【解決手段】第一の昇降部211を有する第一の脚部21と、第二の昇降部221を有する第二の脚部22と、第一の脚部21と第二の脚部22とを架け渡して取り付けられる横架材3と、横架材3に取り付けられ横架材3をスライドして移動するスライド部4と、スライド部4に取り付けられ、法面用の削孔機を取り付けるための連結部5とを有する、削孔機の移動補助機1。
第一の昇降部を有する第一の脚部と、第二の昇降部を有する第二の脚部と、前記第一の脚部と前記第二の脚部とを架け渡して取り付けられる横架材と、前記横架材に取り付けられ前記横架材をスライドして移動するスライド部と、前記スライド部に取り付けられ、法面用の削孔機を取り付けるための連結部とを有する、前記削孔機の移動補助機と、
前記移動補助機の連結部に取り付けられた法面用の削孔機とを有する法面削孔装置により、法面に削孔する方法であり、
前記削孔機の脚部が法面に接した状態で、前記第一の昇降部と前記第二の昇降部とを上昇させて、前記第一の脚部と前記第二の脚部とが法面から離隔した位置とする工程(1)と、
前記スライド部をスライドさせて前記第一の脚部と前記第二の脚部とを法面に対して相対的に移動させる工程(2)と、
前記第一の昇降部と前記第二の昇降部とを下降させて、前記第一の脚部と前記第二の脚部とを法面に接触させ、前記削孔機の脚部を法面から離隔させる工程(3)と、
前記スライド部をスライドさせて、前記削孔機を法面に対して相対的に移動させる工程(4)と、
前記第一の昇降部と前記第二の昇降部とを上昇させて、前記削孔機の脚部を法面に接触させる工程(5)とを有する、法面削孔装置の移動方法。
【背景技術】
【0002】
法面の崩落防止などの法面工事のために、法面の削孔を伴う工事が行われている。法面の削孔は、傾斜がある作業環境での工事となり、さらに高低差が大きい範囲や、傾斜の程度が種々異なる範囲で行う必要があるなどの状況に対応したものが求められる。
【0003】
例えば、特許文献1は、自走出来る機械に索道用ウインチと牽引用ウインチを設け、削孔機にフックを掛ける台を付け、吊り具に先端にフックの付いたワイヤーを伸縮する機具、牽引ワイヤーを取り付ける金具、索道ワイヤー取り付ける金具を設け、フックの付いたワイヤーを伸縮する機具のフックを、フックを掛ける台の穴に掛け、索道用ウインチのワイヤーを伸ばし先端を法面上部に固定し、索道ワイヤーを通す金具に索道ワイヤーを通す、牽引用ワイヤー伸ばし法面上部において滑車で折り返し先端を索道ワイヤーを取り付ける金具に掛け、索道用ウインチを巻き上げ索道を張る構成の索道軌道を用いた法面削孔機を開示している。
【0004】
しかし、特許文献1の自走できる機械は大型のクローラーなどであり、法面作業の現場に行くことができない場合がある。このような種々の制約を伴う法面の削孔のために、ワイヤーケーブルを用いる装置等による工法などが知られている。例えば、非特許文献1は、足場の要らないロックボルト工法を開示するものである。このロックボルト工法は、ケーブルクレーンで移動する削岩機を仮設したタワーで削孔するものである。
【0005】
また、特許文献2は、斜面位置において、施工機械により斜面地盤に対して施工を行うに際して、前記施工機械に対して、高さ方向上方の斜面または平坦面に固定の1以上の上方支持点を定め、高さ方向下方の斜面または平坦面に固定の1以上の下方支持点を定め、前記施工機械を、前記上方支持点との間に設けた吊持ワイヤー類を介して吊持し、前記下方支持点との間に設けた押さえワイヤー類を介して、斜面に対して押さえ付ける方向に付勢する、ことを特徴とする斜面での施工方法を開示している。
【0006】
また、特許文献3は、削孔機を法面上で順次移動させて設置し、法面に削孔を施す削孔装置であって、削孔機が移動設置されるべき法面の上部に離間して一対の支柱を設けると共に、法面の下部にも一対の支柱を離間して若しくは1本の支柱を設け、支柱には滑車を取り付け、また支柱の数と同数の巻取器を設備し、各巻取器から繰り出されるワイヤーをそれぞれ前記支柱に取り付けた滑車を介して削孔機の上部のワイヤー取付部まで延長して配線し、各巻取器によりワイヤーを繰り出し或いは巻き取ることで、ワイヤーの長さを調節して削孔機を上下左右の方向に移動させると共に法面に対して立設状態に設置するようにしたことを特徴とする削孔装置を開示している。
