特開2021-123809(P2021-123809A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-123809(P2021-123809A)
(43)【公開日】2021年8月30日
(54)【発明の名称】多機能織物
(51)【国際特許分類】
   D03D 15/47 20210101AFI20210802BHJP
   D03D 15/527 20210101ALI20210802BHJP
   A45C 3/02 20060101ALI20210802BHJP
   A45F 3/04 20060101ALI20210802BHJP
【FI】
   D03D15/00 D
   D03D15/00 103
   A45C3/02 K
   A45F3/04 400T
   A45F3/04 400R
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-15729(P2020-15729)
(22)【出願日】2020年1月31日
(71)【出願人】
【識別番号】598021904
【氏名又は名称】横山 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(72)【発明者】
【氏名】横山 一彦
【テーマコード(参考)】
3B045
4L048
【Fターム(参考)】
3B045AA11
3B045AA24
3B045FC08
4L048AC16
4L048CA08
4L048DA22
(57)【要約】
【課題】
シンプルな構成で、多機能を備えた織物を提供する。
【解決手段】
経糸と緯糸とから織成された織物であって、前記経糸の全部あるいは一部は、第1の機能を備えた第1の糸であり、前記緯糸の全部あるいは一部は、第2の機能を備えた第2の糸であり、織物の第1面は、前記第1の糸及び前記第2の糸が露出することで第1の機能及び第2の機能を備え、織物の第2面は、前記第1の糸及び前記第2の糸が露出することで第1の機能及び第2の機能を備えている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸とから織成された織物であって、
前記経糸の全部あるいは一部は、第1の機能を備えた第1の糸であり、
前記緯糸の全部あるいは一部は、第2の機能を備えた第2の糸であり、
織物の第1面は、前記第1の糸及び前記第2の糸が露出することで第1の機能及び第2の機能を備え、
織物の第2面は、前記第1の糸及び前記第2の糸が露出することで第1の機能及び第2の機能を備えている、
多機能織物。
【請求項2】
第1の機能、第2の機能の一方が撥水機能、他方が消臭機能であり、撥水機能及び消臭機能を備えた請求項1に多機能織物。
【請求項3】
第1の機能、第2の機能の一方が抗菌機能、他方が消臭機能であり、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物。
【請求項4】
前記第1面において第1の糸が占める面積が、第2の糸が占める面積よりも大きく、
前記第2面において第2の糸が占める面積が、第1の糸が占める面積よりも大きい、
請求項1〜3いずれか1項に記載の多機能織物。
【請求項5】
経糸と緯糸とから織成された織物であって、
前記経糸の全部あるいは一部は、第1の機能を備えた第1の糸であり、
前記緯糸の全部あるいは一部は、第2の機能を備えた第2の糸であり、
第1の機能、第2の機能の一方が撥水機能、他方が消臭機能であり、撥水機能及び消臭機能を備えた、
多機能織物。
【請求項6】
前記第1の機能が撥水機能、前記第2の機能が消臭機能であり、
前記経糸の全部は第1の糸であり、
前記緯糸は第1の糸と第2の糸を含み、
前記織物の第1の面において、第1の糸が占める面積が、第2の糸が占める面積よりも大きく、
前記織物の第2の面において、第2の糸が占める面積が、第1の糸が占める面積よりも大きくなっている、
請求項5に記載の多機能織物。
【請求項7】
経糸と緯糸とから織成された織物であって、
前記経糸の全部あるいは一部は、第1の機能を備えた第1の糸であり、
前記緯糸の全部あるいは一部は、第2の機能を備えた第2の糸であり、
第1の機能、第2の機能の一方が抗菌機能、他方が消臭機能であり、抗菌機能及び消臭機能を備えた、
多機能織物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか1項に記載の多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む布製品。
【請求項9】
請求項1〜7いずれか1項に記載の多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む袋物。
【請求項10】
請求項1〜7いずれか1項に記載の多機能織物を材料の一部あるいは全部に含むカバン。
【請求項11】
請求項1〜7いずれか1項に記載の多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む介護用品。
【請求項12】
請求項3、7いずれか1項に記載の多機能織物を材料の一部に含む靴。
【請求項13】
