1に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして、ノボラック型フェノール樹脂および樹脂組成物を得た。
【0138】
なお、比較例2では、Mn200−PEG変性リグニンに代えて、無変性リグニン150gを用いた。これにより、無変性リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(無変性リグニン−ノボラック樹脂)を得た。
【0139】
また、比較例3では、Mn200−PEG変性リグニンに代えて、酢酸変性リグニン150gを用いた。これにより、酢酸リグニンにより変性されたノボラック型フェノール樹脂(酢酸リグニン−ノボラック樹脂)を得た。
【0140】
<評価>
各実施例および各比較例において得られた樹脂組成物について、170℃において15分間トランスファ成形し、その後、比較例1および各実施例では、さらに、180℃で2時間、加熱養生し、成形品として、曲げ試験用の矩形試験片と、他の試験用の75mmφの円盤形試験片とを得た。そして、得られた成形品を、下記の方法により評価した。
【0141】
(1)ガラス転移温度(耐熱性、Tg)
Rheogel−E4000(ユ−ビーエム社製)を用い、固体動的粘弾性を測定した(周波数1Hz、昇温速度2℃/分)。そして、得られるtanδ曲線のピーク温度を、ガラス転移温度(Tg)として求めた。
【0142】
(2)最大点伸度
JIS K6911(1995)に準拠して、クロスヘッド速度3mm/分、スパン100mmにて、3点曲げ試験し、最大点伸度を測定した。なお、最大点伸度は、破損するまで撓ませたときのひずみ(最大点伸度)であり、下記式により求めた。
【0143】
最大点伸度(ε)=[6T/L]× ΔL
(T:サンプルの厚み、L:支点間距離、ΔL:曲げ撓み量)
【0144】
【表1】

<考察>
各実施例の樹脂組成物を用いて得られた成形品は、各比較例の樹脂組成物を用いて得られた成形品に比べ、耐熱性(ガラス転移温度)および柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)に優れる。また、実施例1〜8が参照されるように、PEG変性リグニンにおけるPEGの数平均分子量が比較的高いほど、柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)が向上する。
【0145】
<評価2>
(3)荷重たわみ温度
ASTM D648(2004年版)に準拠して、ヒートディストーションテスター(マイズ試験機製)を用い、シリコーンオイル中において、昇温速度2℃/分、荷重18.5kg/cmの条件で、標準たわみ量(0.25mm)に到達したときの温度を測定した。
【0146】
(4)曲げ強度
JIS K6911(1995)に準拠して、クロスヘッド速度3mm/分、スパン100mmにて、3点曲げ試験し、曲げ強度を測定した。
【0147】
(5)体積抵抗率(電気絶縁性)
JIS K6911(1995年版)に従い、HP4339A(アジレント・テクノロジー社製)を用いて、体積抵抗率(Ω・cm)を測定した。
【0148】
(6)誘電率
インピーダンスアナライザーE4991A(アジレント・テクノロジー社製)を用い、周波数1GHzにおける誘電率を容量法にて測定した。
【0149】
(7)吸水率
成形品の初期質量(乾燥質量)を測定し、次いで、成形品を沸騰水に2時間浸漬した後、その質量(吸水質量)および増加量を測定し、下記式により、吸水率を求めた。
【0150】
吸水率(質量%)
= 100 × 沸騰水の浸漬後における質量増加量 / 乾燥質量
【0151】
【表2】

<考察>
各実施例の樹脂組成物を用いて得られた成形品は、比較例1の樹脂組成物を用いて得られた成形品に比べ、耐熱性(ガラス転移温度)および柔軟性(曲げ試験における最大点伸度)以外の種々の物性(機械物性(曲げ物性など)、電気絶縁性および耐水性など)に優れる。
【0152】
とりわけ、各実施例の樹脂組成物では、PEGの数平均分子量が比較的高いほど、種々の物性(機械物性(曲げ物性など)、電気絶縁性および耐水性など)に優れる。