【0007】
また、特許文献4は、法面削孔装置を取り付けたタワーと補助タワーを交互に動かし移動するシステムで、ワイヤーケーブルで立木等を会してウィンチで上下左右に遠隔操作することを特徴とする法面削孔装置の移動システムを開示している。また、特許文献5は、法面削孔装置を取り付けたタワーと補助タワーをコンパス状にして、交互に動かし移動するシステムで、その開閉用にエアーシリンダーを取り付け、又、補助タワーの脚部にもエアーシリンダーを取り付け移動、固定の操作を容易にし、ワイヤーケーブルで立木等を会してウィンチで上下左右に遠隔操作することを特徴とする法面削孔装置の移動システムを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1のような大型の装置や設備を必要とする場合、周辺の工事環境によっては、法面に近づけなかったり、設備設置ができず作業ができない場合がある。しかし、特許文献2〜5や非特許文献1のようなワイヤーを用いる工法であれば、工事を行う周辺環境の制限が少なく、様々な場所で工事を行うことができる。
【0011】
これらのワイヤーで吊り下げ等された削孔機を移動させるとき、ワイヤーの張りを調節して、移動したい方向の反対側のワイヤーを緩め、削孔機の作業者が削孔機を持ち上げながら移動方向のワイヤーを巻取り、引っ張りながら移動する。このような移動は、ワイヤーの巻取り操作のバランスのとり方が難しかったり、作業者が重量物を持ち上げる必要があり負担が大きかったりして、位置の調整が難しい場合がある。
【0012】
係る状況下、本発明は、法面の削孔に用いられる削孔機の移動を補助するための移動補助機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
【0014】
<1> 第一の昇降部を有する第一の脚部と、
第二の昇降部を有する第二の脚部と、
前記第一の脚部と前記第二の脚部とを架け渡して取り付けられる横架材と、
前記横架材に取り付けられ前記横架材をスライドして移動するスライド部と、
前記スライド部に取り付けられ、法面用の削孔機を取り付けるための連結部とを有する、
前記削孔機の移動補助機。
<2> 前記連結部に前記削孔機の向きを回転させて連結させる回転部を有する、前記の移動補助機。
<3> 前記スライド部が、ウォームギアである前記の移動補助機。
<4> 前記第一の脚部および/または前記第二の脚部が、前記横架材との取り付け高さを調節する高さ調節部を有する、前記の移動補助機。
<5> 前記の移動補助機の前記連結部に法面用の削孔機を取り付けた、法面削孔装置。
<6> 第一の昇降部を有する第一の脚部と、第二の昇降部を有する第二の脚部と、前記第一の脚部と前記第二の脚部とを架け渡して取り付けられる横架材と、前記横架材に取り付けられ前記横架材をスライドして移動するスライド部と、前記スライド部に取り付けられ、法面用の削孔機を取り付けるための連結部とを有する、前記削孔機の移動補助機と、
前記移動補助機の連結部に取り付けられた法面用の削孔機とを有する法面削孔装置により、法面に削孔する方法であり、
前記削孔機の脚部が法面に接した状態で、前記第一の昇降部と前記第二の昇降部とを上昇させて、前記第一の脚部と前記第二の脚部とが法面から離隔した位置とする工程(1)と、
前記スライド部をスライドさせて前記第一の脚部と前記第二の脚部とを法面に対して相対的に移動させる工程(2)と、
前記第一の昇降部と前記第二の昇降部とを下降させて、前記第一の脚部と前記第二の脚部とを法面に接触させ、前記削孔機の脚部を法面から離隔させる工程(3)と、
前記スライド部をスライドさせて、前記削孔機を法面に対して相対的に移動させる工程(4)と、
前記第一の昇降部と前記第二の昇降部とを上昇させて、前記削孔機の脚部を法面に接触させる工程(5)とを有する、法面削孔装置の移動方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の移動補助機によれば、削孔機の移動を補助することができる。これにより、法面などの作業環境でも、削孔機を任意の位置に容易に移動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値を含む表現として用いる。