経糸と緯糸とから織物を織成するに、
第1の機能を備えた第1の糸と、第2の機能を備えた第2の糸とを用意し、
前記経糸の全部あるいは一部を、第1の機能を備えた第1の糸とし、
前記緯糸の全部あるいは一部を、第2の機能を備えた第2の糸として織成し、
第1の機能及び第2の機能を備えた多機能織物を得る、
多機能織物の製造方法。
【請求項14】
第1の機能、第2の機能の一方が撥水機能、他方が消臭機能であり、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物を得る、請求項13に記載の多機能織物の製造方法。
【請求項15】
第1の機能、第2の機能の一方が抗菌機能、他方が消臭機能であり、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物を得る、請求項13に記載の多機能織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多機能織物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機能性を有する織物は存在する。例えば、特許文献1、2には、消臭繊維を用いた織物が開示されている。
【0003】
消臭機能を備えた織物において、消臭機能に加えて他の機能を付与したい場合がある。例えば、学校で用いられる布製の体操着袋には汗を含んだ体操着が収容されるが、細菌の繁殖等による臭気が問題となるおそれがあり、さらに、汗が体操着袋の表面に浸み出すことにより、外部に付着するおそれもある。したがって、消臭機能を備え、かつ、汗の浸み出しを防止できる体操着袋があれば便利である。
【0004】
特許文献3〜20には、撥水性を備えた織物が開示されている。一般に、撥水性を備えた織物は、織物を製織した後に、撥水加工を施す(例えば、ドブ漬けする)ことで得られる。この手法では、織物に撥水性に加えて他の機能を持たせることが困難である。また、織物に対して撥水加工を施したものは、通気性が要求される場合には、不利に働く。
【0005】
また、消臭機能を備えた織物において、撥水機能以外の機能を付与したい場合がある。例えば、汗に起因する臭気の発生は、細菌の繁殖によるものであるが、消臭機能(臭い成分の分解、吸着等)に加えて、抗菌機能(菌の発生の抑制)を備えた織物があれば有用である。
【特許文献1】特開平9−59846
【特許文献2】特開2007−154392
【特許文献3】特開昭59−137572
【特許文献4】特開昭60−239565
【特許文献5】特開昭62−28472
【特許文献6】特開平7−252742
【特許文献7】特開平9−170175
【特許文献8】特開平10−292266
【特許文献9】特開平11−302947
【特許文献10】特開2000−8247
【特許文献11】特開2001−192946
【特許文献12】特開2001−348754
【特許文献13】特開2002−4176
【特許文献14】特開2002−201562
【特許文献15】特開2003−20541
【特許文献16】特開2004−353097
【特許文献17】特開2017−179632
【特許文献18】特開2018−59233
【特許文献19】特開2018−12899
【特許文献20】特開2019−131944
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、シンプルな構成で、多機能を備えた織物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、経糸と緯糸とから織成された織物であって、
前記経糸の全部あるいは一部は、第1の機能を備えた第1の糸であり、
前記緯糸の全部あるいは一部は、第2の機能を備えた第2の糸であり、
織物の第1面は、前記第1の糸及び前記第2の糸が露出することで第1の機能及び第2の機能を備え、
織物の第2面は、前記第1の糸及び前記第2の糸が露出することで第1の機能及び第2の機能を備えている、多機能織物である。
【0008】
本発明は、経糸と緯糸とから織物を製造する方法であって、
第1の機能を備えた第1の糸と、第2の機能を備えた第2の糸とを用意し、
前記経糸の全部あるいは一部を、第1の機能を備えた第1の糸とし、
前記緯糸の全部あるいは一部を、第2の機能を備えた第2の糸として織成し、
第1の機能及び第2の機能を備えた多機能織物を得る、ものである。
【0009】
1つの態様では、経糸の全部が第1の糸であり、緯糸の全部が第2の糸である。
1つの態様では、経糸の全部が第1の糸であり、緯糸の一部が第2の糸である。
緯糸の一部が第2の糸である場合に、緯糸の一部は、第1の糸であってもよく、あるいは/および、第3の機能を備えた第3の糸であってもよい。
1つの態様では、経糸の一部が第1の糸であり、緯糸の全部が第2の糸である。
経糸の一部が第1の糸である場合に、経糸の一部は、第2の糸であってもよく、あるいは/および、第3の機能を備えた第3の糸であってもよい。
1つの態様では、経糸の一部が第1の糸であり、緯糸の一部が第2の糸である。
経糸の一部が第1の糸であり、緯糸の一部が第2の糸である場合に、経糸の一部は、第2の糸であってもよく、あるいは/および、第3の機能を備えた第3の糸であってもよく、緯糸の一部は、第1の糸であってもよく、あるいは/および、第3の機能を備えた第3の糸であってもよい。
