【解決手段】開閉扉2側に取り付けられた移動ローラー21が、建屋側に設けられたガイドレール1に沿って開閉方向へ移動するための移動ローラーの案内構造であって、ガイドレール1には、開閉時に移動ローラー21の下側が接する下側転動面1aと、移動ローラー21の上側に間隔を空けて位置する上側転動面1bとが設けられ、移動ローラー21を回転可能に支持する本体部20には消音ローラー22、122が設けられ、消音ローラー22、122の上側が移動ローラー21の上側よりも高くなるように配置されると共に、本体部20または消音ローラー22、122の弾性によって消音ローラー22、122の上側が上下に移動可能に構成されている。
前記開閉扉の吊り元から離れた位置に前記移動ローラーが設けられ、この離れた位置の移動ローラーに隣り合って前記消音ローラーを配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動ローラーの案内構造。
前記移動ローラーおよび前記消音ローラーの外周面を曲面状に形成し、前記ガイドレールの上側転動面および下側転動面を、前記移動ローラーおよび前記消音ローラーの外周面に合わせて曲面状に形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の移動ローラーの案内構造。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る移動ローラーの案内構造について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る移動ローラーの案内構造を具備する引戸装置Hの正面概要図、
図2は、第1案内装置10の正面図である。また、
図3は
図1のA部の拡大図である。さらに、
図4は第2ローラー部14を単体で示すものであって、(A)は右斜め上側、(B)は右斜め下側から見た斜視図、
図5は
図4(A)の分解斜視図である。
【0017】
なお、本実施の形態で使用する上下、左右方向とは、
図1で示す方向(利用者が開閉扉2を正面から見た方向)をいい、前後方向とは、
図1の紙面奥行き方向をいう。また、開閉扉の開閉方向とは、左右方向をいうものとする。
【0018】
移動ローラーの案内構造を具備する引戸装置Hは、
図1に示すように、建屋側の開口上部に取り付けられたガイドレール1と、このガイドレール1に沿って開閉方向へ移動する開閉扉2とで構成されている。
【0019】
ガイドレール1は、
図1に示すように、左右方向に略水平に延びており、このガイドレール1に沿って開閉扉2が開閉される。また、開閉扉2は、左右の両側角部が吊り下げられる態様で取り付けられ、開閉扉2の上側に設けられた移動ローラー21(詳細は後述する)を介してガイドレール1に支持されている。
【0020】
ガイドレール1には、下側転動面1aと上側転動面1bとが設けられている。この下側転動面1aと上側転動面1bは、移動ローラー21がガイドレール1に組み付けられた状態で、移動ローラー21を上下に挟むように位置する。移動ローラー21は、開閉扉2の正常な開閉時には、開閉扉2の自重によって下側転動面1aと接して、その上を転動する。
【0021】
また、上側転動面1bは、移動ローラー21と上下方向に間隔を空けた位置に配置されている。移動ローラー21は、開閉扉2が上側に持ち上がったときにのみ上側転動面1bと接触するようになる。また、上側転動面1bは、移動ローラー21が上側転動面1bと接することで、開閉扉2がそれ以上持ち上がらないように上下方向の位置を規制している。
【0022】
開閉扉2の左側角部には、開閉扉2の左側を開閉方向に移動させる第1案内装置10が取り付けられている。また、右側角部には、開閉扉2の右側を移動させる第2案内装置17が取り付けられている。これらの第1案内装置10、第2案内装置17の下側には、吊り下げ部11がそれぞれ取り付けられている。また、吊下げ部11は、開閉扉2の左側角部および右側角部にそれぞれ埋め込まれる態様で取り付けられており、第1案内装置10、第2案内装置17にそれぞれ着脱可能に取り付けられている。
【0023】
第1案内装置10は、
図2に示すように、左側に位置する第1ローラー部12と、この第1ローラー部12の右側に位置する機構部13と、この機構部13のさらに右側に位置する第2ローラー部14とで構成されている。
【0024】
第1ローラー部12の下側には、上述した吊り下げ部11が着脱可能に取り付けられる。また、第1ローラー部12には、
図1および
図2に示すように、前後方向に延びる回転軸21aを中心に回転する移動ローラー21が設けられている。この移動ローラー21は、左右に間隔を空けて2つあり、また、奥側にも同様に2つ(都合4つ)が設けられている。