【0018】
[本発明の移動補助機]
本発明の移動補助機は、第一の昇降部を有する第一の脚部と、第二の昇降部を有する第二の脚部と、前記第一の脚部と前記第二の脚部とを架け渡して取り付けられる横架材と、前記横架材に取り付けられ前記横架材をスライドして移動するスライド部と、前記スライド部に取り付けられた法面用の削孔機を取り付けるための連結部とを有する。
【0019】
この移動補助機は、削孔機の移動に用いられる。この移動補助機は、連結部に法面用の削孔機を取り付けて本発明の法面削孔装置として用いられる。この移動補助機を用いることで、法面などの作業環境でも上下方向や水平方向、斜め方向などの任意の方向に削孔機を容易に移動させることができる。
【0020】
[第一の実施形態]
図1、2は、本発明の第一の実施形態に係る移動補助機1を用いた法面削孔装置10を説明するものである。
図1(a)は、法面削孔装置10を正面視した概要図である。
図1(b)は、法面削孔装置10を右側面視した概要図である。
図2(a)は、法面削孔装置10を平面視した概要図である。
図2(b)は、法面削孔装置10を平面視方向からみた断面の概要図である。
【0021】
なお、法面削孔装置10の使用時は、
図8に示すように法面で用いられる場合が多いが、本実施形態の説明においては、法面を水平方向(XY方向)とし、その法面に対して垂直な方向を上下方向(Z方向)とする向きを基準として原則説明する。
【0022】
図1〜3は、第一の実施形態に係る移動補助機1および法面削孔装置10の構造を説明するための概要図である。
図3は、移動補助機1の概要図である。
図3(a)は、移動補助機1を右側面視した概要図である。
図3(b)は、移動補助機1を正面視した概要図である。
図3(c)は、移動補助機1を平面視した概要図である。
【0023】
[法面削孔装置10]
法面削孔装置10は、移動補助機1と、削孔機7と、ワイヤー8とを有する。移動補助機1の連結部5(
図3)に、削孔機7が取り付けられる。削孔機7は、法面に対して垂直方向の削孔を行うために用いられる。ワイヤー8は削孔機7の上部に取り付けられる。法面における削孔機7の位置の調整や向き、反力を得るために、ワイヤー8の張力が調整される。
【0024】
[移動補助機1]
移動補助機1は、削孔機7を取り付けて用いられる。移動補助機1は、削孔機7の移動を補助するために用いられる。移動補助機1は、第一の脚部21、第二の脚部22、横架材3、スライド部4、連結部5を有する。移動補助機を構成する各構造は、それぞれの構造に適した金属部材や、樹脂部材、木材などを適宜組み合わせて形成される。
【0025】
[第一の脚部21、第二の脚部22]
移動補助機1は、第一の昇降部211(以下、単に「昇降部211」)を有する第一の脚部21と、第二の昇降部221(以下、単に「昇降部221」)を有する第二の脚部22を有する。第一の脚部21と、第二の脚部22は、互いに平行方向に伸長するように配置され、使用時に法面に対して垂直方向に伸長するように配置された柱状部材である。第一の脚部21と第二の脚部22の高さ(Z方向)や昇降する高さは、法面削孔装置10を用いる環境や削孔機7の大きさ等に応じて適宜設定される。例えば、脚部の高さを、30cm〜2m程度とすることができ、昇降する高さを10cm〜50cm程度とすることができる。
【0026】
第一の脚部21と第二の脚部22の底面側には、それぞれ昇降部211、昇降部221が設けられている。昇降部211、昇降部222は、おのおの別々に昇降または互いに連動して昇降することができ、移動補助機1の高さを昇降させることができる。この昇降部211、221は、複数の段階的な昇降状態を調整できるものとすることが好ましい。この昇降部には、油圧などで駆動する、ジャッキやシリンダーなどが用いられる。
【0027】
[横架材3]