織物の織り方は限定されず、「平織り」、「綾織り」、「繻子織り」、あるいは、これらの基本織りの変形織り、のいずれでもよい。
【0010】
1つの態様では、第1の機能、第2の機能の一方が撥水機能、他方が消臭機能であり、多機能織物は、撥水機能及び消臭機能を備えている。
1つの態様では、前記第1の機能が撥水機能、前記第2の機能が消臭機能であり、
前記経糸の全部は第1の糸であり、前記緯糸は第1の糸と第2の糸を含むものである。
また、第3の機能を備えた第3の糸を経糸、緯糸の一方あるいは両方の一部に用いることで、織物に第3の機能を付与してもよい。同様にして、第4の機能、第5の機能を付与してもよい。
【0011】
1つの態様では、第1の機能、第2の機能の一方が抗菌機能、他方が消臭機能であり、多機能織物は、抗菌機能及び消臭機能を備えている。
また、第3の機能を備えた第3の糸を経糸、緯糸の一方あるいは両方の一部に用いることで、織物に第3の機能を付与してもよい。同様にして、第4の機能、第5の機能を付与してもよい。
【0012】
1つの態様では、前記第1面において第1の糸が占める面積が、第2の糸が占める面積よりも大きく、
前記第2面において第2の糸が占める面積が、第1の糸が占める面積よりも大きい。
このものでは、織物の第1面は第1の機能及び第2の機能を備えているものの、第1の機能が主であり、第2面は第1の機能及び第2の機能を備えているものの、第2の機能が主である。
【0013】
本発明が採用した多機能織物は、
経糸と緯糸とから織成された織物であって、
前記経糸の全部あるいは一部は、第1の機能を備えた第1の糸であり、
前記緯糸の全部あるいは一部は、第2の機能を備えた第2の糸であり、
第1の機能、第2の機能の一方が撥水機能、他方が消臭機能であり、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物、である。
1つの態様では、前記第1の機能が撥水機能、前記第2の機能が消臭機能であり、
前記経糸の全部は第1の糸であり、前記緯糸は第1の糸と第2の糸を含み、
前記織物の第1の面において、撥水機能を備えた第1の糸が占める面積が、第2の糸が占める面積よりも大きく、第2面において消臭機能を備えた第2の糸が占める面積が、第1の糸が占める面積よりも大きい。
【0014】
本発明が採用した多機能織物は、
経糸と緯糸とから織成された織物であって、
前記経糸の全部あるいは一部は、抗菌機能を備えた第1の糸であり、
前記緯糸の全部あるいは一部は、消臭機能を備えた第2の糸であり、
抗菌機能及び消臭機能を備えた、多機能織物である。
【0015】
本発明が採用した他の技術手段は、上記多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む布製品である。
布製品は広く解釈されるものであり、所定の大きさを備えたシート、所定の形状に加工された布製品(衣料、服、袋物等)を含むものである。
1つの態様では、布製品は、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む。
1つの態様では、布製品は、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む。
【0016】
本発明が採用した他の技術手段は、上記多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む袋物である。
1つの態様では、袋物は、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む。
1つの態様では、袋物は、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む。
【0017】
本発明が採用した他の技術手段は、上記多機能織物を材料の一部あるいは全部に含むカバンである。
1つの態様では、カバンの内側の生地や中敷きに、多機能織物を用いる。
1つの態様では、上記多機能織物は、撥水機能及び消臭機能を備えている。
1つの態様では、上記多機能織物は、抗菌機能及び消臭機能を備えている。
【0018】
本発明が採用した他の技術手段は、上記多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む介護用品である。
介護用品は、広く解釈されるものであり、被介護者が身に付ける物、被介護者が身に付ける物以外で介護時に用いられる物を含む。
1つの態様では、介護用品は、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む。
1つの態様では、介護用品は、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む。
【0019】
本発明が採用した他の技術手段は、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物を材料の一部に含む靴である。