【0025】
機構部13には、開閉扉2の位置や動きを調整するための各種機構(例えば、クローザー、制動装置)が取り付けられる。例えば、この機構の一例であるクローザーは、開閉扉2の閉じ際に開閉扉2を緩やかに閉じた状態まで移動させるものであり、ガイドレール1側に設けられた被捕捉部材(図視せず)を所定の位置で捕捉して、ばねやダンパーを用いて捕捉した被捕捉部材を所定の位置まで引き込む機構である。また、制動装置は、開閉扉2が強い力で閉じられたときに、開閉扉2にブレーキをかけて緩やかに閉じるようにするものである。なお、これらのクローザーや制動装置は、従来から使われている技術であるため、その詳細な説明は省略する。
【0026】
なお、上述した各種機構を必要としない場合には、この機構部13の内部にはなにも装備されず、空洞のままで使用される。
【0027】
第2ローラー部14は、
図2〜
図5に示すように、機構部13の右側端部に取り付けられる本体部20と、この本体部20に対して回転可能に取り付けられた移動ローラー21と、この移動ローラー21に隣り合って配置され、本体部20に対して回転可能な消音ローラー22とで構成されている。
【0028】
本体部20は、
図4(A)、
図4(B)および
図5に示すように、機構部13に取り付けられる取付部20aと、この取付部20aの右側に位置する移動ローラー取付部20bと、この移動ローラー取付部20bのさらに右側に位置する消音ローラー取付部20cとで構成されている。これらの各取付部20a、20b、20cは、弾性を有する樹脂材料で一体に形成されている。なお、消音ローラー取付部20cが弾性を有していれば、各取付部20a、20b、20cを別体で構成しても構わない。
【0029】
取付部20aは、略直方体形状に形成されており、機構部13の右端側に設けられた取付角穴(図視せず)に右側から挿入され、下側から取付ねじ23(
図3参照)を締め込むことによって着脱可能に組み付けられる。
移動ローラー取付部20bは、
図3に示すように、取付部20aが組み付けられた状態で、機構部13の右端側から右側に突出している。また、移動ローラー取付部20bには、
図5に示すように、前後方向に連通する回転軸取付穴24が形成されている。この回転軸取付穴24には回転軸21aが挿入され、移動ローラー取付部20bを挟んで前後に2つの移動ローラー21、21が回転自在に取り付けられている。
【0030】
なお、第1ローラー部12に取り付けられる移動ローラー21と、第2ローラー部14
に取り付けられる移動ローラー21とは同じものであり、上下方向で同じ高さに取り付けられている。これにより、
図1に示すように、その間に配置された機構部13が略水平な姿勢を維持したまま左右に移動する。
【0031】
消音ローラー取付部20cは、
図4(A)、
図4(B)および
図5に示すように、移動ローラー取付部20bの右側上部からさらに右側に向けて延在しており、その右側先端部に回転軸取付穴25が形成されている。この回転軸取付穴25には回転軸22aが挿通され、本体部20を挟んで前後に2つの消音ローラー22、22が回転自在に取り付けられている。
【0032】
また、消音ローラー取付部20cは、上下方向の厚みを薄くして、弾性で上下に撓むように設計されている。すなわち、消音ローラー22は、上下方向に力が作用したときに、この弾性によって上下に移動するようになっている。
【0033】
この移動ローラー21と消音ローラー22は、
図3に示すように、消音ローラー取付部20cが撓んでいない状態で、移動ローラー21の上側よりも消音ローラー22の上側の方が寸法Xだけ高くなるように配置されている。
【0034】
なお、本実施形態では、移動ローラー21と消音ローラー22の直径が等しく(同じものであっても構わない)なるように構成している。しかしながら、消音ローラー22の上側が寸法Xだけ上側に位置するように組み立てられていれば、消音ローラー22の直径が小さいもの或いは大きいもの(直径の大きさにはよらない)が使用されていても構わない。
【0035】
また、ガイドレール1内に消音ローラー22が組み付けられた状態では、
図3に示すように、第2ローラー部14の移動ローラー21は、開閉扉2の通常の開閉時に、下側転動面1aと接して、その上を転動する。一方、消音ローラー22は、下側転動面1aとは接しておらず、さらに、上側転動面1bとも寸法Yだけ隙間が空くようになっている。
【0036】
一方、開閉扉2の右側角部に配置された第2案内装置17には、
図1および