横架材3は、第一の脚部21と第二の脚部22とを架け渡して取り付けられる部材である。横架材3の一端の固定部31は、第一の脚部21に設けられた孔にピン311を挿し込むことで固定される。横架材3の他の一端の固定部32は、第二の脚部22に設けられた孔にピン321を挿し込むことで固定される。横架材3により、第一の脚部21と第二の脚部22との互いの配置を平行に調整するものとすることができる。横架材3の長さ(Y方向)は、移動補助機1により削孔機7を移動させる距離に対応するものとなる。横架材3の長さが長すぎると、削孔機7を持ち上げる配置とするときの横架材3に係る負荷が大きすぎたり、撓り等により十分に持ち上げにくい場合もある。これらを考慮して、横架材の大きさは使用環境等に応じて適宜調整することができる。横架材3の長さは、例えば50cm〜5m程度や、1m〜3m程度とすることができる。
【0028】
[スライド部4]
スライド部4は、横架材3に取り付けられ横架材3をスライドして移動する部材である。スライド部4が、横架材3に対してスライドすることができる機構とすることで、横架材3に対するスライド部4、さらには、スライド部4に取り付けられた連結部5や、連結部5に固定される削孔機7の位置を、第一の脚部21、第二の脚部22に対して相対的に移動させることができる。
【0029】
スライド部4は、横架材3に対して左右(X方向)に移動することができるものであればよく、例えばウォームギアとすることができる。ウォームギアは、移動量の調整や、停止時の固定強度などに優れている。または、横架材3に対応する開口を嵌め込んだ部材をスライド部4として、これらを嵌め込んだ状態で、横架材3とスライド部4の部材とに対応する孔を複数設けて、この孔ピン留めするものとすることができる。これにより、ピンの開閉により、スライド部4を横架材3に対してスライドするように移動させたり、その位置を固定することができる。
【0030】
[連結部5]
連結部5は、スライド部4に取り付けられ、削孔機7を取り付けるための部材である。連結部5の一端は、スライド部4に固定される。連結部5は、横架材3に対して水平面内で垂直方向(Y方向)に延伸する板状部を有する。この連結部5の端部には、開口部51が設けられ、開口部51に削孔機7の支持棒を嵌め込むことで、削孔機7を連結することができる。
【0031】
[削孔機7の移動例]
図4、5は、法面削孔装置10により、削孔機7を移動補助機1によりX方向に移動させる流れの一例を説明するための図である。
【0032】
削孔機7が所定の位置で穴h1を削孔した後、削孔機7を次の削孔位置に移動させる必要がある。このとき、削孔機7の上部に取り付けられているワイヤー8の張りを調整して、移動する方向の反対側のワイヤー8を緩め、移動する方向側のワイヤー8を巻取ることで削孔機7の上部や全体を移動させ、必要に応じて作業者が削孔機7を持ち上げるが、ワイヤー8を緩めたり、巻取り量の調整が難しく任意の方向に移動しにくかったり、作業環境や機器重量、熟練度によっては削孔機7を持ち上げることが難しかったりする場合がある。以下に詳述するように、移動補助機1を用いれば、ワイヤー8の巻取りなどと合わせて調整して、削孔機7を任意の位置に移動させやすくなる。
【0033】
昇降部211、221は、複数の段階的な昇降ができるものであり、以下の(1)〜(3)のような少なくとも3段階の状態に調整できる。
(1)昇降部211、221が最も上昇した位置で、削孔機7の脚部のみが法面に接触し、第一の脚部21と第二の脚部22は法面に接触せず宙に浮いた状態となる、第一の状態。このとき昇降部211、221は第一の脚部21、第二の脚部22の内部に収容されている。(
図4(a)参照)
(2)昇降部211、221が中間の位置で、第一の脚部21と第二の脚部22と削孔機7の脚部のすべてが法面に接触した状態となる、第二の状態。(
図5(b)参照)
(3)昇降部211、221が最も下降した位置で、削孔機7の脚部が法面に接触せず、第一の脚部21と第二の脚部22が法面に接触した状態となる、第三の状態。このとき、第一の脚部21、第二の脚部22から、昇降部211、221が法面側に突出した状態となる。(
図4(c)参照)
このため、昇降部211は、第一の脚部21において、横架材3との固定部31よりも下側の長さを可変とすることができる構造を有している。また、昇降部221は、第二の脚部において、横架材3との固定部32よりも下側の長さを可変とすることができる構造を有している。