1つの態様では、靴の内側の生地や中敷きに、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物を用いる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シンプルな構成でありながら、多機能を備えた織物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の幾つかの実施形態について説明する。以下に述べる実施形態は例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0022】
[実施形態1]
実施形態1は、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物であり、経糸と緯糸とから織成された織物において、前記経糸の全部あるいは一部は、第1の機能を備えた第1の糸であり、前記緯糸の全部あるいは一部は、第2の機能を備えた第2の糸であり、第1の機能、第2の機能の一方が撥水機能、他方が消臭機能であり、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物である。1つの態様では、前記第1の機能が撥水機能であり、前記第2の機能が消臭機能である。
【0023】
撥水機能を備えた繊維は公知であり、市場で入手可能である。1つの態様では、撥水機能を備えた第1の糸は、再生ポリエステル繊維に非フッ素系撥水剤を用いて得られたものである。再生ポリエステル繊維、非フッ素系撥水剤のそれぞれ、また、再生ポリエステル繊維に非フッ素系撥水剤を適用して得られた撥水機能を備えた繊維は公知であり、市場で入手可能である。
【0024】
消臭機能を備えた消臭繊維は公知であり、市場で入手可能である。消臭繊維は、臭い成分を分解したり、吸着したりすることで臭い成分を除去する繊維である。1つの態様では、消臭機能を備えた第2の糸は、綿(セルロース繊維)に対してグラフト重合法を適用して得られたものであり、例えば、DEOREX(株式会社環境浄化研究所の登録商標)を用いることができる。
【0025】
撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物は、例えば、撥水機能を備えた第1の糸と、消臭機能を備えた第2の糸とを用意し、経糸の全部あるいは一部を、第1の糸とし、緯糸の全部あるいは一部を、第2の糸として織物を織成することで得られる。経糸、緯糸と、第1の糸、第2の糸の組み合わせを逆にしてもよい。織り方は、「平織り」、「綾織り」、「繻子織り」のいずれでもよいが、1つの態様では、後述するように、「綾織り」が用いられる。1つの態様では、ジャガード織機が用いられるが、織機の種類は限定されない。本実施形態に係る多機能織物は単層織物であるが、織物技術で公知の手法を用いることは任意であり、二重織りや三重織りを用いてもよい。また、第1糸、第2糸の一方あるいは両方を複合糸としてもよい。
【0026】
織成された織物において、織物の第1面は、第1の糸及び第2の糸が露出することで撥水機能及び消臭機能を備え、織物の第2面は、第1の糸及び第2の糸が露出することで撥水機能及び消臭機能を備えている。1つの態様では、第1面において第1の糸が占める面積が、第2の糸が占める面積よりも大きく、第2面において第2の糸が占める面積が、第1の糸が占める面積よりも小さくなっている。すなわち、第1面においては、撥水機能を備えた糸が占める割合が大きく、第2面においては、消臭機能を備えた糸が占める割合が大きい。織物の各面において露出する第1の糸、第2の糸の面積割合は、織り方、あるいは/および、経糸と緯糸の本数の組み合わせ、あるいは/および、経糸、緯糸と第1の糸、第2の糸との対応関係、あるいは/および、第1の糸と第2の糸の太さ等を選択することによって可変である。
【0027】
1つの態様では、前記第1の機能が撥水機能であり、前記第2の機能が消臭機能であり、経糸の全部を撥水機能を備えた第1の糸とし、緯糸の一部を撥水機能を備えた第1糸とし、一部を消臭機能を備えた第2の糸とする(例えば、緯糸において、第1の糸と第2の糸を交互にセットする。)。撥水機能を備えた第1の糸を経糸の全部、及び、緯糸の一部に用いることによって、織物の第1の面において、撥水機能を備えた第1の糸が占める面積が、消臭機能を備えた第2の糸が占める面積よりも大きくなっており、織物の第2面において消臭機能を備えた第2の糸が占める面積が、撥水機能を備えた第1の糸が占める面積よりも大きくなっている。より具体的な態様では、第1の糸は、150デニールの非フッ素系の撥水再生ポリエステル繊維であり、第2の糸は、132デニールの消臭セルロース繊維(綿)であるが、第1の糸、第2の糸の繊維の種類や太さは限定されない。
【0028】