図2に示すように、前後左右に4つの移動ローラー21が設けられており、第1案内装置10の移動ローラー21と同様に、開閉扉2の自重を受けて、ガイドレール1の下側転動面1aと接しつつ、その上を転動する。また、この第2案内装置17の移動ローラー21も、第1ローラー部12、第2ローラー部14の移動ローラー21と同じものが使用されており、それぞれ同じ高さになるように配置されている。また、この移動ローラー21と上側転動面1bとの間には、他の移動ローラー21と同様に上下方向に隙間が空くようにしてある。
【0037】
次に、本発明の実施の形態に係る移動ローラーの案内構造の作用について説明する。
利用者が開閉扉2を開く場合、通常は開閉方向に力を作用させるが、その力が斜め上側に向いてしまった場合には、上方向への分力によって開閉扉2が持ち上がってしまう。
【0038】
開閉扉2が持ち上がると、下側転動面1a上を転動する各々の移動ローラー21も開閉扉2と共に持ち上げられる。このとき、第1案内装置10の第1ローラー部12の移動ローラー21、および、第2案内装置17の移動ローラー21は、開閉扉2の吊り元であり開閉扉2の自重が直接に移動ローラー21にかかるため、上側に持ち上がり難い。これに対し、第1案内装置10の第2ローラー部14に取り付けられた移動ローラー21は、開閉扉2の吊り元から左右方向に離れた位置にあるため、少しの衝撃や力で上側に持ち上がることがある。
【0039】
また、クローザーや制動装置などの各種機構を設けた場合、それらの機構内の動作によって第2ローラー部14を上側に持ち上げる力が作用する。そのため、開閉扉2が持ち上がらなくても移動ローラー21が持ち上がることがある。そのため、第2ローラー部14に消音ローラー22が設けられている。
【0040】
この第2ローラー部14の移動ローラー21が持ち上がると、
図3に示すように、下側転動面1a上を転動していた移動ローラー21が下側転動面1aから離れて上側転動面1bまで(寸法X+寸法Y)だけ移動して、この上側転動面1bと当接する。
【0041】
このとき、移動ローラー21の上側が上側転動面1bと当接する前に、消音ローラー22の上側が寸法Yだけ移動して、先に上側転動面1bと当接する。この消音ローラー22が当接すると、消音ローラー22は、消音ローラー取付部20cがその弾性によって下側に撓むことによって、寸法Xだけ下側に移動する。そして、移動ローラー21と消音ローラー22が上側転動面1bに共に接して、上側転動面1b上を転動するようになる。
【0042】
上側転動面1bに消音ローラー22の上側が当接したとき、消音ローラー取付部20cの弾性によってその当接する力が緩衝されるため、当接音は小さくなる。また、消音ローラー22の次に上側転動面1bと当接する移動ローラー21についても、消音ローラー22の上側が上側転動面1bと先に当接することで上側へ持ち上げられる力が緩衝されるので、当接音は従来と比較して小さくなる。
【0043】
また、移動ローラー21が上側転動面1bと当接している状態で、移動ローラー21は、消音ローラー取付部20cの弾性によって下側に付勢される。この付勢力は、持ち上げられた開閉扉2を元の位置(下側転動面1aと接する位置)に速やかに戻そうとするように作用する。
【0044】
本発明の実施の形態に係る移動ローラーの案内構造によれば、ガイドレール1には、開閉時に移動ローラー21の下側が接する下側転動面1aと、移動ローラー21の上側に間隔を空けて位置する上側転動面1bとが設けられ、移動ローラー21を回転可能に支持する本体部20には消音ローラー22が設けられ、消音ローラー22の上側が移動ローラー21の上側よりも高く配置されると共に、本体部20の弾性によって消音ローラー22の上側が上下に移動可能に構成されているので、開閉扉2が持ち上げられたときに、移動ローラー21よりも先に消音ローラー22がガイドレール1の上側転動面1bに当接する。このとき、消音ローラー22が弾性で撓むことによって移動ローラー21が上側転動面1bに当接するときの力が緩衝される。その結果、移動ローラー21が上側転動面1bと当接するときの当接音を小さく抑えることができる。
【0045】
また、開閉扉2の吊り元から離れた位置に移動ローラー21が設けられ、この離れた位置の移動ローラー21に隣り合って消音ローラー22を配置しているので、より持ち上がり易い移動ローラー21の当接音を小さく抑えることができ、引戸装置H全体として得られる効果を高めることができる。
【0046】
一方、本発明の実施の形態に係る引戸装置Hによれば、開閉方向へ移動する開閉扉2の位置や動きを調整するためのクローザー、或いは制動装置が設けられているので、これらのクローザーや制動装置が動作するときに移動ローラー21が持ち上がることがある。このときの移動ローラー21が上側転動面1bと当接するときの当接音を小さく抑えることができる。
【0047】