【0034】
図4は、削孔機7が削孔した穴h1に対して、移動補助機1の第一の脚部21および第二の脚部22を相対的に移動させる流れを説明するための図である。
【0035】
図4(a)に示すように、まず、穴h1の削孔が完了すると、第一の脚部21、第二の脚部22のそれぞれの昇降部211、221を上昇させて、削孔機7の脚部のみが法面に接した状態とする。すなわち、昇降部211、221が、第一の状態である。(削孔機の脚部が法面に接した状態で、第一の昇降部と第二の昇降部とを上昇させて、第一の脚部と第二の脚部とが法面から離隔した位置とする工程(1))
【0036】
図4(b)に示すように、次に、横架材3に対して、スライド部4を左方向(負のX方向)にスライドさせることで、第一の脚部21と、第二の脚部22とは、
図4(b)における右方向(正のX方向)に相対的に移動する。(スライド部をスライドさせて第一の脚部と第二の脚部とを法面に対して相対的に移動させる工程(2))
【0037】
図4(c)に示すように、次に、昇降部211、221を下降させて、第一の脚部21と第二の脚部22が法面に接触して、削孔機7の脚部71は上昇し宙に浮いた状態になる。すなわち、昇降部211、221が第三の状態である。(第一の昇降部と第二の昇降部とを下降させて、第一の脚部と第二の脚部とを法面に接触させ、削孔機の脚部を法面から離隔させる工程(3))
【0038】
図5は、
図4の後、穴h2を削孔するための配置とするために削孔機7を穴h1の位置から移動させる流れを説明するための図である。
【0039】
図5(a)に示すように、次に、スライド部4を右方向(正のX方向)に移動させて、スライド部4に連結している削孔機7を法面に対してX方向に移動させる。(スライド部をスライドさせて、削孔機を法面に対して相対的に移動させる工程(4))
【0040】
図5(b)に示すように、次に、昇降部211、221を上昇させることで、削孔機7を相対的に下降させる。これにより、第一の脚部21および、第二の脚部22、削孔機7の脚部71が法面に接した状態となる。すなわち、昇降部221、221が第二の状態である。(第一の昇降部と第二の昇降部とを上昇させて、削孔機の脚部を法面に接触させる工程(5))
【0041】
この
図5(b)の配置で削孔機7を用いることで、穴h2を削孔することができる。この移動は、移動補助機1により削孔機7を支持した状態での移動であり、削孔機7の重量が重くても移動させやすく、かつ、削孔機7の姿勢も制御しやすく安全である。また、横架材3に対するスライド部4の移動量に応じて、削孔機7の移動量を調整することができ、細かい移動量の調整にも適している。
【0042】
法面の工事にあたって、アンカー効果の信頼性により優れている二重削孔を求められる場合がある。従来の単孔を削孔する装置の場合、60kg程度の重量の装置で行うこともできる。このため、CTB工法のような、ワイヤーで適宜吊り下げて行う手法であっても、作業者がその場で持ち上げて位置を調整することがおこないやすかった。
【0043】
しかし、二重削孔を行うための装置は非常に重く、例えば500〜700kgなどの重量の装置を使用する必要がある。このような二重削孔などを行う装置は、作業者が持ち上げることが難しい重さとなり、位置の調整ができなくなる。本発明の移動補助機は、重量が重い二重削孔機を用いた法面工事においても、二重削孔機の削孔位置を調整しやすい装置や、削孔位置を調整する法面工事方法に適している。
【0044】
[回転部6]
移動補助機1は、回転部6を有するものとすることができる。この回転部6は、連結部5に削孔機7の向きを回転させて連結させるための部材である。
図2(b)は、連結部5が削孔機7と連結する部分を把握しやすいように示す部分断面図である。また、
図6は、回転部6により連結部5が削孔機7の向きを回転させて連結させる状態を説明するための図である。
【0045】
連結部5の開口部51に削孔機7の支持棒を嵌め込んで固定している。この開口部51における削孔機7の向きは、回転部6により調整することができる。回転部6は、円盤状部材であり、開口部51と対応する部分を中心に、周方向に孔61a〜61g(