本実施形態に係る織物、具体的には、非フッ素系撥水剤により処理された撥水性再生ポリエステル繊維と、消臭セルロース繊維(綿)DEOREX(株式会社環境浄化研究所の登録商標)を用いて綾織り(経糸の全部を撥水機能を備えた糸とし、緯糸の一部を撥水機能を備えた糸、一部を消臭機能を備えた糸とする)で得られた織物の試料を用いて、はっ水度試験、消臭試験を行った。はっ水度試験は、JIS L 1092 繊維製品の防水性試験法 はっ水度試験(スプレー試験)に準拠して行われ、結果は3級であり、十分な撥水性が確認された。消臭試験(アンモニア)を行ったところ、経過時間(120分)後の消臭率は98%であった。試験に用いた織物が、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物であることが確認された。また、本実施形態に係る撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物は、織物に対して撥水剤をコーティングしたものに比べて、通気性が良好である。
【0029】
洗濯処理後、再度、はっ水度試験、消臭試験を行った。洗濯処理は、「洗濯5分−脱水3分−すすぎ2分−脱水3分−すすぎ2分−脱水3分」の工程を10回繰り返す水洗い処理を行った。洗剤は弱アルカリ性洗剤を使用し、乾燥方法はライン乾燥とした。はっ水度試験の結果は1級であり、撥水性が低下したが、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物の用途や用い方によっては(例えば、洗濯回数の頻度が低いような場合)、実用に耐え得る撥水機能を備えていると考えられる。消臭試験の結果は、消臭率59%であり、消臭機能の低下が見られた。ここで、消臭繊維DEOREX(株式会社環境浄化研究所の登録商標)は、酸性環境下で消臭機能の回復するという知見が得られており、消臭繊維からなる糸を織成前に酸洗いすること、あるいは、織成後の織物を酸洗いすることによって、消臭機能を維持することができる。
【0030】
[実施形態2]
実施形態2は、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物であり、経糸と緯糸とから織成された織物において、前記経糸の全部あるいは一部は、第1の機能を備えた第1の糸であり、前記緯糸の全部あるいは一部は、第2の機能を備えた第2の糸であり、第1の機能、第2の機能の一方が抗菌機能、他方が消臭機能であり、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物である。1つの態様では、前記第1の機能が抗菌機能であり、前記第2の機能が消臭機能である。
【0031】
抗菌機能を備えた繊維は公知であり、市場で入手可能である。消臭機能を備えた繊維は公知であり、市場で入手可能である。1つの態様では、第2の糸は、繊維に対してグラフト重合法を用いたて得られたものであり、例えば、DEOREX(株式会社環境浄化研究所の登録商標)を用いることができる。
【0032】
抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物は、例えば、抗菌機能を備えた第1の糸と、消臭機能を備えた第2の糸とを用意し、経糸の全部あるいは一部を第1の糸とし、緯糸の全部あるいは一部を第2の糸として織物を織成することで得られる。経糸、緯糸と、第1の糸、第2の糸の組み合わせを逆にしてもよい。織り方は、「平織り」、「綾織り」、「繻子織り」のいずれでもよいが、1つの態様では、後「綾織り」が用いられる。1つの態様では、ジャガード織機が用いられるが、織機の種類は限定されない。本実施形態に係る多機能織物は単層織物であるが、織物技術で公知の手法を用いることは任意であり、二重織りや三重織りを用いてもよい。また、第1糸、第2糸の一方あるいは両方を複合糸としてもよい。
【0033】
織成された織物において、織物の第1面は、第1の糸及び第2の糸が露出することで抗菌機能及び消臭機能を備え、織物の第2面は、第1の糸及び第2の糸が露出することで抗菌機能及び消臭機能を備えている。織物の各面において露出する第1の糸、第2の糸の面積割合は、織り方、あるいは/および、経糸と緯糸の本数の組み合わせ、あるいは/および、経糸、緯糸と第1の糸、第2の糸との対応関係、あるいは/および、第1の糸と第2の糸の太さの違い等を選択することによって可変である。
【0034】
本実施形態に係る多機能織物は、消臭機能(臭い成分の分解、吸着等)、及び、抗菌機能(菌の発生の抑制)を備えているので、消臭機能のみを備えた織物、抗菌機能(防臭機能)のみを備えた織物に比べて、有利である。また、本実施形態に係る多機能織物は、織物に対して抗菌剤/消臭剤をコーティングしたようなものに比べて、通気性が良好である。
【0035】
[実施形態3]
実施形態3は、多機能織物からなる袋物に関するものである。袋物は汗を含む衣類等を収納する袋物であって、典型的には、袋物は、学校等において体操着を入れる体操着袋ないしナップサックである。体操着袋の袋部の材料の一部あるいは全部は、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物からなる。例えば、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物を縫製することで袋部を形成する。撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物としては、実施形態1で記載した多機能織物を用いることができる。
【0036】