以上、本発明の実施の形態に係る移動ローラーの案内構造について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0048】
例えば、本実施の形態では、通常の開閉状態において、上側転動面1bと消音ローラー22の上側とを寸法Y(
図3参照)だけ間隔を空けて配置しているが、この間隔を空けずに(寸法Yを0にする)常に接触した状態にしてもよい。また、消音ローラー取付部20cが少しだけ下側に撓んだ状態で配置し、上側転動面1bに消音ローラー22を少し付勢させておいてもよい。
【0049】
このような構成であっても、移動ローラー21が持ち上げられて上側転動面1bと当接する際に、消音ローラー取付部20cが下側に撓むことで開閉扉2が持ち上げられる力が緩衝され、当接音を小さく抑えることができる。
【0050】
また、上側転動面1bと消音ローラー22の上側とが予め接触した状態で配置することで、開閉扉2の前後方向への振れを抑えることができる。
図6は、移動ローラーの案内構造の第1変形例であって、(A)は消音ローラー22を設けていない場合、(B)は消音ローラー22を設けている場合を示す。なお、これらの図は、
図1のX−X断面図に相当するものである。
【0051】
消音ローラー22を設けていない場合、
図6(A)に示すように、移動ローラー21の上側は上側転動面1bと接触していないため、利用者の開閉時の力によって上側および前後方向に移動可能である。そのため、開閉扉2を後側に押す力が作用したときに、移動ローラー21がB方向に振れてしまう。一方、上側転動面1bに予め接触した状態で消音ローラー22を設けた場合には、
図6(B)に示すように、移動ローラー21と消音ローラー22が下側転動面1a、上側転動面1bによってそれぞれ上下に付勢された状態になるので、移動ローラー21が上下方向に移動し難いだけでなく、B方向(または、その反対方向)にも振れにくくなる。
【0052】
また、
図6(B)に示すように、下側転動面1a、上側転動面1bの形状を移動ローラー21および消音ローラー22の外周面の形状に合わせて曲面状に形成することで、さらに開閉扉2が前後方向へ振れ難く(振れが小さく)なる。また、振れが生じた場合でも、正常位置に戻り易くすることができる。
【0053】
さらに、本実施の形態では、第1案内装置10の第2ローラー部14にのみ消音ローラー22を設けているが、第1案内装置10の第1ローラー部12、または第2案内装置17のいずれか一方、或いは両方にも消音ローラー22を設けるようにしてもよい。
【0054】
例えば、引戸装置Hの構造によっては、上側だけではなく下側でも開閉扉2の自重を支えているものがある。このような構造では、本実施例の説明で吊り元として記載している第1ローラー部12、第2案内装置17に開閉扉2の自重が作用しない(或いは軽減される)ため、これらの部位の移動ローラー21も上側に持ち上がることがある。そのため、これらの各部位にも移動ローラー21に隣り合うようにして消音ローラー22を設けることが必要になる。
【0055】
図7は、移動ローラーの案内構造の第2変形例であって、第1案内装置110の第1ローラー部112に消音ローラー22を設けた図である。また、
図8は、移動ローラーの案内構造の第3変形例であって、第2案内装置117に消音ローラー22を設けた図である。
【0056】
第1ローラー部112には、
図7に示すように、移動ローラー21の左側であって、移動ローラー21に隣り合って消音ローラー22が設けられている。同様に、第2案内装置117には、
図8に示すように、移動ローラー21の左側および右側であって、移動ローラー21に隣り合って消音ローラー22がそれぞれ設けられている。これらの消音ローラー22についても、消音ローラー取付部が弾性で上下に撓むようになっており、開閉扉2が持ち上がる力をこの弾性によって緩衝する。これにより、第1ローラー部112および第2案内装置117の移動ローラー21が持ち上がったとしても、上側転動面1bとの当接音を、従来と比べて小さくすることができる。
【0057】
また、本実施の形態では、消音ローラー取付部20cを弾性によって上下に撓ませるようにしているが、他の構造でも同様の効果を得ることができる。
図9は、移動ローラーの案内構造の第4変形例を示す図である。
【0058】
図9で示す第2ローラー部114では、本体部120の消音ローラー取付部120cを上下に厚みを持たせ、剛性を高めて撓まないようにしている。一方、消音ローラー122の外周部122aは、弾性を有する材料で形成されており、上側転動面1bと当接したときにこの外周部122aが撓むようになっている。または、回転軸22aが上下に撓むようにしてもよい。このように、撓ませる部位を適宜変更して構成したとしても、本実施例と同等の作用・効果を得ることができる。