図6(b))を有する。回転部6の円盤状部材は、削孔機7に固定しておき、削孔機7との水平面内(XY方向)で移動しないものとして取り付けている。
【0046】
図6(a)は、X方向での削孔機7を移動させるための固定状態を説明するためのものである。この
図6(a)においては、孔61dを、連結部5の孔5とピン留めすることで、連結部5と回転部6との向きを固定する。これにより、連結部5が設けられている第一の脚部21と第二の脚部22間の向きが、X方向となる。この状態で移動補助機1を用いて削孔機7を移動させると、X方向への移動ができる。すなわち、削孔機7を法面の水平方向に移動させることができる。
【0047】
次に、
図6(b)は、回転部6の孔61gを、連結部5の孔52にピン留めした状態である。この向きで固定すれば、第一の脚部21と第二の脚部22間の向きが、Y方向となる。この状態で移動補助機1を用いて削孔機7を移動させると、Y方向への移動ができる。すなわち、削孔機7を法面の上下方向に移動させることができる。
【0048】
次に、
図6(c)は、回転部6の孔6cをピン留めした状態である。この向きで固定すれば、第一の脚部21と第二の脚部22間の向きが、斜め方向となる。この状態で削孔機7を移動させると、F1方向への移動ができる。また、
図6(d)は、孔61fでピン留めした状態である。この状態で削孔機7を移動させると、F2方向への移動ができる。
【0049】
このように、回転部6を設けて、移動補助機1と削孔機7との向きを調整することができるものとすることで、移動補助機1を用いる削孔機7の移動方向を任意に調整することもできる。
【0050】
[高さ調節部212、222]
移動補助機1は、高さ調節部212および/または高さ調節部222を有するものとすることができる(
図7参照)。この高さ調節部212、222は、それぞれ第一の脚部21、第二の脚部22に設けられ、横架材3との取り付け高さを調節するための構造である。
【0051】
第一の脚部21の柱状部材と、第二の脚部22の柱状部材とには、それぞれ、高さ方向(Z方向)に所定の間隔で、奥行き方向(Y方向(
図3参照))に高さ調節部212、222となる孔が設けられている。移動補助機1の場合、孔が6つずつ設けられている。
図1〜5における例では上段から3つ目の孔に、横架材3を固定するためのピン311、321が固定されている。
【0052】
図7は高さ調節部212、222を用いた高さ調節を説明するための図である。法面は、岩場などであり、必ずしも平坦なものとは限らず凹凸がある場合もあり、またその法面の加工も容易なものではない場合がある。このような凹凸がある法面では、第一の脚部21側の底面と、第二の脚部22側の底面との高低に差が生じる場合がある。
【0053】
このようなとき、高さ調節部212、222として、第一の脚部21と第二の脚部22のそれぞれの柱状部材における孔と、横架材3をピン留めする位置を変更することで、法面の状態に合わせた調節ができる。
図7では、第一の脚部21側が、第二の脚部22側よりも低い法面での作業となる。このため、第一の脚部21側では、高さ調節部212の上段から2段目の孔を利用して横架材3の固定部31をピン留めする。他方、第二の脚部22側では、高さ調節部222の上段から5段目の孔を利用して横架材3の固定部32をピン留めする。これにより、この移動補助機1の第一の脚部21と第二の脚部22との基本的な高さの配置を調節することができ、削孔機7は法面に対して垂直に削孔するように姿勢を制御しやすい。
【0054】
図8は、法面削孔装置10を法面で使用するときの状態を把握しやすいようにするための概要図である。
図8(a)は法面を横方向から見た図であり、
図8(b)は法面を正面から見た図である。法面削孔装置10は、法面に対して、略垂直方向などに削孔するように配置して用いられる。法面削孔装置10の上部に設けられたワイヤー81〜84は、それぞれウインチ811〜814に連結されている。ウインチ811、812は、法面の上側に配置され、ウインチ813、814は法面の下側に配置されている。法面削孔装置10は、これらのワイヤーの長さを適宜調整しながら、その配置を調節して、所定の位置に穴hを削孔する。