学校で用いられる布製の体操着袋には汗を含んだ体操着が収容されるが、細菌の繁殖等による臭気が問題となるおそれがあり、さらに、汗が体操着袋の表面に浸み出すことにより、外部に付着するおそれもある。したがって、消臭機能を備え、かつ、汗の浸み出しを防止できる体操着袋があれば便利である。本実施形態に係る袋物の袋部の表面、裏面は共に、撥水機能及び消臭機能を備えており、消臭機能によって、細菌の繁殖等による臭気を低減し、撥水機能によって、袋部内部の汗を含む衣類から汗が体操着袋の表面に浸み出すことを防止する。1つの態様では、袋部の表面における撥水機能を備えた糸の露出割合を大きくする一方、袋部の裏面の面積における消臭機能を備えた糸の露出割合を大きくする。また、袋物は織物から形成されているので、撥水性を備えたものでありながら、通気性も良好であり、内部がむれにくい。
【0037】
撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物からなる袋物は、学校で用いる体操着袋に限らず、運動後に着ていた服を入れる袋物として広く用いることができる。例えば、フィットネスクラブやゴルフのクラブハウスでは、運動後に服を脱いでシャワーを浴びて着替え、汗を含んだ衣類をビニール袋に入れて、これをカバンないしバッグに入れて持ち帰ることが一般的であるが、ビニール袋に代えて、本実施形態に係る撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物からなる袋物を用いることで、カバン内に汗が浸み出したり、臭気がこもったりするようなことがなく、汗を含んだ衣類を衛生的な状態で持ち帰ることができる。また、屋外でのスポーツ(例えば、ジョギング、マラソン、登山等)後の着替え時にも、本実施形態に係る袋物を用いて汗を含んだ衣類を収納することができる。
【0038】
また、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物から袋物を形成してもよい。第2実施形態に係る多機能織物から袋物を形成することで、消臭機能(臭い成分の分解、吸着等)、及び、抗菌機能(菌の発生の抑制)を備えた袋物を得ることができ、運動後に着ていた服を入れる袋物や洗濯前の衣類を一時的に入れるランドリーバックとして広く用いることができる。
【0039】
[実施形態4]
実施形態4は、多機能織物を材料の一部に含むカバンに関するものである。より具体的には、カバンの内側の生地や中敷きに、多機能織物を用いる。1つの態様では、上記多機能織物は、撥水機能及び消臭機能を備えている。1つの態様では、上記多機能織物は、抗菌機能及び消臭機能を備えている。例えば、ランドセルには、汗を含む体操着を直接ないし間接的に入れることがあり、例えば、ランドセル用中敷の材料の一部に撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物、ないし、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物を採用することは有用である。ランドセルに限らず、カバンの使用用途等によっては、がばんの材料の一部に撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物、ないし、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物を採用することは有用である。
【0040】
[実施形態5]
実施形態4は、多機能織物から形成された多目的シートである。1つの態様では、多目的シートは、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物からなる。1つの態様では、多目的シートは、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物からなる。1つの態様では、多目的シートは風呂敷である。1つの態様では、多目的シートは、所定の大面積の織物として提供され、用途に応じて裁断して用いてもよい。多目的シートの用途は限定されず、例えば、介護用シート、医療用シートとして用いることができる。
【0041】
[実施形態6]
実施形態6は、多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む介護用品である。介護用品は、広く解釈されるものであり、被介護者が身に付ける物、被介護者が身に付ける物以外で介護時に用いられる物を含む。1つの態様では、介護用品は、撥水機能及び消臭機能を備えた多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む。1つの態様では、介護用品は、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物を材料の一部あるいは全部に含む。1つの態様では、多機能織物は、他の材料(例えば、吸水性部材)と組み合わせることで介護用品を構成する。
【0042】
[実施形態7]
実施形態7は、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物を材料の一部に含む靴である。より具体的には、靴の内側面や中敷きに、抗菌機能及び消臭機能を備えた多機能織物を用いる。